(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシャワー式の塗装用ブースを長時間使用すると、使用する水の中に塗料が蓄積し、この塗料によりシャワーノズルが詰まってしまう。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、上記の課題を解決できる塗装用ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗装用ブースは、空気流の流路と、前記流路に設けられ、上面に開口部を有する水槽と、軸部、及び前記軸部の外周面に設けられた突起部を有し、前記水槽の上方に設けられた回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動手段と、を備え、前記回転体が回転するときの前記突起部の軌道は、前記水槽に保持された水に前記突起部が接触する部分と、前記水に前記突起部が接触しない部分とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の塗装用ブースを用いた場合、スプレー塗装により生じた塗料のミストは、空気流の流路に沿って送られる。その空気流の流路では、水槽と回転体とにより、水の飛沫が生じ、塗料のミストは水の飛沫に捕集される。よって、本発明の塗装用ブースを用いれば、塗料のミストを回収することができる。
【0008】
また、本発明の塗装用ブースは、水槽と回転体とを用いて水の飛沫を発生させる方式であるので、シャワーノズルを用いる場合とは異なり、目詰まりが生じることがない。
本発明の塗装用ブースにおいて、前記水槽及び前記回転体は、前記流路の下側面を構成することが好ましい。この場合、空気流の流路の横断面全体にわたって水の飛沫を生じさせ、塗料のミストを効率よく捕集することができる。
【0009】
本発明の塗装用ブースにおいて、前記軸部の軸方向は、略水平であり、且つ前記空気流の方向に略直交することが好ましい。この場合、空気流の幅方向(空気流の流路に直交する方向)において幅広く水の飛沫を発生させることができる。
【0010】
本発明の塗装用ブースにおいて、前記回転体の回転方向は、前記水に接触する前記突起
部が、前記空気流と反対方向に移動する方向であることが好ましい。この場合、水の飛沫は、回転体よりも、空気流の上流側で発生し、空気流にのって下流側に流れるようになる。その結果、空気流の流路において、水の飛沫が存在する範囲が広くなるので、塗料のミストを一層効率的に捕集できる。
【0011】
本発明の塗装用ブースは、前記水槽に水を供給する水供給手段を備えることが好ましい。こうすることにより、水の飛沫を発生させても、水槽の水位が下がり難い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
1.塗装用ブース1の構成
(1)塗装用ブース1の全体構成
塗装用ブース1の全体構成を
図1に基づいて説明する。
図1は、塗装用ブース1の側断面図である。
【0014】
塗装用ブース1は、回収槽3と、その上方に設けられたダクト5と、ダクト5の上端に取り付けられたファン7とを有する。
回収槽3は、その上面が開放した槽であり、その内部に水9を保持可能である。回収槽3の内側には、正面側支持板11、及び背面側支持板12が設けられており、それらの上部に、水槽13が取り付けられている。水槽13の上方には、一対の回転体15、15、及び水供給配管(水供給手段)17が設けられている。なお、水槽13、回転体15、及び水供給配管17の構成については後に詳述する。
【0015】
ダクト5の正面板5aは、回収槽3の正面板3aよりも背面側(
図1において右側)に位置しており、正面板5aと、回収槽3の正面側支持板11及び水9との間には、隙間19が形成されている。一方、ダクト5の背面板5bは、回収槽3の背面板3bと面一に接続している。
【0016】
また、ダクト5の内部には、上に凸の向きで弧状に湾曲した仕切り板21と、平板の仕切り板23、25、27が設けられている。仕切り板21は、正面側(
図1において左側)において正面板5aに接続し、水槽13及び回転体15の上を覆っている。また、仕切り板21は、水槽13及び回転体15よりも背面側では、背面側にゆくほど、水9に近づいてゆくが、背面側の端部21aは、水9の水面との間に隙間29を有するとともに、背面板5bとの間に隙間31を有する。仕切り板23は、正面側において正面板5aに接続するとともに、背面板5bとの間には隙間33を有する。また、仕切り板23は、その下面において、仕切り板21に接続する。仕切り板25は、仕切り板23よりも上方に位置し、背面側において背面板5bに接続するとともに、正面板5aとの間には隙間35を有する。仕切り板27は、仕切り板25よりも上方に位置し、正面側において正面板5aに接続するとともに、背面板5bとの間には隙間37を有する。
【0017】
よって、回収槽3とダクト5においては、順に、(i)隙間19、(ii)水槽13と仕切り板21との間の空間(以下、捕集空間39とする)、(iii)隙間29、(iv)隙間31、(v)仕切り板23と仕切り板25との間、(vi)隙間35、(vii)仕切り板25と仕切り板27との間、(viii)隙間37、(ix)仕切り板27とファン7との間を通る、屈曲した空気流の流路が形成される。なお、水槽13は、捕集空間39(空気流の流路の一部)の下側面を構成する。
【0018】
ファン7は、ダクト5内の空気を吸引する。ファン7の吸引力により、上述した流路に空気流が生じる。
(2)水槽13、回転体15、及び水供給配管17の構成
水槽13、回転体15、及び水供給配管17の構成を、
図1に加えて、
図2〜
図3に基づいて説明する。
図2は水槽13及び回転体15を表す斜視図であり、
図3(1)は回転体15を表す斜視図であり、
図3(2)はA方向から見た回転体15の平面図である。
【0019】
水槽13は、上面が開口した直方体形状の水槽である。水槽13の長辺の方向であるX方向(
図2参照)は、水平であり、且つダクト5における空気流の方向に直交する方向(
図1において紙面に直交する方向)である。また、水槽13の短辺の方向であるY方向は、ダクト5における空気流の方向と一致する方向(
図1において左から右に向う方向)である。
【0020】
水槽13は、その内部において、仕切り板41、43により、3つの領域45、47、49に分割されている。仕切り板41、43の高さは、水槽13の側面よりも、やや低くなっている。また、仕切り板41、43の長手方向は、X方向に平行である。
【0021】
水槽13の領域45、49の上方には、それぞれ、回転体15が取り付けられている。回転体15は、円柱状の軸部50と、その軸部50の外周面に、放射状に複数設けられた突起部51とを有する。軸部50は、その中心に回転軸53を備えており、その回転軸53を、水槽13の短辺側の側面13aに対し、回動可能に取り付けている。回転体15(軸部50)の軸方向はX方向に平行である。回転軸53は、図示しないモータ(駆動手段)により、回転駆動される。その結果、回転体15は、回転軸53を中心として回転する。回転体15の回転方向は、
図1及び
図2に示すP方向である。すなわち、突起部51が軸部50よりも低い位置にあるとき、突起部51が、ダクト5における空気流の方向とは反対方向(
図1において右から左に向う方向)に移動する回転方向である。
【0022】
回転体15における突起部51は、棒状の部材であって、その軸方向が軸部50の円周面に対し垂直となるように取り付けられている。突起部51は、その取り付け位置及び方向によって、
図3(1)、(2)に示すように、第1の突起部51a、第2の突起部51b、第3の突起部51c、第4の突起部51dに分類できる。
図3(1)のA方向から見たとき、
図3(2)に示すように、第2の突起部51b、第3の突起部51c、第4の突起部51dは、第1の突起部51aに対し、それぞれ、時計回りに、90度、180度、270度の角度を成す。よって、第1の突起部51a、第2の突起部51b、第3の突起部51c、第4の突起部51dは、全体として、軸部50に対し、放射状に配置されている。
【0023】
また、第1の突起部51aは、回転体15の長手方向において、等間隔で配置されている。第2の突起部51b、第3の突起部51c、及び第4の突起部51dについても同様に、回転体15の長手方向において、等間隔に配置されている。
【0024】
第1の突起部51aの軸方向と第3の突起部51cの軸方向とは同一直線上にあり、第2の突起部51bの軸方向と第4の突起部51dの軸方向とは同一直線上にある。回転体15の長手方向において、第2の突起部51b及び第4の突起部51dは、隣接する2つの第1の突起部51aの中間にある。また、回転体15の長手方向において、第1の突起部51a及び第3の突起部51cは、隣接する2つの第2の突起部51bの中間にある。
【0025】
図2に示すように、水槽13のうち、領域47の上方には、水供給配管17が設けられている。水供給配管17は、配管本体57と、配管本体57の下面に所定の間隔を空けて配置された複数のノズル59とから構成される。水供給配管17は、回収槽3から汲み上げられた水を、ノズル59から、領域47内に供給する。ノズル59から供給された水は、まず、水槽13の領域47を満たし、次に、仕切り板41、43をオーバーフローして、水槽13の領域45、49に流入する。
【0026】
2.塗装用ブース1の使用方法
塗装用ブース1の使用方法を説明する。まず、回収槽3に水9をいれる。このとき、上述したように、水9の水面と正面板5aとの間には、隙間19が存在し、水9の水面と仕切り板21における背面側の端部21aとの間には隙間29が存在する。
【0027】
また、水供給配管17により、水槽13に水を供給する。水槽13内の水の水面61(
図1参照)の高さは、回転体15の突起部51が最も低い位置にあるとき、その突起部51の一部が水中に浸漬されるが、軸部50は水面上にあるような高さである。
【0028】
また、2つの回転体15をそれぞれ回転させる。その回転方向は、
図1及び
図2に示すP方向である。回転体15が回転するとき、個々の突起部51が描く軌道は、水槽13内の水に接触する部分と、その水に接触しない部分とを有する。すなわち、個々の突起部51は、回転体15の回転にともない、軸部50を中心とする円形の軌道上を移動するが、突起部51が軸部50よりも低い位置にあるときは、水槽13内の水に接触し、突起部51の高さが所定の高さ以上になると、水槽13内の水には接触しない。
【0029】
回転体15が回転するとき、上述したように、突起部51は、水槽13内の水に接触してから、その後、上昇し、水槽13内の水から離れる。このとき、水槽13内の水が、突起部51によってかき上げられ、捕集空間39内に水の飛沫40が発生する。特に、回転体15の回転方向がP方向であるので、水の飛沫40は、回転体15よりも上流側(空気流の流れにおける上流側、
図1における左側)に多く発生する。飛沫40が発生することによって水槽13内の水が減少すると、水供給配管17が、水槽13に水を補給する。なお、いうまでもなく、上述した飛沫40は、回転体15の回転数が大きいほど、発生しやすい。回転体15の回転数は、捕集空間39の全体において飛沫が充分発生する回転数とする。
【0030】
また、ファン7を動作させ、(i)隙間19、(ii)捕集空間39、(iii)隙間29、(iv)隙間31、(v)仕切り板23と仕切り板25との間、(vi)隙間35、(vii)仕切り板25と仕切り板27との間、(viii)隙間37、(ix)仕切り板27とファン7との間、を順次通る空気流を発生させる。
【0031】
上記のように塗装用ブース1を動作させた状態で、
図1に示すように、塗装用ブース1の正面側において、スプレーガン63を用いて、スプレー塗装を行うことができる。
3.塗装用ブース1が奏する効果
(1)スプレーガン63により生じた塗料のミストは、塗装用ブース1における空気流により、隙間19を経て、捕集空間39に至る。捕集空間39では、上述したように、水の飛沫40が発生しているので、塗料のミストは水の飛沫40に捕集される。塗料のミストを捕集した水の飛沫(以下、塗料捕集飛沫とする)を含む空気は、仕切り板21(特に捕集空間39よりも背面側の部分)により、回収槽3に保持された水9に近づく方向に案内され、その後、端部21aを通過すると、上昇する。このとき、空気に含まれていた塗料捕集飛沫は、回収槽3に保持された水9中に落下する。よって、塗装用ブース1を用いれば、塗料のミストを回収することができる。
(2)塗装用ブース1は、水槽13と回転体15とを用いて水の飛沫を発生させる方式であるので、シャワーノズルを用いる場合とは異なり、目詰まりが生じることがない。
(3)水槽13及び回転体15は、捕集空間39の下側面を構成しているので、捕集空間39の全体にわたって水の飛沫を生じさせ、塗料のミストを効率よく捕集することができる。
(4)回転体15の軸方向は、水平であり、且つ空気流の方向に直交する方向である。そのため、空気流の幅方向(
図1において紙面に直交する方向)において幅広く水の飛沫を発生させることができる。
(5)回転体15の回転方向は、
図1に示すP方向である。そのため、水の飛沫は、空気流の上流側(
図1における左側)で発生し、空気流にのって下流側に流れるようになる。その結果、捕集空間39において、水の飛沫が存在する範囲が広くなるので、塗料のミストを一層効率的に捕集できる。
【0032】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、回転体15における突起部51の配列は上述したものに限定されず、例えば、軸部50の円周面上にランダムに突起部51を配置してもよい。
【0033】
また、突起部51の形状は特に限定されず、例えば、円柱、三角柱、四角柱等の形状とすることができる。また、突起部51の形状は、その軸方向に沿って進むにつれて変化する形状であってもよい。例えば、突起部51の先端を、根元部分に比べて幅広くしたり、突起部51の先端に翼状の部分を形成したりしてもよい。また、突起部51の軸方向は、軸部50の円周面に対して垂直ではなく、傾斜していてもよい。
【0034】
また、回転体15の個数は2個には限定されず、例えば、1、3、4、5、6・・・個であってもよい。また、複数の回転体15は前記実施形態のように、空気流の流れの方向に関して、直列に配置してもよいし、並列に(複数の回転体15の軸が同一直線上となるように)配置してもよい。
【0035】
また、回転体15の向きは、前記実施形態における向きには限定されず、例えば、回転体15の軸方向が、水平であり、且つ空気流の方向と平行であってもよい。
また、水槽13における水位の低下を検出する手段と、水位が低下した場合、自動的に、水供給配管17を用いて水槽13に水を供給する手段を設けることができる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・塗装用ブース、3・・・回収槽、3a・・・正面板、
3b・・・背面板、5・・・ダクト、5a・・・正面板、
5b・・・背面板、7・・・ファン、9・・・水、
11・・・正面側支持板、12・・・背面側支持板、13・・・水槽、
13a・・・側面、15・・・回転体、17・・・水供給配管、
19、29、31、33、35、37・・・隙間、
21、23、25、27・・・仕切り板、21a・・・端部、
39・・・捕集空間、40・・・飛沫、41、43・・・仕切り板、
45、47、49・・・領域、50・・・軸部、
51、51a、51b、51c、51d・・・突起部、
53・・・回転軸、57・・・配管本体、59・・・ノズル、
61・・・水面、63・・・スプレーガン