(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貯蔵室と、前記貯蔵室に各々つながる送り開口部と戻り開口部とが形成された冷却室と、前記冷却室の内部に配設され前記戻り開口部から流入する空気を冷却する冷却器と、前記送り開口部に設けられる回転式のファンを有する送風機と、を備えた冷蔵庫において、前記送り開口部の前記冷却室外側に風向制御装置を設け、前記風向制御装置は、開閉自在な吐出開口部と、前記送り開口部に対向する板状の基体部と、前記基体部の周縁部に一辺が軸支されて前記送り開口部側に向かって立設され一部分が少なくとも前記ファンの回転軸方向に変位して前記吐出開口部を開閉する開閉蓋となる側壁と、を有し、前記送り開口部を塞ぐと共に、前記吐出開口部を開口して前記冷却された空気を流すことを特徴とする冷蔵庫。
前記貯蔵室は、複数の収納室に区分されており、前記風向制御装置は、各前記収納室に対応して開閉自在な複数の前記吐出開口部を有し、各前記収納室と各前記吐出開口部とは、風路によって各々つながっていることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、冷却風路や風路の吹出口にダンパや風向調整装置等(以下、単に「ダンパ」という)を設けた従来技術の冷蔵庫では、各貯蔵室の温度を適切に制御するために多数のダンパを必要とするという問題点があった。即ち、
図10に示す従来技術の冷蔵庫100では、各貯蔵室111、112、113、114に夫々対応するダンパ105、106、107、108を備えている。また、
図11に示す従来技術の冷蔵庫200では、各吐出口204に各々風向調整装置205を備えている。そのため、従来技術の冷蔵庫では、各ダンパを取り付けるためのスペースが必要になり、風路をコンパクトに構成することが難しかった。
【0008】
また、冷却風路や風路の吹出口にダンパを設ける方法では、ダンパ取り付け部分の風路が狭くなり、併せてダンパ自体の流動抵抗も大きいため、冷却空気の圧力損失が増大するという問題点がある。
【0009】
また更に、冷却風路や風路の吹出口にダンパを設ける方法では、霜取り中の暖気が冷却風路内部に流入してしまうので、冷却風路が除霜暖気よって暖められてしまうという問題点もある。即ち、
図10に示す冷蔵庫100では、冷気供給風路101、102、103、104のダンパ105、106、107、108上流側に除霜暖気が流入してしまう。
【0010】
また更に、多数のダンパを採用する場合には、ダンパ全体としてのシール箇所が多くなるので、密封性能が低下し、貯蔵室への除霜暖気の漏れが多くなってしまう。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯蔵室の各収納室へと供給する冷気の流量を調節し、各収納室の温度を適切に制御することが可能であると共に、冷気の流量を調節する風量調整装置の個数を削減し、冷却風路を小型化することが可能な冷蔵庫を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、除霜時の暖気が貯蔵室へと流れ込むことを確実に防止すると共に、冷却風路の圧力損失を小さくし、冷却効率を向上させることができる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室に各々つながる送り開口部と戻り開口部とが形成された冷却室と、前記冷却室の内部に配設され前記戻り開口部から流入する空気を冷却する冷却器と、前記送り開口部に設けられる回転式のファンを有する送風機と、を備えた冷蔵庫において、前記送り開口部の前記冷却室外側に風向制御装置を設け、前記風向制御装置は、開閉自在な吐出開口部と、
前記送り開口部に対向する板状の基体部と、前記基体部の周縁部に一辺が軸支されて前記送り開口部側に向かって立設され一部分が少なくとも前記ファンの回転軸方向に変位して前記吐出開口部を開閉する開閉蓋
となる側壁と、を有し、前記送り開口部を塞ぐと共に、前記吐出開口部を開口して前記冷却された空気を流すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷蔵庫によれば、冷却室の送り開口部の外側に風向制御装置を設け、前記風向制御装置によって前記送り開口部を塞ぐと共に、その一部を開口して空気を流すので、冷却風路や風路の吹出口にダンパを設けることなく、貯蔵室へと供給する空気の流量を調節することができる。その結果、貯蔵室内を適切な温度に制御することができる。
【0015】
また、本発明に係る風向制御装置は、複数に区分された各収納室に対応して開閉自在な複数の吐出開口部を有するので、各収納室の負荷状況に応じて各吐出開口部を開閉することにより、各収納室へと送る冷気の流量を調節することができる。
【0016】
また、複数に区分された各収納室と対応する各吐出開口部とは、風路によって各々つながっているので、各収納室へと送る冷気の流量を各々独立して調節することができる。その結果、各収納室を各々好適な温度に維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る冷蔵庫によれば、各冷却風路や風路の吹出口にダンパを設けることなく、各収納室の温度を適切に制御できるので、ダンパの個数を削減でき、冷却風路を小型化することができると共に、ダンパによる圧力損失を低減することができる。
【0018】
また更に、本発明に係る風向制御装置は、吐出開口部が冷却室の送り開口部に対してファンの回転半径方向外側に形成されているので、ファンの回転半径方向へと流れる送風機吐出側の空気を、小さい流動抵抗で、前記吐出開口部を通じて冷却風路内へと流すことができる。そのため、冷蔵庫内を循環する冷却空気の圧力損失を小さくして、冷却効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係る冷蔵庫によれば、霜取り中に風向制御装置の吐出開口部を全て閉じて冷却室の出口部を塞ぐので、除霜によって暖められた空気が冷却風路に流れ込むことを防止することができる。そのため、冷却風路が除霜暖気によって暖められてしまうことを防止できる。
【0020】
また、本発明に係る冷蔵庫は、冷却室の出口部のみで除霜暖気の流れを止めるので、多数のダンパを使用する従来技術の方法に比べると、シール箇所が少なく、漏れの少ない確実な封止が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫を図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫1の概略構造を示す正面図である。
図2は、冷蔵庫1の側面断面図である。
図3は、冷蔵庫1の冷却風路構成を模式的に表した図である。
図4は、冷蔵庫1の冷却室13部分の構造を示す側面断面図である。
図5は、冷蔵庫1の風向制御装置60の取り付け部周辺構造を示す斜視図である。
図6は、送風機50及び風向制御装置60の構造を示す斜視図である。
図7は、軸流送風機50周りの空気流れを解析した結果を示す説明図である。
図8は、風向制御装置60の制御ブロック図である。
図9は、冷蔵庫1の風量制御フローチャートである。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫1は、本体としての断熱箱体2を備え、該断熱箱体2の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室を形成している。貯蔵室の内部は、保存温度や用途に応じて複数の収納室に区分されている。各収納室の配置は、最上段が冷蔵室3、その下段は左右に区分けされており、左側が製氷室4で右側が上段冷凍室5、その下段が冷凍室6、最下段が野菜室7となっている。
【0025】
断熱箱体2の前面は開口しており、前記各収納室3、4、5、6、7に対応した前記開口部には、各々断熱扉8a、8b、9、10、11、12が開閉自在に設けられている。冷蔵室扉8a、8bは、冷蔵室3の前面を分割して塞ぐもので、冷蔵室扉8aの左上下部及び冷蔵室扉8bの右上下部が断熱箱体2に回動自在に支持されている。また、製氷室扉9、上段冷凍室扉10、冷凍室扉11及び野菜室扉12は、各々後述する収納容器と一体的に組み合わされ、冷蔵庫1の前方に引出自在に、断熱箱体2に支持されている。
【0026】
図2に示すように、冷蔵庫1の本体である断熱箱体2は、前面に開口部を有する鋼板製の外箱2aと、該外箱2a内に間隙を持たせて配設され、前面に開口部を有する合成樹脂製の内箱2cと、前記外箱2aと内箱2cとの間隙に充填発泡された発泡ポリウレタン製の断熱材2bと、から構成されている。また、断熱箱体2の背面壁部分には、真空断熱材2dを備えている。
【0027】
前述の通り、貯蔵室は複数の収納室に区分けされており、冷蔵室3と、その下段に位置する製氷室4及び上段冷凍室5との間は、断熱仕切壁34によって仕切られている。また、製氷室4と上段冷凍室5との間は、仕切壁(図面に表れない)によって仕切られている。また更に、製氷室4及び上段冷凍室5と、その下段に設けられた冷凍室6との間は、仕切壁35によって区分けされている。そして、冷凍室6と野菜室7との間は、断熱仕切壁36によって区分けされている。
【0028】
また更に、冷蔵室3の内部には、食品等を収納するための棚42や収納容器43が配設されている。また、冷蔵室扉8a、8bの庫内側には、飲料容器等を収納する収納ポケット44、45が設けられている。そして、その他の各収納室4、5、6、7には、各断熱扉9、10、11、12と一体となって引き出し可能な、収納容器46、47a、47b、48が設けられている。尚、製氷室4に配設される収納容器は、図面に表れない。また、貯蔵室内の各収納室3、4、5、6、7は、図面に表れないその他の収納棚や収納容器等も備えており、例えば、冷蔵室3には、製氷用の水を貯える容器等も配置されている。
【0029】
また、冷蔵庫1の下部奥側には、機械室49が設けられている。機械室49には、冷媒を圧縮する圧縮機31や放熱器(図示せず)、放熱ファン(図示せず)等の部品を配置している。圧縮機31と、放熱器と、減圧手段としての図示しないキャピラリーチューブと、冷却器32とは、冷媒配管によって順次接続され、蒸気圧縮式の冷凍回路を構成している。尚、本実施形態に係る冷蔵庫1では、冷媒としてイソブタン(R600a)を用いている。また、減圧手段としては、キャピラリーチューブに代えて、他の形式の減圧手段、例えば、温度式膨張弁、電子式膨張弁、定圧式膨張弁等を採用することも可能である。
【0030】
冷蔵室3の奥面及び天面には、冷却器32で冷却された空気を冷蔵室3の内部へと導く冷気供給風路としての冷却風路14が形成されている。冷却風路14は、合成樹脂製の風路仕切壁38と断熱箱体2の内箱2cとによって挟まれた空間である。また、風路仕切壁38には、冷却風路14内を流通してきた冷気を冷蔵室3の内部へと供給するための吹出口21が形成されている。
【0031】
同じように、製氷室4及び上段冷凍室5の奥面及び天面には冷気供給風路としての冷却風路15、16が、また、冷凍室6の奥面には冷却風路17が各々形成されている。冷却風路15、16、17は、合成樹脂製の風路仕切壁39によって各収納室4、5、6と仕切られている。そして、風路仕切壁39には、製氷室4へと冷気を供給する吹出口22と、上段冷凍室5へと冷気を供給する吹出口23と、冷凍室6へと冷気を供給する吹出口24とが形成されている。尚、各吹出口22、23、24は、収納容器46、47a、47bに収納した食品等に対して効率的に冷気を供給することができるような位置に配置されている。
【0032】
また、冷凍室6には、循環冷気を冷却室13へと戻すための戻り口29が、野菜室7には、同様の目的で戻り口30が設けられている。
【0033】
また、後述する冷却室13の送り開口部13aの吐出側には、風向制御装置60が設けられている。そして、各冷却風路14、15、16、17と、冷却室13とは、風向制御装置60を介して連通するよう構成されている。
【0034】
図3に示すように、冷蔵室3へと冷気を供給する冷却風路14は、冷蔵室3の中央部において冷気を最上部へと送り、その後に両脇から下降させるように構成されている。これにより、冷蔵室3の内部全体に効率的に冷気を供給することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る冷蔵庫1は、循環冷気を冷蔵室3の内部から野菜室7へと流すための連結風路18を備えている。連結風路18の冷蔵室3側には、冷蔵室3からの冷気が流れ込む戻り口26が形成されており、野菜室7側には、野菜室7へと冷気を供給する吹出口25が設けられている。
【0036】
また、冷却風路15と冷却風路16とは、図面に表れない仕切り壁によって仕切られており、冷却風路15は製氷室4の背面に、冷却風路16は上段冷凍室5の背面に各々配置されている。そして、冷却風路15は、吹出口22を介して製氷室4に連通し、冷却風路16は、吹出口23を介して上段冷凍室5に連通している。
【0037】
また、製氷室4には、循環冷気を冷却室13(
図2参照)へと戻すための戻り口27が設けられている。戻り口27は、帰還風路19につながっており、帰還風路19は、冷却室13の戻り開口部13b(
図2参照)につながっている。
【0038】
同様に、上段冷凍室5には、帰還風路20につながる戻り口28が設けられている。そして、帰還風路20は、冷却室13の戻り開口部13bにつながっている。即ち、帰還風路19、20を流れる製氷室4及び上段冷凍室5からの戻り冷気は、前述の冷凍室6の戻り口29及び野菜室7の戻り口30からの戻り冷気と合流し、冷却室13へと流れることになる。
【0039】
また、各収納室3、4、5、6、7には、庫内の温度を検出するための温度検出器73、74、75、76、77を備えている。本実施形態では、温度検出器73、74、75、76、77として、サーミスタを採用しているが、例えば、これらに代えて、或いは追加して、赤外線式温度センサなど、他の種類のセンサを利用して良い。
【0040】
図4に示すように、冷却風路15、16と、冷却風路14とは、風路仕切壁40によって仕切られている。また、冷却風路15、16と、冷却風路17とは、風路仕切壁41によって仕切られている。これにより、各冷却風路14、15、16、17は、各々独立した空気流路を形成している。
【0041】
冷却室13は、断熱箱体2の内部で、冷却風路15、16、17の奥側に設けられている。そして、冷却室13と、冷却風路15、16、17又は冷凍室6とは、合成樹脂製の冷却室仕切壁37によって仕切られている。
【0042】
冷却室13の内部には、循環冷気を冷却するための冷却器32が配設されている。本実施形態に係る冷却器32は、伝熱管としての円管の内部を冷媒流路とし、管外を空気流路とする、所謂フィンアンドチューブ式の熱交換器である。冷却器32では、前記伝熱管の内部で液冷媒が蒸発することにより、管外の循環空気を冷却している。尚、冷却器として、他の形式の熱交換器、例えば扁平多孔管や異形管を用いた熱交換器等、を採用することも勿論可能である。
【0043】
また、冷却器32の下方には、冷却器32に付着した霜を融かして除去する除霜手段として、除霜ヒータ33が設けられている。除霜ヒータ33は、電気抵抗加熱式のヒータである。尚、除霜手段として、例えば、電気ヒータを利用しないオフサイクルデフロストや、ホットガスデフロスト等のその他の除霜方式を採用することも可能である。
【0044】
また、冷却室13の上方前面、即ち冷却風路15、16側の面には、冷却器32で冷却された冷気を送り出すための送り開口部13aが形成されている。他方、冷却室13の下方には、貯蔵室からの帰還冷気を冷却室13の内部へと吸入するための戻り開口部13bが形成されている。
【0045】
そして、前記送り開口部13aには、冷気を循環させるための送風機50が取り付けられている。また、冷却室13の送り開口部13aの外側、即ち送風機50の吐出側には、送り開口部13aを塞ぐように、風向制御装置60が設けられている。
【0046】
送風機50は、回転式のプロペラファン51と、風洞53aが形成されたケーシング53と、を備えている。ケーシング53は、冷却室13の送り開口部13aに取り付けられており、送風機50の吸入側と吐出側との境界になる部品である。
【0047】
ケーシング53に形成された風洞53aは、略円筒形状の開口であり、空気流路となるものである。また、風洞53aの吸入側は、該内径が端部に向かって大きくなる、所謂ベルマウス形状になっている。また、風洞53aの吐出側端部、即ち風洞53aと吐出側端面53cとの交線部分、にも適当な丸み付け面取りが施されている。
【0048】
そして、風洞53aの内部には、風洞53aと同軸に、ファン51が配設されている。尚、ファン51の吐出側端部51aは、風洞53aの吐出側端部、即ちケーシング53の吐出側端面53c、より外側、即ち吐出側、になるように配設されている。これにより、ファン51の回転半径方向に流れ出る吐出空気に対する流動抵抗を小さくすることができる。
【0049】
また、風向制御装置60は、冷却室13に対向する面、即ち送風機50に対向する面、が凹形状に成形されている。これにより、風向制御装置60は、ケーシング53よりも吐出側に突き出したファン51と接触することなく、風洞53aの外側でケーシング53に当接し、送り開口部13aを塞ぐことができる。
【0050】
また、風向制御装置60の側壁61、64は、各々独立して開閉自在に構成されている。そして、側壁61を開くことにより、冷却風路14を通じて冷蔵室3へと冷気を流す冷蔵室用吐出開口部61aが形成される。他方、側壁64を開くことにより、冷却風路17を通じて冷凍室6へと冷気を流す冷凍室用吐出開口部64aが形成される。
【0051】
図5は、風向制御装置60の取り付け部周辺を前方からみた斜視図である。
図5に示すように、風向制御装置60の側壁62、63も各々独立して開閉自在に構成されている。そして、各々の側壁62、63を開くことにより、冷却風路15を通じて製氷室4へと冷気を流す製氷室用吐出開口部62a及び冷却風路16を通じて上段冷凍室5へと冷気を流す上段冷凍室用吐出開口部63aが形成される。
【0052】
尚、
図5及び
図6において、矢印V61、V62、V63、V64は、各々の吐出開口部61a、62a、63a、64aから、冷却風路14、15、16、17へと吐出される冷気の流れを模式的に示したものである。
【0053】
図6は、送風機50及び風向制御装置60の構造を示す斜視図である。
図6(A)は、風向制御装置60の吐出開口部61a〜64aを全て閉じた状態、(B)は、冷蔵室用吐出開口部61a及び冷凍室用吐出開口部64aを開いた状態を示す。(C)は、全ての吐出開口部61a〜64aを開いた状態を示している。
【0054】
図6(A)に示すように、送風機50は、ファン51を回転駆動させるファンモータ52を備えている。ファンモータ52は、支持フレーム54によってケーシング53に固定されており、ファンモータ52の回転軸にはファン51が取り付けられている。
【0055】
また、
図6(B)に示すように、ケーシング53の吐出側端面53cには、支柱66が設けられている。そして、風向制御装置60は、支柱66によって、送風機50のケーシング53に固定されている。
【0056】
図6(A)乃至(C)に示すように、風向制御装置60は、略四角形板状の基体部65と、前記基体部65の周縁部に立設された側壁61、62、63、64と、から構成され、送風機50に対向する側が凹部となる略箱形状を成している。各側壁61〜64は、該一辺が回動自在に基体部65に支持されており、前述の通り、各々独立して開閉自在に構成されている。即ち、各側壁61〜64は、各吐出開口部61a〜64aを各々独立して開閉する開閉蓋として機能する。そして、各側壁61〜64は、後述する駆動モータによって、開閉される。
【0057】
図6(A)のごとく、風向制御装置60の全ての側壁61〜64が閉じた状態では、各側壁61〜64の内側端部がケーシング53の外周部53bに当接し、送風機50の空気流路を塞ぐことになる。即ち、風向制御装置60によって、冷却室13(
図4参照)の送り開口部(
図4参照)が塞がれ、空気流路が閉じた状態となる。
【0058】
また、
図6(B)のごとく、側壁61を開くと、冷蔵室用吐出開口部61aが開き、側壁64を開くと、冷凍室用吐出開口部64aが開く。また、
図6(C)のごとく、側壁62を開くと、製氷室用吐出開口部62aが開き、側壁63を開くと、上段冷凍室用吐出開口部63aが開く。尚、
図6(A)乃至(C)に示す状態に限らず、前述の通り、各側壁61〜64は、必要に応じて各々独立して開閉可能である。
【0059】
また、各側壁61〜64の開閉機構は、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、各側壁61〜64のケーシング53側の辺を回動自在に支持し、基体部65側を開閉させるよう構成しても良い。また、スライド式の開閉機構を採用することも可能である。
【0060】
次に、
図7を参照して、送風機50周りの空気流れについて、更に詳しく説明する。
図7は、軸流送風機50周りの空気流れを解析した結果を示す説明図である。
図7(A)は、吐出側と吸入側との圧力差が12Paという条件における解析結果であり、(B)は、圧力差が4Pa、(C)は、2Paという条件における解析結果である。
図7(A)乃至(C)において、符号Vは、ケーシング53の吐出側端面53c(
図4又は
図6(B)参照)における風速ベクトル分布である。また、符号V1は、吸入側(紙面右側)にある面S1における風速ベクトル分布を表し、符合V2は、吐出側(紙面左側)にある面S2における風速ベクトル分布を表している。各風速ベクトルV、V1、V2は、矢印の方向を各流れの方向とし、矢印の長さを各流れの速さに比例する長さとして表現されている。尚、各図において、ファン51の上下に描かれた横線Mは、計算上使用したものであって、解析結果の説明には用いないので無視してよい。
【0061】
図7(C)に示すように、送風機50の吐出側と吸入側との圧力差が2Paの場合には、送風機50の吐出側における風速ベクトルVは、図の上下方向にやや斜めではあるが、略左側を向いていることが分かる。また、吐出側の面S2における風速ベクトルV2も、左側に突き出ている。即ち、圧力差2Paの条件においては、送風機50吐出側の空気流れは、ファン51の回転軸方向Zの速度が大きく、回転半径方向Rの速度が小さいことが分かる。換言すれば、送風機50によって吐出された空気は、主に、送風機50の前方へと流れて行く。
【0062】
ところが、
図7(B)に示すように、送風機50の吐出側と吸入側との圧力差が4Paになると、送風機50吐出側における風速ベクトルVは、図の上下方向への広がりがやや大きくなり、吐出側の面S2における風速ベクトルV2は短くなっている。即ち、圧力差が4Paと大きくなると、送風機50吐出側の空気流れは、ファン51の回転半径方向Rの速度が大きくなってくる。
【0063】
更に、
図7(A)に示すように、圧力差が更に大きくなり12Paになると、送風機50の吐出側における風速ベクトルVは、図の略上下方向を向くようになる。また、吐出側の面S2における風速ベクトルV2は、非常に短くなっている。即ち、圧力差が12Paの条件では、送風機50から吐出された空気の流れは、ファン51の回転軸方向Zの速度が非常に小さく、回転半径方向Rの速度が大きくなることが分かる。換言すれば、送風機50から吐出された空気は、送風機50の前方、即ちZ方向、に向かって流れずに、回転半径方向Rに向かって流れ出ることになる。
【0064】
尚、
図7(A)乃至(C)何れの条件においても、送風機50吐出側の空気流れは、ファン51の回転軸を中心とした旋回流を形成している。
【0065】
以上、軸流送風機50の特性について説明したが、本実施形態に係る冷蔵庫1のように、閉回路内で冷気を強制循環させる冷蔵庫においては、送風機50の吐出側と吸入側との圧力差は10〜12Pa程度である。つまり、
図7(A)に示すように、送風機50によって吐出された冷気は、ファン51の回転半径方向Rに広がって流れて行くのである。
【0066】
そこで、
図4及び
図6に示すように、本実施形態に係る風向制御装置60は、各側壁61〜64を開き、基体部65と冷却室13との間に、冷気が流れるための吐出開口部61a〜64aを形成する。即ち、送り開口部13aに対してファン51の回転半径方向R外側に、吐出開口部61a〜64aを形成している。それにより、前述の通り、回転半径方向Rの流れ速度が大きい送風機50吐出側の空気流れを妨げることなく、吐出開口部61a〜64aを通じて冷却風路14〜17内へと空気を流すことができる。
【0067】
このとき、送風機50から前面方向へと流れる空気は、
図7(A)に示すように、当初から非常に少ないので、風向制御装置60を取り付けたとしても、風向制御装置60が風路抵抗へ及ぼす影響は、非常に小さなものとなる。
【0068】
図7(A)に示す吐出側の面S3は、風向制御装置60の基体部の位置を示している。同図より、面S3の位置まで吐出開口部61a〜64aを確保すれば、殆どの空気流れは妨げられずに該開口部を通過可能なことが分かる。
【0069】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る冷蔵庫1の主に風量制御に関連する制御機器の構成について説明する。冷蔵庫1は、所定の演算処理を実行して各機器を制御するコントローラ70を備えている。そして、各収納室3、4、5、6、7に設けられた温度検出器73、74、75、76、77、及び冷却室13に設けられた温度検出器78は、コントローラ70に入力信号を送るように接続されている。
【0070】
また、コントローラ70には、各収納室の保冷温度を設定するための設定入力器71、及び各収納室の設定温度や検出温度を表示するための表示器72が接続されている。これにより、収納室毎に、貯蔵する食品等に応じて好適な温度を設定し、また、保冷温度を確認することができる。
【0071】
また、風向制御装置60の開閉蓋となる各側壁61、62、63、64には、各々駆動モータ61b、62b、63b、64bが取り付けられている。そして、駆動モータ61b〜64bは、コントローラ70に接続されており、コントローラ70からの出力信号を受けて、各側壁61〜64を各々独立して開閉する。
【0072】
また、コントローラ70の出力端子には、圧縮機31、ファンモータ52及び除霜ヒータ31が接続されている。尚、コントローラ70には、各種センサ、照明、結露防止ヒータ等、その他の図示しない入力機器や出力機器も接続されている。
【0073】
次に、本実施形態に係る冷蔵庫1の動作について説明する。先ず、貯蔵室を冷却する冷却運転の基本的な動作について説明する。冷却運転では、前述の蒸気圧縮式冷凍回路によって、貯蔵室内を循環する冷却空気を冷却する。即ち、
図2に示す圧縮機31で低温低圧の冷媒蒸気を高温高圧の状態に圧縮し、図示しない放熱器で放熱させる。そして、放熱器において熱を奪われ凝縮した液冷媒を、減圧手段としての図示しないキャピラリーチューブで絞り膨張させ、冷却器32へと流す。冷却器32において、低温低圧の液冷媒は、循環空気と熱交換して蒸発する。その結果、循環空気は、冷媒の蒸発潜熱によって冷却されることになる。冷却器32で蒸発した蒸気冷媒は、再び圧縮機31に吸入され、圧縮されることになる。以上説明の動作を連続的に繰り返し、冷凍回路の冷却器32による循環空気の冷却が行われる。
【0074】
図2乃至
図5に示すように、冷却器32によって冷却された空気は、送風機50によって押し出され、冷却室13の送り開口部13a及び風向制御装置60の各吐出開口部61a、62a、63a、64aを介して、各冷却風路14、15、16、17へと流れる。
【0075】
そして、吐出開口部61a及び冷却風路14を介して冷蔵室3の内部に供給された循環冷気は、戻り口26から連結風路18へと流れ、吹出口25から野菜室7へと供給される。そして、野菜室7を循環した冷気は、戻り口30から冷却室13の戻り開口部13bを経て、冷却室13の内部へと戻る。そこで、再び冷却器32によって冷却されることになる。
【0076】
他方、吐出開口部62aを介して冷却風路15に吐出された冷却空気は、吹出口22を通り、製氷室4へと供給される。そして、その循環冷気は、戻り口27から帰還風路19へと流れ、冷却室13の戻り開口部13bを経て、冷却室13の内部へと戻る。
【0077】
また、吐出開口部63aを介して冷却風路16に吐出された冷却空気は、吹出口23を通り、上段冷凍室5へと供給される。そして、その循環冷気は、戻り口28から帰還風路20へと流れ、冷却室13の戻り開口部13bを経て、冷却室13の内部へと戻る。
【0078】
また更に、吐出開口部64aを介して冷却風路17へと吐出された冷却空気は、吹出口24から冷凍室6へと供給される。そして冷凍室6内部の空気は、戻り口29を通り、冷却室13の戻り開口部13bを介して、冷却室13の内部へと流れる。以上説明の通り、冷却器32で冷却された冷気が貯蔵室内を循環し、食品等の冷却保存が行われる。
【0079】
ここで、風向制御装置60は、各収納室3、4、5、6の冷却負荷に対応して、各吐出開口部61a、62a、63a、64aを各々独立して開閉し、各収納室3〜6へと供給される冷却空気の流量を調整している。
【0080】
次に、
図9に示す制御フローチャートを参照して、風向制御装置60の制御動作について詳細に説明する。ここでは、例として、冷蔵室用吐出開口部61aの開閉制御について説明する。先ず、コントローラ70(
図8参照)は、ステップS10で、除霜運転中であるか否かを判別し、除霜運転中である場合には(YES)、駆動モータ61b(
図8参照)を駆動して側壁61(
図4乃至
図6参照)を閉じ、冷蔵室用吐出開口部61aを閉じる(ステップS20)。
【0081】
他方、コントローラ70は、ステップS10において、除霜運転中ではないと判断すれば(NO)、ステップS30へと進み、設定温度T0、即ち目標とする庫内冷却温度T0を読み込む。尚、設定温度T0は、予め定められた所定の値又は設定入力器71(
図8参照)によって入力された値である。
【0082】
次に、コントローラ70は、ステップS40で、冷蔵室温度検出器73(
図3及び
図8参照)から検出された庫内温度Tを読み込む。そして、コントローラ70は、ステップS50で、庫内温度Tと、設定温度T0に所定のディファレンシャル値D(不感帯D)を足した値と、を比較し、庫内温度Tが高ければ(YES)、吐出開口部61aを開く(ステップS60)。
【0083】
他方、コントローラ70は、ステップS50において、庫内温度Tがディファレンシャル値Dを考慮した設定温度T0よりも低ければ(NO)、吐出開口部61aの開閉動作を行わずステップ70へと進む。即ち、吐出開口部61aが開いた状態であれば開いたまま、閉じた状態であれば閉じたまま、次ぎのステップへと進む。
【0084】
コントローラ70は、ステップS70で、庫内温度Tと設定温度T0との比較を行い、庫内温度Tが低ければ(YES)、ステップS80へと移り、吐出開口部61aを閉じる制御を行う。
【0085】
他方、コントローラ70は、ステップS70において、庫内温度Tが設定温度T0よりも高ければ(NO)、吐出開口部61aの開閉動作を行わずステップ70へと進む。即ち、吐出開口部61aが開いた状態であれば開いたまま、閉じた状態であれば閉じたまま、次ぎのステップへと進む。
【0086】
そして、コントローラ70は、ステップ90では、運転を継続すべきか否かを判別し、特に機器を停止すべき異常等が発生していなければ(YES)、ステップS10へと戻り、以上説明の制御を繰り返す。
【0087】
尚、吐出開口部61aの制御は、開く状態と閉じる状態との2つの状態で行うものとして説明したが、庫内温度Tと設定温度T0との偏差に基づき所定の開度に制御する、所謂比例制御を採用することも可能である。
【0088】
このように、本実施形態に係る冷蔵庫1は、各収納室3〜6の冷却負荷に応じて、供給する冷気の流量を各々独立して調節できるので、貯蔵室の内部に貯蔵された食品等を適切な温度で冷却保存することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る冷蔵庫1によれば、各冷却風路14〜17や風路の吹出口21〜24にダンパを設けることなく、各収納室3〜6の温度を適切に制御できるので、ダンパの個数を削減でき、冷却風路を小型化することができると共に、ダンパによる圧力損失を低減することができる。
【0090】
次に、
図2、
図4、
図6及び
図9を参照して、除霜運転時の動作について説明する。冷却運転を継続すると、冷却器32の空気側伝熱面に霜が付着し、伝熱を妨げ、空気流路を塞ぐことになる。そこで、冷媒蒸発温度の低下等から着霜を判断し、或いは除霜タイマー等によって判断し、冷却器32に付着した霜を取るための除霜運転を開始する。
【0091】
除霜運転を行う場合、圧縮機31の運転を停止し、送風機50を停止する。そして、前述の通り、風向制御装置60は、
図9のステップS10、S20に示す制御動作により、
図6(A)に示すように、全ての吐出開口部61a〜64aを閉じた状態となる。そして、除霜ヒータ33に通電する。
【0092】
そうすると、除霜ヒータ33の発熱によって冷却器32や冷却室13内に付着した霜が融かされる。霜を融かした後の水は、冷却室13の下方に設けられた図示しない排水管を介して、機械室49内に設けられた図示しない蒸発皿へと流れ落ちる。そして、該水は、前記蒸発皿において圧縮器31等からの熱により蒸発する。
【0093】
除霜ヒータ33によって発生した熱は、冷却室13内の空気を暖めることになるが、本実施形態に係る冷蔵庫1では、前述の通り、風向制御装置60で冷却室13の送り開口部13aを塞ぐので、暖気が冷却風路14〜17へと流れ出ることを防止できる。そのため、冷却風路14〜17内が除霜暖気によって暖められてしまうことを防止できる。その結果、冷蔵庫1の冷却効率を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る冷蔵庫1は、冷却室13の送り開口部13aのみで除霜暖気の流れを止めるので、シール箇所が少なく、漏れの少ない、確実な封止が可能となる。
【0095】
冷却器32の霜取りが完了すると、除霜ヒータ33の通電を止め、圧縮機31を起動し、冷凍回路による冷却を開始する。そして、冷却器32及び冷却室13が所定の温度まで冷却されたことを検出した後、或いはタイマー等で所定の時間が経過した後、送風機50の運転を開始し、貯蔵室の冷却負荷に応じて風向制御装置60の各吐出開口部61a〜64aを開く。これにより、除霜熱による影響を出来るだけ小さく抑え、冷却運転を再開することができる。
【0096】
以上説明の通り、本実施形態に係る冷蔵庫1では、霜取り中に、風向制御装置60で冷却室13の送り開口部13aを塞ぐので、各冷却風路14〜17にダンパを設けることなく、霜取り時の暖気が貯蔵室に流れ込むことを防止することができる。
【0097】
尚、本実施形態の風向制御装置60は、4つの開閉自在な吐出開口部61a、62a、63a、64aを有するものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。吐出開口部は、貯蔵室の区分に応じて適当な個数設けることができる。
【0098】
また同様に、風向制御装置60の形状についても、本実施形態に限定されるものではない。例えば、基体部65の形状は、四角形状に限らず、多角形や円形状でも構わない。また、風向制御装置60の全体形状を半球形状に構成しても構わない。
【0099】
また、各吐出開口部61a、62a、63a、64aと、冷却風路14、15、16、17とは、一対一で対応するものとして説明したが、複数の吐出開口部が一つの冷却風路につながるよう構成しても良い。
【0100】
また更に、本実施形態に係る冷蔵庫1では、冷蔵室3へ供給された冷気が連結風路18を介して野菜室7へと流れる構成であったが、冷蔵室3を経由せずに、吐出開口部から直接野菜室7へと冷気を流す風路構成を採用することも可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。