特許第5912869号(P5912869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912869
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20160414BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20160414BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/08 375
   G03G9/08 371
   G03G9/08 346
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-122249(P2012-122249)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-246402(P2013-246402A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】栄田 朗宏
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−514341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:結着樹脂と荷電制御剤を含む成分を溶融混練して混練物を得る工程、
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕し、分級して、トナー母粒子を得る工程、及び
工程3:トナー母粒子と外添剤を混合して、トナーを得る工程
を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記工程1において、荷電制御剤の含有量が結着樹脂100質量部に対して0.2〜2.5質量部であり、
前記工程3において、外添剤が個数平均粒径37〜150nmのフュームドシリカであり、シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカである外添剤A及び個数平均粒径5〜30nmの疎水性シリカである外添剤Bを含有し、トナー母粒子100質量部に対して外添剤Aを0.4〜3.2質量部混合してなり、外添剤Aの個数平均粒径に対する荷電制御剤の体積中位粒径の比(荷電制御剤の体積中位粒径/外添剤Aの個数平均粒径)が0.7〜2.8である、
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
荷電制御剤の体積中位粒径が50〜300nmである、請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
荷電制御剤が、サリチル酸化合物の金属化合物及びベンジル酸化合物の金属化合物からなる群から選ばれた1種以上である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプリント・オン・デマンド市場が成長しているなか、電子写真技術に対する高画質で、かつ印字画像の安定性への要求はますます高まりつつある。特に、印字画像の耐久性の向上や感光体フィルミングの抑制が望まれている。
【0003】
例えば、湿式粉砕することにより得られ、特定の比表面積である微細化された四級アンモニウム塩化合物を含有するトナーが、帯電安定性、帯電保持性に優れることが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、平均分散径が500nm以下である荷電制御剤を含有し、特定の体積中位粒径及び特定の粒径分布を有するトナーが、帯電の立ち上がりに優れ、画像白地部の汚れ、残像(ゴースト)等の発生を抑制し、長期使用時においてもこれらの問題が発生しにくいことが開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、樹脂A、樹脂B及びワックスがお互いに非相溶で海島状の相分離構造をとり、特定量のワックスを含有するトナーであって、荷電制御剤が分散径0.05〜0.3μmで存在するトナーが、低温定着性、耐オフセット性を満足し、帯電特性を悪化させるワックスが含有しても、良好な帯電特性を有することが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−154026号公報
【特許文献2】特開2009−98678号公報
【特許文献3】特開2003−280244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの従来技術においては、長期で印刷した場合(以下、耐刷時ともいう)の画像濃度の低下、及び感光体フィルミングの発生の抑制が不十分である。
【0008】
本発明は、長期で印刷した場合の画像濃度の低下、及び感光体フィルミングの発生を抑制することができる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
工程1:結着樹脂と荷電制御剤を含む成分を溶融混練して混練物を得る工程、
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕し、分級して、トナー母粒子を得る工程、及び
工程3:トナー母粒子と外添剤を混合して、トナーを得る工程
を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記工程1において、荷電制御剤の含有量が結着樹脂100質量部に対して0.2〜2.5質量部であり、
前記工程3において、外添剤が個数平均粒径37〜150nmの外添剤Aを含有し、トナー母粒子100質量部に対して外添剤Aを0.4〜3.2質量部混合してなり、外添剤Aの個数平均粒径に対する荷電制御剤の体積中位粒径の比(荷電制御剤の体積中位粒径/外添剤Aの個数平均粒径)が0.7〜2.8である、
静電荷像現像用トナーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、耐刷時の画像濃度の低下、及び感光体フィルミングの発生を抑制する効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂と荷電制御剤を含む成分を溶融混練、粉砕、分級して得られたトナー母粒子を外添剤と混合する方法であって、荷電制御剤と外添剤の粒径に特徴を有しており、本発明の方法により得られたトナーは、耐刷時の画像濃度の低下、及び感光体フィルミングの発生を抑制するという効果を奏する。本発明の効果が奏される理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0012】
本発明において、荷電制御剤が、従来の荷電制御剤の粒径よりも小さい粒径、即ち、外添剤の粒径と同程度の粒径を有することにより、結着樹脂中に均一に分散し、トナー母粒子の表面電位が均一になる。さらに、荷電制御剤の粒子径と、ほぼ同じ粒子径の外添剤を用いることにより、耐刷時において、外添剤が脱離することもなく、また、埋め込まれることもなく、トナー母粒子により均一に付着する。その結果、帯電安定性が維持され、画像濃度の低下が抑制される。また、外添剤の脱離が抑制されるために、遊離した外添剤の量が少なくなり、感光体フィルミングの発生も抑制されると考えられる。
【0013】
本発明に用いられる荷電制御剤は、一般的に汎用されている負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれであってもよいが、トナーの帯電安定性を向上させ、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、サリチル酸化合物の金属化合物及びベンジル酸化合物の金属化合物からなる群から選ばれた1種以上が好ましい。
【0014】
サリチル酸化合物の金属化合物としては、式(I):
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Yはクロム、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウム、pは2以上の整数、qは1以上の整数を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0017】
式(I)で表されるサリチル酸化合物の金属化合物は、金属塩及び金属錯体のいずれであってもよいが、本発明においては、トナーの帯電立ち上がり性を向上させる観点から、Yがクロム又は亜鉛である、サリチル酸化合物のクロム錯体及び亜鉛錯体が好ましい。サリチル酸化合物の金属化合物は、カラートナーにおいても好適に使用することができる。
【0018】
式(I)において、トナーの帯電安定性を向上させ、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、R2は水素原子が好ましく、R1及びR3は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、tert-ブチル基がより好ましい。
【0019】
式(I)で表されるサリチル酸化合物の金属化合物の市販品としては、「ボントロンE-81」(R2:水素原子、R1及びR3:tert-ブチル基、Y:クロム、オリエント化学工業(株)製)、「ボントロンE-84」(R2:水素原子、R1及びR3:tert-ブチル基、Y:亜鉛、オリエント化学工業(株)製)、「ボントロンE-304」(R2:水素原子、R1及びR3:tert-ブチル基、Y:亜鉛、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(R2:水素原子、R1及びR3:tert-ブチル基、Y:ジルコニウム、保土谷化学工業(株)製)、「ボントロンE-88」(R2:水素原子、R1及びR3:tert-ブチル基、Y:アルミニウム、オリエント化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0020】
ベンジル酸化合物の金属化合物としては、式(II):
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、Zはホウ素又はアルミニウム、sは2以上の整数、tは1以上の整数を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0023】
式(II)で表されるベンジル酸の金属化合物において、トナーの帯電安定性を向上させ、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、Zはホウ素が好ましい。
【0024】
式(II)で表されるベンジル酸の金属化合物の市販品としては、「LR-147」(Z:ホウ素、日本カーリット社製)、「LR-297」(Z:アルミニウム、日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0025】
荷電制御剤の体積中位粒径は、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、120nm以下がよりさらに好ましい。また、荷電制御剤の体積中位粒径は、50〜300nmが好ましく、80〜200nmがより好ましく、80〜150nmがさらに好ましく、80〜120nmがよりさらに好ましい。
【0026】
通常、市販されている荷電制御剤の体積中位粒径は、2〜5μm程度であるため、本発明では、適宜、粉砕し、分級して、上記体積中位粒径に調整したものを用いる。
【0027】
工程1において、溶融混練に供する成分中の荷電制御剤の含有量は、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、0.2質量部以上であり、0.3質量部以上が好ましく、0.4質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、0.8質量部以上がよりさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、2.5質量部以下であり、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.2質量部以下がさらに好ましい。また、荷電制御剤の含有量は、0.2〜2.5質量部であり、0.3〜2.0質量部が好ましく、0.4〜2.0質量部がより好ましく、0.5〜1.5質量部がさらに好ましく、0.8〜1.2質量部がよりさらに好ましい。
【0028】
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐久性の観点から、ポリエステルを含有することが好ましい。結着樹脂として、ポリエステルのみを用いることが好ましいが、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
【0029】
ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを縮重合することにより得られる。
【0030】
2価のアルコールとしては、例えば、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(III):
【0031】
【化3】
【0032】
(式中、R4O及びOR4はオキシアルキレン基であり、R4はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0033】
アルコール成分としては、トナーの帯電安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、式(III)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(III)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0034】
3価以上のアルコールとしては、例えば、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0035】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、さらに好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0036】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、好ましくは炭素数4〜30、より好ましくは炭素数4〜20、さらに好ましくは炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0037】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0038】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がさらに好ましい。
【0039】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0040】
ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、90〜150℃が好ましい。
【0041】
本発明における結着樹脂は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点の異なる2種以上のポリエステルを含有することが好ましい。
【0042】
軟化点が高い方のポリエステルHと軟化点が低い方のポリエステルLの軟化点の差は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0043】
ポリエステルHの軟化点は、トナーの耐高温オフセット性及び保存性を向上させる観点から、120〜155℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。
【0044】
結着樹脂が複数のポリエステルHを含有する場合は、各ポリエステルHの軟化点と各ポリエステルHの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましく、各ポリエステルが上記範囲となることがより好ましい。
【0045】
ポリエステルLの軟化点は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、90〜120℃が好ましく、90〜115℃がより好ましい。
【0046】
結着樹脂が複数のポリエステルLを含有する場合は、各ポリエステルLの軟化点と各ポリエステルLの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましく、各ポリエステルが上記範囲となることがより好ましい。
【0047】
ポリエステルHとポリエステルLの重量比(ポリエステルH/ポリエステルL)は、20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい。
【0048】
ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0049】
ポリエステルのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、50〜80℃が好ましく、60〜70℃が好ましい。
【0050】
ポリエステルのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0051】
結着樹脂が複数のポリエステルを含有する場合は、各ポリエステルの軟化点及びガラス転移温度と各ポリエステルの重量分率の積の和が、上記範囲内となることが好ましい。
【0052】
ポリエステルの酸価は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
【0053】
ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0054】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0055】
溶融混練に供する成分は、結着樹脂及び荷電制御剤以外に、着色剤、離型剤等を含有していてもよい。
【0056】
本発明において、着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。トナー中の着色剤の含有量は、トナーの印字濃度及び定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましく、3〜8質量部がさらに好ましい。
【0057】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。これらの中では、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスが好ましく、同様の観点から、エステル系ワックスではカルナウバワックスが好ましく、炭化水素系ワックスではパラフィンワックスが好ましい。また、エステル系ワックスとパラフィンワックスを併用することが好ましく、カルナウバワックスとパラフィンワックスを併用することがより好ましい。
【0058】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0059】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。また、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、2質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましい。また、離型剤の含有量は、2〜10質量部が好ましく、4〜7質量部がより好ましい。
【0060】
本発明の製造方法により得られるトナーは、さらに、トナー中に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0061】
本発明のトナーの製造方法は、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、
工程1:結着樹脂と荷電制御剤を含む成分を溶融混練して混練物を得る工程、
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕し、分級して、トナー母粒子を得る工程、及び
工程3:トナー母粒子と外添剤を混合して、トナーを得る工程
を含む。
【0062】
工程1において、溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に着色剤、荷電制御剤等のトナー成分を効率よく高分散させることができる観点から、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えたオープンロール型混練機を用いることが好ましい。
【0063】
溶融混練する成分は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
【0064】
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられるオープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、着色剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
【0065】
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0066】
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30〜100℃が好ましい。
【0067】
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、着色剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
【0068】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/分であることが好ましく、10〜75m/分がより好ましく、25〜50m/分であることがさらに好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/分が好ましく、5〜60m/分がより好ましく、15〜30m/分がさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0069】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
【0070】
工程2は、工程1で得られた混練物を粉砕し、分級して、トナー母粒子を得る工程である。
【0071】
工程1で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕に供する。粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。
【0072】
粗粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。粉砕効率の観点から、ロートプレックスを用いることが望ましい。
【0073】
微粉砕に用いられる粉砕機としては、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、回転型機械ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミルを用いることが望ましい。
【0074】
分級に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
【0075】
分級後、得られるトナー母粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましく、6〜9μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0076】
工程3は、トナー母粒子と外添剤を混合して、トナーを得る工程である。
【0077】
外添剤は、特定の個数平均粒径を有する外添剤Aを含有する。
【0078】
外添剤Aの個数平均粒径は、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、37nm以上であり、45nm以上が好ましく、60nm以上がより好ましく、70nm以上がさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、150nm以下であり、120nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。また、外添剤Aの個数平均粒径は、37〜150nmであり、45〜120nmが好ましく、60〜100nmがより好ましく、70〜90nmがさらに好ましい。
【0079】
外添剤Aとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられるが、本発明では、トナーの流動性及び帯電安定性を向上させ、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、シリカが好ましい。
【0080】
シリカは、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、フュームドシリカが好ましい。フュームドシリカは、四塩化珪素等のケイ素塩化物を気化し、高温の水素炎中での気相反応によって製造される。
【0081】
また、シリカは、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、疎水化処理された疎水性シリカが好ましい。
【0082】
疎水性シリカは、例えば、以下のようにして得られる。シリカ粒子を混合槽にいれ、室温で撹拌しながら、予め疎水化処理剤の必要量を溶剤で希釈した溶液を噴霧する。噴霧した後、シリカ粒子を撹拌しながら槽内を昇温し、さらに撹拌する。その後、冷却することにより、疎水性シリカが得られる。
【0083】
疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示され、具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中では、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、シリコーンオイルが好ましい。
【0084】
トナー母粒子と混合する外添剤Aの使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、0.4質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、3.2質量部以下であり、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.5質量部以下がよりさらに好ましい。また、外添剤Aの使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.4〜3.2質量部であり、0.5〜3.0質量部が好ましく、0.5〜2.5質量部がより好ましく、0.6〜2.0質量部がさらに好ましく、0.7〜1.5質量部がよりさらに好ましい。
【0085】
外添剤Aの個数平均粒径に対する荷電制御剤の体積中位粒径の比(荷電制御剤の体積中位粒径/外添剤Aの個数平均粒径)は、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、0.7以上であり、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、2.8以下であり、2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、1.9以下がさらに好ましく、1.5以下がよりさらに好ましい。また、外添剤Aの個数平均粒径に対する荷電制御剤の体積中位粒径の比は、0.7〜2.8であり、0.8〜2.5が好ましく、0.8〜2.3がより好ましく、0.9〜1.9がさらに好ましく、1.0〜1.5がよりさらに好ましい。
【0086】
外添剤は、さらに、個数平均粒径が5〜30nmの疎水性シリカ(外添剤B)を含有していることが好ましい。
【0087】
外添剤Bの個数平均粒径は、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点から、5nm以上が好ましく、8nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましく、12nm以上がよりさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましく、18nm以下がよりさらに好ましい。また、外添剤Bの個数平均粒径は、5〜30nmが好ましく、8〜25nmがより好ましく、10〜20nmがさらに好ましく、12〜18nmがよりさらに好ましい。
【0088】
外添剤Bとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられるが、本発明では、トナーの流動性を向上させ、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、シリカ及びチタニアが好ましく、シリカがより好ましく、フュームドシリカがさらに好ましい。
【0089】
外添剤Bは、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、疎水性シリカであることが好ましい。疎水性シリカの製造方法、疎水化処理剤については、外添剤Aと同様である。
【0090】
トナー母粒子と混合する外添剤Bの使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、0.7質量部以上がよりさらに好ましい。そして、耐刷時の画像濃度低下を抑制する観点、及び感光体フィルミングを抑制する観点から、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.5質量部以下がよりさらに好ましい。また、外添剤Bの使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.1〜3.0質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましく、さらにシリカの場合、0.5〜2.0質量部が好ましく、0.7〜1.5質量部がより好ましく、0.8〜1.2質量部がさらに好ましい。また、チタニアの場合、0.1〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
【0091】
外添剤として、外添剤A及び外添剤B以外の外添剤を適宜使用してもよい。
【0092】
トナー母粒子と外添剤の混合には、均一に混合する観点から、回転羽根等の攪拌具を有する攪拌装置を用いることが好ましい。回転羽根の数や形状は適宜スケールにあわせて設計されればよいが、2枚以上の回転羽根を使用することが好ましい。具体的には、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0093】
混合条件は、両者を十分に混合させることができる程度であれば、特に限定されず、スケールにあわせて適宜決定すればよいが、10リットル程度のバッチ方式等の攪拌装置を用いる場合は、回転数1000〜5000r/分で、30秒〜2分間程度行うのが好ましい。
【0094】
本発明の方法により得られた静電荷像現像用トナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0095】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所社製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0096】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0097】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0098】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し、そこで得られる融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0099】
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
【0100】
〔荷電制御剤の体積中位粒径〕
荷電制御剤の体積中位粒径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる荷電制御剤の粒径を意味する。
測定機:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(HORIBA社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるようイオン交換水に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、試料分散液を調製する。
測定条件:測定用セルにイオン交換水を加えたのち前記試料分散液を添加し、吸光度が70%から95%の範囲になる濃度で粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径を求める。
【0101】
〔トナー母粒子の体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0102】
樹脂製造例1[樹脂A]
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1286g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2218g、テレフタル酸1603g、及び2-エチルヘキサン酸錫(II)25gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて軟化点が112℃に達するまで反応を行って、樹脂Aを得た。樹脂Aの軟化点は112℃、ガラス転移温度は69℃、酸価は3.1mgKOH/gであった。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0103】
樹脂製造例2[樹脂B]
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1750g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1625g、テレフタル酸1145g、ドデセニルコハク酸172g、及び2-エチルヘキサン酸錫(II)25gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8kPaにて1時間反応を行った。その後、210℃に冷却し、無水トリメリット酸480gを投入し、1時間常圧で反応させた後、40kPaにて軟化点が122℃に達するまで反応を行って、樹脂Bを得た。樹脂Bの軟化点は122℃、ガラス転移温度は64℃、酸価は21.5mgKOH/gであった。
【0104】
荷電制御剤製造例1[荷電制御剤C1]
湿式粉砕機「ボールミルSC100/32-ZZ」(三井鉱山社製)を使用した。サリチル酸化合物の亜鉛錯体(オリエント化学社製「ボントロンE-304」:体積中位粒径4μm)500gをエタノール2833g中に分散(15質量%)させ、ボールとしてジルコニア(φ0.2μm)760gを用い、循環流量3L/分で、25℃環境下で体積中位粒径が100nmになるまで粉砕した。得られた粉砕物はバケット中で乾燥し、さらに10L容のヘンシェルミキサーで乾燥に伴う再凝集を解砕(ST/A0羽根、300回転/分、1分間)し、荷電制御剤C1を得た。
【0105】
荷電制御剤製造例2[荷電制御剤C2]
サリチル酸化合物の亜鉛錯体(オリエント化学社製「ボントロンE-304」:体積中位粒径4μm)をベンジル酸のホウ素錯体(日本カーリット社製「LR-147」:体積中位粒径4μm)に代え、体積中位粒径が150nmになるまで粉砕した以外は、荷電制御剤製造例1と同様に行い、荷電制御剤C2を得た。
【0106】
荷電制御剤製造例3[荷電制御剤C3]
サリチル酸化合物の亜鉛錯体(オリエント化学社製「ボントロンE-304」:体積中位粒径4μm)をサリチル酸化合物のクロム錯体(オリエント化学社製「ボントロンE-81」:体積中位粒径5μm)に代え、体積中位粒径が200nmになるまで粉砕した以外は、荷電制御剤製造例1と同様に行い、荷電制御剤C3を得た。
【0107】
実施例、比較例に用いた荷電制御剤を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
外添剤製造例1[外添剤A1]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体100質量部を混合槽内で20℃にて撹拌し、窒素雰囲気下、シリコーンオイル(信越化学工業社製 KF-96-100cs)10質量部を20質量部のn-ヘキサン溶媒に希釈した溶液を噴霧した。撹拌を続けながら槽内を105℃まで昇温し2時間維持し、その後、20℃まで冷却して、外添剤A1を得た。
【0110】
外添剤製造例2[外添剤A2]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ粒子100質量部を撹拌しながら250℃に加熱した。シリカ原体100質量部に対し、10質量部のヘキサメチルジシラザンを、撹拌しながら水蒸気とともに60分間かけて噴霧し、反応を行った。反応終了後、窒素ガス気流による洗浄を行い、シリカから過剰のヘキサメチルジシラザン及び副生物を除去し、外添剤A2を得た。
【0111】
外添剤製造例3[外添剤A3]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体を個数平均粒径40nmのフュームドシリカ原体に、シリコーンオイル10質量部を15質量部に、n−ヘキサン20質量部を40質量部に代えた以外は外添剤製造例1同様にして外添剤A3を得た。
【0112】
外添剤製造例4[外添剤a4]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体を個数平均粒径35nmのフュームドシリカ原体に、シリコーンオイル10質量部を20質量部に、n−ヘキサン20質量部を40質量部に代えた以外は外添剤製造例1同様にして外添剤a4を得た。
【0113】
外添剤製造例5[外添剤a5]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体を個数平均粒径22nmのフュームドシリカ原体に、シリコーンオイル10質量部を20質量部に、n−ヘキサン20質量部を40質量部に代えた以外は外添剤製造例1同様にして外添剤a5を得た。
【0114】
外添剤製造例6[外添剤A6]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体を個数平均粒径100nmのゾルゲル法で製造したシリカ原体に代えた以外は外添剤製造例1同様にして外添剤A6を得た。
【0115】
外添剤製造例7[外添剤a7]
個数平均粒径80nmのフュームドシリカ原体を個数平均粒径200nmのゾルゲル法で製造したシリカ原体に代えた以外は外添剤製造例1同様にして外添剤a7を得た。
【0116】
実施例、比較例に用いた外添剤を表2、3に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
[トナー製造例]
実施例1〜12及び比較例1〜11(実施例11、12は参考例である)
樹脂A 50質量部、樹脂B 50質量部、及び表4に示す所定量の荷電制御剤、離型剤として「カルナウバワックスC1」(加藤洋行社製、融点:88℃)3質量部、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精鑞社製、融点:75℃)3質量部、及び着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0120】
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/分、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/分、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は4kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
【0121】
得られた混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で1mmに粗粉砕し、その後、流動層式ジェットミル「AFG-400」(アルピネ社製)で微粉砕し、ローター式分級機「TTSP-100」(アルピネ社製)で分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmのトナー母粒子を得た。
【0122】
得られたトナー母粒子100質量部と、表4に示す所定量の外添剤及び外添剤B1 1.0質量部を10L容のヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて1500r/分で1分間混合し、トナーを得た。
【0123】
実施例13(参考例)
外添剤B11.0質量部を外添剤B2 0.2質量部に代えた以外は実施例3と同様に行い、トナーを得た。
【0124】
実施例14(参考例)
外添剤B1を用いなかった以外は実施例3と同様に行い、トナーを得た。
【0125】
[試験例1:耐久性]
線速240mm/sec(A4縦40枚/分相当)に改造した非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 710」(沖データ社製)に、トナーを実装し全面黒ベタ画像を1枚印字した。さらに印字率5%になるパターンで2000枚、4000枚、6000枚印字した後、それぞれ全面黒ベタ画像を1枚印字した。1枚目の全面黒ベタ画像の画像濃度と2000枚印字後(2K)、4000枚印字後(4K)、6000枚印字後(6K)の全面黒ベタ画像の画像濃度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の画像濃度の差により、耐久性を評価した。値が小さいほど耐久性が優れる。結果を表4に示す。
【0126】
[試験例2:感光体フィルミング]
線速240mm/sec(A4縦40枚/分相当)に改造した非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 710」(沖データ社製)に、トナーを実装し、25℃/50%RH環境下にて5%の印字率で耐久試験を行った。500枚印字毎に全面ベタ画像を印字し、トナーの感光体へのフィルミングに起因する白点を目視で観察し、白点が観察された枚数を測定した。6000枚まで印字し、6000枚にて白点が観察されなかった場合、6000<とした。値が大きいほど、感光体フィルミングの抑制に優れる。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4から明らかなように、実施例1〜14のトナーは、比較例1〜11のトナーよりも、耐久性に優れ、感光体フィルミングの抑制に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。