【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の結合検知手段を有する電気コネクタは、
相手の電気コネクタに嵌合する側を嵌合側とし、上記嵌合側同士を対向させたときに相手の電気コネクタへ向かう方向を嵌合方向とし、上記嵌合方向と直交する方向を幅方向とし、上記嵌合方向および上記幅方向と直交する方向を厚さ方向としたときに、
第1ハウジング、およびこの第1ハウジングに設けられた第1コンタクトを有する第1電気コネクタと、上記第1ハウジングに嵌合することになる第2ハウジング、およびこの第2ハウジングに設けられ上記嵌合側の端部に上記第1コンタクトと接触することになる接触部を有する第2コンタクトを有する第2電気コネクタとを備え、
上記第1コンタクトは、上記嵌合側に、一方の電気コネクタの他方の電気コネクタへの挿入過程で上記第2コンタクトの上記接触部が上記第1コンタクトのなかで通過する通過空間が設定された第1コンタクト本体と、上記幅方向に向いた板状部材により形成されて上記第1コンタクト本体から上記通過空間に対応した長さで上記嵌合方向へ延びており、上記嵌合方向の中途部に上記通過空間の上記幅方向の中心線に近い側である上記幅方向の内側へ突き出た接点が設けられていると共に、上記厚さ方向の一方側に案内突片が設けられており、弾性変形により上記接点が上記通過空間から出るまで上記幅方向の内側の反対側である上記幅方向の外側へ変位できるように設けられた第1板とを備え、
上記第2電気コネクタは、さらに、上記厚さ方向に向いた板状部材により形成されて上記第2ハウジングにおける上記第2コンタクトに対して上記厚さ方向にずれた部位から上記嵌合方向へ延びて、上記嵌合側の端部に、上記挿入過程で上記厚さ方向にみて上記通過空間の上記幅方向の中心線に一致する基準線から上記幅方向の端部までの長さが上記通過空間の上記幅方向の中心線から上記幅方向の端部までの長さと上記接点の上記幅方向の突出量との和よりも大きく且つ上記嵌合側の端縁が上記幅方向の外側に向かうと上記嵌合側の反対側である反嵌合側へ向かうように上記厚さ方向にみて斜めに形成された幅広部が設けられた第2板を備えており、
上記挿入過程では、上記接触部が上記接点に接触する前から上記接触部の上記通過空間への挿入長さが挿入過程向け設定値に至るまでは、上記第2板の上記幅広部が上記案内突片を上記幅方向の外側へ押しのけ上記第1板を上記通過空間の上記幅方向の外側へ弾性変形させて上記接点を上記通過空間から出して上記接触部と上記接点との接触を阻止し、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値を越えると、上記幅広部が上記案内突片を当該案内突片の上記反嵌合側へ通過することで上記第1板がその復原力により上記幅方向の内側へ変位して上記接触部と上記接点との接触が開始するように構成している。
【0008】
上記挿入過程では、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値に至るまでは上記接触部と上記接点との接触を阻止するので、上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが導通しないことが検出されたときには、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値に達していないため上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが機械的、および電気的に安定的に接触できる状態になく、上記第1電気コネクタと上記第2電気コネクタとが完全には嵌合していないことが検知される。一方、上記接触部の上記通過空間への上記挿入長さが上記挿入過程向け設定値を越えると、上記接触部と上記接点との接触が開始するので、上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが導通することが検出されたときには、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値を越えたために上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが機械的、および電気的に安定的に接触しており、上記第1電気コネクタと上記第2電気コネクタとが完全に嵌合していることが検知される。
【0009】
その場合、上記第1板および上記第2板は僅かに弾性変形するだけなので、上記従来の電気コネクタに較べて両電気コネクタの上記寸法増大を招くおそれが少なく、コンパクトに収まる。また、上記第1板、および上記案内突片は、上記従来のレバーと無関係に作動する。そのため、上記第1電気コネクタに上記従来のレバーを設けないときでも検知の対象となる第1コンタクトを設けることができ、また上記従来のレバーを設けるときであっても上記レバーと関係づけることなく検知の対象となる第1コンタクトを設けることができる。よって、上記第1電気コネクタに上記従来のレバーを設けるか否かに拘わらず、検知の対象となるコンタクトの設置数、設置位置の自由度が高い。しかも、導通検出専用の回路を要しないので、部品点数の増加を抑えてコスト上昇を抑えることが可能となる。
【0010】
さらに、上記第1板、および上記第2板などは、例えば平板などの板状部材であればよく、上記第1板、および上記第2板の上記嵌合方向などに対する取り付き角度などに格別の精度管理が求められることはなく、また上記第1板、および上記第2板を湾曲形成してもよいが敢えてする必要もない。よって、製造効率が改善される。しかも、上記第1板、および上記第2板などは、例えば平板などの板状部材であればよいので、例えば樹脂、金属などの材料により一般的な製法による成形が可能であり、上記部材の材料選択の自由度が向上する。そして、例えば樹脂などによって成形したとしても、例えば良好に型抜けさせるためにハウジングに製造治具用の孔を設けたり、特殊な成形方法に依ることを余儀なくされる可能性が低くなり、コスト高を招くおそれが少ない。
【0011】
本発明の第2の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1の結合検知手段を有する電気コネクタにおいて、
上記案内突片における上記反嵌合側の端縁が、それぞれ上記厚さ方向に沿って上記通過空間から離れるにつれて上記嵌合側へ向かうように傾斜して形成されており、
上記一方の電気コネクタの上記他方の電気コネクタからの引抜過程では、上記第2板の上記幅広部の上記反嵌合側の端縁が上記案内突片の上記反嵌合側の端縁に乗り上げて上記第2板が上記厚さ方向に弾性変形しながら移動することで上記第1板を上記幅方向へ変位させないようにして上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値よりも短い引抜過程向け設定値に戻るまで上記接触部と上記接点との接触を維持するように構成している。
【0012】
このようにすれば、上記挿入過程で上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値を越えて上記第1電気コネクタと上記第2電気コネクタとが完全に嵌合していることが検知された後に上記引抜過程に移ると、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値よりも短い上記引抜過程向け設定値の位置へ戻るまで上記接触部と上記接点との接触が維持される。そのため、例えば一旦、上記挿入過程を経て完全嵌合した両電気コネクタが上記嵌合方向の反対方向である反嵌合方向へ若干動いても、それに過敏に反応して上記接触部と上記接点との接触が断たれたり、また両電気コネクタが上記反嵌合方向、上記嵌合方向への動きを繰り返したりしても、それに過敏に反応して上記接触部と上記接点との接触、非接触が繰り返されるおそれが少なくなる。
【0013】
本発明の第3の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1又は上記第2の結合検知手段を有する電気コネクタにおいて、
上記第1板が二つ、上記通過空間の上記幅方向の中心線に対して上記幅方向の両側に、それらの二つの上記接点が上記幅方向に対向するように設けられており、
上記第2板の上記幅広部の上記幅方向の長さが、上記通過空間の上記幅方向の長さと上記二つの接点の上記幅方向の突出量との和よりも大きく設けられ、上記嵌合側の端縁が上記基準線から上記幅方向の外側に向かうと上記反嵌合側へ向かうように上記厚さ方向にみて山形に形成されており、
上記二つの第1板と上記第2板とで、上記挿入過程における上記接触部と上記接点との接触開始のタイミングが同期し、さらに上記引抜過程を行うときには上記接触終了のタイミングが同期するように構成されている。
【0014】
このようにすれば、上記第1の結合検知手段を有する電気コネクタにおける上記第1板、および上記第2板などにより発揮される作用が、上記通過空間の上記幅方向の中心線に対して両側でそれぞれ発揮される。そうすると、上記第1板、および上記第2板などに作用する力が上記幅方向に釣り合うので、例えば不意に振動を受けたときであっても上記第1板、および上記第2板などが安定して作動する。
【0015】
本発明の第4の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1ないし上記第3のうちいずれか一つの結合検知手段を有する電気コネクタにおいて、
上記第1板の上記厚さ方向の他端にも上記案内突片が設けられており、
上記第2コンタクトの上記厚さ方向の他方側にも上記第2板が設けられており、
上記複数の案内突片および上記複数の第2板で、上記挿入過程における上記接触部と上記接点との接触開始のタイミングが同期し、さらに上記引抜過程を行うときには上記接触終了のタイミングが同期するように構成されている。
【0016】
このようにすれば、上記第1の結合検知手段を有する電気コネクタにおける上記第1板、および上記第2板などにより発揮される作用が、上記通過空間の上記厚さ方向の中心線に対して両側でそれぞれ発揮される。そうすると、上記第1板、および上記第2板などに作用する力が上記厚さ方向に釣り合うので、例えば不意に振動を受けたときであっても上記第1板、および上記第2板などが安定して作動する。
【0017】
本発明の第5の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1ないし上記第4のうちいずれか一つの結合検知手段を有する電気コネクタにおいて、
上記第1電気コネクタおよび上記第2電気コネクタには、これらが上記嵌合方向に沿って係止継続長さだけ相対移動することを許容すると共にこれらを係止する係止手段が設けられており、
上記挿入過程では、上記係止手段による係止が行われると同時に、又は上記係止手段による係止が行われてから更に上記一方の電気コネクタが上記他方の電気コネクタへ上記係止継続長さよりも短い長さだけ挿入されてから、上記接触部と上記接点との接触が開始するように構成されている。
【0018】
このようにすれば、上記係止手段による係止が行われていなければ上記接触部と上記接点との接触が開始することはないので、上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが導通することが検出されたときには、上記係止手段による係止が行われていることが確認される。また、上記接触部と上記接点との接触が開始してからも、その上記嵌合側において、上記係止継続長さの範囲の一部で上記接触部と上記接点とが擦れて、いわゆるワイピング効果が得られることがあるので、上記接触部又は上記接点の表面の酸化皮膜を削り落として接触不良が改善されることがある。
【0019】
本発明の第6の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第5の結合検知手段を有する電気コネクタにおいて、
上記引抜過程では、上記係止手段による係止が解除されてから更に上記一方の電気コネクタが上記他方の電気コネクタから所定長さだけ引抜かれるまで、上記接触部と上記接点との接触が維持されるように構成されている。
【0020】
このようにすれば、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値を越えて上記第1電気コネクタと上記第2電気コネクタとが完全に嵌合していることが検知された後に上記引抜過程に移ると、上記係止手段による係止が解除されていても、上記接触部の上記通過空間への挿入長さが上記挿入過程向け設定値よりも短い上記引抜過程向け設定値の位置へ戻るまで上記接触部と上記接点との接触が維持される。そのため、例えば一旦、上記挿入過程を経て完全嵌合した両電気コネクタが上記係止継続長さの範囲で相対移動し、上記反嵌合方向へ若干動いても、それに過敏に反応して上記接触部と上記接点との接触が断たれたり、また両電気コネクタが上記反嵌合方向、上記嵌合方向への動きを繰り返したりしても、それに過敏に反応して上記接触部と上記接点との接触、非接触が繰り返されるおそれが少なくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の結合検知手段を有する電気コネクタは、第1電気コネクタおよび第2電気コネクタにおける、両電気コネクタの嵌合が完全であるか否かを検知する機能を備えた部材を、上記嵌合方向と直交する上記幅方向、又は上記厚さ方向に向いた第1板又は第2板などで構成し、その周縁部での接触により上記機能を発揮するようにしたので、両電気コネクタの嵌合が完全であるか否かを検知する機能を備えると共に、両電気コネクタをコンパクトにでき、しかも検知の対象となるコンタクトの設置数、設置位置の自由度を高めることができ、導通検出専用の回路を要しないと共に、製造効率の改善、および上記部材の材料選択の自由度の向上などを実現できる、結合検知手段を有する電気コネクタを提供することができた。
【0022】
本発明の第2の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1の結合検知手段を有する電気コネクタにより得られる効果が得られることに加え、さらに、一旦、上記挿入過程を経て完全嵌合すれば、上記接触部と上記接点との安定した接触を得ることができる。
【0023】
本発明の第3の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1又は上記第2の結合検知手段を有する電気コネクタにより得られる効果が得られることに加え、さらに、上記第1板、および上記第2板などに作用する力が上記幅方向に釣り合うので、例えば不意に振動を受けたときであっても上記第1板、および上記第2板などの安定した作動を得ることができる。
【0024】
本発明の第4の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1ないし上記第3のうちいずれか一つの結合検知手段を有する電気コネクタにより得られる効果が得られることに加え、さらに、上記第1板、および上記第2板などに作用する力が上記厚さ方向に釣り合うので、例えば不意に振動を受けたときであっても上記第1板、および上記第2板などの安定した作動を得ることができる。
【0025】
本発明の第5の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第1ないし上記第4のうちいずれか一つの結合検知手段を有する電気コネクタにより得られる効果が得られることに加え、さらに、上記第1コンタクトと上記第2コンタクトとが導通することを検出することで上記係止手段による係止が行われていることを確認することができ、また、いわゆるワイピング効果による接触不良改善が得られることがある。
【0026】
本発明の第6の結合検知手段を有する電気コネクタは、上記第5の結合検知手段を有する電気コネクタにより得られる効果が得られることに加え、さらに、一旦、上記挿入過程を経て完全嵌合すれば、両電気コネクタが上記係止継続長さの範囲で相対移動しても上記接触部と上記接点との安定した接触を得ることができる。