(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
イネや麦などのイネ科植物はケイ酸吸収性を有すること、及び、イネ科植物の育苗時にケイ酸を施用することは生育向上や病害発生の抑制に有効であることが、知られている。
ケイ酸を供給するための材料としてはスラグ、ケイ酸カルシウム水和物、及びシリカゲル等が挙げられる。これらはケイ酸質肥料として用いられている。中でも、スラグ、及びケイ酸カルシウム水和物は比較的安価であることから、ケイ酸質肥料として広く施用されている。
例えば、特許文献1には、水熱合成して得られるケイ酸カルシウム水和結晶を含有するケイ酸質材を、石膏をバインダーとして粒状にしてなるケイ酸質肥料造粒品が記載されている。
ここで、ケイ酸質肥料は、肥料等試験法において、塩酸又はアルカリで抽出される形態のケイ酸の量(可溶性ケイ酸量)で評価されており、規格上、可溶性ケイ酸量が15質量%以上のものである。
しかし、実際にイネ科植物に肥料を施用する際には、弱酸性〜中性の湛水条件で施用されることから、塩酸等で抽出されるケイ酸の量(可溶性ケイ酸量)ではなく、水で抽出される形態のケイ酸の量が多い肥料が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の
ケイ酸肥料の製造方法によって得られたケイ酸肥料
(以下、「本発明のケイ酸肥料」ともいう。)は、非晶質シリカゲル様化合物を
30〜80質量%の含有率で含む。
本明細書中、ケイ酸肥料とは、水で抽出可能なケイ酸を含む肥料をいう。
また、非晶質シリカゲル様化合物とは、ケイ酸カルシウム水和物を炭酸ガスに接触させて、ケイ酸カルシウム水和物を炭酸化させることで生成する、非晶質シリカを含む物質である。非晶質シリカを含むことは、例えば、FT−IRスペクトルにおける1080cm
−1での吸収によって確認することができる。該物質はカルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、酸素(O)、炭素(C)及び水素(H)を含み、さらに、アルミニウム(Al)等を含んでいてもよい。
ケイ酸肥料中の上記非晶質シリカゲル様化合物の含有率は、ケイ酸肥料に含まれるトバモライト、炭酸カルシウム、結晶性シリカ、及び、その他の成分(ただし、非晶質シリカゲル様化合物を除く。)の各含有率を、XRD(X線回折)、XRF(蛍光X線分析)、及び、ICP発光分光分析等を用いて測定し、ケイ酸肥料の合計(100質量%)から、上記非晶質シリカゲル様化合物以外の含有率を差し引くことで算出することができる。
なお、「その他の成分」の含有率は、XRD、XRFによって算出することができる。
上記非晶質シリカゲル様化合物は、水溶性ケイ酸量が多いため、弱酸性〜中性の湛水条件で施用した際に、水に溶出するケイ酸の量が多い。
本発明のケイ酸肥料の非晶質シリカゲル様化合物の含有率は、製造の容易性や水溶性ケイ酸量を多くする観点から、
30〜80質量%である。該含有率が1質量%未満の場合、水溶性ケイ酸量が少なくなり、施肥効果が小さくなる。該含有率が90質量%を超えると、ケイ酸肥料の製造が困難となる。
本発明のケイ酸肥料には、上記非晶質シリカゲル様化合物の他に、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物(例えば、トバモライト)、及び結晶性シリカ等を含んでもよい。
本発明のケイ酸肥料の
成分組成は、非晶質シリカゲル様化合物の含有率が30
〜80質量%であり、ケイ酸カルシウム水和物の含有率が50質量%以下
(ただし、0質量%は含まない。)であり、かつ、結晶性シリカの含有率が20質量%以下であるものが挙げられる。
【0008】
本発明のケイ酸肥料はケイ酸カルシウム水和物
であるトバモライトを含むオートクレーブ養生軽量気泡コンクリートを、水を供給することなく、40〜95%の相対湿度かつ炭酸ガス雰囲気下で放置することで得ることができる。
ケイ酸カルシウム水和物に炭酸ガスを接触させることで、ケイ酸カルシウム水和物が炭酸化されて、非晶質シリカゲル様水和物が生成される。なお、炭酸化に伴って、不可避的に炭酸カルシウムが生成されるが、イネ科植物等の生育上特に問題は生じない。
上記ケイ酸カルシウム水和物としては、例えば、トバモライト、ゾノトライト、ジャイロライト、フォシャジャイト、ヒレブランタイト等が挙げられる
。また、ケイ酸カルシウム水和物は純粋な物ではなく、CSHゲルや未反応のケイ酸質原料が含まれていてもよい。
中でも、入手の容易性、及び経済性の観点から、トバモライトを用いる
。トバモライトは
、入手の容易性の観点から、主成分としてトバモライトを含むオートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(ALC)を用いる
。
オートクレーブ養生軽量気泡コンクリートとは、ケイ酸質原料と石灰質原料を主原料とし、これに発泡剤を加えて予備養生させた後、オートクレーブ中で水熱合成して得られる多孔質ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする軽量気泡コンクリートである。該コンクリートは、建材や断熱材として大量に製造されており、容易に入手することができて経済的である。また、廃棄物利用の観点から、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリートの製造工程において生じる不良品や、建設現場で発生する端材を利用してもよい。
上記ケイ酸カルシウム水和物は炭酸ガスとの反応性を向上させる観点から、予めボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して、粉粒状にしたものを用いることが好ましい。ケイ酸カルシウム水和物の粒度(粒径)は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。なお、粒度とは、最大寸法(例えば、断面が楕円の場合、長径寸法)をいう。
上記炭酸ガス雰囲気における炭酸ガス濃度は、処理時間の短縮化、及び、炭酸ガス雰囲気の形成の容易性の観点から、好ましくは2〜100体積%、より好ましくは4〜40体積%、特に好ましくは5〜30体積%である。該濃度が2体積%未満であると、非晶質シリカゲル様化合物が生成するのに多大な時間を要するので好ましくない。
処理を行う際の温度は、処理時間の短縮化の観点から、好ましくは10〜100℃、より好ましくは13〜45℃、特に好ましくは15〜30℃である。該温度が10℃未満であると、非晶質シリカゲル様化合物を生成するのに多大な時間を要するので好ましくない。該温度が100℃を超えると、熱エネルギーのコストが増大するので好ましくない。
また、処理を行う際の相対湿度は、処理時間の短縮化、及び、目的とする相対湿度の調整の容易性の観点から、
40〜95%、特に好ましくは50〜80%である。該湿度が2%未満であると、非晶質シリカゲル様化合物を生成するのに多大に時間を要するので好ましくない。
処理を行う時間は、好ましくは1日以上、より好ましくは5日以上、特に好ましくは20日以上である。1日未満であると、得られるケイ酸肥料中の非晶質シリカゲル様化合物の含有率が少なくなる場合がある。
【0009】
本発明のケイ酸肥料は、通常のケイ酸質肥料(例えば、シリカゲル肥料)とは異なり、水溶性ケイ酸量が多い。
本発明のケイ酸肥料の水溶性ケイ酸量は、作物の成長への好ましい影響、及び、目的とする水溶性ケイ酸量を得ることの容易性の観点から、
0.5〜1.8質量%、特に好ましくは0.6〜1.8質量%である。
本発明のケイ酸肥料を、水田等の弱酸性〜中性の湛水条件において施用した場合、より多くのケイ酸が水中に溶出し、作物(例えば、イネ科植物)のケイ酸の吸収量が多くなるため、作物の成長量を増加させることができる。また、病害発生の抑制が期待できる。
【実施例】
【0010】
以下、実施例によって本発明を説明する。
1.使用原料
以下に示す原料を使用した。
(1)ALC(No.1):エーアンドエーマテリアル社製の軽量気泡コンクリートの端材
(2)ALC(No.2):エーアンドエーマテリアル社製の軽量気泡コンクリートの端材
(3)シリカゲル肥料:富士シリシア社製の「イネルギー」
(4)培土:福田石材社製の福田培土
(5)水稲:コシヒカリ
(6)水:イオン交換水
【0011】
使用原料の化学組成を、走査型蛍光X線分析装置(リガク社製、商品名「ZSX100e」)を用いて分析を行った。結果を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
[実施例1]
ALC(No.1)の端材を、粉砕機を用いて、1mm以下の粒度になるまで粉砕した。得られた粉末状のALCを中性化促進槽に入れて、炭酸ガス濃度5体積%、窒素(N
2)濃度80体積%、酸素(O
2)濃度15体積%、温度20℃、相対湿度65%の条件下で7日間静置して、ケイ酸肥料Aを得た。
得られたケイ酸肥料Aを、XRD(X線回折)、FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)を用いて定性分析を行った後、各種鉱物について定量分析を行った。
また、ケイ酸肥料Aを、フーリエ変換型赤外線分光装置(日本分光社製、FT−IR−6100)を用いて分析を行ったところ、FT−IRスペクトルにおいて1080cm
−1に吸収が認められ、非晶質のSiO
2が含まれていることが判明した。
トバモライトの含有率は、「肥料等試験法(2011)可溶性ケイ酸定量」に基づいて溶解した試料の溶液を、ICP発光分光分析を用いて測定した。
炭酸カルシウムの含有率は、差動型示差熱天秤(ブルカーエイエックスエス社製、TG−DTA2020SA)を用いて測定した。
結晶性シリカの含有率は、「肥料等試験法(2011)可溶性ケイ酸定量」に基づいて溶解した試料の残渣を、XRDを用いて測定した。
その他の成分の含有率は、走査型蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX100e)を用いて測定した。
非晶質シリカゲル様化合物の含有率は、全体の量(100質量%)から、トバモライト、炭酸カルシウム、結晶性シリカ、及び、その他の成分の和(%)を差し引くことによって算出した。ケイ酸肥料Aの鉱物組成を表2に示す。
また、ケイ酸肥料Aの水溶性ケイ酸量を、「肥料分析法(1992)水溶性ケイ酸定量」に基づいて測定した。結果を表3に示す。
【0014】
[実施例2]
7日間の静置に代えて、28日間静置する以外は、実施例1と同様にして、ケイ酸肥料Bを得た。得られたケイ酸肥料Bについて、実施例1と同様にして分析を行った。結果を表2及び3に示す。
また、ケイ酸肥料Bを、フーリエ変換型赤外線分光装置(日本分光社製、FT−IR−6100)を用いて分析を行ったところ、FT−IRスペクトルにおいて1080cm
−1に吸収が認められ、非晶質のSiO
2が含まれていることが判明した。
[実施例3]
ALC(No.1)の代わりに、ALC(No.2)を用いる以外は、実施例1と同様にして、ケイ酸肥料Cを得た。得られたケイ酸肥料Cについて、実施例1と同様にして分析を行った。結果を表2及び3に示す。
また、ケイ酸肥料Cを、フーリエ変換型赤外線分光装置(日本分光社製、FT−IR−6100)を用いて分析を行ったところ、FT−IRスペクトルにおいて1080cm
−1に吸収が認められ、非晶質のSiO
2が含まれていることが判明した。
[実施例4]
ALC(No.1)の代わりに、ALC(No.2)を用いる以外は、実施例2と同様にして、ケイ酸肥料Dを得た。得られたケイ酸肥料Dについて、実施例1と同様にして分析を行った。結果を表2及び3に示す。
また、ケイ酸肥料Dを、フーリエ変換型赤外線分光装置(日本分光社製、FT−IR−6100)を用いて分析を行ったところ、FT−IRスペクトルにおいて1080cm
−1に吸収が認められ、非晶質のSiO
2が含まれていることが判明した。
[比較例1〜3]
ALC(No.1)、ALC(No.2)、及びシリカゲル肥料を、各々比較例1〜3とした。各原料の鉱物組成及び水溶性ケイ酸量を実施例1と同様にして分析を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0015】
【表2】
【0016】
【表3】
【0017】
[実施例5〜10、比較例4〜7]
水稲育苗用培土(福田石材社製、福田培土)3000gに各肥料を表4に記載された施用量で加えて混合し、苗床とした。該苗床にコシヒカリを播き、イオン交換水を加えて充分に灌水させて育苗試験を行った。30日後に、地上部分の苗を刈り取り、乾燥器に入れて、80℃の条件下で恒量になるまで乾燥させた。その後、乾燥させた苗の質量(地上部乾物質量)を測定した。
乾燥させた苗1.0gを採取して、無水炭酸ナトリウム10gと混合した。混合物を白金るつぼに入れて、900℃に加熱してアルカリ溶融を行った。放冷後、固塊を熱蒸留水で溶解し、0.5N塩酸200mlとなるように塩酸と蒸留水を加えて希釈した。溶液中のケイ素濃度をICP発光分析法で測定し、苗1本あたりのケイ酸(SiO
2)量に換算して地上部ケイ酸質量を測定した。結果を表4に示す。
【0018】
【表4】
【0019】
表2に示されるように、ケイ酸カルシウム水和物を炭酸ガス雰囲気下に放置することで、非晶質シリカゲル様化合物を含むケイ酸肥料を製造することができる。また、該肥料は、表3、4で示されるように、水溶性ケイ酸量が増加しており、該肥料をイネ科植物に施用すれば、吸収されるケイ酸量が増えて、イネ科植物の成長量が増大することがわかる。