(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体と、容器本体の開口部を閉じる蓋体を施錠する施錠機構とを備え、蓋体に、容器本体の開口部内周に圧接してシール状態を形成するシールガスケットを取り付けた基板収納容器であって、
容器本体を略箱形状に形成してその相対向する両端面のうち、少なくともいずれか一方の端面を開口部とし、
蓋体の側面に施錠機構用の施錠溝を形成し、
施錠機構は、容器本体の開口部における周縁側方に支持され、施錠位置と解錠位置との間を移動可能な被操作部材と、容器本体の開口部周縁側方と被操作部材との間に介在され、被操作部材の移動に応じて容器本体の少なくとも両端面方向に移動する施錠部材とを含み、施錠部材の容器本体に対向する対向部に、容器本体を貫通して蓋体の施錠溝を嵌挿支持する施錠爪を形成し、施錠部材の被操作部材に対向する対向部には、被操作部材の複数のカム溝にスライド可能に嵌まるカム突起を形成し、被操作部材が施錠位置に移動した場合に、施錠爪が容器本体の開口部に対向していた蓋体を移動させ、容器本体の開口部と蓋体とを接触させてシールガスケットをシール状態とし、被操作部材が解錠位置に移動した場合には、施錠爪が容器本体の開口部から蓋体を離隔するよう移動させてシールガスケットのシール状態を解除し、容器本体の開口部から蓋体を一方向に取り外すようにしたことを特徴とする基板収納容器。
容器本体の開口部における周縁上方と周縁両側方とにフランジを形成し、このフランジの側部に、施錠部材の施錠爪に貫通される貫通孔を形成するとともに、被操作部材と施錠部材とを貫通する取付部を設け、この取付部には、フランジの側部との間に施錠部材と被操作部材とを挟むカバー部材を取り付け、フランジ内に蓋体を下方から嵌め入れ、容器本体の開口部に蓋体を対向させるようにした請求項1記載の基板収納容器。
蓋体の基板に対向する対向面に凹部を形成し、この凹部に、基板の周縁部を保持する複数の保持リブを突出形成し、各保持リブを蓋体の最大厚さ以下の高さに形成した請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
容器本体のフランジの深さ寸法を蓋体の厚さ寸法よりも大きくし、フランジ側部の最下方を切り欠き、施錠機構の被操作部材に、フランジ側部の最下方から露出する操作片を形成した請求項2、3、又は4記載の基板収納容器。
蓋体の施錠溝は、蓋体の側面上部に位置する上部溝と、この上部溝の下部から下方に伸びる中央溝と、この中央溝の下部から下方に伸びる下部溝とを含み、上部溝の上部を開口させ、この上部溝を中央溝よりも幅広に形成し、中央溝を下部溝よりも幅広に形成した請求項1ないし5いずれかに記載の基板収納容器。
施錠部材の施錠爪を複数にして上下方向に配列し、上方の施錠爪を施錠溝の中央溝に嵌合するよう厚く形成し、下方の施錠爪を施錠溝の下部溝に嵌合するよう薄く形成した請求項6記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造ラインでは、半導体ウェーハに代表される各種の基板が取り扱われるが、この基板の搬送には、図示しない基板収納容器が利用されている(特許文献1、2、3参照)。
この種の基板収納容器は、例えば複数枚の基板を上下方向に並べて収納可能な容器本体と、この容器本体の正面を開閉する蓋体と、容器本体の正面に嵌合した蓋体を施錠する施錠機構とを備え、半導体の製造工程で基板の搬送に利用される(特許文献1参照)。
【0003】
容器本体は、正面のみが開口したフロントオープンボックスに成形され、内部の両側に、半導体ウェーハを水平に支持する左右一対の支持片が対設されている。また、蓋体は、所定の成形材料により成形され、基板に対向する対向面の中央部や両側部等に、基板の周縁前部を保持する弾性のフロントリテーナが装着されている。
【0004】
施錠機構は、例えば蓋体の内部両側にそれぞれ軸支され、蓋体開閉装置に外部から回転操作される複数の回転プレートと、各回転プレートの回転に伴い蓋体の上下方向にスライドする複数の進退動プレートと、各進退動プレートのスライドに伴い蓋体の周壁から出没して容器本体の正面内周に接離する複数の施錠爪とを備えて構成されている。この施錠機構は、蓋体に内蔵されるタイプが主ではあるが、容器本体の側壁に設置される複雑なタイプも存在する(特許文献2参照)。
【0005】
このような基板収納容器は、半導体の製造装置に併設された蓋体開閉装置に搭載して位置決めされ、容器本体の正面に嵌合された蓋体が蓋体開閉装置により取り外された後、容器本体の開口した正面から基板がローディングされたり、アンローディングされたりする。
【0006】
この際、蓋体は、蓋体開閉装置により施錠機構が解錠され、取り外し可能な状態になると、蓋体開閉装置により容器本体の正面から水平あるいは円弧形状に引き離すよう取り外される第一段階、蓋体開閉装置により下降して容器本体の開口した正面や収納された基板を完全に露出させる第二段階を経て取り外される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、蓋体に弾性のフロントリテーナが単に装着されているので、施錠機構の施錠時にフロントリテーナによる基板の保持力の反力が蓋体に作用し、蓋体が弓なりに変形してしまうという問題がある。また、従来の施錠機構は、部品点数が多いので構成の簡素化を図ることができず、コストを削減することができない。また、従来の蓋体開閉装置は、上記した第一、第二の二段階を経て蓋体を取り外すので、作業サイクルが長くなり、しかも、構成や制御が複雑化するという問題がある。
【0009】
一方、従来における基板収納容器は、容器本体の正面のみが開口し、基板のローディングやアンローディングが一方向に限定されるので、場合により、作業の遅延や煩雑化を招くことがある。この点について詳しく説明すると、半導体の製造装置には、容器本体の正面から基板にアクセスできれば十分な製造装置もあれば、容器本体の正面と背面との二方向から基板にアクセスできると、作業時間を短縮して効率的な製造装置も存在する。
【0010】
しかしながら、従来の容器本体は、正面のみが開口するので、基板のローディングやアンローディングが一方向に制約される。したがって、例えば基板を他の製造装置に供給したい場合には、容器本体の開口した正面に蓋体を蓋体開閉装置により嵌合し、他の製造装置に向きを変えた基板収納容器の蓋体をドッキングさせて蓋体を取り外した後、基板をローディングしたり、アンローディングしたりしなければならず、作業の遅延や煩雑化を招くこととなる。
【0011】
係る弊害を解消するため、基板収納容器を回転させてその向きを変えることにより、二方向からの基板のアクセスを可能とする方法が提案されている。しかし、この方法を採用する場合には、基板収納容器を回転させる複雑な回転機構が必要になり、しかも、基板収納容器の方向を検出して制御しなければならないという問題が新たに生じることとなる。
【0012】
本発明は上記に鑑みなされたもので、蓋体の変形を抑制し、施錠機構や蓋体開閉装置の簡素化を図ることができ、蓋体開閉装置の作業サイクルを短縮できる安価な基板収納容器を提供することを目的としている。また、作業の遅延や煩雑化を招くことなく、容器本体の相対向する二方向から基板にアクセスすることができ、しかも、容器本体の向きを変更する機構や制御等を省略できる基板収納容器の提供を他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体と、容器本体の開口部を閉じる蓋体を施錠する施錠機構とを備え、蓋体に、容器本体の開口部内周に圧接してシール状態を形成するシールガスケットを取り付けたものであって、
容器本体を略箱形状に形成してその相対向する両端面のうち、少なくともいずれか一方の端面を開口部とし、
蓋体の側面に施錠機構用の施錠溝を形成し、
施錠機構は、容器本体の開口部における周縁側方に支持され、施錠位置と解錠位置との間を移動可能な被操作部材と、容器本体の開口部周縁側方と被操作部材との間に介在され、被操作部材の移動に応じて容器本体の少なくとも両端面方向に移動する施錠部材とを含み、施錠部材の容器本体に対向する対向部に、容器本体を貫通して蓋体の施錠溝を嵌挿支持する施錠爪を形成し、施錠部材の被操作部材に対向する対向部には、被操作部材の複数のカム溝にスライド可能に嵌まるカム突起を形成し、被操作部材が施錠位置に移動した場合に、
施錠爪が容器本体の開口部に対向していた蓋体を移動させ、容器本体の開口部と蓋体とを接触させてシールガスケットをシール状態とし、被操作部材が解錠位置に移動した場合には、
施錠爪が容器本体の開口部から蓋体を離隔するよう移動させてシールガスケットのシール状態を解除し、容器本体の開口部から蓋体を一方向に取り外すようにしたことを特徴としている。
【0014】
なお、容器本体の開口部における周縁上方と周縁両側方とにフランジを形成し、このフランジの側部に、施錠部材の施錠爪に貫通される貫通孔を形成するとともに、被操作部材と施錠部材とを貫通する取付部を設け、この取付部には、フランジの側部との間に施錠部材と被操作部材とを挟むカバー部材を取り付け、フランジ内に蓋体を下方から嵌め入れ、容器本体の開口部に蓋体を対向させることができる。
【0015】
また、容器本体の両端面をそれぞれ開口部に形成することができる。
また、蓋体の基板に対向する対向面に凹部を形成し、この凹部に、基板の周縁部を保持する複数の保持リブを突出形成し、各保持リブを蓋体の最大厚さ以下の高さに形成することもできる。
また、容器本体のフランジの深さ寸法を蓋体の厚さ寸法よりも大きくし、フランジ側部の最下方を切り欠き、施錠機構の被操作部材に、フランジ側部の最下方から露出する操作片を形成することが可能である。
【0016】
また、蓋体の施錠溝は、蓋体の側面上部に位置する上部溝と、この上部溝の下部から下方に伸びる中央溝と、この中央溝の下部から下方に伸びる下部溝とを含み、上部溝の上部を開口させ、この上部溝を中央溝よりも幅広に形成し、中央溝を下部溝よりも幅広に形成することが可能である。
【0017】
さらに、施錠部材の施錠爪を複数にして上下方向に配列し、上方の施錠爪を施錠溝の中央溝に嵌合するよう厚く形成し、下方の施錠爪を施錠溝の下部溝に嵌合するよう薄く形成すると良い。
【0018】
ここで、特許請求の範囲における基板は、少なくとも各種大きさの半導体ウェーハや液晶基板、ガラス板等が含まれる。この基板は、その一部が切り欠かれていても良い。また、容器本体と蓋体とは、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。容器本体は、成形法により成形しても良いし、複数の板材等を組み合わせて構成することもできる。この容器本体は、一対のハーフ容器に略均等に二分割し、この一対のハーフ容器の開口した分割対向部を密封シール部材を介して接合することができる。
【0019】
本発明によれば、容器本体の開口部を蓋体により閉鎖して施錠機構で施錠する場合には、先ず、容器本体のフランジ内に蓋体が下方から嵌め入れられて上昇するとともに、蓋体の施錠溝に施錠機構の施錠爪が嵌め入れられ、容器本体の開口部に蓋体が隙間をおいて対向し、その後、施錠機構の被操作部材が操作される。
【0020】
すると、被操作部材が施錠位置に移動し、被操作部材のカム溝の端部と施錠部材のカム突起とが接触し、施錠部材が容器本体の開口部から奥方向、換言すれば、蓋体の閉鎖方向に移動する。こうして施錠部材が容器本体の奥方向に移動すると、施錠部材の施錠爪が容器本体の奥方向に移動することにより、容器本体の開口部に対向状態の蓋体が圧接してシールガスケットをシール状態とし、容器本体の開口部が蓋体により閉鎖される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、
被操作部材が施錠位置に移動した場合には、施錠爪が容器本体の開口部に対向していた蓋体を移動させ、容器本体の開口部と蓋体とを接触させてシールガスケットをシール状態とし、被操作部材が解錠位置に移動した場合には、施錠爪が容器本体の開口部から蓋体を離隔するよう移動させてシールガスケットのシール状態を解除し、容器
本体の開口部から蓋体を一方向に取り外すので、蓋体の変形を抑制し、施錠機構や蓋体開閉装置の簡素化を図ることができ、蓋体開閉装置の作業サイクルを短縮することができるという効果がある。
【0022】
また、請求項2記載の発明によれば、施錠機構が基板に直接面する蓋体ではなく、フランジの側部に設置されて容器本体の外部に位置し、施錠機構と基板との間に容器本体の壁が介在するので、施錠機構の塵埃が容器本体の内部に流入して基板を汚すのを防止することができる。また、フランジに蓋体が誘導されるので、蓋体が上下方向に位置ずれしたり、左右方向にがたつくのを防ぐことができる。したがって、容器本体の開口部に対する蓋体の適切な対向が期待できる。
【0023】
また、請求項3記載の発明によれば、作業の遅延や煩雑化を招くことなく、容器本体の相対向する二方向から基板にアクセスすることができ、しかも、容器本体の向きを変更する機構や制御等を省略することが可能となる。
また、請求項4記載の発明によれば、蓋体を容器本体の開口部から遠ざけた後、下方に退避させるという二段階の動作が不要となり、一段階の操作で蓋体を取り外すことが可能となる。
【0024】
また、請求項5記載の発明によれば、容器本体のフランジの深さ寸法を蓋体の厚さ寸法よりも大きくするので、容器本体の開口部に蓋体が略水平に接離する際、フランジに蓋体をガイドさせることができ、施錠機構の円滑な動作の確保が期待できる。また、被操作部材の操作片がフランジ側部の最下方から露出し、把握することが容易になるので、被操作部材を外部から簡単に操作することができる。
【0025】
また、請求項6記載の発明によれば、施錠溝の上部溝の上部を開口させ、この上部溝を中央溝よりも幅広に形成するので、蓋体が下降する際、施錠溝の上部溝と施錠爪とが接触するのを抑制し、接触に伴う塵埃の発生防止が期待できる。
また、請求項7記載の発明によれば、施錠部材の施錠爪を単一ではなく、複数にして蓋体の保持力を向上させるので、簡易な構成で蓋体の施錠機構からの脱落を防ぐことができる。さらに、上方の施錠爪を施錠溝の中央溝に嵌合するよう厚く形成し、下方の施錠爪を施錠溝の下部溝に嵌合するよう薄く形成するので、施錠溝との間にガタツキが発生するのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における支持体を模式的に示す斜視説明図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面を模式的に示す説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における半導体ウェーハと蓋体との関係を模式的に示す平面説明図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の施錠溝と施錠機構の下降した施錠爪との関係を模式的に示す説明図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の施錠溝と施錠機構の施錠爪との関係を模式的に示す説明図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体、蓋体、施錠機構を模式的に示す分解斜視図である。
【
図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の被操作板を模式的に示す斜視説明図である。
【
図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の施錠板を模式的に示す斜視説明図である。
【
図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構のカバー板を模式的に示す斜視説明図である。
【
図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバー板を取り外した施錠機構の施錠状態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図15】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるカバー板を取り外した施錠機構の解錠状態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の施錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の解錠状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図18】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図17に示すように、丸い基板Wを収納可能な大型の容器本体1と、この容器本体1に収納された基板Wを支持する一対の支持体20と、容器本体1の開口部3を開閉する着脱自在の蓋体30と、容器本体1の開口部3を閉鎖する蓋体30を施錠する複数の施錠機構50とを備え、容器本体1をボックスに形成してその水平横方向の相対向する前後両端面をそれぞれ開口部3に形成するようにしている。
【0028】
基板Wは、
図4や
図10に示すように、例えばφ300mmの半導体ウェーハ、具体的には薄い円板のシリコンウェーハからなり、容器本体1内に水平に支持され、複数枚(例えば10枚)が上下方向に所定の間隔で並べて収納される。この基板Wの周縁部には、位置合わせ用のノッチやオリフラが選択的に形成される。このような基板Wは、所定の加工と処理とが順次施されることにより、表面に電子回路が形成される。
【0029】
容器本体1、支持体20、蓋体30、施錠機構50は、例えば所要の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ成形される。この成形材料中の樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0030】
容器本体1は、
図1、
図3、
図4に示すように、小さな金型で成形して製造コストを削減する観点から、その中間部で一対のハーフ容器1Aに均等に二分割され、この一対のハーフ容器1Aの開口した分割対向部8、換言すれば、開口した背面同士が突き合わせて連通接続される。容器本体1は、その内部の両側、具体的には、両側壁の内面に基板W用の支持体20が対設され、底板の四隅部等の所定箇所に、容器本体1内の空気を窒素ガスに置換する複数の給排気バルブが着脱自在に嵌着される。
【0031】
容器本体1の底板には、平面矩形状の平坦なボトムプレート2が下方から装着され、このボトムプレート2には、蓋体開閉装置の位置決めピンに上方から嵌合する位置決め具、固定孔、センシング部等が配設される。また、容器本体1の天井には、必要に応じて搬送用のフランジが装着される。
【0032】
一方のハーフ容器1Aは、
図1ないし
図4に示すように、開口部3、すなわち正面を横長に区画する角筒形状に構成され、開口部3の周縁上方と周縁両側方とに正面チャネル形状のフランジ4が一体形成されており、このフランジ4内に蓋体30が下方から嵌入して上昇するとともに、開口部3に蓋体30が僅かな隙間をおいて対向した後に圧接されることで、開口部3が蓋体30により閉鎖される。
【0033】
フランジ4は、
図16や
図17に示すように、外方向に断面略Z字形状に屈曲形成され、両側部に、蓋体30の側壁に対向する貫通孔5がそれぞれ縦長に必要数切り欠かれる。フランジ4の両側部の外面には
図4や
図10に示すように、施錠機構50用の一対の取付ボス6が上下に並設され、各取付ボス6が円筒形状に形成される。また、フランジ4の両側部の最下方7は短く切り欠かれ、施錠機構50の一部を操作可能に露出させる(
図2参照)。このようなフランジ4は、蓋体30を上下方向に円滑に案内する他、両側部が施錠機構50をそれぞれ支持するよう機能する。
【0034】
一方のハーフ容器1Aの分割対向部8における周縁には、外方向に張り出す枠形状の接合フランジ9が一体形成される。この接合フランジ9には、複数の接合ボス10が幅方向の中心線に非対称に並べて突出形成され、各接合ボス10が円筒形状に形成されて締結具が後から螺挿される。また、接合フランジ9には、複数の接合孔11が幅方向の中心線に非対称に並べて穿孔される。
【0035】
他方のハーフ容器1Aは、一方のハーフ容器1Aと同様に構成され、分割対向部8における周縁に、一方のハーフ容器1Aの接合フランジ9に密封シール部材12を介して対向接合する枠形の接合フランジ9が一体形成される。この接合フランジ9には、一方のハーフ容器1Aの複数の接合ボス10に嵌合する接合孔11が配列して穿孔されるとともに、一方のハーフ容器1Aの複数の接合孔11に嵌合する接合ボス10が配列して突出形成され、各接合ボス10が円筒形状に形成されて締結具が後から螺挿される。
【0036】
密封シール部材12は、
図4に示すように、一対のハーフ容器1Aの接合フランジ9に対応するよう枠形状に形成され、複数の接合ボス10に貫通される貫通孔が間隔をおき並べて穿孔される。このような密封シール部材12は、一対のハーフ容器1Aが突き合わせて接続されると、一対の接合フランジ9の間から窒素ガスが容器本体1の外部に漏洩するのを有効に防止する。
【0037】
各支持体20は、
図4や
図5に示すように、一対のハーフ容器1Aの内部側面に締結具を介して装着される装着壁21と、この装着壁21内面の上下方向に所定の間隔で並設される複数の棚片22と、各棚片22の表面に部分的に並設され、基板Wの裏面周縁部を水平に支持する複数の支持突部23と、各棚片22の表面に部分的に積層され、複数の支持突部23に支持された基板Wの周縁側部に接触可能な位置ずれ防止壁24とを備えて構成される。
【0038】
各棚片22は、一対のハーフ容器1Aの前後方向に伸びる細長い板に形成され、各ハーフ容器1Aの内方向に水平に位置する。また、複数の支持突部23は、棚片22表面の反装着壁21寄りに配列され、各支持突部23が断面矩形状あるいは半円形状の短い線条に形成されてハーフ容器1Aの左右方向に指向する。
【0039】
位置ずれ防止壁24は、平面視で一対のハーフ容器1Aの前後部から中央部に向かうに従い徐々に装着壁21方向に曲がりながら細くなるよう形成され、両端部25がそれぞれ相対的に太く形成されており、各端部25が平面略扇形状に形成されて支持突部23に近接する。この位置ずれ防止壁24は、肉厚に形成されてその表面26が複数の支持突部23の表面よりも高位に位置し、基板Wの周縁側部に接触可能な接触面27が基板Wの周縁側部に応じて略円弧形状に湾曲形成されており、基板Wがハーフ容器1Aの前後方向や左右方向にずれるのを防止するよう機能する。
【0040】
蓋体30は、
図1、
図2、
図4、
図16、
図17に示すように、正面略矩形状で横長の板に形成され、蓋体開閉装置により、各ハーフ容器1Aの開口部3に対向配置された後、ハーフ容器1Aの開口部3を着脱自在に閉鎖する。この蓋体30は、施錠機構50の円滑な動作を確保する観点から、ハーフ容器1Aのフランジ4における前後方向の深さ(高さ)寸法よりも薄く形成され、表面の両側部に、蓋体開閉装置用の位置決め穴31がそれぞれ穿孔されており、各位置決め穴31が円形状や多角形状に形成される。
【0041】
蓋体30の基板Wに対向する裏面である対向面の中央部には、
図6や
図7に示すように、矩形状の凹部32が形成され、この凹部32に、基板Wの周縁部を保持する複数の保持リブ33が一体形成されており、この複数の保持リブ33が基板Wの過剰な位置ずれを規制する。複数の保持リブ33は、基板Wのノッチを回避可能なよう間隔をおいて並べて突出形成され、各保持リブ33が蓋体30の最大厚さ以下の高さに調整されており、先端部が基板Wの周縁前部あるいは周縁後部を保持する。
【0042】
このように蓋体30に凹部32や複数の保持リブ33が配設されるので、蓋体30を施錠機構50の解錠された位置から容器本体1の開口部下方にそのまま取り外すことが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、蓋体30を容器本体1の開口部3から遠ざけた後、下降させるという蓋体開閉装置の二段階の動作が不要となり、一段階の操作で蓋体30を容器本体1の開口部3から一方向に迅速に取り外すことが可能になる。
【0043】
蓋体30の裏面の周縁部には、枠形状のガスケット溝34が切り欠かれ、このガスケット溝34には、開口部3用のシールガスケット35が圧入して嵌着される。シールガスケット35は、
図16や
図17に示すように、ガスケット溝34に密嵌される枠形状の枠部36と、この枠部36の外周面から外方向に伸びてフランジ4の内周面に圧接する変形可能な先細りの舌片部37とを備え、各ハーフ容器1Aの開口部3と蓋体30との間に介在してシールする。
【0044】
蓋体30の両側面には
図10に示すように、各ハーフ容器1Aのフランジ4の貫通孔5に対向する施錠機構50用の施錠溝38がそれぞれ縦長に切り欠かれ、各施錠溝38の上部が開口する。この施錠溝38は、
図8や
図9に示すように、蓋体30の側面上部に位置する拡幅の上部溝39と、この上部溝39の下部に連接されて下方に長く伸びる中央溝40と、この中央溝40の下部に連接されて下方に伸びる縮幅の下部溝41とを一体に備えて形成される。
【0045】
上部溝39は、施錠機構50の施錠を容易にしたり、施錠機構50の不要な干渉を回避する観点から、中央溝40や下部溝41よりも幅広に形成され、中央溝40との間に斜面42が一体形成される。また、中央溝40は、下部溝41よりも幅広に形成され、下部溝41との間に斜面42が一体形成される。
【0046】
各施錠機構50は、
図1、
図4、
図10等に示すように、上下方向の施錠位置と解錠位置との間を移動可能な被操作板51と、この被操作板51の移動に応じて容器本体1の少なくとも相対向する前後両端面方向、換言すれば、ハーフ容器1Aの少なくとも前後方向に移動する施錠板55と、ハーフ容器1Aのフランジ4側部との間に施錠板55と被操作板51とを挟持するカバー板59とを備えて構成される。
【0047】
被操作板51は、
図4、
図10、
図11等に示すように、例えば多角形状の縦長の板に形成され、ハーフ容器1Aのフランジ4側部の取付ボス6に支持されてフランジ4側部との間に施錠板55を挟持する。この被操作板51の中間部付近には、ハーフ容器1Aの一方の取付ボス6に上下動可能に遊嵌される縦長孔52が穿孔され、この縦長孔52の上下近傍には、上下方向に湾曲しながら伸びる施錠板55用のカム溝53がそれぞれ切り欠かれる。
【0048】
各カム溝53は、被操作板51の前後幅方向、別言すれば、ハーフ容器1Aの前後方向に傾斜し、上下両端部のうち、少なくとも下端部が下方に直線的に短く伸長する。このカム溝53は、上端部がハーフ容器1Aのフランジ4前方から離隔し、下端部がフランジ4前方に近接するよう形成される。
【0049】
被操作板51の下部には、ハーフ容器1Aの他方の取付ボス6に摺接する断面略L字形状の操作片54が縦長に一体形成され、この操作片54がフランジ4側部の最下方7から露出する(
図2参照)。このような被操作板51は、露出した操作片54が外部から自動操作あるいは手動操作されることにより、上方向の解錠位置と下方向の施錠位置との間を上下動する。
【0050】
施錠板55は、
図4、
図10、
図12等に示すように、例えば多角形状の縦長の板に形成され、中間部付近に、被操作板51の縦長孔52に対向する横長孔56が穿孔されており、この横長孔56がハーフ容器1Aの一方の取付ボス6にスライド可能に遊嵌支持される。この施錠板55のハーフ容器1Aのフランジ4に対向する対向面には、フランジ4の貫通孔5を遊貫する上下一対の施錠爪57が間隔をおき突出形成され、この一対の施錠爪57が蓋体30の施錠溝38に嵌入係止することにより、蓋体30が施錠機構50に嵌挿支持される。
【0051】
一対の施錠爪57は、
図8や
図9に示すように、施錠溝38との間にガタツキが発生するのを防止する観点から、上方の施錠爪57が施錠溝38の中央溝40に密嵌するよう厚く、下方の施錠爪57が施錠溝38の下部溝41に密嵌するよう薄く形成される。また、施錠板55の被操作板51に対向する対向面の上下部には、被操作板51のカム溝53にスライド可能に嵌合するカム突起58がそれぞれ突出形成され、各カム突起58が略円柱形状に形成される。このような施錠板55は、被操作板51の上下動に応じてハーフ容器1Aの側壁に平行な方向に移動する。
【0052】
カバー板59は、
図4、
図10、
図13等に示すように、例えば多角形状の縦長の板に形成される。このカバー板59は、その上下部に螺子孔60がそれぞれ穿孔され、各螺子孔60を貫通した螺子61がハーフ容器1Aの取付ボス6に螺着されることで固定される。
【0053】
上記構成において、各ハーフ容器1Aの開口部3を蓋体30により閉鎖して施錠機構50で施錠する場合について説明すると、先ず、ハーフ容器1Aのフランジ4内に蓋体30が蓋体開閉装置の位置決めピンにより係合支持、あるいは係合支持及び真空吸着支持された状態で下方から嵌入して上昇するとともに、蓋体30の施錠溝38に施錠機構50の施錠爪57が嵌挿(
図17参照)され、ハーフ容器1Aの開口部3に蓋体30が僅かな隙間をおいて対向する(同図参照)。
【0054】
この際、施錠板55の一対の施錠爪57は、蓋体30の上昇に伴い、施錠溝38の上部溝39から嵌挿され、相対的に下降して施錠溝38の中央溝40と下部溝41とにそれぞれ密嵌する(
図8参照)。
【0055】
次いで、施錠機構50の被操作板51の操作片54が蓋体開閉装置に引き下げられる(
図14参照)と、被操作板51が解錠位置から施錠位置に下降してその縦長孔52の上端部を取付ボス6に接触させ、被操作板51のカム溝53の上端部と施錠板55のカム突起58とが係合するとともに、施錠板55の横長孔56の一側部と取付ボス6とが接触し、施錠板55がハーフ容器1Aの開口部3から分割対向部8方向、換言すれば、シール方向に移動する(
図16の矢印参照)。
【0056】
こうして施錠板55がハーフ容器1Aの分割対向部8方向に移動すると、施錠板55の施錠爪57がハーフ容器1Aの分割対向部8方向に移動することにより、ハーフ容器1Aの開口部3に対向状態の蓋体30が水平に圧接するとともに、ハーフ容器1Aの開口部3にシールガスケット35の舌片部37が圧接変形してシール状態を形成し、開口部3が蓋体30により強固に閉鎖される(
図16参照)。この際、基板Wの周縁前部に蓋体30の保持リブ33が嵌入して保持するので、基板Wのガタツキが有効に防止される。
【0057】
これに対し、施錠機構50を解錠して各ハーフ容器1Aの開口部3から蓋体30を取り外し可能にする場合には、蓋体30が蓋体開閉装置に吸着支持され、施錠機構50の被操作板51の操作片54が蓋体開閉装置に突き上げられる(
図15参照)。すると、被操作板51が解錠位置に上昇してその縦長孔52の下端部を取付ボス6に接触させ、被操作板51のカム溝53の下端部と施錠板55のカム突起58とが係合するとともに、施錠板55の横長孔56の他側部と取付ボス6とが接触し、施錠板55がハーフ容器1Aのシール方向から反シール方向に移動する(
図17の矢印参照)。
【0058】
施錠板55がハーフ容器1Aの反シール方向に移動すると、施錠板55の施錠爪57がハーフ容器1Aの反シール方向に移動することにより、ハーフ容器1Aの開口部3に接触していた蓋体30が水平に離隔して対向し、ハーフ容器1Aの開口部3に圧接していたシールガスケット35の舌片部37も離隔してシール状態を解除し、蓋体30がハーフ容器1Aの開口部3から取り外し可能な状態となる(
図17参照)。
【0059】
ハーフ容器1Aの開口部3から引き離された蓋体30は、その後、蓋体開閉装置の位置決めピンにより係合支持、あるいは係合支持及び真空吸着支持された状態で下降し、施錠溝38に対する施錠板55の施錠爪57の干渉が解除される。この際、施錠溝38の上部溝39が施錠爪57との不要な接触を容易に回避するよう拡幅なので、上部溝39と施錠爪57とが摺接するのを抑制し、摺接に伴うパーティクルの発生を有効に防止することができる(
図9参照)。
【0060】
上記構成によれば、蓋体30のフロントリテーナを省略するので、施錠機構50の施錠時にフロントリテーナによる基板Wの保持力の反力が蓋体30に作用することがなく、蓋体30が弓なりに変形するのを防止することができる。また、施錠機構50は、従来よりも部品点数が少ないので構成の簡素化を図ることができ、コスト削減に資することができる。また、蓋体開閉装置が第一、第二の二段階を経て蓋体30を取り外すタイプではないので、作業サイクルを短縮し、しかも、構成や制御の複雑化を排除することもできる。
【0061】
また、棚片22の表面に基板Wの裏面周縁部を水平に支持させるのではなく、複数の支持突部23のみに基板Wの裏面周縁部を支持させるので、基板Wの支持面積の減少に伴い、基板Wの汚染のおそれを有効に排除することが可能になる。また、位置ずれ防止壁24の湾曲した太い両端部25が基板Wの周縁側部にそれぞれ接触するので、基板Wが一対のハーフ容器1Aの長手方向にずれるのを有効に防止することが可能になる。
【0062】
また、容器本体1の正面と背面の両面が開口し、各開口部3から基板Wを出し入れすることができ、容器本体1の運用性が大幅に向上するので、基板Wのローディングやアンローディングが一方向に限定されることがない。したがって、例えば基板Wを他の製造装置に供給したい場合に、他の製造装置に向きを変えた基板収納容器の蓋体30をドッキングさせ、基板Wをローディングしたり、アンローディングする必要がなく、作業の著しい簡易化、迅速化、容易化を図ることが可能になる。
【0063】
また、基板収納容器を回転させてその向きを変える複雑な回転機構を省くことができ、しかも、基板収納容器の方向を検出して制御する必要もない。また、容器本体1を対称に構成することができるので、搬送時の重心バランスの著しい向上が期待できる。さらに、施錠機構50が基板Wに直接面する蓋体30ではなく、フランジ4の両側部に設置されて容器本体1の外部に位置し、施錠機構50と基板Wとの間に容器本体1の側壁が介在するので、施錠機構50の塵埃が容器本体1の内部に流入して基板Wを汚すのを防止することができる。
【0064】
次に、
図18は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1を一対のハーフ容器1Aに均等に二分割するのではなく、当初から一体成形して正面のみを開口させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0065】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、容器本体1の寸法精度を著しく向上させ、一対の接合フランジ9間から窒素ガスが外部に漏洩するおそれを排除することができるのは明らかである。また、接合フランジ9、接合ボス10、接合孔11を省略することができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では基板Wをφ300mmの半導体ウェーハとしたが、何らこれに限定されるものではなく、φ450mmの半導体ウェーハ等としても良い。また、容器本体1、蓋体30、施錠機構50を所要の樹脂を含有する成形材料により成形したが、耐久性を向上させたい場合には、容器本体1、蓋体30、施錠機構50を各種の金属材料により形成しても良い。また、容器本体1の内部両側に支持体20を締結具によりそれぞれ螺着固定したが、容器本体1と支持体20のいずれか一方に凹部を、他方には凸部を形成し、これら凹部と凸部とを嵌合して支持体20を固定しても良い。
【0067】
また、一対の接合フランジ9の間に密封シール部材12を挟んでも良いが、シール用のOリング等を代わりに挟むこともできる。また、基板Wの汚染を防止する観点から、容器本体1に吸湿材を内蔵したり、又は蓋体30を中空に形成して吸湿材を内蔵したり、吸湿ガスを充填することもできる。また、蓋体30の凹部32に保持リブ33を一体形成するのではなく、凹部32に別体の保持部材を着脱自在に装着することもできる。