(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態の海水淡水化装置100の構成を示す説明図である。
【0014】
海水淡水化装置100は、海から図示しない取水装置よって取り込んだ海水(原水)を、逆浸透膜であるRO膜(Reverse Osmosis)4によって塩分を除去して、透過水取出通路15から淡水として取出する装置である。
【0015】
海水淡水化装置100は、供給された海水を淡水と濃縮海水とに分離するRO膜4と、主駆動モータ1により駆動され海水を加圧してRO膜4の上流側室21に供給する水圧ポンプ2と、RO膜の上流側室21から分離された濃縮海水が供給され、供給された濃縮海水の圧力によって回転駆動し、主駆動モータ1の駆動と共に水圧ポンプ2を回転駆動する動力回収水圧モータ3と、開度によって動力回収水圧モータ3に供給する濃縮海水の流量を制御するサーボバルブ7と、海水の温度を検出する温度検出器20と、RO膜の上流側室21と下流側室22との差圧を検出する圧力検出器5と、温度検出器20と圧力検出器5との検出値に基づいてサーボバルブ7の開度を制御するサーボアンプ6と、を備える。
【0016】
この海水淡水化装置100は、後述するように、サーボアンプ6が、温度検出器20によって検出された海水の温度に基づいて、水圧ポンプ2によりRO膜4に供給される海水の流量を制御する。これにより、検出された温度に基づいて、水圧ポンプ2を駆動する動力回収水圧モータ3の回転駆動を制御することができる。このような構成によって、温度検出器20によって検出された海水の温度に基づいて動力回収水圧モータ3の回転駆動を制御することができるので、海水の温度の変動に関わらず、安定した流量の淡水を取出することができるものである。以下にその詳細を説明する。
【0017】
水圧ポンプ2は、流体である海水を閉じ込めるポンプ室を有する容積型ポンプによって構成され、回転軸2aが回転するのに伴ってこのポンプ室の容積を拡縮することによって海水を加圧して吐出する。
【0018】
水圧ポンプ2は、主として主駆動モータ1によって駆動され、動力回収水圧モータ3によって補助的に駆動される。水圧ポンプ2の回転軸2aは、主駆動モータ1と動力回収水圧モータ3との回転軸にそれぞれ連結されて、水圧ポンプ2、主駆動モータ1及び動力回収水圧モータ3とが同軸で回転するように構成されている。なお、水圧ポンプ2と主駆動モータ1又は動力回収水圧モータ3とが減速機構を介して連動する構成としてもよい。
【0019】
主駆動モータ1は、例えば電動モータによって構成され、水圧ポンプ2を回転駆動する。主駆動モータ1は通常は定回転で運転されており、水圧ポンプ2の吐出流量及び吐出圧力は、通常は一定に保たれる。なお、主駆動モータ1は、電動モータに限らず、水圧モータや油圧モータ等の他の原動機を用いてもよい。また、動力回収水圧モータ3は、後述するようにRO膜4から排出される濃縮海水によって回転作動し、水圧ポンプ2を補助的に駆動する。
【0020】
海等の水源から図示しない取水装置よって取り込まれた海水は、取水通路10から水圧ポンプ2の吸込側に供給される。水圧ポンプ2は海水を加圧して高圧海水として吐出する。水圧ポンプ2から吐出された高圧海水は、海水供給通路11を通過してRO膜4の上流側室21に供給される。
【0021】
RO膜4は、水は通過するが、塩類(塩分)などの他の不純物は通過できない性質を持つ濾過膜である。RO膜4は、塩類の濃度が高い液体(例えば海水)と淡水とをRO膜4で仕切って静止状態とすると浸透圧の差によって淡水から海水へと水分子が移動する。一方で、この浸透圧よりも高い圧力を海水に付加した場合は、水分子が海水から淡水へと移動する。このときの高い圧力を逆浸透圧力と呼ぶ。このように海水側に逆浸透圧力を付加することによって、海水から塩類を濾過して、淡水を生成することができる。
【0022】
RO膜4によって濾過された透過水(淡水)は、RO膜4の下流側室22から透過水取出通路15を通過して取出される。
【0023】
一方、RO膜4によって濾過されない濃縮海水は、RO膜4の上流側室21から濃縮海水取出通路12、サーボバルブ7を介して排出通路13又は排出通路14を通って排出される。
【0024】
濃縮海水取出通路12と排出通路13及び排出通路14との間には、サーボバルブ7が介装される。排出通路13には、動力回収水圧モータ3が介装される。
【0025】
動力回収水圧モータ3は、RO膜4の上流側室21から排出される濃縮海水が持つ流体圧力によって回転駆動される。動力回収水圧モータ3の回転軸は、水圧ポンプ2の回転軸2aと連結しており、動力回収水圧モータ3が回転することによって水圧ポンプ2を補助的に駆動する。すなわち、RO膜4から排出される濃縮海水によって動力回収水圧モータ3が回転することにより動力を回収し、この回収した動力を水圧ポンプ2の動力とすることができる。
【0026】
動力回収水圧モータ3は、濃縮海水(流体)を閉じ込めるモータ室を有する容積型モータによって構成され、濃縮海水の圧力によってモータ室の容積が拡縮することによってその回転軸が回転する。
【0027】
サーボバルブ7は、RO膜4の上流側室21から濃縮海水取出通路12を介して排出される濃縮海水を、排出通路13の動力回収水圧モータ3及び排出通路14に供給する流量を調整する。サーボバルブ7は、サーボアンプ(コントローラ)6によって動作が制御されて、濃縮海水取出通路12を排出通路14に連通して、濃縮海水取出通路12から導かれる濃縮海水の一部を排出通路14に逃がすことで、動力回収水圧モータ3に供給される濃縮海水の流量を調節する。
【0028】
また、海水淡水化装置100は、海水供給通路11又はRO膜4の上流側室21の圧力と、透過水取出通路15又はRO膜4の下流側室22の圧力との差圧力を検出し、その検出信号をRO膜4の逆浸透圧力の検出値としてサーボアンプ6に出力する圧力検出器5と、海水供給通路11に接続されて、海水供給通路11からRO膜4に供給される海水の温度を検出して、その検出信号をサーボアンプ6に出力する温度検出器20とを備える。なお、圧力検出器5は、海水供給通路11又はRO膜4の上流側室21の圧力のみを検出し、その検出信号をRO膜4の逆浸透圧力の検出値としてサーボアンプ6に出力してもよい。
【0029】
次に、このように構成された本実施形態の海水淡水化装置100の動作を説明する。
【0030】
海水淡水化装置100は、RO膜4の逆浸透圧力(RO膜4の前後に生じさせる差圧力)を適正値に保ち、淡水の取出量を目標の流量に保つため、サーボアンプ6が、圧力検出器5及び温度検出器20が検出した値に基づいてRO膜4の逆浸透圧力を目標値に近づけるようにサーボバルブ7の流量をフィードバック制御する。
【0031】
RO膜4は、濾過を行うことによる不純物の目詰まり等によって、または海水の温度によって、逆浸透圧力が変化する。サーボアンプ6は、この変化に応じてRO膜4に所定の逆浸透圧力を加えるように、サーボバルブ7の流量を制御する。このように、サーボアンプ6が、圧力検出器5及び温度検出器20が検出した値に基づいてRO膜4の逆浸透圧力を目標値に近づけるようにサーボバルブ7の流量をフィードバック制御することにより、逆浸透圧力フィードバック制御手段が構成される。
【0032】
サーボアンプ6は、圧力検出器5の検出値による逆浸透圧力及び温度検出器20の検出値による海水温度に基づいて、サーボバルブ7の開度を制御する。
【0033】
より具体的には、サーボアンプ6は、RO膜4の特性等に基づいた浸透圧力の目標値が予め記憶されている。RO膜4の逆浸透圧力がこの目標値より低い場合は、サーボアンプ6は、サーボバルブ7の開度を制御して、排出通路14を通して逃がされる濃縮海水の流量を減らすことによって、RO膜4の逆浸透圧力を高める。
【0034】
一方、RO膜4の逆浸透圧力が目標値より高い場合、サーボアンプ6は、サーボバルブ7の開度を制御して、排出通路14を通して逃がされる濃縮海水の流量を増やすことによって、RO膜4の逆浸透圧力を低くする。
【0035】
このように、サーボアンプ6は、圧力検出器5の検出値に基づいてサーボバルブ7を介して動力回収水圧モータ3の出力を増減して、動力回収水圧モータ3の動力回収率が最適となるようにRO膜4の逆浸透圧力を目標値に近づけるフィードバック制御を行う。
【0036】
なお、このとき、サーボアンプ6は、温度検出器20からの検出値に基づいて、サーボバルブ7の開度を補正する。
【0037】
図2は、本実施形態において、RO膜4における海水の温度と淡水化の効率との関係を示す説明図である。
【0038】
RO膜4の逆浸透圧力を一定とした場合に、RO膜4により濾過されて取出される淡水の流量は、
図2に示すように温度により変化する。具体的には、塩類の溶解度や海水の粘性係数等の物理特性が温度によって変化するため、RO膜4の濾過により淡水が取出される効率は、海水温度が高いほど高くなり、海水温度が低いほど低くなる。従って、温度によって濃縮海水の流量も変化する。
【0039】
これに対して、サーボアンプ6は、海水温度が高い場合は、浸透圧力の目標値を海水温度に応じて減少させる補正を行い、海水温度が低い場合は、浸透圧力の目標値を海水温度に応じて増加させる補正を行う。この補正によって、動力回収水圧モータ3の回転駆動によって水圧ポンプ2を補助的に駆動する動力の回収効率(動力回収率)が、最適となるように調節される。
【0040】
このような制御によって、RO膜4の経年劣化や目詰まりによってRO膜4の圧力損失が変化したり、海水温度が変化して海水の物理特性が変化したりして、RO膜4により取出される淡水の流量が変化する状況であっても、RO膜4によって濾過される淡水の取出量を適切な量に保つことができる。さらに、動力回収水圧モータ3を介して逃がされる濃縮海水の流量を変化させることによって、動力回収水圧モータ3の動力回収率がその時々で最適となるように調節される。
【0041】
以上のように本実施形態では、容積型の水圧ポンプ2と容積型の動力回収水圧モータ3が連動し、逆浸透圧力の検出値及び海水温度の検出値に応じて動力回収水圧モータ3の作動をフィードバック制御することによって、RO膜4の逆浸透圧力を的確に調節してRO膜4の濾過性能を維持すると共に、動力回収水圧モータ3によって濃縮海水が持つ流体圧力エネルギを有効に回収することを両立することができる。
【0042】
特に、海水温度によって逆浸透圧力を補正するように制御するので、海水温度により海水の物理特性が変化しても、同様に、RO膜4の濾過性能を維持すると共に、動力回収水圧モータ3によって濃縮海水が持つ流体圧力エネルギを有効に回収することを両立することができる。
【0043】
また、RO膜4の逆浸透圧力を調節するフィードバック制御量を取得し、これを理想的なRO膜4の特性と比較することによって、RO膜4の濾過性能を判定して、RO膜4の劣化状況を把握することが可能となるので、RO膜4の交換時期を的確に割り出すことができる。
【0044】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
【0045】
図3は、本発明の第2の実施形態の海水淡水化装置102の構成を示す説明図である。
【0046】
図3に示す第2の実施形態では、濃縮海水取出通路12において、サーボバルブ7と動力回収水圧モータ3との間に、流体の圧力を増大させる増圧器8を介装した。増圧器8は、濃縮海水取出通路12から動力回収水圧モータ3に供給される濃縮海水の圧力を高めるように構成されている。
【0047】
このように、増圧機8によって動力回収水圧モータ3に供給される濃縮海水の圧力を高めることにより、動力回収水圧モータ3の駆動力を増加させて、主駆動モータ1の負荷を軽減することができる。
【0048】
図4は、本発明の第3の実施形態の海水淡水化装置103の構成を示す説明図である。
【0049】
図4に示す第3の実施形態では、第1の実施形態の水圧ポンプ2に変えて、その容量(ポンプ押しのけ容積)を変えられる可変容量型とした水圧ポンプ31を備えた。
【0050】
そして、この水圧ポンプ31の容量を調節するサーボアクチュエータ17と、このサーボアクチュエータ17の作動を制御するサーボアンプ24とを備えた。
【0051】
サーボアンプ24は、圧力検出器5の検出値及び温度検出器20の検出値に基づいてサーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を変えることによって動力回収水圧モータ3の動力回収率が最適となるようにRO膜4の逆浸透圧力を目標値に近づけるフィードバック制御を行う。
【0052】
RO膜4の逆浸透圧力が目標値より低い場合、サーボアンプ24は、サーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を増やすことにより水圧ポンプ31の吐出圧を高める。
【0053】
一方、RO膜4の逆浸透圧力が目標値より高い場合、サーボアンプ24は、サーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を減らすことにより水圧ポンプ31の吐出圧を低くする。
【0054】
こうしてサーボアンプ24は、圧力検出器5の検出値に基づいてサーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を増減する。
【0055】
また、サーボアンプ24は、温度検出器20の検出値に基づいて、海水温度が高い場合は、浸透圧力の目標値を海水温度に応じて減少させる補正を行い、海水温度が低い場合は、浸透圧力の目標値を海水温度に応じて増加させる補正を行う。サーボアンプ24は、この補正に基づいて、サーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を増減して、水圧ポンプ31の吐出圧を調節してRO膜4の逆浸透圧力を目標値に近づけるフィードバック制御を行う。
【0056】
このような構成により、供給される海水の塩分濃度や海水の温度が変化しても、RO膜4の逆浸透圧力が適正値に保たれ、RO膜4の濾過性能を維持することと、動力回収水圧モータ3によって濃縮海水が持つ流体圧力エネルギを有効に回収することを両立できる。特に、第3の実施形態では、可変容量型の水圧ポンプ31の吐出容量を可変させてRO膜4の逆浸透圧力を調整するので、サーボバルブ7の開度により濃縮海水の一部を排出通路14から排出して流量を制御する第1及び第2の実施形態と比較して、エネルギの回収効率を高くできる。
【0057】
図5は、本発明の第4の実施形態の海水淡水化装置104の構成を示す説明図である。
【0058】
図5に示す第4の実施形態では、
図4に示した第3の実施形態に加え、さらに、動力回収水圧モータ3に供給される濃縮海水の流量を調節するため、第1の実施形態における動力回収水圧モータ3に変えて、その容量(モータ押しのけ容積)を変えられる可変容量型の動力回収水圧モータ32を備えた。
【0059】
そして、動力回収水圧モータ32の容量を調節するサーボアクチュエータ16と、このサーボアクチュエータ16の作動を制御するサーボアンプ25と、濃縮海水取出通路12を通過する濃縮海水の流量を検出する流量検出器19とを備えた。
【0060】
前述の第3の実施形態と同様に、サーボアンプ24は、圧力検出器5の検出値及び温度検出器20の検出値に基づいてサーボアクチュエータ17を介して水圧ポンプ31の吐出容量を増減する。
【0061】
そしてさらに、第4の実施形態では、サーボアンプ25が、流量検出器19の検出値に基づいてサーボアクチュエータ16を介して動力回収水圧モータ32の容量をフィードバック制御する。これにより、RO膜4の上流側室21から濃縮海水取出通路12、動力回収水圧モータ32、排出通路13を通って排出される濃縮海水の流量が適正値に保たれ、RO膜4の濾過性能を保つことができる。
【0062】
このような構成より、供給される海水の塩分濃度や温度が変化しても、RO膜4の逆浸透圧力が適正値に保たれ、RO膜4の濾過性能を維持することと、動力回収水圧モータ3によって濃縮海水が持つ流体圧力エネルギを有効に回収することを両立できる。特に、第4の実施形態では、可変容量型の水圧ポンプ31の吐出容量と可変容量型の動力回収水圧モータ32の容量とを共に可変させてRO膜4の浸透圧力を調整するので、サーボバルブ7の開度により濃縮海水の一部を排出通路14から排出して流量を制御する第1及び第2の実施形態と比較してエネルギの回収効率を高くできる。また、海水の供給流量と濃縮海水の排出流量とを調節することで、RO膜4の浸透圧力をきめ細かく調節することができる。
【0063】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。