(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、照明・配線器具支持金具XAでは、包囲部XA1を角形鋼Yに取り付ける際に、包囲部XA1の一部である上方分割体1Aaと下方分割体1Abとを角形鋼Yの上下に宛がった状態で、互いにボルト3A及びナット4Aで連結する必要がある。しかし、上方分割体1Aaや下方分割体1Abは棒状なので、宛がった状態から簡単に動いてしまい、作業者がボルトとナットの連結作業をしながら、その宛がった状態を維持するのが難しく、取り付け作業が困難になっていた。また、ボルト3Aとナット4Aの螺合作業に失敗したり、或いは螺合させたつもりが不完全であり、その後、手や腕が触れる等、不意に外力が加わることで、上方分割体1Aaや下方分割体1Abを落下させてしまう場合もある。特に、角形鋼Yの下方に宛がわれる下方分割体1Abは、手で下支えしなければ、自重によって落下するので、その取り扱い、及び取り付け作業は非常に手間がかかり面倒である。
【0006】
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、取着具の分割体の一部を長尺材に仮取着させることで長尺材への取り付け作業を容易にする取着具の分割体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の取着具の一方側分割体は、当該一方側分割体と他方側分割体とを互いに組み付けて、断面略矩形の長尺材をその周方向環状に包囲する取着具の、一方側分割体であって、当該一方側分割体は、基部とこの基部の左右に連設された一対の両腕部を備え
、該両腕部間に前記長尺材の下方からそのまま差し込んで取付けられるように、略コ字状に形成され、他方側分割体を組み付けるための組付部を備え、両腕部は、この両腕部間にその先端側から前記長尺材を填め込み可能で、一方側分割体単独で、自重落下を阻止可能なように長尺材へ仮取着するための仮取着手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の取着具の一方側分割体は、請求項1に記載の取着具の一方側分割体において、仮取着手段は、両腕部が長尺材の対向する外側面を挟持する弾性力からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の取着具の分割体は、複数の分割体を互いに組み付けて、長尺材をその周方向環状に包囲する取着具の、複数の分割体のうち少なくとも一つの分割体であって、当該分割体は、長尺材の周方向外側面の一部に並行配置される並行部を備えるとともに、当該並行部には、分割体単独で、自重落下を阻止可能なように長尺材へ仮取着するための、磁石や両面テープ等の磁力又は接着力からなる仮取着手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の取着具の
一方側分割体は、請求項1から3のいずれかに記載の取着具の
一方側分割体において、
一方側分割体が、前記他方側分割体
と互いに組み付けられて、前記長尺材をその周方向環状に包囲するとともに挟持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の取着具の一方側分割体によれば、一方側分割体は、基部とこの基部の左右に連設された一対の両腕部を備えた略コ字状に形成され、当該両腕部は、この両腕部間にその先端側から前記長尺材を填め込み可能で、一方側分割体単独で、自重落下を阻止可能なように前記長尺材へ仮取着するための仮取着手段が設けられている。そのため、作業者は、断面矩形の長尺材へ向けて略コ字状の一方側分割体を、填め込むように宛がえさえすれば、仮取着手段により一方側分割体が長尺材へと仮取着される。そして、仮取着手段よって、一方側分割体は長尺材から外れにくく、仮に不意に外圧が加わっても仮取着された状態を維持し、また、自重によって落下することもないので、取り付け作業が容易になる。
【0012】
請求項2に記載の取着具の一方側分割体によれば、請求項1の取着具の一方側分割体の効果に加えて、仮取着手段は、両腕部が前記長尺材の対向する外側面を挟持する弾性力からなるため、仮取着された状態をより強固に維持し、また、自重によって落下することもなく、さらに、取り付け作業が容易になる。
【0013】
本発明の取着具の分割体によれば、当該分割体は、長尺材の周方向外側面の一部に並行配置される並行部を備えるとともに、当該並行部には、前記分割体単独で、自重落下を阻止可能なように前記長尺材へ仮取着するための、磁石や両面テープ等の磁力又は接着力からなる仮取着手段が設けられている。そのため、作業者は、長尺材へ向けて分割体を宛がえさえすれば、その分割体の並行部が、長尺材の周方向外側面の一部に並行配置される。そして、仮取着手段によって、分割体は長尺材から外れにくく、仮に不意に外圧が加わっても仮取着された状態を維持し、また、自重によって落下することもないので、取り付け作業が容易になる。
【0014】
請求項4に記載の取着具の
一方側分割体によれば、請求項1から3の取着具の
一方側分割体の効果に加えて、
一方側分割体が、他方側分割体
と互いに組み付けられて、長尺材を挟持するため、取着具の
一方側分割体は、長尺材を包囲し尚且つ挟持して、確実かつ強固に長尺材へ設置固定される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0017】
図1(a)は、本発明の一実施形態としての長尺材への取着具100を長尺材Oへ設置した斜視図、(b)は側面図である。長尺材Oは、外面の全周が略平坦である断面略矩形の形鋼材である。取着具100は、長尺材Oを周方向に包囲する包囲部110と、長尺材Oと離隔する方向に延出した取付部120を備える。この包囲部110は、一方側分割体130と他方側分割体140とを互いに係合させることで、長尺材Oを周方向に包囲している。また、器具Mは、取付部120の螺孔C2にネジPを螺合して固定してある。長尺材O上には複数の配線Wが這わせてあり、他方側分割体140上で留め具Fにより束ねて固定され、配線Wの一部が引込穴C1を通り器具Mに引き込まれている。なお、取付部120には、器具Mの他に、多種多様な配線・配管材や器具等を取り付けることができる。
【0018】
次に、
図2(a)〜(c)を参照して、一方側分割体130の構成について詳しく述べる。
図2(a)は、一方側分割体130の斜視図である。
図2(a)に示すとおり、一方側分割体130は、基部131と、一対の両腕部である側部132と、端部133とからなる。また、基部131と側部132とが仮取着手段135を構成する。端部133の先端には、他方側分割体140の貫通孔144と係合する係合部134がある。この係合部134は略T字状をしており、係止爪136及び頭部137を備えている。この端部133と係合部134とが、他方側分割体140を組み付ける組付部を構成する。また、一方側分割体130の基部131、側部132、及び端部133は、一枚の金属板を屈曲させて一体形成したものであり、外力に対して、その形成された形状を弾性的に維持しようとする。なお、一方側分割体130は、基部131、側部132及び端部133の各部材を別個に形成し、これらを組み付けて構成してもよい。さらに、一方側分割体130の材質は、形成された形状を弾性的に維持することができれば、例えば、合成樹脂(プラスチック)、その他、長尺材に固定可能な材質であればよい。
【0019】
図2(b)は、一方側分割体130の側面図である。
図2(b)に示すとおり、一方側分割体130は、略コ字状をしている。また、側部132は、基部131の両端からほぼ直角に屈曲しており、所定角度α(本実施例では、約5度)だけ内側に傾斜している。そのため、側部132を外側へ曲げようとすると、内側へ戻ろうとする弾性力が働く。また、基部131は、中央がわずかに内側へ反っている。そのため、基部131を外側へ押すと、内側へ戻ろうとする弾性力が働く。このようにして、基部131と側部132とからなる仮取着手段135には、その内側に包囲される長尺材方向に向けて弾性力が付勢されることになる。また、端部133は側部132の先端から所定角度β(本実施例では、約15度)だけ外側に屈曲している。そのため、端部133の先端側の係合部134を内側に変形させると元の状態に復帰しようとして、外側へ向かう弾性復元力が働く。
【0020】
図2(c)に示す係合部134間の開口幅は、長尺材Oに取り付けられていない状態で、L0となっている。また、側部132の先端間の開口幅は、長尺材Oに取り付けられていない状態で、L1となっている。
【0021】
次に、
図3(a)〜(c)を参照して、他方側分割体140の構成について詳しく述べる。
図3(a)は、他方側分割体140の斜視図である。
図3(a)に示すとおり、他方側分割体140は、基部141、側部142、及び端部143から構成される。側部142及び端部143には、一方側分割体130の係合部134と係合する被係合部として貫通孔144が設けてある。基部141には、留め具Fを固定する固定台148や、器具M等を取り付け可能な取付台149が設けてある。また、端部143から延出した取付部120には、器具M等を取り付けるための螺孔C2や、配線Wを器具Mへ引き込むための引込穴C1が設けてある。
【0022】
図3(b)は、他方側分割体140の側面図である。
図3(b)に示すとおり、側部142は、基部141の両端からほぼ直角に屈曲している。従って、他方側分割体140の形状は、略コ字状となる。さらに、端部143は、側部142の先端からほぼ直角に屈曲して、水平方向へ延出している。
【0023】
図3(c)は、他方側分割体140の平面図である。他方側分割体140の両端には貫通孔144が設けられ、当該貫通孔144は、内側に開口幅の広い広幅部145を、外側に広幅部145に比べて開口幅が狭い狭幅部146を備えている。したがって、左側の貫通孔144と右側の貫通孔144は、互いに左右対称の形状をしている。この両端の広幅部145は、互いにL2の間隔を隔てて配置してある。また、広幅部145と狭幅部146の端部までの幅は、L3となっている。
【0024】
なお、他方側分割体140は、一枚の長尺状の金属板をプレス成形により一体形成しているが、基部141、側部142、及び端部143の各部材を別個に形成し、これらを組み付けて構成してもよい。さらに、他方側分割体140の材質は、金属に限定されず、例えば、プラスチック等でもよい。
【0025】
次に、
図4(a)および(b)を参照して、本発明の一実施形態としての一方側分割体130と他方側分割体140が係合する態様を説明する。
図4(a)は、他方側分割体140の貫通孔144周辺、及び一方側分割体130の端部133周辺の拡大図を示しており、一方側分割体130の端部133には、係止爪136及び頭部137を備える略T字状の係合部134が形成してある。係合部134の幅は、頭部137で最も広く、係止爪136で最も狭くなる。一方、貫通孔144の広幅部145は、側部142に設けてあり、頭部137を挿通可能な幅を有している。また、貫通孔144の狭幅部146は、端部143に設けてあり、狭幅部146の周縁に係止爪136が係合可能な幅を有している。したがって、狭幅部146の幅は、広幅部145の幅より狭くなる。
【0026】
図4(b)は、他方側分割体140の貫通孔144に一方側分割体130の係合部134が係合した状態を示している。係合部134の頭部137は、貫通孔144の広幅部145へ挿通し、係合部134の係止爪136が狭幅部146の周縁に係合する。また、係合した状態で係合部134は、係止爪136が狭幅部146の周縁に係合可能な範囲L3内で、移動可能である。さらに、突起147が狭幅部146の周縁の端部に設けてあるので、係合部134が端部まで移動しても外れにくく、係合状態を維持しやすくなっている。なお、
図4(a)及び(b)では、他方側分割体140の一方の貫通孔144周辺(
図3(c)の左側の貫通孔144の周辺)のみ示しているが、他方の貫通孔144(
図3(c)の右側の貫通孔144の周辺)も同様の構成となっており、他方の貫通孔144に、係合部134が、上記のように係合することはいうまでもない。
【0027】
次に、
図5(a)〜(c)の概念図を参照して、本発明の一実施形態としての取着具100の一方側分割体130と他方側分割体140とが長尺材Oを挟持する仕組みについて説明する。
【0028】
まず、取着具100を長尺材Oへ固定するには、
図5(a)のように、長尺材Oに一方側分割体130を仮取着する。長尺材Oに取り付ける前の側部132の両端の開口幅L1(
図2(b)参照)は、長尺材Oの幅L5よりも狭くしてある。そのため、一方側分割体130を長尺材Oに取り付けると、側部132は外側に広げられ、長尺材O方向に付勢された弾性力によって内側へ戻ろうとする力が働く。すると、両側の側部132は、挟みこむように長尺材Oに押接する。さらに、仮取着手段135の基部131及び側部132は、長尺材Oの周方向の下方半分以上を取り囲んでいる。したがって、一方側分割体130は、長尺材Oから外れにくく、また、自重によって落下することもない。尚、弾性力は、仮取着可能であれば、どのような程度、度合いでもよく、例えば、挟み込んだ部位が自重で下方にズレ下がっても、長尺材から落下しなければよい。また、係合部134の係止爪136と、一方側分割体130の基部131の距離はH1、側部132の先端Nと係止爪136の距離はRとなっている。
【0029】
さて、一方側分割体130を長尺材Oに取り付けると、両端の側部132は外側に広がるので(水平方向へdだけ広がるとする。)、それに伴い、側部132の先端に設けられた端部133も外側に広がる。すると、係合部134間の開口幅は、(L0+d)となる。この時、係合部134間の開口幅(L0+d)は、他方側分割体140の貫通孔144の広幅部145間の幅L2(
図3(b)参照)より広くなるようにする。なお、長尺材Oに取り付けられていない状態で、側部132の両端の開口幅L1(
図2(b)参照)が、長尺材Oの幅L5以下となっているために、側部132が外側に広がらない場合は、係合部134間の開口幅L0が、広幅部145間の幅L2より広くなるようにする。
【0030】
次に、
図5(b)に示すように、両端の係合部134を貫通孔144に係合させるためには、まず、両端の係合部134の頭部137が、両端の貫通孔144の広幅部145を挿通しなければならない(
図4(a)参照)。したがって、両端の係合部134を互いに近接するように弾性変形させて(たまわせて)、係合部134間の開口幅を、他方側分割体140の貫通孔144の広幅部145間の幅L2と等しくする。すると、両端の係合部134を両端の貫通孔144に挿通させることができる。なお、この状態を挿通状態、係止爪136と貫通孔144とが接触している個所を接触点Iとする。両係合部134を互いに近接させると、係止爪136は、Nを支点として半径Rの円弧を描いて内側に移動するので、係止爪136と一方側分割体130の基部131の距離H2は、H1より大きくなる(H2>H1)。
【0031】
さらに、
図5(c)に示すように、内側へ弾性変形させた両係合部134は、元の状態へ復帰しようと外側へ、つまり両係合部134が離隔する方向へ弾性復元力が働く。そのため、両係合部134は離隔する方向へ復帰して、
図4(b)に示すように、係合部134の係止爪136が狭幅部146の周縁に係合し、その結果、両係合部134が両貫通孔144に係合することになる(この状態を係合状態とする。)。すると、両係止爪136は、Nを支点として半径Rの円弧を描いて外側に移動する。したがって、係止爪136と、一方側分割体130の基部131の距離H3は、H2より小さくなる(H2>H3)。この時、接触点Iは、外側へ水平にL6、挟持方向である垂直方向へ(H2−H3)だけ移動することになる。なお、接触点Iの水平方向の移動最大幅は、係止爪136が貫通孔144の狭幅部146の周縁と係合可能な範囲L3(
図4(b)参照)となる。
【0032】
ここで、他方側分割体140は、係合部134の弾性復元力では変形しない剛性にしてある。そのため、係合部134が復帰するとともに接触点Iが挟持方向である垂直方向へ(H2−H3)だけ移動すると、他方側分割体140も長尺材Oに向かって引っ張られるように、(H2−H3)だけ移動する。その結果、他方側分割体140と一方側分割体130が互いに近接して、長尺材Oを挟持することになる。
【0033】
また、一方側分割体130及び他方側分割体140は共に、略コ字状をしており、長尺材Oの矩形断面の上下部分と近似している。そのため、他方側分割体140の両方の側部142が、それぞれ側部面O1及びO2に当接し、一方側分割体130の両方の側部132が、それぞれ側部面O1及びO2に当接している。したがって、設置後の取着具100の挟持姿勢が安定し、取着具100が長尺材Oの周方向に回転することがない。また、取着具100を長尺材Oに取り付ける過程においても、一方側分割体130及び他方側分割体140は、長尺材に対して回転することなく姿勢が安定し、取付作業が容易になる。なお、一方側分割体130及び他方側分割体140は共に、略コ字状でなくても、一方側分割体130と他方側分割体140のそれぞれの一部が長尺材Oに当接して挟持できれば、直線状であってもよく、当業者が考え得る限り、どのような形状をとってもよい。さらに、一方側分割体130と他方側分割体140とを組み付けるための組付部の構成は、ボルトとナットを用いたものでもよく、また、組付部は一方側分割体130の両方の側部132以外にも、基部131やその他の任意の箇所に設けることもでき、分割体を互いに組みつけられるものであれば、当業者が考え得る限り、どのような構成をとってもよい。
【0034】
また、一方側分割体130に対して、
図7(c)及び(d)で後述する取着爪、磁石、及び両面テープを併用してもよい。具体的には、一方側分割体130の側部132の先端N付近に取着爪を設けてもよく、また、仮取着手段135の少なくとも基部131または側部132のいずれかの長尺材との当接箇所に磁石、又は両面テープを配設してもよい。また、他方側分割体140の基部141及び側部142に対して、一方側分割体130の仮取着手段135と同様な構成の仮取着手段を設けることもできる。さらに、取着具は、一方側分割体と他方側分割体とからなる2つの分割体より構成されているが、当該構成に限定されず、一方側分割体と他方側分割体とが一部分で連結されて一体形成されているものや、一方側分割体と他方側分割体とがさらに複数の分割体より構成されていてもよく、長尺材を包囲できるものであれば、当業者が考え得る限り、どのような構成をとってもよい。
【0035】
以下、本発明の一実施形態の取着具100の作用効果について説明する。
【0036】
本実施形態の取着具100では、一方側分割体130の両端の両係合部134を近接又は離隔させた状態で当該両係合部134を他方側分割体140の被係合部である貫通孔144に挿通させると、両端の両係合部134が復帰するとともに、一方側分割体130と他方側分割体140とが互いに係合し、長尺材Oを挟持している。そのため、長尺材Oに取着具100を固定するためには、作業者は、一方側分割体130の両端の両係合部134を互いに近接又は離隔させた状態で両係合部134を他方側分割体140の被係合部である貫通孔144に挿通させさえすればよく、非常に作業が簡単である。特に、長尺材Oが敷設されている高所での作業においては、取着具100の取付作業が簡単であることは、有益である。
【0037】
また、本実施形態の取着具100の一方側分割体130は、長尺材方向に付勢された弾性力からからなる仮取着手段135を備えている。従って、仮取着手段135に外力が加わっても、長尺材方向に付勢された弾性力によって仮取着された状態を維持するので、一方側分割体130は長尺材Oから外れにくい。そのため、長尺材Oに一方側分割体130を仮取着しておけば、一方側分割体130が長尺材Oから外れたり、自重により落下したりすることがないので、作業者は一方側分割体130から手を離して作業でき、取着具100の設置作業がより容易になる。
【0038】
さらに、本実施形態の長尺材への取着具100の他方側分割体140は、貫通孔144の狭幅部146の周縁の端部に突起147を備えている。従って、貫通孔144に係合した一方側分割体130の係合部134が、貫通孔144から外れにくくなるので、取着具100の設置作業がより容易になる。
【0039】
また、一方側分割体130の仮取着手段135及び弾性復元力を有する端部133は、一枚の金属板を屈曲させて簡単に形成することができ、さらに、屈曲の所定角度(α又はβ)を変更することで、仮取着手段135の長尺材Oに対する固定力や端部133の弾性復元力の強さを、適宜調節することができる。
【0040】
また、基部131は中央がわずかに内側へ反っているので、基部131の中央が長尺材Oにより外側に押されると、長尺材方向に付勢された弾性力により基部131には、内側へ押し返す力が働く。そのため、より強力に一方側分割体130と他方側分割体140とが長尺材Oを挟持することになる。
【0041】
また、取付部120は、他方側分割体140の一方の貫通孔144側から、長尺材Oと離隔する方向に延出している。そのため、取着具100を長尺材Oへ取り付ける際、作業者は、長尺材Oを包囲する他方側分割体140を、直接手で持つ必要がない。したがって、作業者は取付部120を持って作業すれば、他方側分割体140と長尺材Oとの間に指を挟んだりすることがなく、容易に作業ができる。また、長尺材O上方に他方側分割体140を手で持って作業できるだけの空間が確保できない場合であっても、作業者は、長尺材Oと離隔する方向に延出した取付部120を使って作業をすることができる。
【0042】
次に、本発明の変形例を一実施形態の取着具100と対比しつつ説明するが、一実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0043】
(変形例1)
一実施形態の取着具100では、両係合部134が弾性復元力により互いに離隔することにより、長尺材Oを挟持していたが、本発明は、これに限定されない。例えば、
図6(a)に示すように、両係合部234が弾性復元力により互いに近接することにより、長尺材Oを挟持してもよい。
図6(a)に示す長尺材Oに仮取着した一方側分割体230では、両方の端部233及び係合部234が内側へ傾斜している。そのため、端部233の先端側の係合部234を外側に変形させると元の状態に復帰しようとして、内側へ向かう弾性復元力が働く。また、係合部234の係止爪236と、一方側分割体230の基部231の距離はH4となっている。一方、
図6(b)に示すように、他方側分割体240の貫通孔244は、広幅部245と狭幅部246を備えている。
【0044】
次に、
図6(c)に示すように、両端の係合部234を他方側分割体240の両端の貫通孔244に係合させるためには、まず、両端の係合部234の頭部237が、両端の貫通孔244の広幅部245を挿通しなければならない(
図6(b)参照)。したがって、両係合部234を互いに離隔するように弾性変形させて、係合部234間の開口幅を、他方側分割体240の貫通孔244の広幅部245間の幅L2´と等しくする。すると、両端の係合部234を貫通孔244に挿通させることができる。この状態を挿通状態、係止爪236と貫通孔244とが接触している個所を接触点Iとする。両係合部234を互いに離隔させると、係止爪236は、側部232の先端Nを支点として半径Rの円弧を描いて外側に移動するので、係止爪236と一方側分割体230の基部231の距離H5は、H4より大きくなる(H5>H4)。
【0045】
さらに、
図6(d)に示すように、外側へ弾性変形させた両係合部234は、元の状態へ復帰しようと内側へ、つまり両係合部234が近接する方向へ弾性復元力が働く。そのため、両係合部234は近接する方向へ復帰して、両係合部234が両貫通孔244に係合することになる(この状態を係合状態とする)。すると、両係止爪236は、Nを支点として半径Rの円弧を描いて内側に移動する。したがって、係止爪236と、一方側分割体230の基部231の距離H6は、H5より小さくなる(H5>H6)。この時、接触点Iは、内側へ水平にL6´、挟持方向である垂直方向へ(H5−H6)だけ移動することになる。このように、係合部234が復帰するとともに接触点Iが挟持方向である垂直方向へ(H5−H6)だけ移動すると、他方側分割体240も長尺材Oに向かって引っ張られるように、(H5−H6)だけ移動する。その結果、他方側分割体240と一方側分割体230が互いに近接して、取着具200が長尺材Oを挟持することになる。また、接触点Iの水平方向の移動最大幅は、係止爪236が貫通孔244の狭幅部246の周縁と係合可能な範囲L3´(
図6(b)参照)となる。
【0046】
なお、
図5及び
図6を参酌して説明した構造に限定されることはなく、両係合部を互いに近接又は離隔させ、両係合部を他方側分割体の貫通孔に挿通させた挿通状態から、両係合部が復帰するとともに、挟持方向へ接触点が移動し、他方側分割体と一方側分割体が互いに係合する係合状態へ移行し、長尺材を狭持できる他の構造も任意に選択可能である。
【0047】
(変形例2)
一実施形態の取着具100では、一方側分割体130の両腕部が長尺材の対向する外側面を挟持する弾性力からなる仮取着手段135を備えていたが、本発明は、これに限定されない。例えば、
図7(a)の取着具300のように、外面の全周が略平坦である断面略矩形の長尺材O1が鉄などの磁性金属であれば、少なくとも基部331または側部332のいずれかに磁性を持たせた仮取着手段335としてもよい。これにより、一方側分割体330を長尺材O1に当接させると、磁力による引力が、その当接した状態を維持する維持力として働き、一方側分割体330が長尺材O1に仮取着される。また、少なくとも基部331または側部332のいずれかの表面に磁石を貼り付けてもよい。なお、基部331及び側部332の側面は、長尺材O1の外側面と並行に配置される並行部となっているので、密着し易く磁力を用いた仮取着がし易くなっている。その他、長尺材に一方側分割体を取着できる手段であれば、例えば、仮取着手段335の少なくとも基部331または側部332のいずれかの表面に両面テープを配設することもできる。この両面テープによれば、その接着力が、当接した状態を維持する維持力として働くことになる。なお、磁石や両面テープは、長尺材の表面側に配設してもよい。また磁力及び接着力は、仮取着可能であれば、どのような程度、度合いでもよく、例えば、当接した部位が自重で下方にズレ下がっても、長尺材から落下しなければよい。さらに、側部332のQ付近の部分拡大図(
図7(b)参照)のように、側部332に複数の取着爪332aを設け、当該複数の取着爪332aを長尺材O1の外側面の表面に係止又はくい込ませて、仮取着させることもでき、他にも当業者が考え得る限り、どのような手段をとってもよい。
【0048】
(変形例3)
一実施形態の取着具100では、長尺材Oが断面略矩形で、一方側分割体130の両腕部が長尺材の対向する外側面を挟持する弾性力からなる仮取着手段135を備えていたが、本発明は、これに限定されない。例えば、
図7(c)の取着具400のように、一方側分割体430が、磁石や両面テープ等の磁力又は接着力からなる仮取着手段435を備えてもよい。具体的には、一方側分割体430は、磁性金属からなる断面I形形状の長尺材O2の上端O3の外側面に並行配置される並行部として基部431を備えている。そして、基部431の表面に磁石や両面テープを配設することで、長尺材の上端O3に一方側分割体430を仮取着できる。また、器具Mが取り付けられる他方側分割体440の基部441を長尺材O2の下端O4の外側面に並行配置し、当該基部441の表面に磁石や両面テープを配設すれば、長尺材の下端O4に他方側分割体440を仮取着できる。
【0049】
(変形例4)
一実施形態の取着具100では、長尺材Oが断面略矩形で、一方側分割体130が略コ字状であり、尚且つ、一方側分割体130の両腕部が長尺材の対向する外側面を挟持する弾性力からなる仮取着手段135を備えていたが、本発明は、これに限定されない。例えば、
図7(d)の取着具500のように、磁性金属からなる長尺材O5が断面略円形であれば、一方側分割体530を断面略半円形とし、磁石や両面テープ等の磁力又は接着力からなる仮取着手段535を備えてもよい。具体的には、一方側分割体530は、長尺材O5の外側面に並行配置される並行部として円弧状の基部531を備えている。そして、基部531の表面に磁石や両面テープを配設することで、長尺材O5に一方側分割体530を仮取着できる。また、基部531に長尺材O5方向に付勢された弾性力を付与することで、より強固に仮取着することもできる。なお、
図7(d)では、他方側分割体540の基部541の形状は直線状であるが、基部541が長尺材O5に接触できれば、長尺材O5の形状に合わせて円弧状にすることできる。
【0050】
(変形例5)
一実施形態の取着具100では、一方側分割体130の両端に係合部134を設けていたが、本発明は、これに限定されない。例えば、
図8(a)に示す取着具600のように、一方側分割体630の両端のうち一方の端部633aに係合部634を設けてもよい。この取着具600の一方側分割体630と他方側分割体640とは、それぞれの端部において、ボルト651とナット652とからなる連結部材650によりあらかじめ連結されている。具体的には、他方側分割体640の片端部643bと、一方側分割体630の他方の端部633bとに1本のボルト651が貫装され、ナット652で封止されている。そして、この連結された状態で、
図8(a)に示すように、長尺材O6に一方側分割体630を仮取着する。なお、仮取着の邪魔にならないように他方側分割体640は、長尺材O6の側方へ片端部643bを支点として回転移動しておく。また、一方側分割体630の仮取着手段の弾性力は、長尺材O6に一方側分割体630を仮取着した際に、一方側分割体630及び他方側分割体640を含む取着具600全体の自重によって落下しない程度であることが望ましい。なお、一方側分割体630の代わりに、
図7(a)で示す磁力又は接着力からなる仮取着手段を備える一方側分割体330を用いることもできるが、その場合は、仮取着手段の磁力又は接着力は、取着具600全体の自重によって落下しない程度であることが望ましい。
【0051】
次に、
図8(b)に示すように、他方側分割体640を長尺材O6の上方に位置するように、ボルト651中心に回転させる。そして、一方側分割体630の両端の端部633aと633bとが近接する方向へ、つまり係合部634を備えた端部633aを内側へ向けて弾性変形させて、先端の係合部634を貫通孔644へ挿通させる。さらに、弾性変形させた端部633aは元の状態へ復帰しようと外側へ、つまり両端の端部633aと633bとが離間する方向へ向けて弾性復元力が働く。すると、係合部634が貫通孔644に係合し、一方側分割体630と他方側分割体640とで長尺材O6を挟持することになる。なお、長尺材O6を挟持した後にナット652を締め付けることで、さらに強固に長尺材O6を挟持することができる。このように、取着具600によれば、一方側分割体630と他方側分割体640の一端側(図面において左端側)のみ予め連結させておき、長尺材O6へ挟持固定する際に、一方側分割体630と他方側分割体640の他端側(図面において右端側)を係合させる。
【0052】
また、上記変形例5の取着具600では、一方側分割体630と他方側分割体640とを連結部材650により連結していたが、これに限定されない。例えば、
図9に示す取着具700のように、一方側分割体730の端部733bと、他方側分割体740の端部743bとを、バネ部材750により連結してもよい。このバネ部材750によれば、長尺材O6に一方側分割体730を仮取着する際に、邪魔にならないように他方側分割体740を側方等へ位置させることができる。さらに、取着具700が長尺材O6に取り付けられた状態で、バネ部材750は引き伸ばされるので、その弾性復元力によって、一方側分割体730と他方側分割体740とで長尺材O6をさらに強固に挟持することができる。なお、長尺材に一方側分割体を仮取着する前に、予め一方側分割体と他方側分割体とを片端で連結しておくための手段は、上記の他に、例えば、当該片端を金リング(金輪)でつないだ構成、或いは一方側分割体の片端部をフック部とし、他方側分割体の片端部に設けた小穴に引っ掛ける構成、その他、当業者が考え得る限り、どのような構成をとってもよい。
【0053】
なお、本願発明の長尺材への取着具は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。