(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の左右に対をなして配設されたランプを備え、これら対をなすランプの照明光を重畳して所要の配光を得るようにした配光制御装置であって、車両の前方領域を撮像する撮像手段と、当該撮像手段で撮像した画像に基づいて当該前方領域に存在する前方車両を検出し、検出した前方車両の位置に応じて前記対をなすランプのいずれか一方のランプの配光を変化させる配光制御手段を備え、前記一方のランプはロービーム配光にハイビーム配光に相当する付加配光パターンを重畳する配光制御が可能な可変配光型ランプであり、前記撮像手段は前記車両の左右方向の前記一方のランプ側の位置に配設したことを特徴とする車両用ランプの配光制御装置。
前記撮像手段の撮像光軸は前記一方のランプの光軸に対し車両の左右方向において同一位置ないし近傍位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプの配光制御装置。
前記撮像手段は前記一方のランプに近接する位置、または車両の上部の前記一方のランプ側の位置に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ランプの配光制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ロービーム配光に付加配光パターンを加えることが可能なヘッドランプを車両の左右のそれぞれに配備しているが、このような付加配光パターンを加えるための構造を備えたヘッドランプは構造が複雑で高価である。また、特許文献2のように撮像素子をランプボディ内に内装したランプは撮像素子を配設するスペースを確保するためにランプが大型化するとともに高価なものになる。そのため、特許文献1あるいは2に記載のランプを自動車のヘッドランプに適用して当該自動車の左右に配備した場合にはヘッドランプ全体が大型になるとともにヘッドランプ全体のコストが極めて高価なものになるという問題がある。また、このようなヘッドランプの配光を制御するための配光制御手段も左右2つのヘッドランプの配光をそれぞれ制御するように構成する必要があり、配光制御手段を含むヘッドランプ全体ないし配光制御装置が高コストなものになる。
【0005】
本発明の目的は左右に対をなして配置されるランプを備える車両において、前方車両に対する眩惑を防止する一方で自車両の広い領域を照明することを可能にした車両用ランプの配光制御装置を低コストに実現可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の左右に対をなして配設されたランプを備え、これら対をなすランプの照明光を重畳して所要の配光を得るようにした配光制御装置であって、車両の前方領域を撮像する撮像手段と、当該撮像手段で撮像した画像に基づいて前方領域に存在する前方車両を検出し、検出した前方車両の位置に応じて対をなすランプの
いずれか一方のランプの配光を変化させる配光制御手段を備えており、撮像手段は車両の左右方向の
当該一方のランプ側の位置に配設したことを特徴とする。
【0007】
本発明において、撮像手段の撮像光軸は一方のランプの光軸に対し車両の左右方向において同一位置ないし近傍位置に配設されることが好ましい。例えば、撮像手段は一方のランプに近接する位置、または車両の上部の一方のランプ側の位置に配設される。
【0008】
本発明において、一方のランプは配光制御手段によって配光パターンが変化される可変配光型ランプとして構成される。例えば、ロービーム配光にハイビーム配光に相当する付加配光パターンを重畳する配光制御が可能な可変配光型ランプとして構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各ランプの照明光を重畳して所要の配光を得るようにした左右の対をなすランプのうち、
いずれか一方のランプのみを
ロービーム配光にハイビーム配光に相当する付加配光パターンを重畳する可変配光型ランプで構成し、この一方のランプの配光、特に両ランプの配光が重畳されていない領域の配光を制御することによって車両の配光を制御することが可能になる。そのため、左右の両側に可変配光型ランプを配設して両側のランプを配光制御するものに比較してランプ全体の構成を簡略化し、低コスト化が実現できる。また、車両の前方領域に存在する前方車両を検出するための撮像装置の光軸を車両の左右方向の
当該一方のランプ側の位置、好ましくは
当該一方のランプの光軸と同じ位置ないしは近傍位置に配設することにより、撮像装置とランプ間に生じる視差を低減し、前方車両に対する適正な配光制御を高い精度で行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプの配光制御装置に適用した実施形態1の自動車の正面図であり、自動車CARの前部の左右に右ヘッドランプRHLと左ヘッドランプLHLが配設されている。左ヘッドランプLHLは、1つのランプハウジング内にクリアランスランプCLと、ロービーム配光での照明を行うロービームランプLoLと、ハイビーム配光での照明を行うハイビームランプHiLを内装したランプとして構成されている。右ヘッドランプRHLは、
図1に拡大した一部破断正面図を示すように、1つのランプハウジング内にクリアランスランプCLと、可変ロービームランプV−LoLと、ハイビームランプHiLを内装している。この可変ロービームランプV−LoLは詳細は後述するがロービーム配光にハイビーム相当の付加配光パターンを重畳することが可能なランプとして構成されている。
【0012】
前記左右の各ヘッドランプLHL,RHLにそれぞれ設けたクリアランスランプCL及びハイビームランプHiLと、左ヘッドランプLHLに設けたロービームランプLoLは従来から提供されている一般的な構成のランプが用いられているので、ここでは詳細な説明は省略する。前記右ヘッドランプRHLに設けた可変ロービームランプV−LoLは、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)と称されて、ロービーム配光パターンのカットオフラインよりも上側の領域の一部にハイビーム配光に相当する配光パターンを付加的に重畳すること、見方を変えればハイビーム配光の配光パターンの一部を遮光することとも言えるが、このような配光制御が可能とされたランプである。また、この実施形態1では前記右ヘッドランプRHLのランプハウジング内に自車両の前方領域を撮像するための撮像装置CAMが内装されている。
【0013】
前記右ヘッドランプRHLは、
図2に
図1のII−II線に沿った拡大断面構造を示すように、ランプボディ11と、透明な前面カバー12とで構成されているランプハウジング1を有しており、このランプハウジング1内に図には表れない前記したクリアランスランプCL及びハイビームランプHiLと共に前記した可変ロービームランプV−LoLと撮像装置CAMが配設されており、特にこの撮像装置CAMは可変ロービームランプV−LoLの直上位置に配置されている。すなわち、可変ロービームランプV−LoLの照明光軸Lxと撮像装置CAMの撮像光軸Cxは同一鉛直線上、ないしは略同じ鉛直線上に配置されている。
【0014】
前記可変ロービームランプV−LoLは、回転楕円をベースにしたリフレクタ22と、このリフレクタ22の第1焦点位置に配設された光源21と、前記リフレクタ22の第2焦点位置に後側焦点を配置した照射レンズ23と、前記光源21から出射して前記リフレクタ22で反射した光の一部を遮光する可変シェード24Rとを備えたプロジェクタ型ランプ2で構成されている。前記光源21は白熱電球あるいは放電電球、さらにはLED等の半導体発光素子が用いられる。可変シェード24Rは、後述するように複数の分割シェード、ここでは水平方向に3分割した3つの分割シェードで構成されているが、可変シェード24Rの全体としては左ヘッドランプLHLのロービームランプLoLに配設されているシェード24L(
図3参照)と同じ配光を得る形状に構成されている。
【0015】
図3は前記可変ロービームランプV−LoLの概念構成を示す模式斜視図であり、左ヘッドランプLHLに配設したロービームランプLoLと共に図示している。なお、ロービームランプLoLには可変ロービームランプV−LoLの各部と等価な部位に同じ符号を付してある。可変ロービームランプV−LoLの前記可変シェード24Rは、水平方向の左側から右側に向けて(光源21側から見た左右方向、以下同じ)3つに分割された分割シェードS1,S2,S3で構成されており、左右両側の分割シェードS1,S3は中央の分割シェードS2よりも左右方向の幅寸法が大きくされている。また、各分割シェードS1,S2,S3はそれぞれ下端部において固定軸31によって傾動可能に支持されるとともに、それぞれはシェード駆動装置3に連結されており、このシェード駆動装置3によって各分割シェードS1,S2,S3は独立して前後方向に傾動され、傾動されたときには可変ロービームランプV−LoL内の照明光路領域から退避されて遮光が制限されるように構成されている。
【0016】
この可変ロービームランプV−LoLは、
図3に示すように、全ての分割シェードS1,S2,S3がいずれも傾動されないときには可変シェード24は光源21からの光の一部を遮光して所定のカットオフラインを有する通常のロービーム配光パターンPLoでの光照射が行われる。分割シェードS1,S2,S3が傾動されて照明光路領域から退避されたときには、当該傾動された分割シェードS1,S2,S3によってそれまで遮光されていた光の一部が遮光されなくなり、当該遮光されない光をそれぞれ付加配光パターンA3,A2,A1として前記ロービーム配光パターンPLoのカットオフラインの上側領域に重畳した配光パターンでの光照射が行われる。左ヘッドランプLHLのロービームランプLoLはこれまでと同様にシェード24Lによってカットオフラインを有するロービーム配光パターンPLoでの光照射が行われる。したがって、可変ロービームランプV−LoLは左右のヘッドランプLHL,RHLの配光が重畳されない領域において付加配光パターンA1〜A3の付加により当該領域での配光を制御するように構成されていることになる。
【0017】
前記撮像装置CAMは既存のCCDカメラで構成されているので詳細については省略するが、撮像レンズを含む撮像光学系と、この撮像光学系で結像した被写体像を電気信号に変換する撮像素子、ここではCCD撮像素子を備えている。この撮像装置CAMは、前記ランプハウジング1の前面カバー12を通して自車両の前方領域を撮像することが可能である。この撮像装置CAMは、前記したように可変ロービームランプV−LoLの直上に配設されており、その撮像光学系の光軸、すなわち撮像装置CAMの撮像光軸Cxは可変ロービームランプV−LoLの光軸Lxと同一鉛直線上またはほぼ同じ鉛直線上に位置されている。
【0018】
再度
図2を参照すると、左右の各ヘッドランプLHL,RHLはランプECU(電子回路ユニット)100により点灯及び配光が制御されるようになっている。ランプECU100には、乗員により操作される点灯スイッチ101及び配光制御スイッチ102が接続されている。ここで配光制御スイッチ102は自車両の左右のヘッドランプLHL,RHLの照射光を重畳して構成される配光パターンをハイビーム配光とする「Hi」と、ロービーム配光とする「Lo」と、自車両に存在する前方車両の検出結果に基づいて配光を制御する「Auto」若しくは「ADB」に切り替えられるものとしている。なお、ここでは「ADB」としている。また、ランプECU100には前記撮像装置CAMと、前記可変ロービームランプV−LoLに内装されている可変シェード装置3がそれぞれ接続されている。
【0019】
一方、ランプECU100は配光制御部110を備えており、前記点灯スイッチ101の操作によりクリアランスランプCLを含む各ランプに対して点灯させるための電力を供給するとともに、前記配光制御スイッチ102の操作によりロービームランプLoLと可変ロービームランプV−LoLのみ、またはこれと同時に左右のハイビームランプHiを点灯できるようになっている。さらに、ランプECU100は前方車両検出部120を備えており、前記撮像装置CAMで撮像した自車両の前方領域の撮像画像に基づいて自車両の前方に存在する前方車両を検出する。さらに、ランプECU100はシェード制御部130を備えており、可変ロービームランプV−LoLが点灯されたときに前記配光制御スイッチ102と前方車両検出部120の各出力に基づいて当該可変ロービームランプV−LoLに内装されているシェード駆動装置3を制御するようになっている。
【0020】
この配光制御装置によれば、乗員が点灯スイッチ101をオン操作することにより左右のヘッドランプLHL,RHLのクリアランスランプCLが点灯する。そして、配光制御スイッチ102を「Lo」に設定すると、配光制御部110は左ヘッドランプLHLのロービームランプLoLと右ヘッドランプRHLの可変ロービームランプV−LoLを点灯させる。ロービームランプLoLは
図3に示したロービーム配光パターンPLoでの光照射となる。また、この「Lo」の状態では前方車両検出部120は動作しておらず、シェード制御部130は可変シェード24Rを通常状態、すなわち全ての分割シェードS1〜S3を起立した状態に制御しており、可変ロービームランプV−LoLの配光はロービームランプLoLの配光と同じロービーム配光パターンPLoとなる。そのため、ロービームランプLoLと可変ロービームランプV−LoLからそれぞれ出射した光が自車両の前方領域において重畳され、所定のロービーム配光パターンでの照明が実現される。配光制御スイッチ102が「Hi」に切り替えられると配光制御部110は左右のヘッドランプLHL,RHLの各ハイビームランプHiを点灯させる。そのため、左右のハイビームランプHiからそれぞれ出射した光が自車両の前方領域において重畳され、かつ前記したロービーム配光パターンPLoに重畳されることで所定のハイビーム配光パターンでの照明が実現される。
【0021】
一方、配光制御スイッチ102を「ADB」に切り替えると、配光制御部110は「Lo」時と同様に左ヘッドランプLHLのロービームランプLoLと右ヘッドランプRHLの可変ロービームランプV−LoLを点灯させる。次いで、前方車両検出部120は撮像装置CAMにおいて撮像した自車両の前方領域の前方画像を解析して前方車両を検出する。そして、この検出結果に基づいてシェード制御部130は可変ロービームランプV−LoLのシェード駆動装置3を駆動し、可変シェード24Rを制御する。そのため、前方車両検出部120で検出した前方車両の違いにより可変ロービームランプV−LoLの配光が制御され、この配光がロービームランプLoLの配光に重畳されることにより形成される当該自動車CARの前方領域の配光が次の例のように変化制御されることになる。
【0022】
図4〜
図7は「ADB」における可変シェード24Rによる配光制御の一例を示す図であり、前方車両が検出されないときには、眩惑のおそれが生じていないため、
図4(b)のように可変シェード24Rの全ての分割シェードS1〜S3を破線で示す常態位置から傾動して照明光路領域から退避させる。これにより、
図4(a)のように、可変ロービームランプV−LoLはロービーム配光パターンPLoに付加配光パターンA1〜A3が重畳されたハイビーム相当の配光となる。この配光が左ヘッドランプLHLのロービームランプLoLの配光に重畳される。すなわち、左右のヘッドランプLHL,RHLの各ロービーム配光パターンPLoが重畳されていない領域に可変ロービームランプV−LoLによる付加配光パターンA1〜A3が付加された配光となるため、自車両の前方領域を広く照明し安全走行を確保する。
【0023】
図5(a)のように、前方車両検出部120において自車両の右前方領域に対向車CAR1が検出されたときには、
図5(b)のように可変シェード24Rの中央と右側の両分割シェードS2,S3を傾動して退避させる。これにより、これら分割シェードS2,S3による遮光が行われなくなり、
図5(a)のように、可変ロービームランプV−LoLの配光はロービーム配光パターンPLoのカットオフラインの上側の左側領域と中央領域、すなわち左右のヘッドランプLHL,RHLの各ロービーム配光パターンPLoが重畳されていない領域に付加配光パターンA2,A3が重畳された配光となる。したがって、右前方の対向車CAR1に対する眩惑を防止する一方で自車両の直進方向である中央領域と自車両の左側領域を遠方領域まで明るく照明し、安全走行を確保する。なお、対向車CAR1が前遠方に存在する場合には中央の分割シェードS2は傾動せずに付加配光パターンA2を重畳しないようにすることが好ましい。
【0024】
また、
図6(a)のように、前方車両検出部120において自車両の直進方向の前方領域に対向車や先行車、ここでは先行車CAR2が検出されたときには、
図6(b)のように可変シェード24Rの右側と左側の両分割シェードS1,S3を傾動して退避させる。これにより、分割シェードS1,S3による遮光が行われなくなり、可変ロービームランプV−LoLの配光は
図6(a)のようにロービーム配光パターンPLoのカットオフラインの上側の左側領域と右側領域、すなわち左右のヘッドランプLHL,RHLの各ロービーム配光パターンPLoが重畳されていない領域に付加配光パターンA1,A3が重畳された配光となる。したがって、直進方向に存在する先行車CAR2に対する眩惑を防止する一方で自車両の左側領域と右側領域を遠方領域まで明るく照明し、安全走行を確保する。
【0025】
あるいは、
図7(a)のように、前方車両検出部120において自車両の左前側領域に先行車CAR3が検出されたときには可変シェード24Rの中央と左側の分割シェードS1,S2を傾倒させる。これにより分割シェードS1,S2による遮光が行われなくなり、可変ロービームランプV−LoLの配光はロービーム配光パターンPLoのカットオフラインの上側の右側領域と中央領域、すなわち左右のヘッドランプLHL,RHLの各ロービーム配光パターンPLoが重畳されていない領域に付加配光パターンA1,A2が重畳された配光となる。したがって、左側領域に存在する先行車CAR3に対する眩惑を防止する一方で自車両の右側領域と中央領域を遠方まで明るく照明し、安全走行を確保する。なお、先行車CAR3が前遠方に存在する場合には中央の分割シェードS2は傾動せずに付加配光パターンA2を重畳しないようにすることが好ましい。
【0026】
このように、ランプECU100は可変ロービームランプV−LoLの可変シェード24Rを制御して前方車両の存在しない領域に対応する分割シェードS1〜S3を傾動する制御を行うことで、当該前方車両に対する眩惑を防止する一方で前方車両が存在しない領域を明るく照明することが可能になり、「ADB」のランプとして機能させることができる。そして、このような配光制御を実現するために、この実施形態1では左右のヘッドランプLHL,RHLの各ロービームランプとハイビームランプの合計4つのランプのうち、1つのランプのみ、すなわち可変ロービームランプV−LoLのみを可変配光型のランプで構成すればよいので、特許文献1,2のように左右のヘッドランプをそれぞれ可変配光型のランプとして構成するものに比較して低コストに構成することができる。また、前方車両を検出するための撮像装置CAMも右ヘッドランプRHLにのみ設けているので、左ヘッドランプLHLの構成が複雑になることもなく、この点でも低コスト化が実現できる。
【0027】
また、このように1つのランプのみを可変配光型の可変ロービームランプV−LoLとして構成し、ヘッドランプの低コスト化を実現してもこの実施形態1では適正な配光制御が実現できる。すなわち、ランプECU100の前方車両検出部120は撮像装置CAMにおいて撮像した前方画像を解析して前方車両の位置を検出しているが、この際には当該前方車両の検出位置を撮像装置CAMの光軸Cxに対する角度として検出している。すなわち、
図8に示すように、検出しようとする前方車両CAR4の検出角度θCは撮像装置CAMの光軸Cxに対する角度となる。一方、可変配光型ランプV−LoLから前方車両CAR4に対する光照射角度θLはランプ光軸Lxに対する角度である。このとき、仮に
図8のように自動車CARの左右中央位置に撮像装置CAM1が配置されているとすると、前方車両CAR4に対する検出角度θC1とランプ照射方向の光照射角度θLとの間に水平方向の角度ずれ、すなわち視差が生じることになる。そのため、前方車両検出部120で検出した前方車両CAR4に対して適切な配光制御を行う際には配光制御部110及びシェード制御部130において視差を補正するための演算が必要になる。また、視差が完全に補正できない場合には、視差の分だけ前方車両CAR4に対する配光の照明領域との間にずれが生じ、このずれによって前方車両を眩惑し、あるいは前方領域をより広く照明することができない状況が生じることになる。
【0028】
実施形態1では、撮像装置CAMを可変配光型ランプV−LoLと水平方向の同じ位置に配設しているので、検出角度θCと光照射角度θLは等しくなり両者間に角度ずれ、すなわち視差が生じることはない。また、視差が生じても極めて僅かである。したがって、ランプECU100の配光制御部110やシェード制御部130における制御においては、前方車両CAR4に対する検出角度θCをそのまま光照射角度θLに置き換えることができ、各制御部における演算を簡略化するとともに精度の高い適切な配光制御が実現できる。特に、曲路を走行する際には前方車両の検出角度が急激に変化する状況であるので、このような状況変化に対しても迅速に対応した配光制御が実現できる。さらに、ランプユニットを左右にスイブル制御する構成のヘッドランプの場合でも検出した前方車両の検出角度をそのままスイブル制御に適用でき、演算の簡略化及び制御の追従性の高速化が実現できることになる。
【0029】
また、実施形態1では右ヘッドランプRHLに可変ロービームランプV−LoLと撮像装置CAMを配設しているが、可変ロービームランプと撮像装置を左ヘッドランプLHLに配設する構成としてもよく、右ヘッドランプRHLに配設した場合と同様な作用効果を得ることが可能である。また、さらなるヘッドランプの構成の簡略化を図るために、図示は省略するが左右のヘッドランプLHL,RHLにはそれぞれ1つのハイビーム・ロービーム切替型ランプを配設し、そのうち一方のハイビーム・ロービーム切替型ランプのシェードを分割構成のシェードで構成して可変配光型ランプとして構成するようにしてもよい。ハイビーム・ロービーム切替型ランプはシェードを制御することによってハイビーム配光とロービーム配光を切り替えることが可能なランプであり、このシェードを実施形態1のように複数の分割シェードで構成し、各分割シェードを独立して制御できるように構成するものである。このように構成した場合には、「ADB」に配光を切り替えたときには、他方のハイビーム・ロービーム切替型ランプをロービーム配光に制御し、一方のハイビーム・ロービーム切替型ランプの分割シェードを前方車両検出部での検出に基づいて独立して制御することにより実施形態1と同様の配光制御を実現することができる。
【0030】
(実施形態2)
実施形態1では撮像装置をヘッドランプに内装しているが、撮像装置はヘッドランプと別体に構成してもよい。
図9は実施形態2の概略構成を示す自動車の正面図であり、自動車CARの左右のヘッドランプLHL,RHLの構成は実施形態1と同じであるが、右ヘッドランプRHLのランプハウジング1内には撮像装置は配設していない点が相違している。その代わりに、撮像装置CAMを自動車CARの車室内のフロントガラスFGの上縁に沿った右側の位置、ここでは右ヘッドランプRHLに最も近い右端の位置に配設している。すなわち、右ヘッドランプRHLは実施形態1と同様に可変ロービームランプV−LoLを備えており、この可変ロービームランプV−LoLの照明光軸に撮像光軸が最も近くなる位置に撮像装置CARを配置している。また、この場合、フロントガラスFGに付着する雨滴や埃等が撮像に影響して撮像画像に基づく前方車両の検出精度の低下を防止するためにフロントワイパーで払拭される領域WP内に撮像装置を配設することが好ましい。
【0031】
図示は省略するが、前記撮像装置CAMは実施形態1と同様にランプECUに接続され、自車両の前方に存在する前方車両を検出することに用いられる。また、この前方車両の検出に基づいて右ヘッドランプRHLに配設した可変ロービームランプV−LoLの配光制御を実現することも同じである。この実施形態2では、撮像装置CAMの光軸Cxを可変ロービームランプV−LoLの光軸Lxの鉛直線上に配置することは難しいが、少なくとも
図8に示したような自動車CARの左右方向の中央位置に配置されている場合に比較すれば前記した視差を低減でき、その分ランプECUにおける配光制御を容易なものにし、かつ配光精度を向上することができる。また、これに加えて実施形態2では撮像装置CAMを自動車CARの車体の上部に配設しているので実施形態1のようにヘッドランプ内に配設した場合よりも撮像光軸の高さを稼ぐことができる。したがって、自車両の直近位置に先行車が存在するような状況でも先行車が撮像の邪魔になり難く、自車両の前方の広い領域、特に自車両の遠前方領域まで撮像することができ、前方車両の検出範囲を広げて検出精度を高めることが可能になる。これにより、右ヘッドランプの可変ロービームランプにおける配光制御の精度を高めることが可能になる。
【0032】
図9に示した実施形態2ではフロントワイパーの払拭領域WPが自動車CARの右側領域まで広いフロントガラスの運転席側、すなわち右側に可変配光型ランプ(可変ロービームランプV−LoL)を配設し、これに伴ってフロントガラスの右端位置に撮像装置CARを配置しているが、
図10に示すように、助手席側、すなわちフロントガラスFGの左側の領域まで払拭領域WPが拡大されているフロントワイパーを備える車両の場合には、可変配光型ランプ(可変ロービームランプV−LoL)を左ヘッドランプLHLに配設し、これに伴って撮像装置CARをフロントガラスFGの左側の位置に配設する構成としてもよい。このように可変配光型ランプV−LoL及び撮像装置CAMを自動車CARの助手席側に配設しても実施形態1において左ヘッドランプLHLに本発明を適用した場合と同様にランプ光軸と撮像光軸による視差を低減して適正な配光制御が実現できるとともにヘッドランプの構成の簡略化が実現できることは同じである。
【0033】
実施形態1では撮像装置を可変配光型ランプの直上位置ないしは略直上位置に配設しているが、設計上の制約等によって撮像装置を可変配光型ランプの直上位置または略直上位置に配設できない場合でも、実施形態2のように車両の左右方向のできるだけ可変配光型ランプに近い位置に配設することで、撮像装置の光軸と可変配光型ランプの光軸とのずれによる視差を低減し、配光精度を向上することが加納なる。また、このように撮像装置を車両の左側または右側に配置することにより、車両の中央領域にスペースを確保することができる。特に、近年の車両では車両制御対象の違いに応じてそれぞれ撮像装置を備えることにより複数の撮像装置を配設することが要求される場合があるが、そのような場合には確保された中央領域に別の撮像装置を配設することが可能になる。あるいは撮像装置に代えて、雨滴センサや照度センサ等のセンサを配設することも可能になる。
【0034】
実施形態1,2では可変配光型ランプとして可変シェードを切り替えて配光を制御する構成のランプの例について説明したが、例えば複数の光源を備え、これら光源を選択的に発光させることにより配光を変化させる構成のランプとして構成してもよい。すなわち、可変シェード構造ではシェードを切り替えるための機械的な構造が必要とされるが、複数のLED(発光ダイオード)を配列してランプを構成し、これらLEDを選択的に発光させることによって配光を変化させる可変配光型ランプを構成した場合には機械的な構造が不要になり、ランプ構成がさらに簡略化されて低コスト化に有利になる。LED以外の複数の光源を配列したランプとして構成しても同じであることは言うまでもない。
【0035】
実施形態1,2は撮像装置を可変配光型ランプとは別体に構成したものをヘッドランプ内や車両の車体に配設しているが、特許文献2のように撮像装置を一方のランプ、すなわち可変配光型ランプと一体に形成してもよい。このようにしても、他方のランプは通常のランプを適用することができるので左右の対をなすランプで構成されるランプ全体の構成の簡略化と低コスト化は実現できる。