特許第5912771号(P5912771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912771
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   G01D5/20 110X
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-79958(P2012-79958)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210256(P2013-210256A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−178136(JP,A)
【文献】 特開2008−054465(JP,A)
【文献】 特開2006−184212(JP,A)
【文献】 特開平09−252560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータシャフトの回転角を検出するレゾルバであって、
前記モータシャフトの外周に設けられ前記モータシャフトと一体的に回転するレゾルバロータと、
前記レゾルバロータの外周を囲むように前記レゾルバロータの外周と回転角検出用ギャップを有して設けられる複数のコイルを有するレゾルバステータと、
前記レゾルバロータ及び前記レゾルバステータを収容し、前記コイルの配線を引き出す開口部を前記レゾルバステータの外周側に有するハウジングと、
前記レゾルバステータから前記開口部を介して前記ハウジングの外部まで延設され、前記複数のコイルの配線を集約する配線集約部材と、
前記開口部と前記配線集約部材との隙間をカバーするカバー部材と、
を備え、
前記開口部は、径方向に開口し、
前記カバー部材は、前記配線集約部材とともに周方向に回動するとともに、周方向の長さが前記開口部より長い湾曲した曲面を有し、前記配線集約部の周方向位置にかかわらず前記開口部をカバーすることを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
モータシャフトの回転角を検出するレゾルバであって、
前記モータシャフトの外周に設けられ前記モータシャフトと一体的に回転するレゾルバロータと、
前記レゾルバロータの外周を囲むように前記レゾルバロータの外周と回転角検出用ギャップを有して設けられる複数のコイルを有するレゾルバステータと、
前記レゾルバロータ及び前記レゾルバステータを収容し、前記コイルの配線を引き出す開口部を前記レゾルバステータの外周側に有するハウジングと、
前記レゾルバステータから前記開口部を介して前記ハウジングの外部まで延設され、前記複数のコイルの配線を集約する配線集約部材と、
前記開口部と前記配線集約部材との隙間をカバーするカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、円弧状に湾曲した曲面を有して前記配線集約部材の外寸と同寸の切り欠きを有するベース部と、前記切り欠きの外縁から前記ベース部の径方向外側へ向けて延設され前記配線集約部材の三方に当接する当接部と、を有する、
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項3】
前記ベース部の周方向寸法は、前記開口部の周方向寸法より大きく、
前記カバー部材は、前記配線集約部材の周方向位置にかかわらず前記開口部をカバーする、
ことを特徴とする請求項2に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記ベース部の軸方向寸法は、前記開口部の軸方向寸法と同寸である、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のレゾルバ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のレゾルバを備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転角を検出するレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転角を検出する回転角検出センサとしてのレゾルバを、モータハウジングの開口部に固設されるフランジカバー内に設けることが従来から行われている。
【0003】
レゾルバは、モータシャフトに取り付けられるレゾルバロータと、レゾルバロータの外周を取り囲むようにフランジカバー内に取り付けられるレゾルバステータと、を備える。
【0004】
レゾルバステータは、内方へ向けて突設される複数のティースを有し、このティースに巻回されたコイルが励磁コイル及び検出コイルとして用いられる。これらのコイルの巻線端末は、レゾルバステータの外周側に設けられる配線集約部材に集約され、外部へと配線が引き出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−330472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなレゾルバでは、レゾルバロータの回転によるレゾルバロータとレゾルバステータとのギャップパーミアンスの変動に基づいてモータシャフトの回転角度を検出している。
【0007】
したがって、角度検出精度を向上させるためには、レゾルバロータ及びレゾルバステータの機械的取り付け誤差を低減させる必要がある。そこで、レゾルバをモータハウジングのフランジカバーに装着した後、配線集約部材をレゾルバの周方向に首振りさせることで、レゾルバの組み立て時に生じるズレを解消している。
【0008】
フランジカバーは、上述のように配線集約部材をカバー内から外方へと延設させる開口部を有する。開口部は、配線集約部材の首振りを可能とするため、周方向寸法が配線集約部材の周方向寸法より大きく設定される。
【0009】
よって、配線集約部材と開口部との隙間が生じるため、当該隙間からチリや埃等の異物がフランジカバー内へと侵入する可能性がある。
【0010】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、配線集約部材の周囲から異物が侵入することを防止可能なレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、モータシャフトの回転角を検出するレゾルバであって、モータシャフトの外周に設けられモータシャフトと一体的に回転するレゾルバロータと、レゾルバロータの外周を囲むようにレゾルバロータの外周と回転角検出用ギャップを有して設けられる複数のコイルを有するレゾルバステータと、レゾルバロータ及びレゾルバステータを収容し、コイルの配線を引き出す開口部を前記レゾルバステータの外周側に有するハウジングと、レゾルバステータから開口部を介してハウジングの外部まで延設され、複数のコイルの配線を集約する配線集約部材と、開口部と配線集約部材との隙間をカバーするカバー部材と、を備え、開口部は径方向に開口し、カバー部材は、配線集約部材とともに周方向に回動するとともに、周方向の長さが開口部より長い湾曲した曲面を有し、配線集約部の周方向位置にかかわらず開口部をカバーすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステータの開口部と配線集約部材との隙間をカバーするカバー部材を備えるので、配線集約部材の周囲からハウジング内に異物が侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態におけるレゾルバを搭載したモータユニットを示す図である。
図2図1のモータユニットをレゾルバ側の軸方向から見た図である。
図3A】カバー部材を示す斜視図である。
図3B図3Aのカバー部材をA方向から見た図である。
図3C図3Aのカバー部材をB方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態におけるレゾルバ21を搭載したモータユニット100を示す図である。モータユニット100は、内部に図示しないモータを収容するモータハウジング10と、モータハウジング10の一端側の開口部11に装着され内部にレゾルバ21を収容するフランジカバー20と、モータハウジング10及びフランジカバー20の中央を貫通する直線上に延設されるモータシャフト30と、を備える。
【0016】
モータハウジング10とフランジカバー20とは、それぞれの拡径部10a、20a同士を対向させた状態で拡径部10a、20aをモータシャフト30の軸方向にボルト締結することで一体化される。フランジカバー20のモータハウジング10とは反対側には、中央にモータシャフト30を挿通する孔を有するエンドカバー31が装着される。
【0017】
図示しないモータは、モータシャフト30の外周に設けられるロータと、モータハウジング10の内周に設けられロータの外周を取り囲むように設けられるステータと、を備える。
【0018】
図2は、図1のモータユニット100をレゾルバ21側の軸方向から見た図である。なお、図2では、レゾルバ21の構成を可視化するためエンドカバー31を外している。
【0019】
レゾルバ21は、モータシャフト30の外周に設けられるレゾルバロータ22と、フランジカバー20の内周に設けられ、レゾルバロータ22の外周を取り囲むように設けられるレゾルバステータ23と、を備える。レゾルバロータ22の外周とレゾルバステータ23の内周とは、所定の回転角検出用ギャップ24を有している。
【0020】
レゾルバロータ22は、円弧状の複数の膨出部22aが外周に均等に配置された非円形状に形成される。円弧状の各膨出部22aは、レゾルバステータ23との間に所定の回転角検出用ギャップ24を保っている。
【0021】
レゾルバステータ23は、円環状に形成され、周方向にわたって内周側に突き出た図示しない複数のティースを有する。各ティースには銅線が巻回されてコイル25が形成される。これらのコイル25のうち、一部は励磁コイルとして機能し、その他のコイル25は検出コイルとして機能する。
【0022】
つまり、レゾルバロータ22の回転によって、レゾルバロータ22の外周とレゾルバステータ23の内周とのギャップ24が変化することで、ギャップパーミアンスが変動し、この変動に基づいてレゾルバロータ22、すなわちモータシャフト30の回転角を検出することができる。
【0023】
フランジカバー20の内部には、フランジカバー20の底面20bから軸方向に隆起した隆起部20cが円弧状に形成される。隆起部20cは、図1に示すように、エンドカバー31が取り付けられることで、フランジカバー20の底面20bとエンドカバー31との間にレゾルバ収容空間を画成する。
【0024】
フランジカバー20の隆起部20cが周方向に途切れる位置(図2の右端)には、レゾルバ収容空間と外部とを連通する開口部26が設けられる。開口部26は矩形であり、図1に示すように、モータシャフト30の軸方向にはフランジカバー20からエンドカバー31までにわたって開口し、図2に示すように、モータシャフト30の周方向には隆起部20cが途切れる部分の一端20dから他端20eまでにわたって開口している。
【0025】
フランジカバー20の底面20bであってレゾルバステータ23の外周側(図2の下方側)には、2つの突起部27が設けられる。レゾルバステータ23は、隆起部20cの内周面と突起部27の内周面との間に嵌め込まれることで、径方向に位置決めされる。
【0026】
レゾルバステータ23は、さらに、円環状のレゾルバステータ23から外周へ向けて延設された2つの延設部28を有する。この延設部28にはボルトを挿通するボルト挿通孔28aが設けられており、延設部28の軸方向手前側からフランジカバー20の底面20bに設けられるボルト締結穴29へボルトを挿通させ、締結することでレゾルバステータ23を周方向の所望の位置に固定することができる。
【0027】
レゾルバ21は、さらに、レゾルバステータ23の開口部26側の端部から開口部26を通して開口部26の外側までにわたってモータシャフト30の径方向に延設される配線集約部材41と、配線集約部材41と開口部26との隙間をカバーするカバー部材42と、を備える。
【0028】
配線集約部材41は、図1に示すように、開口部26より一回り小さい矩形であり、レゾルバステータ23の各コイル25の巻線端末を集約してフランジカバー20の外部へと導出させる。配線集約部材41の外側端面には、巻線端末を結線した複数のハーネスを引き出すためのハーネス導出孔43が設けられる。
【0029】
レゾルバ21の角度検出精度を向上させるためには、レゾルバロータ22及びレゾルバステータ23の機械的取り付け誤差を低減させる必要がある。そこで、レゾルバ21をフランジカバー20に装着した後、配線集約部材41をレゾルバ21の周方向に首振りさせ、レゾルバ21の組み立て時に生じるズレを解消できる適切な位置でレゾルバステータ23を固定する必要がある。そのため、配線集約部材41と開口部26との間には、前述のように隙間が存在する。しかし、当該隙間によってチリや埃等の異物がフランジカバー20内へと侵入する可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、配線集約部材41の周囲をカバーするカバー部材42を設けている。以下、カバー部材42について説明する。
【0031】
図3Aは、カバー部材42を示す斜視図である。図3Bは、図3Aのカバー部材42をA方向から見た図である。図3Cは、図3Aのカバー部材42をB方向から見た図である。
【0032】
カバー部材42は、円弧状に湾曲した曲面を有し、配線集約部材41の外寸とほぼ同寸の切り欠き44を有するベース部45と、ベース部45の切り欠き44の外縁からベース部45の径方向外側へ向けて延設され、配線集約部材41の三方に当接する当接部46と、から構成される。
【0033】
ベース部45の周方向の長さは、図2に示すように、フランジカバー20の隆起部20cが途切れる部分より長く、つまり開口部26の周方向長さ(20d〜20e間寸法)より長く設定される。これにより、ベース部45の周方向両端部の外周面が、隆起部20cの両端部20d、20eの内周面に、それぞれ当接する。
【0034】
また、ベース部45の軸方向の幅は、図1及び図3Cに示すように、フランジカバー20の底面20bとエンドカバー31との間の寸法とほぼ同一に設定される。これにより、ベース部45の軸方向(図3Cの左右方向)の両端面が、フランジカバー20の底面20bとエンドカバー31の内面に、それぞれ当接する。
【0035】
カバー部材42は、このように構成され、フランジカバー20にレゾルバロータ22及びレゾルバステータ23を装着した後、ベース部45が隆起部20cの内周側に当接し、さらに当接部46が配線集約部材41の側面三方に当接するように、エンドカバー31側から装着される。その後、エンドカバー31を装着することでレゾルバ21はフランジカバー20内に収容されることになる。
【0036】
以上のように、配線集約部材41のモータ側はフランジカバー20の底面20bに当接しているので、異物の侵入を防止することができる。また、配線集約部材41の残りの三方は、カバー部材42によってカバーされるので、配線集約部材41の調整時の首振り後の位置にかかわらず、異物の侵入を防止することができる。
【0037】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0038】
本実施形態におけるレゾルバ21は、フランジカバー20の開口部26と配線集約部材41との隙間をカバーするカバー部材42を備えるので、開口部26と配線集約部材41との隙間からチリや埃等の異物が侵入することを防止することができる。
【0039】
さらに、カバー部材42は、円弧状に湾曲した曲面を有し、配線集約部材41の外寸とほぼ同寸の切り欠き44を有するベース部45と、ベース部45の切り欠き44の外縁からベース部45の径方向外側へ向けて延設され、配線集約部材41の三方に当接する当接部46と、を有する。よって、配線集約部材41と開口部26との間の隙間をベース部45によってカバーするとともに、カバー部材42と配線集約部材41との間を当接部46によって密着させることで、異物が侵入することをより確実に防止できる。
【0040】
さらに、カバー部材42のベース部45の周方向の長さは、開口部26の周方向長さより長く設定され、カバー部材42が配線集約部材41の周方向位置にかかわらず開口部26をカバーするので、配線集約部材41の調整時の首振り後の位置にかかわらず、開口部26と配線集約部材41との隙間から異物が侵入することを防止することができる。
【0041】
さらに、カバー部材42のベース部45の軸方向の幅は、フランジカバー20の底面20bとエンドカバー31との間の寸法とほぼ同一に設定され、配線集約部材41の三方に当接するので、開口部26を軸方向にわたってカバーすることができる。よって、より確実に開口部26と配線集約部材41との隙間から異物が侵入することを防止することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0043】
例えば、本実施形態では、可変リラクタンス(VR)型レゾルバ21を例に挙げて説明したが、その他のタイプのレゾルバであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
20 フランジカバー(ハウジング)
21 レゾルバ
22 レゾルバロータ
23 レゾルバステータ
24 回転角検出用ギャップ
25 コイル
26 開口部
30 モータシャフト
41 配線集約部材
42 カバー部材
図1
図2
図3A
図3B
図3C