(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の胴幅可変式水平ロール装置において、前記ねじ筒切替手段は、1)前記ねじ筒の他側に固定されたクラッチ受け座と、2)第2のスプライン結合を介して前記アーバー軸の他側に軸方向に移動可能に装着されると共に、他側移動時には前記クラッチ受け座と第3のスプライン結合によって前記アーバー軸と前記クラッチ受け座を介して前記ねじ筒を一体化するクラッチスリーブと、3)前記クラッチスリーブの所定位置に軸受を介して取り付けられ、前記クラッチスリーブが一側に移動時に前記クラッチ受け座に当接するクラッチ作動座を有するクラッチベースと、4)該クラッチベースを軸方向に移動させるアクチュエータとを備え、
該アクチュエータによって前記クラッチベースを一側に移動させて、前記ドライブ側及びワークサイド側水平ロールの間隔調整が可能となり、前記アクチュエータによって前記クラッチベースを他側に移動させて、前記第3のスプライン結合によって、前記アーバー軸と前記ねじ筒の一体化を行うことを特徴とする胴幅可変式水平ロール装置。
請求項1又は2記載の胴幅可変式水平ロール装置において、前記スリーブの他側の内側には環状の突起が設けられ、前記アーバー軸及び前記スリーブに螺合した前記ねじ筒の先端と前記突起との間には、圧縮バネが配置されて、それぞれ螺合する前記アーバー軸、前記ねじ筒、及び前記スリーブのバックラッシュの軽減を図っていることを特徴とする胴幅可変式水平ロール装置。
【背景技術】
【0002】
従来、H形鋼のユニバーサル圧延機において、ユニバーサルミルの水平ロール胴幅をオンラインで変更することにより、異なる寸法のH形鋼を圧延する胴幅可変式水平ロール装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
この胴幅可変式水平ロール装置は、例えば、
図7(A)、(B)に示すように、H形鋼のフランジ及びこれを連結するウェブを圧延する対となる水平ロールを有し、一方の水平ロール(図示せず)はミルモータによって駆動されるロール軸88のドライブ側(駆動側)に固定され、他方の水平ロール85はスプライン89によってロール軸88のワークサイド側(反駆動側)に連結する中空軸80に固定されている。なお、
図7(A)は圧延稼動時(ロール胴幅Wがmin(ミニマム))の状態を、
図7(B)はロール胴幅変更時(ロール胴幅をmin(ミニマム)からmax(マックス)へ変更)の状態を示している。
【0003】
中空軸80の内側には、ロール軸88と軸心を一致させ、一部に雄ねじ91が形成されているスクリュー軸81が設けられ、このスクリュー軸81に雄ねじ83が設けられた中空ねじ駒82が螺合され、中空ねじ駒82の雄ねじ83は中空軸80の内部に形成されている雌ねじ84と螺合している。そして、中空軸80の端部には、スクリュー軸81の回転をロックするロック側と、スクリュー軸81を中空軸80と連結する側に切り換えるクラッチ機構が設けられている。そして、クラッチ機構を操作してスクリュー軸81を止めた状態で、ロール軸88をミルモータによって駆動すると、固定されたスクリュー軸81の雄ねじ91に対して中空軸80の雌ねじ84が移動し、結果として、中空軸80に設けられている左右の水平ロールの間隔が変わる。水平ロールの移動によって左右の水平ロールの中心位置も圧延ラインに対してずれるので、中空軸80及びロール軸88の全体を左右に動かすセンターリング装置を設け、左右の水平ロールで形成する胴幅の中心が圧延ラインの中心に一致するように調整している。更に、雄ねじ83が形成される中空ねじ駒82の基部の外周側にはフランジ90が設けられ、スクリュー軸87に形成された雄ねじ91にはスラスト荷重受けナット92が螺合している。
【0004】
このような構成とすることにより、中空ねじ駒82の外側に形成した雄ねじ83と中空軸80の内側に形成した雌ねじ84を螺合させることで、中空ねじ駒82を中空軸80に取り付けると共に、中空ねじ駒82にスクリュー軸81を回転自在に挿入することができる。そして、スラスト荷重受けナット92をスクリュー軸81の雄ねじ91に螺合させて中空ねじ駒82のフランジ90に当接させることで、水平ロール85の側面に作用する水平荷重Fv(ロール水平反力)をスラスト荷重受けナット92を経由してスクリュー軸軸受87にて支持することができる。
【0005】
軸受箱86の軸方向中心とスクリュー軸軸受87の軸方向中心との距離L´は、(1)式で表される。
L´=La+Lb+Lc+Ld+S ・・・ (1)
La:胴幅Wmin時の軸受箱86の中心から中空軸80の端面までの距離
Lb:中空ねじ駒82のフランジ90の幅寸法
Lc:スラスト荷重受けナット92のフランジ90側の端面からスクリュー軸軸受87の中心までの距離
Ld:スラスト荷重受けナット87の幅寸法
S:ロール移動量
なお、軸受箱86の中心とスクリュー軸軸受87の中心との距離L´には、スラスト荷重受けナット92の幅寸法が含まれている。
【0006】
更に、中空ねじ駒82のねじ長さP´は、(2)式で表される。
P´=m+S ・・・(2)
m:中空軸80に設けられた雌ねじ84の長さ(水平荷重Fvを支持する部分の寸法)
S:水平ロール85のロール移動量
このように、中空ねじ駒82のねじ長さP´は、中空ねじ駒82の雄ねじ83によって調整される水平ロール85のロール移動量Sと、中空軸80の雌ねじ84長さの総和となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の胴幅可変式水平ロール装置は、以下のような問題点があった。
(1)中空軸側に固定されている水平ロールに大きな水平方向の荷重がかかった場合に、その荷重は中空軸の雌ねじを経路してスクリュー軸にかかる。しかし、一般にスクリュー軸は径が小さいこともあって、大きな荷重を受けることができなかった。
(2)スクリュー軸の回転をロックする側とスクリュー軸を中空軸と連結する(ロック解除)側に切り換える複雑な構造のクラッチ機構が必要となる。
(3)また、左右の水平ロールの胴幅を調整すると、左右の水平ロールの中心位置が圧延ラインの中心に対してずれるので、装置全体を移動させるセンターリング装置が必要であり、装置全体が複雑化するという問題があった。
(4)圧延するH形鋼のサイズの大小範囲が広い場合、軸受箱の中心からスクリュー軸軸受の中心までの距離には、ロール胴幅変更のために必要な中空軸と中空ねじ駒との間のねじ噛み合い長さと、スラスト荷重受けナットの幅に相当する長さが余分に必要となり、コンパクトにできないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、小型で、大きなロール水平反力の作用に耐え、ドライブ側及びワークサイド側の水平ロールのロール胴幅中心を圧延ラインの中心線上に維持しながら簡便な操作でロール胴幅の調整が可能な胴幅可変式水平ロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置は、一側に回転駆動源が連結され、両側を軸受箱によって支持されたアーバー軸(ロール軸、主軸)と、該アーバー軸の
中央部より他側に
一側がスプライン結合
されて装着されたスリーブと、前記アーバー軸の中央部より一側に固着され、圧延時に被圧延材の一側を押圧するドライブ側水平ロール及び前記スリーブの一側に固着され、圧延時に該被圧延材の他側を押圧するワークサイド側水平ロールと、前記アーバー軸に対して前記ドライブ側水平ロール及び前記ワークサイド側水平ロールの位置を調整するロール位置決め機構とを有する胴幅可変式水平ロール装置において、
前記ロール位置決め機構は、1)前記アーバー軸の他側の一部に形成された第1の雄ねじと、2)前記スリーブの他側に形成された第1の雌ねじと、3)内側に前記第1の雄ねじに螺合する第2の雌ねじが、外側に前記第1の雌ねじに螺合する第2の雄ねじがそれぞれ形成され、前記アーバー軸及び前記スリーブにそれぞれ螺合するねじ筒と、4)前記ドライブ側及びワークサイド側水平ロールの間隔調整時には、前記ねじ筒の回転を停止させ、圧延時には前記ねじ筒と前記アーバー軸の回転を一体化するねじ筒切替手段とを有し、
前記ねじ筒に形成された前記第2の雌ねじと前記第2の雄ねじは、同一の送りピッチで螺旋方向が異なっている。
【0011】
本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置において、前記ねじ筒切替手段は、1)前記ねじ筒の他側に固定されたクラッチ受け座と、2)第2のスプライン結合を介して前記アーバー軸の他側に軸方向に移動可能に装着されると共に、他側移動時には前記クラッチ受け座と第3のスプライン結合によって前記アーバー軸と前記クラッチ受け座を介して前記ねじ筒を一体化するクラッチスリーブと、3)前記クラッチスリーブの所定位置に軸受を介して取り付けられ、前記クラッチスリーブが一側に移動時に前記クラッチ受け座に当接するクラッチ作動座を有するクラッチベースと、4)該クラッチベースを軸方向に移動させるアクチュエータとを備え、該アクチュエータによって前記クラッチベースを一側に移動させて、前記ドライブ側及びワークサイド側水平ロールの間隔調整を可能とし、前記アクチュエータによって前記クラッチベースを他側に移動させて、前記第3のスプライン結合によって、前記アーバー軸と前記ねじ筒の一体化を行うのが好ましい。
【0012】
本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置において、前記スリーブの他側の内側には環状の突起が設けられ、前記アーバー軸及び前記スリーブに螺合した前記ねじ筒の先端と前記突起との間には、圧縮バネが配置されて、それぞれ螺合する前記アーバー軸、前記ねじ筒、及び前記スリーブのバックラッシュの軽減を図っていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置においては、ロール位置決め機構が、1)アーバー軸の他側の一部に形成された第1の雄ねじと、2)スリーブの他側に形成された第1の雌ねじと、3)内側に第1の雄ねじに螺合する第2の雌ねじが、外側に第1の雌ねじに螺合する第2の雄ねじがそれぞれ形成され、アーバー軸及びスリーブにそれぞれ螺合するねじ筒と、4)ドライブ側及びワークサイド側水平ロールの間隔調整時には、ねじ筒の回転を停止させ、圧延時にはねじ筒とアーバー軸の回転を一体化するねじ筒切替手段とを有するので、アーバー軸の直径をねじ筒と螺合可能なサイズまで太くすることができ、水平ロールの側部に作用する水平反力(水平荷重)を大きくすることができる。
【0014】
また、ねじ筒の回転を停止させ、回転駆動源によりアーバー軸を回転させると、アーバー軸にスプライン結合したスリーブは、アーバー軸と同一回転動作となる。ここで、ねじ筒の第2の雌ねじと第2の雄ねじは、同一の送りピッチで螺旋方向が異なっているので、ねじ筒に対してそれぞれ螺合するアーバー軸及びスリーブは、逆方向に同一距離だけ移動する。このため、ドライブ側及びワークサイド側水平ロールのロール胴幅中心を圧延ラインの中心線上に維持しながらロール胴幅の調整ができるので、オンラインでのロール胴幅調整が容易になる。
【0015】
そして、アーバー軸とスリーブが逆方向に同一距離だけ移動するので、スリーブとねじ筒との間のねじ噛み合い長さを従来に比較して1/2にすることができ、ロール位置決め機構をコンパクトにすることができる。更に、ドライブ側及びワークサイド側水平ロールの間隔調整時及び圧延時において、ねじ筒の位置は常に一定位置になるので、ねじ筒に必要な支持部材の位置も一定位置に固定することができる。このため、ロール位置決め機構を既設の水平ロール装置に付加して胴幅可変式水平ロール装置に改造することが容易にできる。
【0016】
本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置において、ねじ筒切替手段が、1)ねじ筒の他側に固定されたクラッチ受け座と、2)第2のスプライン結合を介してアーバー軸の他側に軸方向に移動可能に装着されると共に、他側移動時にはクラッチ受け座と第3のスプライン結合によってアーバー軸とクラッチ受け座を介してねじ筒を一体化するクラッチスリーブと、3)クラッチスリーブの所定位置に軸受を介して取り付けられ、クラッチスリーブが一側に移動時にクラッチ受け座に当接するクラッチ作動座を有するクラッチベースと、4)クラッチベースを軸方向に移動させるアクチュエータとを備える場合、ねじ筒の回転停止(即ち、アーバー軸とねじ筒の連結解除)、アーバー軸とねじ筒の一体化(アーバー軸とねじ筒の連結)を一動作で行うことができ、オンラインでのロール胴幅調整が更に容易になる。
【0017】
本発明に係る胴幅可変式水平ロール装置において、スリーブの他側の内側には環状の突起が設けられ、アーバー軸及びスリーブに螺合したねじ筒の先端と突起との間には、圧縮バネが配置されて、それぞれ螺合するアーバー軸、ねじ筒、及びスリーブのバックラッシュの軽減を図っている場合、アーバー軸を回転させた際、スリーブを応答性よく移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る胴幅可変式水平ロール装置10、10aは、例えば、H形鋼11(被圧延材の一例)を製造するユニバーサル圧延機12に、上下対となって用いられ、一側にカップリングを介して回転駆動源(図示せず)が連結され、両側を軸受箱13、14、13a、14aによって支持されたアーバー軸15、15aと、アーバー軸15、15aの他側にスプライン結合によって装着されたスリーブ16、16aとを有している。ここで、軸受箱13、14、13a、14aは、胴幅可変式水平ロール装置10、10aの図示しないハウジングに設けられた取り付けベース17、17aに固定されている。
【0020】
更に、胴幅可変式水平ロール装置10、10aは、アーバー軸15、15aの中央部より一側に固着され、圧延時にH形鋼11のウェブ18の一側、即ちドライブ側(
図1ではDSと記載)を押圧するドライブ側水平ロール19、19a及びスリーブ16、16aの一側に固着され、圧延時にH形鋼11のウェブ18の他側、即ちワーク側(
図1ではWSと記載)を押圧するワークサイド側水平ロール20、20aと、アーバー軸15、15aに対してドライブ側水平ロール19、19a及びワークサイド側水平ロール20、20aの位置を調整するロール位置決め機構21、21aとを有している。
なお、符号22は、H形鋼11の一側のフランジ23を水平ロール19、19aの側部と共に挟んで圧延する竪ロール、符号24は、H形鋼11の他側のフランジ25を水平ロール20、20aの側部と共に挟んで圧延する竪ロール、符号26、26aはスプライン結合を行うスプラインである。
【0021】
そして、胴幅可変式水平ロール装置10、10aは、圧延するH形鋼11のサイズが変更される際に、変更されるサイズのH形鋼圧延に対応するように、オンラインでドライブ側水平ロール19、19aとワークサイド側水平ロール20、20a間のロール胴幅W1を変更するものである。ここで、上下にある胴幅可変式水平ロール装置10、10aはいずれも同構造となるので、以下の説明では上方にある胴幅可変式水平ロール装置10について説明する。
【0022】
図2に示すように、ロール位置決め機構21は、アーバー軸15の他側の一部に形成された第1の雄ねじ27と、スリーブ16の他側に形成された第1の雌ねじ28と、内側に第1の雄ねじ27に螺合する第2の雌ねじ29が、外側に第1の雌ねじ28に螺合する第2の雄ねじ30がそれぞれ形成され、アーバー軸15及びスリーブ16にそれぞれ螺合するねじ筒31と、ドライブ側水平ロール19及びワークサイド側水平ロール20の間隔調整時には、ねじ筒31の回転を停止させ、圧延時にはねじ筒31とアーバー軸15の回転を一体化するねじ筒切替手段32とを有している。ここで、ねじ筒31の第2の雌ねじ29と第2の雄ねじ30は、同一の送りピッチで螺旋方向が異なっている。
【0023】
ねじ筒切替手段32は、
図2、
図3(A)、(B)に示すように、ねじ筒31の他側に固定されたクラッチ受け座40と、第2のスプライン結合36を介してアーバー軸15の他側に軸方向に移動可能に装着されると共に、他側移動時にはクラッチ受け座40と第3のスプライン結合41によってアーバー軸15とクラッチ受け座40を介してねじ筒31を一体化するクラッチスリーブ37と、クラッチスリーブ37の所定位置(
図2ではクラッチスリーブ37の他側)に軸受35を介して取り付けられ、クラッチスリーブ37が一側に移動時にクラッチ受け座40に当接するクラッチ作動座33を有する環状のクラッチベース34と、クラッチベース34を軸方向に移動させるアクチュエータの一例であるシリンダ50(
図3参照)を有する移動駆動部39を備えている。ここで、移動駆動部39は、アーバー軸15の他側を支持する軸受箱14を固定する取り付けベース17に支持された筒状の連結部材38の側部に取り付けられている。
【0024】
また、第3のスプライン結合41は、クラッチ受け座40の内周側に形成されたスプライン43と、クラッチスリーブ37の外周部の一側、即ちクラッチ作動座33とクラッチ受け座40を接続した際に、クラッチ受け座40のスプライン43からねじ筒31内に突出した領域の先部側)に形成されたスプライン44とを有している。なお、符号42は、軸受35を固定する押え部材である。
【0025】
ここで、移動駆動部39は、連結部材38に固定されたシリンダベース49を介して保持されるシリンダ50と、基側がシリンダ50のピストンロッド51と連結し、中間部がシリンダベース49に摺動自在に保持され、先部がクラッチスリーブ37をアーバー軸15の他側に装着した際に、環状のクラッチベース34の半径方向外側に向けて対向して配置された対となる掛止部52にそれぞれ取り付けリング53を介して固定される連結ピン54とを有している。そして、ピストンロッド51のストロークは、ピストンロッド51のシリンダ50からの突出量を最小にした際に、クラッチ作動座33がクラッチ受け座40に接続し、ピストンロッド51のシリンダ50からの突出量を最大にした際に、クラッチ作動座33がクラッチ受け座40から離脱しクラッチ受け座40のスプライン43とクラッチスリーブ37のスプライン44間に第3のスプライン結合41が形成されるように調整されている。
その結果、シリンダ50によってクラッチベース34を一側に移動させて、ドライブ側水平ロール19及びワークサイド側水平ロール20の間隔調整が可能となり、シリンダ50によってクラッチベース34を他側に移動させて、第3のスプライン結合41によって、アーバー軸15とねじ筒31の一体化が行われる。
【0026】
ロール位置決め機構21には、更に、ねじ筒31を軸心方向に移動させるねじ筒移動手段55が設けられている。そして、ねじ筒移動手段55は、連結部材38の側部にあって、シリンダベース49が固定されていない領域に取り付けられたギア駆動部56と、ギア駆動部56と歯車結合し、ねじ筒31の外周部の他側に軸受57を介して回転自在に取り付けられた軸受箱58と、軸受箱58の外周部に形成された雄ねじ59及び雄ねじ59と螺合し、連結部材38の内側に設けられた雌ねじ60からなるねじ送り部61とを有している。ここで、ギア駆動部56は、回転駆動源62(例えば、油圧モータ)と、回転駆動源62の回転軸に取り付けられた小歯車63と、小歯車63に噛み合い、一部が連結部材38の側部を貫通する大歯車64と、大小歯車64、63及び回転駆動源62を連結部材38の側部に取り付ける保持部材65とを有している。また、軸受箱58の外周部の一側には、大歯車64と螺合し、軸受箱58を回転させる駆動用歯車66が設けられている。なお、符号45は、軸受箱58の固定部材である。
【0027】
以上の構成とすることにより、回転駆動源62を停止状態において、シリンダ50の操作により、クラッチ作動座33をクラッチ受け座40に入れる(クラッチ作動座33とクラッチ受け座40を接続する)と、ねじ筒31を連結部材38に連結すると共に、クラッチ受け座40のスプライン43とクラッチスリーブ37のスプライン44間の第3のスプライン結合41が解除される。その結果、ねじ筒31は、クラッチスリーブ37を介したアーバー軸15との連結状態が解除され取り付けベース17に固定状態となって、ねじ筒31を回転しないようにすることができる。
【0028】
ここで、アーバー軸15とスリーブ16はスプライン結合しているため、回転駆動源によりアーバー軸15を微速回転させると、アーバー軸15とスリーブ16は同一回転動作を行う(同一方向に同一回転数で回転する)。そして、ねじ筒31の第2の雌ねじ29と第2の雄ねじ30は、同一の送りピッチで螺旋方向が異なっているので、アーバー軸15とスリーブ16が同一回転動作を行うと、ねじ筒31に対して、アーバー軸15とスリーブ16はそれぞれ軸心方向に沿って互いに逆方向に、同一距離だけ移動することになる。
【0029】
また、シリンダ50の操作により、クラッチ作動座33をクラッチ受け座40から離脱させると、ねじ筒31と連結部材38との連結が解除されると共に、クラッチ受け座40のスプライン43とクラッチスリーブ37のスプライン44との間に第3のスプライン結合41が形成される。その結果、ねじ筒31は、取り付けベース17から解放されて回転可能な状態となり、クラッチスリーブ37を介してアーバー軸15と連結状態となる。このため、アーバー軸15を回転すると、ねじ筒31をアーバー軸15と一体で回転させることができる。また、アーバー軸15とスリーブ16はスプライン結合しているため、アーバー軸15とスリーブ16は同一回転動作となる。これにより、ねじ筒31とスリーブ16も同一回転動作となって、アーバー軸15の回転により、水平ロール19、20を同一回転動作で回転させることができる。
【0030】
更に、回転駆動源62を回転させると、小歯車63及び大小歯車64を介して駆動用歯車66を回転させることができ、駆動用歯車66に伴って軸受箱58を回転させることができる。ここで、軸受箱58は、軸受箱58の外周部に形成された雄ねじ59を連結部材38の雌ねじ60に螺合させながら回転するので、軸受箱58は連結部材38(アーバー軸15の他側を支持する軸受箱14を固定する取り付けベース17)に対して、軸受箱58の軸心方向に沿って移動する。したがって、クラッチ作動座33をクラッチ受け座40に入れてねじ筒31を回転しない状態として、回転駆動源62を回転させて軸受箱58を回転させると、軸受箱58の移動に伴ってねじ筒31が軸心方向に移動する。
【0031】
その結果、アーバー軸15及びスリーブ16もそれぞれ軸心方向(ねじ筒31の移動方向と同じ)に移動するので、胴幅可変式水平ロール装置10をアーバー軸15の軸心方向に沿って移動させることができる。このため、胴幅可変式水平ロール装置10の水平ロール19、20の間の中心位置と、胴幅可変式水平ロール装置10aの水平ロール19a、20aの間の中心位置が一致しない場合、胴幅可変式水平ロール装置10と胴幅可変式水平ロール装置10aのいずれか一方又は双方をアーバー軸15、15aの軸心方向に沿って移動させて、水平ロール19、20の間の中心位置と水平ロール19a、20aの間の中心位置を一致させることができる。
【0032】
図2に示すように、スリーブ16の他側の内側には環状の突起46が設けられ、アーバー軸15及びスリーブ16に螺合したねじ筒31の先端と突起46との間には、圧縮バネ47が配置されている。これによって、それぞれ螺合するアーバー軸15、ねじ筒31、及びスリーブ16のバックラッシュの軽減を図ることができる。
【0033】
続いて、本発明の一実施の形態に係る胴幅可変式水平ロール装置10を用いて、
図4に示すようにオンラインで、水平ロール19、20間のロール胴幅をW1からW2に拡大する場合について説明する。
先ず、
図5に示すように、回転駆動源62を停止状態において、ねじ筒切替手段32のシリンダ50を操作してクラッチスリーブ37をねじ筒31側に移動させてクラッチ作動座33をクラッチ受け座40に接続する。これによって、クラッチスリーブ37とねじ筒31との間の第3のスプライン結合41の解除により、ねじ筒31とアーバー軸15との連結が解除され、ねじ筒31は連結部材38を介して取り付けベース17に固定され、ねじ筒31が回転止めの状態なる。
【0034】
次いで、アーバー軸15を微速回転する。アーバー軸15が回転すると、アーバー軸15とスリーブ16はスプライン結合しているため、アーバー軸15とスリーブ16は同一回転動作を行う。ここで、ねじ筒31の第2の雌ねじ29と第2の雄ねじ30は、同一の送りピッチで螺旋方向が異なっているので、ねじ筒31に対して、アーバー軸15は軸心方向に沿って一側に向けて移動し、スリーブ16は軸心方向に沿って他側に向けて、アーバー軸15と同一距離だけ移動する。このため、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のロール胴幅中心を圧延ラインの中心線上に維持しながらロール胴幅の調整ができるので、オンラインでのロール胴幅調整が容易になる。
【0035】
そして、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のロール胴幅中心を圧延ラインの中心線上に維持しながらロール胴幅の調整ができるので、ロール胴幅の調整後にドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のロール胴幅中心を圧延ラインの中心に一致させるために従来必要であったセンターリング装置が不要になる。
また、ロール胴幅の調整時、ねじ筒31の位置は常に一定位置になるので、ねじ筒31に必要な支持部材の位置も一定位置に固定することができる。このため、ロール位置決め機構21を既設の水平ロール装置に付加して胴幅可変式水平ロール装置10に改造することが容易にできる。
【0036】
更に、
図4に示すように、ロール胴幅をW1からW2に拡大する際のドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のスライド代ΔSは、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20が逆方向に同一距離移動するため、ΔS=(W2−W1)/2となって、ロール胴幅の変化代(W2−W1)の1/2となる。このため、圧延するH形鋼11のサイズの大小範囲が大きくても、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のロール胴幅の変化代を小さくでき、ロール位置決め機構21がコンパクトになる。
なお、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20との間のロール胴幅を縮小する場合は、微速回転するアーバー軸15を逆回転させればよい。
【0037】
スリーブ16の他側の内側には環状の突起46が設けられ、アーバー軸15及びスリーブ16に螺合したねじ筒31の先端と突起46との間には圧縮バネ47が配置されているので、それぞれ螺合するアーバー軸15、ねじ筒31、及びスリーブ16のバックラッシュの軽減が図れ、アーバー軸15を回転させた際に、スリーブ16を応答性よく移動させることができる。
【0038】
ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20のロール胴幅がW2に到達すると、アーバー軸15の微速回転を停止する。そして、
図6に示すように、ねじ筒切替手段32のシリンダ50を操作してクラッチスリーブ37をアーバー軸15の他端側に移動させて、クラッチ作動座33をクラッチ受け座40から離脱させる。これによって、ねじ筒31と連結部材38との連結が解除されると共に、クラッチ受け座40のスプライン43とクラッチスリーブ37のスプライン44との間に第3のスプライン結合41が形成される。その結果、ねじ筒31は、取り付けベース17から解放されて回転可能な状態となって、クラッチスリーブ37を介してアーバー軸15と連結状態となる(次期圧延、即ちサイズが異なったH形鋼の圧延の準備状態となる)。
【0039】
図1に示すように、H形鋼11の圧延を行う場合、先ず、胴幅可変式水平ロール装置10、10aのアーバー軸15、15aを圧延条件に基づいてそれぞれ回転する。なお、圧延時の胴幅可変式水平ロール装置10、10aの状態は同一なので、胴幅可変式水平ロール装置10について説明する。
【0040】
アーバー軸15を回転すると、ねじ筒31とアーバー軸15は一体で回転する。そして、アーバー軸15とスリーブ16はスプライン結合しているため、アーバー軸15とスリーブ16は同一回転動作となる。これにより、ねじ筒31とスリーブ16が同一回転動作となって、アーバー軸15の回転により、アーバー軸15に取り付けられたドライブ側水平ロール19とスリーブ16に取り付けられたワークサイド側水平ロール20は同一回転動作で回転する。そして、竪ロール22、24を圧延条件に基づいてそれぞれ回転することにより、圧延待機状態となる。
【0041】
図1に示すように、H形鋼11の圧延が開始されると、竪ロール22、24にて、H形鋼11が押し込まれるために、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20には水平力Fv/2がそれぞれ作用する。ここで、圧延稼動時のドライブ側水平ロール19の側面に作用する水平力Fv/2は、ドライブ側水平ロール19が取り付けられたアーバー軸15へ伝わる。また、ワークサイド側水平ロール20の側面に作用する水平力Fv/2は、ワークサイド側水平ロール20が取り付けられたスリーブ16に伝達され、スリーブ16に螺合するねじ筒31を介してねじ筒31に螺合するアーバー軸15へ伝わる。ここで、アーバー軸15の一側は、アーバー軸15に設けられた軸受箱13の押え部材48により、回転自在に取り付けベース17に固定され、アーバー軸15の他側は、螺合するねじ筒31、ねじ筒31に取り付けられた軸受箱58、軸受箱58に螺合する連結部材38を介して取り付けベース17に固定されている。
【0042】
したがって、アーバー軸15に伝達された水平力Fvは、取り付けベース17へ伝わり圧縮反力で支持される。なお、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20の側面にそれぞれ作用する水平力Fv/2が異なっている場合、水平力Fv/2の差分が、取り付けベース17で支持される。
一方、H形鋼11の圧延にドライブ側水平ロール19に作用する垂直力Fh/2は、アーバー軸15を支持する軸受箱13を介して取り付けベース17で支持され、ワークサイド側水平ロール20に作用する垂直力Fh/2は、スリーブ16を支持する軸受箱14を介して取り付けベース17で支持される。
【0043】
以上のように、胴幅可変式水平ロール装置10では、従来必要であったスクリュー軸、スラスト荷重受けナット、及びスクリュー軸受箱が不要になるため、胴幅可変式水平ロール装置10をコンパクトにすることができる。
更に、アーバー軸15に伝達された水平力Fvを、アーバー軸15の一側では直接アーバー軸15を介して、アーバー軸15の他側ではアーバー軸15より径が大きなねじ筒31、ねじ筒31より径の大きな連結部材38を介してそれぞれ取り付けベース17で支持するので、従来のスクリュー軸を用いる場合と比較して、ドライブ側水平ロール19とワークサイド側水平ロール20の荷重負荷を大きくすることができる。
【0044】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。