(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912708
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】抽出装置
(51)【国際特許分類】
B30B 9/04 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
B30B9/04
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-62315(P2012-62315)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193104(P2013-193104A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(72)【発明者】
【氏名】田中 和徳
(72)【発明者】
【氏名】大田 陽介
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−291007(JP,A)
【文献】
特表平06−504478(JP,A)
【文献】
実開平04−125093(JP,U)
【文献】
特開2007−069191(JP,A)
【文献】
特開昭61−115698(JP,A)
【文献】
特開平05−015868(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/56592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を加熱することによって、原料から揮発成分を抽出し回収する抽出装置であって、
原料を投入するための投入口、原料から抽出された揮発成分を回収するための回収口、及び成分抽出後の原料を取り出すための取出口を有するシリンダと、
前記回収口近傍のシリンダ内領域を加熱する加熱装置と、
シリンダ内に原料収容領域を画成するとともにシリンダ軸方向に沿って摺動自在に配設される一対の仕切部と、
前記仕切部をシリンダ軸方向に駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御して、原料収容領域が前記投入口と連通する投入位置、前記回収口と連通すると共に前記加熱装置に臨む回収位置、又は前記取出口と連通する取出位置に位置するように前記仕切部を移動させる制御部と、を備えることを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記投入口、前記回収口、及び前記取出口は、シリンダ軸方向に沿って順次配設されていることを特徴とする請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記制御部は、原料収容領域が回収位置にある場合に、原料収容領域が投入位置にある場合よりも、前記仕切部の間隔を狭めて原料収容領域容積を小さくするように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記制御部は、原料収容領域が取出位置にある場合に、原料収容領域が投入位置及び回収位置にある場合よりも、前記仕切部の間隔を狭めて原料収容領域容積を小さくするように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の抽出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記仕切部の間隔を狭めて成分抽出後の原料を押し固めるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項4に記載の抽出装置。
【請求項6】
前記シリンダは、円筒状に形成されており、
前記仕切部は、前記シリンダ内に摺動自在に設けられるピストンと、端部に前記ピストンが連結され、前記シリンダの外部へ突出するピストンロッドと、を備え、
前記駆動部は、前記ピストンロッドをシリンダ軸方向に進退させるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料から揮発成分を抽出して回収する抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、動植物由来の原料(植物の葉や枝、柑橘類の果実や皮等)を加熱し、原料に含まれる揮発成分を抽出して回収する装置が広く知られている。
【0003】
特許文献1には、柑橘類の果実及び皮を加熱し、果実等に含まれる芳香性のある揮発油(精油)を気化させて抽出し、抽出した精油を凝縮させて回収する抽出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−291007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の抽出装置では、精油抽出後の原料は密閉容器の側部に設けられた取出口から取り出される。しかしながら、精油抽出後の原料は取出口の近くだけでなく密閉容器内全体に収容されているため、原料を取出口から取り出しにくく、取出作業性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、成分抽出後の原料を容易に取り出すことが可能な抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原料を加熱することによって、原料から揮発成分を抽出し回収する抽出装置であって、原料を投入するための投入口、原料から抽出された揮発成分を回収するための回収口、及び成分抽出後の原料を取り出すための取出口を有するシリンダと、
前記回収口近傍のシリンダ内領域を加熱する加熱装置と、シリンダ内に原料収容領域を画成するとともにシリンダ軸方向に沿って摺動自在に配設される一対の仕切部と、前記仕切部をシリンダ軸方向に駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して、原料収容領域が前記投入口と連通する投入位置、前記回収口と連通する
と共に前記加熱装置に臨む回収位置、又は前記取出口と連通する取出位置に位置するように前記仕切部を移動させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動部の駆動力に基づいて仕切部を移動させ、原料収容領域の位置を投入位置、回収位置、又は取出位置に変更するので、原料収容領域に収容された原料を取出口がある位置まで移動させることができ、成分抽出後の原料を容易に取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による抽出装置の概略構成図である。
【
図2】(A)は原料収容領域が投入位置にある時の抽出装置を示す模式図であり、(B)は原料収容領域が回収位置にある時の抽出装置を示す模式図であり、(C)は原料収容領域が取出位置にある時の抽出装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、本発明の実施形態による抽出装置100の構成を説明する。
【0011】
抽出装置100は、植物の葉や枝等を細かく粉砕したものを原料とし、当該原料をマイクロ波により加熱し、葉や枝等に含まれる揮発成分(精油)を抽出して回収する装置である。
【0012】
抽出装置100は、シリンダ10と、シリンダ10内に原料収容領域Aを画成する一対の仕切部20と、仕切部20を駆動する駆動ユニット30と、原料をマイクロ波によって加熱するマイクロ波発振ユニット40と、駆動ユニット30やマイクロ波発振ユニット40の動作を制御するコントローラ50と、を備える。
【0013】
シリンダ10は、円筒状に形成された容器であって、軸心が水平となるように配置されている。シリンダ10の側壁には、原料を投入するための投入口11、原料から抽出された精油を回収するための回収口12、及び精油抽出後の原料を取り出すための取出口13が形成されている。
【0014】
投入口11は左端寄りのシリンダ10の上部に設けられ、取出口13は右端寄りのシリンダ10の下部に設けられる。また、回収口12は、軸方向略中央のシリンダ10の上部に設けられる。投入口11、回収口12、取出口13はシリンダ10の軸方向に沿って設けられ、シリンダ10の左端側から投入口11、回収口12、取出口13の順で配置される。
【0015】
投入口11が位置するシリンダ10の側壁には原料をシリンダ10内へと導く供給部14が設けられており、取出口13が位置するシリンダ10の側壁には取出口13から原料をシリンダ10外に導く排出部15が設けられている。なお、排出部15の上端には、精油抽出後の原料が取出時以外のタイミングで落下することを防止するための開閉弁16が設けられる。開閉弁16の開閉動作は、後述するコントローラ50によって制御される。
【0016】
仕切部20は、シリンダ10の側壁内周面に沿って摺動するピストン21と、端部にピストン21が連結され、シリンダ10の外部へ突出するピストンロッド22と、を備える。仕切部20は一対設けられ、二つの仕切部20はピストンロッド22が形成されていない側のピストン面が対向するように配置される。これら仕切部20のピストン21の間の空間部が原料収容領域Aとなる。
【0017】
なお、ピストン21の外周面にはOリングが装着されており、Oリングを介してシリンダ10の側壁内周面とピストン21の外周面との隙間がシールされている。シリンダ10は円筒状に形成されているので、シリンダ10とピストン21との間のシールが容易となる。
【0018】
各ピストンロッド22のシリンダ10の外側に位置する端部には、ピストン21を移動させるための駆動ユニット30が設けられている。
【0019】
駆動ユニット30(駆動部)は、動力源としての駆動モータと、駆動モータの駆動力をピストンロッド22に伝達する動力伝達機構と、から構成されている。仕切部20のピストン21は、駆動ユニット30の駆動モータの駆動力に基づいてシリンダ10内を軸方向に移動する。駆動ユニット30は、各仕切部20にそれぞれ設けられており、各仕切部20を別々に駆動できるように構成されている。
【0020】
ピストン21がシリンダ10内を移動することによって、原料収容領域Aは、投入口11と連通する投入位置(
図2(A)参照)、回収口12と連通する回収位置(
図2(B)参照)、取出口13と連通する取出位置(
図2(C)参照)の3つの位置に移動する。
【0021】
マイクロ波発振ユニット40は、回収位置にある原料収容領域Aに
収容されている原料に対してマイクロ波を発振するよう、回収口12近傍のシリンダ10に設けられている。本実施形態ではシリンダ10の側壁にマイクロ波発振ユニット40を二つ設けているが、マイクロ波発振ユニット40の設置数は、二つに限られず、原料収容領域Aの容積等に応じて任意に設定される。マイクロ波発振ユニット40は、原料に対してマイクロ波を発振し、原料を加熱する。原料の加熱温度はシリンダ10に設けられた温度センサ51によって検出され、温度センサ51の検出信号はコントローラ50に送信される。
【0022】
シリンダ10の回収口12には、加熱された原料から気化した精油を回収する回収通路61が接続されている。回収通路61の途中には気体の精油を凝縮するための冷却器62が設置されており、冷却器62よりも下流の回収通路61には分岐路63を介して真空ポンプ64が設置されている。
【0023】
真空ポンプ64は、回収位置にある原料収容領域A内の圧力を所定圧まで減圧するためのポンプである。真空ポンプ64によって原料収容領域A内を減圧することで、精油の沸点を通常よりも低くすることができ、原料の加熱に要するエネルギを抑制することができる。回収位置にある原料収容領域A内の圧力はシリンダ10に設けられた圧力センサ52によって検出され、圧力センサ52の検出信号はコントローラ50に送信される。
【0024】
回収通路61の下流端は、外部に開口する開口端として形成されている。回収通路61の開口端の下方には、冷却器62によって凝縮された液体状の精油を蓄える貯蔵タンク65が設けられる。
【0025】
コントローラ50(制御部)は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インターフェイス(I/Oインターフェイス)を有するコンピュータである。コントローラ50は、駆動ユニット30やマイクロ波発振ユニット40、真空ポンプ64等に接続されている。
【0026】
コントローラ50は、駆動ユニット30の動作を制御し、ピストン21を移動させて原料収容領域Aの位置を変更する。また、コントローラ50は、温度センサ51及び圧力センサ52の検出信号に基づいてマイクロ波発振ユニット40及び真空ポンプ64の動作を制御し、回収位置にある原料収容領域A内の圧力及び原料の加熱温度を調整する。
【0027】
次に、
図2(A)〜
図2(C)を参照して、抽出装置100の精油抽出に関する一連の動作を説明する。
【0028】
図2(A)は、原料収容領域Aが投入位置にある時の抽出装置100を示す模式図である。
図2(B)は、原料収容領域Aが回収位置にある時の抽出装置100を示す模式図である。
図2(C)は、原料収容領域Aが取出位置にある時の抽出装置100を示す模式図である。
【0029】
図2(A)に示す通り、原料収容領域Aが投入位置に位置している時に、粉砕された枝や葉等からなる原料が、供給部14及び投入口11を介して原料収容領域A内に投入される。投入位置では、二つのピストン21は、ピストン間隔が投入口11の開口径よりも大きくなるような位置で停止している。
【0030】
原料投入後、駆動ユニット30(
図1参照)が制御され、各ピストン21が所定のピストン間隔を保った状態で右方向に移動し、原料収容領域Aが
図2(B)に示す回収位置まで移動する。原料収容領域Aが回収位置に位置している時に、真空ポンプ64及びマイクロ波発振ユニット40が駆動され、原料収容領域A内が所定圧まで減圧されるとともに原料が加熱される。
【0031】
このように原料を加熱することで、原料に含まれる精油を気化させて抽出する。気化した精油は、回収口12を通って回収通路61内に流入し、冷却器62で凝縮されて液体となる。液体となった精油は、回収通路61の開口端から滴下し、貯蔵タンク65に蓄えられる。
【0032】
抽出装置100では、原料収容領域Aが回収位置にある場合、原料収容領域Aが投入位置にある場合よりも、原料収容領域容積が小さくなるように二つのピストン21のピストン間隔が狭められる。なお、原料収容領域容積とは、二つのピストン21とシリンダ10の側壁内周面とによって画成される領域の容積のことである。
【0033】
原料収容領域容積を小さくし、原料収容領域A内に占める原料の割合を高め、当該原料をマイクロ波により加熱することで、精油抽出効率を高められる。また、原料収容領域容積を小さくすることで、真空ポンプ64による原料収容領域Aの減圧時間を短縮することが可能となる。なお、通常は真空ポンプによる排気速度を高めることで減圧時間を短縮するが、本実施形態では原料収容領域容積を小さくすることで減圧時間を短縮している。
【0034】
精油の抽出が終わると、真空ポンプ64及びマイクロ波発振ユニット40が停止される。なお、原料収容領域A内の圧力は、例えば分岐路63に設けた開閉弁によって制御するようにしてもよく、精油抽出終了後に真空ポンプ64を停止する代わりに、当該開閉弁を閉じてもよい。
【0035】
その後、駆動ユニット30が制御され、各ピストン21が所定のピストン間隔を保った状態で右方向に移動し、原料収容領域Aが
図2(C)に示す取出位置まで移動する。
【0036】
原料収容領域Aが取出位置にある時に、開閉弁16が開かれ、精油抽出後の原料が取出口13及び排出部15を介して取り出される。なお、原料取出後には、各ピストン21は左方向に移動し、原料収容領域Aは投入位置まで戻る。
【0037】
抽出装置100では、原料収容領域Aが取出位置にある場合、原料収容領域Aが回収位置にある場合よりも、原料収容領域容積が小さくなるように二つのピストン21のピストン間隔が狭められる。
【0038】
例えば、ピストン間隔を取出口13の開口径よりも小さく狭めることによって、精油抽出後の原料が取出口13及び排出部15を通過しやすくなり、原料の取り出しが容易になる。
【0039】
また、ピストン間隔をさらに狭めて、取出位置における原料収容領域Aの原料を押し固めることによって、精油抽出後の原料の取り出しがより容易になるとともに、押し固められた原料を固形燃料等として使用することも可能となる。
【0040】
上記した本実施形態の抽出装置100によれば、以下の効果を奏することができる。
【0041】
抽出装置100では、駆動ユニット30の駆動力に基づいて仕切部20のピストン21を移動させ、原料収容領域Aの位置を投入位置、回収位置、又は取出位置に変更するので、原料収容領域Aに収容された原料を取出口13がある位置まで移動させることができ、精油抽出後の原料を取出口13から容易に取り出すことが可能となる。
【0042】
また、シリンダ10の左端側から投入口11、回収口12、取出口13が順次配置されているので、原料収容領域Aを無駄に移動させることがない。
【0043】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0044】
本実施形態の抽出装置100では、植物の枝や葉を原料として当該原料に含まれる精油を抽出したが、果物の果肉や皮、肉類、そのほか揮発成分を含有するものを原料として、これら原料に含まれる揮発成分を抽出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による抽出装置は、原料に含まれる揮発成分を抽出し回収する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100 抽出装置
10 シリンダ
11 投入口
12 回収口
13 取出口
20 仕切部
21 ピストン
22 ピストンロッド
30 駆動ユニット(駆動部)
40 マイクロ波発振ユニット
50 コントローラ(制御部)
61 回収通路
62 冷却器
64 真空ポンプ
65 貯蔵タンク