【実施例】
【0021】
本発明は、低温タンクであるドーム屋根付き平底円筒貯槽のドーム屋根5を円筒形防液堤2の内部の下部からエアレージングにより上昇させてドーム屋根5の外周部を防液堤2の上端近傍部に暫定的に固定するドーム屋根仮固定方法(
図5〜
図13参照)及びドーム屋根仮固定構造40(
図11〜
図13参照)について説明する。
【0022】
最初に、ドーム屋根付き平底円筒貯槽の基礎コンクリート1とその上にコンクリート製の防液堤2を構築し、その防液堤2内に外槽底板3を構築し、次に防液堤2の内部の下部においてドーム屋根5を組み立ててから、ドーム屋根5をエアレージングするまでの建造方法について簡単に説明する。
【0023】
図1に示すように、基礎コンクリート1とその上に一体的に立設される円筒形の防液堤2とを構築する。この防液堤2の頂部の内周部には、トップリング6が設けられる。次に、防液堤2の内部において基礎コンクリート1の上面に外槽底板3を組み立てる。
【0024】
次に、
図2に示すように、外槽底板3の上側かつ防液提2の内部において、内槽屋根5aと外槽屋根5bとからなるドーム屋根5を組み立てる。
図4に示すように、外槽屋根5bの内面には、半径方向に延びる複数の屋根骨10と、複数の副屋根骨11と、周方向に延びる環状補強骨12〜17とが設けられ、複数の屋根骨10及び複数の副屋根骨11と環状補強骨12〜17とが接合される。
【0025】
内槽屋根5aの内面にも、外槽屋根5bと同様の配置で屋根骨(図示略)と副屋根骨(図示略)と複数のの環状補強骨(図示略)とが接合される。尚、内槽屋根5aと外槽屋根5bとは複数の連結部材7を介して連結される。前記外槽屋根5bの外周部にはドーム屋根5をエアレージングする際に加圧エアを封止する為の環状のシール8が環状の取付け部材9を介して取り付けられる。ドーム屋根5の組み立て後、
図3に示すように、防液堤2の内部のドーム屋根5の下側に加圧エアを供給してドーム屋根5をエアレージングして防液堤2の上端部まで上昇させる。尚、符号4は外槽側板を示す。
【0026】
次に、
図5〜
図13に基づいて、ドーム屋根5をエアレージングして防液堤2の上端部まで上昇させてドーム屋根5の外周部を防液堤2の上端部に仮固定するドーム屋根仮固定方法及びドーム屋根仮固定構造40について説明する。
【0027】
第1工程において、
図5〜
図7に示すように、ドーム屋根5をエアレージングにより上昇させる前に、予め以下の準備を行う。まず、ドーム屋根5の屋根骨10に対応する防液堤2の上端面に鋼板製の敷板21を設置し、この敷板21の内周側端部をトップリング6の上面に溶接接合する。
【0028】
さらに、上記と並行して、ドーム屋根5が防液堤2の内部の下部にある状態で、ドーム屋根5の屋根骨10に対応する位置において外槽屋根板5bを部分的に矩形状に除去した開口部22を形成して屋根骨10の上面を外部に露出させ、その露出した屋根骨10の上面のうち屋根骨10の径方向の外端から所定距離の部位に 側面視にて倒立L形の屋根骨上固定治具23を予め溶接にて固着する。屋根骨上固定治具23は、厚手の鋼製板部材により形成されて径方向向き且つ鉛直向きに配置されている。屋根骨上固定治具23は、径方向向きの脚部23aと、この脚部23aの上端から径方向外方へ延びる水平部23bと、脚部23aの径方向外面に溶接された受板23cとを有する。
【0029】
さらに、屋根骨上固定治具23に対応する門形固定治具24と、この門形固定治具24に対応し且つ門形固定治具24よりも径方向外側に位置するストッパ部材25とを防液堤2の頂部に予め固着する。門形固定治具24は、防液堤2の構築時に防液堤2の上端部分のコンクリートに部分的に埋設した1対のアンカー部26と、この1対のアンカー部26に溶接された門形部材27とからなる。1対のアンカー部26は、防液堤2の上端部の径方向ほぼ中央位置において敷板21の両側に配置され、防液堤2の上端から上方へ鉛直に突出している。各アンカー部26は、径方向に直交状の板部材26aとこの板部材26aの下端に直交状に溶接された水平なアンカー板26bとを有する。
【0030】
門形部材27は、厚手の鋼板を門形に形成したもので径方向と直交状に配置されている。門形部材27は、1対の脚部27aとこれら脚部27aの上端に連なる水平梁部27bとを有し、1対の脚部27aの下端部分が1対のアンカー部26の板部材26aに溶接され、鉛直向きに配置されている。前記ストッパ部材25は、敷板21の径方向外端部分に溶接されている。ストッパ部材25は径方向に直交状の板部材25aと、この板部材25aに溶接された径方向向きの板部材25bとで平面視T形に形成されている。
【0031】
さらに、屋根固定梁28を門形固定治具24に挿通させた状態で、敷板21上に径方向向きに配置しておく。この屋根固定梁28は、H型鋼製の部材であり、その1対のフランジが上下両端に位置している。屋根固定梁28の一端側部分(径方向内端側部分)は、屋根骨固定治具23の付近における屋根骨10の上面の傾斜角度とほぼ同角度の傾斜状に形成され、その傾斜部に溶接された面板28aと、径方向の内端に溶接された面板28bとを有する。屋根固定梁28の径方向内端部がトップリング6の内周側端部とほぼ同位置に位置させておく。
【0032】
尚、屋根固定梁28の下面には、鋼製のスライド板29が溶接されており、
図5に図示の状態では、スライド板29が敷板21の上面に当接している。
【0033】
次に、第2工程において、
図8〜
図10に示すように、ドーム屋根5をエアレージングにより上昇させて屋根骨10をトップリング6に下側から当接又は近接させ且つドーム屋根5にエアレージングの浮上力を作用させた状態で、門形固定治具24に挿通させた水平姿勢の屋根固定梁28により屋根骨固定治具23を支持可能に屋根固定梁28の一端部(径方向内端部)を屋根骨上固定治具23に係合させる。このとき、屋根固定梁28の一端部の面板28bが屋根骨上固定治具23の受面となる受板23cに当接状態になり、スライド板29はトップリング6の上面に当接状態になり、屋根固定梁28と屋根骨上固定治具23の水平部23bの間に隙間が残っている。
【0034】
次に、第3工程において、
図11〜
図13に示すように、ドーム屋根5にエアレージングの浮上力を作用させた状態で、屋根固定梁28の他端部(径方向外端部)とストッパ部材25との間にスペーサ部材30を嵌入すると共に、屋根固定梁28の前記一端部と屋根骨上固定治具23の水平部23bの間及び屋根固定梁28と門形固定治具24の水平梁部27bの間に楔部材31,32を夫々嵌入する。前記スペーサ部材30は、スペーサブロック30aと、2対の楔体30bとからなり、スペーサブロック30aをストッパ部材25に当接させ、スペーサブロック30aと屋根固定梁28の他端部の間に2対の楔体30bを嵌入する。
【0035】
屋根固定梁28の前記一端部と屋根骨上固定治具23の水平部23bの間には、1つの楔部材31を強固に嵌入し、屋根固定梁28と門形固定治具24の水平梁部27bの間には、径方向内側から楔部材32を強固に嵌入する。
尚、第1工程〜第3工程はドーム屋根5の全ての屋根骨10に対して行うものとする。
【0036】
上記の第1工程〜第3工程を行って、ドーム屋根5を上記のドーム屋根仮固定構造40により仮固定した状態に支持してから、防液堤の内部の加圧エアを抜くものとする。
その後、ドーム屋根5の外槽屋根5bの外周端を全長に亙ってトップリング6に溶接し、ドーム屋根仮固定構造40でドーム屋根5を支持する必要がなくなった時には、敷板21、屋根骨上固定治具23、門形固定治具24、ストッパ部材25、屋根固定梁28等を撤去するものとする。
【0037】
以上のように、ドーム屋根仮固定構造40は、ドーム屋根5の屋根骨10に固着された屋根骨上固定治具23と、この屋根骨上固定治具23に対応するように防液堤2の頂部に固着された門形固定治具24と、この門形固定治具24に対応し且つ門形固定治具24よりも径方向外側に位置するように防液堤2の頂部に固着されたストッパ部材25と、門形固定治具24に挿通された水平姿勢の屋根固定梁28であって、ドーム屋根5をエアレージングにより上昇させた状態で、屋根骨上固定治具23に一端部を係合させることで屋根骨上固定治具23を支持可能な屋根固定梁28と、屋根固定梁28の他端部とストッパ部材25との間に嵌入されるスペーサ部材30と、屋根固定梁28の前記一端部と屋根骨上固定治具23の間及び屋根固定梁28と門形固定治具24の水平梁部27bの間に夫々嵌入される複数の楔部材31,32とを、ドーム屋根5の複数の屋根骨10の各々に対応するように設けて構成されている。
【0038】
以上説明したドーム屋根の仮固定方法及びドーム屋根仮固定構造40によれば、次の効果が得られる。
ドーム屋根5の自重の鉛直成分は、屋根骨上固定治具23と門形固定治具24と屋根固定梁28と楔部材31,32とで防液堤2で支持でき、ドーム屋根5の自重の水平方向成分は、屋根骨上固定治具23と屋根固定梁28とスペーサ部材30とストッパ部材25と敷板21を介して防液堤2で支持できるため、ドーム屋根5をエアレージングで上昇させた際には何ら溶接を行うことなく、屋根固定梁28の一端部を屋根骨上固定治具23に係合させ且つスペーサ部材30や複数の楔部材31,32を嵌入する簡単な作業のみでドーム屋根5を確実に短時間で仮固定できる。それ故、雨天時であってもドーム屋根5のエアレージングを行うことができる上、少人数の作業員で低コストでドーム屋根5を仮固定できる。尚、敷板21をトップリング6に溶接し、この敷板21にストッパ部材25を溶接するため、ストッパ部材25を防液堤2にアンカーするアンカー部を省略できる。
【0039】
前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)防液堤2の頂部の全面にチェッカープレートが敷設される場合には、そのチェッカープレートを敷板21として活用することができる。
2)各屋根骨10に対応する門形固定治具24の数は1組に限るものではなく2組又は2組以上設けてもよい。
3)スペーサ部材30のスペーサブロック30aの幅を大きくし、2対の楔体30bの代わりに1対の楔体30bを用いてもよい。
4)その他、当業者であれば、本発明の趣旨逸脱しない範囲で、前記実施例に種々の変更を付加して実施することができる。