特許第5912650号(P5912650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912650
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】水洗式の簡易トイレシステム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20160414BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20160414BHJP
   C02F 3/30 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C02F3/00 E
   E03D11/00 Z
   C02F3/30 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-36777(P2012-36777)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169536(P2013-169536A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】594108096
【氏名又は名称】株式会社ハイテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】本多 美陽
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−257133(JP,A)
【文献】 実開平06−032682(JP,U)
【文献】 特開2007−040071(JP,A)
【文献】 実用新案登録第3173972(JP,Y2)
【文献】 特開2006−075736(JP,A)
【文献】 特開2011−190629(JP,A)
【文献】 特開2010−248729(JP,A)
【文献】 特開平07−217233(JP,A)
【文献】 特開2007−002490(JP,A)
【文献】 特開昭56−044095(JP,A)
【文献】 実開平04−073074(JP,U)
【文献】 特開昭59−015139(JP,A)
【文献】 米国特許第06178566(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
C02F 3/28− 3/34
E03D 1/00− 7/00
E03D 11/00−13/00
E04H 1/00− 1/14
A47K 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と汚染処理槽とを備え、
汚水処理槽は散気による破砕処理槽と嫌気性処理槽と曝気処理槽とを有し、
使用開始時に、嫌気性処理槽は空又は空に近い状態にあり、曝気処理槽は便器の水洗水に使用するための水を所定量貯水してあり、
便器使用後の水洗水に前記曝気処理槽に貯水してある水をポンプアップして使用することで便器から発生する汚水及び水洗水を破砕処理槽に受水し、エアー散気による汚物の破砕処理を行い、前記破砕処理された汚水を嫌気性処理槽に向流し、
前記曝気処理槽に貯水してあった水洗水が少なくなった後に嫌気性処理槽にて処理された汚水処理水が曝気処理槽に流入するものであり、
前記破砕処理槽は槽の底部からエアーを散気することで汚物を破砕するものであり、
前記曝気処理槽は当該処理槽の底部から槽深さの1/5〜2/3の高さに散気手段を設置した沈殿処理曝気槽であることを特徴とする水洗式の簡易トイレシステムの使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式の便器を用いることができる簡易トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場,各種イベント会場,公園,土木・建設工事現場等においては、近くに下水処理場がなく、簡易トイレの設置が必要となる。
このような簡易トイレであっても使用者からは水洗式のトイレに対するニーズが高い。
例えば、特許文献1に開示するように、いわゆる浄化槽と称される汚水処理槽は広く知られているが、浄化水を外に放流しない水洗式トイレは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−61998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンパクトで水洗式の簡易トイレシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水洗式の簡易トイレシステムは、便器と汚染処理槽とを備え、汚水処理槽は散気による破砕処理槽と嫌気性処理槽と曝気処理槽とを有し、使用開始時に、嫌気性処理槽は空又は空に近い状態にあり、曝気処理槽は便器の水洗水に使用するための水を所定量貯水してあり、便器使用後の水洗水に前記曝気処理槽に貯水してある水をポンプアップして使用することで便器から発生する汚水及び水洗水を破砕処理槽に受水し、エアー散気による汚物の破砕処理を行うステップと、前記破砕処理された汚水を嫌気性処理槽に受水するステップとを有し、前記曝気処理槽に貯水してあった水洗水が少なくなった後に嫌気性処理槽にて処理された汚水処理水が曝気処理槽に流入するステップとを有することを特徴とする。
【0006】
ここで、破砕処理槽は槽の底部からエアーを散気することで汚物を破砕するものであるのが好ましい。
また、曝気処理槽は当該処理槽の底部から槽深さの1/5〜2/3の高さに散気手段を設置した沈殿処理曝気槽であるのが好ましい。
このようなトイレシステムを使用する際に、請求項1〜3のいずれかのシステムを用いたトイレであって、トイレは外から開放自在のドアと、トイレ室内側にドアのロック装置と、コイン投入口を備え、外からドアを開けトイレ室内に入室し、コインを前記コイン投入口に投入するとロック装置がドアを施錠するものであるようにすることもできる。
この場合にコインを持ち合せていない等のケースを考慮すると、ドアを施錠しないで使用した場合にトイレ室内に人がいるのが外から分かるように閉じたドアの下から足元が見えるようにしてもよい。
【0007】
これまでに提案されている汚水処理装置は、まず汚水を嫌気性処理槽に受水し、嫌気性下で微生物処理した後に好気性処理するものが一般的である。
しかし、汚水原水を直接的に嫌気性処理すると、メタンガス,硫化ガス等の異臭性の非常に強いガスが多量に発生する問題もあった。
これに対して本発明は、便器から発生した汚水原水に含まれる汚物やトイレットペーパーなどをエアーの散気により破砕した。
このようにエアー散気(曝気)により汚物等を細かく破砕すると、その後の微生物処理が容易になるとともに、尿中アンモニアの硝化作用を促進し、異臭の発生が低減される。
【0008】
本発明に係る水洗式簡易トイレシステムの特徴は、本システムの開始に当たり、曝気処理槽に便器の使用後の水洗に用いるための綺麗な水を貯水しておき、嫌気性処理槽を空か空に近い状態にした点にある。
ここで曝気処理槽に予め貯水した水は綺麗なので曝気する必要はないが、酸素を水洗水に充分に溶存しておく観点から曝気してもよい。
曝気処理槽に予め貯水してあった水は、トイレ使用回数が増すにつれて減水し、この水洗水と汚物との混合汚水が破砕処理槽を経由して嫌気性処理槽に送り込まれる。
本システムでは初めにエアー散気で破砕処理するので、嫌気性処理槽は嫌気性微生物の充分な働きを確保すべく2段処理方式にするのが好ましい。
【0009】
予め貯水してあった曝気処理槽の水が少なくなり所定量以下になると、その前に設けた嫌気性処理槽が所定量以上、例えば、嫌気性処理槽を2段に設けた場合に少なくとも第1段の嫌気性処理槽が満水に近い状態になり、その後に曝気処理槽に移送されてくることになるのがよい。
嫌気性処理槽にて分解されなかった有機物は、曝気処理槽で好気性微生物により有機物が分解する。
この曝気処理槽にて固形分が下に沈殿処理された上部の浄水が便器の貯水部にポンプアップされる。
【0010】
さらにトイレの使用回数が増し、曝気処理槽が満水になった時点で一旦本システムの使用を終了とし、バキュームカー等を用いて上記初めの状態に戻す。
従って、本発明に係るシステムにおいてトイレの使用可能な回数を増やすには、水の減量手段を設けてもよい。
例えば曝気処理槽の水面に向けて風を吹き付けることで蒸発を促す方法、加温して蒸発を促す方法、斜面等に流水し蒸発を促す方法等がある。
また、曝気と超音波を組み合せることで蒸発を促す方法も考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水洗式簡易トレシステムは、外部に放流することなく水洗トイレとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る水洗式トイレシステムの構成例を示す。
図2】トイレの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る水洗式簡易トイレシステムは、コンパクトでありながらトイレの使用できる回数が多い点に特徴がある。
一般的な使用方法にて少なくとも3,000回は使用できる例について、以下具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
本発明者の事前調査によれば、平均的な人で1回の尿は約150ml/1回であり、水洗水は350ml/1回(温水洗浄による排水量)であった。
従って、(150ml+350ml)×3,000回の使用では、約1.5m発生することになる。
このようなことを考慮して、図1に示すような構造例を設定した。
本発明に係るトイレシステム10は、水洗式の便器1と処理槽を有する。
なお、便器1は局部温水洗浄機付きであってもよい。
処理槽は便器1から発生した汚水原水を受水する破砕処理槽11と、その後に第1嫌気性処理槽12及び第2嫌気性処理槽13を有し、この第2嫌気性処理槽13の後には曝気処理槽14を有する。
破砕処理槽は通性微生物処理が行われ、第1嫌気性処理槽も溶存酸素が未だ多く、通性微生物による処理となる。
第2嫌気性処理槽は溶存酸素が少なくなり、嫌気性微生物による処理がよい。
破砕処理槽11は底部に散気管11aを設け、エアー曝気するようになっている。
これにより、汚物が細かく破砕されるとともに尿中のアンモニア成分の硝化が促進される。
曝気処理槽14は槽の深さに対して、底部から1/5〜2/3の高さに散気管等を取り付けてあり、曝気処理する。
本実施例では曝気処理槽を3の向流室に仕切り、散気管15、15aと二ヶ所に設けた。
この曝気処理槽は好気性の微生物にて残った有機物が分解される。
【0015】
本実施例では、破砕処理槽の容量を0.2m,第1嫌気性処理槽の容量を0.6m,第2嫌気性処理槽及び曝気処理槽の容量をそれぞれ1.0mに設計した。
破砕処理槽11にはバッフル11bを設けてある。
第1嫌気性処理槽12と第2嫌気性処理槽13との間の隔壁12aには汚物の遮蔽板12bを介して、水の移送口12cを槽の上部付近に設けてある。
また、第2嫌気性処理槽13と曝気処理槽14との間の隔壁13aは下部付近に移送口13cを設けた例になっている。
なお、後述する水洗水の量によっては、移送口13cの高さを本実施例により高く設定してもよい。
また、このような容量にすると全体の大きさが1.4m×1.4m、高さが1.4m〜2.0mの小さな処理槽にて可能になり隔壁の設け方は必ずしも方形に仕切る必要はなく平面視でL字、コ字、うず巻き形状等でもよい。
また、処理槽を円形状に形成、内側に円又は円弧状の仕切りを入れてもよい。
【0016】
図1(a)は、本システムの開始状態を示す。
破砕処理槽11の水位Wは、散気管11aより上にあり、空隙を約0.1m確保する。
第2嫌気性処理槽13と曝気処理槽14は、空隙をそれぞれ約0.4m確保した水位にしてある。
便器1に附帯して設けた貯水タンク1aに、配管2aを経由して加圧ポンプ2により曝気処理槽14から送水される。
貯水タンク1aの水位が所定より下がると自動的にポンプアップされる。
トイレの使用回数が増すに従って図1(b)に示すように予め貯水してあった水面WがWに下がり、使用された水洗水と汚物の混合汚水は、破砕処理槽11にて破砕処理された後に初めは空又は空に近い状態にしてあった、第1嫌気性処理槽12に向流する。
第1嫌気性処理槽12では微生物により有機物の減容が進行し、水位が移送口12cより高くなると、図1(c)に示すように第2嫌気性処理槽13に向流し、ここで有機物の分解がさらに進む。
固形物は遮蔽壁13bにより流れないようにした移送口13cから曝気処理槽14に送り込まれた処理水の水位Wが散気管15より高くなると曝気を開始し、曝気沈殿処理をする。
トイレの使用回数の増大に伴い、曝気処理槽の水位Wも次第に増すことになるが、満水になるまでは浄水化され便器の水洗水に使用される。
曝気処理槽14は第2嫌気性処理槽13側が高く、図1では右側に向けて順次、高さが低くなる向流壁14a、14bを設けることで第1向流室a、第2向流室b及び第3向流室cに分かれるように、仕切壁14c、14dを設けた例になっている。
第1向流室aには、オゾン発生装置16を設けた例になっている。
また、第2向流室は底部から約1/3の高さに散気管15を設け、第3向流室に底部から1/5の高さに散気管15aを設けてある。
オゾン発生装置16を設けると、処理水に発生した変色も分解消滅できてよい。
仕切壁14c、14dでオゾンによる微生物への悪影響を防止しつつ、散気管15、15aによりエアー曝気される。
これにより、わずかに残っていた有機物が好気性微生物により分解される沈殿曝気処理が進行する。
【0017】
図2にトイレ室の例を示す。
処理槽は地上置き型でも埋設型でもよい。
トイレ室20のドア21はノブ22を回すことで自由に開くことができる。
ドアの室内側にはドア施錠のためのコイン投入口を有するロック装置24を有する。
また、ドア21の下部はトイレ室に入った人の足元だけが外部から見えるように小さな開口部23もしくは半透明部を設けてもよい。
トイレを使用する人はドアを閉め、コインを投入し、ドアを施錠する。
このようにすると、トイレの使用者に経費の一部又は全部を負担してもうらうこともできる。
【符号の説明】
【0018】
1 便器
2 ポンプ
10 トイレシステム
11 破砕処理槽
11a 散気管
12 第1嫌気性処理槽
13 第2嫌気性処理槽
14 曝気処理槽
図1
図2