特許第5912776号(P5912776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912776
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20160414BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F24F5/00 Z
   G06F1/20 C
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-82099(P2012-82099)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-210171(P2013-210171A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】小瀬木 健
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/075050(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/073668(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0082263(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0128699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 7/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内をコールドアイルおよびホットアイルに区画するラック架列を構成するラックに収納される冷却対象物を冷却する室内空調機が設けられた空調システムであって、
前記室内空調機には、前記室内の空気を吸入する吸入部と、吸入された空気を冷却した後に前記室内に供給する吹出し部と、前記吸入部および前記吹出し部が設けられた筺体と、が備えられ、
前記筺体は、前記コールドアイルの横幅以上の横幅を有し、前記コールドアイルを長手方向に分割するように配置され、
前記吹出し部は、分割された前記コールドアイルの一方に面した前記筺体の領域、および、分割された前記コールドアイルの他方に面した前記筺体の領域の少なくとも一方に設けられ、前記コールドアイルの長手方向に向かって冷却空気を送風することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記吸入部は、前記ホットアイル内の空気を吸入することを特徴とする請求項1記載の空調システム。
【請求項3】
前記筺体は、前記ラック架列の長手方向と交差する方向に延びて形成され、
前記筺体における前記交差する方向の端部は、前記ラック架列を貫通して前記ホットアイルに面して配置され、
前記吸入部は、前記ホットアイルに面する前記端部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の空調システム。
【請求項4】
前記吸入部には、前記ホットアイル内の空気を前記吸入部に導く流路が設けられていることを特徴とする請求項2記載の空調システム。
【請求項5】
前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われ、
前記吸入部は、前記コールド側蓋部を跨いで空気を吸入することを特徴する請求項1記載の空調システム。
【請求項6】
前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われ、
前記筺体は前記コールド側蓋部よりも上方へ突出して配置され、
前記吸入部は、前記筺体における前記コールド側蓋部よりも上側の部分に設けられていることを特徴とする請求項5記載の空調システム。
【請求項7】
前記吸入部には、前記コールド側蓋部を跨いで空気を前記吸入部に導く流路が設けられていることを特徴する請求項5記載の空調システム。
【請求項8】
前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項9】
前記室内空調機には、吸入した空気を冷却することなく室内に供給する送風部が更に設けられ、
前記送風部は、前記筺体における前記コールドアイルに面した領域に設けられ、供給した空気によって前記コールドアイルの上部に長手方向に沿って空気が流れるエアカーテンを形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項10】
前記吹出し部は、供給した空気によって前記コールドアイルの上部に長手方向に沿って
空気が流れるエアカーテンを形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項11】
前記吹出し部は、前記筺体における前記コールドアイルに面した領域の床面近傍に設けられ、冷却空気を前記床面に沿って送風することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項12】
前記ホットアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたホット側蓋部によって囲われていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項13】
前記ラック架列が設置された床面の下に形成された床下空間を介して前記コールドアイルに冷却空気を供給するアンビエント空調機が更に設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項14】
前記室内空調機の吹出し部から冷却空気の少なくとも一部が前記床下空間にも供給されることを特徴とする請求項13に記載の空調システム。
【請求項15】
室内をコールドアイルおよびホットアイルに区画するラック架列を構成するラックに収納される冷却対象物を冷却する室内空調機が設けられた空調システムであって、
前記室内空調機には、前記室内の空気を吸入する吸入部と、吸入された空気を冷却した後に前記室内に供給する吹出し部と、前記吸入部および前記吹出し部が設けられた筺体と、が備えられ、
前記筺体は、前記ホットアイルを長手方向に分割するように配置されるとともに、前記ラック架列の長手方向と交差する方向に延びて形成され、
前記筺体における前記交差する方向の端部は、前記ラック架列を貫通して前記コールドアイルに面して配置され、
前記吸入部は、分割された前記ホットアイルの一方に面した前記筺体の領域、および、分割された前記ホットアイルの他方に面した前記筺体の領域の少なくとも一方に設けられ、前記ホットアイルの長手方向に沿って前記室内の空気を吸入し、
前記吹出し部は、前記コールドアイルに面する前記端部に設けられていることを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば情報通信装置などの発熱する装置を収納するデータセンタ等の機械室に適用して好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデータセンタではICT(情報通信技術)装置を収容する機械室内に、ICT装置を集中的に収容する規格化された複数のラックからなるラック架列が列をなして配置されている。ラックが配置される床面の下には、ICT装置に接続される配線やICT装置の冷却に用いられる冷却空気が流れる床下空間が設けられている(例えば、特許文献1から3参照)。
【0003】
上述のICT装置には、内部に収納された電子部品等を冷却するファンが搭載されている。ファンは回転駆動されることによりICT装置の外部から冷却空気を吸気面側から内部に吸気する。吸気された冷却空気は電子部品等の熱を奪い、その後、奪った熱とともにICT装置の排気面側から外部へ排気される。吸気面および排気面はICT装置における両端の面であり、冷却空気はICT装置の内部を通り抜けることにより電子部品等の冷却を行っている。
【0004】
上述の列をなして配列された複数のラック架列は、隣接するラック架列に収容されたICT装置における吸気面または排気面が互いに対向するように配置されている。一対のラック架列に挟まれた通路のうち、床下空間から冷却空気が供給されるとともにICT装置の吸気面に挟まれた通路はコールドアイルと呼ばれ、ICT装置の排気面に挟まれた通路はホットアイルと呼ばれている。コールドアイルおよびホットアイルの一方には、吸気面に吸入される冷却空気と、排気面から排出された暖かい排出空気との混合を防止する目的で一方のアイルを囲う技術(コールドアイルキャッピング、ホットアイルキャッピングと呼ばれる。)が知られている。
【0005】
上述の冷却空気を供給する空調機は、一般的に、その筺体の上面または上部に設けられた吸入部から機械室内の空気(つまりICT装置から排気された暖気)を吸い込んでいる。この吸い込まれた暖気は空調機内で冷却されて冷却空気となり、筺体における床面よりも下側に設けられた吹出し部から床下空間に供給されている。
【0006】
上述のようにデータセンタに用いられる空調機としては、アンビエント空調機とラック型のタスク空調機とが知られている。アンビエント空調機は、ラック架列から離れた機械室の壁近傍に設置されるものであり、床下空間を介してコールドアイルに冷却空気を供給する空調機である。ラック型タスク空調機は、ラックとともにラック架列を形成するものであり、コールドアイルを挟んで隣接する他のラック架列に向かって冷却空気を吹き出す空調機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−185544号公報
【特許文献2】特開2011−133129号公報
【特許文献3】特開2011−059741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のアンビエント空調機およびタスク空調機には異なる長所と短所とが存在している。アンビエント空調機の長所としては次のものが知られている。つまり、その設置場所がラック架列から離れた機械室の壁近傍であるため、ラック型タスク空調機と比較して筺体の寸法や形状の制約や緩やかであり冷房容量の大容量化を図りやすい。同様に、設置場所が振動等に対して脆弱なICT装置を収納するラック架列から離れているため、アンビエント空調機の室内部分に対して冷媒等の配管や電力等の配線を施す作業が行いやすい。
【0009】
その一方で短所としては次のものが知られている。つまり、コールドアイルに冷却空気を送る経路として床下空間を利用しているため、コールドアイルに冷却空気を直接に供給する場合と比較して冷却空気の流動抵抗が高いことから冷却空気を大風量かつ高静圧で送り出す必要があった。そのため、冷却空気を送り出すために多くの送風動力を用いる必要があるという問題があった。
【0010】
また近年では、ICT装置が大容量化するに伴って電源ケーブルなどの配線が増加しているため、床下空間における冷却空気が流れる空間が増加した配線によって閉塞してしまう事象が多くみられる。その結果、床下空間からコールドアイルへの冷却空気の供給に偏りが生じやすくなり、冷却空気の供給が不足する局所的な高温領域が発生するおそれがあった。
【0011】
さらにアンビエント空調機の配置位置を機械室の壁近傍としているため、壁近傍の配置可能なスペースの全てにアンビエント空調機を配置した後は、新たなアンビエント空調機を追加配置することが難しい。言い換えると、機械室の広さおよびアンビエント空調機の能力に基づく冷却能力の上限を超えた熱負荷に対処することが難しいという問題があった。特に近年では、ICT装置の発熱量が増大しているため、アンビエント空調機に求められる冷却性能も増大しており、対処が困難になるという上述の問題が顕在化しつつある。
【0012】
その他に、冷却空気が流れる空間とICT装置の配線を収納する空間という二つの役割を果たすために所定の高さを有する床下空間を確保する必要があることから、機械室の階高も大きくする必要があるという問題があった。特に大きさに制限を受けやすい都市部の建物にデータセンタを設ける場合には、建物の設けられる階数に影響を与えるため階高の大きさは重要な問題となっている。
【0013】
タスク空調機の長所としては次のものが知られている。つまり、その設置場所がラック架列におけるラックとラックの間であり、冷却空気を隣接するコールドアイルへ直接に供給するため、床下空間を介して冷却空気を供給するアンビエント空調機と比較して送風動力を小さくすることができる。
【0014】
その一方で短所としては次のものが知られている。つまり、その設置場所がラック架列中のラックとラックの間であるため、ラックと同様な寸法および形状の筺体に空調機が収納される必要があり、冷房容量の大容量化が図りにくいという問題があった。
【0015】
また設置位置がラックとラックの間であるため、冷媒配管や配線は床下空間を介してタスク空調機につなげられる。言い換えると、冷媒配管や配線を施工する際に、振動等に対して脆弱なICT装置の床下空間で作業する必要があり、工事が容易でないという問題があった。
【0016】
さらにタスク空調機は、コールドアイルや隣接するラック架列の長手方向に対して交差する方向に冷却空気を送風するため、タスク空調機から供給された冷却空気の到達範囲がアンビエント空調機と比較して限定されるという問題があった。タスク空調機から供給された冷却空気はコールドアイルを横切り、隣接するラック架列に衝突した後に四方へ拡散
している。そのため、冷却空気はコールドアイルの長手方向に流れにくく、タスク空調機の近傍に滞留しやすい、言い換えると冷却空気の到達範囲に限界があるという問題があった。
【0017】
その他にデータセンタにおけるICT装置の設置計画と整合しないことにより、冷却空気を多く必要とするICT装置の近くにタスク空調機を設置することが難しいという問題があった。一般的なデータセンタでは、ラック架列におけるタスク空調機の配置位置が先に決まり、その後、ラック単位またはラックの部分単位でのレンタルが行われてレンタル契約者のICT装置がラックに設置される。そのため、タスク空調機の近傍に発熱量が大きなICT装置を設置することが難しいという問題があった。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ICT装置などの対象物を冷却する空調システムにおける冷却能力や、冷却効率を確保しやすくするとともに、空調システムの設置容易性を確保することができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の空調システムは、室内をコールドアイルおよびホットアイルに区画するラック架列を構成するラックに収納される冷却対象物を冷却する室内空調機が設けられた空調システムであって、前記室内空調機には、前記室内の空気を吸入する吸入部と、吸入された空気を冷却した後に前記室内に供給する吹出し部と、前記吸入部および前記吹出し部が設けられた筺体と、が備えられ、前記筺体は、前記コールドアイルを長手方向に分割するように配置され、前記吹出し部は、分割された前記コールドアイルの一方に面した前記筺体の領域、および、分割された前記コールドアイルの他方に面した前記筺体の領域の少なくとも一方に設けられ、前記コールドアイルの長手方向に向かって冷却空気を送風することを特徴とする。
【0020】
本発明の空調システムによれば、コールドアイルを長手方向に分割するように筺体を配置するとともに、分割されたコールドアイルのそれぞれに、筺体に設けられた吹出し部から冷却空気を長手方向に向かって送風することにより、空調システムの冷却能力や冷却効率を確保しやすくなり、空調システムの設置容易性を確保しやすくなる。
【0021】
つまり、筺体はコールドアイル上に、コールドアイルを分割するように配置されるため、ラックとともにラック架列を形成するラック型タスク空調機と比較して筺体の寸法や形状の制約が緩やかであり、室内空調機の冷房容量の大容量化を図りやすい。同様に、筺体の設置場所がコールドアイル上であるため、ラック架列の内部に配置される場合と比較して室内空調機に対して冷媒などの配管や電力等の配線を施す作業が行いやすい。さらに筺体はコールドアイル上に配置されるため、機械室の壁近傍に配置されるアンビエント空調機と比較して室内空調機の配置位置を確保しやすい。言い換えると、ラック架列に対する室内空調機の設置台数を増やしやすく、冷却信頼性の向上が図りやすい。その他に、アンビエント空調機やラック型タスク空調機が配置される位置と異なる位置に室内空調機の筺体を配置するため、アンビエント空調機やラック型空調機が既に配置された既存の設備に対して室内空調機を追加で設置しやすい。
【0022】
また、冷却空気を直接コールドアイルに供給するため、床下空間を介してコールドアイルに供給するアンビエント空調機と比較して冷却空気を送風する送風動力が小さくて済む。言い換えると、冷却に必要な動力を減らすことができるため、冷却効率の向上を図ることができる。さらに配線などによって空間が閉塞しやすい床下空間と比較して、空間が閉塞されにくいコールドアイルに直接冷却空気を供給するため、冷却空気がコールドアイル
における吹出し部から離れた端部にまで届きやすい。特に筺体によって分割されて長手方向の長さが短くなったコールドアイルに冷却空気を供給するため、コールドアイルの端部にまで冷却空気が届きやすくなる。言い換えると、冷却空気の供給不足による局所的な高温領域が発生しにくい。その他にも、床下空間を冷却空気の流路として用いないため、床下空間を大きく確保する必要がなくなることから、室内の階高が高くなることを抑制することができる。
【0023】
吹出し部から冷却空気が送り出される方向がコールドアイルの長手方向であるため、当該長手方向に対して交差する方向に冷却空気を送風するラック型タスク空調機と比較して冷却空気の到達範囲が広くなる。言い換えると1台の室内空調機で冷却可能な範囲が広いため冷却効率が高くなる。
【0024】
冷却空気の到達範囲が広くなるため、発熱量が大きな冷却対象物を筺体から離れた位置に配置しても冷却対象物を冷却することが可能となる。そのため、発熱量が大きな冷却対象物を筺体の近傍に配置する必要性が低下する。
【0025】
上記発明において前記吸入部は、前記ホットアイル内の空気を吸入することが好ましい。
このように吸入部からホットアイル内の空気を吸い込むことにより、例えばアンビエント空調機のようにホットアイルから離れた位置に配置されるとともに空調機の上面などから空気を吸い込む場合と比較して、ホットアイル内の空気を効率よく吸い込むことができる。
【0026】
さらにラック架列によってコールドアイル内の温度が低い空気と、ホットアイル内の温度が高い空気とが仕切られているため、温度が低い空気と温度が高い空気との混合が抑制される。そのため冷却対象物の冷却効率低下が抑制される。
【0027】
上記発明において前記筺体は、前記ラック架列の長手方向と交差する方向に延びて形成され、前記筺体における前記交差する方向の端部は、前記ラック架列を貫通して前記ホットアイルに面して配置され、前記吸入部は、前記ホットアイルに面する前記端部に設けられていることが好ましい。
【0028】
このようにラック架列を貫通してホットアイルに面するように配置された筺体の端部に設けられた吸入部から、ホットアイル内の空気を直接に吸い込むことにより、ホットアイル内の空気を効率よく吸い込むことができる。例えばアンビエント空調機のようにホットアイルから離れた位置に配置されるとともに空調機の上面などから空気を吸い込む場合と比較して、ホットアイルに面して配置された吸入部からホットアイル内の空気を吸い込むため吸込み効率が高くなる。
【0029】
上記発明において前記吸入部には、前記ホットアイル内の空気を前記吸入部に導く流路が設けられていることが好ましい。
このように流路を介してホットアイル内の空気を吸入部に導くことにより、例えばアンビエント空調機のようにホットアイルから離れた位置に配置されるとともに空調機の上面などから空気を吸い込む場合と比較して、ホットアイル内の空気を効率よく吸い込むことができる。
【0030】
上記発明において前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われ、前記吸入部は、前記コールド側蓋部を跨いで空気を吸入することが好ましい。
【0031】
このようにすることで、コールドアイルの上方に配置されたコールド側蓋部の更に上方に集まった温度の高い空気を吸い込むことができる。言い換えると、冷却対象物を冷却して温度が高くなった空気を吸い込むことができる。さらに、コールド側蓋部によって下側のコールドアイル内の温度が低い空気の空間と、上側の温度が高い空気の空間とを仕切っているため、温度が低い空気と温度の高い空気との混合が抑制されている。そのため冷却対象物の冷却効率低下が抑制される。
【0032】
上記発明において前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われ、前記筺体は前記コールド側蓋部を通じて突出して配置され、前記吸入部は、前記筺体における前記コールド側蓋部よりも上側の部分に設けられていることが好ましい。
【0033】
このようにコールドアイルの上方に配置されたコールド側蓋部の更に上方に吸入部を設けることにより、上方に集まった温度の高い空気を吸い込み易くなる。言い換えると、冷却対象物を冷却して温度が高くなった空気を吸い込み易くなる。
【0034】
上記発明において前記吸入部には、前記コールド側蓋部を跨いで空気を前記吸入部に導く流路が設けられていることが好ましい。
このようにコールド側蓋部の更に上側の空気を、流路を介して吸入部に導くことにより、上方に集まった温度の高い空気を吸い込み易くなる。言い換えると、冷却対象物を冷却して温度が高くなった空気を吸い込み易くなる。
【0035】
上記発明において前記コールドアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたコールド側蓋部によって囲われていることが好ましい。
このようにコールド側蓋部を設けることにより、コールドアイルとホットアイルとの間で空気が混合することを抑制でき、冷却対象物の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、コールドアイルは側方をラック架列、下方を床面、上方をコールド側蓋部によって囲まれるため、コールドアイル内の温度が低い空気はコールドアイルの外部へ流出しにくくなり、ホットアイル内の温度の高い空気と混合しにくくなる。そのため冷却対象物の冷却効率低下が抑制される。
【0036】
上記発明において前記室内空調機には、吸入した空気を冷却することなく室内に供給する送風部が更に設けられ、前記送風部は、前記筺体における前記コールドアイルに面した領域に設けられ、供給した空気によって前記コールドアイルの上部に長手方向に沿って空気が流れるエアカーテンを形成することが好ましい。
【0037】
このように送風部によってエアカーテンを形成することにより、コールドアイルとホットアイルとの間で空気が混合することを抑制でき、冷却対象物の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、コールドアイルは側方をラック架列、下方を床面、上方をエアカーテンによって囲まれるため、コールドアイル内の温度が低い空気はコールドアイルの外部へ流出しにくくなり、ホットアイル内の温度が高い空気と混合しにくくなる。そのため冷却対象物の冷却効率低下が抑制される。
【0038】
上記発明において前記吹出し部は、供給した空気によって前記コールドアイルの上部に長手方向に沿って空気が流れるエアカーテンを形成することが好ましい。
このように吹出し部によってエアカーテンを形成することにより、コールドアイルとホットアイルとの間で空気が混合することを抑制でき、冷却対象物の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、コールドアイルは側方をラック架列、下方を床面、上方をエアカーテンによって囲まれるため、コールドアイル内の温度の低い空気はコールドアイルの外部へ流出しにくくなり、ホットアイル内の温度の高い空気と混合しにくくなる。そのため冷却対
象物の冷却効率低下が抑制される。
【0039】
上記発明において前記吹出し部は、前記筺体における前記コールドアイルに面した領域の床面近傍に設けられ、冷却空気を前記床面に沿って送風することが好ましい。
このように床面近傍に設けられた吹出し部から床面に沿って冷却空気を送風することにより、冷却空気の到達範囲を広げやすくなる。つまり、床面の近傍から送り出された空気はコアンダ効果によって床面に沿って流れる。ここでは、コールドアイルの床面に沿って長手方向に向かって流れ、吹出し部から離れた位置まで冷却空気が拡散されることなく到達する。
【0040】
上記発明において前記ホットアイルの上方は、隣接する前記ラック架列に配置されたホット側蓋部によって囲われていることが好ましい。
このようにホット側蓋部を設けることにより、コールドアイルとホットアイルとの間で空気が混合することを抑制でき、冷却対象物の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、ホットアイルは側方をラック架列、下方を床面、上方をホット側蓋部によって囲まれるため、ホットアイル内の温度の高い空気はホットアイルの外部へ流出しにくくなり、コールドアイル内の温度の低い空気と混合しにくくなる。そのため冷却対象物の冷却効率低下が抑制される。
【0041】
上記発明においては、前記ラック架列が設置された床面の下に形成された床下空間を介して前記コールドアイルに冷却空気を供給するアンビエント空調機が更に設けられていることが好ましい。
【0042】
このようにアンビエント空調機を更に設けることにより、室内空調機のみが設けられている場合と比較して空調システムにおける冷房能力を更に増大させることができる。アンビエント空調機は、コールドアイルに冷却空気を供給する経路が室内空調機と異なり、かつ、配置される場所も室内空調機と異なるため、室内空調機およびアンビエント空調機を併用することができる。
【0043】
上記発明においては、前記室内空調機の吹出し部から冷却空気の少なくとも一部が前記床下空間にも供給されることが好ましい。
このようにすることで、アンビエント空調機から供給される冷却空気が、床下空間に配置されたケーブルなどによってラック架列の奥にまで届かない場合であっても、当該奥にまで冷却空気を供給することができる。つまり、ケーブル等によって床下空間が狭くなり、アンビエント空調機から供給された冷却空気がラック架列の奥にまで届かない場合でも、ラック架列の間に配置された室内空調機から冷却空気を床下空間に供給することにより、冷却空気がラック架列の奥にまで届きやすくなる。
【0044】
本発明の空調システムは、室内をコールドアイルおよびホットアイルに区画するラック架列を構成するラックに収納される冷却対象物を冷却する室内空調機が設けられた空調システムであって、前記室内空調機には、前記室内の空気を吸入する吸入部と、吸入された空気を冷却した後に前記室内に供給する吹出し部と、前記吸入部および前記吹出し部が設けられた筺体と、が備えられ、前記筺体は、前記ホットアイルを長手方向に分割するように配置されるとともに、前記ラック架列の長手方向と交差する方向に延びて形成され、前記筺体における前記交差する方向の端部は、前記ラック架列を貫通して前記コールドアイルに面して配置され、前記吸入部は、分割された前記ホットアイルの一方に面した前記筺体の領域、および、分割された前記ホットアイルの他方に面した前記筺体の領域の少なくとも一方に設けられ、前記ホットアイルの長手方向に沿って前記室内の空気を吸入し、前記吹出し部は、前記コールドアイルに面する前記端部に設けられていることを特徴とする。
【0045】
本発明の空調システムによれば、ホットアイルを長手方向に分割するように筺体を配置するとともに、分割されたホットアイルのそれぞれについて、筺体に設けられた吸入部から空気を長手方向に沿って吸い込むことにより、空調システムの冷却能力や冷却効率を確保しやすくなり、空調システムの設置容易性を確保しやすくなる。
【0046】
つまり、筺体はホットアイル上に、ホットアイルを分割するように配置されるため、ラックとともにラック架列を形成するラック型タスク空調機と比較して筺体の寸法や形状の制約が緩やかであり、室内空調機の冷房容量の大容量化を図りやすい。同様に、筺体の設置場所がホットアイル上であるため、ラック架列の内部に配置される場合と比較して室内空調機に対して冷媒などの配管や電力等の配線を施す作業が行いやすい。さらに筺体はホットアイル上に配置されるため、機械室の壁近傍に配置されるアンビエント空調機と比較して室内空調機の配置位置を確保しやすい。言い換えると、ラック架列に対する室内空調機の設置台数を増やしやすく、冷却信頼性の向上が図りやすい。その他に、アンビエント空調機やラック型タスク空調機が配置される位置と異なる位置に室内空調機の筺体を配置するため、アンビエント空調機やラック型空調機が既に配置された既存の設備に対して室内空調機を追加で設置しやすい。
【0047】
また、冷却空気を直接コールドアイルに供給するため、床下空間を介してコールドアイルに供給するアンビエント空調機と比較して冷却空気を送風する送風動力が小さくて済む。言い換えると、冷却に必要な動力を減らすことができるため、冷却効率の向上を図ることができる。その他にも、床下空間を冷却空気の流路として用いないため、床下空間を大きく確保する必要がなくなることから、室内の階高が高くなることを抑制することができる。
【0048】
吸入部に空気が吸い込まれる方向がホットアイルの長手方向であるため、当該長手方向に対して交差する方向に空気を吸い込むラック型タスク空調機と比較して、空気を吸い込む際の流動抵抗が小さくなる。言い換えると、ホットアイルの空気を吸い込みやすくなる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の空調システムによれば、コールドアイルを長手方向に分割するように筺体を配置するとともに、分割されたコールドアイルのそれぞれに、筺体に設けられた吹出し部から冷却空気を長手方向に向かって送風することにより、ICT装置などの対象物を冷却する空調システムにおける冷却能力や、冷却効率を確保しやすくするとともに、空調システムの設置容易性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の第1の実施形態に係る空調システムにおける概略構成を説明する模式図である。
図2図1の室内空調機における構成を説明する斜視図である。
図3図1の空調システムの別の実施例を説明する模式図である。
図4図1の空調システムの更に別の実施例を説明する模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る空調システムの構成を説明する模式図である。
図6図5の室内空調機の構成を説明する斜視図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る空調システムの概略構成を説明する模式図である。
図8図7の空調システムの別の実施例を説明する上面視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る空調システムにおける室内空調機の構成を説明する斜視図である。
図10】本発明の第4の実施形態の第1変形例に係る空調システムにおける室内空調機の構成を説明する斜視図である。
図11】本発明の第4の実施形態の第2変形例の空調システムにおける室内空調機の構成を説明する模式図である。
図12図11の室内空調機の別の実施例を説明する斜視図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る空調システムにおける概略構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る空調システム1ついて図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る空調システム1における概略構成を説明する模式図であり、図1(a)は上面視図、図1(b)はX−X断面視図である。なお、図1(a)では理解を容易にするために一部のラック11に収容されたICT装置20のみを図示している。
【0052】
本実施形態の空調システム1は、図1(a)に示すように、データセンタの機械室2の室内に収容されたICT装置(冷却対象物)20を冷却するものである。機械室2の室内には、ICT装置20を集中的に収容する企画された複数のラック11を一列に並べたラック架列10が列をなして配置されている。また機械室2は、図1(b)に示すように、床面3の下に床下空間4が形成された二重床構造を有している。床面3の上には上述の複数のラック架列10が設置され、床下空間4にはICT装置20に接続される通信や電源等の配線が配置されている。
【0053】
機械室2の室内は、図1に示すように、平行に並んで配置されたラック架列10によってコールドアイルCAと、ホットアイルHAとに区画されている。隣接するラック架列10は、ICT装置20の冷却用の空気取入れ口21が互いに向かい合うように、または、ICT装置20の冷却用の空気排出口22が互いに向かい合うように配置されている。ラック架列10によって区画される通路(アイル)のうち、ICT装置20の空気取入れ口21に面しているものがコールドアイルCAとなり、ICT装置20の空気排出口22に面しているものがホットアイルHAとなる。
【0054】
なお、全てのICT装置20の空気取入れ口21がコールドアイルCAに面し、空気排出口22がホットアイルHAに面していてもよいし、一部のICT装置20についてのみ、逆に、空気取入れ口21がホットアイルHAに面し、空気排出口22がコールドアイルCAに面していてもよく、特に限定するものではない。
【0055】
本実施形態では、コールドアイルCAの上方にコールドアイルキャッピング(コールド側蓋部)12が設けられている。コールドアイルキャッピング12は、コールドアイルCAの両側に配置されたラック架列10の上端にわたって配置された板状の部材である。つまりコールドアイルキャッピング12は、コールドアイルCAに他領域の空気が流入することを抑制するもの、言い換えるとコールドアイルCA内の空気と他領域の空気とが混合することを抑制するものである。
【0056】
なお、コールドアイルキャッピング12としては、上述のように板状の部材として形成されて対向する一対のラック架列10にわたって配置されたものであってもよいし、ラック架列10におけるコールドアイルCA側の面から機械室2の天井までの間につい立や、ロールスクリーンなどの部材を配置してもよい。つまり、機械室2の天井およびつい立等を用いてコールドアイルCAに他領域の空気が流入することを抑制してもよい。
【0057】
さらに、一対の側板および天板から構成される断面がギリシャ文字のΠ状に形成された蓋部を、機械室2の天井から吊ボルト等の支持部材によって吊り下げてコールドアイルCAの上方を塞いでもよい。つまり、上述の蓋部を用いてコールドアイルCAに他領域の空気が流入することを抑制してもよい。
【0058】
次に、本実施形態の特徴である室内空調機30について図2を参照しながら説明する。図2は室内空調機30の構成を説明する斜視図である。なお図2では理解を容易にするためにコールドアイルキャッピング12を省略して示している。
【0059】
室内空調機30は、ICT装置20の冷却に用いられ温度が上昇した空気を吸い込み、冷却して温度を下げた後に機械室2の室内に冷却空気として供給するものである。室内空調機30には、室内空調機30の外形を構成する筺体31と、機械室2の室内空気を吸い込む吸入部32と、吸込んだ室内空気から熱を奪い冷却する熱交換部(図示せず)と、熱を奪われた後の冷却空気を室内に供給する吹出し部33と、が主に設けられている。
【0060】
本実施形態の筺体31はラック架列10の長手方向と直交する方向に長く伸びた六面体状に形成された箱であり、その面や内部に吸入部32や、熱交換部や吹出し部33が設けられたものである。筺体31はコールドアイルCAにおける長手方向の略中央に、コールドアイルCAを二つに分割するように配置されている。
【0061】
さらに、筺体31における上述の直交方向の両端部34は、ラック架列10を貫通してホットアイルHAに面して配置されている。言い換えると、筺体31を挟んで短いラック架列10が直線上に配置され、筺体31の一部も含めて長いラック架列10が形成されている。筺体31と、筺体31に隣接するラック11とは直接に接触してもよいし、所定の間隔の隙間が空けられていてもよいし、隙間を設けた上で当該隙間を閉塞部材で閉じてもよく、特に限定するものではない。
【0062】
吸入部32は、筺体31における端部34のホットアイルHAと面する領域に開口するように設けられている。そのため、吸入部32はホットアイルHA内の空気を直接に吸い込むことができる。
【0063】
吹出し部33は、筺体31によって分割されたそれぞれのコールドアイルCAに面した筺体31の領域に開口するように設けられている。そのため、吹出し部33は冷却空気をコールドアイルCAに送風する際に、コールドアイルCAの長手方向に沿って冷却空気を送り出すことができる。
【0064】
なお上述の実施形態では、筺体31に一対の吹出し部33が、分割されたコールドアイルCAのそれぞれに冷却空気を送風可能に配置された例に適用して説明したが、筺体31に一つの吹出し部33を設けて、分割されたコールドアイルCAの一方に冷却空気を送風可能としてもよい。
【0065】
なお、室内空調機30は室外機(図示せず)と冷媒が循環する配管と接続され、室外機との間で冷媒を循環させることにより熱を室外に放出する空調装置を構成するものである。室内空調機30としてはパッケージ空調機であってもよいし、エアハンドリングユニット(AHU)であってもよく、特に限定するものではない。
【0066】
次に、上記の構成からなる空調システム1におけるICT装置20の冷却について、主に空気の流れを中心に説明する。なお、室内空調機30における空気の冷却方法などは、公知の空気調和装置における空気の冷却方法などと同様であるため、その説明を省略する
【0067】
ICT装置20は、空気取入れ口21から取り入れられたコールドアイルCA内の冷却空気によって冷却される。言い換えると冷却空気がICT装置20で発生した熱を奪うことにより、ICT装置20は冷却される。冷却により温度が上昇した空気は空気排出口22からホットアイルHAへ排気として排出される。
【0068】
複数のICT装置20からホットアイルHAに排出された排気は、室内空調機30の吸入部32に直接吸い込まれる。吸い込まれた排気は室内空調機30の熱交換部により熱を奪われて冷却空気となる。この冷却空気は吹出し部33からコールドアイルCAの内部へ長手方向に沿って送風される。コールドアイルCAに送風された冷却空気は、再びICT装置20の空気取入れ口21から取り入れられる。
【0069】
上記の構成の空調システム1によれば、コールドアイルCAを長手方向に分割するように筺体31を配置するとともに、分割されたコールドアイルCAのそれぞれに、筺体31に設けられた吹出し部33から冷却空気を長手方向に向かって送風することにより、空調システム1の冷却能力や冷却効率を確保しやすくなり、空調システム1の設置容易性を確保しやすくなる。
【0070】
つまり、筺体31はコールドアイルCA上に、コールドアイルCAを分割するように配置されるため、ラック11とともにラック架列10を形成するラック型タスク空調機と比較して筺体の寸法や形状の制約が緩やかであり、室内空調機30の冷房容量の大容量化を図りやすい。同様に、筺体31の設置場所がコールドアイルCA上であるため、ラック架列10の内部に配置される場合と比較して室内空調機30に対して冷媒などの配管や電力等の配線を施す作業が行いやすい。さらに筺体31はコールドアイルCA上に配置されるため、機械室2の壁近傍に配置されるアンビエント空調機と比較して室内空調機30の配置位置を確保しやすい。言い換えると、ラック架列10に対する室内空調機30の設置台数を増やしやすく、冷却信頼性の向上が図りやすい。その他に、アンビエント空調機やラック型タスク空調機が配置される位置と異なる位置に室内空調機30の筺体31を配置するため、アンビエント空調機やラック型空調機が既に配置された既存の設備に対して室内空調機30を追加で設置しやすい。
【0071】
また、冷却空気を直接コールドアイルCAに供給するため、床下空間4を介してコールドアイルCAに供給するアンビエント空調機と比較して冷却空気を送風する送風動力が小さくて済む。言い換えると、冷却に必要な動力を減らすことができるため、冷却効率の向上を図ることができる。さらに配線などによって空間が閉塞しやすい床下空間4と比較して、空間が閉塞されにくいコールドアイルCAに直接冷却空気を供給するため、冷却空気がコールドアイルCAにおける吹出し部33から離れた端部にまで届きやすい。特に筺体31によって分割されて長手方向の長さが短くなったコールドアイルCAに冷却空気を供給するため、コールドアイルCAの端部にまで冷却空気が届きやすくなる。言い換えると、冷却空気の供給不足による局所的な高温領域が発生しにくい。その他にも、床下空間4を冷却空気の流路として用いないため、床下空間4を大きく確保する必要がなくなることから、室内の階高が高くなることを抑制することができる。
【0072】
吹出し部33から冷却空気が送り出される方向がコールドアイルCAの長手方向であるため、当該長手方向に対して交差する方向に冷却空気を送風するラック型タスク空調機と比較して冷却空気の到達範囲が広くなる。言い換えると1台の室内空調機30で冷却可能な範囲が広いため冷却効率が高くなる。
【0073】
冷却空気の到達範囲が広くなるため、発熱量が大きなICT装置20を筺体31から離
れた位置に配置してもICT装置20を冷却することが可能となる。そのため、発熱量が大きなICT装置20を筺体31の近傍に配置する必要性が低下する。
【0074】
このようにラック架列10を貫通してホットアイルHAに面するように配置された筺体31の端部34に設けられた吸入部32から、ホットアイルHA内の空気を直接に吸い込むことにより、ホットアイルHA内の空気を効率よく吸い込むことができる。例えばアンビエント空調機のようにホットアイルHAから離れた位置に配置されるとともに空調機の上面などから空気を吸い込む場合と比較して、ホットアイルに面して配置された吸入部32からホットアイルHA内の空気を吸い込むため吸込み効率が高くなる。
【0075】
さらにラック架列10によってコールドアイルCA内の温度が低い空気と、ホットアイルHA内の温度が高い空気とが仕切られているため、温度が低い空気と温度が高い空気との混合が抑制される。そのためICT装置20の冷却効率低下が抑制される。
【0076】
このようにコールドアイルキャッピング12を設けることにより、コールドアイルCAとホットアイルHAとの間で空気が混合することを抑制でき、ICT装置20の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、コールドアイルCAは側方をラック架列10、下方を床面3、上方をコールドアイルキャッピング12によって囲まれるため、コールドアイルCA内の温度が低い空気はコールドアイルCAの外部へ流出しにくくなり、ホットアイルHA内の温度の高い空気と混合しにくくなる。そのためICT装置20の冷却効率低下が抑制される。
【0077】
図3は、図1の空調システムの別の実施例を説明する模式図であり、図3(a)は上面視図、図3(b)はX−X断面視図である。
なお、上述の実施形態のようにコールドアイルCAにコールドアイルキャッピング12を設けもよいし、図3に示すように、ホットアイルHAにホットアイルキャッピング(ホット側蓋部)13を設けてもよく、特にキャッピングを設ける通路を限定するものではない。
【0078】
このようにホットアイルキャッピング13を設けることにより、コールドアイルCAとホットアイルHAとの間で空気が混合することを抑制でき、ICT装置20の冷却効率の低下を抑制できる。つまり、ホットアイルHAは側方をラック架列10、下方を床面3、上方をホットアイルキャッピング13によって囲まれるため、ホットアイルHA内の温度の高い空気はホットアイルHAの外部へ流出しにくくなり、コールドアイルCA内の温度の低い空気と混合しにくくなる。そのためICT装置20の冷却効率低下を抑制することができる。
【0079】
図4は、図1の空調システムの更に別の実施例を説明する模式図であり、図4(a)は上面視図、図4(b)はX−X断面視図である。
また上述のようにコールドアイルキャッピング12またはホットアイルキャッピング13を設けてもよいし、コールドアイルCAにも、ホットアイルHAにもキャッピングを設けなくてもよく、キャッピングの有無を限定するものでもない。
【0080】
さらに、上述の実施形態では2つの室内空調機30が、ラック架列10の長手方向の中央に配置されている例に適用して説明しているが、室内空調機30をラック架列10の中央から端部に近寄った位置に配置してもよい。また、2つの室内空調機30の一方をラック架列10の中央に配置し、他方を端部に近寄った位置に配置してもよい。あるいは、一方の室内空調機30をラック架列10の一方の端部に近寄った位置に配置し、他方の室内空調機30をラック架列10の他方の端部に近寄った位置に配置してもよい。
【0081】
このようにすることで、発熱量が高いICT装置20の近くに室内空調機30を配置しやすくなる。つまり、室内空調機30から発熱量が高いICT装置20に冷却空気を供給しやすくなり、ICT装置20の冷却効率低下を抑制しやすくなる。
【0082】
さらに、上述の実施形態のように筺体31の両端部34におけるホットアイルHAに面する領域に吸入部32を設けてもよいし、端部34がホットアイルHAに面していない場合であっても、ホットアイルHAと吸入部32との間に設けられたくダクト(流路)によって、ホットアイルHA内の空気を吸入部32に導いてもよい。
【0083】
このようにダクトを介してホットアイルHA内の空気を吸入部32に導くことにより、例えばアンビエント空調機のようにホットアイルHAから離れた位置に配置されるとともに空調機の上面などから空気を吸い込む場合と比較して、ホットアイルHA内の空気を効率よく吸い込むことができる。
【0084】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5および図6を参照しながら説明する。
本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、室内空調機の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図5および図6を用いて室内空調機の構成について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0085】
図5は、本実施形態に係る空調システム101の構成を説明する模式図であり、図5(a)は上面視図であり、図5(b)はX−X断面視図である。図6は、図5の室内空調機130の構成を説明する斜視図である。
【0086】
図5に示すように、本実施形態ではコールドアイルCAにコールドアイルキャッピング12が設けられている。そして、本実施形態の空調システム101の室内空調機130には、図5および図6に示すように、室内空調機130の外形を構成する筺体131と、機械室2の室内空気を吸い込む吸入部32と、吸込んだ室内空気から熱を奪い冷却する熱交換部(図示せず)と、熱を奪われた後の冷却空気を室内に供給する吹出し部33と、が主に設けられている。
【0087】
本実施形態の筺体131は四角柱状に形成された箱であり、その面や内部に吸入部32や、熱交換部や吹出し部33が設けられたものである。筺体131はコールドアイルCAにおける長手方向の略中央に、コールドアイルCAを二つに分割するように配置されている。筺体131と、筺体131に隣接するラック11とは直接に接触してもよいし、所定の間隔の隙間が空けられていてもよいし、隙間を設けた上で当該隙間を閉塞部材で閉じてもよく、特に限定するものではない。
【0088】
筺体131における上端は、コールドアイルキャッピング12よりも上方へ突出している。筺体131のコールドアイルCA側の面には、コールドアイルキャッピング12よりも上側に吸入部32が設けられ、コールドアイルキャッピング12よりも下側に吹出し部33が設けられている。そのため、吸入部32はコールドアイルキャッピング12の上方の空気を吸い込む際に、コールドアイルCAの長手方向に沿って当該空気を吸い込むことができる。また吹出し部33は冷却空気をコールドアイルCAに送風する際に、コールドアイルCAの長手方向に沿って冷却空気を送り出すことができる。
【0089】
なお本実施形態では、筺体131の横幅がコールドアイルCAの横幅と同じ例に適用して説明しているが、筺体131の横幅はコールドアイルCAよりも広く、ラック架列10に重なる位置まで筺体131の端部が延びていてもよい。この場合、筺体131と隣接す
るラック11は、ICT装置20を収納せずに筺体131の端部を収納している。
【0090】
次に、上記の構成からなる空調システム101におけるICT装置20の冷却について、主に空気の流れを中心に説明する。なお、室内空調機130における空気の冷却方法などは、公知の空気調和装置における空気の冷却方法などと同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
ICT装置20は、空気取入れ口21から取り入れられたコールドアイルCA内の冷却空気によって冷却される。冷却により温度が上昇した空気は空気排出口22からホットアイルHAへ排気として排出される。排気は周囲よりも温度が高いため軽く、ホットアイルHAから上方へ移動し、機械室2の天井付近に滞留する。
【0092】
天井付近に滞留した排気は室内空調機130の吸入部32に吸い込まれ、吸い込まれた排気は室内空調機130の熱交換部により熱を奪われて冷却空気となる。この冷却空気は吹出し部33からコールドアイルCAの内部へ長手方向に沿って送風される。コールドアイルCAに送風された冷却空気は、再びICT装置20の空気取入れ口21から取り入れられる。
【0093】
上記の構成のようにコールドアイルCAの上方に配置されたコールドアイルキャッピング12の更に上方に吸入部32を設けることにより、上方に集まった温度の高い空気を吸い込み易くなる。言い換えると、ICT装置20を冷却して温度が高くなった空気を吸い込み易くなる。さらに、コールドアイルキャッピング12によって下側のコールドアイルCA内の温度が低い空気の空間と、上側の温度が高い空気の空間とを仕切っているため、温度が低い空気と温度の高い空気との混合が抑制されている。そのためICT装置20の冷却効率低下を抑制することができる。
【0094】
なお上述の実施形態のように、室内空調機130の吸入部32から天井付近に滞留した排気を水平方向に吸い込んでもよいし、室内空調機130に排気を鉛直方向に吸い込む吸入部を設け、室内空調機130にプレナムチャンバ(プレナム室)を設置してもよく、吸入部の構成を限定するものではない。
【0095】
さらに、上述の実施形態のように筺体131の上部をコールドアイルキャッピング12よりも上方に突出させて、その突出部に吸入部32を設けてもよいし、筺体131の上部がコールドアイルキャッピング12から上方に突出していない場合でも、コールドアイルキャッピング12の上方と吸入部32との間をつなぐダクト(流路)を設け、コールドアイルキャッピング12の上側の空気を、コールドアイルキャッピング12を跨いで吸入部32に導いてもよい。
【0096】
このようにコールドアイルキャッピング12の更に上側の空気を、ダクトを介して吸入部32に導くことにより、上方に集まった温度の高い空気を吸い込み易くなる。言い換えると、冷却対象物を冷却して温度が高くなった空気を吸い込み易くなる。
【0097】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図7および図8を参照して説明する。
本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、アンビエント空調機が更に設けられていることが異なっている。よって、本実施形態においては、図7および図8を用いてアンビエント空調機について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。図7は、本実施形態に係る空調システム201の概略構成を説明する模式図であり、図7(a)は上面視図であり、図7(b)はY−Y断面視図である。
【0098】
図7に示すように、本実施形態の空調システム201では、室内空調機30の他にアンビエント空調機230が追加して設けられている。アンビエント空調機230は機械室2の壁近傍に配置され、その下端は床面3を貫通して床下空間4まで延びている。
【0099】
アンビエント空調機230の上面には機械室2の室内の空気を吸入する吸入部232が設けられている。床下空間4に存在するアンビエント空調機230の下部には、冷却空気を床下空間4に供給する吹出し部233が設けられている。アンビエント空調機230の内部には吸入部232から吸い込まれた空気を冷却する熱交換部(図示せず)が設けられている。
【0100】
床面3のうちのコールドアイルCAに対応する領域は、アンビエント空調機230から供給された冷却空気が、床下空間4からコールドアイルCAに流入可能な構成とされている。例えば、格子状に形成された流通部が設けられている。
【0101】
上記の構成のようにアンビエント空調機230を更に設けることにより、室内空調機30のみが設けられている場合と比較して空調システム201における冷房能力を更に増大させることができる。アンビエント空調機230は、コールドアイルCAに冷却空気を供給する経路が室内空調機30と異なり、かつ、配置される場所も室内空調機30と異なるため、室内空調機30およびアンビエント空調機230を併用することができる。
【0102】
図8は、図7の空調システムの別の実施例を説明する上面視図である。
上述の実施形態のように第1の実施形態にアンビエント空調機230を追加してもよいし、図8に示すように第2の実施形態にアンビエント空調機230を追加してもよく、アンビエント空調機230を追加する対象を限定するものではない。
【0103】
なお、上述の実施形態のように室内空調機30の吹出し部33からコールドアイルCAに冷却空気を供給してもよいし、吹出し部33から供給される冷却空気の少なくとも一部が床下空間4に供給されてもよい。
【0104】
このようにすることで、アンビエント空調機230から供給される冷却空気が、床下空間4に配置されたケーブルなどによってラック架列10の奥にまで届かない場合であっても、当該奥にまで冷却空気を供給することができる。つまり、ケーブル等によって床下空間4が狭くなり、アンビエント空調機230から供給された冷却空気がラック架列10の奥にまで届かない場合でも、ラック架列10の間に配置された室内空調機30から冷却空気を床下空間4に供給することにより、冷却空気がラック架列10の奥にまで届きやすくなる。
【0105】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図9を参照しながら説明する。
本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、室内空調機の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図9を用いて室内空調機の構成について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。図9は、本実施形態の空調システム301における室内空調機330の構成を説明する斜視図である。
【0106】
本実施形態に係る空調システム301の室内空調機330には、図9に示すように、室内空調機330の外形を構成する筺体331と、機械室2の室内空気を吸い込む吸入部32と、吸込んだ室内空気から熱を奪い冷却する熱交換部(図示せず)と、熱を奪われた後の冷却空気を室内に供給する吹出し部33と、が主に設けられている。
【0107】
本実施形態の筺体331は、第1の実施形態の筺体31と同様に、ラック架列10の長手方向と直交する方向に長く伸びた六面体状に形成された箱であり、筺体331はコールドアイルCAにおける長手方向の略中央に、コールドアイルCAを二つに分割するように配置されている。さらに、筺体331における上述の直交方向の両端部34は、ラック架列10を貫通してホットアイルHAに面して配置されている。
【0108】
筺体331における端部34のホットアイルHAと面する領域には、吸入部32がホットアイルHA内の空気を直接に吸い込むように設けられている。筺体331によって分割されたそれぞれのコールドアイルCAに面した筺体331の領域の床面3の近傍には吹出し部33が設けられ、吹出し部33はコールドアイルCAの長手方向に沿って、かつ、床面3に沿って冷却空気を送り出すように配置されている。
【0109】
上記の構成のように床面3の近傍に設けられた吹出し部33から床面3に沿って冷却空気を送風することにより、冷却空気の到達範囲を広げやすくなる。つまり、床面3の近傍から送り出された空気はコアンダ効果によって床面3に沿って流れる。ここでは、コールドアイルCAの床面3に沿って長手方向に向かって流れるため、吹出し部33から離れたラック架列10の端部まで冷却空気は拡散することなく到達することができる。
【0110】
〔第4の実施形態の第1変形例〕
次に、本発明の第4の実施形態の第1変形例について図10を参照しながら説明する。
本変形例の空調システムの基本構成は、第4の実施形態と同様であるが、第4の実施形態とは、室内空調機の構成が異なっている。よって、本変形例においては、図10を用いて室内空調機について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。図10は、本変形例の空調システム401における室内空調機430の構成を説明する斜視図である。
【0111】
本変形例に係る空調システム401の室内空調機430には、図10に示すように、室内空調機430の外形を構成する筺体431と、機械室2の室内空気を吸い込む吸入部32と、吸込んだ室内空気から熱を奪い冷却する熱交換部(図示せず)と、熱を奪われた後の冷却空気を室内に供給する吹出し部33と、が主に設けられている。
【0112】
本実施形態の筺体431は、第4の実施形態の筺体331と同様に、ラック架列10の長手方向と直交する方向に長く伸びた六面体状に形成された箱であり、筺体431はコールドアイルCAにおける長手方向の略中央に、コールドアイルCAを二つに分割するように配置されている。さらに、筺体431における上述の直交方向の両端部34は、ラック架列10を貫通してホットアイルHAに面して配置されている。
【0113】
筺体431における端部34のホットアイルHAと面する領域には、吸入部32がホットアイルHA内の空気を直接に吸い込むように設けられている。筺体431によって分割されたそれぞれのコールドアイルCAに面した筺体431の領域の上端近傍には吹出し部33が設けられ、吹出し部33はコールドアイルCAの上部を長手方向に沿って冷却空気を送り出すように配置されている。言い換えると、コールドアイルCAの上部に冷却空気のエアカーテンを形成するように配置されている。
【0114】
上記の構成のように吹出し部33によってエアカーテンを形成することにより、コールドアイルCAとホットアイルHAとの間で空気が混合することを抑制でき、ICT装置20の冷却効率の低下を抑制することができる。つまり、コールドアイルCAは側方をラック架列10、下方を床面3、上方をエアカーテンによって囲まれるため、コールドアイルCA内の温度の低い空気はコールドアイルCAの外部へ流出しにくくなり、ホットアイルHA内の温度の高い空気と混合しにくくなる。そのためICT装置20の冷却効率低下を
抑制することができる。
【0115】
〔第4の実施形態の第2変形例〕
次に、本発明の第4の実施形態の第2変形例について図11を参照しながら説明する。
本変形例の空調システムの基本構成は、第4の実施形態と同様であるが、第4の実施形態とは、室内空調機の構成が異なっている。よって、本変形例においては、図11を用いて室内空調機の構成について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。図11(a)は、本変形例の空調システム501における室内空調機530の構成を説明する斜視図であり、図11(b)は断面視図である。
【0116】
本変形例に係る空調システム501の室内空調機530には、図11に示すように、室内空調機530の外形を構成する筺体531と、機械室2の室内空気を吸い込む吸入部32と、吸込んだ室内空気から熱を奪い冷却する熱交換部(図示せず)と、熱を奪われた後の冷却空気を室内に供給する吹出し部33と、吸込んだ室内空気をそのまま送風する送風部35と、が主に設けられている。
【0117】
本実施形態の筺体531は、第4の実施形態の筺体331と同様に、ラック架列10の長手方向と直交する方向に長く伸びた六面体状に形成された箱であり、筺体531はコールドアイルCAにおける長手方向の略中央に、コールドアイルCAを二つに分割するように配置されている。さらに、筺体531における上述の直交方向の両端部34は、ラック架列10を貫通してホットアイルHAに面して配置されている。
【0118】
筺体531における端部34のホットアイルHAと面する領域には、吸入部32がホットアイルHA内の空気を直接に吸い込むように設けられている。筺体531によって分割されたそれぞれのコールドアイルCAに面した筺体531の領域には吹出し部33が設けられ、吹出し部33はコールドアイルCAの上部を長手方向に沿って冷却空気を送り出すように配置されている。
【0119】
さらに筺体531におけるコールドアイルCAに面した領域の上部には送風部35が設けられ、送風部35はコールドアイルCAの上部を長手方向に沿って、吸入部32から吸い込まれた空気の一部をそのまま送り出すように配置されている。言い換えると、コールドアイルCAの上部にエアカーテンを形成するように配置されている。
【0120】
上記の構成のように送風部35によってエアカーテンを形成することにより、コールドアイルCAとホットアイルHAとの間で空気が混合することを抑制でき、ICT装置20の冷却効率の低下を抑制することができる。つまり、コールドアイルCAは側方をラック架列10、下方を床面3、上方をエアカーテンによって囲まれるため、コールドアイルCA内の温度が低い空気はコールドアイルCAの外部へ流出しにくくなり、ホットアイルHA内の温度が高い空気と混合しにくくなる。そのためICT装置20の冷却効率低下を抑制することができる。
【0121】
図12は、図11の室内空調機の別の実施例を説明する斜視図である。
なお、上述の実施形態のように筺体531に設けられた開口を、送風部35から空気を送風する部分としてもよいし、図12に示すように、送風部535を筺体531から四角筒状のノズル状に形成してもよく、送風部535の形状を特に限定するものではない。
【0122】
ノズル状の送風部535とすることにより、コールドアイルCAに形成されるエアカーテンによる遮蔽効果が高くなり、ICT装置20の冷却効率低下をさらに抑制しやすくなる。
【0123】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図13を参照しながら説明する。
本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、室内空調機の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図13を用いて室内空調機の構成について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。図13は、本実施形態に係る空調システム601における概略構成を説明する模式図であり、図13(a)は上面視図、図13(b)はX−X断面視図である。
【0124】
本実施形態の空調システム601における室内空調機630の筺体631は、ラック架列10の長手方向と直交する方向に長く伸びた六面体状に形成された箱であり、その面や内部に吸入部32や、熱交換部や吹出し部33が設けられたものである。筺体631はホットアイルHAにおける長手方向の略中央に、ホットアイルHAを二つに分割するように配置されている。
【0125】
さらに、筺体631における上述の直交方向の両端部34は、ラック架列10を貫通してコールドアイルCAに面して配置されている。筺体631と、筺体631に隣接するラック11とは直接に接触してもよいし、所定の間隔の隙間が空けられていてもよいし、隙間を設けた上で当該隙間を閉塞部材で閉じてもよく、特に限定するものではない。
【0126】
吸入部32は、筺体631によって分割されたそれぞれのホットアイルHAに面した筺体631の領域に開口するように設けられている。そのため、吹出し部33はホットアイルHAの空気を吸い込む際に、ホットアイルHAの長手方向に沿って吸い込むことができる。
【0127】
吹出し部33は、筺体631における端部34のコールドアイルCAと面する領域に開口するように設けられている。そのため、吸入部32はコールドアイルCAに冷却空気を直接に送風することができる。
【0128】
上記の構成の空調システム601によれば、ホットアイルHAを長手方向に分割するように筺体631を配置するとともに、分割されたホットアイルHAのそれぞれについて、筺体631に設けられた吸入部32から空気を長手方向に沿って吸い込むことにより、空調システム601の冷却能力や冷却効率を確保しやすくなり、空調システム601の設置容易性を確保しやすくなる。
【0129】
つまり、筺体631はホットアイルHA上に、ホットアイルHAを分割するように配置されるため、ラック11とともにラック架列10を形成するラック型タスク空調機と比較して筺体631の寸法や形状の制約が緩やかであり、室内空調機630の冷房容量の大容量化を図りやすい。同様に、筺体631の設置場所がホットアイルHA上であるため、ラック架列10の内部に配置される場合と比較して室内空調機630に対して冷媒などの配管や電力等の配線を施す作業が行いやすい。さらに筺体631はホットアイルHA上に配置されるため、機械室2の壁近傍に配置されるアンビエント空調機と比較して室内空調機630の配置位置を確保しやすい。言い換えると、ラック架列10に対する室内空調機630の設置台数を増やしやすく、冷却信頼性の向上が図りやすい。その他に、アンビエント空調機やラック型タスク空調機が配置される位置と異なる位置に室内空調機630の筺体631を配置するため、アンビエント空調機やラック型空調機が既に配置された既存の設備に対して室内空調機630を追加で設置しやすい。
【0130】
また、冷却空気を直接コールドアイルCAに供給するため、床下空間4を介してコールドアイルCAに供給するアンビエント空調機と比較して冷却空気を送風する送風動力が小さくて済む。言い換えると、冷却に必要な動力を減らすことができるため、冷却効率の向
上を図ることができる。その他にも、床下空間4を冷却空気の流路として用いないため、床下空間4を大きく確保する必要がなくなることから、室内の階高が高くなることを抑制することができる。
【0131】
吸入部32に空気が吸い込まれる方向がホットアイルHAの長手方向であるため、当該長手方向に対して直交する方向に空気を吸い込むラック型タスク空調機と比較して、空気を吸い込む際の流動抵抗が小さくなる。言い換えると、ホットアイルHAの空気を吸い込みやすくなる。
【0132】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0133】
1,101,201,301,401,501,601…空調システム、3…床面、4…床下空間、10…ラック架列、11…ラック、12…コールドアイルキャッピング(コールド側蓋部)、20…ICT装置(冷却対象物)、30,130,330,430,530,630…室内空調機、31,131,331,531,631…筺体、32…吸入部、33…吹出し部、35,535…送風部、230…アンビエント空調機、CA…コールドアイル、HA…ホットアイル
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