【実施例】
【0012】
図1、2において、Aは容器の口部1に取着されるキャップ本体、Bは上蓋であり、ヒンジCを介してキャップ本体Aに連設されている。
キャップ本体Aは、ねじ2によって容器の口部1に取着されている。
【0013】
キャップ本体Aの上壁3は、容器の口部1を上部から覆い、周縁には内周にねじ2を配した外筒4が垂設されている。
外筒4の外周縁上端には、上蓋Bと重なり合う上端縁6と、上端縁6の内周縁に立設された係合壁7とを有する段部5が設けられ、係合壁7の上部には、後述する上蓋Bの嵌合膨出部24と係合する環状の蓋係合部8が外方に突出して、上壁3の上部に連続している。
【0014】
上壁3の中央には注出筒9が立設され、注出筒9は、下部の基部筒10と、基部筒10より径の小さい上部の口筒部12に移行するくびれ部11とからなる。
上壁3の下面には、容器の口部1の内周に嵌合する内筒14が垂設され、内筒14の内周面は注出筒9の注出口13に連通している。
注出口13には、容器を使用するまで内容物を密閉するためのシール板15が貼着されている。
【0015】
上蓋Bは、頂壁20と、頂壁20の周縁から垂設される側周壁21とからなり、頂壁20の下面には、先端嵌合部23が注出筒9の基部筒10に嵌合する密封筒22が設けられている(以下、上蓋Bの部位を示す際の上下方向については、常に閉蓋時における上下方向で記載する)。
側周壁21の内周面下部には、キャップ本体Aの蓋係合部8と係合する環状の嵌合膨出部24が、内方に突出して設けられている。
図1に示されるように、閉蓋時には、上蓋Bの嵌合膨出部24がキャップ本体Aの蓋係合部8を乗り越えて嵌合し、嵌合膨出部24の上部面と蓋係合部8の下部面とで環状のシール面を形成する。
【0016】
上蓋Bの側周壁21の下端部には、キャップ本体Aの上端縁6と重なり合う下端縁25が形成され、下端縁25の外周縁の一方にはヒンジCが連設しており、ヒンジCの反対側の他方には摘み部26が設けられている。
【0017】
図2,3に示されるように、ヒンジCは、キャップ本体Aと上蓋Bとを円周方向の所定範囲にわたって連結しており、当該所定範囲の中央部でキャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25とを外周縁で連結する中央ヒンジ部30と、中央ヒンジ部30の両側に設けられた両側ヒンジ部31とからなっている。
両側ヒンジ部31は、キャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25からそれぞれ縮径した切り欠き凹部32を経て上下に離隔した位置で、外筒4および側周壁21と連結している。
このように、連結部位の異なる中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31とを設けることにより、所定の開蓋状態を維持することができる。
【0018】
中央ヒンジ部30は、
図4に想像線(2点鎖線)で示すように、キャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25との連結部で肉厚が厚く、両連結部から離れた中間部33に向けて肉薄となっている。
両側ヒンジ部31は、
図3(a)に示すように、中央ヒンジ部30の両側端位置T1から両側ヒンジ部31の両側端位置T2に向けて、キャップ本体Aと上蓋Bのそれぞれ上端縁6と上蓋Bの下端縁25から離れるように傾斜して連結しており、両側端には肉厚の補強端部34が形成されている。
本実施例では、中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31とは、一体にT1位置でつながっているが、先に先行技術文献としてあげた特許文献1記載のヒンジ部20と弾性板21のように、中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31は、一体でなくT1位置で離隔したものであってもよい。
【0019】
また、
図3(b)、
図3(c)および
図4(a)に示すように、両側ヒンジ部31は、切り欠き凹部32の底部でキャップ本体A、上蓋Bと連結しており、上蓋Bの切り欠き凹部32における側周壁21の外周面を形成する外周凹面35には、下端縁25に向けて切り欠き凹部32の径方向の幅が、切り欠き凹部32の底部におけるdより下端縁25におけるD1の方が大きく、下端縁25に向けて広がるように傾斜する傾斜面36が設けられている。
図4(b)は、本実施例の変形実施例であり、傾斜面36が外周凹面35の途中から始まって、下端縁25において切り欠き凹部32の幅がD2まで広がるように形成されている。
この変形実施例の傾斜面36の始点37の下端縁25からの高さは、嵌合膨出部24の上部付け根部27の高さhよりも高い高さHに設定されている
【0020】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本発明のようなキャップ本体Aと上蓋BがヒンジCで連結された合成樹脂製ヒンジキャップは、前述したとおり、通常は射出成形などにより一体成形される。
本実施例のヒンジキャップは、
図2のように開蓋した状態で、上金型と下金型とを上下から圧接して、金型により形成されるキャビティ内に合成樹脂を射出して成形する。
【0021】
上蓋Bの側周壁21の外周面に切り欠き凹部32を形成するためには、上金型に切り欠き凹部32の形状と一致する垂下部を設けなければならないが、本実施例では、
図4(a)に示すように、上蓋Bの切り欠き凹部32における外周凹面35に、下端縁25に向けて切り欠き凹部32の径方向の幅が、切り欠き凹部32の底部におけるdから下端縁25におけるD1まで広がるように傾斜する傾斜面36が設けられているので、金型の前記垂下部にも、当該傾斜面と一致する傾斜面が形成されることになる。
【0022】
金型のキャビティ内に合成樹脂を射出充填し、冷却工程が終了した後、成形されたヒンジキャップを金型から離型する際には、切り欠き凹部32を形成した上金型が上昇離隔するのに伴い、前記垂下部の傾斜面が抜け勾配の役割を果たし、外周凹面35の傾斜面36と上金型の前記垂下部の傾斜面との間に空間が生じるようになる。
同時に、上蓋Bの側周壁21の内周下部に設けられた嵌合膨出部24は内方に突出しているので、嵌合膨出部24の当該形状に一致する上金型が上昇するのにともなって、成形されたヒンジキャップの嵌合膨出部24が上金型によって押圧されるようになるが、側周壁21の外周側には、上金型との間に傾斜面36に対応する前記空間が生じているので、側周壁21が外方に変形して、嵌合膨出部24への押圧力を緩和することができる。
【0023】
このため、本実施例のヒンジキャップは、
図5に示すような、傾斜面を有さない切り欠き凹部32aを有する従来技術のヒンジキャップのように、嵌合膨出部24aがまくれて、だれ100が生じるようなことがない。
なお、本実施例では、
図4(a)に示すように、傾斜面36は切り欠き凹部32の底部から始まって、外周凹面35全体が傾斜面26となっているが、
図4(b)に示す変形実施例のように、傾斜面36の始点37が嵌合膨出部24の上部付け根部27より高い位置にあれば、離型時に製品が逃げることができる前記空間を生じ、本実施例と同様の効果を期待することができる。
【0024】
このように、本実施例のヒンジキャップは、切り欠き凹部32がある部分に対応する嵌合膨出部24に、まくれなどの異常変形を生じることがないから、閉蓋したときに、この部分で気密性が低下して内容物がもれたり、嵌合強度が弱くなって不用意な開蓋が生じたりすることがなく、安定した気密性、嵌合強度を得ることができる。
【0025】
なお、本実施例では、ヒンジキャップを射出成形により成形しているが、本発明は射出成形に限らず、金型を使用して成形する合成樹脂製ヒンジキャップであれば適用可能である。
また、ヒンジキャップの形状は、本実施例のようにねじ2により取着され、くびれ部11を有する注出筒9を具えたキャプ本体Aなどに限定されず、適宜の形状が採用可能である。