(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施例による照明用光学系100の一例を表す概略断面図である。
図2は、
図1に示す照明用光学系100におけるホログラフィック液晶素子3及び蛍光体プレート4を表す概念図である。なお、本願の全ての図中の各部の寸法、位置、角度等は実際のものとは異なる。
【0012】
照明用光学系100は、例えば、車両用のプロジェクター型前照灯(ヘッドライト)等の照明器具であり、カバー60、光源1、コリメートレンズ2、ホログラフィック液晶素子(回折光学素子)3、蛍光体プレート4、及びプロジェクターレンズ(投影レンズ)5、ミラー7を含んで構成される。また、必要に応じて遮光膜(カットオフパターン)6(
図10参照)を含むようにしても良い。光源1、コリメートレンズ2、ホログラフィック液晶素子3、蛍光体プレート4、プロジェクターレンズ(投影レンズ)5及びミラー7は、それぞれカバー60に保持されている。また、ホログラフィック液晶素子3は制御部36に接続されている。
【0013】
光源1は、半導体レーザダイオード(LD)等の高出力レーザであり、例えば、青色レーザ(偏光レーザ)を用いることができる。光源1から照射される青色レーザ(照明光)10は、コリメートレンズ2を通過して、所定の角度θの方向から、ホログラフィック液晶素子3の表面に入射する。本実施例では、中心波長405nmの青色レーザ(照明光)を照射する。なお、光源1としては、高出力のLEDを用いることもできる。また、中心波長は405nmに限らず、他の青色(488nm等)でも良いが、ホログラフィック液晶素子3のダメージを避けるために、中心波長380nm以上であることが好ましい。なお、コリメートレンズ2は、光源1からのレーザ光(照明光)10のビーム径を拡大するとともに、平行光線に変換する。なお、コリメートレンズ2を介することにより、レーザ光10は、左右に少し広がる配光となり、自然に横に長い楕円の配光を得ることができる。
【0014】
ホログラフィック液晶素子3は、透明な高分子樹脂及び低分子液晶(電界応答可能な材料)とからなる液晶層215(
図3)を有する液晶素子である。液晶層215は、透明な高分子樹脂及び低分子液晶の領域分布あるいは濃度分布により、屈折率分布が平面又は立体的な縞状構造(波面変換機能)を有している。また、ホログラフィック液晶素子3は、任意の選択領域(画素)に電圧印加が可能な透明電極202及び212(
図3)を備えている。
【0015】
波面変換機能は、屈折率分布が平面又は立体的な縞状構造により記録された波面変換情報に基づき光源1からコリメートレンズ2を介して照射される短波長レーザ(照明光)10を所望の配光パターン(ヘッドライトに要求される配光状態)を有する再生光11に変換する機能である。本実施例では、ホログラフィック液晶素子3の表面上の場所(波面変換情報記録領域(画素)3a、3b)ごとに異なる波面変換情報が記録されており、波面変換情報記録領域(画素)3a、3bに対してはそれぞれ独立して、電圧の印加(ON/OFF)が可能である。
【0016】
また、本実施例では、より、再生光11の配光の形状だけでなく、輝度分布も作成可能である。なお、ホログラフィック液晶素子3には、ナノレベルの加工がなされており、印加電圧に応じて青色レーザ光に光強度の分布を持たせるとともに、所定のカットオフ形状にすることが可能である。
【0017】
ホログラフィック液晶素子3の作製方法については、
図3を参照して後述する。また、波面変換情報は、
図4及び
図5に示す光学分割系干渉露光装置300による撮影で記録される。記録方法の詳細については、
図4及び
図5を参照して後述する。なお、ホログラフィック液晶素子3に対する波面変換情報の書き込みに用いるレーザの波長は、光源1から照射されるレーザ光10の波長に近いものほど好ましい。また、ホログラフィック液晶素子3の再生光11は後段に配置される蛍光体プレート4の位置に再生されることが望ましい。
【0018】
ミラー7は、ホログラフィック液晶素子3の後段に配置され、所定角度θでホログラフィック液晶素子3に入射したレーザ光10が、ホログラフィック液晶素子3をそのまま透過した場合に、当該レーザ光10が照射され、その反射光が後段に配置される蛍光体プレート4に照射する位置に配置される。ミラー7は、鏡面ミラーもしくは弱散乱性のミラーからなる。本実施例では、ホログラフィック液晶素子3をそのまま透過したレーザ光10をヘッドライトの光として活用しているため、ミラー7をその反射光が後段に配置される蛍光体プレート4に照射する位置に配置しているが、当該反射光をヘッドライトの光として利用しない場合は、この位置以外に配置しても良いし、ミラー7の代わりに、光吸収体を配置しても良い。
【0019】
制御部36は、ホログラフィック液晶素子3に印加する電圧を制御することにより、ホログラフィック液晶素子3による波面変換機能のオン・オフを切り替えて、配光状態を変更可能である。本実施例では、電圧印加状態(ON状態)では、ホログラフィック液晶素子3に入射したレーザ光10は、そのままホログラフィック液晶素子3を通過して、ホログラフィック液晶素子3と蛍光体プレート4との間に配置されるミラー7にて反射されて、蛍光体プレート4に照射される。また、電圧無印加状態(OFF状態)では、ホログラフィック液晶素子3に入射したレーザ光10は、入射した領域に記録された波面変換情報に基づき所定の配光状態の光学像11に変換され、蛍光体プレート4に照射される。
【0020】
蛍光体プレート4は、ホログラフィック液晶素子3の後段に配置され、かつプロジェクターレンズ5の焦点位置近傍に配置される。蛍光体プレート4は、樹脂やガラス等の透明基板に蛍光体41を塗布したもの、又は樹脂やガラス等の透明基板に蛍光体41を混ぜ込んだものである。本実施例では、ガラス基板に蛍光体41を混ぜ込んだものを蛍光体プレート4として使用した。
【0021】
蛍光体プレート4の透明基板は、ガラスもしくはできるだけ耐熱性、耐光性の高い樹脂を用いる。樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、シリコーン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、エポキシ樹脂等のプラスチック等を用いることができる。
【0022】
蛍光体41としては、紫外から青色までの波長領域の光を吸収して可視光を放射する材料が用いられ、好ましくは、青色もしくは紫外波長に対して黄色もしくは青色と赤色に発光する材料である。黄色に発光する材料としては、例えば、YAG系蛍光体材料がある。その他、例えば、珪酸塩系蛍光体材料、アルミン酸塩系蛍光体材料、窒化物系蛍光体材料、硫化物系蛍光体材料、酸硫化物系蛍光体材料、硼酸塩系蛍光体材料、燐酸塩硼酸塩系蛍光体材料、燐酸塩系蛍光体、及びハロリン酸塩系蛍光体材料等の蛍光体材料を使用可能である。
【0023】
なお、蛍光体プレート4の厚さ(蛍光体を塗布する場合は蛍光体の塗布厚)、及び蛍光体41の密度は、光源2から照射される光の量に応じて最適化することが望ましい。蛍光体プレート4から出射される光は白色であることが望ましいため、光源2の青色が残る厚さと密度が好ましいとともに、例えば、すれ違いビーム配光(ロービーム配光)状態は中央部が明るいため、中央部の蛍光体の密度を高くするもしくは厚みを厚くすることが望ましい。このように、蛍光体プレート4の厚さ(蛍光体を塗布する場合は蛍光体の塗布厚)、及び蛍光体41の密度を再生光11の輝度分布に応じて変えることで、どの方向でも白色の光を得ることができる。
【0024】
なお、
図2では、すれ違いビーム配光(ロービーム配光)状態の明るい中央部に対応する蛍光体プレート4の下半分程度の部分の蛍光体41の密度が高いことを表すために、黒丸で蛍光体41を表し、上半分程度の比較的暗い部分は白丸で蛍光体41を表した。また、右下のカットオフライン以下の部分は蛍光体41が配置されていない。なお、蛍光体の密度は、所望の配光状態に合わせて適宜変更することが可能である。
【0025】
蛍光体プレート4に投影された青い光である再生光11(又はホログラフィック液晶素子3をそのまま通過した照明光10)は、蛍光体41を照射し、その一部は黄色もしくは緑色と赤色に発光する(光源1の青色も残っているため、全体としては白色に発光する)。蛍光体プレート4は、プロジェクターレンズ5の焦点付近に配置されているため、そこでの白色発光像は、プロジェクターレンズ5を通って、前方に反転投影される。
【0026】
プロジェクターレンズ(投影レンズ)5は、凸レンズであり、蛍光体プレート4から出射される再生光11(又はホログラフィック液晶素子3をそのまま通過した照明光10)を集光して前方に反転投影する。
【0027】
以上のようにして、本発明の実施例による構成によれば、制御部36により、ホログラフィック液晶素子3に印加する電圧を制御することによって、レーザ光10を所定の再生光学像11に変換したり、そのまま透過させたりすることが可能となる。よって、ホログラフィック液晶素子3の表面の異なる位置(例えば、それぞれに異なる波面変換情報が記録された場所である波面変換情報記録領域3a、3b)に印加する電圧をそれぞれ独立して制御することにより、電気的に投影像の形状等を変えることが可能となる。
【0028】
図3は、本発明の実施例によるホログラフィック液晶素子(回折光学素子)3を概略的に示す厚さ方向断面図である。以下、ホログラフィック液晶素子3の作製方法について説明する。
【0029】
透明電極(ITO)が形成された一対のガラス基板(透明電極2が形成されたガラス基板201、及び、透明電極212が形成されたガラス基板211)を用意した。ガラス基板201、211は、それぞれ、厚さ0.7mmt程度であり、材質は無アルカリガラスである。透明電極202、212は、それぞれ、厚さ150nm程度であり、材質はインジウムスズ酸化物(ITO)であり、所望の平面形状にパターニングされている。例えば、透明電極202はライン状(ストライプ状)にパターニングされ、透明電極212は基板全面に形成されている。
【0030】
ITO付きガラス基板201と、もう一方のITO付きガラス基板211を洗浄機にて洗浄した。洗浄方法は、アルカリ洗剤を用いたブラシ洗浄、純水洗浄、エアーブロー、紫外線照射、赤外線乾燥の順に行った。なお、洗浄方法はこれに限らず、高圧スプレー洗浄やプラズマ洗浄などを行ってもよい。
【0031】
次に、一方のガラス基板(例えば、ガラス基板201)上に、ギャップコントロール剤を2wt%〜5wt%含んだメインシール剤216を形成した。形成方法として、スクリーン印刷やディスペンサが用いられる。液晶層215の厚さが、例えば10μmとなるように、ギャップコントロール剤を選択した。
【0032】
他方のガラス基板(例えば、ガラス基板211)上には、ギャップコントロール剤214として径が9μm又は10μmの積水化学製のプラスチックボールを、乾式のギャップ散布機を用いて散布した。
【0033】
次に、両ガラス基板201、211の重ね合わせを行い、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、メインシール剤を硬化させた。ここでは、150℃で3時間の熱処理を行った。
【0034】
なお、空セルの作製方法は上述したものに限らず一般的な液晶素子の作製方法を用いることが可能である。
【0035】
このようにして作製された空セルに、液晶を真空注入して、液晶層215を形成した。実施例では、高分子樹脂(光硬化性材料)と液晶とを混合したものを用いる。高分子樹脂としてはレーザ光源21(
図4、
図5)の光で硬化するように、その波長で反応する光重合開始剤を微量に添加した光硬化性樹脂を用いる。また、液晶としては、混合系の液晶材料(屈折率異方性が大きいものが好ましい)を用い、高分子樹脂に液晶を混合又は溶解して注入する。なお、高分子樹脂と液晶との混合比率は50:50、もしくは55:45、60:40等光硬化性材料が少し多い比率であることが好ましい。
【0036】
その後、
図4及び
図5にしめす光学分割系干渉露光装置300を用いて、ホログラフィック液晶素子3に微細周期構造を形成(波面変換情報を記録)する。
【0037】
本実施例では、後述するように、波面変換情報記録領域3a及び3bの2箇所に対してそれぞれ干渉露光を行う。波面変換情報記録領域3a及び3bの位置は、ライン状(ストライプ状)にパターニングされた透明電極202(又は212)の大きさ及び位置とあわせる。このようにすることにより、画素ごとに異なる波面変換情報が記録され、LCDスイッチングにより異種配光状態を得ることが可能となる。
【0038】
図4は、ホログラフィック液晶素子3の波面変換情報記録領域(画素)3aへの微細周期構造の形成(波面変換情報の記録)方法を説明するための図である。
【0039】
図4(A)は、波面変換情報記録領域(画素)3aに記録される波面変換情報に基づき再生される再生光の配光状態を示す概念図である。
【0040】
波面変換情報記録領域3aには、例えば、
図4(A)に示すようなすれ違いビーム(ロービーム)配光状態(配光パターン71a)が記録される。図に示す配光パターン71aは
図1の蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。なお、波面変換情報記録領域3aに記録する配光パターンはこれに限らず、用途に応じて適宜変更可能である。
【0041】
図4(B)は、光学分割系干渉露光装置300の一例を示す概略図である。図中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。
【0042】
レーザ光源21は、
図1に示す光源1と同じ発光波長(例えば、405nm)を有するレーザ発振器である。なお、レーザ光源21は、
図1に示す光源1と同じ発光波長の±10nm以内が好ましい。レーザ光源21から発振されたレーザ光線12は、ハーフミラー22に45度の角度で入射し、2つの光線13、及び光線14に分割される。
【0043】
光線13は、必要に応じて反射鏡23によって反射された後に、コリメータ(ビームエキスパンダ)40に入射する。コリメータ40は、収束レンズ24と、ピンホール25と、コリメータレンズ26とによって構成される。
【0044】
コリメータ40に入射した光線13は、まず収束レンズ24によって収束され、ピンホール25内に位置する焦点を通過した後に発散して、コリメータレンズ26に入射する。コリメータレンズ26に入射した光線13は、平行光線に変換されてホログラム作製用の参照光13となる。この時、プリズムなどを用いてホログラムへの入射角度を調整しても良い。
【0045】
参照光13は、ホログラフィック液晶素子3の波面変換情報記録領域3aの表面に角度θで入射する。ここでの入射角θは、
図1の照明用光学系100における光源1の入射角度θと同一とすることが好ましい。
【0046】
一方、ハーフミラー22で分割された光線14は、反射鏡27及び反射鏡28により反射されて、物体光光学系50に入射する。物体光光学系50は、収束レンズ29と、ピンホール30と、凸レンズ31とによって構成される。
【0047】
物体光光学系50に入射した光線14は、まず収束レンズ29によって収束され、ピンホール30内に位置する焦点を通過した後に発散して、凸レンズ31に入射する。凸レンズ31に入射した光線14は、さらに発散して、リフレクターミラー32に入射する。
【0048】
リフレクターミラー(ロービーム配光形成反射鏡)32からの反射光はホログラム作製用の物体光15となり、ホログラフィック液晶素子3の波面変換情報記録領域3aの表面に法線方向から入射する。リフレクターミラー(ロービーム配光形成反射鏡)32は、所望の配光状態の反射光を得るための反射鏡であり、
図4に示す例では、すれ違いビーム(ロービーム)に必要な配光状態を得るための反射鏡である。
【0049】
参照光13と物体光15とはフォトマスク37を通じてホログラフィック液晶素子3の所定の位置(波面変換情報記録領域3a)に照射される。第1回目の干渉露光では、フォトマスク37の開口部を波面変換情報記録領域3aに合わせる。
【0050】
波面変換情報記録領域3aに入射した参照光13と物体光15とは、互いに干渉する。参照光13及び物体光15それぞれの位相情報及び振幅情報が、これらの光の干渉縞により液晶セル215中の光硬化性材料と液晶の分布の三次元的な縞状構造として記録される。すなわち、レーザ光源21の光によって誘起された定在波の腹の部分で硬化が起こり、節の部分に液晶が集中することにより縞状構造が形成される。液晶は樹脂硬化の成長の方向性により配向方向が限定されるため、作製された素子は複屈折を示す。なお、ホログラフィック液晶素子3に入射する参照光13と物体光15の光強度比は、2:1から10:1程度が望ましく、照射強度は5mW/cm
2、照射時間は5分間(光強度の和は1.5mJ/cm
2)にて行う。
【0051】
図5は、ホログラフィック液晶素子3の波面変換情報記録領域(画素)3bへの微細周期構造の形成(波面変換情報の記録)方法を説明するための図である。
【0052】
図5(A)は、波面変換情報記録領域(画素)3bに記録される波面変換情報に基づき再生される再生光の配光状態を示す概念図である。
【0053】
波面変換情報記録領域3bには、例えば、
図5(A)に示すような周囲を幅広く照射する市街地配光状態(配光パターン71b)が記録される。図に示す配光パターン71bは
図1の蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。なお、波面変換情報記録領域3bに記録する配光パターンはこれに限らず、用途に応じて適宜変更可能である。
【0054】
図5(B)は、光学分割系干渉露光装置300の一例を示す概略図である。図中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。
【0055】
図4(B)に示す干渉露光に続いて、
図5(B)に示すように、フォトマスク37の位置をずらして、再度干渉露光を行う。第2回目の干渉露光では、フォトマスク37の開口部を波面変換情報記録領域3bに合わせる。また、物体光15側では、第1回目の干渉露光のときとほぼ同じ位置に配置されるリフレクターミラー32を、例えば、市街地配光形成反射鏡に入れ替え、第2回目の干渉露光を行う。
【0056】
以上のようにして、ホログラフィック液晶素子3が完成する。このようにして得られたホログラフィック液晶素子3に、電圧無印加状態で角度θからレーザ光を照射すると、その再生光から光源とは反対側の法線方向にリフレクターミラー32で作られた様々な光学像が得られる。例えば、本実施例では、画素(波面変換情報記録領域)3aに対して電圧無印加状態で角度θからレーザ光を照射した場合は、
図4(A)に示すような、ロービーム配光状態71aの光学像を得ることができ、画素(波面変換情報記録領域)3bに対して電圧無印加状態の場合は、
図5(A)に示すような、市街地配光状態71bの光学像を得ることができる。
【0057】
なお、上述の実施例では、フォトマスク37の開口部の位置を上下に変更して、それぞれの位置に角度θから参照光13を入射させ、それぞれの位置について異なる配光パターンを有するリフレクターミラー32を用いて干渉露光を行ったが、フォトマスク37の開口部の位置及びリフレクターミラー32の配光パターンを3種類以上用いて、当該種類の数と同じ回数の干渉露光を行うようにしても良い。この場合、上記の2種類の配光状態に加えて、例えば、走行ビーム(ハイビーム)配光状態や、高速走行用の配光状態を得ることができる。
【0058】
次に、
図6〜
図9を参照して、本発明の実施例による照明用光学系100による配光状態の切り替え動作を説明する。本実施例では、ホログラフィック液晶素子3の2つの画素(波面変換情報記録領域)3a及び3bに対する電圧の印加状態をそれぞれ独立して制御することにより、
図6〜
図9に示す4種類の配光状態を電気的に切り替えることが可能となる。
【0059】
図6(A)は、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをOFF(電圧無印加)状態、画素3bをON(電圧印加)状態にした場合の配光状態を説明するための照明用光学系100の概略断面図であり、
図6(B)は、当該状態において得られる配光状態を表す概念図である。
図6(A)中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。また、
図6(B)に示す配光状態は蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。
【0060】
照明用光学系100点灯すると、光源1からコリメートレンズ2を介して、レーザ光10(10a及び10b)がホログラフィック液晶素子3に照射される。
【0061】
図6(A)に示すように、制御部36により、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをOFF(電圧無印加)状態、画素3bをON(電圧印加)状態にすると、画素3aに入射するレーザ光(参照光)10aは、当該画素3aに記録された波面変換情報に基づき変換され、物体光11aとして
図6(B)に示すようなすれ違いビーム(ロービーム)状態の配光パターン71aが再生されて蛍光体スクリーン4に投影される。図に示すように、角度θでホログラフィック液晶素子3に入射した参照光10aは画素3aにより曲げられて直接蛍光体スクリーン4に投影される。
【0062】
一方、画素3bに入射するレーザ光10bは、
図6(A)に示すように、当該画素3bをそのまま透過して、ミラー7で反射して、少し広がりながら蛍光体スクリーン4に投影される。このときの配光パターン71cは、
図6(B)に示すように、高速走行用配光を想定しており、蛍光体スクリーン4の中心より上の部分(対向車が眩しくない領域)に明るく投影される。
【0063】
ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをOFF(電圧無印加)状態、画素3bをON(電圧印加)状態にした場合の、蛍光体スクリーン4上での投影像の合成像は、
図6(B)に示すようになる。すなわち、すれ違い走行用のカットオフ形状を含み、蛍光体スクリーン4の中心より上の部分(対向車が眩しくない領域)に明るく投影され、対向車がいる場合の高速走行などに適した配光状態が得られる。
【0064】
図7(A)は、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをON(電圧印加)状態、画素3bをOFF(電圧無印加)状態にした場合の配光状態を説明するための照明用光学系100の概略断面図であり、
図7(B)は、当該状態において得られる配光状態を表す概念図である。
図7(A)中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。また、
図7(B)に示す配光状態は蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。
【0065】
図7(A)に示すように、制御部36により、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをON(電圧印加)状態、画素3bをOFF(電圧無印加)状態にすると、画素3bに入射するレーザ光(参照光)10bは、当該画素3bに記録された波面変換情報に基づき変換され、物体光11bとして
図7(B)に示すような市街地走行用の配光パターン71bが再生されて蛍光体スクリーン4に投影される。図に示すように、角度θでホログラフィック液晶素子3に入射した参照光10bは画素3bにより曲げられて直接蛍光体スクリーン4に投影される。
【0066】
一方、画素3aに入射するレーザ光10aは、
図7(A)に示すように、当該画素3aをそのまま透過して、ミラー7で反射して、少し広がりながら蛍光体スクリーン4に投影される。このときの配光パターン71dは、
図7(B)に示すように、走行ビーム(ハイビーム)配光を想定しており、蛍光体スクリーン4の中心付近(中心より下の部分を含む)に投影される。
【0067】
ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3aをON(電圧印加)状態、画素3bをOFF(電圧無印加)状態にした場合の、蛍光体スクリーン4上での投影像の合成像は、
図7(B)に示すようになる。すなわち、幅広い配光と蛍光体スクリーン4の中心付近(中心より下の部分を含む)に非常に明るい配光が合成され、対向車がいない場合の市街地走行などに適した配光状態が得られる。
【0068】
図8(A)は、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3a及び3bをともにOFF(電圧無印加)状態にした場合の配光状態を説明するための照明用光学系100の概略断面図であり、
図8(B)は、当該状態において得られる配光状態を表す概念図である。
図8(A)中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。また、
図8(B)に示す配光状態は蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。
【0069】
この場合、画素3aに入射するレーザ光(参照光)10aは、
図6(A)を参照して説明したものと同様に、当該画素3aに記録された波面変換情報に基づき変換され、物体光11aとして
図8(B)に示すようなすれ違いビーム(ロービーム)状態の配光パターン71aが再生されて蛍光体スクリーン4に投影される。また、画素3bに入射するレーザ光(参照光)10bは、
図7(A)を参照して説明したものと同様に、当該画素3bに記録された波面変換情報に基づき変換され、物体光11bとして
図8(B)に示すような市街地走行用の配光パターン71bが再生されて蛍光体スクリーン4に投影される。
【0070】
ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3a及び3bをともにOFF(電圧無印加)状態にした場合の、蛍光体スクリーン4上での投影像の合成像は、
図8(B)に示すようになる。すなわち、すれ違い走行用のカットオフ形状を含む幅広い配光が得られ、対向車がいる場合の市街地走行などに適した配光状態が得られる。
【0071】
図9(A)は、ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3a及び3bをともにON(電圧印加)状態にした場合の配光状態を説明するための照明用光学系100の概略断面図であり、
図9(B)は、当該状態において得られる配光状態を表す概念図である。
図9(A)中、それぞれの矢印は光線の進行方向を示す。また、
図9(B)に示す配光状態は蛍光体プレート4上に投影されるパターンであり、照明用光学系100として用いる場合は、プロジェクターレンズ5により上下反転された光像が前方に投影される。
【0072】
この場合、画素3a及び3bに入射するレーザ光10a及び10bは、
図6(A)を参照して説明したものと同様に、それぞれ画素3a及び3bをそのまま透過して、ミラー7で反射し、少し広がりながら蛍光体スクリーン4に投影される。
【0073】
ホログラフィック液晶素子3の画素(波面変換情報記録領域)3a及び3bをともにON(電圧印加)状態にした場合の、蛍光体スクリーン4上での投影像の合成像は、
図9(B)に示すようになる。すなわち、蛍光体スクリーン4の中心付近(中心より下の部分を含む)に非常に明るい配光が得られ、対向車がいない場合の高速走行などに適した配光状態が得られる。
【0074】
このように、走行態様にあわせて配光状態を電気的に切り替えることが可能となるので、様々な状況において、安全に車両の走行をすることが可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施例によれば、光源1からのレーザ光10をホログラフィック液晶素子3により所望の配光パターンに変換することが可能となる。また、ホログラフィック液晶素子3の各画素のON/OFFを適切に制御することにより、レーザ光10を物体光として再生したりそのまま透過させたりすることができるので、所望の投影像を得ることが可能となる。
【0076】
上述の実施例では、電圧印加状態で透過、電圧無印加状態でホログラム像を投影するものとしたが、液晶性の光硬化性モノマー等を用いることにより、電圧印加状態でホログラム像を投影し、電圧無印加状態で透過するように構成してもよい。なお、フェイルセーフ上はホログラフィック液晶素子3に電圧を印加しないときに投影される配光状態はロービーム用の配光パターンであることが望ましい。
【0077】
また、蛍光体プレート4の厚さ(蛍光体を塗布する場合は蛍光体の塗布厚)、及び蛍光体41の密度を、光源1から照射される光の量に応じて変化させるようにしても良い。さらに、プロジェクターレンズ(投影レンズ)5の焦点距離にあわせて、蛍光体プレート4の中央部分を、湾曲させても良い。また、蛍光体プレート4の中央部分を、ホログラフィック液晶素子3から出射される再生光11の輝度分布にあわせて厚くしても良い。また、蛍光体プレート4の中央部分を、プロジェクターレンズ(投影レンズ)5の焦点距離にあわせて半球状に膨らませても良い。上述したような形状の蛍光体プレート4は、ガラスもしくは樹脂材料に熱を加えて液状にし、蛍光体材料を混合攪拌しながら型に流し込んで作製したり、蛍光体材料自体を攪拌し熱を加えるなどして液状にし、型に流し込んで作製したりすることができる。
【0078】
なお、ホログラフィック液晶素子3のみではカットオフ形状を作りきれない場合は、
図10に示すように、カットしたい部分(形状)に遮光膜(カットオフパターン)6を形成しても良い。遮光膜6は、蛍光体プレート4とホログラフィック液晶素子3との間に配置すれば、ミラー7を経由してホログラム像の再生光11aとは別の光路を通るハイビーム用の配光10aは遮光されることなく蛍光体プレート4に投影される。
【0079】
また、上述の実施例では、ホログラフィック液晶素子3を分割して、独立して電圧を印加できる領域(画素)を2つとしたが、3画素以上を設けてそれぞれに異なる配光状態(波面変換情報)を記録しても良い。また、逆に、画素を1つだけにして、例えば、ロービーム用の配光状態を記録し、ON/OFFの切り替えにより、ロービームとハイビームの切り替えのみを行うようにしても良い。この場合においても、機械的な部材を要せずに、電気的に配光状態の切り替えを行うことができる。
【0080】
また、ホログラフィック液晶素子3の画素3a及び3bに照射するレーザ光10a及び10bの強度比を変えるようにしても良い。例えば、実施例にように画素3aにカットオフパターン(OFF状態)やハイビーム(ON状態)を形成する機能を持たせている場合、画素3aに照射するレーザ光10aの強度を強くすることが好ましい。
【0081】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0082】
本発明の各実施例による照明用光学系は、車両用ヘッドライト及びテールライト、フォグランプ、懐中電灯、一般照明、スポットライト、舞台照明、特殊照明、車両用インテリア・エクステリア照明等の各種照明機器等への応用が行える。