特許第5912783号(P5912783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912783タイヤの接地状態の測定装置及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912783
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】タイヤの接地状態の測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20160414BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20160414BHJP
   G01B 7/28 20060101ALI20160414BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G01L5/00 101Z
   B60C19/00 H
   G01B7/28 A
   G01M17/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-87399(P2012-87399)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-217726(P2013-217726A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲ろ▼
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−32263(JP,A)
【文献】 実公昭63−13479(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L5
G01B7/28
G01M17/02
B60C19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地体と、
この接地体にタイヤを押圧する押圧装置と、
上記接地体の表面に配設された、多数の圧力測定点を有する圧力センサーシートと、
この圧力センサーシートの上面を覆うように配設された保護フィルムと、
この保護フィルムに張力を加えるための張力付加装置とを備えており、
上記圧力センサーシートと保護フィルムとの間に潤滑剤が注入されているタイヤの接地状態測定装置。
【請求項2】
上記保護フィルム厚さが0.1mm以上0.5mm以下である請求項1に記載のタイヤの接地状態測定装置。
【請求項3】
上記張力は、張力の方向に垂直な方向の保護フィルムの幅25cmに対して、2kN以上10kN以下の範囲で負荷され、この張力は保護フィルムの幅の増減に比例して増減する請求項1又は2に記載のタイヤの接地状態測定装置。
【請求項4】
圧力センサーシートが設置された接地体の表面を覆うように、保護フィルムを配置するとともに、上記圧力センサーシートと上記保護フィルムとの間に潤滑剤を注入するステップと、
上記保護フィルムに張力を負荷するステップと、
上記保護フィルムを介在させて、タイヤのトレッド面を接地体の表面に押圧するステップと、
上記圧力センサーシートの多数の圧力測定点により、タイヤからの押圧力を測定するステップとを含むタイヤの接地状態測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は。タイヤの接地面圧及び接地面形状を測定することができる接地状態測定装置、及び、接地状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの接地面形状を測定する装置又は方法として、特開平03−146809号公報、特開平03−226636号公報、特開2004−294374公報、特開2003−240681公報、特開2001−221716公報に開示された装置及び方法が知られている。これらは、いずれも、カメラを用いて、タイヤに荷重が負荷されたときの接地面を撮影するものである。透明の接地板に押圧されたタイヤの接地面形状を、その接地板の裏側からカメラで撮影するものである。従って、これらの方法では、荷重負荷時のタイヤの接地圧分布等の測定については十分ではない。
【0003】
特開2005−096595公報、特開2007−216895公報等には、ロードセルを用いたタイヤの接地状態の測定装置が開示されている。しかし、ロードセルによって測定するため、接地形状や接地圧分布の測定結果が緻密なものとはならない。また、装置の構成が複雑になる。
【0004】
そこで、押圧加重の範囲を測定するための圧力センサーシートが用いられることがある。この圧力センサーシートは、2枚のフィルム状のシート間に線状電極が短ピッチで縦横に配設されたものである。縦横の線状電極同士の交点が力検出部(センサーセル)となっている。無負荷時のセンサーセルの電気抵抗は、通常時は無限大であるが、負荷される力に応じて減少する。この各センサーセルの電気抵抗値が測定されることにより、接地面形状及び接地面圧分布が得られる。
【0005】
しかしながら、上記圧力センサーシートは、タイヤによって単純に押圧されるような、その面に垂直な荷重に対しては十分な強度を有しているが、引っ張り力に対しては比較的弱い。タイヤの制動、駆動開始、旋回、スリップ角やキャンバー角が設定されている場合等には、タイヤと圧力センサーシート間の摩擦によって圧力センサーシートに引っ張り力が加わる。この引っ張り力により、圧力センサーシートが損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−146809号公報
【特許文献2】特開平03−226636号公報
【特許文献3】特開2004−294374公報
【特許文献4】特開2003−240681公報
【特許文献5】特開2001−221716公報
【特許文献6】特開2005−096595公報
【特許文献7】特開2007−216895公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述した現状に鑑みてなされたものであり、タイヤからセンサーへの摩擦力の負荷が大幅に抑制された、タイヤの接地状態測定装置及び接地状態測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤの接地状態測定装置は、
接地体と、
この接地体にタイヤを押圧する押圧装置と、
上記接地体の表面に配設された、多数の圧力測定点を有する圧力センサーシートと、
この圧力センサーシートの上面を覆うように配設された保護フィルムと、
この保護フィルムに張力を加えるための張力付加装置とを備えている。
【0009】
好ましくは、上記圧力センサーシートと保護フィルムとの間に潤滑剤が注入されている。
【0010】
好ましくは、上記保護フィルム厚さが0.1mm以上0.5mm以下である。
【0011】
好ましくは、上記張力は、張力の方向に垂直な方向の保護フィルムの幅25cmに対して、2kN以上10kN以下の範囲で負荷され、この張力は負荷範囲である保護フィルムの幅の増減に比例して増減する。
【0012】
本発明に係るタイヤの接地状態測定方法は、
圧力センサーシートが設置された接地体の表面を覆うように、保護フィルムを配置するステップと、
上記保護フィルムに張力を負荷するステップと、
上記保護フィルムを介在させて、タイヤのトレッド面を接地体の表面に押圧するステップと、
タイヤが押圧された上記圧力センサーシートの多数の圧力測定点により、タイヤからの押圧力を測定するステップとを含んでいる。
【0013】
好ましくは、上記保護フィルムを配置するステップにおいて、圧力センサーシートと保護フィルムとの間に潤滑剤を注入する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るタイヤの接地状態測定装置又は測定方法によれば、タイヤの接地状態の測定において、タイヤから圧力センサーシートへの摩擦力の負荷が大幅に抑制され、より精密な測定結果が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るタイヤの接地状態測定装置の一実施形態を示す一部切り欠き正面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1のIII−III線矢視図である。
図4図4(a)は、図1の接地状態測定装置に用いられる圧力センサーシートの一例を示す一部断面斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のIV−IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1及び図2には、タイヤの接地状態測定装置(以下、単に測定装置ともいう)1が示されている。この測定装置1は、架台2と、この架台2上を水平方向に移動しうる接地体3と、この接地体3に供試タイヤ(以下、単にタイヤともいう)Tのトレッド面を上方から押圧する押圧装置4とを備えている。接地体3の平面視形状は矩形であるが、特に矩形には限定されない。
【0018】
図2に示されるように、架台2の上部には案内レール5が敷設されている。接地体3の下端には、架台2へ係合する係合フレーム6が設けられている。この係合フレーム6が、上記案内レール5上を移動しうるようにされている。架台2には、接地体3を案内レール5に沿って移動させるための駆動装置7が設けられている。本実施形態では、駆動装置7として、ネジ棒7aとネジ棒7aに螺合したナット7bとを備えた送りネジ機構が採用されている。しかし、本発明の駆動装置としては、特に送りネジ機構には限定されない。接地体3は、押圧されるタイヤTの前後方向(転動方向)に移動する。タイヤTが押圧された状態で接地体3が移動するので、タイヤTは転動させられる。矩形の接地体3は、この移動方向に沿う長さが長い。従って、接地体3の移動方向を、接地体3の長手方向と呼ぶ。この長手方向に垂直な方向を幅方向と呼ぶ。
【0019】
図2には、タイヤの押圧装置4の詳細が示されている。この押圧装置4は、揺動アーム8を介して供試タイヤTを支持する支持部材9を備えている。この支持部材9は、昇降機14により、押圧装置本体(以下、単に本体ともいう)10に対して上下動させられうる。それにより、供試タイヤTは、接地体3の上面に押圧され、また、押圧が解除される。支持部材9によって支持されたタイヤTの姿勢は、その前後方向が接地体3の移動方向に一致している。上記揺動アーム8と本体10との間には、上下方向揺動駆動機11と横方向揺動駆動機12とが掛け渡されている。上下方向揺動駆動機11は、揺動アーム8に取り付けられた供試タイヤTにキャンバー角を設定するものである。横方向揺動駆動機12は、供試タイヤTにスリップ角を設定するものである。本実施形態では、昇降機14、上下方向揺動駆動機11及び横方向揺動駆動機12として、それぞれ駆動シリンダが用いられているが、本発明ではかかる構成には限定されない。
【0020】
本実施形態では、接地体3がタイヤTの前後方向に水平に移動するように構成されているが、かかる構成には限定されない。接地体3が、鉛直又は鉛直から傾斜した姿勢とされ、その面内方向に移動可能に構成されてもよい。また、接地体3は移動不能に固定され、押圧装置4が、タイヤTを接地体3の表面に沿って転動させるように移動可能に構成されてもよい。又は、押圧装置4によってタイヤTを回転駆動し、且つ、制動しうるように構成されてもよい。この場合、接地体3は、移動可能及び移動不能を選択的に行いうるように構成されてもよい。
【0021】
図1から図3に示されるように、接地体3の上面の中央部には、圧力センサーシート13が設置されている。圧力センサーシート13は薄いものであり、接地体3の上面に積層されている。この圧力センサーシート13としては、例えば、ニッタ株式会社製の各種センサシートが採用されうる。この圧力センサーシート13は、その面上に多数の力検出部が縦横に配置されている。この圧力センサーシート13にタイヤTのトレッド面が押圧されることにより、接地面内の各力検出部において、それぞれ押圧荷重が測定される。この測定データが図示しないコンピュータによって処理されることにより、供試タイヤTの接地面形状、この接地面内の接地面圧の分布等が得られる。図示しない表示装置には、接地面形状及び接地面圧の分布が画像としても表示されうる。
【0022】
図4には上記圧力センサーシート13の一部分が示されている。この圧力センサーシート13は、2枚のフィルム状シート15c間に線状電極15a、15bが短ピッチで縦横に配設されたものである。縦方向の線状電極15aと横方向の線状電極15bとの平面視での交点が力検出部13aとなっている。無負荷時の力検出部13aの電気抵抗は、通常時は無限大であるが、負荷される力に応じて減少する。この各力検出部13aの電気抵抗値が測定されることにより、接地面形状及び接地面圧分布が得られる。図3に示されるように、各電極15a、15bからは、多数の電気接続端子13bが側方に延びている。
【0023】
図1及び図3に示されるように、接地体3の上面には、圧力センサーシート13を覆うように、保護フィルム16が設けられている。保護フィルム16は、接地体3の上面及び圧力センサーシート13の上面に固着されてはいない。図1では、理解容易のために、保護フィルム16の厚さを実際より大きくし、保護フィルム16と接地体3の上面との間に実際より遙かに大きい隙間Dを示している。この保護フィルム16の平面視形状は矩形であるが、特に矩形には限定されない。この保護フィルム16は、上記圧力センサーシート13を、タイヤTによる摩擦力から保護するためのものである。タイヤTからの摩擦力はこの保護フィルム16が受ける。タイヤTからの垂直な押圧力だけが圧力センサーシート13に負荷されるようにしようというものである。
【0024】
タイヤTの制動時、駆動時、旋回時、キャンバー角設定時、スリップ角設定時には、タイヤTから圧力センサーシート13に摩擦力が加わる。この摩擦力は、圧力センサーシート13にとっては引っ張り力となる。この引っ張り力を他の部材で引き受ける必要がある。そこで、保護フィルム16が圧力センサーシート13の上面を覆うように配設されている。保護フィルム16は、平面視で矩形を呈している。保護フィルム16は、タイヤTのトレッド面に較べて摩擦係数が低い。タイヤTから保護フィルム16を介して摩擦力が圧力センサーシート13に加わることが抑制される。タイヤTからの面圧は圧力センサーシート13に加わるが、摩擦力の殆どは保護フィルム16に加わって圧力センサーシート13へ加わることが抑制される。この目的のため、前述のとおり、保護フィルム16は、接地体3の上面及び圧力センサーシート13の上面に固着されてはいない。
【0025】
この保護フィルム16には張力が加えられている。これは、タイヤTからの摩擦力によって、保護フィルム16が面内方向に変位することを防止するためである。換言すると、タイヤTからの摩擦力により、タイヤTと保護フィルム16とが一体となって相対的に圧力センサーシート13上を滑ることを防止するためである。タイヤTが転動しない状態で圧力センサーシート13上を滑ると、正確な接地面形状、正確な接地面圧を測定することが困難になるからである。保護フィルム16に張力が加えられることにより、タイヤT及び保護フィルム16のすべりが生じにくくなり、正確な接地面形状、接地圧分布等を測定することができる。本実施形態では、保護フィルム16に対する張力がタイヤの転動方向(前後方向)にのみ加えられる形態が例示されている。しかし、本発明においては、かかる構成に限定されない。
【0026】
図1には、保護フィルム16への張力付加装置17が示されている。この張力付加装置17は、接地体3の長手方向(移動方向)の一端部に設けられた張力調節部18と、接地体3の長手方向の他端部に設けられたフィルム固定部19とからなる。張力付加装置17は接地体3と一体化されている。このフィルム固定部19は、図1中の接地体3の左端に示されている。フィルム固定部19は、保護フィルム16の一端部を固定するためのものである。
【0027】
図3には張力調節部18だけが示されている。張力調節部18は、フィルム端部保持部材20と、支持フレーム21と、固定部材22と、張力測定器24と、測定器固定部材25とを備えている。張力測定器としてはロードセル24が採用されているが、ロードセルには限定されない。フィルム端部保持部材20は、保護フィルム16の他端部を保持する棒状の部材である。このフィルム端部保持部材20と上記測定器固定部材25とが、ロードセル24によって連結されている。連結されたフィルム端部保持部材20、ロードセル24及び測定器固定部材25は、接地体3の長手方向にのみ移動可能である。支持フレーム21は、接地体3の一端部に固定された門形の部材である。
【0028】
支持フレーム21に形成されたボルト孔には調節ボルト23が挿通されている。調節ボルト23は、上記測定器固定部材25に形成されたねじ孔に螺合している。調節ボルト23を回転操作すると、測定器固定部材25が接地体3の長手方向に移動する。これにより、保護フィルム16に加わる張力が増減するとともに、ロードセル24にも張力が加わる。ロードセル24によって測定される保護フィルム16の張力が所定の範囲内に至ったとき、上記固定部材22によって保護フィル16が接地体3に固定される。
【0029】
固定部材22は棒状の部材であり、接地体3の表面に対して、それとの間に保護フィルム16が挿通されうる隙間ができるように、ボルト止めされている。上記隙間はボルトによって調節可能である。保護フィルム16を固定するときには、上記ボルトを締め付けて、固定部材22と接地体3とで保護フィルムを挟圧する。以上は張力調節部18の例示である。張力調節部18として、他の構成が採用されてもよい。保護フィルム16を巻き取るロール等が採用されてもよい。
【0030】
保護フィルム16は、強靱且つ柔軟なものが選択される。保護フィルム16の材料としては、例えば、ポリカーボネート等の合成樹脂シートが採用されうる。保護フィルム16の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲から選択されるのが好ましい。厚さが0.5mm以上であると、保護フィルム16の曲げ剛性が高くなり、タイヤTの押圧による保護フィルムの湾曲部の曲率半径が小さくならない。その結果、圧力センサーシート13に垂直に加わる力(面圧)及びその範囲が正確には測定しにくくなる可能性がある。すなわち、タイヤから圧力センサーシート13の多数の力検出部に加わる荷重値は互いに異なってはいるが、保護フィルム16の順応性の悪さから、同一の検出値が得られてしまうという事態が発生しうる。その結果、測定データから得られる接地面の画像の精度が粗くなるおそれがある。厚さが0.1mm未満であると、上記張力に耐えうるフィルムを入手することが難しくなるおそれがある。
【0031】
保護フィルム16に加えられる張力は、大きすぎると保護フィルム16を損傷するおそれがあり、小さすぎると保護フィルム16が圧力センサーシート13との間で滑ったり、皺が生じたりするおそれがある。保護フィルム16に加えられる張力は、幅が25cmの保護フィルム16に対しては、2kN以上10kN以下の範囲で設定されるのが好ましい。張力は、保護フィルム16の幅の増減に応じて比例的に増減される。
【0032】
上記圧力センサーシート13と保護フィルム16との間(図1中の隙間D)に潤滑剤が注入されている。この目的は、圧力センサーシート13と保護フィルム16との間の摩擦を取り除くことである。潤滑剤の注入により、保護フィルム16の下面の摩擦係数が飛躍的に低くなるので、タイヤTから保護フィルム16を介して摩擦力が圧力センサーシート13に加わることが防止される。潤滑剤としては、低粘度の潤滑油、石けん水等が採用されうる。市販の液状洗剤を体積10倍程度の水で薄めたものも採用されうる。この市販の洗剤の好ましい一例は、アルボース石けん液:クロルキシレノール0.3%、エデト酸塩である。潤滑剤の粘度は低いのが好ましい。高粘度であると流れが悪く、保護フィルム16に凹凸が生じるおそれがあるからである。
【0033】
上記保護フィルム16に対する張力は、保護フィルム16に対して四方八方(360°方向)に加えられるのが理想である。しかし、タイヤTの前後方向及び軸方向のいずれか一方であってもよい。以上説明された実施形態では、保護フィルム16に負荷される張力の方向が、タイヤTの前後方向、換言すれば接地体3の長手方向である。このような張力が負荷されている場合であっても、保護フィルム16へのタイヤT軸方向の摩擦力に対しても、保護フィルム16の変位が抑制されうる。
【0034】
本発明では、保護フィルム16に対して、供試タイヤTの軸方向、換言すれば接地体3の幅方向に張力が負荷されてもよい。かかる構成は、張力調節部18とフィルム固定部19とが、接地体3の幅方向両端に対向して設置されることにより、容易に実現しうる。又は、前述したように、接地体3が移動不能に固定され、押圧装置4が接地体3の長手方向に移動可能にされた測定装置に対して容易に採用されうる。このように、供試タイヤTの軸方向に張力が負荷されている場合であっても、保護フィルム16へのタイヤT前後方向の摩擦力に対しても、保護フィルム16の変位が抑制されうる。また、構造が複雑にはなるが、保護フィルム16に対して、供試タイヤTの前後方向及び軸方向の両方向に張力が負荷されてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0036】
[測定精度の評価]
接地面形状及び接地面圧の測定精度の評価は、以上に説明された測定装置1を用いて行われる。供試タイヤTのサイズは330/710R17である。用いられた圧力センサーシート13として、Tekscan社製のセンサシートが用いられる。保護フィルム16としては、LAIRD PLASTICS社製のLAIRD PLASTICSが用いられる。複数種類の厚さの保護フィルムが用いられる。保護フィルムに負荷される張力も複数種類である。評価は、保護フィルム16を測定装置1に取り付け、上記調節ボルト23を操作して保護フィルム16に張力を加えた状態で、タイヤTを押圧、回転させて行われる。張力は前述したロードセル24によって測定される。評価は、保護フィルム16の損傷、並びに、保護フィルム16とセンサシート13との滑りや保護フィルム16の曲げ剛性(曲げ反順応性)等に起因して変化する接地形状及び接地面圧の測定精度について行われる。
【0037】
[実施例]
以上説明された方法により、接地面形状及び接地面圧の測定精度の評価が行われた。実施例は、表1に示される26個の例のうちで、用いられる保護フィルム16の厚さが0.02mm、0.10mm、0.20mm、0.50mm及び1.00mmという条件と、各保護フィルム16に負荷される張力が1kN、2kN、5kN及び12kNという条件とを共に満たした20個の例である(表1中に太線で囲まれた右下の20例)。フィルムの幅寸法はいずれも25cm(張力が負荷される範囲)である。
【0038】
[比較例]
以上説明された方法により、実施例と同様の接地面形状及び接地面圧の測定精度の評価が行われた。ただし、使用された保護フィルム16には張力は負荷されなかった。比較例は、表1に示される26個の例のうちで、保護フィルム16が用いられていない(保護フィルムの厚さ「無し」と記載)1個の例、及び、保護フィルム16は用いられたが、この保護フィルム16に負荷される張力が0kNである5個の例である。フィルムの幅寸法はいずれも25cm(張力が負荷される範囲)である。
【0039】
【表1】
【0040】
[評価]
評価結果は、表1に、A、B、C、D、E、Fによって表されている。Aは、精度の高い良好な測定結果が得られたことを示す。Bは、測定結果の精度が粗く、正確性が欠如していることを示す。Cは、保護フィルム16の皺の発生等によって圧力センサーシート13の損傷等が生じ、測定の正確性が欠如していることを示す。Dは、保護フィルム16に損傷が生じたため、測定が容易ではなく、正確性が欠如していることを示す。Eは、保護フィルム16が圧力センサーシート13上でタイヤと共に滑り、測定が不可能であったことを示す。Fは、圧力センサーシート13が損傷して、測定が不可能であったことを示す。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るタイヤの接地状態測定装置は、タイヤのより望ましい接地状態を解明することに寄与しうるので、より好ましいタイヤの開発に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・測定装置
2・・・架台
3・・・接地体
4・・・押圧装置
5・・・案内レール
6・・・係合フレーム
7・・・駆動装置
8・・・揺動アーム
9・・・支持部材
10・・・(押圧装置の)本体
11・・・上下方向揺動駆動機
12・・・横方向揺動駆動機
13・・・圧力センサーシート
14・・・昇降機
15a、15b・・・線状電極
15c・・・シート
16・・・保護フィルム
17・・・張力負荷装置
18・・・張力調節部
19・・・フィルム固定部
20・・・フィルム端部保持部材
21・・・支持フレーム
22・・・固定部材
23・・・調節ボルト
24・・・ロードセル
25・・・測定器固定部材
T・・・タイヤ
図1
図2
図3
図4