特許第5912508号(P5912508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912508
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20160414BHJP
   D06M 13/325 20060101ALI20160414BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/325
   D06M13/224
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-279260(P2011-279260)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129933(P2013-129933A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】中山 美穂
(72)【発明者】
【氏名】坂井 隆也
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−508622(JP,A)
【文献】 特開平11−302241(JP,A)
【文献】 特開昭48−006098(JP,A)
【文献】 T. J. MICICH, et al.,Soap-based detergent formulations: XXII. Sulfobetaine derivatives of N-alkylglutaramides and adipamides,Journal of the American Oil Chemists' Society,1977年 6月,54(6),pp.264-266
【文献】 R. LAGERMAN, et al.,Synthesis and performance of ester quaternary biodegradable softeners,Journal of the American Oil Chemists' Society,1994年 1月,71(1),pp.97-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 − D06M 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)成分、及び(B)成分を含有し、(A)成分と(B)成分のモル比が(A)成分/(B)成分=2/8〜4/6である柔軟剤組成物。
(A)成分:一般式(I)で表される化合物
【化1】

〔式中、R1は炭素数11〜35の炭化水素基であり、R2は炭素数3〜6の2価の炭化水素基であり、R3、R4、R5は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子である。A、Bは、同一又は異なって、−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−で表される結合のいずれかであり、X-は陰イオン、nは2〜8の整数を示す。〕
(B)成分:非イオン性界面活性剤
【請求項2】
(A)成分が、前記一般式(I)中のR3、R4、R5のうち、何れか一つが水素原子の化合物である、請求項1記載の柔軟剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数16〜22の1価アルコールから選ばれる少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤である、請求項1又は2記載の柔軟剤組成物。
【請求項4】
(A)成分が、前記一般式(I)中のR1が炭素数15〜21の炭化水素基の化合物である、請求項1〜3の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、前記一般式(I)中のAが−NHCO−又は−OCO−の化合物である、請求項1〜4の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【請求項6】
(A)成分が、前記一般式(I)中のBが−OCO−の化合物である、請求項1〜5の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【請求項7】
(A)成分が、前記一般式(I)中のAが−NHCO−、Bが−OCO−の化合物である、請求項1〜6の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【請求項8】
(A)成分が、前記一般式(I)中のAが−CONH−、Bが−OCO−の化合物である、請求項1〜4の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【請求項9】
(A)成分が、前記一般式(I)中のR1が直鎖アルキル基の化合物である、請求項1〜の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている衣料用柔軟仕上げ剤に用いられている主基剤は、ほとんどがカチオン性界面活性剤であり、その中で最も典型的にはジアルキル型第四級アンモニウム塩、例えばジ硬牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩や、N−メチル−N,N−ビス(長鎖アルカノイルオキシエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、2−[N−[3−アルカノイル(炭素数14−20)アミノプロピル]−N−メチルアミノ]エチルアルカノ(炭素数14−20)エート 塩酸塩などが用いられている。このような状況の中、近年、消費者のエコロジー志向の高まりから、低使用量、低コスト、節水などの要求に対して、新たな柔軟化システムの開発が求められている。
【0003】
そのような要望に対して、新たな柔軟剤組成物として、複数の成分の組み合わせによる柔軟性能の向上が種々検討されている。例えば、3級アミンと非イオン性界面活性剤の組合せ、カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の組み合わせ、又はカチオン性界面活性剤とウレタン樹脂との組み合わせ等が提案されている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−268773号公報
【特許文献2】特開2006−104628号公報
【特許文献3】特開2005−179834号公報
【特許文献4】特開2006−161215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤のように、複数の成分を組み合わせた柔軟基剤は、配合の自由度や経済性などの利点があり、こうした観点から新たな柔軟基剤を見出すことは当業者にとって意義のあることである。
【0006】
本発明の課題は、カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせに基づき、繊維製品に柔軟性を付与できる新たな柔軟剤組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の(A)成分、及び(B)成分を含有し、(A)成分と(B)成分のモル比が(A)成分/(B)成分=2/8〜4/6である柔軟剤組成物に関する。
(A)成分:一般式(I)で表される化合物
【0009】
【化1】
【0010】
〔式中、R1は炭素数11〜35の炭化水素基であり、R2は炭素数3〜6の2価の炭化水素基であり、R3、R4、R5は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子である。A、Bは、同一又は異なって、−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−で表される結合のいずれかであり、X-は陰イオン、nは2〜8の整数を示す。〕
(B)成分:非イオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせに基づき、繊維製品に柔軟性を付与できる新たな柔軟剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、前記一般式(I)で表される化合物である。一般式(I)において、R1は炭素数11〜35の炭化水素基であり、炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。炭化水素基は直鎖でも分岐鎖でも何れでもよい。柔軟性能向上の観点から、R1の炭素数は15〜21が好ましい。R1としては、炭素数11〜35、更に炭素数15〜21のアルキル基又は炭素数11〜35、更に炭素数15〜21のアルケニル基が好ましい。より好ましくは炭素数15〜21の直鎖アルキル基である。
【0013】
また、一般式(I)において、R2は炭素数3〜6の2価の炭化水素基であり、2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基が挙げられ、分岐鎖を有していてもよい。好ましくはアルキレン基である。
【0014】
また、一般式(I)において、R3、R4、R5は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子である。R3、R4、R5のうち、何れか一つが水素原子であることが好ましい。
【0015】
また、一般式(I)において、A、Bは、同一又は異なって、−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−で表される結合のいずれかであり、柔軟性能向上の観点から、Aは−NHCO−、−OCO−、−NHCO−が好ましい。またBは−OCO−が好ましい。Aが−NHCO−で、Bが−OCO−の場合が更に好ましい。
【0016】
また、一般式(I)において、nは2〜8、好ましくは2〜5の整数を示す。
【0017】
また、一般式(I)において、X-は陰イオンであり、柔軟剤に適合する陰イオンから選定され、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)のハロゲンイオンや、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンなどのアルキル(例えば炭素数1〜3)硫酸イオン、乳酸イオン、酪酸イオンなどの有機酸イオンなどが挙げられる。一般式(I)において、R3、R4、R5が全てメチル基の場合には、X-は、メチル硫酸イオン、塩素イオンが好ましく、塩素イオンが更に好ましい。R3、R4、R5のうち、何れか一つが水素原子である場合には、X-は、塩素イオンが好ましい。
【0018】
(A)成分は、例えば、下記工程1及び工程2及び工程3を有する製造方法により製造することができる。
工程1:下記一般式(II)で示されるアミンと、環状ラクタム、環状ラクトン又は環状酸無水物との開環反応により、末端に水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有し、エステル又はアミドで分断された構造を持つアミンを得る工程
【0019】
【化2】
【0020】
〔式中、R3'、R4'は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子である。Dは水酸基又はアミノ基であり、nは2〜8の整数を示す。〕
【0021】
工程2:工程1で得られたアミンの末端が水酸基又はアミノ基の場合には、炭素数12〜36の長鎖脂肪酸又はその誘導体(例えば脂肪酸ハロゲン化物)で、アミド化又はエステル化し、また、工程1で得られたアミンの末端がカルボキシル基の場合には、炭素数11〜35の高級アルコール又は炭素数11〜35の炭化水素基を有するアミンで、エステル化又はアミド化し、モノ長鎖アミド型アミン又はその酸塩、モノ長鎖エステル型アミン又はその酸塩を得る工程
【0022】
工程3:工程2において、得られた化合物がモノ長鎖アミド型アミン又はモノ長鎖エステル型アミンである場合(モノ長鎖アミド型アミンの酸塩又はモノ長鎖エステル型アミンの酸塩でない場合)、その化合物を有機酸又は無機酸で中和又は四級化することによって、モノ長鎖アミド型アミンの酸塩もしくはモノ長鎖エステル型アミンの酸塩、又はモノ長鎖アミド型アミンの四級塩もしくはモノ長鎖エステル型アミンの四級塩を得る工程
【0023】
本発明の(A)成分で示すような特有構造の化合物を利用することにより、高い柔軟性が実現できる。本発明の(A)成分は生分解性に優れ、環境への影響が少ない基剤であることが示唆されるため、環境に配慮できるものとなる。
【0024】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、非イオン性界面活性剤である。詳しくは、(B)成分としては下記の化合物が挙げられる。
(B1)脂肪酸多価アルコールエステル
(B2)高級アルコール多価アルコールエーテル
(B3)高級アルコール
(B4)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
(B5)窒素に連結する炭素数が8〜36の炭化水素基を有する長鎖アミン化合物のアルキレンオキシド付加物
【0025】
(B1)としては、3〜6価の多価アルコール(好ましくは炭素数2〜6)と炭素数16〜22の脂肪酸とのエステル、具体的には、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0026】
(B2)としては、3〜6価の多価アルコール(好ましくは炭素数2〜6)と炭素数16〜22の高級アルコールとのエーテル、具体的には、アルキルグルコシド、アルキルガラクトシド等のアルキルグリコシド、アルキルポリグルコシド、アルキルポリガラクトシド等のアルキルポリグリコシド、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0027】
(B3)としては、ステアリルアルコール等の炭素数16〜22の1価アルコールが挙げられる。
【0028】
(B4)としては、炭素数8〜36、更に炭素数12〜18のアルキル基を有し、アルキレンオキシドの平均付加モル数が1〜10、更に1〜5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。アルキレンオキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドがより好ましい。
【0029】
(B5)としては、窒素に連結する炭素数が8〜36、更に12〜18の炭化水素基、好ましくはアルキル基を有する長鎖アミン化合物のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。アルキレンオキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられ、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、1〜10、更に1〜5が好ましい。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドがより好ましい。
【0030】
(B)成分としては、そのゲル液晶転移点が室温(20℃)以上である化合物(室温にて固体である化合物)が好ましく、融点が40℃以上である非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0031】
(B)成分は、(B1)脂肪酸多価アルコールエステル及び(B3)高級アルコールから選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数16〜22の1価アルコールから選ばれる少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤がより好ましい。更にはソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタンと炭素数16〜22の脂肪酸とのエステルがより好ましく、炭素数18の脂肪酸とのエステルがより好ましい。
【0032】
(B)成分が3〜6価の多価アルコールと炭素数16〜22の脂肪酸とのエステルの場合、柔軟性付与の観点から、エステル化度が1〜3である化合物が好ましく、エステル化度が1の化合物(モノエステル)を(B)成分として含むことがより好ましい。
【0033】
(B)成分は市販品を用いることができる。脂肪酸多価アルコールエステル、例えば3〜6価の多価アルコールと炭素数16〜22の脂肪酸とのエステルは、エステル化度の異なる化合物の混合物としても市販されており、本発明の(A)成分/(B)成分モル比を満たす限り、そのような混合物を(B)成分として使用してもよい。(B)成分を複数用いる場合の(B)成分のモル数は、各化合物のモル数の総和を採用する。
【0034】
<柔軟剤組成物>
本発明の柔軟剤組成物は、柔軟性能の観点から、(A)成分と(B)成分のモル比が、(A)成分/(B)成分=2/8〜4/6であり、好ましくは3/7〜4/6である。他成分を考慮した配合の自由度や経済性の観点からは、好ましくは2/8〜3/7である。また、水を含有する液体組成物では、このモル比の範囲では、組成物(分散液)の安定性も良好となる。このモル比は、配合時の仕込量に基づくものであってもよい。
【0035】
また、本発明の柔軟剤組成物は、(A)成分を1.5〜20質量%、更に1.5〜10質量%含有することが好ましい。組成物の粘度やハンドリング性の観点から、(A)成分を1.5質量%以上、また、20質量%以下、含有することが好ましい。また、(B)成分を3〜40質量%、更に3〜20質量%含有することが好ましい。組成物の粘度やハンドリング性の観点から、(B)成分を3質量%以上、また、40質量%以下、含有することが好ましい。
【0036】
本発明の柔軟剤組成物には、(A)成分と(B)成分以外の無機又は有機の塩を少量用いることもできる。塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、グリコール酸カリウム、乳酸ナトリウムなどがあげられる。特に硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが好ましい。更に好ましくは、塩化カルシウム、塩化マグネシウムである。またこれらの配合量は、0〜2重量%が望ましく、更に0.01〜0.3重量%が好ましい。
【0037】
本発明の柔軟剤組成物は、水を含有する液体組成物であることが好ましい。水を含有する場合、本発明の柔軟剤組成物の20℃におけるpHは、1.5〜6であることが好ましい。より好ましいpHは、1.5〜5であり、更に好ましくは2〜4.5である。pH調整には、任意の無機又は有機の酸及びアルカリを使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、ジアルキル硫酸、アルキル硫酸、ジアルキル炭酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸などのカルボン酸、ヒドロキシエタンジホスフォン酸、トリポリリン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−シアノエチル)アミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、2,3−ジヒドロキシ−N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン等の短鎖アミン化合物又は、それらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。また、上記の塩も用いることができる。アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩なども使用することができる。このうち、塩酸、メチル硫酸、水酸化ナトリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0038】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分、(B)成分、任意の添加剤と、分散媒である水とを任意の大きさの容器に計りとり、目的とする濃度に調整した後、用いた基剤の融点以上に加熱した条件下において、所定時間、例えば10分から30分攪拌・混合した後、常温にて攪拌しながら放冷するという簡便な手法で調製することが出来る。この調製法に関して、基剤の溶解順序や用いる器具に制約は無く、任意の調製法を用いることが出来る。
【0039】
本発明の柔軟剤組成物は、イソプロパノール、エタノール等の有機溶剤、香料〔例えば、特開平8−113871号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ〕、シリコーン化合物、染料等を含有することができる。
【0040】
本発明の柔軟剤組成物は、衣類、寝具などの繊維製品用として好適である。本発明の柔軟剤組成物は、これと水とを含む処理媒体、例えば洗濯時の濯ぎ水などに添加した処理液を、繊維製品と接触させることで使用されるが、繊維製品の処理にあたっては、繊維製品の質量と本発明の組成物中の(A)成分と(B)成分の合計質量とが、〔(A)成分と(B)成分の合計質量〕/繊維製品の質量=0.5/1000〜3/1000、更に0.5/1000〜1/1000となる質量比で用いるのが好ましい。
【0041】
本発明の組成物を用いた繊維の柔軟処理では、繊維上に(A)成分と(B)成分の混成膜が形成されていると推定される。この混成膜において(A)成分が吸着アンカー成分として繊維上に全ての基剤を留める働きをし、(B)成分主体の吸着膜を繊維上に形成させることで柔軟性能が発揮すると考えている。
【0042】
本発明の態様を以下に例示する。
<1> 次の(A)成分、及び(B)成分を含有し、(A)成分と(B)成分のモル比が(A)成分/(B)成分=2/8〜4/6、好ましくは3/7〜4/6である柔軟剤組成物。
(A)成分:一般式(I)で表される化合物
【0043】
【化3】
【0044】
〔式中、R1は炭素数11〜35の炭化水素基であり、R2は炭素数3〜6の2価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基又はアルケニレン基、より好ましくはアルキレン基であり、R3、R4、R5は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子である。A、Bは、同一又は異なって、−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−で表される結合のいずれかであり、X-は陰イオン、好ましくはハロゲンイオン及びアルキル(例えば炭素数1〜3)硫酸イオンから選ばれる陰イオン、nは2〜8、好ましくは2〜5の整数を示す。〕
(B)成分:非イオン性界面活性剤
【0045】
<2> (A)成分が、前記一般式(I)中のR3、R4、R5のうち、何れか一つが水素原子の化合物である、前記<1>記載の柔軟剤組成物。
【0046】
<3> (A)成分が、前記一般式(I)中のR3、R4、R5のうち、何れか一つが水素原子の化合物であり、X-が塩素イオンの化合物である、前記<1>又は<2>記載の柔軟剤組成物。
【0047】
<4> (A)成分が、前記一般式(I)中のR1が炭素数15〜21の炭化水素基の化合物である、前記<1>〜<3>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0048】
<5> (A)成分が、前記一般式(I)中のR1がアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基、より好ましくは直鎖アルキル基の化合物である、前記<1>〜<4>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0049】
<6> (A)成分が、前記一般式(I)中のAが−NHCO−、−OCO−、−NHCO−で表される結合のいずれかの化合物である、前記<1>〜<5>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0050】
<7> (A)成分が、前記一般式(I)中のBが−OCO−の化合物である、前記<1>〜<6>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0051】
<8> (A)成分が、前記一般式(I)中のAが−CONH−、Bが−OCO−の化合物である、前記<1>〜<7>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0052】
<9>
(B)成分が、下記(B1)〜(B5)から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<8>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
(B1)脂肪酸多価アルコールエステル
(B2)高級アルコール多価アルコールエーテル
(B3)高級アルコール
(B4)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
(B5)窒素に連結する炭素数が8〜36の炭化水素基を有する長鎖アミン化合物のアルキレンオキシド付加物
【0053】
<10>
(B)成分が、下記(B1)及び(B3)から選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<9>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
(B1)脂肪酸多価アルコールエステル
(B3)高級アルコール
【0054】
<11>
(B)成分が、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数16〜22の1価アルコールから選ばれる少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<10>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0055】
<12> (A)成分を1.5〜20質量%、更に1.5〜10質量%、(B)成分を3〜40質量%、更に3〜20質量%含有する、前記<1>〜<11>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0056】
<13> 水を含有する、前記<1>〜<12>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0057】
<14> 20℃におけるpHが、1.5〜6、更に1.5〜5、より更に2〜4.5である、前記<1>〜<13>の何れか1項記載の柔軟剤組成物。
【0058】
<15> 前記<1>〜<14>の何れか1項記載の柔軟剤組成物を繊維製品と接触させる繊維製品の柔軟処理方法。
【0059】
<16> 前記柔軟剤組成物中の(A)成分と(B)成分の合計質量と繊維製品の質量との質量比が、〔(A)成分と(B)成分の合計質量〕/繊維製品の質量=0.5/1000〜3/1000、更に0.5/1000〜1/1000である、前記<15>記載の繊維製品の柔軟処理方法。
【0060】
<17> 前記柔軟剤組成物と水とを含有する処理媒体を繊維製品と接触させる、前記<15>又は<16>記載の繊維製品の柔軟処理方法。
【実施例】
【0061】
製造例1
N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン440gを丸底フラスコに入れ、90℃下1時間で、ε−カプロラクトン378gを滴下し3時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A1’)で示される中間体〔化合物(A1’)〕を得た。1H-NMRによるアミド結合の生成確認と、酸価(<0.3mgKOH/g)、アミン価(254.2mgKOH/g)、水酸基価(268.7mgKOH/g)、水分率(0.01%)の測定によりに中間体〔化合物(A1’)〕である事を同定した。
【0062】
合成した化合物(A1’)163gとヘキサン250gを丸底フラスコに入れ、50℃において塩化ステアロイル230gを滴下し、50℃〜70℃にて3時間反応させた後、ヘキサン中での再結晶により式(A1)で表される化合物(A1)を得た(348g、2段階収率84%)。1H-NMRによるエステル結合の生成確認と、酸価(107.4mgKOH/g)、アミン価(1.3mgKOH/g)、水酸基価(<0.3mgKOH/g)、水分率(0.1%)の測定により式(A1)で表される化合物(A1)である事を同定した。なお、下記式中のMeはメチル基を意味する(以下同様)。
【0063】
【化4】
【0064】
【化5】
【0065】
製造例2
N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン440gを丸底フラスコに入れ、90℃下1.5時間で、γ−ブチロラクトン259gを滴下し90℃〜115℃で2時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A2’)で示される中間体〔化合物(A2’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A2’)210gとヘキサン300gを丸底フラスコに入れ、60℃において塩化ステアロイル365gを滴下し、50℃〜80℃にて3時間反応させた後、ヘキサン中での再結晶により精製し式(A2)で表される化合物(A2)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
製造例3
N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン68gを丸底フラスコに入れ、80℃下0.5時間で、δ−バレロラクトン51gを滴下し80℃で3時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A3’)で示される中間体〔化合物(A3’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A3’)40gとヘキサン80gとアセトン80gを丸底フラスコに入れ、60℃において塩化ステアロイル66gを滴下し、50℃〜60℃にて1時間反応させた後、ヘキサン・アセトン混合溶媒を用いた再結晶により精製し式(A3)で表される化合物(A3)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
製造例4
N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン130gを丸底フラスコに入れ、70℃下0.1時間で、γ−バレロラクトン105gを滴下し80℃で2.5時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A4’)で示される中間体〔化合物(A4’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A4’)78gとヘキサン130gとアセトン20gを丸底フラスコに入れ、60℃において塩化ステアロイル135gを滴下し、60℃にて40分反応させた後、ヘキサン・アセトン混合溶媒を用いた再結晶により精製し式(A4)で表される化合物(A4)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
製造例5
N,N−ジメチルエタノールアミン162gを丸底フラスコに入れ、80℃下20分間で、ε−カプロラクトン172gを滴下し65℃〜70℃で3時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A5’)で示される中間体〔化合物(A5’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A5’)100gとヘキサン100gを丸底フラスコに入れ、70℃において塩化ステアロイル163gを滴下し、70℃にて2時間反応させた後、ヘキサン・アセトン混合溶媒を用いた再結晶により精製し式(A5)で表される化合物(A5)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
製造例6
N,N−ジメチルプロパノールアミン170gを丸底フラスコに入れ、80℃下30分間で、ε−カプロラクトン156gを滴下し80℃で3時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A6’)で示される中間体〔化合物(A6’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A6’)100gとヘキサン100gを丸底フラスコに入れ、70℃において塩化ステアロイル135gを滴下し、70℃〜75℃にて3時間反応させた後、ヘキサン中での再結晶により精製し式(A6)で表される化合物(A6)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
製造例7
製造例1の式(A1’)で示される中間体〔化合物(A1’)〕102gとイソプロパノール30gを加圧反応容器に入れ、メチルクロライドガス13gを加えた後、80℃にて5時間反応させ、式(A7)で表される化合物(A7)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、乾燥減量(%)、水分率(%)の測定により行った。
【0081】
【化16】
【0082】
製造例8
N,N−ジメチルエタノールアミン156gを丸底フラスコに入れ、80℃下30分間で、グルタル酸無水物100gを滴下し80度で3時間反応させた後、過剰量の原料アミンを減圧蒸留により除去し、式(A8’)で示される中間体〔化合物(A8’)〕を得た。NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定にて生成物の確認を行った後、合成した化合物(A8’)100gとステアリルアルコール150gを120℃、減圧下にて5時間反応させた後、ヘキサン中での再結晶により精製したものを塩酸水溶液中でアミン酸塩とし、凍結乾燥機にて一晩乾燥させ、(A8)で表される化合物(A8)を得た。生成物の同定は、NMR及び酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、水分率(%)の測定により行った。
【0083】
【化17】
【0084】
【化18】
【0085】
試験例1〜11及び比較例1〜3
(A)成分と(B)成分とを表1、2の組成で50mLガラス製バイアルに量り取り、イオン交換水を用いて総基剤濃度5質量%となるよう調整した。60℃〜70℃温浴にて10分〜30分攪拌・溶解させた後に常温下で攪拌・放冷することで、各種組成の液体柔軟剤組成物を得た。得られた液体柔軟剤組成物を用いて、以下の方法で柔軟性を評価した。結果を表1、2に示す。なお、表中の液体柔軟剤組成物のpH(20℃)は何れも2〜3であった。
【0086】
<柔軟性の評価方法>
1) 評価用タオル
市販の木綿タオル(武井タオル(株)製T.W220、白色)を、非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマルゲン108)で洗濯、濯ぎを5回繰り返した後に乾燥することで、糊剤を除去したものを評価用のタオルとした。
【0087】
2) 評価条件
洗濯機に、20℃の水道水4.5Lを投入し、タオル2枚(合計150g)を、3gの液体柔軟剤組成物〔(A)成分と(B)成分の合計が、タオル質量に対して0.1質量%〕を用いて、浴比30L/kg(対タオル質量)で、攪拌下、5分間処理した。処理後のタオルを25℃、40%RHの恒温恒湿室にて24時間乾燥させた。なお、表1、2の液体柔軟剤組成物には、分散補助剤として0.01%の塩化カルシウムを使用した。
【0088】
3)柔軟性評価基準
まず、市販の柔軟剤において柔軟基剤として用いられている化合物のうち、代表的な2つの化合物を用いて、前記「2)」の方法(ただし、0.1質量%は当該化合物の濃度とする)で木綿タオルを処理し、木綿タオルを8つ折りにして手で掴んだ時のふんわり感により柔軟性を10人のパネラーにより評価した。ここでは、対照化合物1として、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社製品)と、対照化合物2として、「テトラニルL1/90」〔花王株式会社、N−メチル−N,N−ビス(長鎖アルカノイルオキシエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートを主体とする混合物〕を用いた。その結果、柔軟性は、対照化合物1で処理した木綿タオル(標品1という)が最もよく、次いで対照化合物2で処理した木綿タオル(標品2という)、未処理の木綿タオル(標品3という)の順であった。
【0089】
表1、2の液体柔軟剤組成物で処理したタオルの柔軟性を上記と同様に評価し、標品1〜3と対比して、下記の基準により評価した。
5:標品1と同等の柔らかさ
4:標品1未満かつ標品2を超える柔らかさ
3:標品2と同等の柔らかさ
2:標品2未満かつ標品3を超える柔らかさ
1:標品3同等の柔らかさ
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1、2に示すように、(A)成分と(B)成分とを所定のモル比で併用することにより、従来の柔軟基剤と同等以上の柔軟性を有する液体柔軟剤組成物が得られることがわかる。
【0093】
比較化合物A1〜A3は以下のものである。
【0094】
【化19】
【0095】
比較化合物(A1)は、市販のN−メチルN,N−ジプロパノールアミンとステアリン酸を用いたエステル化に続く塩化メチルを用いたアミンの四級化により得、比較化合物(A2)は市販のN,N−ジメチルエタノールアミンとステアリン酸を用いたエステル化に続く塩酸中和によって得、比較化合物(A3)は市販のジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社)を用いた。
【0096】
また、(B)成分は以下のものである。
・ソルビタンモノステアレート:花王株式会社 レオドールSP−S10V(融点53.1℃)
・ペンタエリスリトールモノステアレート:花王株式会社 エキセパールPE−MS(融点51〜53℃)
・グリセリルモノステアレート:花王株式会社 レオドールMS−50(融点60℃)
・ステアリルアルコール:東京化成工業株式会社(融点59℃)