特許第5912773号(P5912773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5912773-連続式アンローダ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912773
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】連続式アンローダ
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20160414BHJP
   B65G 65/20 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B65G67/60 D
   B65G67/60 G
   B65G65/20
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-81002(P2012-81002)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209195(P2013-209195A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 英男
(72)【発明者】
【氏名】黒川 久
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−253548(JP,A)
【文献】 特開2005−315872(JP,A)
【文献】 特開2010−206689(JP,A)
【文献】 特開2010−271193(JP,A)
【文献】 特開2007−230734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/00−65/28
B65G 67/60−69/34
G01V 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
俯仰自在なブームと、そのブームの先端に設けられ、下端に掻取部を有し、前記掻取部を昇降させる垂直部を有すると共にその掻取部と垂直部にかけて巻き掛けられたバケットチェーンとを有するバケットコンベアとを備え、船倉内のバラ物を前記掻取部で掻き取るようにした連続式アンローダであって、
緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部と、
津波警報を受信する津波警報受信部と、
前記緊急地震速報受信部で緊急地震速報を受信した場合や前記津波警報受信部から津波の発生の虞が報知された場合に、オペレータに対して、緊急避難を呼びかけるオペレータ安全退避警報部と、
前記緊急地震速報受信部で緊急地震速報を受信した場合や、前記津波警報受信部から津波の発生の虞が報知された場合に、連続式アンローダの運転を自動で行うプログラムを保持した自動退避運転部を具備したことを特徴とする連続式アンローダ。
【請求項2】
前記緊急地震速報受信部は、緊急地震速報を受信すると、推定震度と到達予測時間を音声で知らせすると共に、ランプが点滅することを特徴とする請求項1記載の連続式アンローダ。
【請求項3】
前記津波警報受信は、津波発生の虞をラジオ音声でながすとともにライトが点滅することを特徴とする請求項1記載の連続式アンローダ。
【請求項4】
前記オペレータ安全退避警報部は、ラウドスピーカであることを特徴とする請求項1に記載の連続式アンローダ。
【請求項5】
前記津波警報受信の際、オペレータ室に備えられたモニター上に津波発生の虞メッセージを出力することを特徴とする請求項4に記載の連続式アンローダ。
【請求項6】
前記緊急地震速報を受信した際の前記自動退避運転部による運転指令と、前記津波警報を受信した際の前記自動退避運転部による運転指令とは異なる指令とすることを特徴とする請求項1に記載の連続式アンローダ。
【請求項7】
前記緊急地震速報を受信した際の前記自動退避運転部による運転指令は、許容可能最大出力で前記掻取部を船倉外へ退避させることを特徴とする請求項6記載の連続式アンローダ。
【請求項8】
前記津波警報を受信した際の前記自動退避運転部による運転指令は、津波を受けても安全な位置まで前記ブームを通常速度で退避させることを特徴とする請求項6記載の連続式アンローダ。
【請求項9】
前記津波警報受信部は津波警報の警報レベルまで受信できるものであり、設定する所定警報レベルを超えた津波警報を受信した場合、前記自動退避運転部による運転へ切換えることを特徴とする請求項6に記載の連続式アンローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、鉄鉱石、穀物などのバラ物を船倉内から連続で掻取る連続式アンローダであって、地震の揺れや津波による損壊等を抑制することのできる連続式アンローダに関する。
【背景技術】
【0002】
連続式アンローダは船倉内に荷積みされたバラ物を荷揚げする場合、バケットコンベアを回転させ、そのバケットコンベアの下端に形成されている掻取部をバラ物上に這わせてバラ物を掻き取るようになっている。
【0003】
波により船の上下動が発生することもあるが、通常の掻取り運転時にはバラ物の掻取深さが変動するだけで掻取部に大きな衝撃力が加わることはほとんどない。
【0004】
また、船底に残ったバラ物を底ざらいするときには、クッションとなるバラ物が少ないため、波などによる船の上下動を掻取部に吸収させながら掻き取っている。
【0005】
突発的な大波などについては船底が異常に突き上げられ、掻取部でも吸収することが出来ない。そこで、例えば、掻取部にて船底の突き上げを検出し、ブームを上方に回動させる退避手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−253548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、地震で連続式アンローダが揺れる場合や地震に伴う津波で船底の突き上げを検出してからの退避では間に合わず、掻取部の損傷や船底を損傷させていた。また、緊急地震速報や津波警報が発生してもオペレータに知らせる手段が無いため、逃げ遅れる危険性があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地震の揺れや津波による損壊を防げる連続式アンローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、俯仰自在なブームと、そのブームの先端に設けられ、下端に掻取部を有し、前記掻取部を昇降させる垂直部を有すると共にその掻取部と垂直部にかけて巻き掛けられたバケットチェーンとを有するバケットコンベアとを備え、船倉内のバラ物を前記掻取部で掻き取るようにした連続式アンローダであって、緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部と、津波警報を受信する津波警報受信部と、前記緊急地震速報受信部で緊急地震速報を受信した場合や前記津波警報受信部から津波の発生の虞が報知された場合に、オペレータに対して、緊急避難を呼びかけるオペレータ安全退避警報部と、前記緊急地震速報受信部で緊急地震速報を受信した場合や、前記津波警報受信部から津波の発生の虞が報知された場合に、連続式アンローダの運転を自動で行うプログラムを保持した自動退避運転部を具備したことを特徴とする連続式アンローダが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地震の揺れや津波による連続式アンローダの損壊を防げるようになる。更にオペレータに緊急地震速報と津波警報をアナウンスすることにより、オペレータを安全に退避させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態において、連続式アンローダを側面から見た連続式アンローダと船倉を示した図である。
図2】地震・津波被害抑制装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】地震・津波被害抑制装置による制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、岸壁5に設置された連続式アンローダ100と船倉14の側面図である。
【0014】
連続式アンローダ100は、埠頭などの岸壁5に走行自在に設けられた走行部7と、走行部7に俯仰自在かつ旋回自在に設けられたブーム1と、ブーム1の先端に設けられたバケットコンベア2とから成る。
ブーム1は、走行部7の頂部8の頂端に連結される上部ブーム9と、上部ブーム9から下方に離間して走行部7の頂部8に連結される下部ブーム10とから構成されている。
上部ブーム9と下部ブーム10は、それぞれ平行となるように先端をバケットコンベア支持フレーム11に連結されており、走行部7の頂部8を固定リンクとする平行リンクを形成している。
また、走行部7の頂部8と上部ブーム9は、中間を俯仰用油圧シリンダ12で連結されており、俯仰用油圧シリンダ12を伸縮させることでブーム1を俯仰させるようになっている。
上部ブーム9は、走行部7の頂部8から後方へも延出されており、後端にはバケットコンベア2とバランスするカウンターウェイト6が設けられている。これにより、ブーム1は小さな力で迅速に俯仰するようになっている。
バケットコンベア2は、垂直部2aと掻取部3とバケットチェーン13とを備える。垂直部2aは、バケットコンベア支持フレーム11を上下方向に貫通してバケットコンベア支持フレーム9に旋回自在に支持される旋回マストである。掻取部3は、垂直部2aの下方に形成され伸縮自在となっている。バケットチェーン13は、掻取部3と垂直部2aにかけて巻き掛けられている。
【0015】
バケットチェーン13等を駆動するために図示しないバケットチェーン用駆動装置が取り付けられている。バケットチェーン用駆動装置は、例えば油圧モータにより駆動され、油圧モータ駆動用の油圧力を制御することにより、バケットチェーン13に働く張力を制御している。また、
バケットコンベア2は、バケットコンベア支持フレーム11から垂下されており、掻取部3をその伸縮に応じて昇降させるように支持する。
連続式アンローダ100全体の運転を制御するために、運転用主幹装置20、図示しない主駆動装置が配設されている。運転用主幹装置20は、オペレータがオペレータ室16から操作が出来る様に構成され、主駆動装置に対して指令を与え連続式アンローダを運転する。
【0016】
本実施形態に係る連続式アンローダ100は、後述する地震・津波被害抑制装置30を備えている。
【0017】
このように構成された連続式アンローダ100は、岸壁5に横付けされた船の船倉14内にある石炭、鉄鉱石、穀物などのバラ物15をブーム1先端の掻取部3を連続で回転させバラ物15を掻取るようにし、バケットコンベア2内を経由し、ベルトコンベア4までバラ物15を運ぶ機構となっている。
【0018】
図2は、地震・津波被害抑制装置30の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
地震・津波被害抑制装置30は、緊急地震速報受信部31と、津波警報受信部32と、オペレータ安全退避警報部33と、自動退避運転部34を備えている。地震・津波被害抑制装置30は、連続式アンローダ100の運転用主幹装置20と接続している。
【0020】
緊急地震速報受信部31は、緊急地震速報を受信する専用の受信端末である。緊急地震速報は、地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた地震波を解析する。すなわち、地震波の来た方向、震源までの距離、地震の規模を解析し、震源の位置及びマグニチュードを直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予測し、可能な限り素早く知らせる地震動の予報及び警報である。緊急地震速報は、テレビ、ラジオ、防災行政無線、携帯電話等で入手できるが、本実施形態に係る地震・津波被害抑制装置30では、専用の受信端末として用意する。例えば、地震発生時に気象庁が配信する緊急地震速報を受信すると、推定震度と到達予測時間を音声で知らせすると共に、ランプが点滅する。
【0021】
津波警報受信部32は、津波の発生の虞を知らせるもので、例えば、ARIB標準規格BTA R−001に準拠した緊急警報放送によるFSK(周波数シフトキーイング)信号を検出した場合に、ラジオ音声とライトの点滅で知らせるものである。
【0022】
オペレータ安全退避警報部33は、緊急地震速報受信部31で緊急地震速報を受信した場合や津波警報受信部32から津波の発生の虞が報知された場合に、連続式アンローダ100のオペレータに対して、緊急避難を呼びかけるものである。例えば、ラウドスピーカが好適である。また、オペレータ室16に備えられたモニター(図示しない)上にメッセージを出力させてもよい。
【0023】
自動退避運転部34は、緊急地震速報受信部31で緊急地震速報を受信した場合や津波警報受信部32から津波の発生の虞が報知された場合に、自動退避運転に自動で切換え、連続式アンローダ100の運転を自動で行うものである。通常は、オペレータの操作により、運転用主幹部20に対してオペレータからの操作指令を与えている。オペレータからの操作指令は、主駆動装置に送られる。
【0024】
しかし、災害時には、自動退避運転部34は、事前にプログラムしておいた自動退避運転パターンを実行させ、掻取部3を船倉14から自動退避させ、連続式アンローダ100を安全な位置に収納させる。ここでは、少なくとも、掻取部3が船倉14内にないような位置まで退避させる。
【0025】
緊急地震速報受信部31により緊急地震速報を受信した際に自動退避運転部34が運転用主幹部20へ出力する運転指令と、津波警報受信部32により津波警報を受信した際に自動退避運転部34が運転用主幹部20へ出力する運転指令は異なる指令とする。緊急地震速報を受信した場合には、極めて短時間で地震の発生が予想されるのに対し、津波警報を受信した場合には、津波の到来まで若干の猶予時間が予想されるからである。
【0026】
図3は、地震・津波被害抑制装置30による制御の流れを示すフローチャートである。 連続式アンローダ100は、通常はオペレータ室16にいるオペレータによって手動操作されている。
【0027】
地震・津波被害抑制装置30において、緊急地震速報受信部31は、常時、緊急地震速報の受信を監視している(ステップS31)。緊急地震速報受信部31が緊急地震速報を受信すると(ステップS31でYes)、自動退避運転部34は掻取部3が船倉14内か判断を行う(ステップS32)。掻取部3が船倉14内であれば(ステップS32でYes)、掻取部3は連続式アンローダ100が受ける地震の揺れにより船倉14と衝突する可能性があるため、自動退避運転部34はオペレータ操作から自動退避へ切替え、緊急でブーム1を最大出力で上方へ回動させる指令を出力する(ステップS33)。この指令時間は緊急地震速報を受けてから地震が起きるまでの極めて短時間であり、出力指令も機械の許容値を超えるものでも良い。例えば、極めて短時間の間だけ、駆動モータを許容可能最大出力とする。退避させることが出来ればよく、地震による被害を軽減することができるからである。
【0028】
ブーム1を上方へ一時的に回動させ、地震が発生後、津波警報が発令される場合もある。そこで、津波警報受信部32により津波警報の受信の有無を判定する(ステップS34)。
【0029】
津波警報がなければ(ステップS34でNo)、通常のオペレータ操作へ復帰する。
【0030】
一方、津波警報受信部32により津波警報を受信した際には(ステップS34でYes)、再度オペレータ操作から自動退避運転へ切替え、自動退避運転部34は津波を受けても安全な位置までブーム1を通常速度で退避させる運転指令を出力する(ステップS35)。
【0031】
尚、ステップS31で緊急地震速報受信部31が緊急地震速報を受信しない場合(ステップS31でNo)にも、ステップS34に移行させる。また、ステップS32で掻取部3が船倉14内にない場合(ステップS32でNo)にも、ステップS34に移行させる。
【0032】
津波警報受信部32が、津波警報の警報レベルまで受信できるものであれば閾値を設定し、所定警報レベルを超えた津波警報を受信した時のみ、自動退避運転部34による運転へ切換えるようにしても良い。
【0033】
本実施形態によれば、地震の揺れや津波による連続式アンローダの損壊を防げるようになる。更にオペレータに緊急地震速報と津波警報をアナウンスすることにより、オペレータを安全退避させることが可能となる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
100・・・連続式アンローダ
1・・・ブーム
2・・・バケットコンベア
3・・・掻取部
4・・・ベルトコンベア
5・・・岸壁
6・・・カウンターウェイト
7・・・走行部
8・・・頂部
9・・・上部ブーム
10・・・下部ブーム
11・・・ベルトコンベア支持フレーム
12・・・俯仰用油圧シリンダ
13・・・バケットチェーン
14・・・船倉
15・・・バラ物
16・・・オペレータ室
20・・・運転用主幹装置
30・・・地震・津波被害抑制装置
31・・・緊急地震速報受信部
32・・・津波警報受信部
33・・・オペレータ安全退避警報部
34・・・自動退避運転部
図1
図2
図3