特許第5912795号(P5912795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912795
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】金属化フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/18 20060101AFI20160414BHJP
   H01G 4/015 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H01G4/24 301F
   H01G4/24 321A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-90914(P2012-90914)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-219305(P2013-219305A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 崇雄
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−239175(JP,A)
【文献】 特開平08−288171(JP,A)
【文献】 特開平09−306782(JP,A)
【文献】 特開平04−239713(JP,A)
【文献】 特開2010−238902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/18
H01G 4/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着電極が表面に形成された第1および第2誘電体フィルムを互いに重ね合わせて巻回してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続した金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記第1誘電体フィルムは、前記蒸着電極がフィルム幅方向中央に長手方向に沿って設けられた絶縁マージンによって2つの部分に分割されてなり、
前記第2誘電体フィルムの幅方向両端側には、長手方向に沿って絶縁マージンが設けられ、前記第2誘電体フィルムの幅方向中央に前記蒸着電極が長手方向に分割、配列した複数の分割電極からなる分割電極部が、前記第1誘電体フィルムの2つに分割された蒸着電極の各々に対応して、フィルム幅方向に2列にわたって形成され、
前記第2誘電体フィルムに形成された前記複数の分割電極の各々に独立してヒューズ部が設けられ、各ヒューズ部は、2列の分割電極部の間に形成された、フィルム長手方向に延びる接続電極部を介して接続されるとともに、前記第1誘電体フィルムの幅方向中央に設けられた絶縁マージンに対向していることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第2誘電体フィルムに形成される分割電極は、前記蒸着電極がフィルム長手方向に配列した複数のT字形絶縁スリットによって分割されて形成され、
前記T字形絶縁スリットのT字の縦線スリット部の端が前記第2誘電体フィルムの前記絶縁マージンと接続され、フィルム長手方向において隣接する前記T字形絶縁スリットのT字の横線スリット部の端部と端部との間に前記ヒューズ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第2誘電体フィルムに配置された前記T字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、前記第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界よりも0.5mm以上、絶縁マージン中央方向に位置することを特徴とする請求項2に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第2誘電体フィルムは、前記第1誘電体フィルムの幅よりも小さい幅を有し、該第1誘電体フィルムの幅の内側に位置するように重ね合わせられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電気機器、産業機器、および自動車用等に使用する金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部直列接続されたコンデンサにおいて、保安性能の獲得と耐電圧性能向上を目的として、蒸着電極を分割したものがこれまでに多数提案されているが、蒸着電極の分割方法としては、
i)個々の分割電極を直列に接続する部分にヒューズを設けたもの(図3参照)であるか、あるいは、
ii)外部接続電極との間にヒューズを設けたもの(図4参照)であるか、
のいずれかである。
特許文献1には、図3a)に示される、幅方向中央に長手方向に沿って絶縁マージンが設けられた第1の金属化フィルムと、幅方向両端側に長手方向に沿って絶縁マージンが設けられ、幅方向中央部に共通電極部を有する第2の金属化フィルムを重ねて巻回した金属化フィルムコンデンサが記載されている。
この金属化フィルムコンデンサは、分割電極部で絶縁破壊が生じた場合、幅方向中央部の共通電極部のヒューズに、分割電極からヒューズを動作させるだけの十分な電流が流れ込まず、特に高温時においてヒューズが動作しないおそれがあった。
【0003】
一方、外部接続電極との間にヒューズが設けられた分割蒸着電極を有する金属化フィルムコンデンサは、例えば特許文献2に記載されており、この金属化フィルムコンデンサのコンデンサ素子は、図4a)の(a)および(b)に示される蒸着フィルム1と蒸着フィルム2を、(c)のようにして重ね合わせて巻回して形成されており、この場合には、メタリコン近傍にヒューズが配置されているので、ヒューズ溶断に要する熱量を多少大きくすることができる。しかし、外部電極の近傍であるため、最も電流が大きくなる箇所であり、充放電電流でヒューズが動作してしまうので大電流を要する用途では使用できないという問題がある。
【0004】
また、特許文献3には、従来の通称Tマージンと呼ばれる品である金属蒸着フィルムにおける問題を解決するために、各Tマージンの縦マージン(T字形の横線スリット部分)の一端が隣接する縦マージンの先端部より金属蒸着電極区画の内方に位置するように配置され、他端がそれに隣接する縦マージンの先端より金属蒸着電極区画外方に位置するように配置されたものが開示されており、ヒューズ部の電流が流れる方向の長さLとそれと直角方向の長さ(巾)Bの比L/Bが0.5〜3.0に規定され、巾Bが0.3mm〜2.0mmの範囲に規定されている。
しかし、このような金属化フィルムコンデンサは、従来のTマージン品である金属蒸着フィルムを用いたものに比べて保安性および長期安定性の点では優れるが、ヒューズが外部電極の近傍に配置されているために、充放電電流でヒューズが動作してしまい、高い耐電圧性能が得られないという問題を有する。
【0005】
更に、特許文献4には、一対の金属化フィルムが、一方の非分割電極に他方の分割電極が誘電体フィルムを介して対向するようにして配置されており、一方の金属化フィルムを陽極とし、他方の金属化フィルムを陰極とした金属化フィルムコンデンサにおいて、分割電極が長手方向に一定の分割面積で分割され、一方の金属化フィルムの分割面積が他方の金属化フィルムの分割電極より大きいことを特徴とするものが開示されている。
この金属化フィルムコンデンサは、陽極とした一方の金属化フィルムのスリットが、他方の金属化フィルムのスリットより少ないので、酸化保護膜の形成による電気特性の低下を抑制できる点においては優れているが、絶縁マージン側に電極面積が小さな分割電極を長手方向に配列した分割電極部が配置され、端子接続部側に、分割されていない非分割電極部が配置されているので、高温時における保安性が必ずしも十分に確保されているものではなかった。
具体的には、分割電極部で絶縁破壊が生じた場合、絶縁破壊が生じた分割電極部を構成する分割電極に隣接する分割電極からヒューズを動作させるだけの十分な電流が流れ込まず、特に高温時においてヒューズが動作しないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−35742号
【特許文献2】特開平9−306782号公報
【特許文献3】特開2000−114089号公報
【特許文献4】特開2008−235414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い耐電圧性能と十分な保安性能を有した金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、蒸着電極が表面に形成された第1および第2誘電体フィルムを互いに重ね合わせて巻回してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続した金属化フィルムコンデンサであって、第1誘電体フィルムは、蒸着電極がフィルム幅方向中央に長手方向に沿って設けられた絶縁マージンによって2つの部分に分割されてなり、第2誘電体フィルムの幅方向両端側には、長手方向に沿って絶縁マージンが設けられ、第2誘電体フィルムの幅方向中央に蒸着電極が長手方向に分割、配列した複数の分割電極からなる分割電極部が、第1誘電体フィルムの2つに分割された蒸着電極の各々に対応して、フィルム幅方向に2列にわたって形成され、第2誘電体フィルムに形成された複数の分割電極の各々に独立してヒューズ部が設けられ、各ヒューズ部は、2列の分割電極部の間に形成された、フィルム長手方向に延びる接続電極部を介して接続されるとともに、第1誘電体フィルムの幅方向中央に設けられた絶縁マージンに対向していることを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明によれば、第2誘電体フィルムの幅方向中央に蒸着電極が長手方向に分割、配列した複数の分割電極からなる分割電極部が、第1誘電体フィルムの2つに分割された蒸着電極の各々に対応して、フィルム幅方向に2列にわたって形成され、2列の分割電極部の間に、フィルム長手方向に延びる接続電極部が形成されている。そして、複数の分割電極の各々に独立して設けられたヒューズ部が接続電極部を介して接続されている。
このため、複数の分割電極の各々が互いに並列接続され、絶縁破壊が発生した際、比較的大きなエネルギーが流入し、安定したヒューズ動作を実現することができる。また、各ヒューズ部は第1誘電体フィルムの幅方向中央に設けられた絶縁マージンに対向しているため、素子巻回時にヒューズ部にかかる応力が小さくなり、ヒューズ動作性が向上する。
しかも、上記構成を有する金属化フィルムコンデンサの場合、分割電極を小さくしても安定した保安性が得られ、絶縁破壊発生時の容量減少を小さくすることが可能である。さらに、十分な保安性を保ったままでヒューズの抵抗値を小さくすることも可能である。
【0010】
また、本発明は、上記の構成を有した金属化フィルムコンデンサにおいて、第2誘電体フィルムに形成される分割電極は、蒸着電極がフィルム長手方向に配列した複数のT字形絶縁スリットによって分割されて形成され、T字形絶縁スリットのT字の縦線スリット部の端が第2誘電体フィルムの絶縁マージンと接続され、フィルムの長手方向において隣接するT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部の端部と端部との間にヒューズ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、上記の構成を有した金属化フィルムコンデンサにおいて、第2誘電体フィルムに配置されたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界よりも0.5mm以上、絶縁マージン中央方向に位置することを特徴とするものでもある。
【0012】
さらに、本発明は、上記の構成を有した金属化フィルムコンデンサにおいて、第2誘電体フィルムは、第1誘電体フィルムの幅よりも小さい幅を有し、第1誘電体フィルムの幅の内側に位置するように重ね合わせられていることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属化フィルムコンデンサによれば、安定したヒューズ動作が得られ、高い保安性を付与することが可能であり、特性劣化が抑えられる。
また、十分な保安性を保ったままで分割電極の面積を小さくすることができ、絶縁破壊発生時の容量減少を小さくすることができ、安全で、優れた耐電圧性能(寿命)を示す。その上、ヒューズの抵抗値を小さくすることも可能であるので、優れた電気特性(ESR)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の金属化フィルムコンデンサの構造を示す図で、a)は、当該金属化フィルムコンデンサを構成する各蒸着フィルムの模式図であり、b)は、コンデンサ内部回路図である。
図2】a)およびb)は、本発明の金属化フィルムコンデンサを構成するフィルムのうち分割電極が形成された蒸着フィルム(電極非接続側蒸着フィルム)の変形例を示す図である。
図3】分割電極が設けられた従来の金属化フィルムコンデンサ(個々の分割容量を直列に接続したもの)の構造の一例を示す図であり、a)は、当該金属化フィルムコンデンサを構成する各蒸着フィルムの模式図であり、b)は、コンデンサ内部回路図である。
図4】分割電極が設けられた従来の金属化フィルムコンデンサ(外部接続電極との間にヒューズを設けたもの)の構造の一例を示す図であり、a)は、当該金属化フィルムコンデンサを構成する各蒸着フィルムの模式図および2枚のフィルムの巻回状態を示す図であり、b)は、コンデンサ内部回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による実施例を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更を行うことが可能である。
本発明の金属化フィルムコンデンサにおけるコンデンサ素子は、図1a)に示されるような表面に金属蒸着層を有する2枚の金属化フィルムが重なり合った状態で巻回して構成されたものであり、電極引き出し側蒸着フィルムに相当する第1誘電体フィルム(図面において「フィルム1」と表記されている)の幅方向中央には、長手方向に沿って一定幅の絶縁マージン(センターマージン)が設けられており、この絶縁マージンによって、金属蒸着層からなる蒸着電極が2つの部分に分割されている。
【0016】
一方、この第1誘電体フィルムの幅と同じ幅、または第1誘電体フィルムの幅よりも若干幅が狭く(第1誘電体フィルムよりも1.5〜2.5mm程度短い幅を有することが好ましい)、電極を引き出さない側の蒸着フィルムに相当する第2誘電体フィルム(図面において「フィルム2」と表記されている)の幅方向両端側には、長手方向に沿って一定幅の絶縁マージン(両端マージン)が設けられている。
この絶縁マージンに挟まれる部分には、図1a)に示すように、第2誘電体フィルムの幅方向中央でT字の横線スリット部が互いに向かい合って、該第2誘電体フィルムの長手方向に一定のピッチで複数のT字形絶縁スリット(非蒸着部)が配置され、このT字形絶縁スリットによって分割された金属蒸着層からなる小面積の分割電極が長手方向に配列して形成されている。
この際、第2誘電体フィルム表面に配置された各T字形絶縁スリットは、図1a)に示されるようにして、T字の縦線スリット部の端が、第2誘電体フィルムの両端部に設けられた絶縁マージンと接続しており、第2誘電体フィルムの長手方向において隣接するT字形絶縁スリットの、T字の横線スリット部の端部と端部との間には幅の狭いヒューズが形成されており、このヒューズの幅は0.2〜1.0mm程度であることが好ましい。
このように、T字形絶縁スリットの横線スリット部が互いに向かい合ってフィルム長手方向に配置されることで、フィルム幅方向に2列にわたって複数の分割電極からなる分割電極部が形成されている。2列にわたって形成された分割電極部の間には、フィルム長手方向に延びる接続電極部が形成されている。第2誘電体フィルムに形成された複数の分割電極の各々に独立して設けられたヒューズ(フィルム長手方向において互いに隣接するT字形絶縁スリットの横線スリット部の端部と端部との間に形成された幅の狭い蒸着部分)の各々は、接続電極部を介して互いに接続されている。このため、複数の分割電極の各々が互いに並列接続され、絶縁破壊が発生した際、比較的大きなエネルギーが流入し、安定したヒューズ動作を実現することができる。
【0017】
尚、本発明における第2誘電体フィルムに設けられるT字形絶縁スリットの形状は、図1a)に示されるものに限定されるものではなく、略T字形のものであれば良く、例えば、ヒューズ部(各T字の横線スリット間に存在する蒸着部)が第1誘電体フィルムの絶縁マージンと対向する限り、T字の横線または縦線スリット部が斜めになっていても良い。
また、フィルム幅方向中央で向かい合うように設置されるT字形絶縁スリットの配置に関しても、図2a)に示されるようにしてT字の縦線スリット部がフィルム長手方向に約1/2ピッチずれて交互に配置されても良く、図2b)に示されるようにしてT字の縦線スリット部が同一直線上に配置されて、T字の横線スリット部の幅方向における位置がずれていても良い。
【0018】
本発明の金属化フィルムコンデンサにおいては、上記の構成を有した第2誘電体フィルムが、図1a)に示されるように、第1誘電体フィルムの幅の内側に位置し、かつ、第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムの電極形成面が同一方向に向けて重なり合った状態で巻回されてコンデンサ素子が形成される。すなわち、蒸着電極間に誘電体フィルムが挟み込まれるように蒸着電極と誘電体フィルムが積層方向に交互に配置される。
そして、巻回後に小判形に成形して得られたコンデンサ素子の両端部に電極引き出し用のメタリコン部を形成し、このコンデンサ素子を電極板で結線して引き出し端子を接続し、ケースに収納してエポキシ樹脂を充填、硬化して金属化フィルムコンデンサとする。
【0019】
尚、本発明では、第2誘電体フィルムに配置される各T字形絶縁スリットのT字の横線スリット部(フィルム長手方向と平行に位置する部分)が、図1a)に示されるように、第1誘電体フィルムの幅方向中央に設けられた絶縁マージンの範囲に入るようにし、各ヒューズが誘電体フィルムを挟んで絶縁マージンと対向して配置されることにより、コンデンサ素子を形成する時にヒューズ部分にかかる応力を小さくすることができ、これによって、ヒューズの動作性が向上する。
この際、T字形絶縁スリットのT字の横線スリット部は、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置(電極境界)よりも絶縁マージン中央方向に位置して、T字の横線スリット部が電極境界よりも0.5mm以上内側の位置にあることが好ましい。
本発明の金属化フィルムコンデンサは、図1b)に示される内部回路を有しており、ヒューズが外部電極の近傍に存在しないために充放電電流でヒューズが動作するのを防止でき、高い耐電圧性能が得られ、絶縁破壊が生じた場合であっても分断される電極面積が小さいために容量減少を抑えることができる。
【実施例】
【0020】
[実施例1] 図1a)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、幅40mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図1a)のような絶縁マージン(幅4mm)を有する、アルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
一方、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図1a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットが配列された、アルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0021】
[実施例2] 図2a)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図2a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットがフィルム長手方向に約1/2ピッチずれて交互に配置された形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0022】
[実施例3] 図2b)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図2a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットのT字の縦線スリット部が同一直線上に配置され、T字の横線スリット部の幅方向における位置がずれた形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
なお、実施例1〜3では誘電体としてポリプロピレンを使用しているが、ポリエチレンテレフタレートなどの、一般的に使用されているその他のプラスチックフィルムを用いても良い。
また、蒸着金属はアルミニウムを使用しているが、亜鉛、銅などを用いても良い。
【0023】
[比較例1] 図3a)による比較例の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図3a)のような絶縁マージンを有し、個々の分割電極を直列に接続した形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられた絶縁スリットの長手方向スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0024】
[比較例2] 図4a)による比較例の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、幅40mmのポリプロピレンフィルムの表面に、図4a)フィルム1のような絶縁マージンを有し、外部接続電極との間にヒューズを設けた形状のアルミニウム蒸着膜からなる、金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、図4a)フィルム2のように幅方向両端に、長手方向に伸延する絶縁マージンを設けたアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第1誘電体フィルムに設けられた絶縁スリットの長手方向スリット部が、第2誘電体フィルムの長手方向に伸延する絶縁マージンと同じ位置に合わせるようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0025】
上記実施例1〜3による本発明の金属化フィルムコンデンサと、上記比較例1、2による金属化フィルムコンデンサについて、JIS C4908に準拠(試験電圧:定格電圧×1.25、試験温度:100℃、試験時間:1000時間 定格電圧印加)してコンデンサの寿命を評価し、また、JIS C4908に準拠(試験温度:100℃)して保安性能を評価した。また、充放電試験(充放電回数:1000回、試験温度:20℃)で静電容量が−5%となる単位巻長さあたりの電流値を評価した。その結果を、以下の表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1の結果からも明らかなように、本発明の実施例1〜3による金属化フィルムコンデンサは、急激な静電容量減少がなく、静電容量減少率のばらつきも小さいこと、また、高い耐電流性能を有し、十分な保安性能を有するものであることが確認された。
一方、比較例1による金属化フィルムコンデンサは、静電容量減少率が若干大きく、静電容量減少率のばらつきも大きいこと、また、耐電流性能も劣り、保安性試験では20台の試料のうち7台が短絡破壊に到ることが確認された。
さらに、比較例2による金属化フィルムコンデンサは、ヒューズ部の発熱の影響により静電容量減少が大きく、また、耐電流性能も劣り、保安性試験では20台の試料のうち2台が短絡破壊に到ることが確認された。
図1
図2
図3
図4