(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質の堆積量が所定値以上であるときに前記粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生制御装置とを備え、
前記フィルタ再生制御装置は、前記ディーゼルエンジンに昇温のための昇温制御を行って排気温度を昇温可能なエンジン制御部と、作業に関する制御を行い且つ粒子状物質を燃焼させて除去する制御に関して前記エンジン制御部よりも上位である作業機制御部とを備え、
前記エンジン制御部は、前記堆積量が所定値以上であるときに前記排出ガス浄化装置内の排気温度を粒子状物質の燃焼が促進される燃焼温度域に向けて自動的に昇温して粒子状物質を燃焼させる自動再生モードと、前記堆積量の値に基づいて、前記排気温度を予め定められた温度であって前記燃焼温度域より低い温度である第1目標温度に向けて昇温し、第1目標温度になった時点で外部昇温指令を待ち、前記外部昇温指令を受けて前記排気温度を前記燃焼温度域である第2目標温度に昇温する半自動再生モードと、前記自動再生モードと半自動再生モードとを切り換える切換手段を有し、
前記作業機制御部は、前記エンジン制御部に切換信号を出力する切換信号出力手段を有し、前記切換手段は、前記フィルタ再生制御装置に設けられた前記作業機制御部が有する切換信号出力手段が出力する切換信号に基づいて自動再生モードと半自動再生モードとを切り換えることを特徴とする作業機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の作業機は、ディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)を備えると共に、このDPFに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去する手段を備えたものである。このような作業機は、トラクタやコンバインなどの農業機械及びバックホーやコンパクトトラックローダ(CTL)などの建設機械であって、農作業や建設作業等の作業が行えるものであるが、トラクタを例にとり説明する。
【0016】
図6に示すように、トラクタ1は、前後に車輪を有する走行車体2に、ディーゼルエンジン3、変速装置4等が搭載されて構成されている。この走行車体2の後部には、3点リンク機構5が昇降可能に設けられている。この3点リンク機構5には、耕耘装置、肥料散布装置、収穫装置などの各種作業装置6が着脱自在となっている。この作業装置6には、PTO軸を介してディーゼルエンジン3からの動力が伝達されるようになっている。また、ディーゼルエンジン3の後方には、独立搭載型のキャビン7が設けられており、キャビン7内に運転席8が設けられている。運転席8の前側(前方)にトラクタ1の様々な表示を行う表示装置9が設けられている。
【0017】
図1は、ディーゼルエンジン3における排気系の構造を示したものである。なお、通常、ディーゼルエンジン3は、複数のシリンダ(気筒)を有する多気筒エンジンである場合が多いが、
図1では、そのうちの1つのシリンダを示している。
以下、ディーゼルエンジン3の排気系について詳しく説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以降、エンジンという)3のシリンダ10の上部には、当該シリンダ10内に空気を導入するための開口である吸気ポート11が形成されると共に、燃焼後のガス(燃焼ガス)をシリンダ10から排出するための開口である排気ポート12が形成されている。さらにシリンダ10の上部には、吸気ポート11を開閉するための吸気バルブ13と、排気ポート12を開閉するための排気バルブ14とが設けられている。
【0018】
吸気ポート11には、シリンダ10内に導入される空気の流路となる管状の吸気マニホールド15が接続されている。また、排気ポート12には、シリンダ10から排出される燃焼ガスの流路となる管状の排気マニホールド16が接続されている。排気マニホールド16の端部には排気音を低減するためのサイレンサ17が設けられていて、燃焼ガスはサイレンサ17を通過して外部に排出される。
【0019】
排気マニホールド16において、排気ポート12とサイレンサ17との間には排出ガス浄化装置20が設けられている。排出ガス浄化装置20は、通過する排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集して浄化するものである。つまり、シリンダ10から排気ポート12を経て排出された燃焼ガスは、排出ガスとなって排気マニホールド16を通り、排出ガス浄化装置20で浄化されてサイレンサ17に至る。
【0020】
この排出ガス浄化装置20は、内部にDPF21を有している。DPF21は、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタであり、例えば、セラミック製で断面がハニカム構造となるように形成されている。つまり、DPF21の一端から他端にわたる長手方向に沿って、例えば六角柱のストロー状の多角形貫通孔が多数隣接しており、各貫通孔内には、DPF21の長手方向に沿って所定間隔で多孔質の隔壁が設けられている。
【0021】
DPF21の一端側(入側)から進入した排出ガスは、貫通孔内に形成された多孔質の隔壁を通過しつつDPF21の他端側(出側)へ向かって流れる。排出ガスに含まれる粒子状物質は、多孔質の隔壁に付着したり、貫通孔の内壁に付着したりすることでDPF21に捕集され、DPF21によって浄化された排気ガスは外部へ放出される。なお、ディーゼルエンジン3の排気系には、図示はしないが、DPF21の入側とエンジン3との間に、粒子状物質中の燃料及び燃焼ガス中の窒素酸化物を酸化するための酸化触媒(ディーゼル用酸化触媒)などが設けられている。
【0022】
本発明のトラクタ1では、CPU等から構成されたフィルタ再生制御装置25による制御によってDPF21に堆積した粒子状物質の堆積量(PM堆積量という)を低減するクリーニング、即ち、DPFの再生(DPF再生ということがある)を行う。
フィルタ再生制御装置25は、エンジン3等を制御するエンジンコントロールユニット(エンジン制御装置)にDPF再生機能を具備させることで構成されたもので、DPF再生を行わない通常時ではトラクタ1における作業の負荷等に応じてエンジン3を制御すると共に、DPF再生を行う時には通常時とは異なるようにエンジンの制御を実行してDPF再生を行う。
【0023】
このフィルタ再生制御装置25は、通常時には、アクセルレバーの操作量、アクセルペダルの操作量、クランク位置、カム位置等の制御信号に基づいて、インジェクタ、コモンレール、サプライポンプ等を制御する。なお、通常時でのフィルタ再生制御装置25のディーゼルエンジン制御は、一般的なディーゼルエンジン制御と同じものであり、例えば、インジェクタの制御では燃料噴射量、噴射時期などが設定され、サプライポンプやコモンレールの制御では燃料噴射圧が設定される。当然の如く、トラクタ1においては、作業者がアクセルレバーを操作したり、アクセルペダルを操作することによって、アクセルレバーの操作量やアクセルペダルの操作量が変化し、エンジン回転数を増減させることができる。
【0024】
なお、トラクタ1には、フィルタ再生制御装置25の他に、当該トラクタ1に関する様々な制御を行う作業機制御装置(図示省略)を備えている。この作業機制御装置は、例えば、運転席8の周囲に設けられた操作レバーに基づいて3点リンク機構5などの昇降を制御したり、変速装置の変速制御などを行う。作業機制御装置は、主に、トラクタ(作業機)における作業に関する制御を行うものであれば、どのような制御を行うものであってもよく、上述した制御に限定されない。
【0025】
図1に示すように、フィルタ再生制御装置25は、自動再生モード30と、半自動再生モード31とを備えている。
自動再生モード30及び半自動再生モード31は、フィルタ再生制御装置25の制御部29に格納されたDPF再生を行うための制御プログラム等から構成され、DPF再生が必要なときは、自動再生モード30や半自動再生モード31が働きDPF再生を行う。なお、フィルタ再生制御装置25は、DPF再生時には、自動再生モード30と半自動再生モード31のいずれかになっている。また、半自動再生モード31であっても自動再生モード30であっても、十分にPM堆積量が減少する(DPF再生が不要なレベルまで堆積量が少なくなると、自動再生モード30又は半自動再生モード31が終了し、フィルタ再生制御装置25は、通常の制御に戻る。フィルタ再生制御装置25は、自動再生モード30でDPF再生が行われている場合でも、アクセル等によるエンジン回転数の増減などエンジンの制御は行うことができる。
【0026】
まず、半自動再生モード31について説明する。
フィルタ再生制御装置25が半自動再生モード31になっている状態で、PM堆積量がDPF再生が必要な所定値(閾値以上)になると、このフィルタ再生制御装置25は、通常の制御から切り替わり、半自動再生モード31によるDPF再生の制御を開始する。ここで、PM堆積量は、DPF21の入側の排気圧力と、DPF21の出側の排気圧力との差圧により推定することとしている。詳しくは、DPF21(排出ガス浄化装置20)の入側付近の排気圧力を入側圧力センサ22により検出し、DPF21(排出ガス浄化装置20)の出側付近の排気圧力を出側圧力センサ23により検出し、フィルタ再生制御装置25は入側圧力センサ22が検出した排気圧力と、出側圧力センサ23が検出した排気圧力とから排出ガス浄化装置20の入側と出側での排気圧力の差(差圧)を計算する。PM堆積量が多いと排気圧力の差である差圧も大きく、PM堆積量が少ないと排気圧力の差圧も小さいことから、このような関係を用いて、フィルタ再生制御装置25では、計算した差圧からDPFに堆積したPM堆積量を求める。なお、差圧とPM堆積量との関係は、フィルタ再生制御装置25に予め制御プログラム又は制御パラメータなどという形態で格納されている。この実施形態では、排気圧力の差からPM堆積量を算出することとしているが、これに限定されず、エンジン3を稼働した稼働時間や燃料の消費量などによりPM堆積量を算出してもよく、PM堆積量の算出方法はどのようなものであってもよい。
【0027】
上述した半自動再生モード31は、PM堆積量が閾値以上になると、まず、自動的に排出ガス浄化装置20内の排気温度の昇温を行い、その昇温の途中で外部昇温指令を待ち当該外部昇温指令を受けてから燃焼が促進される温度域(燃焼温度域)まで昇温を行うもので、段階的に排気温度を上昇させるモードである。
具体的には、半自動再生モード31では、PM堆積量が閾値以上になると、まず、予め定められた第1目標温度に向けて昇温を行い、第1目標温度になった時点で運転席8の周囲に設けられた再生スイッチ32を点滅させて第1目標温度に達したことを報知して、それ以上の昇温を待つ。そして、半自動再生モード31では、作業者が再生スイッチ32を押す(外部昇温指令を出す)と、その外部昇温指令を受けて燃焼が促進される温度域である第2目標温度まで昇温を行う。
【0028】
この再生スイッチ32には、LED等が内蔵されていて、再生スイッチ32は、DPF再生が必要なときに点灯、点滅すると共に、押すことによってDPF再生の外部昇温指令などが行える押しボタン式のスイッチである。この再生スイッチ32は運転席8の前側であって様々な表示を行う表示装置(メータパネル)9の周囲に設置されている
さらに詳しくは、半自動再生モード31が働くと、フィルタ再生制御装置25は、エンジン3等に吸気スロットルの絞りを指令する信号を出力して吸気スロットルを絞り、これにより、排出ガス浄化装置20内の排気温度(DPF21の入側の排気温度、即ち、DPF21内の温度)を、第1目標温度である250℃に向けて昇温する昇温制御を行う。
【0029】
さて、トラクタ1などの作業機では、圃場内に入って当該トラクタ1で作業する場合があり、そのエンジン3から排出され排出ガスが、圃場内の作物やビニールハウス等の可燃物にあたることがある。上述した第1目標温度は、作物にダメージを与えるような高温ではないため、半自動再生モード31では、まず、第1目標温度まで昇温して待機することとしている。
【0030】
このように、吸気スロットルの絞りが自動的に行われた後は、排気温度が第1目標温度に達したか否かの判断が行われる。具体的には、半自動再生モード31によって、吸気スロットルの絞りが行われると、DPF21の入側に設けた温度センサ27が測定した測定したDPF21の入側の排気温度が250℃以上となった時点で、フィルタ再生制御装置25は、吸気スロットルの絞り後の排気温度が第1目標温度に達したと判断する。なお、排気温度が第1目標温度に達していない状態では吸気スロットルの絞り動作は継続される。
【0031】
図2(a)に示すように、排気温度が第1目標温度である250℃に達している状態では、フィルタ再生制御装置25は、再生スイッチ32に制御信号を出力して、当該再生スイッチ32を点滅させる。再生スイッチ32の点滅は、作業者に対して排気温度を第1目標温度より高い第2目標温度に上昇させる第2段階の昇温制御を行ってよいか否かを確認するためのもので、再生スイッチ32が点滅した状態で再生スイッチ32を押すと、第2段階の昇温制御に進む。
【0032】
DPF再生において、第2段階の昇温は、排気温度を粒子状物質の燃焼が促進される温度域である第2目標温度(例えば、600℃)まで昇温することになり、この第2目標温度は、第1段階で昇温を行ったときの第1目標温度と比べて非常に高く、第2段階の昇温に伴って排気ガスの温度も高くなる。そのため、上述したように、再生スイッチ32の点滅によって、第2段階の昇温が行えることを報知すると共に第2段階の昇温を行ってよいかを確認している。
【0033】
例えば、トラクタ1を運転する作業者(運転者)は、トラクタ1での作業中において、トラクタ1が圃場内にあっても一時的に作物などの可燃物が無い場所を走行しているとき、或いは、圃場内での作業を一時的に中断して農道などを走行しているときなどに再生スイッチ32を押す。
再生スイッチ32を押して(手動操作によって)、排気温度を粒子状物質の燃焼が促進される第2目標温度まで上げてよいことを指令すると、フィルタ再生制御装置25は、直ちにエンジン等に指令を出力してポスト噴射を開始し、粒子状物質の燃焼が促進される温度域である第2目標温度(600℃)に向けて、排気温度を一挙に上昇させる。
【0034】
図2(a)に示すように、フィルタ再生制御装置25は、再生スイッチ32が押されると、再生スイッチ32に制御信号を出力し、再生スイッチ32を点滅から点灯に代えて、ポスト噴射が行われていることを示す。
上述したように、フィルタ再生制御装置25が半自動再生モード31であるとき、PM堆積量が第1閾値以上になると、吸気スロットルの絞りが行われて排気温度が第1目標温度となる。この段階で再生スイッチ32を押すとポスト噴射が行われて排気温度が第2目標温度となるため、PM堆積量が減少することになる。
【0035】
このように、半自動再生モード31では、排気温度を一旦第1目標温度まで上げた後、第2目標温度に上げる場合に、作業者の確認を行うようにしているため、作業者は周りの状況を考慮したうえで直ちにDPF再生を行うことができる。
次に、自動再生モード30について説明する。
フィルタ再生制御装置25が自動再生モード30になっている状態で、PM堆積量がDPF再生が必要な所定値(閾値以上)になると、このフィルタ再生制御装置25は、通常の制御から切り替わり、自動再生モード30にDPF再生の制御に入る。ここで、自動再生モード30を開始することを判断する閾値と、半自動再生モードを開始ことを判断する閾値は同じ値である。
【0036】
自動再生モード30とは、排気温度を自動的に燃焼が促進される温度域まで一挙に昇温を行うモードである。即ち、自動再生モード30とは、半自動再生モード31とは異なり、作業者の確認を行うことなく排気温度を上げてDPF再生を行う。
さらに詳しくは、自動再生モード30が働くと、フィルタ再生制御装置25は、エンジン3等に吸気スロットルの絞りを指令する信号を出力して吸気スロットルの絞りを行うと共にポスト噴射を行って、これにより、排気温度を、第2目標温度である600℃に向けて一挙に昇温して、PM堆積量を減少させる。
【0037】
図2(b)に示すように、フィルタ再生制御装置25が自動再生モード30であり、PM堆積量が閾値未満(DPF再生未実行であるとき)は、フィルタ再生制御装置25は、DPFスイッチ33に制御信号を出力し、DPFスイッチ33を点滅させる。このDPFスイッチ33は、再生スイッチ32と同様に、運転席8の前側であって表示装置9の周囲に設置されたもので、LED等が内蔵されていて押しボタン式のスイッチである。DPFスイッチ33の点滅は、フィルタ再生制御装置25が自動再生モード30であることを示し、自動的にDPF再生が可能である状態を示している。
【0038】
図2(b)に示すように、フィルタ再生制御装置25が自動再生モード30によるDPF再生を実行すると、当該フィルタ再生制御装置25は、DPFスイッチ33に制御信号を出力し、DPFスイッチ33を点灯させる。DPFスイッチ33の点灯は、自動再生モード30によるDPF再生が実行されていることを示している。
このように、自動再生モード30では、半自動再生モード31とは異なり、作業者の確認をとらなくてもPM堆積量が閾値以上となって堆積すると、自動的にDPF再生を行いPM堆積量を減少させることができる。
【0039】
なお、自動再生モード30でDPF再生が実行されているとき、DPFスイッチ33を押すと、自動再生モード30によるDPF再生を停止させることができる。即ち、DPFスイッチ33が押されると、フィルタ再生制御装置25はPM堆積量が閾値以上であっても、DPF再生を中止して、吸気スロットルの絞りやポスト噴射を停止する。
本発明の作業機では、上述したように、フィルタ再生制御装置25に、半自動再生モード31や自動再生モード30が具備されているため、いずれかを用いてDPF再生を行うことができる。半自動再生モード31では、主に作業者の意思を確認してから最終的にDPF再生を完了させるモードであり、作業状況を判断しながらDPF再生を行える。一方、自動再生モード30では、作業者の意思には関係なく確認をとらなくてもDPF再生を完了させるモードであり、作業者がPM堆積量を意識しなくても自動的にDPF再生を行える。このように、半自動再生モード31や自動再生モード30には、それぞれ特徴がある。
【0040】
トラクタなどの作業機では、作業者(ユーザ)の使用形態が多様であり、作業機の作業との関係などから半自動再生モード31の方が適している場合や自動再生モード30が適している場合が考えられる。
そこで、本発明では、様々な使用形態を考慮して、その使用形態に適したDPF再生を行うことができるように、フィルタ再生制御装置25には、自動再生モード30と半自動再生モード31とを切り換えるための切換手段35が備えられている。この切換手段35もフィルタ再生制御装置25の制御部29に格納された制御プログラム等から構成されており、当該切換手段35は、内部から入力される切換信号に基づいて自動再生モード30と半自動再生モード31とを切り換える。
【0041】
具体的には、
図1に示すように、フィルタ再生制御装置25の内部には、ディップスイッチなどから構成された内部切換部40が設けられおり、ディップスイッチ40の切換信号は制御部29に入力されるようになっている。このディップスイッチ40は、2方向の切換を行えるスイッチであって、一方に切り換えると自動再生モード30を選択し、他方に切り換えると半自動再生モード31を選択したことになる。
【0042】
切換手段35は、ディップスイッチ40により自動再生モード30が選択されて、自動再生モード30に対応する切換信号が入力されるとDPF再生時には、フィルタ再生制御装置25を自動再生モード30する。また、切換手段35は、ディップスイッチ40により半自動再生モード31が選択されて、半自動再生モード31に対応する切換信号が入力されるとDPF再生時には、フィルタ再生制御装置25を半自動再生モード31する。
【0043】
この自動再生モード30又は半自動再生モード31を指令するディップスイッチ等の内部切換部40は、主に、トラクタ1のメンテナンスを行ったり、トラクタを製造する製造会社のサービスマンなどが操作するためのものであって、トラクタ1のメンテナンス時やトラクタの製造出荷時に操作される。トラクタ1の製造出荷時は、ディップスイッチ40によって半自動再生モード31に設定されている。トラクタ1の製造出荷時には半自動再生モード31に設定されいるが、メンテナンス時などにユーザの要望に応じてサービスマンがディップスイッチ40を操作することによって半自動再生モード31することができる。
【0044】
上述した実施形態では、フィルタ再生制御装置25の内部にディップスイッチなどの内部切換部40を設けて、内部からの切換信号に対応して切換手段35が自動再生モード30と半自動再生モード31とを切り換えるようにしてもよいが、
図3の変形例に示すように、外部からの切換信号によって切換手段35が自動再生モード30と半自動再生モード31とを切り換えるようにしてもよい。
【0045】
図3に示すように、フィルタ再生制御装置25には、例えば、押しボタン式の外部スイッチから構成された外部切換部41が接続されている。この外部スイッチ41は、表示装置9の周囲に設置されたもので、再生スイッチ32やDPFスイッチ33の近傍に設置されている。外部スイッチ41は、1回押すと自動再生モード30を選択し、もう1回押すと半自動再生モード31を選択したことになる。なお、外部スイッチ41を、2方向切換のスイッチとし、一方側にすると自動再生モード30となり、他方側にすると半自動再生モード31になるように構成してもよい。
【0046】
切換手段35は、外部スイッチ41により自動再生モード30が選択されて、自動再生モード30に対応する切換信号が入力されると、フィルタ再生制御装置25を自動再生モード30にする。また、切換手段35は、外部スイッチ41により半自動再生モード31が選択されて、半自動再生モード31に対応する切換信号が入力されるとフィルタ再生制御装置25を半自動再生モード31する。
【0047】
図3の変形例では、内部切換部40とは異なり、外部切換部41からの選択に対応して切換信号を出力するようにしているので、トラクタ1を操作する作業者(運転者)であってもトラクタ1で作業しながらモードを切り換えることができ、自在にDPF再生を行うことができる。例えば、圃場内で作業しているときは半自動再生モード31としてDPF再生(昇温)の確認を行い、公道を走行しているときには自動再生モード30として自動的にDPF再生を行うようにするとよい。
【0048】
さて、DPF再生が必要となったとき(PM堆積量が閾値以上となったとき)に、切換手段35が内部切換部40又は外部切換部41の状態(半自動再生モード31側であるか自動再生モード30側であるか)を判断してから、切換信号に対応するモードに切り換えてもよいが、内部又は外部からの切換信号が入力されたときに、各モードを実行するための実行フラグを記憶(保持)するようにしてもよい。
【0049】
図1及び3に示すように、フィルタ再生制御装置25に不揮発性のメモリ等から構成され記憶部(モード記憶部)42を設け、このモード記憶部42に実行フラグを記憶するようにしてもよい。
切換手段35は、内部切換部40又は外部切換部41から出力された切換信号が半自動再生モード31を示すものであれば、モード記憶部42に半自動再生モード31を示す実行フラグを記憶させ、一方、切換信号が自動再生モード30を示すものであれば、モード記憶部42に自動再生モード30を示す実行フラグを記憶させる。フィルタ再生制御装置25は、DPF再生が必要であるとき、モード記憶部42に記憶された実行フラグに基づいて半自動再生モード31や自動再生モード30になりDPF再生を実行する。
【0050】
以上、本発明によれば、フィルタ再生制御装置25が自動再生モード30と半自動再生モード31とを備え、さらに、自動再生モード30と半自動再生モード31とを切り換える切換手段35を備えているので、作業機(トラクタ)の使用形態に応じたDPF再生を行うことができる。
[第2実施形態]
上述した実施形態では、エンジンコントロールユニット(エンジン制御装置)にDPF再生機能を具備させることでフィルタ再生制御装置25を構成したが、
図4に示すように、第2実施形態では、フィルタ再生制御装置25を作業機の制御を行う作業機制御装置26(作業制御部)と、エンジンの制御を行うエンジン制御装置(エンジン制御部)28とで構成し、DPF再生の制御に関して、作業機制御装置26がエンジン制御装置28よりも上位に位置づけたものである。なお、エンジン制御装置28には、上述した実施形態と同様に、自動再生モード30、半自動再生モード31及び切換手段35、モード記憶部42が具備されているが、この自動再生モード30、半自動再生モード31及びモード記憶部42等は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0051】
作業機制御装置26は、第1実施形態で説明したように作業機1に関する制御を行うものであって、エンジン制御装置28とはCANなどの車載ネットワークを介してデータのやりとりが行えるようになっている。作業機制御装置26には、エンジン制御装置28に切換信号を出力する切換信号出力手段43が設けられいる。この切換信号出力手段43は、作業機制御装置26の制御部36に格納されたDPF再生を行うための制御プログラム等から構成されている。
【0052】
作業機制御装置26の内部には、内部切換部40(ディップスイッチ)が接続されており、このディップスイッチ40によって自動再生モード30と半自動再生モード31とのいずれかが選択された指令が作業機制御装置26の制御部36に入力されると、切換信号出力手段43は、ディップスイッチ40で選択されたモードに対応する切換信号をエンジン制御装置28に出力する。エンジン制御装置28の切換手段35は、作業機制御装置26から出力された切換信号に基づいて、当該エンジン制御装置28を自動再生モード30又は半自動再生モード31に切り換える。なお、作業機制御装置26に、内部切換部40の代わりに
図3の変形例と同様な外部切換部41(外部スイッチ41)を接続して、外部スイッチ41によって自動再生モード30と半自動再生モード31とのいずれかが選択された指令が作業機制御装置26に入力されたときに、切換信号出力手段43が外部スイッチ41で選択されたモードに対応する切換信号をエンジン制御装置28に出力してもよい。
【0053】
この第2実施形態では、作業機制御装置26からエンジン制御装置28に向けて切換信号を出力する形態となっているため、第1実施形態と比べて作業機制御装置26が自動再生モード30又は半自動再生モード31の選択権を持っているものとなっている。
また、
図4に示すように、再生スイッチ32は、作業機制御装置26に接続されていて、再生スイッチ32からの外部昇温指令があると作業機制御装置26は、エンジン制御装置28に対して半自動再生モードによるDPF再生動作(第2段階の昇温)を許可するようになっている。即ち、エンジン制御装置28は、第1段階の昇温は自動的に行うものの、作業機制御装置26からの許可がなければ、ポスト噴射などの第2段階の昇温は行わない。なお、半自動再生モード31において、第2段階の昇温制御を行ってよいか否かを確認するための報知(再生スイッチ32の点滅)、半自動再生モード31を実行している報知(再生スイッチ32の点灯)は、エンジン制御装置28が作業機制御装置26に制御信号を出力することによって、作業機制御装置26を介して行う。
【0054】
さらに、DPFスイッチ33も作業機制御装置26に接続されていて、DPFスイッチ33からの停止指令があると作業機制御装置26は、エンジン制御装置28に対して自動再生モードによるDPF再生の停止を行うようになっている。なお、自動再生モード30において、自動再生モード30であることの報知(DPFスイッチ33の点滅)、自動再生モード30を実行している報知(DPFスイッチ33の点灯)は、エンジン制御装置28が作業機制御装置26に制御信号を出力することによって作業機制御装置26を介して行う。また、その他、DPF再生に必要な情報(入側圧力センサ22の数値、出側圧力センサ23の数値、温度センサ27など)は、作業機制御装置26を介してエンジン制御装置28に入力されるようになっている。
【0055】
このように、第2実施形態では、エンジン制御装置28には、自動再生モード30や半自動再生モード31が具備されているが、自動再生モード30と半自動再生モード31との切換、半自動再生モード31における第2段階の昇温、自動再生モード30におけるDPF再生停止など、作業機制御装置26からの指令が無ければ、それぞれの制御が実行できないようになっており、DPF再生の制御において、作業機制御装置26がエンジン制御装置28よりも上位となる構成となっている。言い換えれば、作業機制御装置26がDPF再生の制御を管理する統括装置としての働きがある。
【0056】
このようにすれば、エンジン制御装置28と作業機制御装置26とが別々の場所で製造されるような場合でも、作業機制御装置26側でDPF再生に関する設定を簡単に行うことができる。
[第3実施形態]
上述した実施形態では、再生スイッチ32、DPFスイッチ33、外部切換部41をそれぞれ別々に構成していたが、この第3実施形態は、再生スイッチ32、DPFスイッチ33及び外部切換部41を1つのスイッチで構成したものである。
【0057】
図5に示すように、作業機制御装置26は、再生スイッチ32、DPFスイッチ33及び外部切換部41を兼用する兼用スイッチ44が、表示装置9の周囲に設けられている。兼用スイッチ44は、押しボタン式のスイッチであると共に、その内部にはLED等が内蔵されていて、点灯、点滅するようになっている。
以下、兼用スイッチ44について詳しく説明する。
【0058】
自動再生モード30や半自動再生モード31によってDPF再生が実行されていない場合、即ち、DPF21に堆積したPM堆積量が閾値未満である場合は、兼用スイッチ44は外部切換部41として働く。例えば、PM堆積量が非常に少ない状態でDPF再生が行われていないときに、兼用スイッチ44を押すと、自動再生モード30と半自動再生モード31との切換を示す信号を作業機制御装置26の制御部36に出力する。DPF再生が行われていないときは、兼用スイッチ44を押す毎に、自動再生モード30又は半自動再生モード31のどちらかを示す信号が作業機制御装置26の制御部36に出力されるようになっており、切換信号出力手段43は、兼用スイッチ44の示したモードに応じた切換信号をエンジン制御装置28に出力する。なお、表示装置9に現在のモードがどちらになっている分かるような表示(DPF表示)を行うことが好ましい。
【0059】
一方、PM堆積量が閾値以上となり半自動再生モードが働いている場合、排気温度が第1目標温度に達すると、兼用スイッチ44は点滅し、第2段階の昇温制御を行ってよいか否かを確認する再生スイッチ32として働く。兼用スイッチ44が点滅した状態で兼用スイッチ44を押すと、外部昇温指令を作業機制御装置26を介してエンジン制御装置28に行ったことになり、第2段階の昇温が実行される。第2段階の昇温が実行されると、エンジン制御装置28は、兼用スイッチ44に制御信号を出力し、兼用スイッチ44を点灯させてDPF再生が行われていることを報知する。また、半自動再生モードではなく自動再生モードによってDPF再生が行われている場合、兼用スイッチ44は点灯してDPF再生が行われていることを報知する。また、自動再生モードによるDPF再生時に押すとDPF再生を停止するDPFスイッチ33として働く。
【0060】
このように、兼用スイッチ44を設けるようにすることによってスイッチの部品点数を少なくすることができる。
上述した第3実施形態では、再生スイッチ32、DPFスイッチ33及び外部切換部41の3つのスイッチを1つの兼用スイッチ44で構成しているが、再生スイッチ32と外部切換部41との2つのスイッチを兼用スイッチ44で構成してもよいし、再生スイッチ32とDPFスイッチ33との2つのスイッチを兼用スイッチ44で構成してもよい。
【0061】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上記の実施形態では、DPF内の粒子状物質を燃焼させるために排気温度を昇温させるものであると説明しているが、これは実質的に粒子状物質を燃焼させるためにDPF内の温度を上げることであり、これらの排気温度をDPF13内の温度や水温等と読み替えても何ら問題ない。
【0062】
エンジン制御装置28及び作業機制御装置26における制御は、上述したものに限定されず、適用する作業機によって各種制御を行えばよく、例えば、作業機がコンバインあれば、コンバインに適応した制御を行い、バックホーであれば、バックホーに適応した制御を行う。
上述した実施形態では、半自動再生モード31において、排気温度を第1目標温度に上げた後、第2目標温度に上げるという2段階方式について説明したが、排気温度が第1目標温度になるまでや第2目標温度になるまで、2段階以上、例えば、3段階や4段階など複数段階に分けて昇温してもよい。
【0063】
自動再生モード30や半自動再生モード31において、排気温度が短期間に十分に上昇しない場合、自動再生モード30や半自動再生モード31に排気温度の昇温を補足する手段を設けても良い。例えば、フィルタ再生制御装置25による排気温度の昇温中に、手動操作によってエンジン回転数を上昇させるエンジン回転上昇案内を行い、作業者がエンジン回転上昇案内を見て、アクセルレバー等を手動操作することによってエンジン回転数を上昇させ、このエンジン回転数の上昇により排気温度を上昇させるようにしてもよい。
【0064】
また、PM堆積量が、自動再生モード30や半自動再生モード31を実行する閾値よりもさらに上昇してPM堆積量が多大に多くなった場合、まず、自動再生モード30や半自動再生モード31のいずれにおいても作業機を停車する案内を行い、作業機が停車した状態[トラクタの速度が零、パーキングレバーが引かれる、ギアをニュートラル(変速装置をニュートラル)、エンジン回転数がアイドル回転数]になると、自動的にエンジン回転数を上昇させると共に、吸気スロットルの絞りやポスト噴射等を行って、強制的にDPF再生を行うようにしてもよい。なお、強制的にDPF再生を行う場合、自動的に作業機の停車を検出してからDPF再生を実行してもよい。また、強制的にDPF再生を行う場合、例えば、作業者が駐車を確認した後、DPF再生を行う時に、再生スイッチ32又は兼用化スイッチ44を押したときにDPF再生を開始してもよい。
【0065】
上述した
図4及び
図5では、自動再生モード30や半自動モードを記憶するエンジン制御装置28にモード記憶部42を具備させているが、作業機制御装置26にモード記憶部42を記憶させてもよい。例えば、エンジン制御装置28におけるモードを切り換えたときに作業機制御装置26のモード記憶部42に切り換えたモードに対応した実行フラグを記憶する。エンジン制御装置28は作業機制御装置26のモード記憶部42に記憶された実行フラグに基づき、モードを動かすようにすればよい。