(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止め点が止め孔で、前記被止め点がねじ孔であり、該止め孔と該ねじ孔との軸線が傾斜されていると共に前記連結板と前記車体フレーム部材との間を設定距離だけ離間させた位置で一致されている
ことを特徴とする請求項1或いは2に記載の車体構造。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1〜
図4に本発明の第1実施形態を示す。
図1に示す車体1は、溶接工程でフロア、フレーム、ルーフ等の大物部品が溶接結合された未塗装の、いわゆるホワイトボディである。
【0019】
この車体1の両側に、他方の車体フレームとしてのフロントピラー(いわゆる、Aピラー)2が配設されている。このフロントピラー2は、上部フロントピラー2aと下部フロントピラー2bとを有し、上部フロントピラー2aの上端がルーフパネル3の左右に設けられたルーフレール(図示せず)に連続され、下端が前方斜め下方へ延出されて、下部フロントピラー2bの上端に連続されている。更に、下部フロントピラー2bの下端がサイドシル5の前端に連設されている。
【0020】
又、上部フロントピラー2aと下部フロントピラー2bとの接続部付近の前面に、一方の車体フレームとしてのフロントアッパフレーム6の後端がスポット溶接されている。このフロントアッパフレーム6はエンジンルームEの左右上縁に沿って前方へ延出されている。尚、図示しないが、このフロントアッパフレーム6に、前輪を支持するフロントサスペンションのストラット等を支持するストラットタワ(図示せず)が接合されている。
【0021】
一方、サイドシル5の後端部に、後方へ延在するリヤサイドフレーム7の前端がスポット溶接されている。このリヤサイドフレーム7に、後輪を支持するリヤサスペンションを支持するリヤサスペンション支持部等が連設されている。尚、符号8はエンジンルームEの左右下部から車体後方へ延出する一対のフロントサイドフレームである。
【0022】
上述したフロントピラー2、フロントアッパフレーム6、サイドシル5、リヤサイドフレーム7等の各種車体フレーム部材は、断面略コの字状のアウタパネルとインナパネルとを接合させて中空状に形成され、その端面に溶接面が形成されており、この溶接面が他方の車体フレーム部材の側面等にスポット溶接される。例えば、
図2に示すように、フロントアッパフレーム6は、その後端部に溶接面6aが形成されており、この溶接面6aがフロントピラー2の前面にスポット溶接されている。このことは、例えば、サイドシル5とリヤサイドフレーム7との関係も同様で、リヤサイドフレーム7の前端に形成された溶接面が、サイドシル5の側面にスポット溶接されている。尚、
図2の*印はスポット溶接位置を示す。
【0023】
図4(a)に示すように、フロントアッパフレーム6の溶接面6aをフロントピラー2の側面(図では前面)にスポット溶接すると、フロントアッパフレーム6の溶接面6aとフロントピラー2の前面との間にナゲットnが形成され、このナゲットnの周囲にシート・セパレーションという隙間tが形成される。この隙間tは、リヤサイドフレーム7の前端に形成した溶接面と、これをスポット溶接するサイドシル5との間にも形成される。すなわち、スポット溶接することによりナゲットnが形成されるため、車体フレーム部材のスポット溶接される溶接面間には必ず隙間tが形成される。尚、
図4の括弧内の符号7aはリヤサイドフレーム7の前端面に形成した溶接面を示し、5aはサイドシル5の車幅方向内側の側面を示す。
【0024】
走行時、フロントアッパフレーム6(サイドシル5)には、フロントサスペンション(リヤサスペンション)から振動荷重が印加され、更に、この振動荷重は溶接面6a(溶接面7a)を介してフロントピラー2(サイドシル5)に伝達される。フロントサスペンション(リヤサスペンション)からの振動(主に、上下振動)を車体1全体で効率よく吸収するには、フロントアッパフレーム6(リヤサイドフレーム7)が受けた振動荷重をフロントピラー2(サイドシル5)側へ直接的に伝達することが望ましい。
【0025】
しかし、上述したように、スポット溶接による溶接面間には隙間tが形成されるため、
図4(a)に矢印で示すように、フロントアッパフレーム6(リヤサイドフレーム7)が僅かに上下揺動し易くなり、フロントアッパフレーム6(リヤサイドフレーム7)からの振動荷重がフロントピラー2(サイドシル5)側へ直接的に伝達され難くなる。
【0026】
本実施形態では、
図1、
図2に示すように、例えば、フロントピラー2とフロントアッパフレーム6との接合部分は、フロントアッパフレーム6の溶接面6aを頂点とし、このフロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとを、溶接面6aを挟む二辺とする三角形の底辺側に連結板12を配設する構造とし、この連結板12の長手方向両端部12aをフロントアッパフレーム6と、下部フロントピラー2bとにブレース(筋交い)状に連結し、この連結板12でガタの発生を抑制している。この連結板12はばね鋼板等、ばね性を有する板材を加工して形成されている。
【0027】
尚、リヤサイドフレーム7とサイドシル5との接合部分を、連結板12を用いて締付ける構造は、上述した下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との接合部分と同様であり、フロントアッパフレーム6をリヤサイドフレーム7と、下部フロントピラー2bをサイドシル5と読み換えれば適用できるため、以下においては説明を省略する。
【0028】
具体的には、
図3に示すように、この連結板12の両端部12aの対称な位置に止め点としての止め孔13が穿設されており、更に、長手方向の中央部12bが湾曲状に曲げ形成されている。この湾曲形成された中央部12bは連結板12を長手方向へ引張した際にばね変形することで、引張り荷重を発生させるものである。
【0029】
この止め孔13に挿通したボルト14を、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに螺設されている被止め点としてのねじ孔2c,6bに螺入することで、この連結板12の両端部12aを下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに締結する。
【0030】
図3に示すように、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13と、下部フロントピラー2b及びフロントアッパフレーム6に螺設されているねじ孔2c,6bとをの軸線L1は傾斜されていると共に、連結板12が下部フロントピラー2b及びフロントアッパフレーム6から設定距離S1だけ離れた位置で一致される。この軸線L1は、連結板12の軸端方向へボルト挿入側からハの字状に傾斜されている。尚、止め孔13とねじ孔2c,6bとは軸線L1に沿って形成されている。
【0031】
従って、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13間のピッチに比し、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とにそれぞれ螺設されているねじ孔2c,6b間のピッチが短い。上述した距離S1は、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角を狭める方向への曲げモーメント、止め孔13とボルト軸径との間の隙間に応じて設定されている。尚、符号15はボルト14を締結する際のボルト頭の傾斜と連結板12との隙間を補填するスペーサであり、断面くさび形に形成されている。
【0032】
このような構成では、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13に挿通されたボルト14を、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとに螺設されているねじ孔2c,6bにそれぞれ螺入すると、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13間のピッチが、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに螺設されているねじ孔2c,6b間のピッチよりも短いため、そのピッチ差により、ボルト14を締付けるに従い、連結板12の中央部12bが平坦になる方向へばね変形され、相対的に、
図3の矢印Aで示すように、連結板12がフロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bを、その挟角を狭める方向へ引張荷重により付勢する。
【0033】
その結果、
図4(b)に矢印で示すように、フロントアッパフレーム6の溶接面6aと下部フロントピラー2bの前面との間に、スポット溶接により隙間tが形成されても、フロントアッパフレーム6の基部付近での上下揺動(いわゆる、ガタ)を規制することができる。従って、フロントサスペンションからの振動をフロントピラー2側へ直接的に伝達することができ、サスペンションからの振動荷重を、フロントピラー2を含む車体1全体で効率よく吸収させることができる。
【0034】
又、連結板12はばね鋼板製であり構造が簡単であるため、低コストで製造することができる。更に、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとにねじ孔2c,6bを螺設するだけで、連結板12をボルト14にて簡単に取付けることができるため、既存の車両に対しても容易に適用することができ、高い汎用性を得ることができる。
【0035】
更に、軸線L1の傾斜角を一定として、ねじ孔2c,6bと止め孔13とが同軸上に配列されている距離S1を任意に設定すること、換言すれば、止め孔13間のピッチ、或いはねじ孔2c,6b間のピッチを任意に設定することで、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角を狭める方向へ付勢する曲げモーメントを任意、且つ簡単に設定することができ、使い勝手が良い。
【0036】
尚、連結板12の中央部12bがフラットに延びきった状態になっても、中央部12bのばね性は残っているため、緩みが生じることはない。
【0037】
[第2実施形態]
図5に本発明の第2実施形態を示す。本実施形態は、上述した第1実施形態の変形例である。第1実施形態では、ボルト14の挿入方向を示す軸線L1がボルト挿入側から連結板12の端部方向へ拡開するハの字状に傾斜されているが、本実施形態では、連結板12をフロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bに対して設定距離S1だけ離れた位置に配設した状態で、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13と、ねじ孔2c,6bとを通る軸線L1を、連結板12の長手方向中央に向かって収束する方向に傾斜したものである。又、止め孔13とねじ孔2c,6bは軸線L1に沿って形成されている。従って、止め孔13間のピッチはねじ孔2c,6b間のピッチよりも長い。尚、符号15はボルト14を締結する際のボルト頭の傾斜と連結板12との隙間を補填するスペーサであり、断面くさび形に形成されている。又、連結板12はほぼフラットに形成されている。
【0038】
このような構成では、ボルト14を、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13に挿通した状態で、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとに螺設されているねじ孔2c,6bに螺入すると、止め孔13間のピッチがねじ孔2c,6b間のピッチよりも長いため、締付けるに従い、連結板12に圧縮方向の荷重が印加され、図に一点鎖線で示すようにばね変形する。
【0039】
その結果、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bは、図の矢印Bで示すように、連結板12のばね変形による反力で押圧され、挟角を互いに広げる方向へ曲げモーメントが発生し、溶接面6a(
図2参照)のガタが規制される。本実施形態では、連結板12を湾曲させることなくフラットに形成すればよいので、製造が容易となり、製品コストを更に下げることができる。
【0040】
[第3実施形態]
図6〜
図8に本発明の第3実施形態を示す。本実施形態は、カムボルト21を用いてフロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの溶接面6a(
図2参照)に生じるガタを規制しようとするものである。すなわち、
図6に示すように、連結板12の両端部12aの一方に止め孔13が穿設され、他方にカム受孔22が穿設されている。このカム受孔22にカムボルト21のカム部21aが嵌入される。
【0041】
図8に示すように、カムボルト21はカム部21aの上端にボルト頭21bが形成され、下端にねじ部21cが形成されている。又、ボルト頭21bとカム部21aとの間にフランジ部21dが形成され、このフランジ部21dに目盛り21eが刻設されている。カム部21aの高さは連結板12の板厚とほぼ同じか、それよりもやや短く形成されている。尚、連結板12の中央部12bが湾曲状に曲げ形成されている。
【0042】
一方、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの一方(本実施形態では、下部フロントピラー2b)にねじ孔2cが穿設され、他方(本実施形態では、フロントアッパフレーム6)にボルト挿通孔6cが穿設されている。
【0043】
連結板12の両端部12aの一端に穿設されている止め孔13にボルト14が挿通され、このボルト14が下部フロントピラー2bに螺設されているねじ孔2cに螺入されて締結されている。一方、連結板12の両端部12aの他方に穿設されているカム受孔22に、カムボルト21のカム部21aが嵌合され、ねじ部21cがフロントアッパフレーム6に穿設されているボルト挿通孔に挿通されて、ナット23により締結されている。
【0044】
図7(b)に示すように、カムボルト21に形成されているカム部21aは偏芯カムであり、このカム部21aを連結板12に穿設されているカム受孔22に嵌合させると、ボルト頭21b及びねじ部21cの軸芯に対して、カム部21aの軸芯が止め孔13へ所定に偏芯される。
【0045】
この状態でボルト頭21bを左右何れかへ回動させると、カム部21aの回転に追従してカム受孔22が軸端方向へ移動する。すると、中央部12bが延伸方向へばね変形し、その反力で、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの挟角が狭められる。その結果、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの溶接面6a(
図2参照)に発生するガタが規制される。
【0046】
尚、カムボルト21の回動位置は、フランジ部21dに刻設されている目盛り21eと連結板12に形成されている基準マーク24との相対位置を認識することで把握することができる。そして、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの挟角を所定に狭めた後、ナット23を締付けてカムボルト21を固定する。
【0047】
このように、本実施形態では、カムボルト21を用いてフロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとの挟角を所定に狭めるようにしたので、カムボルト21の回転量により、フロントアッパフレーム6と下部フロントピラー2bとに発生する曲げモーメントとを任意に設定することができる。
【0048】
[第4実施形態]
図9に本発明の第4実施形態を示す。本実施形態で示す連結板12は、両端部12aを、ボルト14が挿通される側へ設定角度だけ屈曲させたものである。連結板12の両端部12aが屈曲されているため、この両端部12aに穿設されている止め孔13にボルト14を挿通し、その先端を下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6に螺設されているねじ孔2c,6bに螺入させて締付けると、両端部12aが下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに当接する方向へ押し広げられる。
【0049】
その結果、相対的に、図に一点鎖線で示すように、中央部12bが湾曲状にばね変形される。この中央部12bのばね変形により、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角が狭められ、両者間のガタが規制される。
【0050】
[第5実施形態]
図10に本発明の第5実施形態を示す。本実施形態は上述した第4実施形態の変形例である。第4実施形態では、連結板12の両端部12aを屈曲形成したが、本実施形態による連結板12は、両端部12aの一方のみを屈曲形成したものである。
【0051】
本実施形態によれば、取付けに際し、先ず、一方の平坦な端部12aを一方のフレーム(図においては、下部フロントピラー2b)にボルト14を介して固定する。その後、他方の屈曲されている端部12aを、他方のフレーム(図においては、フロントアッパフレーム6)にボルト14を用いて締結する。
【0052】
本実施形態では、屈曲されている側の端部12aをフレーム(フロントアッパフレーム6)に締結する前に、平坦な側の端部12aはフレーム(図においては、下部フロントピラー2b)に締結固定するようにしたので、屈曲されている側の端部12aの締付け作業が容易となり、作業性が良い。
【0053】
[第6実施形態]
図11に本発明の第6実施形態を示す。本実施形態は、上述した第4実施形態の変形例である。第4実施形態では、連結板12をボルト14が挿通される側へ屈曲させたが、本実施形態では、両端部12aをボルト14の先端が突出される側に屈曲させたものである。
【0054】
更に、本実施形態では、ストッパ部材31が新たに追加されている。このストッパ部材31はクランク状に曲げ形成されており、下部フロントピラー2b或いはフロントアッパフレーム6に当接される面(当接面)31aの一端に、下部フロントピラー2b或いはフロントアッパフレーム6の縁部に掛止されて位置決めされるフランジ部31bを有し、他端にストッパ部31cを有している。
【0055】
当接面31aには、フランジ部31bを下部フロントピラー2b或いはフロントアッパフレーム6の縁部に掛止させた際に、ねじ孔2c,6bと同軸上に配列されるボルト挿通孔31dが穿設されている。又、連結板12の当接面31a上を摺動する連結板12の端面12cが円弧状の曲面仕上げされている。この端面12cとストッパ部31cの内面とは設定距離S2に設定されている。一方、連結板12の両端部12aには長手方向に沿って延出する長孔13aが穿設されている。
【0056】
このような構成では、ストッパ部材31のフランジ部31bを下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との各縁部に掛止して位置決めすると共に、ボルト挿通孔31dを、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに螺設されているねじ孔2c,6bに位置合わせする。
【0057】
次いで、連結板12の両端部12aに穿設されている長孔13aにボルト14を挿通し、ストッパ部材31に穿設されているボルト挿通孔31dを貫通して、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とにそれぞれ螺設されているねじ孔2c,6bに螺入させて締付ける。
【0058】
すると、連結板12の端面12cがストッパ部材31の当接面31aに押し付けられて拡開する方向へ摺動し、ストッパ部材31のストッパ部31cに掛止される。そして、更に、ボルト14を締付けると、連結板12の中央部12b付近が、湾曲状にばね変形する。下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とは、ストッパ部材31を介して伝達される連結板12からの押圧力により挟角が押し広げられる方向へ付勢されて、両者間のガタが規制される。
【0059】
[第7実施形態]
図12、
図13に本発明の第7実施形態を示す。本実施形態による連結板12は、中央部12bが当初から湾曲形成されている。又、この連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13間のピッチが、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに穿設されているねじ孔2c,6b間のピッチより短く設定されている。但し、この止め孔13間のピッチは、
図13に示すように、中央部12bをほぼフラットに押圧した場合、ねじ孔2c,6b間のピッチとほほ同じになるように設定されている。
【0060】
このような構成では、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13に挿通するボルト14を、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに穿設されているねじ孔2c,6bに螺入するに際し、先ず、
図12に示すように、連結板12の中央部12bに、図示しない治具或いは工具等を用いて押圧力Fを印加し、
図13に示すように、この中央部12bの湾曲をばね変形によりほぼフラット状に伸展させる。
【0061】
すると、連結板12の両端部12aに穿設されている止め孔13間のピッチが、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに穿設されているねじ孔2c,6b間のピッチとほぼ等しくなり、その状態で、ボルト14を止め孔13に挿通すると共に、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに穿設されているねじ孔2c,6bに螺入し締付ける。
【0062】
その後、中央部12b付近に印加されている押圧力Fを解放すると、連結板12の中央部12bがばね性により湾曲変形しようとするため、そのときの引張力で、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角が狭められ、両者間のガタが規制される。
【0063】
[第8実施形態]
図14、
図15に本発明の第8実施形態を示す。本実施形態は、上述した第7実施形態の変形例である。第7実施形態では、連結板12の両端部12aを下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに締結するに際し、先ず、中央部12bの湾曲をばね変形により伸展させているが、本実施形態は、車体1の組立てライン上において、連結板12を、その中央部12bを湾曲させたままの状態で下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6とに締結させるようにしたものである。
【0064】
図14には、エンジンを代表とするパワーユニットやシャーシが未だ組み付けられていない、いわゆるホワイトボディの車体1がオーバヘッドコンベヤ41にて搬送される状態が示されている。オーバヘッドコンベヤ41は、ガイドレール42を有し、このガイドレール42に搬送ハンガ43が移動自在に支持されている。この搬送ハンガ43の前後左右からハンガアーム44がそれぞれ垂設されており、この各ハンガアーム44にて、車体1の底部に設定されているジャッキアップポイントPjが吊下されている。尚、ジャッキアップポイントPjは、車体1の左右に設けられているサイドシル5の前後に設定されている。
【0065】
図14に示すように、車体1の底部の前後左右に設定されているジャッキアップポイントPjをハンガアーム44で吊下すると、この前部のジャッキアップポイントPjよりも前方に位置するフロントアッパフレーム6の先端、及び後部のジャッキアップポイントPjよりも後方に位置するリヤサイドフレーム7後端は、ジャッキアップポイントPjを起点とするモーメントにて下方へ撓まされている。
【0066】
従って、車体前部では下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角、車体後部ではサイドシル5とリヤサイドフレーム7との挟角が狭くなる。そのため、この状態では、第7実施形態の連結板12の両端部12aを、中央部12bが湾曲されたままの状態で、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6、及びサイドシル5とリヤサイドフレーム7とにそれぞれ締結させることができる。
【0067】
そして、
図15に示すように、当該車体1にシャーシ、パワーユニット等を所定に取付け、更に、フロントサスペンション51fとリヤサスペンション51rとそれぞれ取付けた後、車輪52を接地させると、両サスペンション51f,51rがフロントアッパフレーム6とリヤサイドフレーム7とをリフトアップするため、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との挟角、及びサイドシル5とリヤサイドフレーム7との挟角が拡開する。
【0068】
その結果、連結板12の中央部12bが平坦方向にばね変形し、この連結板12による付勢力(引張荷重)で、下部フロントピラー2bとフロントアッパフレーム6との間、及びサイドシル5とリヤサイドフレーム7との間のガタが規制される。
【0069】
[第9実施形態]
図16に本発明の第9実施形態を示す。上述した第1〜第7実施形態で採用した連結板12は、車体1の構成要素であるシャーシフレーム1’の各スポット溶接部位間のガタを規制する場合にも適用できる。
【0070】
すなわち、シャーシフレーム1’は、走行時に、前輪及び後輪を支持するサスペンションからの上下振動が伝達される部位であるため、スポット溶接されている部位に比較的大きな揺動トルク(モーメント)が印加される。そのため、スポット溶接により連結されている2つのフレーム間を、連結板12を用いて付勢しガタを規制する。
【0071】
ここで、シャーシフレーム1’の構成について簡単に説明する。尚、このシャーシフレーム1’は左右対称であり、対称な部品は同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0072】
車体前部から後方へ延在する左右一対のフロントサイドフレーム8の外側にサイドシル5がほぼ平行に配設され、このサイドシル5の後端部に、後方へ延在するリヤサイドフレーム7が配設されている。尚、符号52は前後左右の車輪であり、矢印Ftは車両前方を示している。
【0073】
又、サイドシル5の前端に、第1実施形態で示した下部フロントピラー2bの下端部が連続されている。更に、上述したサイドシル5、リヤサイドフレーム7、フロントサイドフレーム8、及び後述するトルクボックス57が、本発明の主要フレームに対応している。
【0074】
又、両フロントサイドフレーム8の後端がリヤフロントクロスメンバ58に各々スポット溶接されている。更に、このリヤフロントクロスメンバ58の左右両端が、互いに対向するサイドシル5の後端部の対向面にスポット溶接されている。又、サイドシル5の後部であってリヤフロントクロスメンバ58のそれぞれの端部に、リヤサイドフレーム7の前部がスポット溶接されている。更に、このリヤサイドフレーム7の対向面がリヤクロスメンバ59の両端にスポット溶接されている。更に、フロントサイドフレーム8の外側面とこれに対向するサイドシル5の前端部にトルクボックス57の両端がスポット溶接されている。このトルクボックス57は台形状に形成されており、フロントサイドフレーム8側からサイドシル5方向へ斜め後方に延在されている。
【0075】
一方、車体中央部であるフロントサイドフレーム8の中間部がトンネルクロスメンバ60の両端にスポット溶接されている。尚、トンネルクロスメンバ60の中央部は、プロペラ軸61、排気パイプ等が配設されているフロアトンネル(図示せず)の形状に沿って曲げ形成されている。このフロントサイドフレーム8の先端側はエンジンルームEに臨まされており、このフロントサイドフレーム8間にエンジン62が配設されている。このエンジン62の後部にはトランスミッション63が連設され、このトランスミッション63がプロペラ軸61を介して後部に配設されているデファレンシャル装置64に連設されている。
【0076】
連結板12はスポット溶接されている2つのフレームをブレース(筋交い)状に連結して引張荷重、或いは押圧荷重を付加し、スポット溶接された溶接面のガタを規制する。
図16には、各連結板121〜126にて、スポット溶接された2つのフレーム(一方の車体フレームと他方の車体フレーム)をブレース(筋交い)状に連結する態様が示されている。但し、図においては、説明を簡略化するために、車幅方向右側と左側とで連結板121〜126を異なる態様で連結する状態が示されているが、実際の各連結板121〜126は左右対象に配設される。
【0077】
この各連結板121〜126の中で、特に、車体前後方向へ延出する主要フレームであるフレーム5,7,8,57に対して、各スポット溶接面を頂点とし、その底辺側を、連結板121〜123を用いて引張荷重或いは押圧荷重を付加した状態で連結することで、これらのスポット溶接面のガタが規制される。その結果、フロントアッパフレーム6(
図1参照)、及びリヤサイドフレーム7からの振動荷重を車体1全体で効率よく吸収させることができる。又、車体1全体のガタが規制されるため、良好な走行安定性、及び操縦性を得ることができる。
【0078】
尚、本発明は上述した各実施形態に限るものではなく、例えば、連結版は平板であっても良い。