【0016】
一方、この第1誘電体フィルムの幅と同じ幅、または第1誘電体フィルムの幅よりも若干幅が狭く(第1誘電体フィルムよりも1.5〜2.5mm程度短い幅を有することが好ましい)、電極を引き出さない側の蒸着フィルムに相当する第2誘電体フィルム(図面において「フィルム2」と表記されている)の幅方向両端側には、長手方向に沿って一定幅の絶縁マージン(両端マージン)が設けられている。
この絶縁マージンに挟まれる部分には、
図1a)に示すように、第2誘電体フィルムの幅方向中央でT字の横線スリット部が互いに向かい合って、該第2誘電体フィルムの長手方向に一定のピッチで複数のT字形絶縁スリット(非蒸着部)が配置され、このT字形絶縁スリットによって分割された金属蒸着層からなる小面積の分割電極が長手方向に配列して形成されている。
この際、第2誘電体フィルム表面に配置された各T字形絶縁スリットは、
図1a)に示されるようにして、T字の縦線スリット部の端が、第2誘電体フィルムの両端部に設けられた絶縁マージンと接続しており、第2誘電体フィルムの長手方向において隣接するT字形絶縁スリットの、T字の横線スリット部の端部と端部との間には幅の狭いヒューズが形成されており、このヒューズの幅は0.2〜1.0mm程度であることが好ましい。
このように、T字形絶縁スリットの横線スリット部が互いに向かい合ってフィルム長手方向に配置されることで、フィルム幅方向に2列にわたって複数の分割電極からなる分割電極部が形成されている。2列にわたって形成された分割電極部の間には、フィルム長手方向に延びる接続電極部が形成されている。第2誘電体フィルムに形成された複数の分割電極の各々に独立して設けられたヒューズ(フィルム長手方向において互いに隣接するT字形絶縁スリットの横線スリット部の端部と端部との間に形成された幅の狭い蒸着部分)の各々は、接続電極部を介して互いに接続されている。このため、複数の分割電極の各々が互いに並列接続され、絶縁破壊が発生した際、比較的大きなエネルギーが流入し、安定したヒューズ動作を実現することができる。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
図1a)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、幅40mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図1a)のような絶縁マージン(幅4mm)を有する、アルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
一方、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図1a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットが配列された、アルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0021】
[実施例2]
図2a)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図2a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットがフィルム長手方向に約1/2ピッチずれて交互に配置された形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0022】
[実施例3]
図2b)による本発明の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図2a)のような絶縁マージンを有し、かつ、T字形の絶縁スリットのT字の縦線スリット部が同一直線上に配置され、T字の横線スリット部の幅方向における位置がずれた形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられたT字形絶縁スリットのT字の横線スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの本発明の金属化フィルムコンデンサを作製した。
なお、実施例1〜3では誘電体としてポリプロピレンを使用しているが、ポリエチレンテレフタレートなどの、一般的に使用されているその他のプラスチックフィルムを用いても良い。
また、蒸着金属はアルミニウムを使用しているが、亜鉛、銅などを用いても良い。
【0023】
[比較例1]
図3a)による比較例の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、実施例1と同様の金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、幅38mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図3a)のような絶縁マージンを有し、個々の分割電極を直列に接続した形状のアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第2誘電体フィルムに設けられた絶縁スリットの長手方向スリット部が、第1誘電体フィルムの蒸着電極‐絶縁マージン境界位置よりも絶縁マージン中央方向に0.5mm離れて位置するようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0024】
[比較例2]
図4a)による比較例の金属化フィルムコンデンサ
第1誘電体フィルムとして、幅40mmのポリプロピレンフィルムの表面に、
図4a)フィルム1のような絶縁マージンを有し、外部接続電極との間にヒューズを設けた形状のアルミニウム蒸着膜からなる、金属化フィルムを作製し、第2誘電体フィルムとして、
図4a)フィルム2のように幅方向両端に、長手方向に伸延する絶縁マージンを設けたアルミニウム蒸着膜からなる金属化フィルムを作製した。
この際、第1誘電体フィルムに設けられた絶縁スリットの長手方向スリット部が、第2誘電体フィルムの長手方向に伸延する絶縁マージンと同じ位置に合わせるようにした。
そして、この第1誘電体フィルムおよび第2誘電体フィルムを、電極形成面が同一方向を向くようにして重ね合わせて巻回し、小判形に成形した後、得られたコンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続し、次いで引き出し端子を接続してケース内に収納し、エポキシ樹脂を充填、硬化することにより、1000V、5μFの金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0025】
上記実施例1〜3による本発明の金属化フィルムコンデンサと、上記比較例1、2による金属化フィルムコンデンサについて、JIS C4908に準拠(試験電圧:定格電圧×1.25、試験温度:100℃、試験時間:1000時間 定格電圧印加)してコンデンサの寿命を評価し、また、JIS C4908に準拠(試験温度:100℃)して保安性能を評価した。また、充放電試験(充放電回数:1000回、試験温度:20℃)で静電容量が−5%となる単位巻長さあたりの電流値を評価した。その結果を、以下の表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1の結果からも明らかなように、本発明の実施例1〜3による金属化フィルムコンデンサは、急激な静電容量減少がなく、静電容量減少率のばらつきも小さいこと、また、高い耐電流性能を有し、十分な保安性能を有するものであることが確認された。
一方、比較例1による金属化フィルムコンデンサは、静電容量減少率が若干大きく、静電容量減少率のばらつきも大きいこと、また、耐電流性能も劣り、保安性試験では20台の試料のうち7台が短絡破壊に到ることが確認された。
さらに、比較例2による金属化フィルムコンデンサは、ヒューズ部の発熱の影響により静電容量減少が大きく、また、耐電流性能も劣り、保安性試験では20台の試料のうち2台が短絡破壊に到ることが確認された。