(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽板と前記挿嵌溝とで前記信号線を挟み込んだときに、前記遮蔽板に前記信号線への押圧力を逃がす逃げ部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のケースの防滴構造。
【背景技術】
【0002】
通常、計測器等で使用するケースを、上下又は左右等の2つ以上の合成樹脂製や金属製の部品で構成し、凹凸の爪やネジ、蝶番等の結合構造、及び、接着や溶接等の接合構造により組み立てている。この2つ以上のケース部品で組み立てられたケース内に、電子部品等の水に弱い物を収納する場合は、ケースに防水機能や防滴機能が必要となる。
【0003】
しかし、ケース自体に防水機能や防滴機能を設けても、外部の測定装置と接続するために、ケースの外部に端子を配置する場合には、端子と端子を備える端子室に別途防水、又は防滴構造が必要となる。加えて、端子を外部に設けることで端子が劣化しやすくなるため、端子室をケースから取り外し可能にすることも必要となる。
【0004】
そこで、コネクタハウジングに、挿抜動作が行われている間に内部空間と外部とを連通可能な窓孔を形成すると共に、この窓孔に防水性と通気性とを有する閉塞部材を装着して、防水機能を保ちつつコネクタハウジングの嵌合、分離操作を容易に行う装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、電線の内部の隙間を利用して、防水ケースの内部をコネクタの密封空間内及び該コネクタから引き出される電線の内部を介して外部へと連通させるように構成した装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ところが、上記のこれらの装置は、外部に設けた端子と、端子室を防水することができるが、信号線と端子室との防水にゴム栓を用いている装置である。このように、従来技術の防水、又は防滴構造の一つであるゴムパッキンを使用する場合には、汎用品や注文生産品の区別によらず、部品点数の増加と工数の増加となり、コストアップの要因となる。また、合成樹脂系の充填剤によりシールする場合には、端子室の再開封の作業性が悪くなり、また、端子室全体を合成樹脂系材料で包み込んで完全密封してしまう場合には再開封が困難となる。
【0007】
また、上記のこれらの装置は、外部に設けた端子と接続する測定装置から導出される端子にも加工が必要であり、加工工数の増加と共に、製造コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース外部の測定装置などと接続する外部端子と、外部端子を備える外部端子室とを密閉せずに、形状の工夫
により、ケースから取り外し可能にすると共に、外部端子室からケース内部への水の進入を防いで、防滴性を向上することができるケースの防滴構造、携帯可能な温度計測器用ケース、及びケースの防滴方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を解決するための本発明のケースの防滴構造は、ケース内に設けた防滴室と、該ケースに取り外し可能な
外部蓋と、該外部蓋に収納される外部端子室とを備え、該外部端子室の外部端子から導出される帯状の信号線を、該外部端子室に設けた外部端子用孔と、前記防滴室に設けた連通孔を介して前記防滴室に導引するケースの防滴構造において、
前記外部蓋に排水孔を備え、前記
外部蓋を前記ケースに取り付けたときに、前記外部端子用孔と前記連通孔との間に前記外部蓋と前記防滴室に囲まれる防滴空間を
有すると共に、
前記排水孔から該防滴空間内の水を前記ケースの外部へ排出す
る第1防滴構造と、前記防滴室に前記連通孔の開口部を遮蔽する遮蔽板と、該遮蔽板を挿し込む挿嵌溝とを備え、前記信号線を前記連通孔に挿通したまま、前記遮蔽板で前記連通孔を遮蔽すると共に、前記遮蔽板と前記挿嵌溝とで前記信号線を挟み込む第2防滴構造とを設けて構成される。
【0011】
パッキンなどを用いて完全に外部端子と外部端子室とを密閉すると、外部端子室内を修理することなどが困難になる。一方、上記の構成によれば、パッキンなどを用いずに、外部端子室を完全防水するのではなく、第1防滴構造と第2防滴構造とを組み合わせることで、防滴室への水の進入を防ぐことができる。
【0012】
第1防滴構造として、防滴室への水の進入口となる連通孔に直接水が流れ込むことを防止する構成を設ける。この第1防滴構造は、外部端子用孔と連通孔との間に防滴空間を設け、さらに、その防滴空間から水を排出する排水孔を設けることにより、外部端子用孔から進入した水を直接連通孔へ進入させず、その防滴空間に一旦留め、排出孔から外部へと排出することができる。
【0013】
そして、第2防滴構造として、信号線を導引したままの連通孔を遮断する構成を設ける。この第2防滴構造は、排出仕切れなかった水、又は前記信号線を伝う水を、連通孔を塞ぐ遮蔽板と挿嵌溝で信号線を挟み込むことで遮断することができる。
【0014】
よって、パッキンなど外部端子室に設けずに、形状を工夫することで、ケースの外部に設けた外部端子室から防滴室へ進入する水を、二つの防滴構造で防ぐことができるので、ケースの防水性を向上すると共に、外部端子室を密閉することがないので、ケースから外部端子室を容易に取り外すことができる。
【0015】
また、外部端子と接続する測定装置などの端子には一切加工の必要が無いので、加工工数を減らすことができ、製造コストを低減することができる。加えて、測定装置などの端子を加工せずに接続することができるので、汎用性が高い。
【0016】
一方、排水孔を設けることで、排水孔から進入する水もあるが、外部端子孔から進入する水と同様に、大部分は防滴空間に溜まり、残りの信号線を伝うものは遮蔽板により遮断されるので、防滴室の防水性を損ねることはない。
【0017】
また、上記のケースの防滴構造において、前記連通孔で前記防滴室と連通する格納室を前記防滴室と前記
外部蓋との間に備え、前記
外部蓋を前記ケースに取り付けたときに、前記格納室を前記外部蓋で封鎖し、前記外部端子室を
前記外部蓋で封鎖された前記格納室に格納すると共に、前記格納室内を前記防滴空間とすると、
外部蓋をケースに取り付けたときに、
外部端子室を格納室に収納することができるので、防滴構造を設けたケースをコンパクトにすることができる。これにより、外部端子室が防滴室から突出することがないので、外部端子室に衝撃を加えた際に、発生する接合部の隙間から水が侵入することを防止することができる。
【0018】
加えて、上記のケースの防滴構造において、前記ケースの使用時、又は前記ケースの保
管時の少なくともどちらかの姿勢のときに、前記排水孔
が、前記外部端子用孔と前記連通孔よりも低い位置に配置
されると、ケースの使用時や保管時の姿勢では、常に排水孔より水を排出することができる。
【0019】
その上、前記信号線の前記防滴室に導引された一端に内部端子を備え
、前記連通孔
が前記内部端子
を通過可能に形成
されると、外部端子と信号線と内部端子を有する外部端子室を、ケースから分離することができ、容易に端子の修理を行うことができることに加えて、複数の外部端子を交換して使用することができる。
【0020】
さらに、上記のケースの防滴構造において、前記遮蔽板と前記挿嵌溝とで前記信号線を挟み込んだときに、前記遮蔽板に前記信号線への押圧力を逃がす逃げ部を備えると、遮蔽板と挿嵌溝で信号線を挟み込んだときに、信号線にかかる負荷を低減することができるので、防滴室の密閉性を向上すると共に、信号線の損傷を防ぐことができる。
【0021】
上記の目的を解決するための本発明の携帯可能な温度計測器用ケースは、上記に記載のケースの防滴構造を備えて構成される。この構成によれば、温度計測器の内部の防水性を向上することができる。また、パッキンなどの部品を使用せずに、ケース内部を防滴することができ、部品点数と工数を減少させて、製造コストを減少することができる。加えて、温度計測器用ケースを容易に分解することができ、メンテナンス性も向上することができる。
【0022】
また、上記の携帯可能な温度計測器用ケースにおいて、前記外部端子を熱電対同種金属で形成すると、外部端子用室を交換可能なため、測定装置として、熱電対を用いた場合に、様々な種類の熱電対と接続することができる。
【0023】
上記の目的を解決するための本発明のケースの防滴方法は、ケース内に設けた防滴室と、該ケースに取り外し可能
な外部蓋と、該外部蓋に収納される外部端子室とを備え、該外部端子室の外部端子から導出される帯状の信号線を、該外部端子室に設けた外部端子用孔と、前記防滴室に設けた連通孔を介して前記防滴室に導引するケースの防滴方法であって、
前記外部蓋と前記防滴室とに囲まれる防滴空間から、前記
外部端子用孔から進入した水を
前記外部蓋に備えられた排水孔を介して前記ケースの外部に排出すると共に、排出仕切れなかった水、又は前記信号線を伝う水を、前記連通孔を遮蔽する遮蔽板と挿嵌溝で前記信号線を挟み込んで遮断することを特徴とする方法である。
【0024】
この方法によれば、外部から端子用孔から進入してくる水を、直接連通孔に流れ込ませずに大部分を排出することができ、排出できなかった水や信号線を伝わる水などの勢いが低減された水を遮蔽板で確実に遮断することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ケース外部の測定装置などと接続する外部端子と、外部端子を備える外部端子室とを密閉せずに、形状の工夫により、ケースから取り外し可能にすると共に、外部端子室からケース内部への水の進入を防いで、防滴性を向上することができる。また、外部端子と接続される測定装置側の端子に加工が一切必要ないため、加工工数を低減し、製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態のケースの防滴構造、携帯可能な温度計測器用ケース、及びケースの防滴方法について、図面を参照しながら説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0028】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態のケースの防滴構造10を備えるケース1は、外壁2a〜2dに囲まれる防滴室2と、外壁3a〜3cに囲まれる外部端子室3とからなる。なお、
図1はケース1の使用時、又は保管時の姿勢の状態を示しており、防滴室2の外壁2aをケース1の上面、及び外壁2cをケース1の下面とする。
【0029】
外部端子室3は、ケース1の外部に開口した開口部3dを有する。また、外部端子室3は、
防滴室2と接合する外部蓋4aと4bとに一体的に接合されて、その外部蓋4aと4bとともにケース1から取り外し可能に構成され
る。この外部蓋4aと4bを防滴室2に接合可能で、且つ外部端子室3の外壁3a〜3cと一体に形成する。この外部端子室3は、外部蓋4aと4bと
に配置され、外部端子5をケース1の外部の測定装置などと接続することができればよく、上記の構成に限定しない。例えば、外壁を円筒状に形成してもよい。
【0030】
このケース1には、ケース1の外部の測定装置などと接続可能な外部端子5と、ケース1の防滴室2の内部に設けた電子基板(図示しない)と接続可能な内部端子6と、外部端子5と内部端子6とを繋ぐ信号線7とを設ける。外部端子5と信号線7との接続はシール性の高い防水シール8を巻いて、信号線7内の素線を防水するとよい。
【0031】
これらの外部端子5、内部端子6、及び信号線7は防滴室2内の電子基板と、ケース外部の電子機器との間で電気的な信号を移送することができればよく、上記の構成に限定しないが、信号線7を帯状に形成し、折り曲げても中の素線が損傷しないように構成する。この帯状の信号線7は、複数の素線を並列して配置し、帯状の被覆材で被覆した所謂フラットケーブルと呼ばれるものであり、この実施の形態では、素線も平板状に形成し、全体を薄く形成したものを用いる。この帯状の信号線7の幅をL1、及び厚さをL2とする。
【0032】
外部端子室3の内壁3bに、その外部端子5を挿通して固定する外部端子用孔11を設け、また、外壁2bに外部端子用孔11から導出した信号線7を、防滴室2の内部に導引する連通孔12を設ける。
【0033】
この外部端子用孔11はその形状などを限定しないが、例えば、外部端子5が故障などにより交換する際に、その作業を容易にするために、外部端子5を固定する際に、外部端子5と外部端子用孔11との間をパッキンやシール部材を用いて密閉しない。
【0034】
また、連通孔12を、内部端子6を防滴室2の外部から内部へ、また、内部から外部へ挿入可能な形状に形成すると共に、前述と同様に、信号線7と連通孔12との間を密閉しない。この連通孔12は、内部端子6と信号線7を防滴室2の外部から内部へ導引することができればよく、上記の構成に限定しない。
【0035】
外部端子5を外部端子用孔11に固定し、内部端子6を連通孔12から防滴室2へ入れ、信号線7を連通孔12に挿通した状態で、外部蓋4aと4bを防滴室2の外壁2bに接合して、外部端子室3をケース1に取り付ける。
【0036】
上記の構成によれば、内部端子6を防滴室2の外部から連通孔12を介して防滴室2に出し入れすることができるので、外部端子室3と共に、外部端子5、内部端子6、及び信号線7をケース1から取り外しすることができる。
【0037】
内部端子6を防滴室2内に設け、且つ外部端子室3をケース1に取り付けた状態では、外部端子用孔11と連通孔12とを密閉していないため、外部から水が防滴室2へ侵入可能な状態である。本発明は、この状態をパッキンなどの密閉方法を用いないで、二つの防滴構造を設けて、外部の水から防滴室2を防滴する。
【0038】
防滴構造10の第1防滴構造として、外部端子用孔11と連通孔12との間に防滴空間13を備え、その防滴空間13からケース1の外部へ水を排出する排水孔14を外部蓋4bに備える。
【0039】
この防滴空間13は、外部蓋4aと4bとを防滴室2に接合し
、ケース1に取り付けた際に、外壁2b、内壁3aと3b、及び外部蓋4aと4bとに囲まれる空間であり、また、ケース1の外部から外部端子用孔11を介して侵入した水が直接連通孔12へと流れ込まないように設けられる空間である。
【0040】
前述したように、外部端子用孔11は密閉されていないため、外部から水が流れこむが、防滴空間13を設けることで、流れ込んだ水が直接連通孔12へ流れ込むことがなく、その水をこの防滴空間13に一旦溜めることができる。
【0041】
排水孔14を防滴空間13から外部に水を排出可能な貫通孔で形成すると共に、防滴空間13へ侵入した水滴を流出し易くなるように、外部蓋4bの防滴空間13側の面を面取り加工して形成する。この排水孔14は、防滴空間13に一旦溜まった水を外部へと排出することができればよく、上記の構成に限定しない。
【0042】
例えば外部蓋4aに設けてもよいが、ケース1の使用時、又は保管時の姿勢の状態のときに、この排水孔14を外部端子用孔11と連通孔12よりも低い位置に設けると、その姿勢の状態のときは常に防滴空間13へ侵入した水を排出することができるので、外部蓋4bに設けることが好ましい。
【0043】
防滴構造10の第2防滴構造として、連通孔12の防滴室2側の開口部を塞ぐ遮蔽板15と、防滴室2内に挿嵌用壁16を備え、遮蔽板15で連通孔12を遮蔽したときに、挿嵌用壁16と外壁2bとで遮蔽板15を挿嵌可能な挿嵌溝17を形成する。
【0044】
この遮蔽板15は、
図2の(a)に示すように、L字型に形成された板本体15aと、逃げ部15bを備え、さらに
図2の(b)に示すように、板本体15aから突出する係止部15cを備える。
【0045】
この逃げ部15bは、板本体15aの連通孔12の遮蔽面からその裏面にかけて設けられた溝であり、信号線7の幅L1と略同様の幅で、且つ信号線7の厚さL2と略同様の深さを有する。この逃げ部15bを設けることで、遮蔽板15を挿嵌溝17に差し込んだときに発生する、信号線7の損傷を防ぐことができる。また、係止部15cは、遮蔽板15で連通孔12を塞いだ際に、その連通孔12の上部と係止し、遮蔽板15が外れることを防止することができる。
【0046】
挿嵌用壁16は、
図3の(c)に示すように、外壁2bに対してコの字状(図面は、中央断面を含む断面図であるためL字状で示す)に形成され、コの字状の上部に凹部16a
を設ける。この凹部16aは、
図1に示すように、遮蔽板15で連通孔12を遮蔽したときに、信号線7を防滴室2の内部で動かし易いように、また、遮蔽板15を取り外し易いように設ける。この構成によれば、信号線7が縁などで傷つくことを防止することができる。
【0047】
この挿嵌用壁16と外壁2bとから形成される挿嵌溝17は、遮蔽板15を挿嵌することができればよい。好ましくは、挿嵌溝17に遮蔽板15を挿嵌したときに、信号線7を遮蔽板15と挿嵌溝17とで挟み込むことができればよく、より好ましくは、信号線7を逃げ部15bに収めて、信号線7を傷つけないように遮蔽板15と挿嵌溝17とで挟み込むことができればよい。加えて、挿嵌溝17に遮蔽板15を差し込む際には遮蔽板15の表面にシール材となるグリスを塗布するとより防滴性を向上することができる。
【0048】
この遮蔽板15と挿嵌溝17とで、連通孔12から防滴室2の内部に導引された帯状の信号線7を挟み込むことにより、防滴空間13と防滴室2とを遮断することができる。つまり、第2防滴構造はパッキンなどの密閉部材を設ける代わりに、信号線7を遮蔽板15と挿嵌溝17とで挟み込むことで、防滴室2を外部から水が進入しないように遮蔽することができる。
【0049】
次に、防滴構造10の防滴方法について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。ここで、
図3はケース1の使用時、又は保管時の姿勢の状態を示しており、
図4は
図3の状態を上下逆さまにした状態を示す。
【0050】
このケース1の内部への水の進入は、
図3の状態の場合は外部端子室11となり、
図4の状態の場合は、排水孔14も加わるが、この
図4の状態は、ケース1の使用時、又は保管時以外の例外の状態であり、頻度は低く、排出孔14から防滴空間13へ進入する水量は多くない。
【0051】
図3に示すように、外部端子用孔11から進入した水W1を、第1防滴構造によって、直接連通孔12へ流れ込ませることなく、防滴空間13に一旦溜める。その溜まった水W1を、排水孔14より外部へと排出する。
【0052】
排水孔14より外部へと排出できなかった水W2、及び外部端子用孔11から信号線7を伝って連通孔12へと向かう水W2を、第2防滴構造によって、信号線7を遮蔽板15と挿嵌溝17とで挟み込み、連通孔12から防滴室2への通路を塞ぐことにより、遮断する。このとき、第1防滴構造で連通孔12へ侵入する水の勢いを低減しているので、遮蔽板15へかかる水からの圧力を低減することができ、第2防滴構造の防滴性を向上することができる。
【0053】
図4の状態で、排水孔14から進入した水W1も直接連通孔12へ流れ込むことがないので、
図3の状態の排水孔14からの排出を除いて、同様となる。この状態では防滴空間13に溜めることができる水量が
図3の状態よりも多くなるため、連通孔12への進入を低減することができる。
【0054】
ケース1が
図3及び
図4以外の姿勢の状態の場合も、同様に、外部端子用孔11、又は排水孔14から進入した水を、防滴空間13に一旦溜めて、さらに、遮蔽板15で遮断することで、防滴室2への進入を防ぐことができる。
【0055】
上記の防滴構造10によれば、第1防滴構造で、侵入した水を連通孔12へ直接導くことなく、その大部分をケース1の外部へ排出することができ、さらに、第2防滴構造で、第1防滴構造で外部へ排出できなかった水の浸入を遮断することができるので、防滴室2の防滴性を向上することができる。これにより、防滴室2の外部に外部端子5を設け、その外部端子5から防滴室2の内部に信号線7を導引しても、外部から防滴室2への水の侵入を防ぐことができる。
【0056】
また、防滴構造10はパッキンなどで密閉しない構造であるため、防滴室2と外部端子室3を容易に分解することが可能となり、外部端子5の損傷や防滴室2の電子基板の故障が発生した場合に、その交換作業を容易にすることができる。加えて、形状の工夫のみで、上記の作用効果を得ることができるので、製造コストを低減することができる。
【0057】
さらに、第1防滴構造によって、外部から侵入する水の勢いを低減し、遮蔽板15にかかる面圧を低減することができるので、遮蔽板15を用いた水の遮断を確実に行うことができる。遮蔽板15の表面に塗布したシール材も常に水に晒されることが無くなるので、シール性の低減を防ぐことができる。
【0058】
次に、上記の防滴構造10を有する本発明に係る第2の実施の形態のケースについて、
図5を参照しながら説明する。この実施の形態のケース20は、第1の実施の形態のケースの構成に加えて、防滴室21と
外部蓋24a、24bとの間に格納室23を備える構成である。
【0059】
ケース20は、外壁21a〜21dに囲まれる防滴室21と、外壁22a〜22cに囲まれ、開口部22dを有する外部端子室22と、防滴室21との仕切壁23aと23bとに囲まれる格納室23とからなる。
【0060】
この格納室23は、防滴室21に隣接し、連通孔12を介して防滴室21と連通する。また、この格納室23は
、外部蓋24aと24bを防滴室21に接合して、
外部蓋24aと24bをケース20に取り付けたときに、
外部蓋24aと24bとによって外部から封鎖されると共に、外部端子室22を収納する。さらに、この格納室33内の空間を第1防滴構造の一部である防滴空間13とする。
【0061】
この第2の実施の形態のケース20は、第1の実施の形態の構成の外壁に、防滴室21の内部に突出した格納室23を設けた構成であり、その他の構成は同様である。この
図5に示す構成によれば、第1の実施の形態で説明した作用効果に加えて、外部端子室22を収納する格納室23を設けることで、防滴室21から外部端子室22が突出することがなく、ケース20をコンパクトすることができる。
【0062】
また、外部端子室22を格納室23に収納し、且つ格納室23を外部端子室22に設けた外部蓋24aと24bによって外部から遮蔽することができるので、より防滴性を向上することができる。第1の実施の形態に示す構成であると、外部端子室が防滴室から突出しているので、外部端子室が衝撃を受けると、防滴室との接合部から水が進入する可能性がある。しかし、この実施の形態であれば、外部端子室22をケース20から突出しないように、収納することができるので、衝撃に対して耐久性を向上することができる。
【0063】
次に、上記の防滴構造10を備えた、携帯可能な温度計測器用ケースについて、
図6〜10を参照しながら説明する。この温度計測用ケース30は、第2の実施の形態のケースの構成と同様であるため、同様の構成については、同符号を用いて説明する。
図6は温度計測器用ケース30を示し、
図7は温度計測器用ケース30から取り外し可能な外部端子室22を示し、
図8は防滴室21と格納室23を示し、
図9は遮蔽板15を示し、
図10は遮蔽板15を挿嵌溝17に差し込んだ状態を示す。
【0064】
温度計測器用ケース30は、合成樹脂で形成され、
図6の(a)の正面図に示すように、ケース上側部31とケース下側部32とを水密性を高めるように凹凸により嵌合して、防滴室21を形成し、この防滴室21の内部に図示しない電気基板を配置する。
【0065】
また、この温度計測器用ケース30は、
図7に示す外部端子室22と、
図6の(b)の底面図に示す電源装置用カバー33を嵌合する構成である。ケース上側部21は、
図6の(c)の上面図に示すように、外壁21aに表示装置が収まる表示装置保持34と操作装置が収まる操作装置保持部35を備える。
【0066】
ここで、温度計測器用ケース30の通常の姿勢について説明する。温度計測器用ケース30を使用するときに計測者は、表示装置を見ながら計測するので、ケース下側部32がケース上側部31よりも下側となる姿勢の状態である。また、計測しないときに温度計測器用ケース30を保管するときも、ケース下側部32がケース上側部31よりも下側となる姿勢の状態である。
【0067】
よって、
図6の(b)に示すように、常に排水孔14が下方に開口するように構成する。この構成によれば、ケース30の使用時と保管時の姿勢では、常に排水孔14が下方に開口するので、防滴空間13に侵入する水を外部へ排出することができる。
【0068】
外部端子室22は、
図7の(b)の側面図に示すように、外部端子室22を、外部蓋24aと24bとからなるL字状の外部蓋24と一体に形成する。この外部蓋24をケース30に嵌合すると共に、ネジにより螺合して、密閉性を高めている。
【0069】
この外部端子室22は、外部蓋24と一体に形成されているので、ケース30からの取り外しを容易にすると共に、その外部蓋24によって、防滴空間13を外部端子孔11と連通孔12との間に設けることができる。
【0070】
この外部端子室22に設けられる外部端子5(図示しない)は、形状や設ける個数を限
定しない。この実施の形態では、外部の測定装置として熱電対温度測定装置を使用することを想定しており、外部端子5を、熱電対同種金属で形成する。
【0071】
この外部端子室22はケース30から容易に取り外すことができるので、様々な種類の熱電対に、それぞれ対応する熱電対同種金属で形成した外部端子5を設けた外部端子室22を複数用意して、熱電対の種類に合わせて交換することができる。また、外部端子5と外部端子用孔12とを密閉構造にしないため、外部端子5、内部端子6、及び信号線7が損傷した際の交換、又は修理にかかる作業を容易に行うことができる。
【0072】
外部端子室22を収納する格納室23は、
図8の(a)〜(c)に示すように、防滴室21の内側に突出して設けられ、外部端子室22を収納する際に、ケース30から外部端子室22が突出することがなく、ケース30をコンパクトにすると共に、外部端子室22とケース30との接合部の耐久性を向上することができる。
【0073】
遮蔽板15を挿嵌溝17に差し込んで、防滴室21への水の進入を遮断する構成については、
図1及び
図5で説明した通りであるので、その説明を省略する。
【0074】
上記の構成によれば、温度計測器用ケース30が防滴構造10を備えるので、前述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。これにより、ケース30から取り外し可能な外部端子室11に、ケース30の外部に設けた電子機器と接続可能な外部端子5を設け、外部端子5から導出される信号線7と信号線7のもう一旦に設けた内部端子6を防滴室22内に導引しても、防滴室22内に水が侵入することを防止することができる。
【0075】
これにより、防滴性を保持しながら、外部端子室22を交換することが可能となり、また、外部端子室22にパッキンなどで密閉することがないので、外部端子5、内部端子6、及び信号線7が故障しても容易に交換することができる。加えて、外部端子5を熱電対同種金属で形成すると、外部端子室22を交換することで、様々な種類の熱電対温度計速装置と接続することができる。本発明の場合は、外部端子室22が簡易な構造であるため、外部端子5の種類を変えるときには、外部端子室22ごと替えた方がコストを抑えることができる。
【0076】
さらに、温度計測器用ケース30の加工で上記の作用効果を得ることができるので、ゴムパッキンやケースの継ぎ目にシールを用いるケースと比べて、部品点数を減少させ、及び加工点数も減少させることができ、製造コストを低減することができる。また、上記の理由から、温度計測器用ケース30を容易に分解することもでき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0077】
上記の実施の携帯のケースの防滴構造10は、携帯可能な温度計測器用ケース30内に設けた場合で説明したが、このケースの防滴構造10を適用することができるケースは温度計測器用ケース30に限定しない。