特許第5912892号(P5912892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912892
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20160414BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F16F9/32 J
   F16F9/54
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-135581(P2012-135581)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1751(P2014-1751A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】島井 賢一
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−028230(JP,A)
【文献】 米国特許第06126198(US,A)
【文献】 特開2006−231943(JP,A)
【文献】 特開2006−233986(JP,A)
【文献】 特開平06−109056(JP,A)
【文献】 特開平08−159200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の円筒部を有するナックルが外側に装着されることで当該ナックルを介して車両の車輪側に連結されるダンパチューブを有する懸架装置であって、
前記ダンパチューブは、前記ナックルの中心線方向の移動を抑制するように外周面の全周に渡って外側に突出した突出部と、当該ナックルが装着される方向に当該突出部から所定距離離れた所に外周面の円周方向の1箇所において外側に突出した突起と、を備え
前記ナックルはボルトとナットで締め付けられることにより前記円筒部の円周方向の1箇所が分断された分断部の幅が小さくなるように変形されることで前記ダンパチューブに装着され、
前記ダンパチューブの前記突起は、前記ナックルが当該ダンパチューブに装着された状態で前記ボルトに対して前記突出部とは反対側に位置する
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記ダンパチューブの前記突起の大きさは前記ナックルの前記分断部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記所定距離は、前記ナックルが前記ダンパチューブに装着されたときに、前記突出部から前記ボルトまでの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンション機構(懸架装置)を構成する油圧緩衝装置として、特許文献1には、以下のように構成された装置が記載されている。すなわち、ダンパチューブに、ナックル抜け止め用リブとナックル位置決め用突起を有するナックル取付用バルジ部を成形し、ナックル取付用バルジ部の下部で、ナックル位置決め用突起に対応する位置に、ナックル固定用へこみ部を成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンパチューブに、ナックルの移動を抑制する部位を簡易に成形できる構造であることが望ましい。
本発明は、簡易な構造でナックルの移動を抑制することができるダンパチューブを備えた懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、円筒状の円筒部を有するナックルが外側に装着されることで当該ナックルを介して車両の車輪側に連結されるダンパチューブを有する懸架装置であって、前記ダンパチューブは、前記ナックルの中心線方向の移動を抑制するように外周面の全周に渡って外側に突出した突出部と、当該ナックルが装着される方向に当該突出部から所定距離離れた所に外周面の円周方向の1箇所において外側に突出した突起と、を備え、前記ナックルはボルトとナットで締め付けられることにより前記円筒部の円周方向の1箇所が分断された分断部の幅が小さくなるように変形されることで前記ダンパチューブに装着され、前記ダンパチューブの前記突起は、前記ナックルが当該ダンパチューブに装着された状態で前記ボルトに対して前記突出部とは反対側に位置することを特徴とする懸架装置である。
【0006】
ここで、前記ダンパチューブの前記突起の大きさは前記ナックルの前記分断部の幅よりも小さいとよい。
また、前記所定距離は、前記ナックルが前記ダンパチューブに装着されたときに、前記突出部から前記ボルトまでの距離よりも大きいとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構造でナックルの移動を抑制することができるダンパチューブとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る懸架装置の概略構成を示す図である。
図2図1のII方向から見た図である。
図3】ダンパチューブにおける図2のIII−III部の断面図である。
図4】(a)は、ダンパチューブにおける中心線方向の一方の端部側にナックルを取り付けた状態を示す図である。(b)は、(a)のIVb−IVb部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る懸架装置1の概略構成を示す図である。
本実施の形態に係る懸架装置1は、自動車などの車両に適用されるストラッド型サスペンションである。懸架装置1は、図1に示すように、有底筒状であり内部に減衰装置(不図示)を収納するダンパチューブ10と、このダンパチューブ10内に収納されたピストン(不図示)を支持するピストンロッド20と、このピストンロッド20の外側に配置されたスプリング30と、を備えている。ピストンロッド20は、円柱状または部分的に円筒状の部材であり、円柱または円筒の中心線方向の一方の端部側(図1では下側)にピストンが取り付けられ、中心線方向の他方の端部側(図1では上側)にナット21が取り付けられている。以下、ピストンロッド20の円柱または円筒の中心線方向を、単に「中心線方向」と称す場合がある。
【0010】
懸架装置1は、ダンパチューブ10の外周に取り付けられてスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、ピストンロッド20の中心線方向の他方の端部側における外周に取り付けられてスプリング30の上端部を支持する上側ブラケット部材72(後述)とを備えている。スプリング30の下端部と下スプリングシート31との間には下シートラバー35が介在し、スプリング30の上端部と上側ブラケット部材72(後述)との間には上シートラバー36が介在している。
【0011】
また、懸架装置1は、ダンパチューブ10から飛び出しているピストンロッド20の外周に圧入されたバンプラバー41と、このバンプラバー41の外周部に配置されたバンプラバーカップ42とを備えている。図示のバンプラバー41は、中心線方向における一方の端部側(下側)から他方の端部側(上側)に向けて外径が段々と大きくなるように形成されている。また、懸架装置1は、ダンパチューブ10におけるピストンロッド20の摺動部に装着されたバンプストッパキャップ43を備えている。
【0012】
また、懸架装置1は、上端部がバンプラバーカップ42の外周に装着されるとともに下端部が下スプリングシート31に装着され、この間のダンパチューブ10およびピストンロッド20の外周を覆う蛇腹状のダストカバー50を備えている。ダストカバー50の下端部は、下スプリングシート31に、例えば、締め付けリング(不図示)およびビスにて締結されている。
【0013】
また、懸架装置1は、ピストンロッド20の上端部側において上下方向に配置され、ピストンロッド20を車体に対して弾性的に連結するサスペンションサポート60を備えている。
サスペンションサポート60は、ピストンロッド20の他方の端部側(図1においては上側)を通して設けられる座金65と、この座金65の外周を取り囲み車体側に固定されるブラケット部材70と、これらの座金65とブラケット部材70との間に配置される弾性部材であるマウントラバー80とを備えている。
【0014】
座金65は、円板状の部材であり、円板の中央部にピストンロッド20の中心線方向の他方の端部側を挿入する中央孔が形成されており、ナット21によってこの中央孔に挿入されたピストンロッド20の中心線方向の他方の端部に対して固定される。この座金65は、例えば鉄やアルミニウムの合金から形成される。
ブラケット部材70は、上方に開口する椀状の下側ブラケット部材71と、その上部の開口を覆う上側ブラケット部材72とを有する。そして、下側ブラケット部材71と上側ブラケット部材72とが重ね合わさることで、マウントラバー80を収納する収納部が形成される。そして、ブラケット部材70は、下側ブラケット部材71と上側ブラケット部材72とを重ね合わせた状態で、ボルト33で締結することにより、車体に対して固定される。
【0015】
マウントラバー80は、基本形が円筒状の部材であり、内周径が座金65の外形よりも小さい。また、マウントラバー80には、中心線方向中央部に、内周面から凹んだ内周溝が形成されている。この内周溝は、座金65を保持するよう座金65に対応した断面形状であり、本実施の形態に係るマウントラバー80においては、内周溝の断面は、略長方形である。マウントラバー80は、座金65とこの座金65の周囲を取り囲むブラケット部材70とが接触することを抑制する弾性部材であり、ダンパチューブ10やスプリング30で吸収しきれずに、車輪からピストンロッド20及び座金65を介して伝わる振動を吸収し、このような振動が車体へ伝達されるのを防止する。このマウントラバー80の材質としては、合成樹脂材、あるいはゴム材等であることを例示することができる。
【0016】
以上のように構成された懸架装置1においては、ダンパチューブ10における中心線方向の一方の端部側がナックル100(図4参照)を介して車輪側に連結される。
図2は、図1のII方向から見た図である。図3は、ダンパチューブ10における図2のIII−III部の断面図である。図4(a)は、ダンパチューブ10における中心線方向の一方の端部側にナックル100を取り付けた状態を示す図である。図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb部の断面図である。
【0017】
ダンパチューブ10は、中心線方向の一方の端部側に、外周面から中心線方向に交差する方向に外周面の全周に渡って突出した突出部11と、突出部11よりも中心線方向の一方の端部側に突出部11から所定距離離れた所であって外周面の周方向の1箇所に外周面から中心線方向に交差する方向に突出する突起12とを有している。
【0018】
ここで、ナックル100は以下のように構成されている物であることを例示することができる。すなわち、ナックル100は、その上部に円筒状の円筒部101を有している。円筒部101には、周方向の1箇所を分断する分断部の一例としてのスリット102が形成されている。スリット102の両側には、円筒部101の外周面から中心線方向に交差する方向に突出するボス104,105が設けられ、ボス104,105にはボルト110を通す孔であるボルト挿通孔104a,105aが形成されている。そして、ボルト挿通孔104a,105aを通されたボルト110がナット120に締め付けられることで、ナックル100は、スリット102の幅が小さくなるように変形する。
【0019】
ダンパチューブ10の突出部11の外形は、ナックル100の円筒部101の内径よりも大きく成形されている。それゆえ、突出部11は、その下方に取り付けられたナックル100の、中心線方向における他方の端部側への移動を抑制する部位として機能する。
【0020】
ダンパチューブ10の突起12の円周方向の大きさは、ナックル100のスリット102の幅よりも小さく成形されている。また、突起12の外周面からの突出量は、ナックル100がダンパチューブ10に装着された状態で、ナックル100の円筒部101の内径よりも大きくなるように成形されている。それゆえ、突起12は、ナックル100がダンパチューブ10に装着される際にスリット102内に配置されることで、ダンパチューブ10に対するナックル100の円周方向の位置を定める部位として機能する。
【0021】
また、突起12の中心線方向の位置は以下のように設定されている。すなわち、ボルト110がナット120に締め付けられることで、ナックル100がダンパチューブ10に装着された状態で、突起12がボルト110の下方に位置するように設定されている。言い換えれば、突出部11から突起12までの距離は、突出部11からボルト110までの距離よりも大きい。それゆえ、突起12は、ダンパチューブ10に装着されたナックル100が、中心線方向における一方の端部側へ移動するのを抑制する部位として機能する。
【0022】
次に、ダンパチューブ10へのナックル100の装着手順について説明する。
ナックル100の円筒部101を、ダンパチューブ10における中心線方向の一方の端部側から挿入し、スリット102内に突起12を嵌め込み、円筒部101における中心線方向の他方の端部側(図4(a)では上側)の端面が突出部11に突き当たるまで、あるいは突出部11のやや下方まで中心線方向の他方の端部側へ移動させる。
【0023】
その後、ナックル100のボス104,105に通したボルト110とナット120とを締め付けることで、スリット102の幅を小さくして、ナックル100の円筒部101の内周面とダンパチューブ10の外周面との接触圧力を高める。このとき、ボルト110は、ダンパチューブ10の突起12よりも中心線方向の他方の端部側に位置させる。
【0024】
次に、ダンパチューブ10の作用について説明する。
以上のように構成されたダンパチューブ10においては、突出部11が、ナックル100の、中心線方向における他方の端部側への移動を抑制するとともに、突起12が、ナックル100の、中心線方向における一方の端部側への移動を抑制する。また、突起12は、ダンパチューブ10に対してナックル100が周方向に回転することを抑制する。
【0025】
このように、本実施の形態に係るダンパチューブ10においては、ダンパチューブ10に、中心線方向における他方の端部側へのナックル100の移動を抑制する突出部11から、ナックル100が装着される方向へ所定距離離れた所に突起12を設けることで、中心線方向における一方の端部側へのナックル100の移動と、周方向の移動とを抑制することを実現している。
【0026】
それゆえ、ダンパチューブ10に対して、中心線方向における一方の端部側へナックル100が移動するのを抑制する部位と、ナックル100が周方向へ移動するのを抑制する部位とを別々に成形する(設ける)のと比較すると、ダンパチューブ10の製造工程を少なくすることができる。これにより、ダンパチューブ10を簡易かつ低廉に製造することができる。同様に、ダンパチューブ10に対して、中心線方向における一方の端部側へナックル100が移動するのを抑制する部品と、ナックル100が周方向へ移動するのを抑制する部品とを別部品とするのと比較すると、部品点数を削減することができるので、コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…懸架装置、10…ダンパチューブ、11…突出部、12…突起、20…ピストンロッド、21…ナット、60…サスペンションサポート、65…座金、70…ブラケット部材、80…マウントラバー、100…ナックル、102…スリット
図1
図2
図3
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