特許第5912924号(P5912924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5912924-基礎断熱構造 図000002
  • 特許5912924-基礎断熱構造 図000003
  • 特許5912924-基礎断熱構造 図000004
  • 特許5912924-基礎断熱構造 図000005
  • 特許5912924-基礎断熱構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912924
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】基礎断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   E04B1/76 400A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-146582(P2012-146582)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9497(P2014-9497A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩
(72)【発明者】
【氏名】西尾 和典
(72)【発明者】
【氏名】田所 創史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−179961(JP,A)
【文献】 特開2008−144369(JP,A)
【文献】 特開2004−316173(JP,A)
【文献】 特開2010−209656(JP,A)
【文献】 特開2005−083137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎を断熱する基礎断熱構造であって、
前記基礎は、地盤面から突出するとともに床下空間を囲む立上がり部を具え、
前記床下空間は、その底面が前記地盤面よりも下方に位置した地下構造であり、
前記立上がり部には、断熱材が添設され、
前記断熱材は、前記地盤面よりも下方に配される第1断熱部と、該第1断熱部の上に配される第2断熱部とを含み、
前記第1断熱部の平均熱抵抗は、前記第2断熱部の平均熱抵抗よりも小さいことを特徴とする基礎断熱構造。
【請求項2】
前記第1断熱部の少なくとも一部は、その熱抵抗が下方に向かって小さくなっている請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項3】
前記第1断熱部の熱抵抗は、上下方向で一定である請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項4】
前記第1断熱部の平均厚さは、前記第2断熱部の平均厚さよりも小さい請求項1乃至3のいずれかに記載の基礎断熱構造。
【請求項5】
前記第1断熱部の少なくとも一部は、その厚さが下方に向かって漸減する請求項4に記載の基礎断熱構造。
【請求項6】
前記第1断熱部の厚さは、一定である請求項4に記載の基礎断熱構造。
【請求項7】
前記第1断熱部及び前記第2断熱部は、熱伝導率が同一の断熱材からなる請求項4乃至6のいずれかに記載の基礎断熱構造。
【請求項8】
前記第1断熱部の厚さと、前記第2断熱部の厚さとは同一であり、
前記第1断熱部と、前記第2断熱部とは、熱伝導率が異なる断熱材からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の基礎断熱構造。
【請求項9】
前記基礎は、布基礎であり、
前記床下空間には、前記底面を構成する土間コンクリートが敷設され、
前記第1断熱部は、前記土間コンクリートと前記立上がり部との間で、前記底面よりも下方に配される下側部、前記第2断熱部側に配される上側部及び前記下側部と前記上側部との間に脱着自在に配された中間部を含む請求項1乃至8のいずれかに記載の基礎断熱構造。
【請求項10】
前記上側部と前記中間部との当接面は、前記屋外側から前記床下空間側に向かって、上向きに傾斜する請求項9に記載の基礎断熱構造。
【請求項11】
前記基礎は、前記立上がり部と、前記床下空間の前記底面を構成する底板とが一体をなすベタ基礎である請求項1乃至8のいずれかに記載の基礎断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工コストを低減しつつ、地中熱を有効に活用して床下空間の温度変化を小さくすることができる基礎断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤面から突出する基礎の立上がり部に、断熱材が添設された基礎断熱構造が提案されている。このような構造は、地中と熱交換する床下空間の断熱性を高めることができる。従って、床下空間には、夏は外気よりも涼しく、冬は外気よりも暖かい床下空気を蓄えることができる。このような床下空間に蓄えられた空気は、例えば、居室へと供給され、換気や初期暖房として使用される。関連する技術としては、次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−42958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、床下空間の空気を居室に利用するためには、その温度変化をより小さくすることが望まれている。このためには、地中熱を効率的に床下空間に取り込むこと、及び、基礎の断熱を確実に行うことが重要である。一方、基礎に設けられる断熱材については、コストの増大を抑えるために、効率的に使用される必要がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、床下空間を地下構造にするとともに、地盤面よりも下方に配される第1断熱部の平均熱抵抗を、第1断熱部の上に配される第2断熱部の平均熱抵抗よりも小さくすることを基本として、コストの増大を抑制しつつ、床下空間の温度変化を小さくすることができる基礎断熱構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、建物の基礎を断熱する基礎断熱構造であって、前記基礎は、地盤面から突出するとともに床下空間を囲む立上がり部を具え、前記床下空間は、その底面が前記地盤面よりも下方に位置した地下構造であり、前記立上がり部には、断熱材が添設され、前記断熱材は、前記地盤面よりも下方に配される第1断熱部と、該第1断熱部の上に配される第2断熱部とを含み、前記第1断熱部の平均熱抵抗は、前記第2断熱部の平均熱抵抗よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記第1断熱部の少なくとも一部は、その熱抵抗が下方に向かって小さくなっている請求項1に記載の基礎断熱構造である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記第1断熱部の熱抵抗は、上下方向で一定である請求項1に記載の基礎断熱構造である。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記第1断熱部の平均厚さは、前記第2断熱部の平均厚さよりも小さい請求項1乃至3のいずれかに記載の基礎断熱構造である。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記第1断熱部の少なくとも一部は、その厚さが下方に向かって漸減する請求項4に記載の基礎断熱構造である。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記第1断熱部の厚さは、一定である請求項4に記載の基礎断熱構造である。
【0012】
また請求項7記載の発明は、前記第1断熱部及び前記第2断熱部は、熱伝導率が同一の断熱材からなる請求項4乃至6のいずれかに記載の基礎断熱構造である。
【0013】
また請求項8記載の発明は、前記第1断熱部の厚さと、前記第2断熱部の厚さとは同一であり、前記第1断熱部と、前記第2断熱部とは、熱伝導率が異なる断熱材からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の基礎断熱構造である。
【0014】
また請求項9記載の発明は、前記基礎は、布基礎であり、前記床下空間には、前記底面を構成する土間コンクリートが敷設され、前記第1断熱部は、前記土間コンクリートと前記立上がり部との間で、前記底面よりも下方に配される下側部、前記第2断熱部側に配される上側部及び前記下側部と前記上側部との間に脱着自在に配された中間部を含む請求項1乃至8のいずれかに記載の基礎断熱構造である。
【0015】
また請求項10記載の発明は、前記上側部と前記中間部との当接面は、前記屋外側から前記床下空間側に向かって、上向きに傾斜する請求項9に記載の基礎断熱構造である。
【0016】
また請求項11記載の発明は、前記基礎は、前記立上がり部と、前記床下空間の前記底面を構成する底板とが一体をなすベタ基礎である請求項1乃至8のいずれかに記載の基礎断熱構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基礎断熱構造は、床下空間を囲む基礎の立上がり部に、断熱材が添設される。このような断熱材は、床下空間を外気から断熱し、床下空間の温度変化を小さくすることができる。
【0018】
また、床下空間は、その底面が地盤面よりも下方に位置した地下構造として形成される。これにより、床下空間の空気は、一年を通して温度が略一定(例えば、±0.1℃程度)となる不易層の近くで地中熱と熱交換される。このため、床下空間の温度変化が、より小さくされる。
【0019】
このように、本発明の基礎断熱構造は、床下空間の温度変化をより小さくすることができる。このような温度が安定した床下空間の空気は、例えば居室に供給されることにより、エアコン等の空調機器の負荷を効果的に減らすことができる。従って、本発明の基礎断熱構造は、床下空間の熱エネルギーを有効に活用することができる。
【0020】
さらに、本発明では、前記断熱材が、地盤面よりも下方に配される第1断熱部と、該第1断熱部の上に配される第2断熱部とを含んでいる。そして、第1断熱部の平均熱抵抗は、第2断熱部の平均熱抵抗よりも小さく設定される。
【0021】
第1断熱部が配置される立上がり部は、地盤面よりも下方、即ち、地中に埋設されるため、外気の影響を受け難い。また、第1断熱部が配置される立上がり部には、地中熱が伝達される。このため、第1断熱部に求められる断熱性能は、外気に晒される第2断熱部に比べると小さい。従って、本発明のように、第1断熱部の平均熱抵抗が、第2断熱部の平均熱抵抗よりも小さく設定されても、床下空間の断熱性能を維持することができる。
【0022】
また、本発明の基礎断熱構造では、第1断熱部において、断熱材の平均熱抵抗を小さくすることにより、この部分のコストを、第2断熱部よりも抑えることができる。従って、本発明では、コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態の基礎断熱構造を示す断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】(a)は、本発明の他の実施形態の第1断熱部の断面図、(b)は(a)の中間部を取り外した状態を説明する断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の基礎断熱構造を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態の基礎断熱構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、住宅等の建物Bの基礎付近の部分断面図が示されている。図1に示されるように、本発明は、建物Bの基礎2を断熱する基礎断熱構造に関する。
【0025】
建物Bは、土台や外壁等を支持する基礎2、該基礎2の上方で支持される1階の床材3、基礎2と床材3とで区画される床下空間5を有している。
【0026】
基礎2は、建物Bの外周に連続して配置されている。本実施形態の基礎2は、鉄筋コンクリート製であり、地中G内で水平にのびるベース部2Aと、該ベース部2Aの幅方向の略中央から上方へのびる立上がり部2Bとを含んでいる。即ち、この実施形態では、基礎2は、断面T字状に形成された布基礎が示されている。
【0027】
立上がり部2Bは、建物Bの垂直高さの基準となるグランドラインである地盤面GLから小高さで突出し、かつ床下空間5を囲むように配置されている。この立上がり部2Bの上面側には、土台6が固定されている。この土台6には、外壁7が固定されている。
【0028】
床下空間5の下方は、例えば、下地用の砕石9、防蟻防湿シート10及び土間コンクリート11が敷設されている。この土間コンクリート11の上面は、床下空間5の底面8を構成している。
【0029】
防蟻防湿シート10は、例えば、砕石9を覆うように略水平に配置されている本体部10Aと、該本体部10Aから基礎2のベース部2A側にのびる傾斜部10Bと、該傾斜部10Bからベース部2Aの上面に沿って屋外側Soに略水平にのびる縁部10Cとを含んでいる。
【0030】
傾斜部10Bは、床下空間5側から屋外側Soに向かって、下向きに傾斜している。また、縁部10Cの屋外側Soの端部は、後述する断熱材20の床下空間5側の側面に当接している。このような防蟻防湿シート10は、土間コンクリート11及び断熱材20の下方の全域に亘って配置されるため、床下空間5への蟻及び湿気の進入を効果的に防ぐことができる。
【0031】
さらに、床下空間5には、例えば、底面8から上方に突出する複数の束15と、該束15に支持される大引16とが設けられる。このような束15及び大引16によって、前記床材3が支持される。
【0032】
本実施形態の床下空間5の底面8は、実質的に全域が断熱材で覆われていない。これにより、床下空間5の空気は、土間コンクリート11を介して、一年を通じて温度変化の少ない地中Gの熱と熱交換される。即ち、土間コンクリート11は、熱交換部17を構成している。このような床下空間5は、温度変化を効果的に小さくできるため、夏は涼しく、冬は暖かい空気を安定的に保持することができる。なお、上記熱交換を妨げない範囲において、底面8の一部が、断熱材で覆われることは差し支えない。
【0033】
床下空間5の空気は、例えば、送風手段(図示省略)等によって居室へと供給される。これにより、居室のエアコン等の空調機器の負荷が効果的に低減される。従って、本実施形態の基礎断熱構造は、床下空間5の熱エネルギーを有効に活用するのに役立つ。なお、基礎2の立ち上がり部2B等には、床下空間5の温度変化を最小限に抑える程度に設定された開口面積の換気口が設けられている(図示省略)。これにより、床下空間5には、外気が導入される。
【0034】
また、床下空間5は、その底面8が、地盤面GLよりも下方に位置した地下構造とされる。地中Gには、一年を通して温度が略一定(±0.1℃程度)となる不易層(図示省略)が存在している。この不易層の位置は、外気や建物の断熱構造の影響を受けるが、地盤面よりも深い位置にある。従って、床下空間5が地下構造とされることにより、熱交換部17が不易層に接近する。これにより、床下空間5の熱交換部17は、効率的に地中熱を得ることができ、床下空間5の温度変化をさらに小さく抑えることができる。
【0035】
このような作用を効果的に発揮させるために、地盤面GLと底面8との間の深さDは、200〜500mmが望ましい。前記深さDが200mm未満の場合、熱交換部17が不易層に十分に接近できず、地下構造のメリットが得られないおそれがある。逆に、前記深さDが500mmを超える場合、本実施形態の基礎断熱構造を施工する際、より地中深く掘削する必要があるため、コストが増大するおそれがある。
【0036】
さらに、本実施形態の基礎断熱構造には、基礎2の立上がり部2Bに、断熱材20が添設されている。断熱材20は、例えば、立上がり部2Bに沿って上下にのびる縦部20Aと、立上がり部2Bの上面に沿って水平にのびる上側部20Bとを含んでいる。これらの縦部20A及び上側部20Bにより、断熱材20は、断面略L字状に形成されている。断熱材20には、例えば、耐熱性及び耐衝撃性に優れるポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、又はフェノールフォーム等の板状の断熱材が好適に採用される。
【0037】
図2に拡大して示されるように、断熱材20の縦部20Aは、地盤面GLよりも下方に配される第1断熱部23と、該第1断熱部23の上側に配される第2断熱部24とを含んでいる。これらの第1断熱部23及び第2断熱部24は、立上がり部2Bの床下空間5側の側面に、図2の断面形状で隙間なく連続して配置されている。
【0038】
このような断熱材20は、床下空間5において、基礎2を介して伝えられる外気の熱を遮断することができる。従って、断熱材20は、床下空間5の温度変化を小さくすることができる。また、断熱材20によって床下空間5の温度変化が小さくなることにより、床下空間5の下方の不易層の境界が、より床下空間5側へと上昇する。従って、本実施形態の基礎断熱構造は、床下空間5をさらに不易層に接近させ、該床下空間5の温度変化をさらに小さくするという相乗作用が得られる。
【0039】
また、第1断熱部23が配置される立上がり部2Bは、地中Gに埋設されているため、外気の影響を受けにくい。さらに、第1断熱部23が配置される立上がり部2Bには、地中熱が伝達される。このため、第1断熱部23に求められる断熱性能は、地盤面GLよりも上方に配される第2断熱部24に比べれば小さい。
【0040】
そこで、本発明では、第1断熱部23の平均熱抵抗が、第2断熱部24の平均熱抵抗よりも小さく設定されている。このように、第1断熱部23の平均熱抵抗が相対的に小に設定されても、上記のように、該第1断熱部23に求められる断熱性能が相対的に小さいため、床下空間5の断熱性能が維持される。
【0041】
また、断熱材の施工コストは、一般に、その熱抵抗にほぼ比例している。従って、第1断熱部23の平均熱抵抗が相対的に小さく設定されることにより、床下空間5が地下構造とされて断熱材20の配置面積が増加しても、コストの上昇を抑えることができる。
【0042】
ここで、第1断熱部23の平均熱抵抗は、図2に示されるように、第1断熱部23の上端23uから下端23dまでの範囲において、外気側の面と床下空間側の面との間の熱抵抗の平均値である。また、第2断熱部24の平均熱抵抗は、第2断熱部24の上端24uから下端24dまでの範囲において、外気側の面と床下空間側の面との間の熱抵抗の平均値である。
【0043】
上記のような作用を効果的に発揮させるために、第1断熱部23の平均熱抵抗は、0.2〜1.4m2K/Wが望ましい。同様に、第2断熱部24の平均熱抵抗は、1.4〜2.1m2K/Wが望ましい。
【0044】
また、第1の断熱部23の平均熱抵抗は、第2断熱部24の平均熱抵抗の50〜70%が望ましい。第1断熱部23の平均熱抵抗が、第2断熱部24の平均熱抵抗の70%を超える場合、断熱材20のコストを十分に低減できないおそれがある。逆に、第1断熱部23の平均熱抵抗が、第2断熱部24の平均熱抵抗の50%未満の場合、第1断熱部23の平均熱抵抗が小さくなり、床下空間5の断熱性を十分に維持できないおそれがある。
【0045】
この実施形態では、第1断熱部23の平均熱抵抗を、第2断熱部24の平均熱抵抗よりも小さく設定するために、第1断熱部23の平均厚さA1が、第2断熱部24の平均厚さA2よりも小に設定されている。この際、第1断熱部23と第2断熱部24とは、熱伝導率が同一の断熱材料からなる(態様1)、又は、第1断熱部23に、第2断熱部24よりも大きい熱伝導率を有する断熱材料が用いられる(態様2)。製造コストを考慮すれば、態様1が好ましい。また、本発明の作用をより効果的に発揮させるために、第1断熱部23の平均厚さA1は、第2断熱部24の平均厚さA2の50〜70%が望ましい。
【0046】
ここで、第1断熱部23の平均厚さA1は、第1断熱部23の上端23uから下端23dまでの範囲の厚さT1の平均値である。また、第2断熱部24の平均厚さA2は、第2断熱部24の上端24uから下端24dまでの範囲の厚さT2の平均値である。
【0047】
また、地中Gの温度は、地盤面GLから深くなるに従って、温度変化が小さくなる傾向がある。このため、第1断熱部23に求められる断熱性能は、地盤面GLから下に向かって小さくなる。そこで、第1断熱部23の少なくとも一部(好ましくは、本実施形態のように上端23uから下端23dまでの全域の範囲)で、その熱抵抗が下方に向かって小さくなるのが望ましい。本実施形態では、第1断熱部23の厚さT1が、下方に向かって漸減することにより、その熱抵抗も下方に向かって小さくされている。なお、第1断熱部23の熱抵抗は、下方に向かって、段階的に変化させることもできる。
【0048】
このような第1断熱部23は、該第1断熱部23に求められる断熱性能に応じた特性を有するため、断熱材20のコストを減らしつつ、床下空間5の断熱性を効率的に維持することができる。とりわけ、第1断熱部23の上端23uでの厚さT1は、40〜60mm程度が望ましい。また、第1断熱部23の上端23uでの熱抵抗は、例えば1.4〜2.1m2K/W程度が望ましい。同様に、第1断熱部23の下端23dでの厚さT1は、5〜20mm程度が望ましい。また、第1断熱部23の下端23dでの熱抵抗は、0.2〜0.7m2K/Wが望ましい。
【0049】
この実施形態では、第1断熱部23の下端23dは、土間コンクリート11と立上がり部2bとの間を下方にのび、基礎2のベース部2Aに当接している。このような第1断熱部23は、その下端23dが、床下空間5の底面8よりもさらに、下方に配置されているため、床下空間5の断熱性の低下を効果的に防ぐことができる。
【0050】
第2断熱部24は、例えば、上端24uから地盤面GLと一致する下端24dまでの範囲において、熱抵抗が一定に設定されている。本実施形態では、第2断熱部24が1種の断熱材料で形成されかつその厚さT2が一定とされることにより、その熱抵抗が上下方向で一定とされている。このような第2断熱部24は、基礎2を介して伝えられる外気の熱を、上端24uから下端24dまでの全範囲で均一に遮断することができる。このような第2断熱部24の厚さT2としては、例えば、40〜60mm程度が望ましい。
【0051】
断熱材20の上側部20Bは、立上がり部2Bの上面に沿って、床下空間5側から屋外側Soにのびる断面矩形の板状に形成されている。また、上側部20Bの屋外側Soの端部は、土台6に当接している。このような上側部20Bは、立上がり部2Bと外壁7との間で、外気と床下空間5の空気とが熱交換するのを抑制することができる。
【0052】
図3(a)、(b)には、本発明の他の実施形態の基礎断熱構造が示される。
図3(a)に示されるように、この実施形態の第1断熱部23は、分解・組立可能に構成されている。即ち、この実施形態の第1断熱部23は、図1の断面形状を基調として構成されるが、床下空間5の底面8側に配される下側部26、第2断熱部24側に配される上側部27及び下側部26と上側部27との間に配される中間部28に分解可能に構成されている。
【0053】
下側部26は、土間コンクリート11と立上がり部2Bとの間において、例えば、床下空間5の底面8よりも下方にのびている。この下側部26は、例えば、基礎2に固着されている。また、上側部27も立上がり部2Bに固着されている。なお、上側部27の上端27uは、第2断熱部24の下端24dと当接している。
【0054】
中間部28は、下側部26と上側部27との間に、圧入されている。また、上側部27と中間部28との当接面30(図3(a)に示す)は、地盤面GLと底面8との中央部31付近に形成されている。
【0055】
このような中間部28は、図3(b)に示されるように、立上がり部2Bに脱着自在に配置される。即ち、中間部28は、自らを弾性変形させて、下側部26と上側部27との間から取り外すことができる。中間部28が取り外された後は、立上がり部2Bと土間コンクリート11との入隅32及び前記中央部31付近に、例えば、防蟻剤等を散布することができる。従って、この実施形態の第1断熱部23は、床下空間5のメンテナンス性を向上するのに役立つ。
【0056】
また、本実施形態の中間部28は、その厚さが下方に向かって小さくなっている。このため、中間部28の下方側は、容易に変形させることができる。従って、中間部28は、下側部26と上側部27との間で強固に圧入された場合でも、その下方側を支点として曲げ変形させることで、破損等を生じさせること無く、取り外し、及び、再装着がきわめて容易に行える。従って、本実施形態の構造では、上述のメンテナンス性がさらに向上する。
【0057】
さらに、図3(a)に示されるように、第1断熱部23の上側部27と中間部28との当接面30は、屋外側Soから床下空間5側に向かって、上向きに傾斜するのが望ましい。これにより、中間部28の取り外し時において、作業者は、該中間部28を、当接面30の傾斜に沿って上向きに引き抜くことができ、メンテナンス性をさらに向上させることができる。また、中間部28の取り付け時においては、該中間部28を、立上がり部2Bに向かって、下方側を柔軟に変形させつつ、下向きに嵌め込むことができる。従って、作業者は、狭い床下空間5内において、中間部28を、容易に取り付け及び取り外すことができる。
【0058】
図3(a)及び(b)に示されるように、本実施形態では、下側部26と中間部28との当接面33が、底面8よりも下方に形成されている。これにより、土間コンクリート11と立上がり部2Bとの間には、底面8から下側部26の上端26uに向かって凹む凹部36が設けられる。このような凹部36は、中間部28の下端28dが挿入されることにより、該中間部28を抜け止めする。
【0059】
図2及び図3(a)の実施形態では、第1断熱部23の熱抵抗が下方に向かって小さくなるものが例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、第1断熱部23の熱抵抗は、上下方向で一定で良い。即ち、図4に示される実施形態では、第1断熱部23の厚さT1が一定とされることにより、その熱抵抗が上下方向で一定とされている。この実施形態の第1断熱部23の厚さT1(<T2)は、20〜40mm程度、熱抵抗は0.7〜1.4m2K/Wが望ましい。
【0060】
上記各実施形態では、第1断熱部23の平均厚さA1が、第2断熱部24の平均厚さA2よりも小さく設定されることにより、第1断熱部23の平均熱抵抗が、第2断熱部24の平均熱抵抗よりも小さくされるものを示した。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、図5に示されるように、第1断熱部23を構成する断熱材には、第2断熱部24を構成する断熱材よりも熱伝導率が大きいものが採用されるものでもよい。即ち、第1断熱部23と第2断熱部24とが、異なる材料で構成されても良い。このような実施形態では、例えば、第1断熱部23の厚さT1及び第2断熱部24の厚さT2を同一にすることができ、立上がり部2Bへの断熱材の添設作業が容易となり、施工性が向上する。なお、第1断熱部23の厚さT1と、第2断熱部24の厚さT2とを異ならせても良い。
【0061】
さらに、上記実施形態では、基礎2として布基礎が示されたが、本発明は、このような形態に限定されるわけではない。例えば、基礎2には、図5に示されるように、立上がり部2Bと、床下空間5の底面8の全域を構成する底板2Cとが一体となるいわゆるベタ基礎40が用いられても良い。このようなベタ基礎40は、例えば、防蟻剤等の散布が不要又は軽減されるため、図3(a)、(b)に示した防蟻剤散布用の中間部28が不要となり、第1断熱部23の構造が簡素化される。
【0062】
なお、上記各実施形態において、各断熱部の熱抵抗及び厚さ等は、比較的温暖な一般地域に適した値として記載されたものである。従って、本発明が寒冷地域で実施される場合には、各断熱部の熱抵抗及び厚さ等の各値は、上記各値の1.5〜2.0倍程度とされるのが望ましい。
【0063】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に何ら限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。例えば、断熱材20は、基礎2の立ち上がり部2Bの床下空間5側を向く内面に添設されているが、外面に添設されても良い。また、第1断熱部23及び第2断熱部24は、各々において、一様の材料で構成されているものが示されたが、断熱部23、24の各々において、熱伝導率が異なる複数の材料が用いられても良い。さらに、第1断熱部23と第2断熱部24とは、一体又は別体のいずれでも良い。
【符号の説明】
【0064】
2 基礎
2B 立上がり部
5 床下空間
8 底面
20 断熱材
23 第1断熱部
24 第2断熱部
GL 地盤面
図1
図2
図3
図4
図5