特許第5912661号(P5912661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912661
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   B65D47/08 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-42846(P2012-42846)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-177183(P2013-177183A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−002348(JP,A)
【文献】 特開2009−067397(JP,A)
【文献】 特開2011−006157(JP,A)
【文献】 実開昭64−011972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設する上蓋とからなる合成樹脂製ヒンジキャップにおいて、
上蓋は、頂壁と頂壁周縁から垂設される側周壁とからなり、側周壁の内周面下部には、内方に突出し、キャップ本体と係合する環状の嵌合膨出部が設けられており、
ヒンジは、キャップ本体と上蓋とを外周縁で互いに重ね合わせる端縁付近で円周方向の所定範囲にわたって連結し、当該所定範囲の中央部でキャップ本体の上端縁と上蓋の下端縁とを連結する中央ヒンジ部と、中央ヒンジ部の両側に設けられ、前記上端縁、下端縁から縮径した切り欠き凹部を経て上下に離隔した位置で連結した両側ヒンジ部とからなり、
上蓋の側周壁の切り欠き凹部における外周面を形成する外周凹面には、下端縁に向けて切り欠き凹部の径方向の幅が広がるように傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする合成樹脂製ヒンジキャップ。
【請求項2】
傾斜面は、嵌合膨出部の上部付け根部より上方の高さ位置から、上蓋の下端縁まで設けられていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設する上蓋とからなるヒンジキャップに関し、とくに成形性に優れ、安定した嵌合強度と密性が得られる合成樹脂製ヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャップ本体と上蓋をヒンジで連設した合成樹脂製のヒンジキャップは、通常、射出成形などにより一体に成形される。
キャップ本体と上蓋とを外周縁の所定円周範囲にわたって連結するヒンジには、当該範囲の中央部でキャップ本体の上端縁と上蓋の下端縁とを連結する中央ヒンジ部と、中央ヒンジ部の両側に設けられ、それぞれの上端縁、下端縁より上下に離隔した位置で連結する両側ヒンジ部とからなるものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたヒンジ部20、弾性板21が、ここで言うそれぞれ中央ヒンジ部、両側ヒンジ部に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−246173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
両側ヒンジ部に対応するキャップ本体および上蓋の外周面には、両側ヒンジ部の曲げ変形を容易にする切り欠き凹部が設けられることがある。
図5に示すように、当該切り欠き凹部32aは、キャップ本体の上端縁6aと上蓋の下端縁25aから所定高さ離隔した少なくとも両側ヒンジ部との連結部位まで、縮径した外周凹面35aを形成している。
この外周凹面35aは、通常は、縮径幅dが上下方向に一定な垂直壁面をなしている。
【0005】
しかしながら、このような切り欠き凹部32aをもつ上蓋をキャップ本体と一体成形する際には、金型として、当該切り欠き凹部32aに対応した形状を有する垂下部を有する上金型を用い、成形後に離型して成形されたヒンジキャップを切り離すが、上蓋の内周側には、キャップ本体と係合する内方に突出した環状の嵌合膨出部24aが形成されているので、離型する際に、前記垂下部との間で上金型に挟み込まれた状態の嵌合膨出部24aが、図5(b)のように、上金型に引きずられてまくれあがり、だれ100が生じてしまうことがあった。
このように、嵌合膨出部24aがまくれあがって異常変形してしまうと、この部分で気密性が低下して内容物がもれたり、嵌合強度が弱くなって不用意な開蓋が生じたりするという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、キャップ本体と上蓋をヒンジで連設した合成樹脂製ヒンジキャップにおいて、上蓋の内周面下部に環状に突出してキャップ本体と係合する嵌合膨出部が、成形時にまくれ等の異常変形を起こして気密性や嵌合強度が低下するようなことがない構造を備えた合成樹脂製ヒンジキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、合成樹脂製ヒンジキャップとして、容器に取着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設する上蓋とからなる合成樹脂製ヒンジキャップにおいて、上蓋は、頂壁と頂壁周縁から垂設される側周壁とからなり、側周壁の内周面下部には、内方に突出し、キャップ本体と係合する環状の嵌合膨出部が設けられており、ヒンジは、キャップ本体と上蓋とを外周縁で互いに重ね合わせる端縁付近で円周方向の所定範囲にわたって連結し、当該所定範囲の中央部でキャップ本体の上端縁と上蓋の下端縁とを連結する中央ヒンジ部と、中央ヒンジ部の両側に設けられ、前記上端縁、下端縁から縮径した切り欠き凹部を経て上下に離隔した位置で連結した両側ヒンジ部とからなり、上蓋の側周壁の切り欠き凹部における外周面を形成する外周凹面には、下端縁に向けて切り欠き凹部の径方向の幅が広がるように傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
合成樹脂製ヒンジキャップの具体的実施形態として、傾斜面は、嵌合膨出部の上部付け根部より上方の高さ位置から、上蓋の下端縁まで設けられていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成樹脂製ヒンジキャップは、上蓋のヒンジ部の切り欠き凹部における外周面をなす外周凹面に、側周壁の下端縁に向けて切り欠き凹部における縮径幅が広がるように傾斜する傾斜面が設けられているので、成形後に金型から離型する際に、切り欠き凹部を形成した上金型が上昇離隔するのに伴い、傾斜面が抜け勾配の役割を果たし、成形されたヒンジキャップの外周凹面と上金型との間に空間が生じて、上蓋が変形しながら離型することができるので、上蓋内周面の嵌合膨出部がまくれあがって異常変形するようなことがなく、安定した気密性および嵌合強度を得ることができる。
また、傾斜面が、嵌合膨出部の上部付け根部より上方の高さ位置から上蓋の下端縁まで設けられている実施形態では、嵌合膨出部が設けられた高さ部位において離型時に傾斜面との間に空間が生じるので、上蓋の側周壁が外方に逃げるように変形して嵌合膨出部のまくれによる異常変形を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例であるヒンジキャップの閉蓋状態を示す断面側面図である。
図2】本発明の実施例であるヒンジキャップの開蓋状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面側面図である。
図3図2(a)の一部断面図であり、(a)はA−A断面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図である。
図4】(a)は図2(a)のY−Y断面図であり、(b)は変形実施例であるヒンジキャップの同断面図である。
図5】従来技術における図2(a)のY−Y断面と同一位置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の合成樹脂製ヒンジキャップについて、実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1、2において、Aは容器の口部1に取着されるキャップ本体、Bは上蓋であり、ヒンジCを介してキャップ本体Aに連設されている。
キャップ本体Aは、ねじ2によって容器の口部1に取着されている。
【0013】
キャップ本体Aの上壁3は、容器の口部1を上部から覆い、周縁には内周にねじ2を配した外筒4が垂設されている。
外筒4の外周縁上端には、上蓋Bと重なり合う上端縁6と、上端縁6の内周縁に立設された係合壁7とを有する段部5が設けられ、係合壁7の上部には、後述する上蓋Bの嵌合膨出部24と係合する環状の蓋係合部8が外方に突出して、上壁3の上部に連続している。
【0014】
上壁3の中央には注出筒9が立設され、注出筒9は、下部の基部筒10と、基部筒10より径の小さい上部の口筒部12に移行するくびれ部11とからなる。
上壁3の下面には、容器の口部1の内周に嵌合する内筒14が垂設され、内筒14の内周面は注出筒9の注出口13に連通している。
注出口13には、容器を使用するまで内容物を密閉するためのシール板15が貼着されている。
【0015】
上蓋Bは、頂壁20と、頂壁20の周縁から垂設される側周壁21とからなり、頂壁20の下面には、先端嵌合部23が注出筒9の基部筒10に嵌合する密封筒22が設けられている(以下、上蓋Bの部位を示す際の上下方向については、常に閉蓋時における上下方向で記載する)。
側周壁21の内周面下部には、キャップ本体Aの蓋係合部8と係合する環状の嵌合膨出部24が、内方に突出して設けられている。
図1に示されるように、閉蓋時には、上蓋Bの嵌合膨出部24がキャップ本体Aの蓋係合部8を乗り越えて嵌合し、嵌合膨出部24の上部面と蓋係合部8の下部面とで環状のシール面を形成する。
【0016】
上蓋Bの側周壁21の下端部には、キャップ本体Aの上端縁6と重なり合う下端縁25が形成され、下端縁25の外周縁の一方にはヒンジCが連設しており、ヒンジCの反対側の他方には摘み部26が設けられている。
【0017】
図2,3に示されるように、ヒンジCは、キャップ本体Aと上蓋Bとを円周方向の所定範囲にわたって連結しており、当該所定範囲の中央部でキャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25とを外周縁で連結する中央ヒンジ部30と、中央ヒンジ部30の両側に設けられた両側ヒンジ部31とからなっている。
両側ヒンジ部31は、キャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25からそれぞれ縮径した切り欠き凹部32を経て上下に離隔した位置で、外筒4および側周壁21と連結している。
このように、連結部位の異なる中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31とを設けることにより、所定の開蓋状態を維持することができる。
【0018】
中央ヒンジ部30は、図4に想像線(2点鎖線)で示すように、キャップ本体Aの上端縁6と上蓋Bの下端縁25との連結部で肉厚が厚く、両連結部から離れた中間部33に向けて肉薄となっている。
両側ヒンジ部31は、図3(a)に示すように、中央ヒンジ部30の両側端位置T1から両側ヒンジ部31の両側端位置T2に向けて、キャップ本体Aと上蓋Bのそれぞれ上端縁6と上蓋Bの下端縁25から離れるように傾斜して連結しており、両側端には肉厚の補強端部34が形成されている。
本実施例では、中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31とは、一体にT1位置でつながっているが、先に先行技術文献としてあげた特許文献1記載のヒンジ部20と弾性板21のように、中央ヒンジ部30と両側ヒンジ部31は、一体でなくT1位置で離隔したものであってもよい。
【0019】
また、図3(b)、図3(c)および図4(a)に示すように、両側ヒンジ部31は、切り欠き凹部32の底部でキャップ本体A、上蓋Bと連結しており、上蓋Bの切り欠き凹部32における側周壁21の外周面を形成する外周凹面35には、下端縁25に向けて切り欠き凹部32の径方向の幅が、切り欠き凹部32の底部におけるdより下端縁25におけるD1の方が大きく、下端縁25に向けて広がるように傾斜する傾斜面36が設けられている。
図4(b)は、本実施例の変形実施例であり、傾斜面36が外周凹面35の途中から始まって、下端縁25において切り欠き凹部32の幅がD2まで広がるように形成されている。
この変形実施例の傾斜面36の始点37の下端縁25からの高さは、嵌合膨出部24の上部付け根部27の高さhよりも高い高さHに設定されている
【0020】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本発明のようなキャップ本体Aと上蓋BがヒンジCで連結された合成樹脂製ヒンジキャップは、前述したとおり、通常は射出成形などにより一体成形される。
本実施例のヒンジキャップは、図2のように開蓋した状態で、上金型と下金型とを上下から圧接して、金型により形成されるキャビティ内に合成樹脂を射出して成形する。
【0021】
上蓋Bの側周壁21の外周面に切り欠き凹部32を形成するためには、上金型に切り欠き凹部32の形状と一致する垂下部を設けなければならないが、本実施例では、図4(a)に示すように、上蓋Bの切り欠き凹部32における外周凹面35に、下端縁25に向けて切り欠き凹部32の径方向の幅が、切り欠き凹部32の底部におけるdから下端縁25におけるD1まで広がるように傾斜する傾斜面36が設けられているので、金型の前記垂下部にも、当該傾斜面と一致する傾斜面が形成されることになる。
【0022】
金型のキャビティ内に合成樹脂を射出充填し、冷却工程が終了した後、成形されたヒンジキャップを金型から離型する際には、切り欠き凹部32を形成した上金型が上昇離隔するのに伴い、前記垂下部の傾斜面が抜け勾配の役割を果たし、外周凹面35の傾斜面36と上金型の前記垂下部の傾斜面との間に空間が生じるようになる。
同時に、上蓋Bの側周壁21の内周下部に設けられた嵌合膨出部24は内方に突出しているので、嵌合膨出部24の当該形状に一致する上金型が上昇するのにともなって、成形されたヒンジキャップの嵌合膨出部24が上金型によって押圧されるようになるが、側周壁21の外周側には、上金型との間に傾斜面36に対応する前記空間が生じているので、側周壁21が外方に変形して、嵌合膨出部24への押圧力を緩和することができる。
【0023】
このため、本実施例のヒンジキャップは、図5に示すような、傾斜面を有さない切り欠き凹部32aを有する従来技術のヒンジキャップのように、嵌合膨出部24aがまくれて、だれ100が生じるようなことがない。
なお、本実施例では、図4(a)に示すように、傾斜面36は切り欠き凹部32の底部から始まって、外周凹面35全体が傾斜面26となっているが、図4(b)に示す変形実施例のように、傾斜面36の始点37が嵌合膨出部24の上部付け根部27より高い位置にあれば、離型時に製品が逃げることができる前記空間を生じ、本実施例と同様の効果を期待することができる。
【0024】
このように、本実施例のヒンジキャップは、切り欠き凹部32がある部分に対応する嵌合膨出部24に、まくれなどの異常変形を生じることがないから、閉蓋したときに、この部分で気密性が低下して内容物がもれたり、嵌合強度が弱くなって不用意な開蓋が生じたりすることがなく、安定した気密性、嵌合強度を得ることができる。
【0025】
なお、本実施例では、ヒンジキャップを射出成形により成形しているが、本発明は射出成形に限らず、金型を使用して成形する合成樹脂製ヒンジキャップであれば適用可能である。
また、ヒンジキャップの形状は、本実施例のようにねじ2により取着され、くびれ部11を有する注出筒9を具えたキャプ本体Aなどに限定されず、適宜の形状が採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の合成樹脂製ヒンジキャップは、キャップ本体と係合する上蓋の嵌合膨出部にまくれ等の異常変形を生じることがなく、安定した気密性、嵌合強度を有するので、内容物の漏れを確実に防がなければならない容器に広く適用することができ、とくに、液状の内容物を収容する容器のヒンジキャップとして好適である。
【符号の説明】
【0027】
A キャップ本体
B 上蓋
C ヒンジ
1 容器の口部
2 ねじ
3 上壁
4 外筒
5 段部
6, 6a 上端縁
7 係合壁
8 蓋係合部
9 注出筒
10 基部筒
11 くびれ部
12 口筒部
13 注出口
14 内筒
15 シール板
20 頂壁
21 側周壁
22 密封筒
23 先端嵌合部
24,24a 嵌合膨出部
25,25a 下端縁
26 摘み部
27 上部付け根部
30 中央ヒンジ部
31 両側ヒンジ部
32,32a 切り欠き凹部
33 中間部
34 補強端部
35,35a 外周凹面
36 傾斜面
37 始点
100 だれ
図1
図2
図3
図4
図5