(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。逆に、便宜上、断面図でなくてもハッチングを使用することもある。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0022】
図1および
図2は、ステントデリバリーカテーテル60と、このステントデリバリーカテーテル60に取り付けられるコントローラ10と、を示す分解斜視図である(なお、このようなコントローラと、そのコントローラに取り付けられるカテーテルと、を含むキットを、カテーテルキット80と称する)。
図3はステントデリバリーカテーテル60の一部を詳細に説明した説明図で、
図4はステントデリバリーカテーテル60がステント70を拡径させる場合を説明する説明図である。
【0023】
図5はステント70の斜視図で、
図6はコントローラ10を主として示す斜視図である。
図7はステント70を留置する前のコントローラ10を示す斜視図で、
図8は、ステント70を留置した後のコントローラ10を示す斜視図である。
【0024】
図9は、コントローラ10に内蔵されるスライダー11の斜視図であり、
図10はスライダー11の溝17にステントデリバリーカテーテル60の一部が嵌る状態を示す斜視図である。
【0025】
以降では、ステントデリバリーカテーテル60において、ステント70の配置される側を近位側、この近位側の反対側を遠位側、とする。また、各部材における側を明示する場合、近位側、遠位側と称することもある。また、各部材において、近位側の端を近位端、近位端の付近を近位端部とするとともに、遠位側の端を遠位端、遠位端の付近を遠位端部とする。
【0026】
まず、ステントデリバリーカテーテル60について、主に
図1〜5を用いて説明する。なお、ステントデリバリーカテーテル60は、ステント70を装着したデリバリーカテーテル60のことである(ただし、デリバリーカテーテル60をステントデリバリーカテーテル60と称してもよい)。
【0027】
図5に示すようなステント70は、血管または他の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄または閉塞部位を拡張させ、管腔サイズを維持するために、そこに留置される医療用具である。
【0028】
ステント70の種類は多々あり、例えば、環状の略波形構成要素[環状要素]71が一方向となる軸方向に連続することによって形成されたものが挙げられる(なお、略波形構成要素71は、伸長するストラット72を環状につなげることで形成される)。このステント70は、例えば、ニッケルチタン合金のパイプにレーザーカットを施したものを、拡径して熱処理することで形成される。
【0029】
また、このステント70は、外部からの拡張を抑制する部材を取り除くことによって自ら拡張していくセルフエクスパンダブルタイプであり、
図3に示すように、ステントデリバリーカテーテル60におけるアウターチューブ41の遠位端部の内腔41Lに取り付けられる。そして、
図4に示すように、このステント70は、アウターチューブ41の内面による規制を解除されると、アウターチューブ41の外径以上に拡径し、その拡径状態を維持しつつ、例えば血管内に留置される。
【0030】
次に、デリバリーカテーテル60について説明する。
図3および
図4に示すように、デリバリーカテーテル60は、アウターシャフト40、および、アウターシャフト40の内腔41Lに収まるインナーシャフト50を含む(詳説すると、アウターシャフト40のアウターチューブ41の内腔41Lに、インナーシャフト50のガイドワイヤルーメンチューブ51およびインナーチューブ56が収まる)。
【0031】
アウターシャフト40は、ステント70を縮径状態にして収容するアウターチューブ41と、アウターチューブ41の近位端部に取り付けられるマニホールド42(
図1等参照)とを含む。
【0032】
アウターチューブ[外側管状部材]41は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、または、ステントデリバリーカテーテル60を手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度、を有する部材(チューブ)で形成される。
【0033】
また、アウターチューブ41が移動させられる場合、アウターチューブ41の内側の層は、層の内周面に接触しているステント70との移動抵抗(摺動抵抗)を減少させ、アウターチューブ41の移動操作を、容易に行えるような低摩擦性を有する。
【0034】
以上のような特性を満たす観点から、アウターチューブ41は、例えば、
図3に示すように、外層41Tおよび内層41Nが樹脂材料で形成されており、外層41Tと内層41Nとの間に、金属素線の層(補強層)41Mを埋め込んだ3層の樹脂−金属複合チューブで形成されていると望ましい。
【0035】
外層41Tの材料は、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂(PTFE、PFA等)、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーン等の各種弾性樹脂材料が挙げられる。
【0036】
補強層41M(すなわち金属素線)の材料は、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、金、または、白金等の各種金属材料が挙げられる。なお、金属素線は、編組構造およびコイル構造の少なくとも一方の構造を含んでおり、アウターチューブ41の近位部から遠位部まで形成されていることが望ましい。
【0037】
内層41Nの材料としては、例えば、フッ素樹脂(PTFE、PFA等)、または、ポリエチレンの低摩擦材料が挙げられる。
【0038】
マニホールド42は、
図1に示すように、マニホールド構造を形成し、3つの口部(42A、42B、42C)を有する。このマニホールド42では、1つの口部42Aはアウターチューブ41の接続口になり、別の口部はアウターチューブ41Bの内腔41Lから露出するインナーチューブ56の挿入口になり、さらに別の口部42Cは血管内に血管造影剤や生理食塩水などを注入するための注入口になる(例えば、口部42Cは、手術前にアウターシャフト40の内部の空気を除去するために、生理的食塩水等を注入する部分として機能する)。
【0039】
なお、マニホールド42とアウターチューブ41との接続は、特に限定されず、例えば、接着または溶着が挙げられる。また、マニホールド42の材料は、特に限定されることなく、例えば、透明で耐衝撃性の高いポリカーボネートが挙げられる。
【0040】
インナーシャフト50は、ガイドワイヤルーメンチューブ[内側管状部材]51、先端チップ52、ストッパ53、補強部54、コアワイヤ55、インナーチューブ[内側管状部材]56、および、ハブ57を含む。
【0041】
ガイドワイヤルーメンチューブ51は、中空(ガイドワイヤールーメン51L)を有するチューブであり、アウターシャフト40のアウターチューブ41のルーメン41L内に、少なくとも一部が挿入される。そして、このガイドワイヤルーメンチューブ51のガイドワイヤルーメン51Lに、不図示のガイドワイヤーが挿入されることで、ガイドワイヤーに沿って、インナーシャフト50、ひいてはステントデリバリーカテーテル60が病変部に導かれる。
【0042】
ガイドワイヤルーメンチューブ51の材料としては、例えば、ポリイミド、芳香族ポリエーテルケトン(PEEK等)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーンのような弾性樹脂が挙げられる。このような材料でガイドワイヤルーメンチューブ51が形成されると、そのガイドワイヤルーメンチューブ51は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、または、ステントデリバリーカテーテル60を手技中に引っ張った際に伸びない程度の引っ張り強度、を有する。
【0043】
なお、ガイドワイヤルーメンチューブ51の近位側の開口の位置は、ステントデリバリーカテーテル60の種類により異なる。オーバーザワイヤー型の場合、ガイドワイヤルーメンチューブ51の近位側の開口の位置は、ハブ57の遠位端と同じ位置に形成される(要は、開口はハブ57のポート57Pになる)。一方、ラピッドエクスチェンジ型の場合、ガイドワイヤルーメンチューブ51の近位側の開口の位置は、後述のコントローラ10よりも遠位側に形成される。(なお、図面にて示されるステントデリバリーカテーテル60は、オーバーザワイヤー型である)。
【0044】
先端チップ52は、ガイドワイヤルーメンチューブ51の遠位部に、接着または溶着される。この先端チップ52によって、病変部(狭窄部)をステントデリバリーカテーテル60が通過し易くなる。
【0045】
先端チップ52の材料としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーンのような弾性樹脂が挙げられる。このような材料で先端チップ52が形成されると、先端チップ52は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、ステントデリバリーカテーテル60を手技中に引っ張った場合に破断しない程度の引っ張り強度、または、狭窄部を通過できる程度の長軸方向の剛性、を有する。
【0046】
ストッパ53は、先端チップ52よりも近位側において、インナーチューブ56の周囲に取り付けられる(接着または溶着等される)樹脂層(例えばチューブ)で、ステント70の内腔70Lに収まって、そのステント70の内壁に接触することで、ステント70の移動を規制する(なお、ストッパ53の全長は、ガイドワイヤルーメンチューブ51よりも短い)。すなわち、ストッパ53の外面とアウターチューブ41の内面とで、ステント70は挟み込まれる。
【0047】
ストッパ53の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーンのような弾性樹脂が挙げられる。このような材料でストッパ53が形成されると、ストッパ53は、柔軟性またはタック性を有することになり、摩擦接触によってステントの動きをコントロールできる。
【0048】
補強部54は、ストッパ53よりも近位側において、ガイドワイヤルーメンチューブ51の周囲に取り付けられる(接着または溶着等される)樹脂層(例えばチューブ)で、ガイドワイヤルーメンチューブ51を補強する(なお、補強部54の全長は、ガイドワイヤルーメンチューブ51よりも短い)。
【0049】
補強部54は、ストッパ53同様の樹脂材料で形成されると望ましい。このような材料で補強部54が形成されると、補強部54は、ストッパ53同様、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、ステントデリバリーカテーテル60を手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度、または、ステント70を押し出す力に負けない程度の長軸方向の剛性、を有する。
【0050】
コアワイヤ55は、補強部54とともにガイドワイヤルーメンチューブ51の周囲に取り付けられる(接着または溶着等される)線状部材で、ガイドワイヤルーメンチューブ51を補強する。一例を挙げると、コアワイヤ55は、補強部54とガイドワイヤルーメンチューブ51との間に取り付けられ、補強部54の全長より長く、ガイドワイヤルーメンチューブ51の近位端に向かって延びている。
【0051】
コアワイヤ55の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、金、または、白金の金属材料が挙げられる。このような材料でコアワイヤ55が形成されると、コアワイヤ55は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、または、ステント70を押し出す力に負けない程度の長軸方向の剛性、を有する。
【0052】
インナーチューブ56は、補強部54よりも近位側において、ガイドワイヤルーメンチューブ51の周囲に取り付けられる(接着または溶着等される)。詳説すると、インナーチューブ56は、補強部54の近位側に並列して、ガイドワイヤルーメンチューブ51を被覆するように取り付けられる(別表現すると、インナーチューブ56の内腔にガイドワイヤルーメンチューブ51およびコアワイヤ55が挿入される)。
【0053】
インナーチューブ56は、インナーシャフト50における近位側に配置されるため、インナーシャフト50とアウターシャフト40との相対的な移動の場合に、負荷がかかりやすい。そこで、インナーチューブ56は、この負荷に負けない程度の長軸方向の剛性が求められるため、金属材料で形成されることが望ましい。例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、金、または、白金等が、インナーチューブ56の材料として挙げられる。
【0054】
ハブ57は、
図1に示すように、インナーチューブ56の近位端部に取り付けられ、インナーシャフト50のルーメンに通じるポート57Pを有する。このポート57Pは、例えば、手術前にインナーシャフト50の内部の空気を除去するために、生理的食塩水等を注入するものである。
【0055】
また、このハブ57は、コントローラ10の所定位置(後述するハブ取付部20)に固定される。詳説すると、後述するクリップCPで、ハブ57はコントローラ10の所定位置に固定される。そこで、ハブ57は、クリップCPに対して適切に係り合うために、クリップCPの一部に係り合うスリット57Sを有する。
【0056】
なお、ハブ57の材料は、特に限定されることなく、例えば、透明で耐衝撃性の高いポリカーボネートが挙げられる。
【0057】
そして、以上のようなステントデリバリーカテーテル60では、
図4に示すように、例えば、アウターシャフト40が近位側に引っ張られることで、インナーシャフト50とアウターシャフト40とに相対的な移動が生じる。この移動により、アウターシャフト40のアウターチューブ41が、インナーシャフト50のストッパ53に重ならないようになる。すると、アウターチューブ41とストッパ53とで挟まれていたステント70は、アウターチューブ41によって押さえつけられなくなることから、拡径しつつ放出され、ひいては狭窄または閉塞部位を拡張する。
【0058】
ここで、
図6に示すような、ステントデリバリーカテーテル60をコントロールするコントローラ10について説明する。
【0059】
コントローラ10は、アウターシャフト40のアウターチューブ41の内面と、インナーシャフト50のストッパ53の外面とで挟み込まれるステント70を、所望位置に留置させるための制御部材である。詳説すると、コントローラ10は、
図7および
図8に示すように、アウターシャフト40を、インナーシャフト50に対して移動させることで、ステント70を挟み込む2つの部材(アウターチューブ41・ストッパ53)のうち、外側を押さえるアウターチューブ41をステント70から乖離させる(
図4参照)。これにより、ステント70は、ステントデリバリーカテーテル60から放出され、所望位置に留置される。
【0060】
このようなコントローラ10は、
図1および
図2に示すように、ハウジング[保持体]HG(HG1・HG2)、クリップCP、スライダー[移動体]11、回転ホイール31、スイッチギア32、および、ホイールカバー35を含む。
【0061】
ハウジングHGは、コントローラ10の外装で、ステントデリバリーカテーテル60の一部を保持するとともに、スライダー11を移動可能に保持する。例えば、
図1および
図2に示すように、ステントデリバリーカテーテル60の遠位側を挟み込む第1ハウジングHG1および第2ハウジングHGが挙げられる。
【0062】
第1ハウジングHG1は、インナーシャフト50のハブ57を取り付けるハブ取付部20、ハブ取付部20から一方向に延びる第1延伸部EL1、および、第1延伸部EL1の中途付近において回転ホイール31およびスイッチギア32(これらをギア類と称する)を取り付けるギア類取付部23、を含む。
【0063】
ハブ取付部20の取付機構は、ハブ57を取り付けて固定する構造(ひいては、インナーチューブ56を固定する構造)であれば、特に限定されるものではない。例えば、ハブ57の一片57Cを挟み込めるスリット20Sが、取付機構になる。また、このハブ取付部20には、ハブ57をより強固に固定するためのクリップCPを差し込むための固定開孔20H・20Hが形成される。
【0064】
第1延伸部EL1は、ハブ取付部20に取り付けられたハブ57から延びるインナーチューブ56等を覆うために、そのインナーチューブ56(ひいては、ステントデリバリーカテーテル60)の延び方向に沿って延びる。また、第1延伸部EL1は、スライダー11を移動可能に保持するための、スライド機構{第1開口レールHR1・溝レールDR(
図7参照);詳細は後述}を有する。
【0065】
ギア類取付部23は、第1延伸部EL1の延び方向に対して交差する方向に進出した部材で、ギア類31・32の取り付け箇所であるとともに、ギア類31・32の一部を覆う。
【0066】
なお、ギア類取付部23は、
図1および
図2では、第1延伸部EL1の中途付近に形成されるが、その位置は特に限定されるものではない。また、ギア類取付部23の形状も、半円面を含む形状になっているが、その形状も特に限定されるものではない。ただし、術者が回転ホイール31を回転させなくてはならないことから、ギア類取付部23には、回転ホイール31(詳説すると、サムホイール31T)の一部を露出させる露出開口23Hが形成される。
【0067】
第2ハウジングHG2は、第1ハウジングHG1に対向して連結されることで、その第1ハウジングHG1とともに、ステントデリバリーカテーテル60の一部を覆う。この第2ハウジングHG2は、第2延伸部EL2およびギア類対向部24を含む。
【0068】
第2延伸部EL2は、第1延伸部EL1およびハブ取付部20に対向する部材で、第1延伸部EL1同様に、ハブ57から延びるインナーチューブ56等を覆うために、そのインナーチューブ56の延び方向に沿って延びる。また、第2延伸部EL2は、第1延伸部EL1同様、スライダー11を移動可能に保持するための、スライド機構(第2開口レールHR2・突起レールPR;詳細は後述)を有する。
【0069】
ギア類対向部24は、第2延伸部EL2の延び方向に対して交差する方向に進出することで、ギア類取付部23に対向する部材である。
【0070】
そして、以上のような第1ハウジングHG1および第2ハウジングHG2は、向かい合って、ステントデリバリーカテーテル60の一部を保持するスライダー11を挟みつつ、連結される(なお、連結の仕方は特に限定されない)。ただし、スライダー11は、ハウジングHGに対して移動(スライド)するので、スライダー11に取り付けられたステントデリバリーカテーテル60と、ハウジングHGとが干渉しないように、第1ハウジングHG1と第2ハウジングHG2との間には、
図6に示すように、移動空間SPが生じるように設計される。
【0071】
クリップCPは、ハブ57(ひいては、インナーシャフト50)をハウジングHGに固定するもので、二叉状の足CF・CFを有する。クリップCPは、足CFと足CFとの空間を、ハブ57のスリット57Sに嵌めつつ、足CF・CFをハブ取付部20の固定開孔20H・20Hに差し込む。これにより、ハブ57は、ハウジングHGに対して固定される。なお、このクリップCPの足CF・CFが、ハウジングHGの固定開孔20H・20Hから外されると、比較的容易に、ハブ57がハウジングHGから外れる。
【0072】
スライダー[移動体]11は、アウターシャフト40をインナーシャフト50に対して移動させるためのもので、ハウジングHGに対して移動可能に保持される。このスライダー11は、
図9および
図10に示すように、本体12、引き手13(13A・13B)、およびラックギア14、を含む。
【0073】
本体12は、長尺状で、その長尺方向に沿う窪み12Hを有し、その窪み12Hに、マニホールド取付部15と、インナーチューブ嵌め込み部[規制部]16と、を含む。
【0074】
マニホールド取付部15は、マニホールド42(ひいては、アウターシャフト40)を本体12に固定させる。このマニホールド取付部15の取付機構は、マニホールド42を取り付けて固定する構造であれば、特に限定されるものではない。例えば、口部42Aと口部42Cとの間に軸部を挟み込む挟持部15Aと、口部42Bと口部42Cとの間の軸部を挟み込む挟持部15Bが、取付機構になる。
【0075】
インナーチューブ嵌め込み部16は、本体12の全長方向に沿う溝[規制部]17を有し、マニホールド取付部15よりも近位側に形成される。そして、この溝17に、アウターチューブ41から露出するインナーチューブ56が収まる。これにより、インナーチューブ56は、撓みにくくなる(すなわち、インナーチューブ56は、本体12の全長方向に沿うように規制される)。
【0076】
なお、この溝17の幅は、例えば、インナーチューブ56の外径よりも若干大きく、溝17の側面17Sとインナーチューブ56との間に過度の隙間が生じないように設計される。ただし、これに限定されることはなく、溝17の幅とインナーチューブ56の外径とがほぼ同程度で、例えば、溝側面17S・17Sとインナーチューブ56の外周面56Tとは接触していてもよい。要は、溝17は、アウターチューブ41から露出するインナーチューブ56を収め、スライダー11の移動に起因して、そのインナーチューブ56を撓ませないように規制できれば、溝17の幅は、特に限定されない。
【0077】
また、溝17の深さは、インナーチューブ56の変位を防止できる程度の長さがあれば、特に限定されない。例えば、
図10に示すように、この溝17の深さは、インナーチューブ56の外径よりも大きくて構わない。
【0078】
引き手13(13A・13B)は、術者の把持する箇所で、本体12の全長方向に沿って延びる2つの側壁12A・12Bに個別に形成される。例えば、本体12の近位端部にて、本体12を挟み込むように、側壁12A・12Bから突き出て、引き手13A・13Bは形成される。
【0079】
そして、引き手13Aは、側壁12Aに対面する第1ハウジングHG1の第1延伸部EL1に形成される第1開口レールHR1に嵌り、引き手13Bは、側壁12Bに対面する第2ハウジングHG2の第2延伸部EL2に形成される第2開口レールHR2に嵌る(なお、第1開口レールHR1と第2開口レールHR2とは、ハブ取付部20よりも遠位側で、ハウジングHGの全長方向に沿って延びている)。
【0080】
なお、引き手13A・13Bは、第1開口レールHR1および第2開口レールHR2に嵌り、それらレールHR1・HR2上を移動できる大きさであれば、特に限定されない。
【0081】
ラックギア14は、板状で、本体12の全長方向に沿って延びる2つの側壁12A・12Bのうち、一方の側壁12Aに形成される。詳説すると、ラックギア14は、天面に歯形を刻み、自身の長手の縁を本体12の全長方向に沿わせつつ側壁12Aに固定させる。そして、このラックギア14の歯は、本体12の全長方向に沿って並び、歯形に噛み合うスイッチギア32に対し、回転ホイール31の回転に起因する動力が与えられることで、スライダー11は移動する。
【0082】
なお、板状のラックギア14において、第1ハウジングHG1に面する長手の縁14Eは、対向する第1ハウジングHG1の内側に形成される溝レールDRに嵌る(なお、溝レールDRは第1開口レールHR1よりも遠位側に形成される)。
【0083】
また、側壁12Bには、
図9に示すように、本体12の全長方向に沿う切れ込みレールSRが形成され、この切れ込みレールSRは、対向する第2ハウジングHG2の内側に形成される突起レールPRを嵌める(なお、
図1および
図2に示すように、突起レールPRは第2開口レールHR2よりも遠位側に形成される)。
【0084】
つまり、スライダー11では、引き手13が開口レールHRに嵌り、ラックギア14の縁14Eは第1ハウジングHGの1の溝レールDRに嵌り、ラックギア14の切れ込みレールSRは第2ハウジングHG2の突起レールPRに嵌る。そのため、術者が引き手13を把持して、近位側に向かって引っ張ると、スライダー11は、各レールに沿って移動する(すなわち、後述の回転ホイール31を回転させなくても、スライダー11は移動する)。
【0085】
回転ホイール31は、
図1及び
図2に示すように、軸孔31Hを有する回転ギア31Gと、この回転ギア31Gに連なるサムホイール31Tと、を含む。
【0086】
回転ギア31Gは、円盤状で、縁に、軸孔31Hに平行な歯を有する平歯車である。
【0087】
サムホイール31Tは、回転ギア31Gよりも大きな円盤で、回転ギア31Gの軸孔31Hと共通の軸孔31Hを有し、軸孔方向に積み重なるように、回転ギア31Gに連なる。そのため、サムホイール31Tが回転すると、回転ギア31Gも回転する。また、サムホイール31Tの円盤の縁には、術者の指が引っかかりやすいような加工が施される。
【0088】
スイッチギア32は、回転軸32Xを有する平歯車で、その歯は、回転ギア31Gの歯およびラックギア14の歯に噛み合う。そして、このスイッチギア32は、術者によるサムホイール31Tの回転方向とラックギア14の移動方向とを、術者の使いやすいように関連づけるための歯車である。
【0089】
詳説すると、スイッチギア32は、サムホイール31Tが近位側に向かって回転させられる場合、スライダー11を近位側に移動させる一方、サムホイール31Tが遠位側に向かって回転させられる場合、スライダー11を遠位側に移動させる。
【0090】
ホイールカバー35は、回転ホイール31の軸孔31Hに通じる回転軸35Xを有し、その回転軸35Xを軸孔31Hに挿入させた状態で、第1ハウジングHG1のギア類取付部23に固定される。すなわち、回転ホイール31は、ホイールカバー35の回転軸35Xを中心に回転する。
【0091】
なお、ホイールカバー35がギア類取付部23に固定される場合、スイッチギア32は、回転ギア31Gとラックギア14とに噛み合った状態で、回転軸32Xを、ギア類取付部23の内側の受け孔(不図示)回転可能に保持させる。そのため、回転ホイール31が回転すると、スイッチギア32も従動し、さらに、スイッチギア32の回転に、ラックギア14も従動する。
【0092】
すなわち、以上のようなコントローラ10にステントデリバリーカテーテル60が装着された場合、インナーシャフト50に対してアウターシャフト40を移動させる仕方、すなわち、インナーシャフト50を固定するハウジングHGに対して、アウターシャフトを固定するスライダー11を近位側に移動させる仕方は、2通りある。
【0093】
第1の仕方は、術者がスライダー11の引き手13を把持して、スライダー11そのものを近位側に移動させる仕方と、第2の仕方は、術者がサムホイール31T回転させることで、ラックギア14の歯のピッチ単位で、スライダー11を近位側に移動させる仕方である。
【0094】
そして、これらの移動の仕方では、第2の仕方のほうが、第1の仕方に比べて、スライダー11を微小に移動させられる。したがって、第2の仕方は、ステント70の留置位置を決定する場合に適する。一方で、第1の仕方のほうが、第2の仕方に比べて、スライダー11を一度に長距離移動させられる。したがって、第1の仕方は、ステント70をデリバリーカテーテル60から完全に放出させる場合に適する。つまり、このコントローラ10であれば、ステントデリバリーカテーテル60の多様な使用方法を提供できる。
【0095】
ところで、第1の仕方および第2の仕方のいずれでも、インナーシャフト50(詳説すると、インナーチューブ56)を取り付けるハウジングHGに対して、アウターシャフト40(詳説すると、アウターチューブ41)を取り付けるスライダー11が移動することで、インナーチューブ56とアウターチューブ41との間に相対的な移動が生じる。
【0096】
この移動をスムーズにさせるために、アウターシャフト40(詳説すると、アウターチューブ41)と、そのアウターシャフト40の内腔41Lに収まるインナーシャフト50(詳説すると、ガイドワイヤルーメンチューブ51またはインナーチューブ56)と、を有したステントデリバリーカテーテル60をコントロールするコントローラ10は、以下のようになっている。
【0097】
すなわち、インナーシャフト50を固定するハウジングHGに対して移動するスライダー11は、インナーチューブ56を、スライダー11の移動方向に沿うように規制するインナーチューブ嵌め込み部16を含む。
【0098】
このようになっていると、例えば、アウターチューブ41の近位端(詳説すると、マニホールド42)からインナーチューブ56を露出させている状態で、アウターチューブ41の近位端が、インナーチューブ56の近位端(詳説すると、ハブ57)に向かって移動する場合、露出するインナーチューブ56は、インナーチューブ嵌め込み部16によって、撓まないように規制される(すなわち、撓もうとするインナーチューブ56の外周面56Tに溝底面17B、溝側面17S・17Sが接触することで、そのインナーチューブ56の変位が抑えられ、撓まない)。
【0099】
その結果、アウターチューブ41はスムーズに移動し、ステント70が、所望位置に留置しやすくなる。
【0100】
なお、インナーチューブ嵌め込み部16は、
図9に示すような、平面状の溝底面[接触部材]17Bと平面状の溝側面17S・17S[接触部材]とが直交する溝17が一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0101】
例えば、
図11に示すように、溝底面17Bが、インナーチューブ56の外周面56Tの曲面に対応して、曲面になっていてもよいし、
図12に示すように、溝底面17Bおよび溝側面17S・17Sが、インナーチューブ56の外周面56Tの曲面に対応して、曲面になっていてもよい。
【0102】
要は、インナーチューブ56の外周面56Tの少なくとも一部に向く溝の面17B・17S・17Sは、その外周面56Tの形状に沿った形状を有すればよい。
【0103】
このようになっていると、インナーチューブ56の外周面56Tが、溝の内側面(溝底面17B・溝側面17S・17S)に対して、がたつきにくくなる。そのため、インナーチューブ56は、インナーチューブ嵌め込み部16によって、より撓みにくくなる(別表現すると、インナーチューブ56が変位しにくくなる)。
【0104】
また、
図9に示すインナーチューブ嵌め込み部16は、長尺状であるが、長さ(全長)は、特に限定されない。要は、インナーチューブ56を撓まないように規制できる長さであればよい。また、インナーチューブ嵌め込み部16の個数も、単数に限定されるものではなく、複数であっても構わない。
【0105】
また、溝17の全長形状は、直線を例に挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、曲線の全長形状を有する溝17であっても構わない。要は、スライダー11の移動方向(すなわち、スライダー11の移動軌跡の形状)に合わせて、インナーチューブ56を規制できれば、溝17の全長形状は、特に限定されない{例えば、コントローラ10(特にハウジングHG・スライダー11)の全長形状が湾曲していれば、スライダー11の移動方向も溝17の全長方向も湾曲する}。
【0106】
また、インナーチューブ嵌め込み部16は、インナーチューブ56を境にして対向する片材(溝側面17S・17S)を含んでいればよい(別表現すると、インナーチューブ56の外周面56Tに接触可能な接触部材が、少なくとも2つあればよい)。
【0107】
このようになっていれば、インナーチューブ56の全長方向に対して交差する方向に、そのインナーチューブ56が撓もうとしても、片材でその撓みを抑えられる。すなわち、インナーチューブ嵌め込み部16は、インナーチューブ56(詳説すると、インナーチューブ56の外周面56T)を挟持できるような構造であればよい。そして、このような挟持構造であれば、インナーチューブ嵌め込み部16は溝構造でなくても構わない。
【0108】
また、インナーチューブ嵌め込み部16に加えて、
図13に示すような、受け手[規制部]18がスライダー11に含まれてもよい。この受け手18は、インナーチューブ嵌め込み部16によるインナーチューブ56の規制をより強固にするためのものである。
【0109】
例えば、
図9に示すようなインナーチューブ嵌め込み部16が溝底面17B・溝側面17S・17Sを有する溝17である場合、そのインナーチューブ嵌め込み部16は、溝底面17Bから乖離する方向(例えば、溝底面17Bに対して垂直方向でかつ溝底面17Bから乖離する方向)に対するインナーチューブ56の撓みを十分に規制できないこともあり得る。
【0110】
そこで、
図13に示すように、2つの爪部18N・18Nを有する二股状の受け手18がスライダー11に取り付けられてもよい(なお、爪部18N・18Nは、溝底面17Bに対して立ち上がる方向に延び、これら爪部18N同士の間隔の開口と溝17の開口とは同じ側を向く)。
【0111】
詳説すると、爪部18N・18Nを含む受け手18では、インナーチューブ56の全長方向に対する交差断面において(別表現すると、受け手18の溝の全長方向に対する交差断面において)、内面が、
図14に示すように、英字のC状になっている{要は、爪部18N(ひいては受け手18)において、インナーチューブ56の外周面56Tの少なくとも一部に向く面は、外周面56Tの形状に沿っている)}。
【0112】
このように、爪部18N・18Nにおいて互いに対向する面が曲面になってC状になっていると、この受け手18は、爪部18N・18N同士の間に、インナーチューブ56を収めることで、溝17同様に、インナーチューブ56を挟み込む(したがって、この受け手18は、溝17の一例ともいえる)。
【0113】
さらには、この受け手18は、二股状の底18Bから乖離する方向(すなわち、溝底面17Bから乖離する方向)に撓もうとするインナーチューブ56を、爪部18N・18Nの先端部分18Tで規制する(このような先端部分18Tを止め部[接触部材]18Tとする)。
【0114】
この結果、受け手18は、溝底面17B・溝側面17S・17Sで規制できない方向に撓もうとするインナーチューブ56を、止め部18Tで押さえる。つまり、受け手18(別表現すると、溝17と、受け手18の底18Bおよび止め部18T)は、インナーチューブ56の全長方向に対する交差断面において、全放射方向へのインナーチューブ56の変位を規制する。
【0115】
なお、受け手18の形状は、インナーチューブ56の全長方向に対する交差断面においてC状であることに限定されるわけではない。
【0116】
要は、
図15に示すように、インナーチューブ56の交差断面において、インナーチューブ56の中心Cを通る直線分割線DLで分けられた2領域AR1・AR2のうち、一方の領域AR1のインナーチューブ56外周面56Tの2点(星印参照)、他方の領域AR2のインナーチューブ56の外周面56Tの1点(星印参照)、に対して、接触可能な接触部材を、受け手18が含めばよい。
【0117】
このようになっていれば、インナーチューブ56の外周面56Tに対して3点接触できるとともに、その3点接触で、インナーチューブ56の交差断面における全放射方向の変位を抑えられる。
【0118】
ところで、
図9では、インナーチューブ嵌め込み部16が、インナーチューブ56の撓みを抑制させ、
図13では、インナーチューブ嵌め込み部16と受け手18とが、インナーチューブ56の撓みを抑制させる。しかし、これらに限らず、
図16に示すようなコントローラ10であってもよい。すなわち、インナーチューブ56を挟み込む部材として、受け手18のみを含むコントローラ10であっても構わない。なぜなら、受け手18は、溝構造を有するので、インナーチューブ嵌め込み部16と同様の機能を発揮するためである。
【0119】
要は、インナーチューブ56の撓みを防止するためには、インナーチューブ56の外周面56Tに対する接触(接触する部材)が必要になり、例として、溝底面17Bおよび溝側面17S・17Sという接触部材を含むインナーチューブ嵌め込み部16と、爪部18N・18Nおよび爪部根元(受け手18の二股状の底18B)という接触部材を含む受け手18と、が挙げられる。
【0120】
そして、
図9および
図16に示すように、コントローラ10において、1つ部品(インナーチューブ嵌め込み部16または受け手18)に、接触部材が配置されていてもよいし、
図13に示すように、2つの部品(インナーチューブ嵌め込み部16と受け手18)に分かれて、接触部材が配置されていてもよい。
【0121】
また、インナーチューブ嵌め込み部16と受け手18の爪部18Nとが、連結したコントローラであってもよい。例えば、
図17に示すように、爪部18Nが、一方の溝側面17Sの先端付近から、他方の溝側面17Sの先端に向かって延び出ていてもよい。
【0122】
このようになっていると、爪部18Nの先端18Tと他方の溝側面17Sの先端との間に隙間が生じ、その隙間を通じて、インナーチューブ56は嵌り、インナーチューブ嵌め込み部16の溝17に収まる。そして、このように溝17にインナーチューブ56が収まると、そのインナーチューブ56は、溝17と爪部18Nとによって、撓みを抑えられる。