(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1溝部と前記第2溝部とは、前記後端面から前記先端面に至る途中に、前記所定方向と交差する方向に伸び、前記溝部の幅を狭くしたくびれ部を有している請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の音叉型圧電振動片。
前記基部の前記一端側から且つ前記振動腕の両外側において前記所定方向に伸びる一対の支持腕を備え、前記支持腕は導電性接着剤が塗布される接合部を有する請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の音叉型圧電振動片。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の各実施形態において、振動腕が伸びる方向をY軸方向とし、振動腕の腕幅方向をX軸方向とし、そのY軸およびX軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。本実施形態の音叉型水晶振動片は、例えば32.768kHzで発振する振動片でY軸方向の長さが1.45mm程度、X方向の長さが0.5mm程度、Z方向の厚さが0.12mm前後の小型な形状となっている。
【0012】
<第1実施形態>
(第1水晶デバイス100の構成)
図1(a)はリッド53を取り除いた状態の第1水晶デバイス100の概略上面図であり、
図1(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【0013】
図1(b)に示されるように、第1水晶デバイス100は、リッド53とパッケージPKGと第1音叉型水晶振動片20とから構成される。真空チャンバ内で窪みを持つパッケージPKGに第1音叉型水晶振動片20を入れ、真空状態でリッド53とパッケージPKGとを封止材54により接合する。リッド53は硼珪酸ガラスなどで形成することで水晶デバイスを接合した後でも周波数の調整をすることができる。
【0014】
パッケージPKGは、例えばセラミックからなるセラミックパッケージであり、複数枚のセラミックシートを積層して箱状に形成してある。パッケージPKGの底部には外部電極51が形成され表面実装(SMD:Surface Mount Device)できるタイプとなる。
【0015】
図1(a)に示されるように、第1音叉型水晶振動片20は、一対の振動腕21と支持腕22と基部23とからなる。基部23には基部電極31、32が形成されている。一対の振動腕21の表裏両面には、上面から凹んだ溝部24が形成されている。一対の振動腕21は、その上面及び下面の溝部24に且つ側面に励振電極33、34が形成されている。振動腕21の先端は、錘部となり錘用の金属膜28(以下、錘金属膜28)を有している。支持腕22の接合部25がパッケージPKGに導電性接着剤50を介して接合する。
【0016】
第1水晶デバイス100は、質量の増減による周波数の調整が行われる。振動腕21の先端の錘金属膜28に金属膜を付加したり又は錘金属膜28にイオンミリング又はレーザー光を照射したりして、錘部28の金属被膜の一部が蒸散・昇華される。その後、第1水晶デバイス100は、駆動特性などの検査が行われ、完成する。
【0017】
(第1音叉型水晶振動片20の構成)
図2(a)は、第1実施形態の第1音叉型水晶振動片20の第1主面(上面)の平面図であり、(b)は、第1音叉型水晶振動片20の第2主面(下面)の平面図である。第1音叉型水晶振動片20は、振動腕21の溝部24に励振電極33(33a,33b),34(34a,34b)を有している。また振動腕21の先端に錘金属膜28を有している。
【0018】
一対の振動腕21は、基部23よりY軸方向に平行に伸びている。一本の振動腕21の上面には上面から凹んだ1本の溝部24が形成されており、振動腕21の下面側にも同様に下面から凹んだ1本の溝部24が形成されている。振動腕21の先端付近は、一定幅で幅広となりハンマー形の形状となっている。ハンマー形の形状部分は金属膜を備えた錘金属膜28を形成している。錘金属膜28は振動腕21が小型になって高くなりがちな周波数を所定の周波数まで下げるため、また水晶デバイスとして搭載した第1音叉型水晶振動片20の周波数調整をしやすくするために形成される。
【0019】
基部23と一対の振動腕21とで成す振動根元部26の形状は、直線的なU字形状をしている。また、基部23と振動腕21と支持腕22とで成す2箇所の支持根元部27の形状も、同一の直線的なU字形状をしている。振動根元部26と支持根元部27との形状とが直線的なU字形状をしているが、曲線的なU字形状をしていても良い。
【0020】
第1音叉型水晶振動片20の基部23は、その全体が矩形状に形成されている。基部23の長さは第1音叉型水晶振動片20の全長を短くするために、できるだけ短いほうが望ましい。しかし、基部の長さを短くすると、振動腕21の振動がパッケージ外部へ振動漏れとして伝わるおそれがあり、またパッケージ外部の温度変化、又は衝撃の影響を受けやすくなる。このため、第1音叉型水晶振動片20に支持腕22を形成している。
【0021】
支持腕22は、
図2(a)及び(b)で示されるように、第1音叉型水晶振動片20の基部23の両端から伸びている。支持腕22の長さは振動腕21の長さより短く形成されている。第1音叉型水晶振動片20とパッケージPKGとは、導電性接着剤50を介して接合部25で接合する。接合部25は、基部より離れた支持腕22の端部に設置される。接合部25が基部23から離れることで振動漏れや外部変化の影響を少なくしている。
【0022】
次に第1音叉型水晶振動片20の寸法について説明する。一対の振動腕21の長さLは、例えば1.25mm程度の長さである。溝部24の長さmは、振動腕21の長さLに対して約70%に形成されている。溝部24の長さmは、溝部の一方の端面24E(基部23の近傍)を起点として他方の端面24E(錘部の近傍(+Y方向))までの長さである。以下、基部23の近傍の端面24Eを後端面、錘部の近傍の端面24Eを先端面という。上面側の励振電極33a,34aは後端面24EからY軸方向の途中まで伸びており先端面24Eまで届かない。上面側の励振電極33a,34aの長さnは、
図2(a)に示されるように、溝部24の長さmに対して60%〜80%に形成されている。
【0023】
図2(b)に示されるように、下面の溝部24の長さm(後端面24Eから先端面24E)も、振動腕21の長さLに対して約70%に形成されている。一方、下面側の励振電極33b,34bの長さnは、溝部24の長さmに対して100%に形成されている。即ち、励振電極33b,34bは、溝部24の長さと同じ長さで形成される。基部23の長さは0.20mm程度である。
【0024】
図3(a)は、
図2(a)及び(b)に示された第1音叉型水晶振動片20のB−B’断面図である。
図3(b)は、
図2(a)及び(b)に示された第1音叉型水晶振動片20のC−C’断面図である。
【0025】
図3(a)に示されるように、振動腕21の上面(+Z)には、基部電極31と励振電極34aと錘金属膜28とが形成され、振動腕21の下面(−Z)には、基部電極31と励振電極34bと錘金属膜28とが形成されている。振動腕21の上下面の錘金属膜28は、基部電極31と励振電極34を形成する工程で同時に形成され、上下面とも同じ厚さT1である。さらに、振動腕21の上面の錘金属膜28aの上面に錘金属膜28bが形成され新たに厚さT2で積層される。錘金属膜28bは小型化に伴い周波数が高くなりがちなため周波数を下げるために形成される。
【0026】
振動腕21の下面の励振電極34bは、溝部24の長さと同じ長さに形成される。励振電極33,34は、振動腕21の側面及び溝部の側面24S並びに溝部の底面24Bにも形成されている。基部電極31、32と励振電極33、34は例えばCr膜からなる下地にAu膜を設けた2層構造で形成されている。
【0027】
図3(b)で示されるように、第1音叉型水晶振動片20の振動腕21と振動腕21との距離である第2幅W2は振動腕21の幅である第1幅W1と同じであり、また振動腕21と支持腕22との距離である第3幅W3も第1幅W1と同じ長さで形成されている。つまり第1音叉型水晶振動片20は第1幅W1と、第2幅W2と、第3幅W3とを同一幅で設計する。
【0028】
また、溝部24の断面は略H型に形成される。振動腕21の溝部24の幅W5(溝部の側面24Sと24Sとの距離)は、振動腕21の幅W1の40%から80%の幅に形成される。振動腕21の厚さT4は、振動腕21の幅W1の2倍以上である。これらの第1音叉型水晶振動片20の外形と溝部24との形成は公知のフォトリソ・エッチング技術で形成されている。
【0029】
図3(b)の第1音叉型水晶振動片20のC−C’断面で示されるように、振動腕21の上面(+Z)の溝部24は、励振電極33,34が形成されていない。振動腕21の下面(-Z)の溝部24は、励振電極33b,34bが形成されている。励振電極33b,34bは、振動腕21の側面、溝部の側面24S及び溝部の底面24Bにも形成されている。
【0030】
(第1音叉型水晶振動片20の製造方法)
図4は,第1音叉型水晶振動片20の電極形成工程と周波数調整工程とのフローチャートである。電極の形成は、フォトリソグラフィの手法によって形成される。
【0031】
ステップS11において、金属膜は、第1音叉型水晶振動片20の外形と溝部とが形成された水晶ウエハ全体に真空蒸着もしくはスパッタリングによって形成される。次いで、フォトレジストが金属膜の上に塗布される。そして、基部電極31、32と励振電極33、34を含む電極パターンが形成された電極用マスクが、水晶ウエハに形成された第1音叉型水晶振動片20に重ねられる。不図示の露光装置は電極パターンを第1音叉型水晶振動片20に露光する。
【0032】
ステップS12において、電極パターンは、現像後のレジストを除去したのち、金属膜をエッチングして形成される。これにより第1音叉型水晶振動片20は、励振電極33,34が形成される。第1主面(上面)側の溝部24には、後端面24E(
図2、
図3を参照。)から溝部24の長さmに対して60%から80%伸びて形成されている。第2主面(下面)側の溝部24の全体に励振電極33b,34bが形成される。この電極パターンの形成時に、錘金属膜28a(
図3(a)を参照。)も形成される。錘金属膜28aは表裏ともに基部電極31,32及び励振電極33,34と同じ厚さT1の金属膜が形成される。
【0033】
ステップS13において、第1音叉型水晶振動片20の第1主面(上面)に錘金属膜28b(
図3(a)を参照。)が形成される。錘金属膜28bは、錘部のみに開口がある錘部用マスクが、水晶ウエハの第1主面に被せられ、その状態で蒸着あるいはスパッタリングされることで形成される。錘部用マスクは、錘部以外にスパッタリングで飛散する金属粒子が付くことを防止している。錘部用マスクが水晶ウエハに被せられるが、水晶ウエハと錘部用マスクとの間には多少の隙間が生じることがある。このため、水晶ウエハと錘部用マスクとの隙間から飛散している金属粒子が溝部24まで入り込むことがある。仮に、第1主面の溝部24の励振電極33a、34aが、溝部24の先端面24Eまで形成されており、金属粒子が励振電極33a、34aに付着すると、励振電極がショート(短絡)することがある。しかし、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極33a,34aは、先端面24Eまで形成されていないため、励振電極のショートのおそれはない。
【0034】
錘金属膜28bが形成された第1音叉型水晶振動片20は、周波数調整装置(図示せず)により発振周波数が測定される。そして第1音叉型水晶振動片20の第1主面の錘金属膜28bの所定の箇所は、イオンミリングされる。イオンミリングは錘金属膜28bに加速したイオンを当てることにより錘金属膜28bの金属粒子を飛散させ、第1音叉型水晶振動片20の発振周波数を上昇させる。このようにして、第1音叉型水晶振動片20は目標周波数の許容範囲内(目標周波数よりも低い周波数)に入れるように粗調整される。その後、第1音叉型水晶振動片20は水晶ウエハから切り取られる。
【0035】
ステップS14において、第1音叉型水晶振動片20は、パッケージPKGに導電性接着剤50で固定される。パッケージPKGに固定された第1音叉型水晶振動片20は、周波数調整装置(不図示)により発振周波数が測定される。
【0036】
ステップS15において、周波数調整装置は、取得した第1音叉型水晶振動片20の発振周波数が目標周波数の許容範囲内にあるかを判断する。第1音叉型水晶振動片20の周波数が目標周波数の許容範囲内であれば、ステップS17に進む。第1音叉型水晶振動片20の発振周波数が目標周波数の許容範囲の下限値を下回っていれば、ステップS16に進む。
【0037】
ステップS16において、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の錘金属膜28bがイオンミリングにより削られる。イオンミリングの際に、錘金属膜28bから金属粒子が飛散する。しかし、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極33a,34aは、先端面24Eまで形成されていないため、飛散した金属粒子が励振電極に付着してショートする可能性が低い。
【0038】
ステップS17において、発振周波数の調整が必要な第1音叉型水晶振動片20の発振周波数がすべて調整されたか判断される。周波数が未調整の第1音叉型水晶振動片20があればステップS15に戻り、未調整の第1音叉型水晶振動片20がなければ周波数の調整が終了する。
【0039】
(上面側の励振電極の長さ)
図5は、電極カット率と直列共振容量C1との関係を示すグラフである。
このグラフは縦軸に直列共振容量C1(fF)を、横軸に電極カット率(%)を表示している。電極カット率(%)とは、溝部24の長さmに対して励振電極33,34の長さnが形成されない長さ(m−n)を溝部24の長さmで割った百分率である。すなわち、溝部24に励振電極33,34が形成されない割合を示している。
【0040】
図5のグラフには、片面カットの折れ線と両面カットの折れ線とが示されている。片面カットは、第1主面(上面)だけ溝部24に対して励振電極33、34がカットしてあり、第2主面(下面)は溝部24の長さと同じ長さの励振電極33,34が形成されている第1音叉型水晶振動片20を示している。両面カットは、上下面とも同じ長さの励振電極が形成されている音叉型水晶振動片を示している。
【0041】
直列共振容量C1(fF)は、直列共振容量C1が小さくなれば周波数可変感度S(ppm/pF)(
図7参照。)が低くなる。第1音叉型水晶振動片20は、例えば32.768kHzで発振する振動片であるので、直列共振容量C1(fF)は7fF以下が好ましい。このため、第1音叉型水晶振動片20の片面カット率は、10%以上が好ましい。つまり、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極長さnは、溝部24の長さmの90%以下が好ましい。
【0042】
図6は、電極カット率とCI値(クリスタルインピーダンス値)との関係を示すグラフである。縦軸にCI値(kΩ)を、横軸に電極カット率(%)を表示している。CI値はできるだけ低い方が好ましく、例えば70kΩ以下が好ましい。このため、第1音叉型水晶振動片20の片面カット率は40%以下が好ましい。つまり、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極長さnは、溝部24の長さmの60%以上が好ましい。
【0043】
図7は、直列共振容量C1と周波数可変感度Sとの関係を示すグラフである。直列共振容量C1(fF)が小さくなれば周波数可変感度S(ppm/pF)が低くなる。第1音叉型水晶振動片20は、例えば32.768kHzで発振する振動片であるので、直列共振容量C1(fF)は7fF以下が好ましい。周波数可変感度Sは、直列共振容量C1(fF)を7fF以下にすると16ppm/pF以下になり目的の周波数に調整し易くなる。
【0044】
さて、
図5から
図7のグラフから、周波数可変感度Sに関しては、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極長さnは、溝部24の長さmの90%以下が好ましい。一方CI値に関しては、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極長さnは、溝部24の長さmの60%以上が好ましい。したがって、第1音叉型水晶振動片20の第1主面の励振電極長さnは、溝部24の長さmの60%以上で90%以下が好ましいことになる。
【0045】
図5及び
図6には、上下面とも同じ長さの励振電極が形成されている音叉型水晶振動片の折れ線(両面カット)が示されている。直列共振容量C1(fF)を7fF以下にするためには、両面カットの音叉型水晶振動片はその励振電極長さが溝部の長さmの90%以下にすればよい。その一方で、CI値を70kΩ以下にするためには、両面カットの音叉型水晶振動片はその励振電極長さが溝部の長さmの80%以上にしなければならない。したがって、両面カットの音叉型水晶振動片の励振電極長さは、溝部の長さmの80%以上で90%以下が好ましいことになる。
【0046】
片面カットの第1音叉型水晶振動片20と両面カットの音叉型水晶振動片とを比較すると次のことがわかる。片面カットの第1音叉型水晶振動片20の励振電極長さnは、溝部24の長さmの60%以上で90%以下であり、30%の調整幅を有している。一方、両面カットの音叉型水晶振動片の励振電極長さは、溝部24の長さの80%以上で90%以下であり、10%の調整幅しかない。調整幅に観点で両者を比較すると2倍以上の差がある。第1音叉型水晶振動片20に励振電極33,34を形成する際には、水晶ウエハに対して電極用マスクの位置ズレが生じることもある。しかし、第1音叉型水晶振動片20は両面カットの音叉型水晶振動片と比べて調整幅が2倍あるため、調整不良が生じにくい。
【0047】
また、第1音叉型水晶振動片20に形成された励振電極33a、34aは、製造の観点から上面を向くようにすることが好ましい。
図4のステップS13,S17で説明したように、錘部に金属膜を形成する際に、スパッタリング等の金属粒子が励振電極33a、34aに付着しにくくなるからである。また、
図4のステップS16で説明したようイオンミリングで金属を飛散させる際に、飛散した金属粒子が励振電極33a、34aに付着しにくくなるからである。
【0048】
<第2実施形態>
(第2音叉型水晶振動片20Aの構成)
図8(a)は、第2音叉型水晶振動片20Aの平面図であり、(b)は、第2音叉型水晶振動片20AのD−D’断面図である。第2音叉型水晶振動片20Aと、第1音叉型水晶振動片20とは支持腕22’及び基部23’の形状が異なり、振動腕21’の溝部24にくびれ部60を備えている。その他の構成は、基本的に第1音叉型水晶振動片20の構造と同じである。第1音叉型水晶振動片20と同一機能には、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0049】
第2音叉型水晶振動片20Aは、一対の振動腕21’と支持腕22’と基部23’とからなる。一対の振動腕21’は、基部23’からほぼ平行にY方向に伸び、一対の振動腕21’の表裏両面には溝部24が形成されている。表裏の溝部24には、溝部24のX軸方向の幅を狭くしたくびれ部60が形成されている。くびれ部60は溝部の側面24Sの−X方向に偏らせて形成されている。裏面にある一対の溝部24にも、同じようにくびれ部60が形成されている。
【0050】
くびれ部60は、溝部24の長さmのほぼ中央部に形成されている。このくびれ部60は、第2音叉型水晶振動片20Aの基部部分の剛性を向上し、二次の高調波のCI値の低下を招くことがない。
【0051】
一対の振動腕21’の根元部分は、X軸方向に幅広に形成されている。これは振動腕21’の振動が根元部分に集中していた応力を移動させ、基部23’への振動漏れを減少させることができる。
【0052】
一対の支持腕22’は、
図8(a)に示されたように、第2音叉型水晶振動片20Aの基部23’の−Y軸側の両端から夫々X軸方向に伸びてから直角に折れ曲がり、+Y軸方向に平行に伸びている。支持腕22’の先端付近は一定幅で幅広となって接合部25を備える。第2音叉型水晶振動片20Aとパッケージとの接合部25は、支持腕22’の先端付近の幅広部に設置される。接合部25が基部23’から離れることで、振動漏れや外部変化の影響を少なくしている。
【0053】
溝部24の長さmは、振動腕21’の長さLに対して約70%に形成されている。溝部24の長さmは、溝部の基部側の端面24E(後端面)を起点として他方の端面24E(先端面)までの長さである。上面側の励振電極33a,34aは後端面24EからY軸方向の途中まで伸びており先端面24Eまで届かない。上面側の励振電極33a,34aの長さnは、
図8(a)に示されるように、溝部24の長さmに対して70%〜90%に形成されている。
【0054】
図8(b)に示されるように、下面側の励振電極33b,34bの長さnは、溝部24の長さmに対して100%に形成されている。即ち、励振電極33b,34bは、溝部24の長さと同じ長さで形成される。
【0055】
第2音叉型水晶振動片20Aの製造方法は、第1実施形態とほぼ同じである。第2音叉型水晶振動片20Aの溝部24を形成するとき、くびれ部60に対応する箇所をエッチングしないことで、くびれ部60を形成している。
【0056】
<第3実施形態>
(第2水晶デバイス110の構成)
図9(a)は、分割した状態の第2水晶デバイス110を、リッド10のリッド部側からみた斜視図であり、
図9(b)は、(a)に示した第2水晶デバイス110のE−E’断面構成図である。
図10(a)は、第3音叉型水晶振動片30の平面図であり、(b)は、(a)に示した第3音叉型水晶振動片30のF−F’断面図である。
【0057】
第2水晶デバイス110は、第3音叉型水晶振動片30を有している。第3音叉型水晶振動片30と第1音叉型水晶振動片20との違いは、第3音叉型水晶振動片30が基部及び振動腕を囲む外枠部を備えている点である。第1実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0058】
図9(a)及び(b)に示されるように、第2水晶デバイス110は、最上部のリッド10、第3音叉型水晶振動片30及びベース40から構成される。リッド10、第3音叉型水晶振動片30及びベース40は水晶材料から形成される。
【0059】
第2水晶デバイス110は、第3音叉型水晶振動片30を中心に挟んで、その第3音叉型水晶振動片30の上にリッド10が接合され、第3音叉型水晶振動片30の下にベース40が接合されてパッケージ80が形成されている。リッド10は第3音叉型水晶振動片30に、ベース40は第3音叉型水晶振動片30にシロキサン結合(Si−O−Si)により封止する構成になっている。
【0060】
第3音叉型水晶振動片30は、エッチングにより外形及び振動腕が形成される。第3音叉型水晶振動片30は、その中央部にいわゆる振動腕21の外側に外枠部29を有しており、第3音叉型水晶振動片30と外枠部29との間には空間部35が形成されている。その空間部35は水晶エッチングにより形成される。基部23から伸びる一対の支持腕22は外枠部29に接続されている。基部23及び外枠部29の第1主面に基部電極31と基部電極32とが形成され、第2主面にも同様に基部電極31と基部電極32とが形成されている。
【0061】
リッド10は、第3音叉型水晶振動片30側にリッド側凹部17を備える。ベース40は、第3音叉型水晶振動片30側にベース側凹部47を備える。ベース40は第1スルーホール41及び第2スルーホール43並びに段差部49を形成する。段差部49には、第1スルーホール41及び第2スルーホール43と接続する第1接続電極42及び第2接続電極44を形成する。ベース40の底部には、第1外部電極45及び第2外部電極46が形成されている。
【0062】
第1スルーホール41及び第2スルーホール43は、その内面に金属膜が形成される。内面の金属膜は、第1接続電極42及び第2接続電極44並びに第1外部電極45及び第2外部電極46と同時にフォトリソグラフィ工程で作成される。第1接続電極42は、第1スルーホール41を通じてベース40に設けた第1外部電極45に電気的に接続する。第2接続電極44は、第2スルーホール43を通じてベース40に設けた第2外部電極46に電気的に接続する。
【0063】
第2水晶デバイス110は、リッド10、第3音叉型水晶振動片30及びベース40が接合されてパッケージ80が形成される。つまり、第1基部電極31はベース40の第1外部電極45と電気的に接合し、第2基部電極32はベース40の第2外部電極46と電気的に接合する。
【0064】
(第3音叉型水晶振動片30の構成)
第3音叉型水晶振動片30は、外枠部29を除き、基本的に第1音叉型水晶振動片20と同じである。
図10(a)及び(b)に示されるように、
図10(a)のF−F’断面において振動腕21の溝部上面(+Z)は、励振電極33,34が形成されていない。振動腕21の溝部下面(-Z)は、励振電極33b,34bが形成されている(
図9(b)参照)。所謂、振動腕21の溝部下面は、溝部24全域に励振電極33b,34bが形成されている。励振電極33b,34bは、振動腕21の側面及び溝部の側面24S並びに溝部の底面24Bにも形成されている。
【0065】
第3音叉型水晶振動片30の上面の励振電極長さnも、第1音叉型水晶振動片20と同様に、溝部24の長さmの60%以上で90%以下である。第3音叉型水晶振動片30に励振電極33,34を形成する際には、水晶ウエハに対して電極用マスクの位置ズレが生じることもある。しかし、第3音叉型水晶振動片30も両面カットの音叉型水晶振動片と比べて調整幅が2倍あるため、調整不良が生じにくい。
【0066】
また、第3音叉型水晶振動片30に形成された励振電極33a、34aは、製造の観点から上面を向くようにすることが好ましい。錘部に金属膜を形成する際に又はイオンミリングで金属粒子を飛散させる際に、飛散した金属粒子が励振電極33a、34aに付着しにくいからである。