特許第5912700号(P5912700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912700リール部材、接着フィルムの巻回方法及び巻き出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912700
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】リール部材、接着フィルムの巻回方法及び巻き出し方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/14 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   B65H75/14
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-57672(P2012-57672)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189296(P2013-189296A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】石松 朋之
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−102248(JP,A)
【文献】 特開2011−058007(JP,A)
【文献】 特開平08−157146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
B65H 16/00 − 16/10
B65H 18/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯と、
上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、
上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されるリング部材とを備えるリール部材において、
上記リールフランジは、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部を備え、上記リング部材とともに一体に回転操作され、
上記リング部材は、上記固定部材によって、上記巻芯の外周面上での回転を規制されるとともに、回転操作が可能とされているリール部材。
【請求項2】
上記リング部材は、上記押圧ピンが嵌合する嵌合部が形成されている請求項記載のリール部材。
【請求項3】
上記リング部材は、上記固定部材によって上記リールフランジが押圧されることにより、該リールフランジに挟持され回転操作が可能とされている請求項1記載のリール部材。
【請求項4】
上記巻芯は、上記固定部材が係合され、上記リング部材と一体に回転可能とされる請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
【請求項5】
上記接着フィルムは、ベースフィルムと、上記ベースフィルムに支持されたバインダー樹脂層とを備え、
上記バインダー樹脂層に導電性粒子が含有された導電性接着フィルム、又は上記バインダー樹脂層に導電性粒子が含有されていない絶縁性接着フィルムが巻回されている請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のリール部材。
【請求項6】
巻芯と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されるリング部材とを備えるリール部材に上記接着フィルムを巻回する巻回方法において、
上記リールフランジには、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部が設けられ、
上記リング部材は、上記押圧ピンに押圧されることにより回転が規制され、上記リールフランジと共に一体に回転操作され、
上記固定部材によって、上記リング部材の、上記巻芯の外周面上での回転を規制するとともに、該リング部材を回転操作する接着フィルムの巻回方法。
【請求項7】
上記リング部材は、上記押圧ピンが嵌合する嵌合部が形成され、該嵌合部に上記押圧ピンが嵌合することにより回転が規制されるとともに回転操作される請求項記載の接着フィルムの巻回方法。
【請求項8】
上記巻芯は、上記固定部材が係合され、上記リング部材と一体に回転される請求項〜請求項のいずれか1項に記載の接着フィルムの巻回方法。
【請求項9】
巻芯と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されたリング部材とを備えるリール部材から上記接着フィルムを巻き出す巻き出し方法において、
上記リールフランジには、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部が設けられ、
上記リング部材は、上記押圧ピンに押圧されることにより回転が規制され、上記リールフランジと共に一体に回転操作され、
上記固定部材によって、上記リング部材の、上記巻芯の外周面上での回転を規制するとともに、該リング部材を回転操作する接着フィルムの巻き出し方法。
【請求項10】
上記リング部材は、上記押圧ピンが嵌合する嵌合部が形成され、該嵌合部に上記押圧ピンが嵌合することにより回転が規制されるとともに回転操作される請求項記載の接着フィルムの巻き出し方法。
【請求項11】
上記巻芯は、上記固定部材が係合され、上記リング部材と一体に回転される請求項〜請求項10のいずれか1項に記載の接着フィルムの巻き出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状の接着フィルムが巻回されるリール部材、リール部材に接着フィルムを巻回する巻回方法、及びリール部材から接着フィルムを巻き出す巻き出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に接着フィルムを用いて電子部品を実装する実装法が用いられている。例えば、液晶表示パネル(LCDパネル)の周縁部に導電性の接着フィルムを介して液晶駆動回路であるICチップを実装するCOG(Chip on Glass)実装法や、太陽電池セルにインターコネクタとなるタブ線を接続する接続法が挙げられる。
【0003】
導電性の接着フィルムは、バインダー樹脂に導電性粒子が分散された接着剤層が、支持体となるベースフィルム上に形成されたものである。このような導電性接着フィルム50は、例えば、図6に示すように、リールフランジ52を有するリール部材51の巻芯53に巻回されたリール巻装体の形状で使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、導電性接着フィルム50のリール交換を行うためには一端ラインを停止し、接着フィルムを搬送ローラに引き回す等繁雑な作業を要し、COG実装等の工程において大きなタイムロスとなっている。このため、導電性接着フィルム50のリール交換作業の簡素化や交換回数の低減のための方策が種々試みられている。なかでも、導電性接着フィルム50の長尺化がリール交換の回数低減に効果的である。
【0005】
しかし、リール部材51の巻芯53に導電性接着フィルム50が長尺に巻回されることで、巻芯53付近に巻圧が累積して巻締まりが起こる。また、リール部材51は、常温で製造された後、実使用時まで冷蔵庫で保存されることがあるが、冷却されることにより導電性接着フィルム50が収縮し、同様に巻締まりが起こる。
【0006】
これにより、リール巻装体は、バインダー樹脂が剥離基材の両側からはみ出し、実使用時に接着性や導通信頼性を損なうおそれがある。また、はみ出したバインダー樹脂がリールフランジ52に付着して導電性接着フィルム50を正常に引き出せなくなるいわゆるブロッキングという現象が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−171033号公報
【特許文献2】特開2010−257983号公報
【特許文献3】特開2011−58007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような不具合に対して、剥離基材をバインダー樹脂層よりも幅広に設けることではみ出しを抑制する方法(特許文献2、3を参照)も提案されている。
【0009】
しかし、剥離基材をバインダー樹脂層よりも幅広にする方法では、製造が煩雑であることに加え、はみ出しやブロッキングを抑制することはできても、バインダー樹脂層が巻圧によって流動することは防止できず、実使用時において接着性や導通信頼性を損なうおそれは依然として残る。
【0010】
そこで、本発明は、接着フィルムの長尺化や冷蔵保存による収縮によっても、巻圧集中によるはみ出しやブロッキングを抑制することができるリール部材、フィルムの巻回方法、及びフィルムの巻き出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係るリール部材は、巻芯と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されるリング部材とを備えるリール部材において、上記リールフランジは、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部を備え、上記リング部材とともに一体に回転操作され、上記リング部材は、上記固定部材によって、上記巻芯の外周面上での回転を規制されるとともに、回転操作が可能とされているものである。
【0012】
また、本発明に係る接着フィルムの巻回方法は、巻芯と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されるリング部材とを備えるリール部材に上記接着フィルムを巻回する巻回方法において、上記リールフランジには、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部が設けられ、上記リング部材は、上記押圧ピンに押圧されることにより回転が規制され、上記リールフランジと共に一体に回転操作され、上記固定部材によって、上記リング部材の、上記巻芯の外周面上での回転を規制するとともに、該リング部材を回転操作するものである。
【0013】
また、本発明に係る接着フィルムの巻き出し方法は、巻芯と、上記巻芯の両側に設けられたリールフランジと、上記巻芯の外周面に嵌合され、上記巻芯及び上記リールフランジに対して回転自在とされた、テープ状の接着フィルムが巻回されたリング部材とを備えるリール部材から上記接着フィルムを巻き出す巻き出し方法において、上記リールフランジには、固定部材に設けられ上記リング部材を押圧する押圧ピンが挿通する開口部が設けられ、上記リング部材は、上記押圧ピンに押圧されることにより回転が規制され、上記リールフランジと共に一体に回転操作され、上記固定部材によって、上記リング部材の、上記巻芯の外周面上での回転を規制するとともに、該リング部材を回転操作するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リール部材は、接着フィルムが巻回されている巻芯リングが回転自在とされているため、巻圧がフィルム巻装体の内周側に累積していくと、巻圧を開放する方向に回転し、巻締まりを防止することができる。したがって、本発明によれば、リール部材は、巻締まりが発生することによる接着フィルムの接着剤層のはみ出しや巻き出し時のブロッキングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用されたリール部材を示す側面図である。
図2】巻芯、巻芯リング及びリールフランジを示す斜視図である。
図3】固定部材、及び回転装置に装着されたリール部材を示す側面図である。
図4】押圧部材によって押圧されたリールフランジにより巻芯リングを挟持して回転操作する構成を示す側面図である。
図5】接着フィルムの構成を示す断面図である。
図6】従来のリール部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用されたリール部材、フィルム巻回方法、フィルム巻き出し方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
本発明が適用されたリール部材1は、図1及び図2に示すように、巻芯3と、巻芯3の外周面に回転自在に嵌合され、テープ状の接着フィルム2が巻回される巻芯リング4と、巻芯3の両側に設けられたリールフランジ5とを備える。
【0018】
[巻芯/巻芯リング]
巻芯3は、円筒形状をなし、中心部に巻芯リング4を回転駆動する固定部材10が挿通する挿通口3aが形成されている。また、巻芯3は、後述する接着フィルム2と略同じ幅又は接着フィルム2の幅以上の幅を有し、外周面には巻芯リング4が回転自在に嵌合されている。
【0019】
巻芯リング4は、円筒形状をなし、接着フィルム2と略同じ幅又は接着フィルム2の幅以上の幅を有する。また、巻芯リング4は、巻芯3に嵌合されることにより、巻芯3及びリールフランジ5に対して回転自在とされている。この巻芯リング4は、接着フィルム2が巻回されるとともに、リール部材の保管時等において、巻芯3及びリールフランジ5に対して回転自在とされることにより、接着フィルム2の巻装体に収縮が生じた場合にも、巻締まりが発生することを防止することができる。
【0020】
また、巻芯リング4は、後述する固定部材10によって巻芯3に対する回転が規制され、この固定部材10によって回転可能とされている。具体的に、巻芯リング4は、接着フィルム2が巻回された状態でリール部材1が保管される場合には、巻芯3及びリールフランジ5に対して独立して回転自在とされ、リール部材1に対して接着フィルム2を巻回する際や巻き出す際においては、固定部材10によって回転が規制され、巻回や巻き出しに応じて回転操作される。
【0021】
[リールフランジ]
これら巻芯3及び巻芯リング4の両側にはリールフランジ5が設けられている。リールフランジ5は、巻芯リング4に巻回された接着フィルム2を支持するものであり、例えば透明なプラスチック材料を用いて円盤状に形成されている。また、リールフランジ5は、接着フィルム2と接する面に、静電処理を施すようにしてもよい。静電処理を施す方法としては、例えば、ポリチオフェン等の化合物を塗布する方法が挙げられる。
【0022】
なお、リールフランジは、接着フィルムと対峙する面の中央部から放射状にリブを設けてもよい。リールフランジは、リブを設けることにより、接着フィルムからはみ出したバインダー樹脂がフランジ面に付着する面積を減少させ、ブロッキングの発生を抑えることができる。
【0023】
[巻芯リングの回転規制/回転操作]
リール部材1は、接着フィルム2を巻芯リング4に巻回する際や、巻芯リング4に巻回された接着フィルム2を巻き出す際に、巻芯リング4の回転が規制されるとともに、巻回や巻き出しに応じて回転操作される。具体的に、接着フィルム2の巻回時や巻き出し時には、図3に示すように、リール部材1は、回転装置20に装着されるとともに、固定部材10がリールフランジ5の一側面側から装着される。
【0024】
固定部材10は、巻芯リング4の回転を規制すると共に巻芯リング4を回転操作するものであり、巻芯リング4よりも大径の円板形状をなし、主面10a上に巻芯リング4を押圧する押圧ピン11が設けられている。押圧ピン11は、固定部材10の主面10a上に立設されてもよく、あるいは主面上に開口された挿通孔に挿通されるとともに、スプリング等の弾性体に支持され、弾性力によって巻芯リング4を押さえつけるようにしてもよい。
【0025】
また、固定部材10は、主面10aの中央部に、挿通口3aを通して回転装置20と接続される駆動ピン12が立設されている。固定部材10は、駆動ピン12を介して回転装置20の駆動力が伝達され、回転駆動される。なお、固定部材10は、回転装置20とは別に駆動機構を備え、当該駆動機構を介して回転駆動されるようにしてもよい。
【0026】
また、リール部材1は、リールフランジ5に、押圧ピン11が挿通する開口部5aが開口されている。そして、固定部材10が装着されると、リール部材1は、開口部5aを挿通した押圧ピン11によって巻芯リング4が押圧され、その回転が規制されるとともに、固定部材10が回転されることによりリールフランジ5とともに巻芯リング4が回転操作される。
【0027】
このとき、巻芯リング4は、押圧ピン11が嵌合する嵌合口4aを形成してもよい。押圧ピン11が嵌合することにより、巻芯リング4は、回転が規制されるとともに、固定部材10が回転されることにより回転操作される。
【0028】
また、固定部材10は、回転装置20と接続する駆動ピン12に、巻芯3の挿通口3aと係合する係合部12aを設け、巻芯リング4と巻芯3とを一体に回転操作するようにしてもよい。
【0029】
なお、リール部材1は、巻芯リング4の回転規制及び回転操作を、固定部材10の押圧ピン11によって行う他にも、例えば、固定部材10に押圧ピン11を設けることなく、固定部材10によってリールフランジ5を押圧し、一対のリールフランジ5を互いに近接させることにより、一対のリールフランジ5で巻芯リング4を挟持して回転を規制し、一対のリールフランジ5を回転させることにより巻芯リング4の回転操作を行うようにしてもよい。
【0030】
さらに、図4に示すように、リール部材1は、巻芯リング4の回転規制及び回転操作を、リールフランジ5の両側に設けられた一対の押圧部材30によって、一対のリールフランジ5を互いに近接させるように押圧してもよい。これによっても、一対のリールフランジ5で巻芯リング4を挟持して回転を規制し、一対のリールフランジ5を回転させることにより巻芯リング4の回転操作を行うことができる。
【0031】
[本発明の作用・効果]
リール部材1は、巻芯リング4が固定部材10によって回転操作されることにより、接着フィルム2が巻回されていく。接着フィルム2が巻芯リング4に巻回される長さは、例えば10m〜400mであり、10m〜300mが好ましい。また、接着フィルム2の巻回は、実使用時(巻き出し時)と同様の温度環境下、例えば約15℃〜30℃の温度環境下で行うことが好ましい。
【0032】
接着フィルム2が巻回されたリール部材1は、固定部材10及び回転装置20から外され、実使用時まで保管される。リール部材1は、固定部材10から外されることにより、巻芯リング4が巻芯3及びリールフランジ5に対して回転自在となる。
【0033】
リール部材1は、実使用時までの保管時や輸送時に、冷蔵庫などで冷却される。リール部材1は、保管時には例えば−15℃〜5℃程度で保管され、輸送時には例えば−30℃程度まで冷却される。これにより、リール部材1に巻回された接着フィルム2は、収縮し、フィルム巻装体に巻圧が内周側に向かって累積していく。
【0034】
このとき、リール部材1は、接着フィルム2が巻回されている巻芯リング4が回転自在とされているため、巻圧がフィルム巻装体の内周側に累積していくと、巻圧を開放する方向に回転し、巻締まりを防止することができる。したがって、リール部材1は、巻締まりが発生することによる接着フィルム2の接着剤層7のはみ出しやブロッキングを防止することができる。
【0035】
[接着フィルム]
ここで、リール部材1に巻回される接着フィルム2について説明する。接着フィルム2は、図5に示すように、接着剤層7と、接着剤層7を支持する支持体となるベースフィルム8とを備える。
【0036】
接着剤層7は、バインダー(絶縁性接着剤組成物)7aに導電性粒子9を含有する異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)とすることができるが、これに限定されず、バインダー7aに導電性粒子9を含有しない絶縁性接着フィルム(NCF:Non-Conductive Film)であってもよい。
【0037】
接着フィルム2のバインダー7aは、例えば、膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダーを用いることができる。接着フィルム2は、バインダー7aに導電性粒子9が分散された異方性導電組成物、又は、バインダー7aに導電性粒子9を含有しない絶縁性接着剤組成物を、ベースフィルム8上に塗布することにより、ベースフィルム8上に形成される。
【0038】
ベースフィルム8は、バインダー7aをフィルム状に支持するものであり、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布することにより形成される。
【0039】
バインダー7aに含有される膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0040】
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を有していれば特に限定されず、例えば、市販のエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0041】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
【0044】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
【0045】
導電性粒子9としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子9としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0046】
なお、上述した説明では、ベースフィルム8上にACF又はNCFからなる接着剤層7が形成されてなる接着フィルム2を用いたが、この例に限定されるものではない。例えば、接着フィルム2は、接着剤層7がACFとNCFとが積層されて構成された異方性導電フィルムとしてもよい。
【0047】
また、接着フィルム2は、接着フィルム2のベースフィルム8が積層された面とは反対の面側にもカバーフィルムを設ける構成としてもよい。また、例えば、ベースフィルムあるいはカバーフィルムとして、複数の太陽電池セルの電極同士を電気的に接続するための銅箔を用いる銅箔付き接着フィルムとしてもよい。
【実施例】
【0048】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、本発明が適用されたリール部材1と、巻芯とリールフランジとが固定された従来のリール部材とを用意し、それぞれに接着フィルムを卷回し、TCT(Thermal Cycle Test)を行ったのち、接着剤層のはみ出し量を測定した。
【0049】
各リール部材に卷回する接着フィルムは、厚さ50μmのPET(Poly Ethylene Terephthalate)をベースフィルムとし、導電性粒子が分散された接着剤層を45μm厚で塗布した、異方性導電フィルム(CP6920F3:ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)を使用した。また、接着フィルムは、1.0mm幅で、長さ100mである。
【0050】
実施例1では、リール部材1に、25℃の温度環境下で接着フィルムを卷回した。
【0051】
比較例1では、巻芯とリールフランジとが固定された従来のリール部材に、25℃の温度環境下で接着フィルムを卷回した。
【0052】
実施例1及び比較例1にかかるリール部材を、−30℃/24hr⇔30℃/24hrを10サイクル繰り返し、接着剤層のはみ出し量を測定した。はみ出し量は、顕微鏡でリールフランジの側面を観察し、接着剤層が巻芯リング(実施例1)又は巻芯(比較例1)から何周まではみ出しを起こしているか確認を行った。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、実施例1では、はみ出し量は0周であったのに対して、比較例1では、3周まではみ出しが確認された。
【0055】
実際に接着フィルムを引き出したところ、実施例1では、ブロッキングもなく正常に引き出せたのに対して、比較例1では、ブロッキングが発生し、正常に引き出すことが出来なかった。
【0056】
なお、PETの熱膨張率は2×10−5/℃であり、本実施例におけるTCTによって120mm伸縮する計算となる。すなわち、実施例1にかかるリール部材は、巻芯リングが120mm回転したものと想定される。また、ベースフィルムは、素材や保存温度環境に応じて伸縮の度合いが変わり、接着フィルムの巻装体にかかる巻圧も変化するため、これに応じて巻芯リングの回転距離も同様に変化することとなる。
【符号の説明】
【0057】
1 リール部材、2 接着フィルム、3 巻芯、3a 挿通口、4 巻芯リング、4a 嵌合口、5 リールフランジ、5a 開口部、7 接着剤層、7a バインダー、8 ベースフィルム、9 導電性粒子、10 固定部材、10a 主面、11 押圧ピン、12 駆動ピン、12a 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6