特許第5912772号(P5912772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912772基材レス両面粘着テープおよびその製造方法、ならびに粘着ロールおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912772
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】基材レス両面粘着テープおよびその製造方法、ならびに粘着ロールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   C09J7/00
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-80157(P2012-80157)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209495(P2013-209495A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】篠田 裕文
(72)【発明者】
【氏名】大橋 仁
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽剥離シート、基材レス粘着剤層および重剥離シートを備え、前記基材レス粘着剤層における一方の主面に前記軽剥離シートの剥離面が接し、他方の主面に前記重剥離シートの剥離面が接する長尺の基材レス両面粘着テープの製造方法であって、
前記基材レス両面粘着テープにおいては、
前記軽剥離シートの剥離力Fと前記重剥離シートの剥離力Fとが下記式(1)を満たし、
−F≧10mN/50mm (1)
前記軽剥離シートの剥離面は、幅方向両端部に、前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域を備え、
前記重剥離シートの剥離面は、その幅方向の全領域に前記基材レス粘着剤層が積層されており、
前記製造方法は、
重剥離シート、基材レス粘着剤層、およびその剥離面の前記基材レス粘着剤層に対する剥離力が前記重剥離シートの剥離面の前記基材レス粘着剤層に対する剥離力よりも低い工程用剥離シートを備え、前記基材レス粘着剤層における一方の主面に前記工程用剥離シートの剥離面が接し、他方の主面に前記重剥離シートの剥離面が接する長尺の原反を用意する原反形成工程、
当該原反形成工程により得られた前記原反から前記工程用剥離シートを剥離して一方の主面が露出した前記基材レス粘着剤層と前記重剥離シートとからなる積層体を得る剥離工程、および
当該剥離工程により得られた前記積層体における前記基材レス粘着剤層側の主面に、前記基材レス粘着剤層よりも幅広な軽剥離シートをその剥離面が貼合するように貼付して、前記軽剥離シートの剥離面の幅方向両端部に前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域を有する前記基材レス両面粘着テープを得る貼付工程を備えること
を特徴とする基材レス両面粘着テープの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載される基材レス両面粘着テープを巻収して巻取体からなる粘着ロールを得る工程を備えることを特徴とする、粘着ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材レス両面粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材レス両面粘着テープは、長尺の粘着剤層の両面それぞれに、長尺の軽剥離シートおよび長尺の重剥離シートが積層されて構成されるものである。上記の粘着剤層は支持体となる基材(芯材)を有さないため、本明細書において「基材レス粘着剤層」という。
【0003】
このような基材レス両面粘着テープは、軽剥離シートを剥離除去した後に、露出した基材レス粘着剤層の一方の表面を被着体に貼付し、次いで重剥離フィルムを剥離除去し、それにより露出した基材レス粘着剤層の他方の表面にさらに他の被着体を貼付し、被着体同士を接合するものである。
基材レス両面粘着テープは長尺方向に伸びた状態で保管される場合もあるが、多くの場合には、ロール状に巻き取った巻取体として保管され、この状態で市場流通する。この巻取体における基材レス両面粘着テープの基材レス粘着剤層のそれぞれの主面には異なる種類の剥離シートが接触しているところ、基材レス粘着剤層には巻取り作業の際のテンションに基づく加圧力がこれらの剥離シートから付与された状態にある。
【0004】
なお、本明細書において「主面」とは、シート形状を有する部材(具体例として、基材レス粘着剤層、剥離シートが挙げられる。)を構成する面のうち、面積が最も大きな対向する2面をいう。基材レス粘着剤層における主面は貼付面となる面であり、剥離シートにおける主面は基材レス粘着剤層がその上に形成される面およびこの面の反対側の面(対向面)である。
【0005】
基材レス両面粘着テープにおける問題として、軽剥離シートを剥離する際に、基材レス粘着剤層の軽剥離からの剥離が適切に行われず、基材レス粘着剤層が凝集破壊するなどして一部の基材レス粘着剤層が軽剥離シート上に残存する、いわゆるナキワカレとも呼ばれる剥離不良(本明細書において「残着現象」ともいう。)が挙げられる。従来、このナキワカレを抑制するためには、基材レス粘着剤層に接する二種類の剥離シートにおける剥離剤層の組成を相違させることによってそれぞれの剥離シートの剥離力を相違させる手法が行われてきた(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−168425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように剥離剤層の組成を調整する手法によれば、基材レス粘着剤層の組成に応じて個別に剥離剤層の組成の最適化を行う必要がある。また、後述するように、剥離剤層の組成を調整するだけではかならずしもナキワカレは抑制されない場合もある。
【0008】
そこで、本発明は、基材レス両面粘着テープにおけるナキワカレを効率的に抑制する新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らがナキワカレについて検討した結果、次の知見が得られた。
なお、本明細書において、基材レス両面粘着テープにおける、その主面内の方向であって巻取りが行われる場合における巻取方向を長尺方向といい、この長尺方向に直交する主面内の方向を幅方向という。そして、長尺方向および幅方向の双方に直交する方向を断面方向という。
【0010】
(A)ナキワカレには次の二種類がある。
i)スポットナキワカレ
基材レス粘着剤層の幅方向端部以外の領域に主として発生するナキワカレであり、基材レス粘着剤層を挟持する軽剥離シートの剥離力と重剥離シートの剥離力との差が小さい場合に発生する。スポットナキワカレが生じている基材レス両面粘着テープを概念的に図9に示す。図9(a)および(b)に示されるように、基材レス両面粘着テープ50の軽剥離シート51を基材レス粘着剤層52から引き剥がすと、軽剥離シート51と重剥離シート53との間隔が開いたことに伴ってこれらのシートの間で基材レス粘着剤層52を構成する粘着性組成物52aが引き延ばされる。その一部は、軽剥離シート51と基材レス粘着剤層52との界面で剥離せず、粘着性組成物52aの内部で凝集破壊する。このとき、破断部よりも軽剥離シート51側に位置する粘着性組成物52aは軽剥離シート51上に残留し、スポット状の残留粘着剤52bとなる。
【0011】
なお、本明細書において「軽剥離シートの剥離力」とは、厚さ38μmの軽剥離シートと、この軽剥離シートの剥離面上に積層された厚さ25μmの基材レス粘着剤層と、この基材レス粘着剤層の軽剥離シートと反対側の面にその剥離面が対向するように積層された厚さ38μmの重剥離シートとからなる、幅方向の長さ(本明細書において「幅長」ともいう。)が50mmの積層体である軽剥離力測定用積層体から、23℃相対湿度50%の条件下において、180°引きはがし法により軽剥離シートを剥離したときの剥離力を意味する。また、「重剥離シートの剥離力」とは、上記の軽剥離力測定用積層体における軽剥離シートを厚さ25μmのポリエステルフィルムに置き換えて得られる重剥離力測定用積層体を用いて、23℃相対湿度50%の条件下において、180°引きはがし法により重剥離シートを剥離したときの剥離力を意味する。なお、これらの剥離力の測定方法については、測定用積層体の製造方法も含めて、実施例の試験例1において詳しく説明する。
【0012】
ii)端部ナキワカレ
端部ナキワカレは、基材レス粘着剤層の幅方向端部近傍の領域に発生するものであって、次の理由により発生すると考えられる。すなわち、図10に示されるように、基材レス両面粘着テープ60の基材レス粘着剤層62が、軽剥離シート61と重剥離シート63とに挟持された状態で断面方向に加圧力が加えられたり、加熱されたりすると、基材レス粘着剤層62を形成する粘着性組成物の一部62aが基材レス両面粘着テープ60の幅方向端部からはみ出す場合がある。なお、図10(a)では加圧力が加えられた状態を一具体例として示している。このはみ出した粘着性組成物62aの一部62bは、図10(b)に示されるように、軽剥離シート61の幅方向端部における端面(以下、「幅方向端面」という。)61aに濡れ広がり、この幅方向端面61aと濡れ広がった粘着性組成物62bとの界面64が形成される。この幅方向端面61aには、通常、特段の剥離処理は行われていないことから、この界面64において濡れ広がった粘着性組成物62bは軽剥離シート61に強く付着する。一方、重剥離シート63においても、その幅方向端面63aと濡れ広がった粘着性組成物62cとの界面65は形成され、その結果、基材レス両面粘着テープ60の幅方向端部では、軽剥離シート61と基材レス粘着剤層62との間の密着力は、重剥離シート63と基材レス粘着剤層62との間の密着力と同程度となってしまう。このとき、基材レス両面粘着テープ60から軽剥離シート61を剥離させようとすると、この軽剥離シート61の幅方向端面61aに濡れ広がった粘着性組成物62bは容易に剥離せず、図10に示されるように、基材レス粘着剤層62の幅方向端部に位置する粘着性組成物の一部62dが軽剥離シート61とともに持ち上がる。この持ち上がった粘着性組成物62dがその内部で凝集破壊したり、粘着性組成物62と重剥離シート63との界面で剥離が生じたりすると、軽剥離シート61上にこの粘着性組成物62dが残留して、端部の残留粘着剤62eとなる。なお、幅方向端面61aと濡れ広がった粘着性組成物62bとの界面64の面積が広いなどの理由により、粘着性組成物62bの軽剥離シート61への付着力が大きい場合には、持ち上がった粘着性組成物62dに引きずられて、基材レス粘着剤層62における、より幅方向中央側に位置する粘着性組成物も軽剥離シート61側(図10では上側)に持ち上がり、その幅方向中央側に位置する粘着性組成物の内部で凝集破壊が発生することもある。このため、上記の付着力が大きい場合には、端部のみならず、幅方向中央部にまで至るナキワカレが発生することもある。
【0013】
(B)スポットナキワカレについては、軽剥離シートの剥離力(本明細書において「軽剥離力」ともいう。)に対する重剥離シートの剥離力(本明細書において「重剥離力」ともいう。)の差を10mN/50mm以上とすることで、スポット状の残留粘着剤52bの発生を安定的に抑制でき、20mN/50mm以上とすればさらに安定的にその発生を抑制することができる。
【0014】
(C)端部ナキワカレに関し、基材レス両面粘着テープ60の幅方向端部から基材レス粘着剤層62を形成する粘着性組成物の一部62aがはみ出すことを抑制することは容易ではない。基材レス両面粘着テープ60の巻取体からなる粘着ロールを形成しようとすれば、テープの長尺方向に加えたテンションに基づいて、巻取体の外側をなす剥離シートはその内側にある基材レス粘着剤層62を必然的に加圧してしまう。また、基材レス両面粘着テープ60の保管・使用環境における温度が高くなると、基材レス粘着剤層62の流動性が高まる。このような場合には、上記粘着性組成物の一部62aのはみ出しは一層発生しやすくなる。
【0015】
(D)このようなはみ出した粘着性組成物62aが端部ナキワカレの原因とならないようにするには、はみ出した粘着性組成物62aが軽剥離シート61の幅方向の端面に濡れ広がらないようにすればよい。
【0016】
(E)そのための最も簡便な方法の一つが、軽剥離シート61の剥離面の幅方向両端部に、基材レス粘着剤層62が積層されていない領域(以下、「糊なし領域」ともいう。)を設けることである。
【0017】
以上の知見により完成された本発明は、第1に、軽剥離シート、基材レス粘着剤層および重剥離シートを備え、前記基材レス粘着剤層における一方の主面に前記軽剥離シートの剥離面が接し、他方の主面に前記重剥離シートの剥離面が接する長尺の基材レス両面粘着テープであって、前記軽剥離シートの剥離力Fと、前記重剥離シートの剥離力Fとが、下記式(i)を満たし、前記軽剥離シートの剥離面は、幅方向両端部に、前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域(糊なし領域)を備えることを特徴とする基材レス両面粘着テープを提供する(発明1)。
−F≧10mN/50mm (i)
なお、上記の「軽剥離シートの剥離力」および「重剥離シートの剥離力」は、前述のとおり、それぞれ、軽剥離力測定用積層体および重剥離力測定用積層体を用いて測定することにより得られる。
【0018】
上記発明(発明1)において、前記重剥離シートの剥離面は、その幅方向の全領域に前記基材レス粘着剤層が積層されていることが好ましい(発明2)。
【0019】
本発明は、第2に、上記発明(発明1、2)のいずれかに係る基材レス両面粘着テープを巻収してなる巻取体からなる粘着ロールを提供する(発明3)。上記発明に係る基材レス両面粘着テープは、巻収の際に断面方向に加圧力が加えられて幅方向端部から粘着剤組成物がはみ出すことがあっても、粘着ロールにおいて端部ナキワカレが発生する可能性は低減されている。
【0020】
本発明は、第3に、上記発明(発明1)に係る基材レス両面粘着テープの製造方法であって、軽剥離シートまたは重剥離シートの一方における剥離面上に、当該剥離面の幅よりも狭い幅を有する複数の長尺の基材レス粘着剤層を互いに離間するように形成する粘着剤層形成工程、当該粘着剤層形成工程により形成された前記複数の長尺の基材レス粘着剤層における露出する主面に、前記軽剥離シートまたは重剥離シートの他方における剥離面を貼付することにより、第一の原反を形成する第一の原反形成工程、および当該第一の原反形成工程により得られた前記第一の原反における、前記軽剥離シートと前記重剥離シートとからなり前記基材レス粘着剤層を挟持していない部分を長尺方向に裁断して、前記軽剥離シートの剥離面の幅方向両端部に前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域を有する前記基材レス両面粘着テープを得る裁断工程を備えることを特徴とする基材レス両面粘着テープの製造方法を提供する(発明4)。
【0021】
本発明は、第4に、上記発明(発明2)に係る基材レス両面粘着テープの製造方法であって、軽剥離シート、基材レス粘着剤層および重剥離シートを備え、前記基材レス粘着剤層における一方の主面に前記軽剥離シートの剥離面が接し、他方の主面に前記重剥離シートの剥離面が接する長尺の第二の原反を用意する第二の原反形成工程、前記第二の原反形成工程により得られた前記第二の原反の幅方向両端部近傍における、前記重剥離シートおよび前記基材レス粘着剤層の積層体からなる第一の積層シートが前記軽剥離シートに積層された部分について、前記第一の積層シートが幅方向に並置される3枚の積層シートに分離されるように、長尺方向および断面方向を含む面を切断面とするハーフカットを前記重剥離シート側から行うハーフカット工程、および当該ハーフカット工程により分離された前記第一の積層シートの3枚の積層シートのうち、前記第二の原反の幅方向両端部側の2枚の積層シートを、前記第二の原反から剥離除去して、前記軽剥離シートの剥離面の幅方向両端部に前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域を有する前記基材レス両面粘着テープを得る剥離除去工程を備えることを特徴とする基材レス両面粘着テープの製造方法を提供する(発明5)。
【0022】
本発明は、第5に、上記発明(発明2)に係る基材レス両面粘着テープの製造方法であって、重剥離シート、基材レス粘着剤層、およびその剥離面の前記基材レス粘着剤層に対する剥離力が前記重剥離シートの剥離面の前記基材レス粘着剤層に対する剥離力よりも低い工程用剥離シートを備え、前記基材レス粘着剤層における一方の主面に前記工程用剥離シートの剥離面が接し、他方の主面に前記重剥離シートの剥離面が接する長尺の第三の原反を用意する第三の原反形成工程、当該第三の原反形成工程により得られた前記第三の原反から前記工程用剥離シートを剥離して一方の主面が露出した前記基材レス粘着剤層と前記重剥離シートとからなる積層体を得る剥離工程、および当該剥離工程により得られた前記積層体における前記基材レス粘着剤層側の主面に、前記基材レス粘着剤層よりも幅広な軽剥離シートをその剥離面が貼合するように貼付して、前記軽剥離シートの剥離面の幅方向両端部に前記基材レス粘着剤層が積層されていない領域を有する前記基材レス両面粘着テープを得る貼付工程を備えることを特徴とする基材レス両面粘着テープの製造方法を提供する(発明6)。
【0023】
本発明は、第6に、上記発明(発明4から6)のいずれかに係る基材レス両面粘着テープを巻収して巻取体からなる粘着ロールを得る工程を備えることを特徴とする、粘着ロールの製造方法を提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0024】
本発明の基材レス両面粘着テープは、重剥離力の軽剥離力に対する差が10mN/50mm以上あるためスポットナキワカレを安定的に抑制することができる。
また、軽剥離シートにおける基材レス粘着剤層に対向する側の主面の幅方向両端部に糊なし領域を備えるため、基材レス粘着剤層の幅方向両端部から粘着性組成物がはみ出しても、その粘着性組成物は軽剥離シートの剥離面上に濡れ広がるのみであり、軽剥離シートの幅方向端面までは至らない。このため、本発明の基材レス両面粘着テープは端部ナキワカレの発生をも安定的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープにおける幅方向断面を概念的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープの作用を概念的に示す幅方向断面の部分拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第一の製造方法の前半を概念的に示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第一の製造方法の後半を概念的に示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第二の製造方法の前半を概念的に示すフロー図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第二の製造方法の後半を概念的に示すフロー図である。
図7】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第三の製造方法の具体的な例の一つを概念的に示すフロー図である。
図8】本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープを製造する方法の一つである第三の製造方法の具体的な例の他の一つを概念的に示すフロー図である。
図9】スポットナキワカレが発生している基材レス両面粘着テープを概念的に示す断面図(a)および斜視図(b)である。
図10】基材レス両面粘着テープにおける端部ナキワカレの発生を概念的に示す図であり、(a)基材レス両面粘着テープが加圧された状態を概念的に示す断面図、(b)基材レス両面粘着テープの幅方向端部の側面に粘着剤組成物が濡れ広がった状態を概念的に示す断面図、および(c)端部ナキワカレが発生している基材レス両面粘着テープを概念的に示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明について、実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
1.両面粘着シート
図1は本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープにおける、その幅方向を含む切断面(本発明において、「幅方向断面」という。)を概念的に示す断面図である。
【0027】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10は、軽剥離シート1、基材レス粘着剤層2、および重剥離シート3がこの順に積層されてなる構成を有する。ここで、軽剥離シート1の剥離面は基材レス粘着剤層2の一方の主面に接し、重剥離シート3の剥離面は基材レス粘着剤層2の他方の主面に接している。
以下、各構成要素について説明する。
【0028】
(1)基材レス粘着剤層
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10が備える基材レス粘着剤層2は、粘着性組成物からなる層状体である。基材レス粘着剤層2を構成する粘着性組成物の組成は特に限定されない。主成分である粘着剤としてゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の粘着剤が例示され、これらの一種類を使用してもよいし、二種類以上を使用してもよい。
【0029】
上記のうちアクリル系の粘着剤についてやや詳しく説明すれば、官能基含有モノマーと、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の他のモノマーとを共重合して得られるアクリル系共重合体を主成分とする。必要に応じて溶媒、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0030】
官能基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーやアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体を基準(100質量%)として、モノマー単位として0.3〜5.0質量%含むことが好ましい。アクリル系共重合体は、官能基を含有することにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができ、粘着性組成物のはみ出しを抑制するとともに、粘着力および耐熱性を向上させることができる。
粘着性組成物に使用される架橋剤としては、特に制限はなく、アクリル系の材料を主成分とする粘着性組成物において慣用されているものの中から適宜選択して用いられ、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが用いられ、好ましくはポリイソシアネート化合物が用いられる。
【0031】
充填剤は、光学特性、機械特性の調整などの観点から含有される。透過する光を拡散し、例えば、液晶表示装置において表示パネル全体を均一な明るさにするために、微粒子からなる充填剤が用いられる場合もある。そのような微粒子の具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系白色顔料;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機系の透明または白色顔料等を挙げることができる。これらの中で、優れた光学特性を得る観点から、シリコーンビーズ、エポキシ樹脂ビーズ、ポリメチルメタクリレートビーズが好ましい。同様に、優れた光学特性を得る観点から、微粒子は光拡散が均一な球状の形状を有し、平均粒径が1〜10μmを有していることが好ましい。なお、この平均粒径は遠心沈降光透過法に基づく粒径であり、そのための測定装置として堀場製作所製CAPA−700が例示される。
【0032】
基材レス粘着剤層2に係る粘着性組成物の23℃における貯蔵弾性率(G’)は特に限定されない。基材レス粘着剤層2の弾性率が低いほど端面へのはみ出し量が多くなるため、弾性率が低い粘着剤ほど本発明の効果が顕著に現れる。貼付適正を考慮すると、貯蔵弾性率(G’)は0.001〜1MPa程度であることが好ましく、0.01〜0.2MPa程度であればさらに好ましい。なお、貯蔵弾性率(G’)は、厚さ30μmの粘着性組成物の層を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により、下記の条件で測定したものである。
測定装置:Anton Paar社製動的粘弾性測定装置Physica MCR 300
周波数:1Hz
温度:23℃
【0033】
基材レス粘着剤層2の断面方向長さ(以下、単に「厚さ」という。)は特に限定されない。基材レス粘着剤層2の厚みが厚いほど端面へのはみ出し量が多くなるため、厚さが厚いほど本発明の効果が顕著に現れる。用途に応じて適宜設定されるべきものであり、通常、5μm以上250μm以下程度とされる。
【0034】
(2)軽剥離シート
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10が備える軽剥離シート1は、軽剥離シート1の支持体となる軽剥離支持体1aと、軽剥離支持体1aにおける基材レス粘着剤層2に対向する側の主面上に構成された軽剥離剤層1bとを備える。軽剥離シート1における軽剥離剤層1b側の主面が剥離面をなしている。
【0035】
本実施形態において、軽剥離シート1の幅長は基材レス粘着剤層2の幅長よりも広く、すなわち幅広であって、かつ、軽剥離シート1における軽剥離剤層1b側の主面(以下、「軽剥離剤層側主面」ともいう。)1cの幅方向両端部には、基材レス粘着剤層2が貼付されていない領域1d,1eを備える。本実施形態において、この領域を「糊なし領域」ともいう。
【0036】
糊なし領域1d,1eの作用について図2を参照しつつ説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10の作用を概念的に示す幅方向断面の部分拡大図である。
【0037】
図2に示されるように、基材レス両面粘着テープ10の断面方向に力が加えられたことに基づき、基材レス粘着剤層2の幅方向の端面2Aから粘着性組成物がはみ出した場合でも、軽剥離シート1の軽剥離剤層側主面1cが上記の糊なし領域1dを備えていれば、はみだした粘着性組成物2Bは、この糊なし領域1dにおける軽剥離剤層側主面1c上に展開するのみであって、軽剥離シート1の幅方向端面1fまでは至らない。それゆえ、かかる構成を備えることにより、軽剥離シート1の幅方向端面1fに粘着性組成物が付着することに起因して発生する端部ナキワカレの発生が抑制される。
【0038】
糊なし領域幅方向各端部における糊なし領域1d,1eの幅長は、はみだした粘着性組成物2Bが糊なし領域1d,1eを超えて軽剥離シート1の幅方向端面1fに付着しないことを実現できる限り特に限定されない。はみだした粘着性組成物2Bの量は、基材レス両面粘着テープ10に印加された加圧力および雰囲気温度、基材レス粘着剤層2を構成する粘着性組成物の組成およびその厚さ、さらに軽剥離シート1の軽剥離剤層を構成する剥離剤の種類などにより変動する。この変動に伴い、はみだした粘着性組成物2Bの糊なし領域1d,1eにおける幅方向の広がり長さも変動するため、上記の因子を考慮して糊なし領域1d,1eの幅長を適宜設定すればよい。一般的には1〜10mm程度であり、3〜7mmとすることが好ましい。
【0039】
軽剥離シート1は、上記の糊なし領域1d,1eを適切に備えている限り、他の構成は特に限定されない。
軽剥離シート1の支持体である軽剥離支持体1aの材質は特に限定されない。樹脂系の材料から構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。樹脂系の材料から構成される場合における樹脂種は任意であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂などが挙げられる。軽剥離支持体1aに係る樹脂系の材料は、これらの一種類から構成されていてもよいし、複数種類から構成されていてもよい。
【0040】
軽剥離支持体1aが紙系の材料から構成される場合の具体例として、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、および上記の紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が挙げられる。
【0041】
光学特性(視認性)や機械特性を調整する観点から、軽剥離支持体1aは、粒状や短繊維状のフィラーを含有していてもよいし、顔料や染料を含有していてもよい。
【0042】
軽剥離支持体1aの厚さも特に限定されない。過度に薄い場合には剥離作業性に劣り、過度に厚い場合には経済性の観点から不利となることを考慮して、適宜設定すればよい。通常その厚さは20〜250μm程度である。
【0043】
軽剥離支持体1aの一方の主面上に形成される軽剥離剤層1bを形成する剥離剤組成物(以下、「軽剥離剤組成物」ともいう。)は、基材レス粘着剤層2に対して軽剥離性を示すことができれば、その組成は特に限定されない。シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などの樹脂材料を主成分として用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系の樹脂材料が好ましい。その具体的な一例として、分子の末端および/または側鎖に炭素数2〜10のアルケニル基を備え、かつアリール基を有さないオルガノポリシロキサンに、架橋剤および触媒が加えられたものが挙げられる。このオルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂)における炭素数2〜10のアルケニル基としては、ビニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられるが、ビニル基、ヘキセニル基が特に好ましい。上記の架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を有するオルガノポリシロキサンの架橋剤が使用される。具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリハイドロジェンシルセスキオキサン等が挙げられる。架橋剤の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、0.1〜100質量部とすることが好ましく、0.3〜50質量部とすることがより好ましい。また、架橋剤に含まれるケイ素原子に結合した水素原子の数は、シリコーン樹脂中のアルケニル基の数に対して、1.0〜5.0(モル比)とすることが好ましく、1.2〜3.0(モル比)とすることがより好ましい。上記の触媒としては、例えば白金系化合物が使用される。白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。白金族金属系触媒は、通常、シリコーン樹脂および架橋剤の合計量に対し、白金系金属として1〜1000質量ppm程度添加される。
【0044】
軽剥離剤層1bの基材レス粘着剤層2に対する剥離力、すなわち、軽剥離力は、後述するように、重剥離剤層3bの基材レス粘着剤層2に対する剥離力、すなわち、重剥離力との関係で定義されるべきものであり、単独の剥離力としては特に限定されないが、軽剥離性を安定的に示す観点から、0mN/50mm以上100mN/50mm以下であることが好ましく、5mN/50mm以上50mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、軽剥離シート1の剥離力を調整する手段は特に限定されず、例えば、次のような因子を制御する方法が挙げられる。
・軽剥離剤組成物の主成分をなす樹脂材料の種類(シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系など)
・軽剥離剤組成物の主成分をなす樹脂材料の分子量
・軽剥離剤組成物の架橋密度(この架橋密度は、架橋剤の種類やその架橋反応進行前の含有量、架橋剤と反応する官能基の存在密度などにも影響される。)
・軽剥離剤組成物に含有される添加成分(具体的には、架橋しないおよび/または架橋しにくい低分子量体が例示される。)
・軽剥離剤層1bの厚さ
・軽剥離剤層1bの基材レス粘着剤層2との貼合面の表面粗さ
・軽剥離支持体1aの厚さ
・軽剥離支持体1aの可撓性(折れ曲がりやすさ)
・基材レス粘着剤層2を構成する粘着剤の種類
なお、後述する重剥離シート3における剥離力も、上記の軽剥離シート1の剥離力に関する因子と同様の因子を制御することにより調整することができる。
【0046】
軽剥離支持体1aと軽剥離剤層1bとの間にプライマー層が積層されてもよい。プライマー層は、例えば有機アルミニウム化合物と有機ケイ素化合物との混合物で構成される。有機アルミニウム化合物としては例えばアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、有機ケイ素化合物としては例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが使用される。このようなプライマー層が設けられることにより、軽剥離支持体1aと軽剥離剤層1bとの密着性が悪い場合であっても、これらの間の密着性を向上させることができる。
【0047】
また、プライマー層は、例えば金属アルコキドおよび/または金属アルコキシド部分加水分解物縮合重合体により構成されてもよい。このようなプライマー層は帯電防止効果を有するため、基材レス両面粘着テープ10がロール状の巻取体からなる場合には、その巻取体から基材レス両面粘着テープ10を繰り出すときに静電気の発生を防止することができる。
【0048】
なお、本実施形態に係る軽剥離シート1は、軽剥離支持体1aと軽剥離剤層1bとからなる構成であるが、少なくとも一方の主面が軽剥離性を有する剥離面である長尺のシート状部材である限り、軽剥離シート1は他の構成を有していてもよい。例えば、軽剥離支持体1a自体が軽剥離性を有しており、軽剥離支持体1aのみから軽剥離シート1が構成されていてもよい。
【0049】
(3)重剥離シート
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10が備える重剥離シート3は、重剥離シート3の支持体となる重剥離支持体3aと、重剥離支持体3aにおける基材レス粘着剤層2に対向する側の主面上に構成された重剥離剤層3bとを備える。重剥離シート3における重剥離剤層3b側の主面が剥離面をなしている。
【0050】
重剥離シート3の幅長と基材レス粘着剤層2の幅長との関係は、重剥離シート3が基材レス粘着剤層2を幅方向において完全に覆っていること、すなわち、重剥離シート3の幅長≧基材レス粘着剤層2の幅長なる関係を満たしていればよく、軽剥離シート1のように幅方向両端部に糊なし領域を備えていることは特に必要とされない。特に、重剥離シート3の幅長=基材レス粘着剤層2の幅長なる関係が満たされていることが好ましい。このような構成であれば、後述する両面粘着シートの第二の製造方法または第三の製造方法により両面粘着シートを得ることが可能となる。
【0051】
重剥離シート3の支持体である重剥離支持体3aの材質は特に限定されない。その詳細は軽剥離支持体1aの場合と同様であるから、説明を省略する。
【0052】
重剥離支持体3aの厚さも特に限定されない。軽剥離支持体1aの場合と同様に適宜設定されるべきものであって、通常その厚さは20〜250μm程度である。
【0053】
重剥離支持体3aの一方の主面上に形成される重剥離剤層3bを形成する剥離剤組成物(以下、「重剥離剤組成物」ともいう。)は、重剥離力F(重剥離層3bの基材レス粘着剤層2に対する剥離力)と軽剥離力F(軽剥離剤層1bの基材レス粘着剤層2に対する剥離力)とが下記式(1)の関係を有することを実現できる限り、任意である。
−F≧10mN/50mm (1)
【0054】
重剥離力Fと軽剥離力Fとが上記式(1)の関係を満たすとき、スポットナキワカレの発生が安定的に抑制される。スポットナキワカレの発生をさらに安定的に抑制する観点から、上記式(1)の右辺は20mN/50mmであることが好ましく、30mN/50mmであれば特に好ましい。
【0055】
重剥離力Fは単独では特に限定されないが、重剥離性を安定的に示す観点から、10mN/50mm以上300mN/50mm以下であることが好ましく、20mN/50mm以上200mN/50mm以下であることがより好ましく、40mN/50mm以上150mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
なお、重剥離支持体3aと重剥離剤層3bとの間にプライマー層が積層されてもよい。その詳細は軽剥離支持体1aと軽剥離剤層1bとの間におけるプライマー層と同様であるから説明を省略する。
【0057】
なお、本実施形態に係る重剥離シート3は、重剥離支持体3aと重剥離剤層3bとからなる構成であるが、少なくとも一方の主面が重剥離性を有する剥離面である長尺のシート状部材である限り、重剥離シート3は他の構成を有していてもよい。例えば、重剥離支持体3a自体が重剥離性を有しており、重剥離支持体3aのみから重剥離シート3が構成されていてもよい。
【0058】
2.両面粘着シートの製造方法
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10は上記の特性を備える限り、その製造方法は特に限定されないが、次の製造方法により製造すれば、安定的かつ効率的に基材レス両面粘着テープ10を製造することが実現される。
【0059】
(1)第一の製造方法
本実施形態に係る第一の製造方法は、次に説明する粘着剤層形成工程、第一の原反形成工程、および切断工程を備える。
以下、図3および4を参照しつつ、各工程について詳しく説明する。図3および4は、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10を製造する方法の一つである第一の製造方法を概念的に示すフロー図である。
【0060】
(A)粘着剤層形成工程
粘着剤層形成工程では、長尺の軽剥離シート1(軽剥離支持体1aおよび軽剥離剤層1bから構成される。)または長尺の重剥離シート3(重剥離支持体3aおよび重剥離剤層3bから構成される。)の一方における剥離剤層、すなわち軽剥離剤層1bまたは重剥離剤層3bが形成された側の主面上に、この主面の幅よりも狭い幅を有する複数の長尺の基材レス粘着剤層を互いに離間するように形成する。
【0061】
図3(a)では、一具体例として、長尺の軽剥離シート1の軽剥離剤層1b側の主面1c上に、3本の長尺の基材レス粘着剤層2,2’,2”が互いに離間するように形成されている。すなわち、長尺の軽剥離シート1の主面1c上には、基材レス粘着剤層2,2’,2”がストライプ状に形成されている。
【0062】
このとき、軽剥離シート1の幅方向端部に近位な基材レス粘着剤層である端部側基材レス粘着剤層2,2”における軽剥離シート1の幅方向端部側の端部と、軽剥離シート1の幅方向端部との間には、糊なし領域1d,1eが設けられている。また、3本の基材レス粘着剤層のうち中央部に位置する基材レス粘着剤層である内部側基材レス粘着剤層2’における双方の幅方向端部側の端部と、端部側基材レス粘着剤層2,2”の軽剥離シート1の幅方向端部側に反対側の端部との間にも、糊なし領域1g,1hが設けられている。
【0063】
このように、長尺の軽剥離シート1の主面1c上に複数本のライン状の基材レス粘着剤層をストライプ状に形成するための具体的な方法は限定されない。基材レス粘着剤層を構成する粘着性組成物を長尺の軽剥離シート1の主面1c上への吐出する装置における吐出形状が破線状になっていてもよいし、上記粘着性組成物の吐出装置がオンデマンド型のインクジェットヘッドから構成されていてもよい。
【0064】
(B)第一の原反形成工程
上記の粘着剤層形成工程の実施により、複数の長尺の基材レス粘着剤層2,2’,2”における一方の主面2a,2a’,2a”は長尺の軽剥離シート1に貼付され、他方の主面2b,2b’,2b”は露出した状態にある。この露出している側の主面2b,2b’,2b”を、重剥離支持体3aと重剥離剤層3bとからなる重剥離シート3における重剥離剤層3bが形成された側の主面3cに貼付する(図3(b))。その結果、長尺の軽剥離シート1と重剥離シート3との間に、3本のライン状の基材レス粘着剤層2,2’,2”が互いに離間した状態で挟持されてなる第一の原反20が形成される(図3(c))。
【0065】
(C)裁断工程
上記の第一の原反形成工程の実施により得られた第一の原反20における、軽剥離シート1と重剥離シート3とからなり基材レス粘着剤層2,2’,2”を挟持していない部分、換言すれば、軽剥離シート1の糊なし領域1g,1hに対応する部分、を長尺方向に裁断する(図4(d))。その結果得られる各長尺の切断片21,21’,21”は、長尺の軽剥離シート1および長尺の重剥離シート3に挟持された長尺の基材レス粘着剤層2,2’,2”からなり、軽剥離シート1における基材レス粘着剤層2側の主面は、幅方向両端部に、糊なし領域1d,1g’,1g”,1h’,1h”,1eを備える、基材レス両面粘着テープ21,21’,21”となる(図4(e))。
【0066】
製造設備上の理由などにより、原反の幅長はある程度の長さ(例えば1m)に実質的に設定されている場合であっても、上記の第一の製造方法によれば、第一の原反20の幅長よりも狭い限り、任意の幅長(例えば20cm、30cmなど)の基材レス両面粘着テープ10を得ることができる。
【0067】
(2)第二の製造方法
本実施形態に係る第二の製造方法は、次に説明する第二の原反形成工程、ハーフカット工程および剥離除去工程を備える。
【0068】
以下、図5および6を参照しつつ、各工程について詳しく説明する。図5および6は、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10を製造する方法の一つである第二の製造方法を概念的に示すフロー図である。
【0069】
(A)第二の原反形成工程
第二の原反形成工程では、長尺の軽剥離シート1(軽剥離支持体1aおよび軽剥離剤層1bから構成される。)および長尺の重剥離シート3(重剥離支持体3aおよび重剥離剤層3bから構成される。)に挟持された長尺の基材レス粘着剤層2からなる第二の原反30を用意する。
【0070】
ここで、基材レス粘着剤層2の二つの主面は、それぞれ、軽剥離シート1における軽剥離剤層1b側の主面および重剥離シート3における重剥離剤層3b側の主面に接している(図5(a))。この第二の原反30の製造方法は任意である。重剥離シート3における重剥離剤層3b側の主面上に基材レス粘着剤層2を与える粘着性組成物を塗布し、得られた塗布層における重剥離シート3に対向している側と反対側の露出する面を軽剥離シート1における軽剥離剤層1b側の主面に貼付して得てもよいし、軽剥離シート1における軽剥離剤層1b側の主面上に基材レス粘着剤層2を与える粘着性組成物を塗布し、得られた塗布層における軽剥離シート1に対向している側と反対側の露出する面を重剥離シート3における重剥離剤層3b側の主面に貼付して得てもよい。
【0071】
なお、基材レス粘着剤層2を与える粘着性組成物の塗布方法は任意である。その具体例として、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0072】
また、第二の原反30の幅方向両端部は通常、その長尺方向と断面方向とを含む面で切断され、平滑な端面30a,30bとなっている。この端面30a,30bは平滑面である必要はないが、作業性を考慮すると平滑面であることが好ましい。また、作業性を高める観点から、第二の原反30の長尺方向についても、適当な長さ(数巻程度分)に切断してもよい。
【0073】
(B)ハーフカット工程
ハーフカット工程では、上記の第二の原反形成工程により得られた第二の原反30の幅方向両端部近傍30c,30dにおける、重剥離シート3および基材レス粘着剤層2の積層体からなる第一の積層シート31が軽剥離シート1に積層された部分30e,30fについて、第一の積層シート31が幅方向に並置される3枚の積層シート31a,31b,31cに分離されるように、長尺方向および断面方向を含む面を切断面とするハーフカットを重剥離シート3側から行う(図5(b)、(c))。ここで、「ハーフカット」とは、第二の原反30全体を裁断(すなわち、分離可能となるまで切断)するフルカットではなく、第一の積層シート31は裁断されるが軽剥離シート1は完全には裁断されないという意味である。
【0074】
このように、第二の製造方法では、基材レス粘着剤層の最終的な幅長は、ハーフカット工程において決定される。一方、第一の製造方法は、長尺の軽剥離シートの主面上に複数の長尺の基材レス粘着剤層を互いに離間するように形成する工程を含んでいる。したがって、第一の製造方法においては、原反形成工程の段階で基材レス粘着剤層の最終的な幅長を決定しておく必要がある。第二の製造方法では、原反形成工程においては基材レス粘着剤層の最終的な幅長を決定せず、幅広の原反を得、その後所望の基材レス粘着剤層の幅長となるようにハーフカット工程を行うことができる。換言すれば、原反形成工程からハーフカット工程に到るまでの間、基材レス粘着剤層の最終的な幅長の決定を留保することができる。そのため、流通管理の観点から第二の製造方法は優れている。
【0075】
後述するように、第二の原反30における、幅方向端面30a(30b)と幅方向両端部近傍30c(30d)におけるハーフカットのための刃が入る部分30e(30f)との距離が、第二の製造方法により得られる基材レス両面テープにおける糊なし領域の幅方向長さに相当する。
【0076】
(C)剥離除去工程
剥離除去工程では、ハーフカット工程の実施により第一の積層シート31が分離されてなる3枚の積層シート31a,31b,31cのうち、第二の原反30の幅方向両端部側の2枚の積層シート31a,31cを、第二の原反30から剥離除去する(図6(a))。その結果、中央部に位置する積層シート31bのみが軽剥離シート1上に残留する。なお、上記のハーフカット工程において、ハーフカット直前に第二の原反30の両端部をトリミングすることにより、剥離除去工程において第二の原反30の両端部に位置している2枚の積層シート31a,31cを剥離除去する際に端部ナキワカレが発生する可能性を低減することができる。
【0077】
こうして得られた積層シート31bと軽剥離シート1とからなる積層体は、すなわち、軽剥離シート1の幅方向両端部に糊なし領域1d,1eを備える基材レス両面粘着テープ10となる(図6(b))。
【0078】
(3)第三の製造方法
本実施形態に係る第三の製造方法は、第二の製造方法とは異なる方法により(すなわちハーフカット工程を含まずに)基材レス粘着剤層2の幅長と重剥離シート3の幅長とが等しい基材レス両面テープを製造する方法であって、例えば、次に説明する第三の原反形成工程、トリミング工程、剥離工程および貼付工程を備える。
【0079】
以下、図7および8を参照しつつ、各工程について詳しく説明する。図7および8は、本発明の一実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10を製造する方法の一つである第三の製造方法の二つの具体例を概念的に示すフロー図である。
【0080】
(A)第三の原反形成工程
第三の原反形成工程では、まず、長尺の剥離シートからなり基材レス粘着剤層2に対する剥離力が重剥離シート3における基材レス粘着剤層2に対する剥離力よりも低い工程用剥離シート4を用意する。この工程用剥離シート4、長尺の基材レス粘着剤層2および長尺の重剥離シート3がこの順に配置されてなる積層体である第三の原反40を得る(図7(a))。この第三の原反40を得るための具体的な方法な任意である。基材レス粘着剤層2を与える粘着性組成物を工程用剥離シート4上に塗布して重剥離シート3をさらに積層してもよいし、基材レス粘着剤層2を与える粘着性組成物を重剥離シート3上に塗布して工程用剥離シート4をさらに積層してもよい。
【0081】
(B)剥離工程
剥離工程では、上記の第三の原反形成工程により得られた第三の原反40から工程用剥離シート4を剥離して、一方の主面2bが露出した基材レス粘着剤層2と重剥離シート3とからなる積層体41を得る(図7(b))。第三の原反40がロール状である場合などは、第三の原反40から積層体41を得る工程において端部ナキワカレが発生する可能性があるが、工程用剥離シート4を剥離する前に第三の原反40の両端部をトリミングすることにより、そのような端部ナキワカレが発生する可能性を低減させることができる。
【0082】
(C)貼付工程
貼付工程では、上記の剥離工程により得られた積層体41における基材レス粘着剤層2側の主面に、この積層体41の基材レス粘着剤層2よりも幅広な軽剥離シート1を貼付して、軽剥離シート1の幅方向両端部に糊なし領域1d,1eを備える基材レス両面粘着テープ10を得る(図7(c))。
【0083】
積層体41の基材レス粘着剤層2への軽剥離シート1の貼付位置、および積層体41の基材レス粘着剤層2の幅長と軽剥離シート1の幅長との関係は特に限定されない。この貼付位置や幅長の関係により糊なし領域1d,1eの幅方向の長さが決定されることを考慮して適宜設定すればよい。
【0084】
(D)トリミング工程
なお、次のトリミング工程を剥離工程と貼付工程との間に配置すれば、第三の原反40に用いられる工程用剥離シート4と軽剥離シート1とを共通化することができる。
【0085】
トリミング工程では、上記の第三の原反形成工程により得られた第三の原反40(図8(a)に示されるように、工程用剥離シート4として軽剥離シート1が用いられている。)の軽剥離シート1を剥離し、一方の主面2bが露出した基材レス粘着剤層2と重剥離シート3とからなる積層体41を得る。この積層体41における幅方向各端部近傍の部分41a,41bを長尺方向に切断して(図8(b))、積層体41の幅長を短くする(図8(c))。続いて、貼付工程として、上記の工程において剥離したものであって幅方向にトリミングされていない軽剥離シート1(工程用剥離シート4)を、上記のトリミングされた基材レス粘着剤層2における露出している方の主面2bに、その剥離面が対向するように再度貼付すれば、軽剥離シート1の幅方向両端部に糊なし領域1d,1eを備える基材レス両面粘着テープ10が得られる(図8(d))。
【0086】
3.粘着ロール
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10は、長尺方向が伸びた状態であってもよいが、ロール状に巻収してなる巻取体の状態であってもよい。この巻取体、すなわち粘着ロールは保管しやすいという利点を有する。その一方、ロール状に巻収する際に与えられた長尺方向のテンションに基づき、粘着ロールにおける基材レス両面粘着テープ10における基材レス粘着剤層2は、軽剥離シート1および重剥離シート3により加圧されている。このため、基材レス粘着剤層2を構成する粘着性組成物は流動して基材レス両面粘着テープ10の幅方向端部からはみ出しやすくなっている。このような場合においても、本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10は端部ナキワカレが発生しにくい。
【0087】
4.用途
本実施形態に係る基材レス両面粘着テープ10の用途は特に限定されないが、ナキワカレに基づく基材レス粘着剤層2の部分欠損や厚さの局所的異常部分が発生しにくいことから、光学用途等に好適に使用することができる。具体例を示せば、偏光子などを他の光透過性基材に貼付するための粘着剤層、厚い粘着剤が使用されるエアギャップ用粘着剤層、電子部品における部品貼付用粘着剤層が挙げられる。
【0088】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上記の説明において、軽剥離シート1および重剥離シート3は、いずれも、支持体1a、3aと剥離剤層1b、3bとからなり、軽剥離シート1および重剥離シート3の剥離面は剥離剤層1b、3bの面により構成されているが、軽剥離シート1および重剥離シート3の剥離面が支持体1a、3aの面により構成されていてもよい。この場合においても、分子配向や面粗さなどの相違により、支持体1a、3aにおける剥離面と直交する断面が剥離面とは異なり基材レス粘着剤層2に対して強く付着する面となる場合がある。
【実施例】
【0089】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0090】
〔実施例1〕
(1)塗工液の調製
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする粘着剤主剤(アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸を重合に用いる単量体成分として、この順に49.125:49.125:1.75の質量比で共重合した共重合体、固形分32質量%)100質量部と、イソシアナート系架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトルエンジイソシアナート、固形分37.5質量%)1質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン30質量部とを混合して、粘着性組成物の塗工液を調製した。
【0091】
(2)原反の作製
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの一方の主面上に厚さ0.1μmのシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製SP−PET382150、幅長1000mm)を重剥離シートとして用意した。また、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの一方の主面上に厚さ0.1μmのシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製SP−PET382120、幅長1000mm)を軽剥離シートとして用意した。
上記の重剥離シートにおける剥離剤層側の主面上に上記の粘着性組成物の塗工液をロールナイフコーターにて粘着剤幅が980mmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥して、厚さ25μmの基材レス粘着剤層を得た。この基材レス粘着剤層と重剥離シートとからなる積層体の基材レス粘着剤層側の主面に上記の軽剥離シートにおける剥離剤層側の主面を貼合して、重剥離シート、基材レス粘着剤層および軽剥離シートがこの順に配置されてなる積層体を得た。
この積層体の幅方向両端部をトリミングしてその幅長を860mmとし、さらにこのトリミング後の積層体を長尺方向に4分割されるように切断して、幅長215mmの第二の原反を4本作製した。このトリミングによって、第二の原反の幅方向の端面は、両面ともに、重剥離シートの断面、基材レス粘着剤層の断面および軽剥離シートの断面により構成されるものとなった。
【0092】
(3)後加工
こうして得られた4本の第二の原反のそれぞれに対して、その重剥離シート側の主面から押し刃を用いて長尺方向にハーフカットを行い、第二の原反を、いずれも軽剥離シート上に形成された、剥離シートと基材レス粘着剤層とからなる幅長205mmの積層体(以下、「中央側積層体」という。)およびこの積層体の第二の原反の幅方向各外側に位置する剥離シートと基材レス粘着剤層とからなる二つの積層体(以下、「端部側積層体」という。)と、軽剥離シートとに分離した。
ハーフカットにより分離された二つの端部側積層体を第二の原反から剥離除去し、残部として得られた、中央側積層体(幅長205mm)と剥離シートとの積層体からなる基材レス両面テープ(糊なし領域の幅はいずれも5mm)を巻き取って、粘着ロールを得た。なお、巻取り時のテンションは10N、長尺方向の長さは300mであった(以下同じ)。
【0093】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして、塗工液ならびに重剥離シートおよび軽剥離シートを用意した。
上記の重剥離シートにおける剥離剤層側の主面上に上記の粘着性組成物の塗工液をロールナイフコーターにて粘着剤幅205mmの塗液層を4つ、それぞれの間隔が10mmとなるように長尺方向に塗布した。この塗液層を90℃で1分間乾燥して、厚さ25μmの4つの基材レス粘着剤層を得た。
この4つの基材レス粘着剤層が互いに離間して重剥離シート上に形成されてなる積層体における基材レス粘着剤層側の主面に、上記の軽剥離シートにおける剥離剤層側の主面を貼合して、重剥離シート、基材レス粘着剤層および軽剥離シートがこの順に積層されてなる原反を、第一の原反として得た。
この第一の原反の重剥離シートにおける剥離剤層側の主面および軽剥離シートにおける剥離剤層側の主面が露出している(換言すれば、基材レス粘着剤層が貼付されていない)部分を切断部として、第一の原反を長尺方向に裁断し、幅長が215mmの重剥離シート、幅長205mmの基材レス粘着剤層および幅長が215mmの軽剥離シートがこの順に積層され、軽剥離シートの幅方向両端部近傍には糊なし領域(幅方向の長さがいずれも5mm)を有する基材レス両面テープを4本得た。得られた基材レス両面テープのそれぞれを巻き取って4本の粘着ロールを得た。
【0094】
〔実施例3〕
実施例1の方法で得た第二の原反(幅215mm)を第三の原反とし、この第三の原反における軽剥離シートを剥離して、一方の主面が露出する基材レス粘着剤層と重剥離シートとからなる積層体を得た。この積層体の幅方向両端部をトリミングして、幅長が205mmの積層体とした。このトリミング後の積層体に、第三の原反から剥離した前述の軽剥離シートの剥離剤層側の主面を、幅長が205mmの積層体における露出した基材レス粘着剤層の一方の主面に貼付し両端部にそれぞれ幅長5mmの糊なし領域を有する基材レス両面テープを得た。得られた基材レス両面テープを巻き取って粘着ロールを得た。
【0095】
〔比較例1〕
実施例1において作成した第二の原反をそのまま基材レス両面テープとし、これを巻き取ってロールを得た。
【0096】
〔比較例2〕
実施例1において作成した第二の原反に対する後加工において、ハーフカットを軽剥離シート側から行った。このハーフカットでは軽剥離シートおよび基材レス粘着剤層を切断した。
ハーフカットされた原反から、分離された幅方向両端部側の軽剥離シートを剥離除去して、ハーフカットされた原反の幅方向両端部に基材レス粘着剤層の一方の主面を露出させた。この露出した基材レス粘着剤層の一方の主面の一部のそれぞれに、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼付した。これらのPETフィルムをハーフカットされた原反から引き剥がした。この引き剥がしによって、ハーフカットにより切断分離された幅方向両端部における基材レス粘着剤層はPETフィルム側に移行した。こうして、ハーフカットされた原反の残部として、重剥離シートの幅方向両端部近傍には糊なし領域(幅長がいずれも5mm)を有する基材レス両面テープを得た。この基材レス両面テープを巻き取って粘着ロールを得た。
【0097】
〔比較例3〕
軽剥離シートに代えて重剥離シートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で原反を得て、これをそのまま基材レス両面テープとした。この基材レス両面テープは重剥離シート、基材レス粘着剤層、重剥離シートがこの順番で積層されてなるものであった。この基材レス両面テープを巻き取って粘着ロールを得た。
【0098】
〔試験例1〕
(1)軽剥離力の測定
実施例1と同様の製造方法により、幅長50mmの軽剥離力測定用積層体を作製した。すなわち、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの一方の主面上に厚さ0.1μmのシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製SP−PET382150)を重剥離シートとして用意した。また、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの一方の主面上に厚さ0.1μmのシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製SP−PET382120)を軽剥離シートとして用意した。上記の重剥離シートにおける剥離剤層側の主面上に、実施例1において調製した塗工液をロールナイフコーターにて塗布し、90℃で1分間乾燥して、厚さ25μmの基材レス粘着剤層を得た。この基材レス粘着剤層と重剥離シートとからなる積層体の基材レス粘着剤層側の主面に、上記の軽剥離シートにおける剥離剤層側の主面を貼合して、重剥離シート、基材レス粘着剤層および軽剥離シートがこの順に配置されてなる積層体を得た。この積層体を裁断することによって、幅長50mmの軽剥離力測定用積層体を得た。
この軽剥離力測定用積層体を用いて、軽剥離シートの剥離力(軽剥離力)を測定した。すなわち、JIS Z0237に準拠して、23℃、相対湿度50%の条件下において、軽剥離力測定用積層体における測定面側の剥離シートである軽剥離シートを折り曲げた180°引きはがし法を実施して、軽剥離力(単位:mN/50mm)を測定した。その結果得られた軽剥離力は73mN/50mmであった。
【0099】
(2)重剥離力の測定
上記の方法により軽剥離力測定用積層体を別途作製した。その積層体の軽剥離シートを剥離して、基材レス粘着剤層の一方の面を表出させた。この表出した面に、厚さ25μmのポリエステルフィルム(東洋紡社製PET25A4100)の一方の面を貼付して、重剥離シート、基材レス粘着剤層および上記のポリエステルフィルムがこの順に配置されてなる積層体を作製し、これを重剥離力測定用積層体とした。この重剥離力測定用積層体を用いて、重剥離シートの剥離力(重剥離力)を測定した。すなわち、JIS Z0237に準拠して、23℃、相対湿度50%の条件下において、重剥離力測定用積層体における測定面側の剥離シートである重剥離シートを折り曲げた180°引きはがし法を実施して、重剥離力(単位:mN/50mm)を測定した。その結果得られた重剥離力は160mN/50mmであった。
【0100】
〔試験例2〕
実施例および比較例により得たロールのそれぞれについて、一部繰り出して、軽剥離シートを剥離した。このとき、ナキワカレが発生したか否かを観察した。ナキワカレが発生した場合には、ナキワカレの種別(端部、スポット、これらの双方)についても確認した。
結果を表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1から明らかなように、本発明の要件を満たす、実施例で得られた基材レス両面テープにはナキワカレが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の基材レス両面テープは、光学素子の貼合用部材などの用途に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…基材レス両面粘着テープ
1…軽剥離シート
1a…軽剥離支持体
1b…軽剥離剤層
1c…軽剥離剤層側主面
1d,1e…糊なし領域
2…基材レス粘着剤層
3…重剥離シート
3a…重剥離支持体
3b…重剥離剤層
1f…軽剥離シートの幅方向端面
2A…基材レス粘着剤層の幅方向の端面
2B…はみだした粘着剤
20…第一の原反
1g,1g’,1g”,1h,1h’,1h”…糊なし領域
2’,2”…基材レス粘着剤層(端部側基材レス粘着剤層、内部側基材レス粘着剤層)
2a,2a’,2a”…基材レス粘着剤層(端部側基材レス粘着剤層、内部側基材レス粘着剤層)における一方の主面
2b,2b’,2b”…基材レス粘着剤層(端部側基材レス粘着剤層、内部側基材レス粘着剤層)における他方の主面
3c…重剥離剤層側主面
10’,10”…基材レス両面粘着テープ
21,21’,21”…第一の原反を切断して得られる長尺の切断片(基材レス両面粘着テープ)
30…第二の原反
30a,30b…第二の原反の幅方向端面
30c,30d…第二の原反の幅方向両端部近傍
30e,30f…第二の原反におけるハーフカットの刃が入る部分
31…第一の積層シート
31a,31b,31c…第一の積層シートが重剥離シート側からハーフカットされてなる積層シート
40…第三の原反
4…工程用剥離シート
41…一方の主面が露出した基材レス粘着剤層と重剥離シートとからなる積層体
50…基材レス両面粘着テープ
51…軽剥離シート
52…基材レス粘着剤層
52a…粘着性組成物
52b…スポット状の残留粘着剤
53…重剥離シート
60…基材レス両面粘着テープ
61…軽剥離シート
61a…軽剥離シートの幅方向端面
62…基材レス粘着剤層
62a…はみ出した粘着性組成物
62b…はみ出した粘着性組成物62aのうち軽剥離シート61側に濡れ広がった粘着性組成物
62c…はみ出した粘着性組成物62aのうち重剥離シート63側に濡れ広がった粘着性組成物
62d…基材レス粘着剤層62の幅方向端部に位置する粘着性組成物の一部
62e…端部の残留粘着剤
63…重剥離シート
63a…重剥離シート63の幅方向端面
64…軽剥離シート61の幅方向端面61aと濡れ広がった粘着性組成物62bとの界面
65…重剥離シート63の幅方向端面63aと濡れ広がった粘着性組成物62cとの界面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10