(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度が、40°〜50°であることを特徴とする請求項1に記載の外力検出方法。
前記圧電板に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電板の下面側における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けたことを特徴とする請求項1に記載の外力検出方法。
前記目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度が、40°〜50°であることを特徴とする請求項5または6に記載の外力検出装置。
前記圧電板に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電板の下面側における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設けたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の外力検出装置。
【背景技術】
【0002】
系に作用する外力として、加速度に基づく物体に作用する力、圧力、流速、磁力、静電気力などがあるが、これらの外力を正確に測定することが必要な場合が多い。例えば自動車を開発する段階で自動車が物体に衝突したときに座席における衝撃力を測定することが行われている。また地震時の振動エネルギーや振幅を調べるためにできるだけ精密に揺れの加速度などを調べる要請がある。
【0003】
更にまた液体や気体の流速を正確に調べてその検出値を制御系に反映させる場合や、磁石の性能を測定する場合なども外力の測定例として挙げることができる。
このような測定を行うにあたって、できるだけ簡素な構造でありかつ高精度に測定することが要求されている。
【0004】
特許文献1には、圧電フィルムを片持ちで支持し、周囲の磁力の変化により圧電フィルムが変形し、圧電フィルムに流れる電流が変化することが記載されている。
また特許文献2には、容量結合型の圧力センサーと、この圧力センサーの配置領域に対して仕切られた空間に配置された水晶振動子とを設け、これら圧力センサーの可変容量と水晶振動子とを並列に接続し、圧力センサーにおける容量が変化することにより水晶振動子の反共振点が変わることで圧力を検出することが記載されている。
これら特許文献1、2は本発明とは原理が全く異なる。
特許文献3には、装置内部にて片持ち支持された圧電振動素子を、その自由端が内部底面に触れない程度に自由端側をやや下げた状態で固定する発明が記載されているが、これは装置の内部空間を有効活用するための工夫と考えられ、本発明とは目的が異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、圧電板に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外力検出方法は、
一端側が基台に支持された片持ちの圧電板と、
この圧電板を振動させるために、当該圧電板の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
前記一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電板において前記一端側から離れた部位に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電板とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、前記圧電板の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、を備えたセンサーを用い、
目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度が30°〜60°となるように前記センサーを設定する工程と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を周波数情報検出部により検出する工程と、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報に基づき、前記圧電板に作用する外力を評価する工程と、を含むことを特徴とする。
上述した目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度は、40°〜50°であると望ましい。
【0008】
本発明の外力検出装置は、
圧電板に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
一端側が基台に支持された片持ちの前記圧電板と、
この圧電板を振動させるために、当該圧電板の一面側及び他面側に夫々設けられた一方の励振電極及び他方の励振電極と、
前記一方の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電板の他端側に設けられ、前記他方の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の可動電極と、
前記圧電板とは離間して、前記可動電極に対向するように設けられると共に前記発振回路に接続され、圧電板の撓みにより前記可動電極との間の容量が変化してこれにより可変容量を形成する固定電極と、
前記発振回路の発振周波数に対応する周波数情報である信号を検出するための周波数情報検出部と、
目的とする測定対象である外力の方向を表示した方向表示部と、を備え、
前記目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度が30°〜60°に設定され、
前記発振回路から前記一方の励振電極、前記他方の励振電極、前記可動電極及び前記固定電極を経て前記発振回路に戻る発振ループが形成され、
前記周波数情報検出部にて検出された周波数情報は、圧電板に作用する外力を評価するためのものであることを特徴とする。
【0009】
また本発明の方法あるいは装置において、前記圧電板に外力が加わったときに励振電極が設けられている部位が撓むのを防止するために、前記圧電板の下面側における励振電極と可動電極との間の部位を支持する支持部を前記基台に設ける構成とすることができる。この場合、前記支持部の先端と圧電板とは例えば固着材により互いに固定されている
更に前記容器内における固定電極が設けられている側の内壁部に、前記圧電板が過剰に撓んだときに当該圧電板の他端よりも一端側に寄った部位を接触させて当該部位の撓みを規制し、これにより圧電板の他端が容器の内壁部に衝突することを避けるための突起部を備えた構成としてもよい。この場合、前記突起部における前記圧電板に対向する面について、圧電板の長さ方向の縦断面の形状が山形である構成とすることができる。
【0010】
前記可変容量形成用の可動電極は、圧電板の一面側及び他面側のいずれに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
本発明の好ましい一態様としては、前記圧電板、励振電極、可動電極及び固定電極からなる組として、第1の組及び第2の組を設け、
第1の組及び第2の組に夫々対応して発振回路を設け、
前記周波数情報検出部は、前記第1の組に対応する発振周波数及び前記第2の組に対応する発振周波数の差分に応じた信号を求める機能を有する構成を挙げることができる。この構成においては、第1の組及び第2の組に対して発振回路を共通化することもでき、この場合、第1の組の発振ループと第2の組の発振ループとが交互に形成されるように、発振回路とループとの間に切替えスイッチ部を設ければよい。
また前記目的とする測定対象である外力の方向と直交する面と、前記可動電極における前記圧電板の長さ方向とのなす角度は、40°〜50°であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、圧電板に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、圧電板側の可動電極とこの可動電極に対向する固定電極との間の距離が変わり、このため両電極間の容量が変わり、この容量変化と圧電板の撓みの度合とを圧電板の発振周波数の変化として捉えている。更に、目的とする測定対象の外力の方向と直交する方向に対して圧電板を傾けて測定することにより、測定感度を向上させている。圧電板の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、圧電板に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の基本構成]
本発明を加速度検出装置に適用した実施形態を説明する前に、その前提となる基本構成について述べておく。
図1は加速度検出装置のセンサー部分である外力検出センサーに相当する加速度センサーを示す図であり、
図1中、1は直方体形状の密閉型の例えば水晶からなる容器であり、内部に不活性ガス例えば窒素ガスが封入されている。この容器は基台をなす下部分とこの下部分に周縁部にて接合される上部分とから構成されている。なお容器1としては必ずしも密閉型の容器に限定されるものではない。容器1内には、水晶からなる台座11が設けられ、この台座11の上面に導電性接着剤10により圧電板である水晶板2の一端側が固定されている。即ち水晶板2は台座11に片持ち支持されている。水晶板2は、例えばXカットの水晶を短冊状に形成したものであり、厚さが例えば数十μmオーダ、例えば0.03mmに設定されている。従って水晶板2に交差する方向に加速度を加えることにより、先端部が撓む。
【0014】
水晶板2は、
図2(a)に示すように上面の中央部に一方の励振電極31が設けられ、また
図2(b)に示すように下面における、前記励振電極31と対向する部位に他方の励振電極41が設けられている。上面側の励振電極31には、帯状の引き出し電極32が接続され、この引き出し電極32は、水晶板2の一端側で下面に折り返されて、導電性接着剤10と接触している。台座11の上面には金属層からなる導電路12が設けられ、この導電路12は、容器1を支持している絶縁基板13を介して、絶縁基板13上の発振回路14の一端に接続されている。
【0015】
下面側の励振電極41には、帯状の引き出し電極42が接続され、この引き出し電極22は、水晶板2の他端側(先端側)まで引き出され、可変容量形成用の可動電極5に接続されている。一方容器1側には、可変容量形成用の固定電極6が設けられている。容器1の底部にはコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられている。この突起部7は平面図で見ると四角形である。
【0016】
固定電極6はこの突起部7において、可動電極5と概ね対向するように設けられている。水晶板2は過大に触れて先端が容器1の底部に衝突すると、「劈開」という現象により結晶の塊で欠けやすいという性質がある。このため水晶板2が過大に触れたときに可動電極5よりも水晶板2の基端側(一端側)の部位が突起部7に衝突するように突起部の形状が決定されている。
図1等では実際の装置とは少しイメージを変えて記載してあるが、実際に大きく容器1を振ると、水晶板2の先端よりも中央寄りの部位が突起部7に衝突する。
【0017】
固定電極6は、突起部7の表面及び絶縁基板13を介して配線された導電路15を介して発振回路14の他端に接続されている。
図3は加速度センサーの配線の接続状態を示し、
図4は等価回路を示している。L1は水晶振動子の質量に対応する直列インダクタンス、C1は直列容量、R1は直列抵抗、C0は電極間容量を含む実効並列容量、CLは発振回路14の負荷容量である。上面側の励振電極31及び下面側の励振電極41は発振回路14に接続されるが、下面側の励振電極41と発振回路14との間に、前記可動電極5及び固定電極6の間に形成される可変容量Cvが介在することになる。
【0018】
水晶板2の先端部には錘を設けて、加速度が加わったときに撓み量が大きくなるようにしてもよい。この場合、可変電極5の厚さを大きくして錘を兼用してもよいし、水晶板2の下面側に可変電極5とは別個に錘を設けてもよいし、あるいは水晶板2の上面側に錘を設けても良い。
ここで国際規格IEC 60122−1によれば、水晶発振回路の一般式は次の(1)式のように表される。
【0019】
FL=Fr×(1+x)
x=(C1/2)×1/(C0+CL) ……(1)
FLは、水晶振動子に負荷が加わったときの発振周波数であり、Frは水晶振動子そのものの共振周波数である。
【0020】
本実施形態では、
図3及び
図4に示されるように、水晶板2の負荷容量は、CLにCvが加わったものである。従って(1)式におけるCLの代わりに(2)式で表されるyが代入される。
【0021】
y=1/(1/Cv+1/CL) ……(2)
従って水晶板2の撓み量が状態1から状態2に変わり、これにより可変容量CvがCv1からCv2に変わったとすると、周波数の変化ΔFLは、(3)式で表される。
【0022】
dFL=FL1−FL2=A×CL
2×(Cv2−Cv1)/(B×C)…(3)
ここで、
A=C1×Fr/2
B=C0×CL+(C0+CL)×Cv1
C=C0×CL+(C0+CL)×Cv2
である。
【0023】
また水晶板2に加速度が加わっていないときのいわば基準状態にあるときにおける可動電極5及び固定電極6の間の離間距離をd1とし、水晶板2に加速度が加わったときの前記離間距離をd2とすると、(4)式が成り立つ。
【0024】
Cv1=S×ε/d1
Cv2=S×ε/d2 ……(4)
ただしSは可動電極5及び固定電極6の対向領域の面積、εは比誘電率である。
d1は既知であることから、dFLとd2とが対応関係にあることが分かる。
【0025】
このような実施形態のセンサー部分である加速度センサーは、加速度に応じた外力が加わらない状態においても水晶板2が若干撓んだ状態にある。なお水晶板2が撓んだ状態にあるか水平姿勢が保たれているかは、水晶板2の厚さなどに応じて決まってくる。
そしてこのような構成の加速度センサーを例えば横揺れ検出用の加速度センサーと縦揺れ検出用の加速度センサーとを用い、前者は水晶板2が垂直になるように設置され、後者は水晶板2が水平になるように設置される。
【0026】
そして地震が発生してあるいは模擬的な振動が加わると、水晶板2が
図1の鎖線で示すようにあるいは
図3に実線で示すように撓む。振動が加わらない状態において周波数情報検出部である周波数検出部100により検出した周波数をFL1、振動(加速度)が加わった場合の周波数をFL2とすると、周波数の差分FL1−FL2は(3)式で表される。本発明者は(FL1−FL2)/FL1と、加速度との関係を調べて、
図5に示す関係を得ている。従って前記周波数の差分を測定することにより加速度が求まることが裏付けられている。
【0027】
図3中、101は例えばパーソナルコンピュータからなるデータ処理部であり、このデータ処理部101は、周波数検出部100から得られた周波数情報例えば周波数に基づいて、水晶板2に加速度が加わらないときの周波数f0と加速度が加わったときの周波数f1との差を求め、この周波数差と加速度とを対応付けたデータテーブルを参照して加速度を求める機能を有する。周波数情報としては、周波数差に限らず、周波数の差分に対応する情報である周波数の変化率[(f1−f0)/f0]であってもよい。
【0028】
図1に示す構成によれば、水晶板2に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、水晶板2側の可動電極5とこの可動電極5に対向する固定電極6との間の距離が変わり、両電極5、6間の容量が変わる。このため、この容量変化と水晶板2の変形とが水晶板2の発振周波数の変化として現れる。この結果、水晶板2の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できるので、水晶板2に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
[発明の実施形態]
本発明の実施形態では、
図6に示すように、測定対象となる、予定している(目的としている)外力の加わる方向と直交する面Pに対して、外力が加わる前における水晶板2の長さ方向に沿った可動電極5の向き(面Pと可動電極5とのなす角度θ)が30°〜60°であることが望ましく、40°〜50°であることがより一層望ましい。
【0029】
図7は、角度θを15°から75°まで変えて、前記面Pに直交する方向に同じ加速度を水晶板2に対して加えたときの発振周波数の値である。横軸の0°はθ=45°である。
図7の結果から分かるように、これら各プロットから発振周波数と角度θとの関係は、放物線を描いていることが推測され、従って角度θが30°〜60°(横軸の値としては、−15°〜+15°)であれば感度が大きく、角度θが40°〜50°(横軸の値としては、−5°〜+5°)であればより一層感度が大きいことが分かる。
【0030】
このような結果が出た理由は、以下のように推測される。加速度センサー200を傾けると、傾斜角度θが大きくなるにつれて、外力における水晶板2を撓ませる力成分(水晶板2の厚み方向の力成分)は減少し、外力における水晶板2の長手方向の力成分は増加する。このため、角度θを0°〜90°の間で変えて同じ大きさの外力を検出すると、角度θが大きくなるにつれて可変容量Cvの変化量が小さくなるため、角度θを大きくすることは発振周波数の変化量が小さくなる要因となる。しかしその一方で、角度θが大きくなるにつれて水晶板2の長手方向の応力が増加するため、角度θを大きくすることは発振周波数が大きくなる要因ともなる。角度θが0°〜45°の範囲では、外力における長手方向の力成分による要因のほうが厚み方向の力成分による要因よりも検出される発振周波数に対する影響が大きく、角度θが45°〜90°ではその逆となるため、角度θと発振周波数変化量の関係は、角度θが45°のときに発振周波数の変化量が極大となる放物線状になるものと考えられる。
【0031】
水平方向の加速度を調べる場合には、
図6の加速度センサーを90度回転させた状態で取り付ければよい。また
図8に示すように水晶板2を上向きに傾けてもよく、この場合にも前記面Pに対して水晶板2がなす角θは、例えば30°〜60°、より好ましくは40°〜50°に設定される。
【0032】
また
図9に示すように、
図1に示すような水晶板2が容器1の底部取り付け面に対して水平に設けられた加速度センサー200を取り付け部材80を介して支持部材8に傾斜して固定することにより、前記面Pに対して傾斜をつけてもよい。この例では、
図10に示すように、前記面Pに対して角度θ傾斜している取り付け部材80のセンサー取り付け面に、加速度センサー200を固定することにより、前記面Pに対して角度θをつけている。この場合においても水晶板2と面P(
図9中矢印で示している測定対象となる力の加わる方向に対して垂直な面)とのなす角度θが既述の角度範囲であることが望ましく、こうすることで高い感度が得られる。
【0033】
面Pとは、例えば垂直方向の加速度を測定しようとする場合には、水平面となる。また取り付け部材80には
図9に示すように矢印84が表示されており、この矢印84の表示は測定対象となる外力の方向を特定するためのものである。例えば、この矢印84に表示された方向と可動電極5の方向とが45°をなしており、この矢印84に表示された方向を外力の方向に合わせるように支持部材8を設置する。
【0034】
図11に示すように、加速度センサー200を回動部材81を介して支持部材8に固定することにより、角度θをつけてもよい。この場合、外力の加わる方向に合わせて簡単に角度θを調整することができる。
【0035】
図12に加速度センサーの他の例を示す。この
図12に示す加速度センサー200は、既述の
図9及び
図10に示すように、取り付け部材80の上に搭載され、面Pに対して角度θ傾斜して支持部材8に取り付けられる。この実施形態は、既述の水晶板2、励振電極31、34、可変電極5、固定電極6及び発振回路14の組を2組設けた点が前述の基本構成と異なる。301は容器1の下側を構成する、基台をなす下部分であり、302は容器1の上側をなす蓋体をなす上部分である。水晶板2及び発振回路14について、一方の組の部品には符号「A」を添え、他方の組の部品には符号「B」を添えている。
図12では、一方側の水晶板2が示されており、側面から見た図としては
図1と同じである。
図12の圧力センサーの内部を平面的に見ると、
図13に示すように第1の水晶板2Aと第2の水晶板2Bとが横に平行に配置されている。
【0036】
これら水晶板2A、2Bは同一の構造であるため、一方の水晶板2Aについて説明すると、水晶板2Aの一面側(上面側)において一端側から幅の狭い引き出し電極32が他端側に向かって伸び、当該引き出し電極32の先端部に一方の励振電極31が角形形状に形成されている。そして水晶板2Aの他面側(下面側)には、
図13及び
図14に示すように一方の励振電極31に対向して他方の励振電極41が形成され、当該励振電極41における水晶板2Aの先端側に向かって幅の狭い引き出し電極42が伸びている。更にこの引き出し電極42の前記先端側には短冊状の可変容量形成用の可動電極5が形成されている。これら電極31等は、導電膜例えば金属膜により形成されている。
【0037】
容器1の底部には、
図1と同様にコンベックス状の水晶からなる突起部7が設けられているが、突起部7の横幅は、2枚の水晶板2A、2Bの配置に対応した大きさに設定されている。即ち、突起部7は2枚の水晶板2A、2Bの投影領域を含む大きさに設定されている。そして
図13及び
図15に示すように突起部7に、水晶板2Aの可動電極5及び水晶板2Bの可動電極5ごとに短冊状の固定電極6が設けられている。なお、
図12等では、構造の理解の容易さを優先しているため、水晶板2A(2B)の撓み形状が正確に記載されていないが、後述の寸法により作成した場合には、水晶板2A(2B)が過大に振れると、水晶板2A(2B)の先端よりも中央寄りが突起部7に衝突する。
【0038】
水晶板2A(2B)の一端側における支持面を水平面に平行に設定したとすると、加速度が加わらず放置した状態では自重により撓んだ状態となり、その撓み量d1は例えば151μm程度であり、容器1の下部分における凹部空間の深さd0は、例えば156μmである。また突起部7の高さ寸法は例えば105μm程度である。これらの寸法は一例に過ぎない。
【0039】
図17には、この実施形態の加速度検出装置の回路が示されている。また
図18には、加速度検出装置の一部の外観が示されている。前述の基本構成と異なる箇所は、第1の水晶板2A及び第2の水晶板2Bに夫々対応して第1の発振回路14A及び第2の発振回路14Bが接続されており、第1の水晶板2A及び第2の水晶板2Bごとに、発振回路14A(14B)、励振電極31、41、可動電極5及び固定電極6を含む発振ループが形成されている。これら発振回路14A、14Bからの出力は周波数情報検出部102に送られ、ここで各発振回路14A、14Bからの発振周波数の差分あるいは周波数の変化率の差が検出される。
【0040】
周波数の変化率とは次の意味である。発振回路14Aにおいて、水晶板2Aが自重で撓んでいる基準状態における周波数を基準周波数と呼ぶとすると、水晶板2Aが加速度により更に撓んで周波数が変化したとき、周波数の変化分/基準周波数で表わされる値であり、例えばppbの単位で表わされる。同様に水晶板2Bについても周波数の変化率が演算され、これら変化率の差分が周波数に対応する情報としてデータ処理部101に出力される。データ処理部101では、例えば変化率の差分と加速度との大きさとを対応付けたデータをメモリに記憶しておき、このデータと変化率の差分とに基づいて加速度が検出できる。
【0041】
水晶板2A(2B)の撓み量(水晶板が一直線に伸びている状態と撓んでいるときとの先端部分の高さレベルの差分)と周波数の変化量との関係の一例を挙げておくと、例えば水晶板2A(2B)の先端が10
−5μmオーダで変化すると、発振周波数が70MHzの場合、周波数の変化分は0.65ppbである。従って極めて小さな外力例えば加速度をも正確に検出できる。
【0042】
上述の実施形態によれば、前述の基本構成における効果に加えて、水晶板2A及び水晶板2Bを同一の温度環境に配置しているため、水晶板2A及び水晶板2Bの各々の周波数が温度により変化したとしても、この変化分がキャンセルされ、結果として水晶板2A、2Bの撓みに基づく周波数の変化分だけを検出できるので、検出精度が高いという効果がある。
【0043】
図13の例では、水晶板2A及び水晶板2Bに夫々対応して固定電極6を設けているが、一方の水晶板2Bについては可動電極5及び固定電極6を設けない構成としてもよい。この場合、一方の水晶板2Bについては、励振電極41が可変容量CVを介さずに第2の発振回路14Bに接続される。このように励振電極31、41の組を2組設ける構成(水晶振動子を2つ設ける構成)においては、各組ごとに水晶板を用いる代わりに、各組を共通の水晶板に設けるようにしてもよい。
[本発明の変形例及び適用例]
図19〜
図22に本発明の更なる変形例を記載しておく。
図19に示す加速度センサーは、水晶板2の励振電極31、41を水晶板2の先端側に形成し、下面側の励振電極41が可動電極5を兼用している。
【0044】
図20に示す加速度センサーは、水晶板2を含む水晶振動子として上述の実施形態に用いた水晶板2A(2B)の上面と下面とを反対にした構造を採用している。この場合には 可動電極5と固定電極6との間に水晶板2が介在するが、この構造においても同様の作用、効果が得られる。
【0045】
図21に示す加速度センサーは、上述の実施形態に用いられている水晶板2A(2B)において、
図22に示すように、下面側の可動電極5を上面側に回り込ませると共に、当該可動電極5に対向するように容器1の内部空間の内壁上面側に固定電極6を設けた構成としている。この場合においても同様の作用、効果が得られる。
【0046】
図25及び
図26は、本発明の他の実施形態を示す。この実施の形態は、水晶板2において、水晶振動子としての役割を持つ部位と外力により撓みを発生させる部位との間を、基台に相当する容器1の下部分に設けた支持部により支持する例である。即ち、水晶板2におけるこの支持部による支持部位は、励振電極31、41が設けられている部位と可動電極5が設けられている部位との間である。そして外力が水晶板2に加わったときに水晶板2の撓みの程度が大きくなるように、つまり高い感度が得られるようにするために、前記支持部位から水晶板2の先端までの距離を大きく確保することが好ましい。
【0047】
図25及び
図26に示す加速度センサーは、容器1の底部に、角型の支持部8を設け、この支持部8の上面により、水晶板2の下面における励振電極41よりも例えば0.1mm〜数mmだけ水晶板2の先端側に寄った部位を支持している。支持部8の横幅は、水晶板2の幅寸法と同じかあるいはそれよりも大きいことが好ましいが、励振電極31、41が配置されている部位の撓みを十分に防止できる機能を発揮できる場合には、水晶板2の幅寸法より小さくてもよい。支持部8の高さ寸法は、例えば水晶板2が台座11の上面から水平に伸び出した状態において水晶板2の下面に接触する寸法に設定される。
【0048】
図25では、容器内の構造を誇張して記載しているため、実際の外力センサーの一例の構造とはイメージが少し異なる。支持部8の寸法の一例としては、高さが例えば0.5mm〜1mm、厚さは0.3mmであり、横幅は水晶板2の幅と同じ1.6mmである。この寸法は一例であって、容器1の構造や水晶板2の設置位置などに応じて決まってくる。
【0049】
支持部8と水晶板2の下面(固定電極6と対向する側の面)とは、例えば導電性接着剤あるいは低誘電ガラスなどの固着材料により互いに固定されている。なお支持部8と水晶板2の下面とは互いに固定されていない構造としてもよい。
【0050】
支持部8を設ける手法としては、例えば容器1の下部分301を製造するときにエッチングにより形成する手法を挙げることができるが、支持部8を下部分301とは別個に製造し、接着剤により接着するようにしてもよい。
【0051】
また支持部8を用いる構造は、2組の水晶振動子を設けてこれら水晶振動子の発振周波数の差分を求める例である
図13〜
図17に示す例などに適用してもよい。この場合各組の水晶板2A、2Bごとに、支持部8により
図25、
図26に示したように励振電極31、41と可変電極5との間の部位を支持する構造となる。支持部8としては、水晶板2A、2Bごとに独立して設けてもよいし、水晶板2Aの左縁から水晶板2Bの右縁に亘って延びる共通の支持部8により水晶板2A、2Bを支持してもよい。
図27は、2組の水晶振動子を共通の水晶板2に形成した構造に対して、支持部8を用いた構成を示している。
【0052】
ここで
図25に示す構造において、励振電極41を直接発振回路に接続したサンプルを作成し、水平な面に載置したときの発振周波数f0と、水平面から10度だけ水晶板2の先端側が低くなるように傾斜した面に載置したときの発振周波数f10とを複数回測定した。周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、0.1ppb〜5ppbであった。
【0053】
これに対して前記サンプルにおいて支持部8を設けない場合のサンプルについて、同様の試験を行ったところ、周波数の変化率である(f0−f10)/f0の値は、8ppb〜45ppbであった。この結果から、水晶板2が外力により撓んだときに、発振周波数の変化分の中で、水晶板2の振動部位(励振電極31,41が設けられている部位)の撓みによる周波数の変化分の占める割合について、支持部8を設ける構造の方が小さいことが分かる。この結果は水晶板2における支持部8の先端側が撓んでも、振動部位は、支持部8の存在によりほとんど撓まないことに基づいた結果であるといえる。
振動部位の周波数の変化は再現性に欠けることから、上述のように支持部8を設ける構造とすることにより、より一層正確に水晶板2の撓みに対応する周波数変化を得ることができる。
【0054】
以上において本発明は、加速度を測定することに限らず、磁力の測定、被測定物の傾斜の度合いの測定、流体の流量の測定、風速の測定などにも適用することができる。
磁力を測定する場合の構成例について述べる。水晶板2における可動電極5と励振電極41との間の部位に磁性体の膜を形成し、磁場に当該磁性体が位置すると水晶板2が撓むように構成する。
【0055】
また被測定物の傾斜の度合いの測定については、水晶板2あるいは2A、2Bを支持している基台を予め種々の角度に傾け、各傾斜角度ごとに周波数情報を得ておき、当該基台を被測定面に設置したときの周波数情報から傾斜角度を検出することができる。
更にまた気体や液体などの流体中に水晶板2を晒し、水晶板の撓み量に応じて周波数情報を介して流速を検出することができる。この場合、水晶板2の厚さは流速の測定範囲などにより決定される。更にまた本発明は重力を測定する場合にも適用できる。
【0056】
本発明は、外力検出装置が前述の角度θの傾斜をつけて取り付けられるように、取り付け方向を表示する方向表示部を備えている。この方向表示部の具体例を
図23及び
図24に示す。
図23では、加速度センサー200を搭載した外力検出装置の筐体82に取り付け面である基準面83が設定されており、この基準面83において測定対象物と接するように取り付けることにより前述の角度θの傾斜がつくようになっている。例えば鉛直方向の加速度を測定する場合には、この基準面83を水平面に設置するようにすればよい。また流体の流速を測定する場合には、基準面83が流体の流れる方向と直交するように筐体82を設置すればよい。この例では基準面83が方向表示部に相当する。
図24では、測定対象である外力の方向を合わせるための基準となる矢印83が前記筐体82の外壁に描かれており、この矢印83が方向表示部に相当する。