(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912699
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】印刷用刷版
(51)【国際特許分類】
B41N 1/12 20060101AFI20160414BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20160414BHJP
B41F 5/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
B41N1/12
B41C1/00
B41F5/00
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-57329(P2012-57329)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-188961(P2013-188961A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】599146897
【氏名又は名称】株式会社 寳章堂
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100083699
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 利行
(72)【発明者】
【氏名】前田 甚一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】
亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−160905(JP,A)
【文献】
特開昭52−004303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
B41C 1/00
B41F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な樹脂シートの表面に印刷用の突部を突設して成る印刷用刷版であって、前記突部にはべた突部と、網かけ部から成る突部である非べた突部とがあり、前記非べた突部の裏面に印圧を小さくするための凹部を形成したことを特徴とする印刷用刷版。
【請求項2】
前記凹部が複数個形成され、各凹部の深さは非べた度が大きい程深いことを特徴とする請求項1に記載の印刷用刷版。
【請求項3】
前記凹部がスポット孔群から成ることを特徴とする請求項1に記載の印刷用刷版。
【請求項4】
前記スポット孔群が複数個形成され、これらのスポット孔群のスポット孔の孔密度は非べた度が大きい程大きいことを特徴とする請求項3に記載の印刷用刷版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷に用いられる印刷用刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凸版印刷用刷版は、柔軟な樹脂シートの表面に印刷用塗料が付着する突部を突設して形成される。突部としては、べた突部と非べた突部(網かけ部やバーコード部のように、べた面を有しない突部)とがある。そして刷版を印刷装置の版胴ロールに巻回し、これを回転させながら、印刷用塗料が付着せられた突部の表面を用紙等の被印刷物に圧接させて印刷が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
かかる凸版印刷において、版胴ローラを回転させながら印刷を行う際に、べた突部と非べた突部に同じ圧力(印圧)が加えられると、圧力過大や圧力不足が生じ、美しい印刷ができにくいという問題点が生じる。このような問題点を解決するために、べた突部や非べた突部の裏面に、網かけ率に応じた厚さを有する網かけ用肉盛部をインクジェットにより形成することが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212187号公報
【特許文献2】特開2009−160905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術ではインクジェット印刷機によるインクの噴射が必要なことから、インクジェット印刷機やこれから噴出するためのインクを必要とするという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、上記のようなインクジェット印刷機やインクを不要にできるべた突部と非べた突部とを有し、美しい印刷ができる印刷用刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の印刷用刷版は、柔軟な樹脂シートの表面に印刷用の突部を突設して成る印刷用刷版であって、前記突部にはべた突部と
、網かけ部から成る突部である非べた突部とがあり、
前記非べた突部の裏面に印圧を小さくするための凹部を形成した。
【0008】
請求項2に記載の印刷用刷版は、望ましくは、前記凹部が複数個形成され、各凹部の深さは非べた度が大きい程深い。
【0009】
請求項3に記載の印刷用刷版は、望ましくは、前記凹部がスポット孔群から成る。
【0010】
請求項4に記載の印刷用刷版は、望ましくは、前記スポット孔群が複数個形成され、これらのスポット孔群のスポット孔の孔密度は非べた度が大きい程大きい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクジェット印刷機を必要とせずに、べた突部や非べた突部に適正な圧力(印圧)を作用させて美しい印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の第1の実施の形態における印刷用刷版の断面図(b)本発明の第1の実施の形態における印刷用刷版の裏面側の斜視図
【
図2】本発明の第1の実施の形態における印刷用刷版を用いた印刷機の側面図
【
図3】本発明の第2の実施の形態における印刷用刷版の断面図
【
図4】(a)本発明の第3の実施の形態における印刷用刷版の断面図(b)本発明の第3の実施の形態における印刷用刷版の裏面側の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
図1(a)、(b)において、印刷用刷版1Aは柔軟な樹脂シート2を主体とし、その表面にはべた突部3と所望数(本例では複数である2個)の非べた突部4、5が形成されている。この非べた突部4、5は網かけ部から成る突部であるが、非べた突部としてはバーコード部等も考えられる。べた突部3は網かけ率100%であり、非べた突部4は網かけ率約50%であり、非べた突部5は網かけ率約30%であり、印刷されない部分の網かけ率は0%である。すなわち、複数の非べた突部4、5は網かけ率が相違している。勿論、網かけ部の網かけ率の大きさは任意に決定される。
【0014】
図1(a)(b)に示すように、非べた突部4、5のそれぞれの裏面には印圧を小さくするための凹部6が形成されている。複数個(本例では2個)の凹部6の深さは同一である。べた突部3の裏面には凹部は形成されていない。凹部6は、レーザー光、ミーリング(ドリル)、化学エッチング等により形成される。なお、凹部6の深さは過大に誇張して描いており、実用上はその深さはきわめて浅いのが一般的である。
【0015】
図2は、この刷版1Aを用いて印刷を行っている状態を示している。版胴ロール10には刷版1Aが巻回されており、軸部11を中心にモータなどの駆動部(図示せず)により駆動回転される。また
べた突部3、
非べた突部4、5の表面には、版胴ロール10に摺接して回転するアニロックスロール20により印刷用塗料が塗布される。アニロックスロール20の表面には塗料供給体21により塗料が供給され、この塗料が
べた突部3、
非べた突部4、5の表面に供給塗布される。図中、矢印A、Bは両ロール10、20の回転方向を示している。
【0016】
版胴ロール10の下方には給紙ローラ22が複数配列されており、矢印C方向に回転する給紙ローラ22により矢印D方向に搬送される用紙などの被印刷物23の表面に突部3、4、5が圧接されて印刷が行われる。
【0017】
したがってこのようにして用紙等の被印刷物にインク等の印刷用塗料を印刷すると、非べた突部4、5の裏面には凹部6が形成されているので、被非べた突部4、5が被印刷物23に加える圧力(印圧)はべた突部3が加える圧力よりも小さくなり、したがってべた突部3及び非べた突部4、5のいずれもより適正な印圧により美しい印刷を行うことができる。
【0018】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の印刷用刷版1Bの断面図である。非べた突部4、5の裏面には、深さの異なる凹部7A、7Bが形成されている点で第1の実施の形態と相違している。すなわち、図示するように、べた率の小さい網かけ部である非べた突部
5の裏面の凹部7Aの深さを、べた率の大きい網かけ部である非べた突部
4の裏面の凹部7Bの深さよりも深くしている。したがってこれにより、非べた突部
5の印圧は非べた突部
4の印圧よりも小さくなるようにしており、これによりより適正な印圧により美しい印刷を行うことができる。このように、凹部が複数個形成されている場合、各凹部の深さは非べた度が大きい程深くすることが望ましい。
【0019】
(第3の実施の形態)
図4(a)は第3の実施の形態3の刷版1Cの断面図、
図4(b)は同刷版1Cの裏面側の斜視図である。非べた突部4、5の裏面にはスポット孔群8A、8Bが形成されている点で第1および第2の実施の形態と相違している。
【0020】
スポット孔群8A、8Bは、レーザ光などにより形成されたスポット孔8aの集合体であるが、
図4(b)に示すように、複数個(本例では2個)のスポット孔群8A、8Bのスポット孔8aの孔密度は非べた度が大きい程大きくしている。すなわち、べた率の小さい非べた突部5の裏面のスポット孔群8Aの孔密度を、べた率の大きい非べた突部4の裏面のスポット孔群8Bの孔密度よりも大きくしている。
【0021】
以上の各実施の形態から明らかなように、凹部の形成方法は様々考えられるものであり、要は非べた突部の裏面に印圧を小さくするための凹部を形成すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、インクジェット印刷機を必要とせずに、べた突部や非べた突部に適正な圧力(印圧)を作用させて美しい印刷を行うことができるので、殊に樹脂シートを用いる凸版印刷用の刷版として有用である。
【符号の説明】
【0023】
1A、1B、1C 刷版
2 樹脂シート
3 べた突部
4、5 非べた突部
6、7A、7B 凹部
8a スポット孔
8A、8B スポット孔群(凹部)