(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体は、前記磁石による吸着力を前記大径部の側面に作用させる回転体であり、前記磁性金属回収手段は、前記回転体の側面に摺接されるスクレーパを備えた磁性金属回収手段である請求項1に記載の磁気選別回収装置。
さらに、前記回転体に吸着される磁性金属に付着する非磁性金属に対し、前記液外領域において衝撃を与え、該磁性金属から該非磁性体を分離させるとともに、前記液中領域に落下させる非磁性金属落下手段を備えた請求項1〜5のいずれかに記載の磁気選別回収装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に開示される従来技術は、磁気ドラムを扇型としたことにより、円筒スリーブが回転する範囲には、磁気ドラムの磁気が作用する領域と、磁気が作用しない領域とに区分されることとなり、磁気が作用する領域において磁性金属と非磁性金属とを分離し、その後、磁気が作用しない領域において磁性金属を円筒スリーブから離脱させるものであり、効率的に選別回収を可能とするものであった。
ところが、従来の磁気選別回収装置は、切粉が切削液等によって湿気を含んでいる状態では、切粉同士が付着している場合、特に、磁性金属と非磁性金属とが付着している場合、いずれか一方が他方に伴って移動することとなり、両者の選別性能が著しく低下してしまう結果となっていた。このため、予め切粉を乾燥させ、切削液等による湿気を排除した後に磁気選別回収装置に投入しなければならなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、湿気を帯びた切粉であっても、磁性金属と非磁性金属とを選別回収できる磁気選別回収装置を提供することを目的としている。また、併せて湿気を帯びた切粉であっても、磁性金属と非磁性金属とを選別回収できる切粉の選別回収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、湿気を帯びた切粉は互いに強く付着しており、これを分離させるためには、乾燥させるのではなく、逆に水又はその他の水溶液(以下、単に「液体」または機能を含めて「分離液」と称する場合がある。)を加えればよいと考えた。そして、鋭意実験を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、切削加工によって生じた切粉から、磁性金属と非磁性金属とを選別し、それぞれを回収する磁気選別回収装置であって、適宜量の液体を貯留することができるとともに切粉の投入を許容するタンクと、内部に磁石が設けられ、前記タンクに液体が貯留されるときの液中領域から液外領域に至る範囲に該磁石による吸着可能部位を移動させるように、該タンク内に回転可能に支持された回転体と、前記回転体に吸着される磁性金属を前記液外領域において回収する磁性金属回収手段と、前記液中領域内に存在する非磁性金属を回収する非磁性金属回収手段と
、を備え
、前記回転体は、大径部と小径部とを交互に配置してなり、該大径部の内部に前記磁石が設けられている回転体であることを特徴としたものである。
【0009】
上記構成によれば、タンクに水又はその他の水溶液による液体を貯留させて切粉を投入すると、投入された切粉は、液体によって、相互に付着した切粉同士が分離される。また、回転体が回転することにより、液体が撹拌され、さらに切粉同士の分離が促進される。分離された切粉のうち磁性金属は、内部に磁石が設けられた回転体に吸着されて液中領域から液外領域に移動させられ、磁性金属回収手段によって回収される。そして、液中領域に存在する非磁性金属は、非磁性金属回収手段によって回収される。これらによって、湿気を帯びた切粉であっても、磁性金属と非磁性金属とを選別回収することができるのである。
【0010】
また、本発明
は、切削加工によって生じた切粉から、磁性金属と非磁性金属とを選別し、それぞれを回収する磁気選別回収装置であって、適宜量の液体を貯留することができるとともに切粉の投入を許容するタンクと、内部に磁石が設けられ、前記タンクに液体が貯留されるときの液中領域から液外領域に至る範囲に該磁石による吸着可能部位を移動させるように、該タンク内に回転可能に支持された回転体と、前記回転体に吸着される磁性金属を前記液外領域において回収する磁性金属回収手段と、前記液中領域内に存在する非磁性金属を回収する非磁性金属回収手段と、を備え、前記非磁性金属回収手段は、前記液中領域と前記液外領域との境界近傍で、かつ、前記回転体が該液中領域から該液中領域に移動する側に位置する前記タンクの側面を開口して形成された非磁性金属回収口と、前記回転体の軸心下方から前記非磁性金属回収口に至る範囲を、該回転体が回転するときの最外縁による円形軌跡と同心の円弧状断面に形成された前記タンクの底面と、前記回転体に設けられるとともに前記回転体と一体になって回転し、前記タンクの底面に堆積する非磁性金属を掻き出して前記非磁性金属回収口に移動させる非磁性金属掻出部とを備えた構成とすることができる。この構成によれば、回転体を回転させることで磁性金属も非磁性金属も回収することができ、効率的である。
【0011】
また、本発明の磁気選別回収装置は、さらに、前記回転体に吸着される磁性金属に付着する非磁性金属に対し、前記液外領域において衝撃を与え、該磁性金属から該非磁性体を分離させるとともに、前記液中領域に落下させる非磁性金属落下手段を備えることができる。落下させる方法は、タンクに貯留された液体と同種の液体を噴き掛ける、エアを吹き付ける、振動を与える、フォーク状のスクレーパで引っ掻く等いずれでもよい。この構成によれば、例えばアルミ等の高価値な非磁性金属が磁性体と一緒に回収されることを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明は、切粉の選別回収方法としても適用できる。すなわち、切削加工によって生じた切粉から、磁性金属と非磁性金属とを選別回収する方法であって、相互に付着する切粉の分離を促進させる水又はその他の水溶液による分離液に切粉を浸漬する工程と、切粉が浸漬された前記分離液を撹拌する工程と、磁力を発生する吸着部材を前記分離液の液中に移動させた後、前記分離液の外方に移動させる工程と、前記吸着部材によって前記分離液の外方に移動された磁性金属に対し、前記分離液と同種の液体を噴き掛け、磁性金属に付着している非磁性金属を分離させるとともに、該非磁性金属を前記分離液に戻す工程と、前記吸着部材に吸着された磁性金属を回収する工程と、前記分離液中に堆積した非磁性金属を回収する工程とを含むことを特徴とするというものである。
【0013】
上記構成によれば、分離液に浸漬された切粉は、分離液によって、相互に付着した切粉同士が分離される。また、分離液を撹拌することによって、さらに切粉同士の分離が促進される。分離された切粉のうち磁性金属は、磁力を発生する吸着部材に吸着されて分離液の外方に移動させられ、分離液と同種の液体を噴き掛けられる。これにより、磁性金属に付着している非磁性金属は、磁性金属から分離し、分離液上に落下する。落下せず吸着部材に吸着されたままの磁性金属は、磁性金属回収手段によって回収される。そして、タンク内に堆積した非磁性金属は、非磁性金属回収手段によって回収される。これら一連の工程によって、湿気を帯びた切粉であっても、磁性金属と非磁性金属とを選別回収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、湿気を帯びた切粉であっても、乾燥機にかける等の手間をかけることなく、磁性金属と非磁性金属とを選別回収できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明である磁気選別回収装置を具現化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
[実施の形態1]
まず、第1の実施形態について説明する。
図1および
図2は本実施形態の概略を示す図であり、
図1は正面図であり、
図2は、左側面視における断面(
図1中のA−A断面)図である。これらの図に示すように、本実施形態の磁気選別回収装置1は、タンク10、回転体20、非磁性金属回収手段30および磁性金属回収手段40を備えた構成である。
【0018】
タンク10は、磁力の影響を受けないためにステンレス製により構成され、内部に回転体20を収容できる大きさの概略直方体に形成され、さらに底部に液体50を貯留できるようになっている。このタンク10の両側面には軸受11,12が設けられ、後述の回転体20の軸部22を回転可能に支持するようになっている。また、タンク10の正面側の下部には、非磁性金属回収口13が開口して設けられており、背面側の下部には磁性金属回収口14が開口して設けられている。磁性金属回収口14は、回転体20の軸部22よりも若干下方に設けられており、非磁性金属回収口13は、磁性金属回収口14よりさらに若干下方に設けられている。また、本実施形態には、タンク10の背面側の下部において、非磁性金属回収口13よりも若干下位で開口する液体排出口70が設けられている。この液体排出口70は、タンク10に貯留される液体50を所定の量に維持させるためのものであり、液体排出口70の高さからオーバーフローした液体50を自然流下させ、タンク10の外方に排出させるものである(
図1中の一点鎖線が液体50の液面を示す)。これにより、タンク10の底面から液体排出口70の高さまでの間に、液体50を貯留できる領域(液中領域)が形成されるようになっている。なお、液体排出口70は必須の構成ではなく、これを設けない構成としてもよい。この場合、液体50は、非磁性金属回収口13から自然流下されることとなり、液中領域は、タンク10の底面から非磁性金属回収口13の高さまでの間に形成されることとなる。
【0019】
また、タンク10の底面15は、回転体20の軸心下方から非磁性金属回収口13にかけて、回転体20が回転するときの最外縁による円形軌跡と同心の円弧状断面に形成されている。これにより、タンク10の底面に非磁性金属が堆積する空間を形成することができるとともに、回転体20の周辺部との間に適宜間隔を設けることにより、回転体20の回転により非磁性金属を非磁性金属回収口13へ誘導させることができるのである。他方、回転体20の軸心下方から磁性金属回収口14方向へは、回転体20が回転するときの最外縁による円形軌跡と同心の円弧状断面に連続して、直線状断面となるよう形成されている。これは、タンク10の磁性金属回収口14側底部付近に非磁性金属が溜まる空間を形成するためのものであり、この空間については後述する。
なお、タンク10の上部は開放されており、この開放部分から切粉を投入することができるものである。また、図示のように、上記開放部分に傾斜した底面を有する切粉投入口90を設けることにより、切粉を滑落させつつタンク10内に投入することができる。
【0020】
回転体20は、タンク10の軸受11,12に支持される軸部22に固着され、軸部22の回転に伴ってタンク10内で回転可能となっている。この回転体20は、少なくとも1個設けられ、本実施形態では、図示のように同じ軸部22に4個の回転体20が並列に設けられている。これら4個の回転体20は全て同じ形状になっており、相互に適宜間隔(図は等間隔)を有して配置されている。回転体20の回転方向は、周縁部がタンク10の底面の最下部に最も接近した後、非金属回収手段13に向かって移動する方向(
図1における反時計回り)となっている。なお、軸部22は、片方の軸受11から延出して設けられ、図示しない減速機を介し、図示しないモータに連結されている。
【0021】
ところで、本実施形態の回転体20は、
図3に詳細を示すように、大径部と小径部とを備え、両者が交互に10個ずつ配置されており、大径部を山形に形成することにより小径部が谷状となり、側面21の全体が概略星型に形成されている。回転体20の内部は中空となっており、磁石25を配置できるようになっている。また、大径部のうち最も突出する部分(凸頂点)23と、小径部のうち最も径の小さい部分(凹頂点)24は、同心円上に設けられているが、凹頂点24の位置は、隣り合う凸頂点23の中央に配置されているのではなく、回転方向後方側に接近する状態で僅かに中央からずれた状態で設けられている。本実施形態では、∠凸頂点23は90°、∠凹頂点24は234°となっている。また、凸頂点23とタンク10の底面15との間には、隙間が設けられ、回転体20が回転する際に、大径部の凸頂点がタンク10の底面15に接触しないようになっている。なお、回転体20には、磁石25が内蔵されるものであるが、この回転体20は磁力の影響を受けないためにステンレス製で構成されている。
【0022】
大径部および小径部の幅方向(軸部22の軸線方向)は、適宜幅寸法による平面(外周面)31が形成され、この外周面31は、
図3に示されるように、長さの違う2種類の長方形板32,33が交互に連設されることによって形成されている。これらの長方形板32,33が設けられることにより、回転体20の断面形状を星型の側面21と略同形に形成している。ただし、
図4に示すとおり、厳密には外周面31の形状と側面21の外周形状とは完全には一致しておらず、短い長方形板33の部分は、側面21の外周端縁よりも若干軸心側に設けられている。そして、この短い長方形板33と両側側面21とで形成される溝状の部分が非磁性金属掻出部34として機能するものである。すなわち、非磁性金属回収手段30は、非磁性金属回収口13と、タンク10の底面15と、非磁性金属掻出部34で構成されるものであって、この非磁性金属掻出部34の溝状部分がタンク10の底面15との間で所定空間を形成し、この空間が回転体20の回転に伴って非磁性金属回収口13に移動することとなるから、タンク10の底面15に堆積する非磁性金属を移動させる(掻き出す)ことができるのである。そして、この構成によれば、回転体20を回転させることのみによって、極めて効率よく磁性金属も非磁性金属も回収することができるのである。
【0023】
本実施形態の回転体20がこのような形状であるのは、非磁性金属回収口13に非磁性金属掻出部34の端部が接近したときに、非磁性金属が自重によって確実に排出される角度が必要であること、タンク10の底部に沈んだ磁性金属を確実に回転体20に吸着させるため、回転体20の内部に配設する磁石25をできるだけ回転体20の外周に近付けたいこと、非磁性金属掻出部34の回転前方に非磁性金属が入り込む一定の空間を必要とすること等による。従って、同様の効果をもたらすものであれば、凸および凹頂点の数、角度等は本実施形態に限定されるものではない。なお、タンク10内に貯留される後述する液体50は、できるだけ多いほうが切粉同士を分離する効果が大きいため、液体排出口70はできるだけ高い位置にするのが望ましく、結果的に非磁性金属回収出口13もできるだけ高い位置にするのが望ましいが、非磁性金属回収口13の高さは、上述のとおり、非磁性金属掻出部34との兼ね合いにより決まるものである。
【0024】
回転体20の内部には、
図3および
図4に示すとおり、磁石25が配設されている。磁石25は、直方体形状であり、2個の同種の磁石25,25を一組として鉄製のヨーク26に固定され、そのヨーク26が回転体20の内部に固定されている。ヨーク26は、板状ヨーク27と、棒状ヨーク28,29の二種類で構成され、板状ヨーク27は所定の厚みを有する長方形に形成され、棒状ヨーク28,29は、四角形の棒状に形成されるとともに、上記板状ヨーク27の片面長方形部分の長手方向端縁と短手方向端縁に沿って固定されている。そこで、磁石25は、回転体20の内部表面と板状ヨーク27の間に挟まれた状態で配置され、上記棒状ヨーク28,29も同様に回転体20と板状ヨーク27の間に配置されるものであり、両棒状ヨーク28,29の厚さ寸法は、磁石25の厚さ寸法と同じにしている。板状ヨーク27に設けられる一組の磁石25,25は、長尺の棒状ヨーク29の長手方向に整列して配置され、短尺の棒状ヨーク28に近接する側の磁石25が、回転体20の表面に向かってS極となるように、短尺の棒状ヨーク28から離れている側の磁石25がN極となるように、それぞれ固定されている。このヨーク26の効果により、側面21の方向にのみ磁力が及び、外周面31には磁力が及ばないようになっている。一組の磁石25が固定されたヨーク26は、回転体10の側面21一つに対し、凸頂点23と同数の10個が配設されている。これにより、回転体20は、側面21の外周付近に磁性金属を吸着させ、上方へ移動させることができるのである。回転体20の内部空間は液密に形成されている。
【0025】
本実施形態では、
図1に示したとおり、回転体20は4個設けられている。これらの回転体20は、前述のとおり、それぞれ同形であるが、内部構造が異なるものとなっている。すなわち、中央の2個は磁石25が左右両側面21の内側に配設され、両端の2個はタンク10中心方向の側面21の内側にしか配設されていない。要するに、複数の回転体20が所定の間隔を有して配置されるときの当該間隔側に、磁石25が設けられ、当該磁石による吸着可能部位が形成されるのである。また、軸部22の軸線方向に、各凸頂点23の位置(各磁石の位置)が9°毎ずれるように各回転体20が設けられ、星型形状が、軸線方向に完全に一致しないようになっている。完全に一致していると非磁性金属掻出部34が非磁性金属を掻き出すタイミングが同時になってしまい、タンク10内の液体50が波打って、磁気選別回収装置1全体の振動が激しくなるからである。
【0026】
磁性金属回収手段40は、スクレーパ41と磁性金属回収口14で構成される。スクレーパ41は、ステンレス製で、
図5に示すとおり、細長い長方形の底面部42と、この底面部42の長手方向の両辺に連設する側板部43とで形成されている。側板部43は底面部42に対して135°の角度を有する斜状に設けられ、スクレーパ41が全体として上部を広くする溝形状としている。このような構成のスクレーパ41は、
図2に示すとおり、底面部42の長手方向の一端が磁性金属回収口14に連続し、他端が回転体20方向の斜め上方に延びるように固定されている。また、スクレーパ41は、片側の側板部43の上辺が回転体20の側面21に摺接するように設けられるものであって、磁石25が内側に配設された6枚の側面21に対し、それぞれ個別に設置されるものである。このように、スクレーパ41が回転体20の側面21に摺接されることによって、回転体20の回転に伴って磁石による吸着部位が移動し、その吸着部位に付着した磁性金属を掻き落し、掻き落した磁性金属が自重によって磁性金属回収口14に移動するようにしたものである。従って、同様の効果をもたらすものであれば、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0027】
また、本実施形態では、上記構成に加えて、切粉流しノズル(液体供給手段)60、フラッシングノズル(液体供給手段及び撹拌手段)61、非磁性金属掃いノズル(液体供給手段及び非磁性金属落下手段)62、および、カバー(切粉誘導手段)80,81を備えている。ただし、これらは、その一部を備える構成とすることもできる。
【0028】
切粉流しノズル60は、切粉投入口90の上方に4個設けられ、それぞれが液体50を斜め下方に向けて扇状に噴射させるようになっている。すなわち、切粉流しノズル60は、タンク10内に液体50を供給しつつ、切粉投入口90に投入された切粉をタンク10内に均等に流し入れる役割を果たすものである。液体50の詳細については、後述する。
【0029】
フラッシングノズル61は、隣り合う回転体20の間で、非磁性金属回収口13の斜め下方に3個設けられ、それぞれが液体50を磁性金属回収口14側に向けて水平に勢いよく噴射させるようになっている。すなわち、フラッシングノズル61は、タンク10内に液体50を供給しつつ、タンク10の底部に沈殿している切粉を撹拌し、互いに絡みついている切粉同士を分離させる役割を果たすものである。また、タンク10の底面と回転体20との間に形成される種々の空間のうち、非磁性金属掻出部34の回転前方の空間に非磁性金属を入り込ませるとともに、磁性金属回収口14側(装置背面側)底部付近の空間に一部の非磁性金属を追いやり、そこに溜まった非磁性金属を水流の勢いで液体50中に巻き上がらせ、液体50に浮遊する非磁性金属と一緒に液体排出口70から排出させる効果をも奏するものである。
【0030】
非磁性金属掃いノズル62は、隣り合う回転体20の間で、非磁性金属回収口13の斜め上方に6個設けられ、それぞれが液体50を側面21の磁力発生部位に向けて噴射させるようになっている。すなわち、非磁性金属掃いノズル62は、タンク10内に液体50を供給しつつ、磁性金属に付着した非磁性金属を磁性金属から分離させ、タンク10内に落下させる役割を果たすものである。
【0031】
ところで、タンク10に貯留される液体50、並びに、切粉流しノズル60、フラッシングノズル61および非磁性金属掃いノズル62から供給される液体50は、いずれも同種のものが使用される。具体的には、切削加工に用いられるクーラントと同質ものであるが、切削加工時に使用されるクーラントよりも溶液の濃度が低いものである。その理由を詳述する。
図6は、液体50の流れを表した図である。この図に示すように、液体50は、磁気選別回収装置1外部のクーラントタンク51からポンプPを用いて、切粉流しノズル60、フラッシングノズル61、非磁性金属掃いノズル62に供給される。すなわち、切粉流しノズル60、フラッシングノズル61、非磁性金属掃いノズル62から噴射される液体50は、すべて同じ濃度のクーラントである。そして、各部から供給された液体50の一部は、非磁性金属回収口13から非磁性金属に付着した状態で排出され、磁性金属回収口14から磁性金属に付着した状態で排出され、さらに、その他の液体50は、液体排出口70を通して、タンク10から排出される。その後、排出された液体50は、それぞれ金網等の濾過器52,53,54で濾過され、再びクーラントタンク51に戻るようになっている。ここで、タンク10内に投入される切粉は、切削加工時に使用されたクーラントを付着しており、湿ってはいるものの水分がかなり蒸発しており、付着しているクーラントの濃度が高くなっている。これにより、タンク10から排出される液体50は、タンク内に供給したときよりも濃度が高くなり、クーラントタンク51内の液体50は徐々に濃度が高くなってしまう。このため、クーラントタンク51内の液体50を例えば、通常の濃度の3分の1にし、運転を始めるのである。そして、運転を始めてクーラントタンク51内の液体50が通常の濃度になったところで、タンク内の液体50を3分の2回収し、回収したのと同量の水を追加する。これで、また液体50は、通常の濃度の3分の1になる。このように、液体50の濃度は、上下動するものの、通常用いられるものより低くなっているのである。なお、この構成では、回収した液体50を切削加工等に再利用することができ、非常に好適であるが、切粉に付着しているクーラントの再利用を考慮しなければ、この構成に限定されるものではない。
【0032】
カバー80は、ステンレス製で、
図1および
図2に示すとおり、4個の回転体20のうち、中央の2個に対し、それぞれ回転体20の上部を覆うように設けられている。カバー81は、同じくステンレス製で、
図1および
図2に示すとおり、4個の回転体20のうち、両端の2個に対し、それぞれ回転体20の内側上部を覆うように設けられている。すなわち、カバー80、81は、タンク10内に投入された切粉を液体50上に誘導し、液体50上に落下する前に、回転体20に吸着されるのを防止するものである。従って、例えば漏斗のようなものを用いて切粉を液体50上に誘導させる等、同様の効果をもたらすものであれば、本実施形態の構成に限定されるものではない。また、本実施形態では、カバー80,81は、連結部材85によって連結されており、この連結部材85によって、タンク内に投入された切粉が直接スクレーパ41上に落下し、磁性金属として回収されることを防止している。
【0033】
−磁気選別回収装置1の動作説明−
続いて、磁気選別回収装置1の一連の動作について説明する。ここで説明する一連の動作は、上記実施形態の磁気選別回収装置1の作動態様であるとともに、選別回収方法に係る発明の実施形態を併せて説明するものである。まず、湿気を帯びた切粉は、切粉投入口90に投入されると、切粉流しノズル60から噴射された液体50によって、均等にタンク10内に落下する。その際、カバー80,81によって、液体50上に落下する前に、回転体20に吸着されないようになっている。液体50中に沈降する切粉は、切粉に付着していた切削液等の表面張力がなくなるため、磁性金属や非磁性金属の粒同士が分離する。ここまでが切粉を分離液に浸漬する工程となる。また、フラッシングノズル61から噴射された液体50によって、互いに絡みついている磁性金属と非磁性金属とが分離する。これが分離液を撹拌する工程に相当する。磁性金属は、回転体20に吸着され、液面より上方に移動させられる(磁性金属を移動させる工程)が、その際、非磁性金属掃いノズル62から噴射された液体50によって、磁性金属に付着した非磁性金属がタンク10内に落下する(非磁性金属を分離液に戻す工程)。回転体20に付着したままの磁性金属は、スクレーパ41によって、掻き落され、磁性金属回収口14から排出される(磁性金属を回収する工程)。タンク10内に堆積した非磁性金属は、回転体20と一体に形成された非磁性金属掻出部34によって上方に移動させられ、非磁性金属回収口13から排出される(非磁性金属を回収する工程)。また、一部の非磁性金属は、液体50と一緒に液体排出口70から排出される(これも非磁性金属を回収する工程)。上記のように一連の動作により、切粉から磁性金属と非磁性金属とを選別しつつ回収することができるのである。なお、本実施形態では、非磁性金属回収口13から回収された非磁性金属よりも液体排出口70から回収した非磁性金属のほうが純度が高いことが、実験の結果わかっている。
【0034】
[実施の形態2]
つぎに、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。また、第2の実施形態では、第1の実施形態で設けられていた液体排出口70、切粉流しノズル60、フラッシングノズル61、カバー80,81は設けられていない。
図7は本実施形態の概略を示す平面図であり、
図8はその左側面視における断面(
図7中のD−D断面)図である。これらの図に示すように、本実施形態の磁気選別回収装置2は、タンク110、回転体120а,121b、非磁性金属回収手段130および磁性金属回収手段40を備えた構成である。なお、
図7は、回転体120に設けられる非磁性金属掻出部134について、連結部材135を水平とした状態を示している。また、非磁性金属掃いノズル62(
図2参照)は省略している。
【0035】
タンク110は、第1の実施形態のタンク10とほぼ同様の構成であるが、液体排出口70(
図2)は設けられていない。このため、液体50を貯留できる領域(液中領域)は、タンク10の底面から非磁性金属回収口13の高さまでの間となっている。また、タンク110の底面115は、回転体120а,120bの軸心下方から非磁性金属回収口13にかけて、回転体120а,120bが回転するときの最外縁による円形軌跡と同心の円弧状断面に形成されている。これにより、タンク110の底面に非磁性金属が堆積する空間を形成することができるとともに、回転体120а,120bに設けられた非磁性金属掻出部134が回転体120а,120bと一体になって回転し、非磁性金属を非磁性金属回収口13へ誘導させることができるのである。他方、タンク110の底面115は、回転体120а,120bの軸心下方から磁性金属回収口14方向へかけても、ほぼ回転体120а,120bが回転するときの最外縁による円形軌跡と同心の円弧状断面に形成されている。また、図示のように、磁性金属回収口14に接するように切粉投入口90を設け、切粉を滑落させつつタンク10内に投入することができる。
【0036】
回転体120а,120bは、タンク110の軸受11,12に支持される軸部22に固着され、軸部22の回転に伴ってタンク10内で回転可能となっている。この回転体120a,120bは、少なくとも1個設けられ、本実施形態では、図示のように同じ軸部22に2個ずつの回転体120a,120bが並列に設けられている。これら4個の回転体120a,120bは、相互に適宜間隔(図は等間隔)を有して配置されている。回転体120a,120bの回転方向は、周縁部がタンク10の底面の最下部に最も接近した後、非金属回収手段13に向かって移動する方向(
図8における反時計回り)となっている。
【0037】
ところで、本実施形態の回転体120a,120bは、
図9に詳細を示すように、側面121の全体が円形に形成されている。回転体120a,120bの内部は中空となっており、磁石25を配置できるようになっている。なお、回転体120a,120bには、磁石25が内蔵されるものであるが、この回転体120a,120bは磁力の影響を受けないためにステンレス製で構成されている。軸部22の軸線方向には、適宜幅寸法による平面(外周面)131a,131bが形成されているが、回転体120aと120bとの違いは、この外周面131aと131bの軸方向の長さの違いだけである。この外周面131a,131bは、
図9に示されるように、側面121と同形の円周状断面に形成されている。側面121の外周とタンク10の底部との間には、隙間が設けられている。
【0038】
回転体120a,120bの内部には、
図9に示すとおり、磁石25が配設されている。磁石25は、直方体形状であり、2個一組が鉄製のヨーク126に固定され、そのヨーク126が回転体120a,120bの内部に固定されている。ヨーク126は、長方形状の板状ヨーク127と棒状ヨーク129とで構成され、板状ヨーク127は所定の厚みを有する長方形に形成され、棒状ヨーク129は、四角形の棒状に形成されるとともに、上記板状ヨーク127の片面長方形部分の一方の長辺縁に沿って固定されている。そこで、磁石25は、回転体120a,120bの内部表面と板状ヨーク127の間に挟まれた状態で配置され、上記棒状ヨーク129も同様に回転体120a,120bと板状ヨーク127の間に配置されるものであり、棒状ヨーク129の厚さ寸法は、磁石25の厚さ寸法と同じにしている。ヨーク126は、回転体120a,120bの円形に対して板状ヨーク127の長方形の長辺が弦方向となるように、かつ、上記長方形の二つの長辺のうち、棒状ヨーク129が固定されている長辺が回転体120a,120の周縁側に沿うように固定されている。板状ヨーク127に設けられる一組の磁石25,25は、棒状ヨーク129の長手方向に整列して配置され、回転体120a,120bの回転方向前方に位置する側の磁石25が、回転体20の表面に向かってS極となるように、後方に位置する側の磁石25がN極となるように、それぞれ固定されている。このヨーク126の効果により、側面121の方向にのみ磁力が及び、外周面131a,131bには磁力が及ばないようになっている。一組の磁石25が固定されたヨーク126は、等間隔に10個が配設されている。これにより、回転体120a,120bは、側面121の外周付近に磁性金属を吸着させ、上方へ移動させることができる。回転体120a,120bの内部空間は液密に形成されている。
【0039】
本実施形態では、回転体120a,120bは2個ずつ設けられているが、中央の2個である回転体120aは磁石25が左右両側の側面121の内側に配設され、両端の2個である回転体120bはタンク10中心方向の側面121の内側にしか配設されていない。回転体120aは、磁気選別回収装置1の回転体20に比べて軸方向の長さが短く形成されている。回転体120bは、回転体120aよりも軸方向の長さがさらに短く形成されている。
【0040】
ところで、本実施形態では、
図7〜
図9に示されているように、非磁性金属掻出部134が各回転体120a,120bの中間に形成される間隙部分に配置されている。すなわち、回転体120a,120bを構成する両側の側面121のうち、片方の側面121に装着されるのである。ただし、間隙部分は3個所であることから、全ての回転体120a,120bに設けられるのではなく、いずれかを選択して設けられるのである。本実施形態では、
図7中に記載の最も左に配置される回転体120bには、非磁性金属掻出部134は設けられていない。非磁性金属掻出部134は、磁石25の影響を受けないためにステンレス製で、連結部材135と掻出部材136とで構成されている。連結部材135は、長方形の長手方向の一端が側面121の径方向に沿って固定され、他端が側面121に対し垂直方向に延びた基部と、基部の他端から側面121と平行に維持され、回転体120a,120bの外周方向に向かって延出する連結部とでL字状に形成される板状部材である。他方、掻出部材136は、長方形の長手方向の一端が連結部材135の先端に連接され、他端が側面121の外周方向よりも回転体120a,120bの回転方向の後方に延出するように形成されている。掻出部材136の連結部材135に対する角度は、126°である。また、掻出部材136の先端はタンク10の底面15に摺接し、回転体120a,120bの回転によってタンク10の底面に堆積する非磁性金属を掻き出すことができるようになっている。なお、連結部材135は、ヨーク126上の2つの磁石25の中心を通る半径上に固定されており、それぞれのヨーク126に対し一つずつ設けられている。
【0041】
非磁性金属回収手段130は、非磁性金属回収口13と、タンク110の底面115と、非磁性金属掻出部134で構成されるものであって、この非磁性金属掻出部134の掻出部材136がタンク110の底面115との間で所定空間を形成し、この空間が回転体120a,120bの回転に伴って非磁性金属回収口13に移動することとなるから、タンク110の底面115に堆積する非磁性金属を移動させる(掻き出す)ことができるのである。そして、この構成によれば、回転体120a,120bを回転させることのみによって、極めて効率よく磁性金属も非磁性金属も回収することができるのである。
【0042】
非磁性金属掻出部134がこのような形状をしているのは、スクレーパ41に干渉しないようにするためである。なお、本実施形態では、非磁性金属掻出部134は、回転体120a,120bの正面左側の側面121にだけ設けられているが、内側に磁石25が配設された側面121全てに設けてもよい。また、非磁性金属掻出部134は、タンク10の底面15に摺接しないよう隙間を設けてもよい。
【0043】
[実施の形態3]
つぎに、第3の実施形態について説明するが、第3の実施形態は、第2の実施形態の回転体120a,120bを異なる構成の回転体220に置換するものであるので、この点についてのみ
図10を参照して説明する。また、回転体220においても、第2の実施形態と同様の構成に関しては説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る磁気選別回収装置3の回転体220を示す詳細図である。
図10に示すように、回転体220は、タンク110の軸受11,12に支持される中空の軸部222に固着され、軸部222の回転に伴ってタンク10内で回転可能となっている。
【0044】
また、回転体220の内部には磁気ドラム225が配設されている。磁気ドラム225はタンク110に固定される軸部235に固着され、回転しないようになっている。磁気ドラム225は、軸心方向から見ると中心角が180度より大きい扇型をしており、軸心後方斜め上方から軸心後方斜め下方までが欠けた形状をしている。磁気ドラム225は図示される網掛け部分のみが側面221方向に磁力を発生させ、網掛け部分よりも内側および外周面231側には磁力を発生させないような構成となっている。
【0045】
スクレーパ41は、第2の実施の形態では、回転体120a,120b側の側板43の上辺が側面121に摺接していたが、本実施形態では、近接していればよい。なお、側板43の上端は、磁気ドラム225が欠けた範囲内になるように固定されている。この構成によれば、スクレーパ41は、側面221に接していないため、側面221およびスクレーパ41の摩耗を防ぐことができる。
【0046】
以上、これまで、本発明の実施形態の構成を例示したが、それぞれの構成は、同様の効果を奏するものであればよく、本実施形態に限定されないのはもちろんである。