(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912913
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】車載機器
(51)【国際特許分類】
H04W 84/12 20090101AFI20160414BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20160414BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20160414BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20160414BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20160414BHJP
【FI】
H04W84/12
G08G1/09 F
G08B27/00 C
H04M11/04
H04W88/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-143172(P2012-143172)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-7649(P2014-7649A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】小堀 雅之
【審査官】
遠山 敬彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−118861(JP,A)
【文献】
特開2004−056730(JP,A)
【文献】
特開2009−276954(JP,A)
【文献】
特開2008−011246(JP,A)
【文献】
特表2009−535948(JP,A)
【文献】
特開2005−197773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 27/00
G08G 1/09
H04B 7/24− 7/26
H04M 11/04
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末との間において、携帯端末からのアクセスを制限するための所定のセキュリティが設定された第1通信モードでの近距離無線通信と、前記セキュリティが解除された第2通信モードでの近距離通信とが可能となる無線通信ユニットと、
前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第1通信モードでの近距離通信が可能な状態において、緊急通信を行うべきであるか否かを判定する緊急通信判定手段と、
該緊急通信判定手段により前記緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記無線通信ユニットを、携帯端末との間で前記第2通信モードでの近距離通信が可能な状態に切り替える通信モード切り替え手段と、
前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第2通信モードでの近距離通信が可能な状態にあるときに、該無線通信ユニットにアクセスした携帯端末に対して、所定の緊急情報を前記無線通信ユニットに配信させる通信制御手段とを有し、
前記無線通信ユニットが携帯端末との間で行う近距離無線通信は、無線LANの規定に従った無線LAN通信であり、
前記緊急通信判定手段により前記無線通信ユニットが緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記無線通信ユニットが提供する無線LAN通信に関する識別子を構成する文字列を緊急時の情報配信であることを表す所定の文字列に変える識別子変更手段を有する車載機器。
【請求項2】
前記緊急通信判定手段は、所定の緊急時操作がなされたか否かに基づいて、前記緊急通信を行うべきであるか否かを判定する請求項1記載の車載機器。
【請求項3】
緊急警報放送を受信する放送受信手段を有し、
前記緊急通信判定手段は、前記放送受信手段により緊急警報放送が受信されたか否かに基づいて、前記緊急通信を行うべきであるか否かを判定する請求項1記載の車載機器。
【請求項4】
前記緊急情報は、所定エリアの地図を表す地図情報を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の車載機器。
【請求項5】
前記緊急情報は、所定の情報源の所在を表す情報を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の車載機器。
【請求項6】
前記無線通信ユニットが携帯端末との間で行う近距離無線通信は、無線LANの規定にて定められた無線LAN通信であり、
前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第1通信モードにて行う無線LAN通信に関する識別子を隠す識別子遮蔽手段と、
前記緊急通信判定手段により前記無線通信ユニットが緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記識別子を隠すことを解除する識別子遮蔽解除手段とを有する請求項1乃至5のいずれかに記載の車載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時等において緊急情報を配信する無線通信ユニットを有する車載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されている広域災害情報発信システムが知られている。このシステムでは、災害等が発生したときに、災害情報配信センタから配信される情報に基づいて車両が避難情報や災害詳細情報を作成し、それらの情報を車−車間通信によって拡散させる。そして、それらの情報を作成した車両、及び、それらの情報を車−車間通信により受信した車両が、車内及び車外に向けてそれらの情報を報知(表示など)することにより各車両の内外の人々にそれら避難情報や災害詳細情報が伝えられる。
【0003】
このようなシステムによれば、車両をネットワーク化し、その車両のネットワーク内で拡散される避難情報や災害詳細情報をその車両内の人や車両の近傍にいる人達に伝えることができるので、公共通信網が障害を受け、また、輻輳等で各人の携帯端末(スマートフォン等)によって情報を得ることができない状況であっても、人々に避難情報や災害詳細情報を伝えることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−205118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のシステムでは、車−車間通信を行うための通信装置が必要であり、システム自体が複雑になる。また、車−車間通信で情報の拡散が可能な範囲が限定的であり、結果的に、より多くの車両が災害情報配信センタから配信される情報を受信しなければならず、車−車間通信の効果は限定的である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で多くの人達に災害時等の緊急時に必要な情報を提供することのできる車載機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載機器は、携帯端末との間において、携帯端末からのアクセスを制限するための所定のセキュリティが設定された第1通信モードでの近距離無線通信と、前記セキュリティが解除された第2通信モードでの近距離通信とが可能となる無線通信ユニットと、前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第1通信モードでの近距離通信が可能な状態において、緊急通信を行うべきであるか否かを判定する緊急通信判定手段と、該緊急通信判定手段により前記緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記無線通信ユニットを、携帯端末との間で前記第2通信モードでの近距離通信が可能な状態に切り替える通信モード切り替え手段と、前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第2通信モードでの近距離通信が可能な状態にあるときに、該無線通信ユニットにアクセスした携帯端末に対して、所定の緊急情報を前記無線通信ユニットに配信させる通信制御手段とを有
し、前記無線通信ユニットが携帯端末との間で行う近距離無線通信は、無線LANの規定に従った無線LAN通信であり、前記緊急通信判定手段により前記無線通信ユニットが緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記無線通信ユニットが提供する無線LAN通信に関する識別子を構成する文字列を緊急時の情報配信であることを表す所定の文字列に変える識別子変更手段を有する構成となる。
【0008】
このような構成により、無線通信ユニットは、通常時において、セキュリティによってアクセス制限された携帯端末からのアクセスを許容することなく、セキュリティによってアクセス制限されていない携帯端末との間で第1通信モードでの近距離通信を行うことができる。この場合、前記セキュリティによってアクセス制限のされていない携帯端末を利用する限定的な利用者に対して情報を提供することができる。一方、無線通信端末は、このような限られた利用者が利用する携帯端末との間で第1通信モードでの近距離通信が可能な状態において、例えば、災害発生時等に、緊急通信を行うべきであると判定されると、携帯端末との間で前記セキュリティが解除された第2通信モードでの近距離通信が可能になる。そして、無線通信ユニットは、前記第2通信モードでの近距離通信によって携帯端末に対して所定の緊急情報を配信し得る。この場合、携帯端末に対してセキュリティによ
るアクセス制限がなされることなく、無線通信ユニットと近距離通信可能な車両内外の多くの携帯端末の利用者に対して所定の緊急情報を提供することができる。
更に、このような構成により、無線通信ユニットは、緊急通信を行うべきであると判定されると、携帯端末との間で前記セキュリティが解除された第2通信モードでの無線LAN通信が可能となる。このとき、前記無線通信ユニットによる無線LAN通信に関する識別情報(SSID:Service Set Identifier)を構成する文字列が所定の文字列に変えられる。このため、携帯端末は、その識別情報に基づいて、無線通信ユニットにアクセスして無線LAN通信を行うことができる。この場合、変えられた後の識別情報の文字列が、緊急時を表し得るものであれば、各携帯端末を利用する利用者は、種々の無線LAN通信に関する複数の識別情報(SSID)が提示されたとしても、緊急時を表し得る当該文字列にて表された識別情報(SSID)によって、緊急時の情報を得ることのできる無線LAN通信を容易に特定することができる。
【0009】
前記緊急通信を行うべきであるか否かの判定は、乗員等による所定の緊急時操作がなされたか否かに基づいて、なされるものであっても、災害発生情報や緊急避難情報に関する緊急警報放送を他の無線機器(AM/FMラジオ、災害放送受信器等)にて受信したことや、それらの組合せに基づいて、更に、車両が走行不能状態になった条件を加味するなど、種々の条件に基づいて行うことができる。
【0010】
本発明に係る車載機器において、前記無線通信ユニットが配信すべき前記緊急情報は、所定エリアの地図を表す地図情報を含むものであっても、所定の情報源の所在を表す情報を含むものであってもよい。
【0011】
前記地図情報は、車載機器(車両)の現在位置を含むものであれば、利用者は現在位置から近隣施設への道順を容易に知ることができる。また、地図情報は、避難場所となっている車載機器(車両)の近隣施設(エリア)が地図上で明示されていることが好ましい。また、前記所定の情報源は、情報を提供する公共施設等の情報提供施設、機関であっても、種々の緊急情報を提供するインターネット上のサイト等であってもよい。
【0014】
更に、本発明に係る車載機器において、前記無線通信ユニットが携帯端末との間で行う近距離無線通信は、無線LANの規定にて定められた無線LAN通信であり、前記無線通信ユニットが携帯端末との間で前記第1通信モードにて行う無線LAN通信に関する識別子を隠す識別子遮蔽手段と、前記緊急通信判定手段により前記無線通信ユニットが緊急通信を行うべきであると判定されたときに、前記識別子を隠すことを解除する識別子遮蔽解除手段とを有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、通常時において、無線通信ユニットが、携帯端末との間で第1通信モードでの行う無線LAN通信に関する識別子(SSID)が隠されるので、更に高いセキュリティレベルでの無線LAN通信が可能になる。一方、災害時等において緊急通信を行うべきであると判定されて、無線通信ユニットが携帯端末との間で前記セキュリティが解除された第2通信モードでの無線LAN通信を行う際に、その無線通信LAN通信に関する識別子(SSID)の携帯端末に対する隠しが解除されるので、無線通信ユニットと無線LAN通信可能な車両内外の多くの携帯端末が、所定の緊急情報を配信する無線LAN通信を前記識別情報(SSID)によって容易に特定することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車載機器によれば、通常時において、セキュリティによってアクセス制限された携帯端末からのアクセス許容することなく、セキュリティによってアクセス制限されていない携帯端末との間で第1通信モードでの近距離通信を行うことができる無線通信ユニットが、例えば、災害発生時等に、緊急通信を行うべきであると判定されると、携帯端末との間で前記セキュリティが解除された第2通信モードでの近距離通信が可能になり、携帯端末に対してセキュリティによるアクセス制限がなされることなく、無線通信ユニットと近距離通信可能な車両内外の多くの携帯端末の利用者に対して所定の緊急情報を提供することができるので、簡易な構成で多くの人達に災害時等の緊急時に必要な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る車載機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】通常時において携帯端末(スマートフォン)にて一覧表示される無線LAN通信に関する識別情報(SSID)の一例を示す図である。
【
図3】制御ユニットによる無線通信ユニットの制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】通常時における無線通信ユニット(車載機器)と携帯端末(スマートフォン)との無線通信の状態を模式的に示す図である。
【
図5】緊急時において携帯端末(スマートフォン)にて一覧表示される無線LAN通信に関する識別情報(SSID)の一例を示す図である。
【
図6】緊急時における無線通信ユニット(車載機器)と携帯端末(スマートフォン)との無線通信の状態を模式的に示す図である。
【
図7】緊急時において車載機器(無線通信ユニット)から配信される緊急情報を受信する携帯端末(スマートフォン)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
本発明の実施の一形態に係る車載機器は、
図1に示すように構成される。
【0020】
図1において、この車載機器100は、コンピュータユニット(例えば、CPUを含む)によって構成される制御ユニット11を有し、表示部12と、表示部12に含まれるタッチパネル及び種々の操作ボタン等で構成される操作部13とが制御ユニット11に接続されている。また、制御ユニット11には、各種音源及び映像源(例えば、CD、DVD等)の再生処理や、FM/AMのラジオ放送についての受信・再生処理が可能なAVユニット17、自車両のルート案内等のナビゲーション処理を行うナビゲーションユニット18、及びスピーカ16が接続される出力回路15が接続されている。制御ユニット11の制御のもと、AVユニット17及びナビゲーションユニット18の処理に基づいた音声信号が出力回路15を介してスピーカ16に供給され、該音声信号に基づいた音がスピーカ16から出力される。更に、制御ユニット11には、AVユニット17及びナビゲーションユニット18にて利用される楽曲情報、映像情報及び地図情報等の当該車載機器100において利用され得る各種情報が記憶される記憶部14(例えば、ハードディスク)が接続されている。
【0021】
この車載機器100は、無線通信ユニット20を有している。無線通信ユニット20は、制御ユニット11の制御のもと、所定の移動体通信網を利用した無線通信(例えば、第3世代移動体無線通信)が可能であるとともに、無線LANの規定(例えば、IEEE801.11の諸規定)に従った無線LAN通信が可能である。そして、無線通信ユニット20は、携帯端末200(例えば、スマートフォン)との間において、携帯端末からのアクセスを制限するためのWEP(Wired Equipment Privacy)やWPA(Wi-Fi Protected Access)等の暗号化によるセキュリティの設定された通信モード(第1通信モード)での無線LAN通信、及び、その暗号化を解除することによりセキュリティの解除された通信モード(第2通信モード)での無線LAN通信が可能である。
【0022】
更に、無線通信ユニット20は、ビーコン信号によって、当該無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信に関する識別子としてのSSID(Service Set Identifier)を配信している。このビーコン信号を受信可能なエリアにある携帯端末200は、受信したビーコン信号に含まれるSSIDを表示し得る。例えば、
図2に示すように、携帯端末200の表示画面210には、当該携帯端末200にて受信可能な、車載機器100の無線通信ユニット20から配信されるSSIDを含む種々のSSIDが一覧表示される。なお、
図2に示す例においては、セキュリティの設定された(錠マーク参照)無線LAN通信に関する3つのSSID、SSID1(0045A25CE42)、SSID2(0045A25CE43)、SSID3(ROUTEA00123)と、セキュリティの設定されていない(錠マークが無い)無線LAN通信に関する1つのSSID4(WLAN001)とが携帯端末200の表示画面に一覧表示される。
図2に示す一覧表示おいて、車載機器100の無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信は、例えば、SSID3(ROUTEA00123)にて特定される。携帯端末200の利用者は、表示画面に一覧表示されたSSIDによって利用可能な無線LAN通信を知ることができ、携帯端末200で利用する無線LAN通信の選択を容易に行うことができる。そして、携帯端末200は、車載機器100の無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信を特定するSSID3(ROUTEA00123)及びそのセキュリティ・キー(鍵情報)を設定することにより、アクセス制限されることなく、無線通信ユニット20との無線LAN通信が可能となる。
【0023】
無線通信ユニット20は、
図3に示す手順に従った制御ユニット11の制御のもと、携帯端末200との間で無線LAN通信を行う。
【0024】
図3において、制御ユニット11は、通常時において、緊急通信が必要であるか否かを監視しつつ(S12:緊急通信判定手段)、無線通信ユニット20をWEPやWPA等の暗号化によるセキュリティの設定された通信モード(第1通信モード)にてSSID3(ROUTEA00123)で特定される無線LAN通信が可能な状態に制御する(S11)。これにより、無線通信ユニット20は、前記暗号化によるセキュリティの設定がなされずにアクセス制限された携帯端末からのアクセスを許容することなく、前記暗号化によるセキュリティの設定がなされてアクセス制限されない携帯端末200との間で、当該暗号化によるセキュリティの設定された通信モードでの無線LAN通信を行う。このとき、無線通信ユニット20は、例えば、移動体通信網(3G)を介して得られるWeb上の情報等を無線LAN通信によって、
図4に示すように、車両Vの乗員が所持する前記アクセス制限されていない携帯端末200に配信することができる。これにより、通常時、前記アクセス制限のさない携帯端末200を利用する車両Vの乗員等の限定的な利用者に対して情報を提供することができる。
【0025】
例えば、大きな地震が発生した時等の災害発生時において、車両Vの走行が不能になって、乗員が車両Vから離れる際に、操作部13にて所定の緊急時操作を行うと、制御ユニット11は、緊急通信が必要であると判定する(S12でYES)。すると、制御ユニット11は、無線通信ユニット20における無線LANモードを機器間での通信が可能なモードに切り替え(S13)、上記暗号化によるセキュリティを解除する(S14)。更に、制御ユニット11は、無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信を特定するSSID3の文字列(ROUTEA00123)を、「Hinan_Keiro」、「Hinan_Joho」等の緊急時の情報配信であることを直感的に把握しやすい所定の文字列に変更する(S15:識別子変更手段)。そして、制御ユニット11は、無線通信ユニット20を前記暗号化によるセキュリティの解除された通信モード(第2通信モード)にてSSID3
change(Hinan_keiro)で特定される無線LAN通信が可能な状態に制御する(S16:通信モード切り替え手段)。
【0026】
災害発生時において、車両Vの所在位置を含む所定近傍エリア内ある携帯端末200が無線LAN通信についての探索を行うと、その表示画面210に、例えば、
図5に示すように、利用可能な無線通信LAN通信を特定するSSIDが一覧表示される。この一覧表には、車両Vに搭載された無線通信ユニット20(車載機器100)が提供する無線LAN通信のSSID3
change(Hinan_Keiro)が含まれており、これは、通常時のSSID3(ROUTEA00123)(
図2参照)と異なる。また、この一覧表では、このSSID3
change(Hinan_Keiro)で特定される無線通信LANはセキュリティが設定されていないことが明示されている(錠マークが無い)。
【0027】
車両Vの所定近傍エリアにある携帯端末200において、文字列(Hinan_Keiro)で構成されるSSID3
changeを設定することにより、そのSSID3
changeにて特定される無線LAN通信が選択されると、
図6に示すように、その車両Vの所定近傍エリアにある携帯端末200は、車載機器100の無線通信ユニット20とセキュリティが解除された通信モードにて無線LAN通信が可能となる。この状態で、携帯端末200が、無線通信ユニット20にアクセスすると、無線通信ユニット20は、無線LAN通信によって、例えば、記憶部14に予め記憶した情報(地図情報、施設情報等)に基づいて作成される緊急情報を携帯端末200に配信する(
図3におけるS16:通信制御手段)。前記緊急情報は、例えば、現在位置を含む所定エリアの地図を表す地図情報、当該所定エリア内に存在する避難施設に関する情報、及び種々の情報を発信する情報源についての情報、例えば、情報源のURLや、災害対策本部の連絡先(電話番号や住所)等の情報を含むことができる。
【0028】
車両Vに搭載されて無線通信ユニット20から無線LAN通信によって配信される緊急情報を受信した携帯端末200では、その緊急情報が表示画面210に表示される。そして、その携帯端末200の利用者は、表示された緊急情報に基づいて迷うことなく避難施設に向かう等、適切に行動することができる。
【0029】
上述したような無線通信ユニット20を有する車載機器100では、通常時において、暗号化によるセキュリティによってアクセス制限された携帯端末からのアクセスを許容することなく、暗号化によるセキュリティによってアクセス制限されない携帯端末200との間でその暗号化によるセキュリティの設定された通信モード(第1通信モード)での無線LAN通信を行うことができる。この場合、前記セキュリティによってアクセス制限されない携帯端末200を利用する限定的な利用者に対して有用な情報を提供することができる。一方、例えば、災害発生時等に、車両Vの走行が不能になって、操作部13にて所定の緊急時操作が乗員によりなされると、無線通信ユニット20が、携帯端末との間で前記暗号化によるセキュリティが解除された通信モード(第2通信モード)での無線LAN通信が可能になる。そして、無線通信ユニット20は、セキュリティの解除された無線LAN通信によって携帯端末200に対して所定の緊急情報を配信し得る。この場合、携帯端末に対してセキュリティによるアクセス制限がなされることなく、
図7示すように、無線通信ユニット20と無線LAN通信可能な車両V内外の多くの携帯端末200の利用者に対して所定の緊急情報を提供することができる。
【0030】
このように、通常時において、暗号化によるセキュリティが設定されて限定的な利用者の携帯端末200に対して無線LAN通信により情報配信を行う車載機器100の無線通信ユニット20が、例えば、災害発生時等に、携帯端末200との間でセキュリティが解除された通信モードでの無線LAN通信が可能になり、携帯端末200に対してセキュリティによるアクセス制限がなされることなく、無線通信ユニット20と無線LAN通信可能な車両内外の多くの携帯端末200の利用者に対して所定の緊急情報を提供することができる。このため、このような車載機器100を搭載する多くの車両Vが存在することで、簡易な構成で多くの人達に災害時等の緊急時に必要な情報を提供することができるようになる。
【0031】
また、上述した車載機器100では、緊急通信を行うべきであると判定されると(S12でYES)、無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信に関するSSID3を構成する文字列(ROUTEA00123)が緊急時の情報配信であることを直感的に把握しやすい文字列(Hinan_Keiro)に変更されるので、携帯端末を利用する利用者は、種々の無線LAN通信に関する複数のSSID1〜SSID4(
図5参照)が提示されたとしても、緊急時の情報配信であることを直感的に把握しやすい文字列(Hinan_Keiro)にて表されたSSID3
changeによって、緊急時の情報を得ることのできる無線LAN通信を容易に特定することができる。
【0032】
上述した車載機器100において、無線通信ユニット20が提供する無線LAN通信に関するSSIDを隠す識別子遮蔽手段(ステルス機能)と、無線通信ユニット200が緊急通信を行うべきであると判定されたときに(
図3におけるS12参照)、前記SSIDを隠すことを解除する識別子遮蔽解除手段(ステルスの解除機能)とを設けることも可能である。このようにすることで、通常時において、無線通信ユニット20が携帯端末200との間で行うセキュリティが設定された無線LAN通信に関するSSIDが隠されるので、更に高いセキュリティレベルでの無線LAN通信が可能になる。一方、災害時等において緊急通信を行うべきであると判定されて、無線通信ユニット20が携帯端末200との間でセキュリティが解除された通信モードでの無線LAN通信を行う際に、その無線通信LAN通信に関するSSIDの携帯端末200に対する隠しが解除されるので、無線通信ユニット20と無線LAN通信可能な車両内外の多くの携帯端末200が、所定の緊急情報を配信する無線LAN通信をそのSSIDによって容易に特定することができるようになる。
【0033】
なお、前述した車載機器100では、乗員により緊急時操作がなされたときに、緊急通信が必要である判定するようにしたが、これに限らず、例えば、災害発生情報や緊急避難情報等の災害に関する情報についての緊急警報放送をFM/AMラジオ等(AVユニット17)で受信したときに、緊急通信が必要であると判定するようにしても、それに更に車両Vが停止したことを加味して判定するようにしてもよい。
【0034】
前述した車載機器100では、無線通信ユニット20は、携帯端末200との間で無線LAN通信を行うものであったが、Bluetooth(登録商標)等の他の近距離通信を行うものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上、説明したように、本発明に係る車載機器は、簡易な構成で多くの人達に災害時等の緊急時に必要な情報を提供することができるという効果を有し、災害時等において緊急情報を配信する無線通信ユニットを有する車載機器として有用である。
【符号の説明】
【0036】
11 制御ユニット
12 表示部
13 操作部
14 記憶部
15 出力回路
16 スピーカ
17 AVユニット
18 ナビゲーションユニット
20 無線通信ユニット
100 車載機器
200 携帯端末
210 表示画面