特許第5912983号(P5912983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5912983電流モード回路の入力インピーダンスを維持するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912983
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】電流モード回路の入力インピーダンスを維持するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H04B1/04 F
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-176154(P2012-176154)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2013-42494(P2013-42494A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】13/207,672
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514045555
【氏名又は名称】インテル アイピー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ユィ・チョアヌジャオ
(72)【発明者】
【氏名】オリアエイ・オミッド
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ゴメズ・マイケル エル
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−507773(JP,A)
【文献】 特開昭61−035004(JP,A)
【文献】 特開平02−165709(JP,A)
【文献】 特開2006−060455(JP,A)
【文献】 特開昭61−005321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ノードに結合された入力段、
前記入力ノードにおいて前記入力段に結合され、前記入力にバイアス電流を供給するよう構成されるバイアス回路であって、前記バイアス回路は、前記入力ノードに結合されカスケード段から直流を除去するよう構成された、バイアス回路、
前記入力ノードにおいて前記入力段と前記バイアス回路とに結合され、受信した入力信号に対して低い入力インピーダンスを提供するよう構成されたカスケード段、
前記入力段に結合され、前記入力信号に基づき出力信号を出力するよう構成された出力段、
前記出力段に結合され、前記出力段から前記出力信号を受信し、前記出力信号を搬送波信号に変調して無線周波数(RF)信号を生成するよう構成されたミキサ、
入力コイルと前記入力コイルに結合された出力コイルとを有し、前記出力コイルにおいて前記RF信号を出力するよう構成されたバラン、
前記ミキサの出力に結合され、前記ミキサに電流を供給して、前記ミキサの前記出力と前記バランの前記入力コイルとの間の内部抵抗を少なくとも部分的にバイパスし、前記内部抵抗と関連する電力消費を低減するよう構成された電流源、
を有する回路。
【請求項2】
前記出力段は、前記入力信号に利得を適用して、前記出力信号が少なくとも前記入力信号と前記利得との関数になるように更に構成される、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記入力段と前記出力段との間に結合され、前記入力段を前記出力段と分離するよう構成されたバッファ段、を更に有する請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記入力段、前記バッファ段及び前記出力段の少なくとも1つは、前記入力信号と関連する雑音をフィルタリングするよう構成されたフィルタを有する、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記入力段及び前記出力段の少なくとも1つは、前記入力信号と関連する雑音をフィルタリングするよう構成されたフィルタを有する、請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記入力段は高線形性のために構成され、前記出力段は低雑音のために構成される、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
デジタルデータ信号を受信し、該デジタルデータ信号をアナログデータ信号に変換するよう構成されたデジタル−アナログコンバータ(DAC)、
前記アナログデータ信号を前記DACから受信するよう構成された、入力段の入力ノード、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回路、
を有する送信経路。
【請求項8】
前記デジタルデータ信号は、GSM(Global System for Mobile Communications)、EDGE(enhanced data rate for GSM evolution)、GPRS(general packet radio system)及びGMSK(Gaussian minimum-shift-keying)送信プロトコルのうちの少なくとも1つと関連する、請求項7に記載の送信経路。
【請求項9】
回路の入力段により、前記回路の入力ノードにおいて、入力信号を受信するステップ、
前記入力ノードにおいて前記入力段に結合された前記回路のバイアス回路により、前記入力にバイアス電流を供給するステップ、
前記入力ノードにおいて前記入力段と前記バイアス回路とに結合された前記回路のカスケード段により、前記受信した入力信号に対して低い入力インピーダンスを提供するステップ、
前記バイアス回路の抵抗器を用いて、前記カスケード段から直流を除去するステップ、
前記入力段に結合された出力段により、前記入力信号に基づき出力信号を出力するステップ、
ミキサにより、前記出力信号を搬送波信号に変調して無線周波数(RF)信号を生成するステップ、
バランの入力コイルに結合された出力コイルで前記RF信号を出力するステップ、
前記ミキサの出力で、前記ミキサに電流を供給して、前記ミキサの前記出力と前記バランの前記入力コイルとの間の内部抵抗を少なくとも部分的にバイパスし、前記内部抵抗と関連する電力消費を低減するステップ、
を有する方法。
【請求項10】
前記入力信号に利得を適用するステップであって、前記出力信号が少なくとも前記入力信号と前記利得との関数になるようにする、ステップ、を更に有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記入力段と前記出力段との間に結合されたバッファ段により、前記入力段を前記出力段と分離するステップ、を更に有する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記入力信号と関連する雑音をフィルタリングするステップ、を更に有する請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記入力信号は、GSM(Global System for Mobile Communications)、EDGE(enhanced data rate for GSM evolution)、GPRS(general packet radio system)及びGMSK(Gaussian minimum-shift-keying)送信プロトコルのうちの少なくとも1つと関連する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して無線通信に関し、電流モード回路の入力インピーダンスを維持するシステム及び方法を含むがこれに限定されない。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、種々の電子通信システム、テレビジョン、ラジオ及び他のメディアシステム、データ通信ネットワーク及び他のシステムで、無線送信機及び無線受信器を用いる遠隔地点間で情報を伝達するために用いられる。送信機は、電子機器であり、通常、アンテナの助けを得て、ラジオ、テレビジョン又は他の電子通信のような電磁信号を伝搬する。受信機は、電子機器であり、無線電磁信号を受信し処理する。送信機及び受信機は、通信機と呼ばれる単一の装置に結合されてもよい。
【0003】
多くの送信機は、送信信号の電力を増大できる駆動増幅器又は利得段を有するが、これは送信機の電力消費も増大させてしまう。さらに、送信機のコンポーネントを駆動するために用いられるバイアス電圧は、送信機の内部抵抗により種々の電圧降下を経験し、送信機の電圧無歪限界を減らしてしまう。電圧無歪限界は、送信機のコンポーネントを駆動するために用いられる電圧の量と関連し、送信機を通じて通信される無線周波数(RF)信号の電力により影響を受け得る。したがって、送信機により送信されるRF信号の出力電力は、電圧無歪限界の減少が送信機の性能に悪影響を与えるために、制限される。さらに、送信機の内部抵抗を通じた電流シンクは、送信機の電力消費を増大させる。
【0004】
また、多くの送信機は、異なる設計の検討が異なる送信プロトコルを求める場合、複数の送信プロトコルを用いてRF信号を送信するように構成される。さらに、送信機は、異なる設計の検討が周波数範囲内の異なる周波数を求める場合、広い周波数範囲に渡りRF信号を送信するよう構成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電流モード回路の入力インピーダンスを維持するシステム及び方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の幾つかの実施形態によると、回路は、電流モード入力信号を受信する入力ノードを有する。回路は、前記入力ノードに通信可能に結合された入力装置を含む入力段、を更に有する。入力装置は、入力ノードにおいて電流モード入力信号を受信するよう構成される。回路は、入力ノードにおいて入力段に通信可能に結合されたバイアス回路を更に有する。バイアス回路は、入力装置にバイアス電流を供給するよう構成される。バイアス回路は、バイアス電流の少なくとも一部を、入力ノードに関連付けられたフィードバックループを通じて入力信号から除去し、入力信号が、バイアス電流の少なくとも一部を除去されて、入力装置により受信されるようにする。回路は、入力段に通信可能に結合され、入力信号に基づき電流モード出力信号を出力するよう構成された出力段、を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示並びにその特徴及び利点のより完全な理解のため、添付の図面と関連して以下の説明を参照する。
図1】本開示の幾つかの実施形態による、例示的な無線通信システムのブロック図を示す。
図2】本開示の幾つかの実施形態による、無線通信要素に含まれる例示的な送信機の選択されたコンポーネントのブロック図を示す。
図3】本開示の幾つかの実施形態による、バランに並列に結合されたデジタル制御減衰器(DVCA)の一例である。
図4】本開示の幾つかの実施形態による、DVCAの別の例である。
図5】本開示の幾つかの実施形態による、漏れ相殺を有するDVCAの一例を示す。
図6】本開示の幾つかの実施形態による、電圧−電流(V−I)コンバータの例示的な実施形態を示す。
図7】本開示の幾つかの実施形態による、ノイズフィルタを含むV−Iコンバータの正極性経路の一例を示す。
図8】本開示の幾つかの実施形態による、送信プロトコルと関連する各経路を有する複数の経路を備えるよう構成された送信機の一例を示す。
図9】本開示の幾つかの実施形態による、送信機のための低雑音経路を提供するよう構成された電流モード増幅器回路を含む例示的な送信機を示す。
図10】本開示の特定の実施形態による、電流モード増幅器回路の一例を示す。
図11】本開示の幾つかの実施形態による、例示的なマルチバンド送信機を示す。
図12A】本開示の幾つかの実施形態による、チューナ内のスイッチの望ましくない導通を補償するよう構成されたバランのチューナの一例を示す。
図12B】本開示の幾つかの実施形態による、チューナ内のスイッチの望ましくない導通を補償するよう構成されたバランのチューナの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の幾つかの実施形態による、例示的な無線通信システム100のブロック図を示す。簡単のため、2つの端末110及び2つの基地局120のみが図1に示される。端末110は、リモート局、移動局、アクセス端末、ユーザ機器(UE)、無線通信機器、携帯電話機又は特定の他の用語としても表される。基地局120は、固定局であり、アクセスポイント、NodeB又は特定の他の用語としても表される。MSC(mobile switching center)140は基地局120に結合され、基地局120に対する調整及び制御を提供してもよい。
【0009】
端末110は、衛星130からの信号を受信可能であっても可能でなくてもよい。衛星130は、良く知られたGPS(Global Positioning System)のような衛星測位システムに属してもよい。各GPS衛星は、地上にあるGPS受信機にGPS信号の到着時間を測定させる情報でエンコードされたGPS信号を送信し得る。十分な数のGPS衛星の測定は、GPS受信機の3次元位置を正確に推定するために用いることができる。端末110は、Bluetooth(登録商標)送信機、Wi−Fi(Wireless Fidelity)送信機、無線LAN(Wireless local area network)送信機IEEE802.11送信機及び任意の他の適切な送信機のような他の種類の送信源からの信号を受信可能であってもよい。
【0010】
図1では、各端末110は、複数の送信源からの信号を同時に受信するように示され、送信源は基地局又は衛星130である。通常、端末110は、ゼロ、1又は複数の送信源からの信号を任意の所与の瞬間に受信できる。特定の実施形態では、端末110は、無線通信信号を、基地局120のような1又は複数の受信源に送信する送信源である。以下に更に詳細に開示されるように、送信源(例えば、基地局120、端末110等)は、送信無線通信信号の電力を調整するために可変供給電圧を有するよう構成された送信機を含み得る。さらに、送信機は、送信機の種々のコンポーネントを駆動して、以下に更に詳細に開示されるように増大する信号電力のためにより多くの電圧無歪限界を可能にするよう構成された複数のDC電流源を含み得る。さらに、送信機は、異なる送信プロトコルについて、各送信プロトコルでの送信機の動作を向上させるよう構成された複数の経路を含み得る。また、送信機は、マルチバンド送信機として構成されてもよい。
【0011】
システム100は、符号分割多重アクセス(CDMA:Code Division Multiple Access)システム、時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)システム、特定の他の無線通信システム、又はそれらの任意の組合せであってもよい。CDMAシステムは、IS−95、IS−2000(一般的に「1x」としても知られている)、IS−856(一般的に「1xEV−DO」としても知られている)、広帯域CDMA(W-CDMA)等のような1又は複数のCDMA標準又はプロトコルを実装し得る。W−CDMA標準は、3GPPとして知られているコンソーシアムにより策定され、IS−2000及びIS856標準は、3GPP2として知られているコンソーシアムにより策定されている。3GPPは、3GPP LTE(long-term evolution)標準も含む。これらの異なる3GPP標準は、第3世代(3G)及び/又は第4世代(4G)標準としても表される。
【0012】
TDMAシステムは、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)1又は複数のTDMA標準又はプロトコルを実装し得る。さらに、GSMの変形は、EDGE(Enhanced data rate for GSM evolution)プロトコル及びGPRS(general packet radio system)プロトコルを含む。これらの標準又はプロトコルは、GMSK(Gaussian minimum-shift-keying)送信プロトコルに加えて、第2世代(2G)プロトコルとしても表される。
【0013】
図2は、本開示の特定の実施形態による、無線通信要素(例えば、端末110、基地局120又は衛星130)に含まれ得る例示的な送信機200の選択されたコンポーネントのブロック図を示す。幾つかの実施形態では、無線通信要素は、受信機も含み得るが、明示的に示されない。したがって、無線通信要素の機能に依存して、要素は、送信機、受信機又は通信機と考えられる。以下に更に詳細に議論されるように、送信機200は、RF信号の送信中に、RF信号の電力が増大したときでも、より多くの電圧無歪限界を可能にするよう構成される。さらに、送信機200は、従来の送信機と比べて、送信機200の電力消費を低減するよう構成される。
【0014】
図2に示されるように、送信機200は、デジタル回路202を有し得る。デジタル回路202は、任意のシステム、送信機200を介した送信のためにデジタル信号及び情報を処理するよう構成された装置又は機器を有し得る。このようなデジタル回路202は、1又は複数のプロセッサ、デジタル信号プロセッサ及び/又は他の適切な装置を有し得る。本実施形態では、デジタル回路202は、制御部211を有し得る。以下に更に詳細に開示されるように、制御部211は、送信機200のバラン(balun)234のバイアス電圧を調整するために、スイッチ214(以下に記載される)へ制御信号を伝達するよう構成され得る。
【0015】
制御部211は、プログラム命令を解釈し及び/又は実行し、及び/又はデータを処理するよう構成された任意のシステム、装置又は機器を有し、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)又はプログラム命令を解釈し及び/又は実行し及び/又はデータを処理するよう構成された任意の他のデジタル若しくはアナログ回路を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、制御部211は、制御部211に通信可能に結合されたメモリ(明示的に示されない)に格納されたプログラム命令を解釈し及び/又は実行し、及び/又はデータを処理できる。
【0016】
メモリは、プログラム命令又はデータをある期間の間保持する任意のシステム、装置又は機器(例えば、コンピュータ可読媒体)を有し得る。メモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)、EEPROM(電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ)、PCMCIAカード、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光磁気記憶装置、又は任意の適切な選択及び/又は揮発性メモリ若しくは制御部211への電力が切断された後にデータを保持する不揮発性メモリのアレイを含み得る。
【0017】
デジタル回路202は、同相(Iチャネル)経路252及び直交(Qチャネル)経路254を介して信号成分を送信するよう構成され得る。Iチャネル経路252は同相信号成分を伝達し、Qチャネル経路254はIチャネル信号成分と90度位相のずれている直交信号成分を伝達する。信号は、送信機200により送信されるデータ及び/又は情報を含み得るので、データ信号として表される。
【0018】
Iチャネル経路252及びQチャネル経路254は、それぞれデジタル−アナログコンバータ(DAC)204を有し得る。本例では、各DAC204は、電流モードDACを有し得る。したがって、各DAC204は、デジタルデータ信号をデジタル回路202から受信し、このデジタル信号をアナログ電流信号に変換するよう構成され得る。本例では、各DAC204は、正極性電流Idac及び負極性電流Idacにより表現される差電流信号を出力するよう構成され得る。次に、このアナログ差電流信号は、フィルタ206を含む送信経路201の1又は複数の他のコンポーネントに渡される。フィルタ206は、DAC204により引き起こされ得る差電流信号内の雑音をフィルタリングするよう構成された任意の適切なシステム、機器又は装置を有し得る。さらに、フィルタリング中、フィルタ206は、差電流信号を正極性電圧Vin及び負極性電圧Vinにより表現される差電圧信号に変換し得る。フィルタ206を通過した後、I及びQチャネルと関連する差電圧信号は、それぞれ電圧−電流(V−I)コンバータに渡される。
【0019】
各V−Iコンバータ208は、受信した差電圧信号を正極性電流Iin及び負極性電流Iinを有する差電流信号に変換するよう構成された任意の適切なシステム、機器又は装置を有し得る。幾つかの実施形態では(例えば、フィルタ206が自身のノイズを挿入し得る能動フィルタを有するとき)、図3と関連して更に記載されるように、V−Iコンバータ208は、フィルタ206により引き起こされ得る雑音をフィルタリングするよう構成された受動フィルタ(図2に明示されない)を有し得る。また、V−Iコンバータ208は、差電流データ信号を出力するように構成され得る。
【0020】
それぞれV−Iコンバータ208及び208bを出た後、Iチャネル及びQチャネル差電流信号は、それぞれミキサ216a及び216bにより受信される。ミキサ216は、搬送波に乗っている差電流データ信号を変調して、差RF電流信号を生成するよう構成され得る。ミキサ216による変調に続いて、I及びQチャネル信号成分は結合され得る。したがって、正極性RF電流Iinは、トランジスタ228aにより受信され得る。ここで、Iinは、I及びQチャネル両者の正極性信号成分を含む。同様に、負極性RF電流Iinは、トランジスタ228bにより受信され得る。ここで、Iinは、I及びQチャネル両者の負極性信号成分を含む。トランジスタ228は、バラン234(以下に詳細に記載される)及びミキサ216の比較的大きい電圧スイング間の分離を提供するよう構成され得る。
【0021】
幾つかの実施形態では、以下に更に記載されるように、差RF電流信号は、イネーブルされるとRF信号を減衰するよう構成されたRF減衰器230により受信され得る。減衰器230は、制御部211から受信した制御信号に基づき、RF信号を減衰し得る。したがって、制御信号に従い、減衰器230は、RF信号の電力を調整し得る。図3、4、5に関して以下に更に記載されるように、減衰器230は、差RF電流信号を受信するよう構成されたバラン234と並列に構成され得る。
【0022】
バラン234は、差信号をシングルエンド信号に又はその逆に変換するよう構成された任意のシステム、機器又は装置を有し得る。本例では、バラン234は、入力コイル236及び出力コイル238を含む変圧器を有し得る。さらに、本実施形態では、バラン234は、入力コイル236における巻数比が出力コイル238における巻線比より大きいステップダウン変圧器を有してもよい。入力コイル236における巻線比が大きいほど、入力コイル236は大きい入力インピーダンス(例えば、600オーム)を有し、RF信号の大きなスイングを許容する。出力コイル238における巻線比が小さいほど、出力コイル238の出力インピーダンスは低減し(例えば、50オーム)、したがって、出力コイル238と電力増幅器220との間のインピーダンス整合回路は必要なくなる。
【0023】
バラン234の入力コイル236は、差RF電流信号のIin及びIinを受信し、差RF電流信号が入力コイル236を通過するとき、出力コイル238は、電力増幅器220に伝達されるシングルエンドRF信号を生成し得る。電力増幅器(PA)220は、アンテナ218を介して送信するために、シングルエンドRF信号を増幅し得る。
【0024】
出力コイル238から電力増幅器220へ送信されたRF信号の電力は、少なくとも出力コイル238を通って流れるRF差電流の関数であり得る。出力コイル238を通って流れるRF差電流は、入力コイル236を通って流れるRF電流の関数であり得る。したがって、出力コイル238において出力されるRF信号の電力は、少なくとも入力コイル236を通過する差RF電流を調整することにより調整できる。入力コイル236を通過する差RF電流は、減衰器230により調整できる。幾つかの実施形態では、減衰器230は、デジタル電圧制御減衰器(DVCA)を有し得る。
【0025】
図3は、本開示の特定の実施形態による、バランとして動作し得る変圧器302に並列に結合されたDVCA300の一例を示す。幾つかの実施形態では、図2の減衰器230は、DVCA300を有し、及び/又は図2のバラン234は変圧器302を有し得る。DVCA300及び変圧器302は、送信RF信号の電力を制御するために用いることができる。
【0026】
上述のように、本例では、DVCA300は、バランとして動作し得る変圧器302と並列に配置される。本例では、変圧器302は、図2のバラン234の入力コイル236と同様の入力コイル316を有し得る。変圧器302は、図2のバラン234の出力コイル238と同様の出力コイル318を有し得る。入力コイル316は、RF信号を変調するよう構成されたミキサ(例えば、図2のミキサ216)から受信したRF信号の正極性差電流Iin及び負極性差電流Iinをそれぞれ受信するよう構成された入力ポート304a及び304bを有し得る。さらに、入力コイル316は、中央タップ電圧(Vct)に結合され得る。中央タップ電圧(Vct)は、入力コイル316を適切な電圧でバイアスして、DVCA300と関連する送信機の十分な電圧無歪限界を可能にする。これは、以下に更に詳細に議論される。出力コイル318は、RF信号をシングルエンドRF信号として出力するよう構成された出力ポート314を含み得る。本例では、出力ポート314は、電力増幅器(例えば、図2の電力増幅器220)に結合され、RF信号が出力ポート314から電力増幅器へ伝達され得るようにしてもよい。
【0027】
以下に更に開示されるように、DVCA300は、イネーブル及びディスエーブルされて、RF差電流の少なくとも一部を入力コイル316から切り離すことにより、入力ポート304a及び304bで受信されるRF信号の電力の少なくとも一部を消散させ得る。また、DVCA300は、(RF信号により経験される)自身のインピーダンスを変化させることにより、DVCA300を通るRF差電流の異なる量を引き出すよう構成され、入力ポート304a及び304bで受信されるRF信号の電力一部が可変インピーダンスに従ってDVCA300内で消散されるようにする。したがって、入力コイル316及び出力コイル318を通過する電流は、DVCA300のインピーダンス変化に従って変化し、その結果、出力ポート314におけるRF信号出力の電力が変化する。
【0028】
DVCA300は、入力コイル316の入力ポート304に結合されたスイッチ306及び310を有し得る。本実施形態では、スイッチ306は、n型金属酸化膜半導体(NMOS)電界効果トランジスタを有し、スイッチ310は、p型金属酸化膜半導体(PMOS)電界効果トランジスタを有し得る。これらのスイッチは、図2の制御部211のような制御部から送られた制御信号に従って開閉するよう構成される。本例ではスイッチ306a及び306bはNMOS素子なので、スイッチ306a及び306bは、それらの個々のゲートで「HIGH」制御信号を受信するのに応答して閉じ、「LOW」制御信号を受信するのに応答して開く。本例ではスイッチ310a及び310bはPMOS素子なので、スイッチ310a及び310bは、それらの個々のゲートで「LOW」制御信号を受信するのに応答して閉じ、「HIGH」制御信号を受信するのに応答して開く。
【0029】
RF信号の減衰が不要な場合には、スイッチ306及び310は開かれ、DVCA300を入力コイル316から切り離し、RF差電流がDVCA300を通じて引き出されないようにする。したがって、DVCA300はディスエーブルされ、全てのRF電流は入力コイル316及び出力コイル318を通じて引き出され、RF信号の全電力が出力ノード314で出力される。
【0030】
更なる電力制御を提供するために、DVCA300は、幾つかの例ではイネーブルされる。DVCA300は、スイッチ306及び310によりイネーブルされ得る。スイッチ306及び310は、制御部(例えば、制御部211)からスイッチ306及び310を閉じる制御信号を受信する。したがって、入力ポート304で受信したRF信号の少なくとも一部は、DVCA300を通過し得る(例えば、本例では、RF差電流の一部がDVCA300を通過し得る)。その結果、少ないRF電力しか、出力ポート314へ転送されない(例えば、少ないRF電流しかコイル316及び318を通過しないので、出力ポート314で出力されるRF信号の電力が低減される)。
【0031】
さらに、DVCA300のインピーダンスも調整でき、DVCA300を通過するRF差電流及びRF電力が調整できる。例えば、DVCA300は、正極性差RF電流と関連するR2R梯子抵抗器320aを有し、DVCA300は、負極性差RF電流と関連するR2R梯子抵抗器320bを有し得る。各R2R梯子320は、1又は複数の抵抗器312と、制御部(例えば、制御部211)から受信した制御信号に従って開閉する1又は複数のスイッチ308とを有し得る。各スイッチ308は、開閉して、それぞれ1又は複数の抵抗器312を、DVCA300を通るRF信号が従う経路から切り離すか結合するよう構成され得る。本例では、スイッチ308は、PMOS素子を有するが、任意の他の適切なシステム、機器又は装置がスイッチ308に用いられてもよい。
【0032】
したがって、各スイッチ308が開き及び/又は閉じるとき、DVCA300を通過するRF信号に関するDVCA300の総インピーダンスが変化し、その結果、DVCA300を通過するRF電流が変化し得る。上述のように、RF電力は、RF電流の関数である。したがって、(入力コイル316を通過する代わりに)DVCA300を通じて消散されるRF信号電力の量は、DVCA300のインピーダンスの関数であり得る。DVCA300のインピーダンスは、スイッチ308の開閉に基づく。したがって、制御部は、適切なスイッチ308を開く及び/又は閉じることにより、出力ポート314において出力されるRF信号の減衰を調整できる。さらに、幾つかの例では、以下に更に詳細に開示されるように、制御部(例えば、図2の制御部211)は、DVCA300がイネーブルされているとき、DVCA300の供給電圧(Vdd)に設定されるべきVct322を低減し得る。RF信号の電力が低いために入力コイル316におけるバイアス電圧は高い必要がないので、DVCA300がイネーブルされているとき、Vct322を低減できる。このような構成は、従来のRF信号減衰構成と比べて、RF信号電力減衰のより広いダイナミックレンジに渡って、RF信号電力のより線形的な調整を可能にする。
【0033】
本開示の範囲から逸脱することなく、図3のシステムに変更、追加又は省略を行うことができる。例えば、本実施形態はDVCA300をバランとして動作する変圧器302と並列に示しているが、DVCA300は任意の適切なバランと並列に配置されて、より広いダイナミックレンジに渡って線形的な減衰を達成してもよいことが理解される。さらに、スイッチ306及び310はそれぞれ特にNMOS及びPMOS素子として示されているが、任意の適切なスイッチが用いられて、スイッチ306及び310により実行される切り替え機能を実行してもよいことが理解される。また、スイッチ306がPMOS素子を有し、スイッチ310がNMOS素子又はそれらの任意の組合せを有してもよい。さらに、図4に示されるように、幾つかの例では、スイッチ310は省略されてもよい。
【0034】
図4は、本開示の幾つかの実施形態による、DVCAの別の例である。図4は、図3に関連して記載したように、入力コイル316及び出力コイル318を備えた変圧器302を有し得る。さらに、入力コイル316は、図3と関連して記載されたように、RF信号の差RF電流を受信するよう構成された入力ポート304を有し得る。さらに、図3に記載されるのと同様に、入力コイル316は、入力コイルのほぼ中央322で中央タップ電圧Vct322に通信可能に結合され、入力コイル316をバイアスし得る。
【0035】
図3の説明と同様に、DVCA400は、変圧器302と並列に配置され得る。DVCA400は、スイッチ306を有し得る。スイッチ306は、それぞれ閉じることにより及び開くことにより、DVCA400をイネーブル及びディスエーブルして、DVCA400を上述のように変圧器302と結合し又は切り離し得る。DVCA400は、抵抗器312及びスイッチ308も有し得る。抵抗器312及びスイッチ308は、図3に関して記載したように、開く及び閉じることにより、DVCA400のインピーダンスを変化させるよう構成される。
【0036】
しかしながら、図3のDVCA300と異なり、図4のDVCA400は、それぞれRF信号の正極性及び負極性差電流を受信するよう構成された入力端子402a及び402bを有し得る。したがって、DVCA400は、図3に示されたスイッチ310を有しなくてもよい。DVCA400の本実施形態では、入力端子402a及び402bで受信されるRF信号は、ポート304a及び304bで受信されるRF信号と同じRF信号源により生成され得る。他の実施形態では、入力端子402a及び402bで受信されるRF信号は、ポート304a及び304bで受信されるRF信号を生成する信号源と異なる信号源により生成され得る。1又は複数のRF信号源は、図2のミキサ216のようなミキサを有し得る。
【0037】
DVCA400による減衰が望ましくない場合には、制御部(例えば、制御部211)は、スイッチ306を開き、RF信号をポート304a及び304bに向けてもよい。このような場合には、制御部は、RF信号をDVCA400の端子402へ送信しないよう指示してもよい。DVCA400による減衰が望ましい場合には、制御部(例えば、制御部211)は、スイッチ306を閉じ、RF信号をDVCA400の端子402へ送信するよう指示してもよい。このような場合には、制御部は、RF信号がポート304へ送信されないよう指示してもよい。RF信号は、RF信号源にカスケード接続され及びそれぞれDVCA300がディスエーブルされているかイネーブルされているかに依存して入力ポート304又は入力端子402の何れかにRF電流を向けるよう構成された素子(例えば、CMOS素子)により、入力ポート304と入力端子402との間に向けられてもよい。上述のように、DVCA400がイネーブルされると、異なるスイッチ308が開かれ又は閉じられ、DVCA400のインピーダンスを調整して、その結果、出力ポート314で出力されるRF信号の電力が調整できる。したがって、DVCA400は、RF信号の減衰を調整するよう構成される。さらに、DVCA300のスイッチ310の代わりに、DVCA400に入力端子402を含めることにより、スイッチ310による起こり得る挿入損失が回避できる。
【0038】
本開示の範囲から逸脱することなく、図4のシステムに変更、追加又は省略を行うことができる。例えば、本実施形態はDVCA400をバランとして動作する変圧器302と並列に示したが、DVCA400は、従来の減衰構成に比べて広いダイナミックレンジに渡り線形的な減衰を達成する任意の適切なバランと並列に配置されてもよいことが理解される。さらに、スイッチ306は特にNMOSとして示されたが、任意の適切なスイッチが用いられ、スイッチ306により実行される切り替え機能を実行してもよいことが理解できる。例えば、幾つかの実施形態では、スイッチ306は、NMOS素子の代わりにPMOS素子を有してもよい。さらに、図5に関して記載されたように、幾つかの実施形態では、DVCA400は、スイッチ308を通じて起こり得る漏れ電流を補償するよう構成されてもよい。
【0039】
図5は、本開示の特定の実施形態による、漏れ相殺を有するDVCA500の一例を示す。DVCA500は、それぞれ図3及び4のDVCA300及びDVCA400に関して上述されたように、変圧器302の入力コイル316と並列に結合され得る。さらに、DVCA500は、図4のDVCA400と実質的に同様であるが、DVCA400と異なり、DVCA500は、スイッチ308が開かれ且つDVCA500がイネーブルされているとき、スイッチ308を通じて生じ得る漏れ電流を補償するよう構成され得る。
【0040】
DVCA400と同様に、DVCA500は、スイッチ306を閉じることによりイネーブルできる。さらに、DVCA500の入力端子402は、DVCA500がイネーブルされているとき、RF信号を受信し得る。上述のように、DVCA500のインピーダンスを調整するために、スイッチ308は開かれ又は閉じられ得る。しかしながら、スイッチ308が開いているとき、一部の電流が開いているスイッチ308の1つ又は複数を通じて漏れ、それにより、これらのスイッチが完全に開いている場合には、これらのスイッチを機能させなくしてしまう。
【0041】
したがって、DVCA500は、1又は複数のダミースイッチ502を有し得る。1又は複数のダミースイッチ502は、スイッチ308が「開」のとき、各スイッチ308を通過する漏れ電流の一部又は全部を補償し得る。例えば、ダミースイッチ502aは、スイッチ308aと関連付けられ、スイッチ308aが「開」のとき、スイッチ308aを通る漏れ電流を補償するよう構成され得る。ダミースイッチ502b、502c及び502dは、同様にスイッチ308b、308c及び308dとそれぞれ関連付けられ得る。本例では、ダミースイッチ502は、ゲートがソース電圧Vddに固定されたPMOS素子を有してもよい。これにより、ダミースイッチ502は、常にオフである。代替の例では、1又は複数のダミースイッチ502は、ゲートがグランドに固定されたNMOS素子を有し、NMOSダミースイッチ502が常にオフであるようにしてもよい。
【0042】
ダミースイッチ502は、関連付けられたスイッチ308を通じて流れる漏れ電流の極性と反対極性を有する漏れ電流を有するよう構成され得る。したがって、ダミースイッチ502の漏れ電流は、関連付けられたスイッチ308の漏れ電流を部分的に又は完全に相殺するために用いることができる。
【0043】
例えば、スイッチ308aは、一端がDVCA500のノード504にも結合され、他端が入力端子402aに結合され得る。上述のように、入力端子402aは、DVCA500がイネーブルされているとき、RF信号の正極性の差RF電流を受信するよう構成され得る。したがって、入力端子402aからノード504へとスイッチ308aを通過する漏れ電流は、正極性を有し得る。さらに、ダミースイッチ502aは、一端がDVCA500のノード504に結合され、他端が入力端子402bに結合され得る。上述のように、入力端子402aは、DVCA500がイネーブルされているとき、RF信号の負極性の差RF電流を受信を受信するよう構成され得る。したがって、入力端子402bからノード504へダミースイッチ502を通過する漏れ電流は、負極性を有し、スイッチ308aと関連付けられた漏れ電流の正極性と反対の極性である。さらに、ダミースイッチ502aは、ダミースイッチ502aを通じて流れる漏れ電流の量がスイッチ308aを通過する漏れ電流の量とほぼ同じになるように、大きさを定められる。
【0044】
したがって、スイッチ502a及び308aと関連付けられたノード504における漏れ電流がほぼ等しく且つ反対極性を有するとき、漏れ電流は、互いに部分的に又は完全に相殺できる。ダミースイッチ502b、502c及び502dは、スイッチ308b、308c及び308dに関して同様に構成され得る。したがって、DVCA500は、図4に関して記載されたDVCA400と同様に、出力ポート314において出力されるRF信号の電力を調整するよう構成され、スイッチ308を通じて生じ得る漏れ電流を補償するように構成され得る。
【0045】
本開示の範囲から逸脱することなく、DVCA500に変更、追加又は省略を行うことができる。例えば、本実施形態では、DVCA500はバランとして動作する変圧器302と並列に示されたが、DVCA500は、従来の減衰構成と比べて広いダイナミックレンジに渡り線形的減衰を達成する任意の適切なバランと並列に配置されてもよいことが理解できる。さらに、スイッチ306は特にNMOSとして示されたが、スイッチ306により実行される切り替え機能を実行するために、任意の適切なスイッチを用いてもよいことが理解できる。例えば、幾つかの実施形態では、スイッチ306は、NMOS素子の代わりにPMOS素子を有してもよい。さらに、特定数のダミースイッチ502が特定数のスイッチ308と関連付けられて示されたが、DVCA500のシステム特性及び要件に依存して、更に多くの又は少ないダミースイッチ502がDVCA500に含まれてもよい。
【0046】
図2に戻り、幾つかの例では、RF信号電力を調整するために減衰器230を有するのに加えて、送信機200は、入力コイル236で受信したRF信号電力に従ってバラン234のバイアス電圧を調整するよう構成され得る。バラン234の入力コイル236は、供給電圧選択回路240に結合される中央タップノード239を有し得る。供給電圧選択回路240は、中央タップバイアス電圧Vctを中央タップノード239に供給する。電圧セレクタ240は、中央ノード239と中央タップ電圧Vctを供給する供給電圧Vddとの間にそれぞれ結合された複数のスイッチ214を有し得る。前述のように、RF信号の電力は、送信機200の種々のコンポーネントを駆動するために用いられる電圧に影響を与え得る電圧スイングを引き起こし得る。コンポーネントを駆動するために用いられる電圧は、電圧無歪限界と称される。Vctは、送信機200を通じて伝搬するRF信号の電圧全体を引き上げるバイアス電圧を供給し、RF信号に関連する電圧スイングのあるときでも、実質的な電圧無歪限界が存在することで、送信機200のコンポーネントを適正に駆動できるようにする。しかしながら、高いバイアス電圧Vctは、より多くの電力を使ってしまう。したがって、以下に議論されるように、電圧セレクタ240は、RF信号電力に従ってバイアス電圧を調整するよう構成され、RF信号電力が低い場合に、Vctを低下させて電力消費を低減するようにし、送信機200が適正に機能できるよう十分な無歪限界を可能にするためにRF信号電力が引き上げられるときには、Vctが引き上げられるようにする。
【0047】
本例では、電圧セレクタ240は、供給電圧Vddと中央ノード239との間に結合されたスイッチ214a、供給電圧Vddと中央ノード239との間に結合されたスイッチ214b、供給電圧Vddと中央ノード239との間に結合されたスイッチ214cを有する。電圧セレクタ240は、送信機200の設計特性及びパラメータに依存して、更に多くの又は少ないスイッチ239及び供給電圧Vddを有してもよいことが理解される。
【0048】
スイッチ214は、制御部211に通信可能に結合され(結合は明示されない)、制御部211から受信した制御信号に従って開閉されてそれぞれ関連付けられた供給電圧Vddを中央ノード239から切り離す又は結合するよう構成され得る。例えば、スイッチ214aは、制御部211から受信した制御信号に従って開かれ、供給電圧Vddを中央ノード239から切り離すよう構成され得る。さらに、スイッチ214aは、制御部211から受信した制御信号に従って閉じられ、供給電圧Vddを中央ノード239に結合するよう構成され得る。本例では、スイッチ214は、制御部211からの「LOW」信号を受信すると閉じ及び制御部211からの「HIGH」信号を受信すると開くよう構成されたPMOSトランジスタを有する。
【0049】
供給電圧Vddは、異なる電圧値を有し、どの供給電圧Vddが中央ノード239に結合されるかに依存して、(中央ノード239における)バイアス電圧が変化するようにしてもよい。例えば、供給電圧Vddは供給電圧Vddより高い電圧を有し、供給電圧Vddは供給電圧Vddより高い電圧を有し得る。したがって、この例では、中央ノード239におけるバイアス電圧Vctは供給電圧Vddが中央ノード239に結合されたときに最も高く、中央ノード239におけるバイアス電圧Vctは供給電圧Vddが中央ノード239に結合されたときに中間の電圧を有し、中央ノード239におけるバイアス電圧Vctは供給電圧Vddが中央ノード239に結合されたときに最も低くなる。
【0050】
したがって、Vctは、RF信号電力及び所望の量の無歪限界に少なくとも部分的に基づき、特定のスイッチ214を開及び閉にして特定のVddを中央ノード239に結合することにより、調整できる。例えば、大容量のRF信号出力電力がバラン234を通過している場合、制御部211は、「LOW」信号をスイッチ214aに伝達してスイッチ214aを閉じ、それによりVddが中央ノード239に結合されてより大きな電圧無歪限界を可能にできる。さらに、制御部211は、「HIGH」信号をスイッチ214b及びスイッチ214cに伝達して、それにより供給電圧Vdd及びVddが中央ノード239に結合されないようにできる。RF信号が少ない電力しか有しない場合、制御部211は、VctはVddになり十分な無歪限界を設けるべきであると決定し、そのためにスイッチ214bを閉じ且つスイッチ214a及び214cを開いて、送信機200が少ない電力しか消費しないようにすると同時に十分な無歪限界を有するようにできる。さらに、RF信号が更に少ない電力しか有しない場合、制御部211は、VctはVddになるべきであると決定し、そのためにスイッチ214cを閉じ且つスイッチ214a及び214bを開いて、送信機200の電力消費を低減できる。
【0051】
減衰器230を含む実施形態では、制御部211は、減衰器230がイネーブルされているか否かに従ってVctを変化できる。例えば、減衰器230がイネーブルされている場合には、入力コイル236におけるRF信号電力が低減され、結果としてVctが低減される。本例では、Vctは、3個の異なる供給電圧Vddの間で選択されるとして示されたが、Vctが更に多くの又は少ない供給電圧Vddの間で選択されてもよいこと、他の例では離散スケールの代わりにスライドスケールで調整されてもよいことが理解される。
【0052】
したがって、電圧セレクタ240及び制御部211は、送信機200を通じて伝搬するRF信号の電力に少なくとも部分的に基づき、中央点239におけるバイアス電圧を調整するよう構成され得る。したがって、送信機200の効率は高くなり、送信機200全体の電力消費は低減できる。
【0053】
また、送信機200は、バラン234からの電流の引き込みを減少させ、送信機の電力効率を向上させるよう構成できる。さらに、バラン234からの電流の引き込みを減少させることにより、入力コイル236におけるバイアス電圧Vctと送信機200の他のコンポーネントとの間の直流(DC)電圧降下を低減できる。これらのコンポーネント間の電圧降下を低減することにより、これらのコンポーネントを駆動するために用いられる電圧無歪限界は、実質的に、コンポーネントの適正な動作を維持するのに十分なほど高くできる。
【0054】
コンバータ208からバラン234へ伝搬するRF電流信号(Iin及びIin)は、DC電流(Idc)でバイアスされ、正極性と負極性の交番する電流(AC)信号成分(Isig及びIsig)を有し得る。Iinのバイアス電流Idcは、一定の電源電流I及びコンバータ208と関連付けられた利得定数「M」と関連し得る。利得定数「M」は、以下に図7及び8に関して更に詳細に記載される。本例では、Idc、I及びMの間の関係は、次式により表される。
【数1】
【0055】
本例では、Idcは、少なくとも部分的にバラン234の中央ノード239におけるバイアス電圧Vctにより調達される。しかしながら、中央ノード239からコンバータ208への経路に内部抵抗が存在し得る。補償がない場合、この内部抵抗は、送信機200の異なるノードにおけるバイアス電圧を減少させ、それにより、これらのノードにおけるコンポーネントを駆動するための電圧無歪限界を許容可能なレベルより下に減少させてしまう。さらに、内部抵抗の影響が補償されない場合、電流がVctから内部抵抗を通じて流れるときの電力損失は、送信機200の効率を低下させてしまう。したがって、送信機200は、コンバータ208とバラン234との間の経路に沿って種々のノードに電流を注入するよう構成された複数の電流源を有し、バイアス電圧Vctがバイアス電流Idcの唯一の供給源とならないようにできる。したがって、以下に更に説明されるように、内部抵抗に渡るバイアス電圧の降下は低減でき、送信機200の種々のノードにおけるバイアス電圧が適切な量の無歪限界を可能にするのに十分高くなるようにできる。増大した無歪限界は、コンポーネントの線形性も向上させ得る。さらに、電流を種々のノードに注入することにより、Vctにより調達され送信機200の内部抵抗を通過する電流量を減少させることで少ない電力しか消費しないように送信機200を構成できる。
【0056】
例えば、送信機200は、トランジスタ228とミキサ216との間に内部抵抗Rinを有し得る。本開示では、内部抵抗Rinは、トランジスタ228とミキサ216との間に結合された抵抗器242により表される。したがって、送信機200は、ミキサ216の出力の近くに結合された電流源226aを有し、電流源226aとミキサ216aとの間の内部抵抗Rinの全部ではないが大部分が電流源222aの電流(I)によりバイパスされるようにする。本例では、この構成は、電流源226aが抵抗器242aとミキサ216aの出力との間のノードで結合されるように示される。送信機200は、トランジスタ228b、ミキサ216b、及びトランジスタ228bとミキサ216bとの間の抵抗器242bにより表される内部抵抗に関して同様に構成された電流源226bを有し得る。
【0057】
本例では、トランジスタ228aからミキサ216aへと通過するバイアス電流Idcは、バラン234により供給されるバイアス電流(Ibalun)と電流源226aにより供給される電流(I)との和を有し得る。この関係は、次式で表現できる。
【数2】
【0058】
上述のように、Idcは、I及び「M」により設定され、Iが増加するとき所要量のIbalunが減少するようにできる。さらに、(抵抗器242aにより表される)内部抵抗Rinに渡る電圧降下は、オームの法則によりIbalunの関数である。したがって、ミキサ216aの出力で電流Iを注入することにより、内部抵抗(例えば、抵抗器242a)に渡る電圧降下が減少するので、ミキサ216aの出力におけるバイアス電圧が引き上げられる。したがって、RF信号電力が増大するとき、ミキサ216aの更なる線形動作を達成するために更に大きい電圧無歪み限界が利用可能になる。さらに、内部抵抗を通過する電流が少ないために、内部抵抗を通じた電力損失も低減できる。さらに、電流源226aは、中央ノード239におけるVctより低い電圧を有する定電源電圧Vddにより駆動できる。電流を供給する電圧が低いので、電流源226aにより使用される電力量も、IdcがVctにより供給される状況と比べて低減できる。同様の原理は、電流Iをミキサ216bに供給する電流源226bにも適用できる。
【0059】
更なる例として、本実施形態では、送信機200は、コンバータ208の正及び負極性の出力でバイアス電流Iを供給するよう構成された電流源222及び224を有し得る。例えば、電流源222aは、送信機200のIチャネルと関連付けられたコンバータ208aの負極性出力でバイアス電流を供給し得る。さらに、電流源224aは、コンバータ208aの正極性出力でバイアス電流を供給し得る。内部抵抗Rinと同様に、内部抵抗(明示されない)も、ミキサ216とコンバータ252との間に存在し得る。したがって、電流源222及び224はコンバータ208の出力の近くに結合され、それにより、各ミキサ216とコンバータ208との間の内部抵抗の全部ではないが大部分が、電流源222及び224により供給されるバイアス電流Iによりバイパスされ得る。電流源226と同様に、電流源222及び224は、コンバータ208の出力で引き込まれるバイアス電流の少なくとも一部を供給し、ミキサ216とコンバータ208との間の電圧降下を減少させることができる。したがって、コンバータ208は、コンバータ208の出力における電圧が適切な量の無歪限界を維持するためにより高いレベルに維持されているので、増大するRF信号電力に対してもより線形に動作できる。さらに、ミキサ216とコンバータ208との間の内部抵抗を通じて多くの電流を引き込まないことにより、電力が節約できる。また、電流源222及び224は、Vctより低い供給電圧Vddにより供給されるので、少ない電力しか消費しない。
【0060】
本開示の範囲から逸脱することなく、図2の変更、追加又は省略が行われてもよい。例えば、特定数のコンポーネントが特定の方法で示されたが、更に多くの又は少ないコンポーネントが送信機200に含まれてもよい。さらに、送信機200及びそのコンポーネントは、種々の異なる構成を有してもよい。図6―12は、これらの異なる構成を示す。
【0061】
図6は、本開示によるV−Iコンバータ208の例示的な実施形態を示す。コンバータ208は、正極性経路601及び負極性経路603を有し得る。正極性経路601は、正極性電圧信号(Vin)を正極性電流信号(Iin)に変換するよう構成され得る。同様に、負極性経路603は、負極性電圧信号(Vin)を負極性電流信号(Iin)に変換するよう構成され得る。
【0062】
例えば、正極性経路601は、フィルタ206(図2に示される)の出力に結合されフィルタ206から正極性電圧信号(Vin)を受信するよう構成された入力ノード602aを有し得る。入力ノード602aは、抵抗値Rを有する抵抗器604aの一端に結合され得る。抵抗器604aの他端は、トランジスタ608aのドレイン及びトランジスタ610aのソースに結合され得る。トランジスタ610aのドレインは、上述のように出力信号電流Iinをバイアスするために用いられる正バイアス電流Iを供給するよう構成された電流源614aに結合され得る。さらに、Vin及び抵抗器604aと関連する電流信号は、抵抗器604aを入力ノード602aからトランジスタ608aのドレインへと流れ得る。この電流は、信号電流(Isig)と表され、Vinの変化に従って変化し得る。したがって、トランジスタ608aのドレインからソースへと流れる電流は、電流I及びIsigの組合せである。
【0063】
経路601は、コンバータ208により出力される正極性電流Iinが少なくとも部分的にトランジスタ608aのドレインからソースへと流れるI及びIsigの関数になるように構成され得る。例えば、トランジスタ608a及びトランジスタ630aは電流ミラーとして構成され、トランジスタ630aを流れる電流がトランジスタ608aを流れる電流の関数になるようにされる。トランジスタ630aを流れる電流は電流Iinであり、上述のように、トランジスタ608aを流れる電流は電流I及びIsigの組合せである。したがって、IinはI及びIsigの関数である。
【0064】
トランジスタ610aのソースはトランジスタ608aのドレインに結合され、トランジスタ610aのゲートは定電圧Vcに結合され得る。したがって、トランジスタ610aのドレインは電流源614に結合され得る。したがって、トランジスタ610aは、入力ノード602aで受信されるVinに関連する信号に関して、入力インピーダンスを低減するよう構成され得る。
【0065】
正極性経路601は、トランジスタ612aを含むソースフォロワ611aを有し得る。トランジスタ612aのドレインは供給電圧Vddに結合され、トランジスタ612aのソースはトランジスタ608aのゲートに結合され、トランジスタ612aのゲートはトランジスタ610aのドレインに結合され得る。したがって、トランジスタ612aは、トランジスタ610aのドレイン電圧を引き上げ、それによりトランジスタ608aのドレイン電圧も引き上げ、トランジスタ608a及び610aが飽和状態で動作するようにできる。
【0066】
ソースフォロワ611aは、トランジスタ612aを電流Iでバイアスするよう構成された電流源616aも有し得る。電流源616aは、電流Iがコンバータ208と関連する通信機200の所望の設計特性及びパラメータに従って、トランジスタ610aのドレイン電圧を所望のレベルにバイアスするように構成され得る。
【0067】
上述のように、Vinの変動はIsigの変動を引き起こし、その結果、トランジスタ608aのゲートにおける電圧の変動を引き起こす。Vinの変動の一部は、コンバータ208に結合されたフィルタ206により導入される雑音により引き起こされ得る。したがって、コンバータ208は、Vinと関連する雑音の少なくとも一部をフィルタリングするよう構成されたフィルタ618aを有し得る。この例では、フィルタ618aは、Vinと関連する雑音をフィルタリングするよう構成された受動抵抗器/キャパシタ(RC)フィルタを有してもよい。本実施形態では、フィルタ618aは、抵抗器620a及び622a並びにキャパシタ624a及び626aを有し得る。抵抗器620a及び622aは、それぞれ抵抗値R及びRを有し得る。キャパシタ624a及び626aは、それぞれキャパシタンスC及びCを有し得る。抵抗値R及びR並びにキャパシタンスC及びCは、所望の量の雑音をフィルタリングするために、コンバータ208及びコンバータ208と関連する送信機200の種々の設計制約及び検討に従い選択され得る。
【0068】
また、前述のように、トランジスタ630aは、トランジスタ608aと共に電流ミラーに含まれ得る。したがって、トランジスタ630aのゲートはフィルタ618aの出力に結合され、一方で、トランジスタ608aのゲートはフィルタ618aの入力に結合され得る。キャパシタ624a及び626aは、トランジスタ608a及び630aのゲートにおけるDC電圧をほぼ等しくし得る。さらに、トランジスタ630aのソースは、トランジスタ608aのソースに結合された抵抗器606aの抵抗値Rと実質的に等しい抵抗値を有する抵抗器632aに結合され得る。抵抗Rは、フリッカ雑音の影響を低減するために用いることができる。したがって、トランジスタ608a及び630aの両者のソース電圧はほぼ等しく、トランジスタ608a及び630aのゲート−ソース電圧(Vgs)が実質的に等しくなり、トランジスタ608a及び630aが電流ミラーを作り出すようにされる。
【0069】
トランジスタ608a及び630aを流れる電流同士の関係は、少なくともトランジスタ630a及び608aの幅と長さの比(W/L)の関数である。したがって、この例では、トランジスタ608a及び630aがほぼ同じ幅と長さの比を有する場合、トランジスタ630aを流れる電流(Iin)は、トランジスタ608aを流れる電流(バイアス電流I及び信号電流Isigの結合)にほぼ等しい。
【0070】
さらに、コンバータ208のV−I変換の線形性は、少なくとも部分的にトランジスタ608a及び630aの幅と長さの比の関数である。トランジスタ608a及び630aの幅と長さの比が大きいほど、変換の線形性が大きくなる。しかしながら、比が大きいほど、システム内で生じる雑音も多くなってしまう。したがって、トランジスタ608a及び630aの幅と長さの比は、以下に更に詳細に記載されるように、コンバータ208を通過する信号と関連する線形性及び雑音耐性、それら信号と関連する送信プロトコルに基づき決定され得る。
【0071】
幾つかの実施形態では、正極性経路601は、それぞれトランジスタ630a及び抵抗器632aを含む複数のセグメント628aを有し得る。セグメント628aは、互いに並列に結合され、(例えば、図2の制御部211により)イネーブル及びディスエーブルされて、「M」個のセグメントがトランジスタ608aを通過する電流をミラーリングするようにできる。したがって、このような実施形態では、Iinは、上述のように、信号電力調整のためにIinを調整する係数「M」によりスケーリングされたI及びIsigの結合にほぼ等しくできる。
【0072】
したがって、正極性経路601は、正極性電圧信号Vinを所望のレベルにバイアスされた正極性電流信号Iinに変換するよう構成され得る。同様に、負極性経路603は、負極性電圧信号Vinを所望のレベルにバイアスされた負極性電流信号Iinに変換するよう構成され得る。
【0073】
本開示の範囲から逸脱することなく、V−Iコンバータ208に変更、追加又は省略が行われてもよい。例えば、所望の電圧−電流変換を得るために種々のトランジスタ構成を作成できる。さらに、幾つかの例では、V−Iコンバータ208はフィルタ618を有しなくてもよく、或いはフィルタ618は異なる方法で構成されてもよい。さらに、図7に開示されるように、幾つかの例では、V−Iコンバータ208は
電流源614と関連する雑音をフィルタリングするよう構成された別のフィルタを有してもよい。
【0074】
図7は、本開示の幾つかの実施形態による、電流源614aと関連する雑音をフィルタリングするよう構成された雑音フィルタ702aを有するV−Iコンバータ208の正極性経路601の例示的な実施形態を示す。この例では、雑音フィルタ702aは、電流源614aとソースフォロワ611aのトランジスタ612aのゲートとの間に結合され得る。雑音フィルタ702aは、抵抗器704a及びキャパシタ706aを備えたRCフィルタを有し得る。抵抗器704a及びキャパシタ706aは、それぞれ、電流源614aと関連する雑音の少なくとも一部をフィルタリングするフィルタ702aの所望のコーナー周波数を達成する抵抗値及びキャパシタンスを有するよう構成され得る。
【0075】
したがって、正極性経路601は、電流源614aと関連する雑音をフィルタリングするよう構成され得る。図7に示されないが、V−Iコンバータ208の負極性経路603は、雑音フィルタ702aと実質的に同様の雑音フィルタ702bを有し得ることが理解される。
【0076】
したがって、図2―7は、種々の構成を有し得る種々のコンポーネント(例えば、V−Iコンバータ208、減衰器230)を備える送信機200の例示的な実施形態を示す。種々の構成を有する送信機200の種々のコンポーネントに加え、送信機200自体は、図8−12に示されるような種々の構成を有し得る。
【0077】
図8は、本開示の幾つかの実施形態による、送信プロトコルと関連する各経路を有する複数の経路を備えるよう構成された送信機800を示す。本例では、送信機800は、2G送信プロトコル(例えば、GSM、EDGE、GMSK、GPRS等)と関連した通信のために構成された経路、及び3G及び/又は4G(3G/4G)プロトコル(例えば、CDMA、WCDMA、LTE)と関連した通信のために構成された別個の経路を有し得る。2Gプロトコルは低い雑音耐性を有するが、高い線形性を必要としないので、以下更に詳細に記載されるように、2G経路は低雑音経路として構成できる。反対に、3G/4Gプロトコルは2Gプロトコルより高い雑音耐性を有するので、3G/4Gプロトコルと関連する経路は、2G経路より高い線形性を有するよう構成され得る。
【0078】
本例では、送信機800は、制御部811を含むデジタル回路802を有し得る。デジタル回路802及び制御部811は、図2のデジタル回路202及び制御部211と同様であってよい。図2のデジタル回路202に関して記載したのと同様に、デジタル回路802は、同相(Iチャネル)経路852及び直交位相(Qチャネル)経路854を介して信号成分を送信するよう構成され得る。Iチャネル経路852は、Iチャネル信号成分を受信するよう構成されたDAC804aを含み、Qチャネル経路854は、Qチャネル信号成分を受信するよう構成されたDAC804bを含み得る。DAC804aは、図2のDAC204aと同様であり、DAC804bは、図2のDAC204bと同様でよい。
【0079】
さらに、Iチャネル経路852は、高線形性経路813a及び低雑音経路815aを有し得る。同様に、Qチャネル経路854は、高線形性経路813b及び低雑音経路815bを有し得る。高線形性経路813は、高い線形性を有するよう構成されるので、3G及び/又は4G通信プロトコルに関連する信号を通信するよう構成され得る。低雑音経路815は、少ない雑音を有するよう構成されるので、2G通信プロトコルに関連する信号を通信するよう構成され得る。
【0080】
例えば、高線形性経路813aは、3G/4G信号をDAC804aから受信してDAC804aに関連する雑音をフィルタリングするよう構成されたフィルタ806aを有し得る。フィルタ806aは、実質的に図2のフィルタ206aと同様である。フィルタ806aは、3G/4G信号をV−Iコンバータ808aに伝達するよう構成され得る。V−Iコンバータ808aは、図6及び7に関して記載されたコンバータ208と同様の構成を有し得る。したがって、上述のように、コンバータ808aの電流ミラーを有するトランジスタ(例えば、図6のトランジスタ608及び630と同様のトランジスタ)は、コンバータ808aの線形性が3G/4G信号に対し所望のレベルの線形性であるような幅と長さの比を有するよう構成され得る。同様に、高線形性経路813bは、Qチャネル経路854のために構成され得る。
【0081】
さらに、低雑音経路815aは、DAC804aから2G信号を受信してDAC804aと関連する雑音をフィルタリングするよう構成されたフィルタ807aを有し得る。フィルタ807aは、実質的にフィルタ806aと同様である。フィルタ807aは、フィルタされた2G信号をV−Iコンバータ809aに伝達するよう構成され得る。V−Iコンバータ809aは、図6及び7に関して記載されたコンバータ208と同様の構成を有し得る。したがって、上述のように、コンバータ809aの電流ミラーを有するトランジスタ(例えば、図6のトランジスタ608及び630と同様のトランジスタ)は、コンバータ809aの雑音が2G信号に対して特定レベルになるような幅と長さの比を有するよう構成され得る。同様に、低雑音経路815bは、Qチャネル経路854のために構成され得る。
【0082】
V−Iコンバータ808及び809は、RF電流信号をミキサ816a及び816bに伝達するよう構成され得る。ミキサ816a及び816bは、図2のミキサ216a及び216bと同様である。ミキサ816a及び816bは、信号を減衰器830及びバラン834に伝達し得る。減衰器830及びバラン834は、送信のためにRF信号を電力増幅器820及びアンテナ818に伝達し得る。減衰器830は、図3、4及び5のそれぞれDVCA300、400又は500のようなDVCAを有し得る。バラン834は、変圧器を有し、実質的に図2のバラン234と同様であってよい。
【0083】
低雑音経路813及び高線形性経路815は、制御部811により、送信機800により送信されるべき信号の種類に従ってイネーブル及びディスエーブルされ得る。例えば、送信機800が3G/4G信号を送信するとき、制御部811は、DAC804aとフィルタ806aとの間に結合されたスイッチ(明示されない)を閉じ、DAC804aとフィルタ807aとの間に結合されたスイッチ(明示されない)を開き得る。したがって、3G/4G信号は、高線形性経路813aを伝搬し、低雑音経路815aを伝搬しない。反対に、送信機800が2G信号を送信するとき、制御部811は、DAC804aとフィルタ807aとの間に結合されたスイッチを閉じ、DAC804aとフィルタ806aとの間に結合されたスイッチを開いて、2G信号が低雑音経路815aを伝搬し、高線形性経路813aを伝搬しないようにする。高線形性経路813a及び低雑音経路815aは、同様に構成され得る。
【0084】
したがって、送信機800は、異なる送信プロトコルのために構成された複数の経路を有するよう構成され得る。送信プロトコルは異なる設計制約及び検討(例えば、低雑音、高線形性)を有し得るので、送信機800は、送信プロトコルの関連付けられた経路が送信プロトコルに従って良好に構成されるので、送信プロトコルがより効率的に送信できるように構成され得る。
【0085】
本開示の範囲から逸脱することなく、送信機800に変形、追加又は省略を行うことができる。例えば、V−Iコンバータ808及び809は、DAC804と関連する雑音をフィルタリングするために用いられる同じフィルタ(例えば、図6のフィルタ618)を共有するよう構成できる。さらに、送信機800は、図2の電圧選択回路240と同様に、バラン834のバイアス電圧を調整するよう構成された電圧選択回路を有し得る。さらに、送信機800は、図2に関して記載されたバイアス電流源222、224及び226と同様に、送信機の種々のノードをバイアスするよう構成された複数のバイアス電流源を有し得る。さらに、図9に関して記載されたように、送信プロトコルと関連付けられた経路(例えば、経路813及び/又は経路815)は、電流モード回路として構成され、経路がV−Iコンバータを有しないように構成され得る。
【0086】
図9は、本開示の幾つかの実施形態による、送信機900に低雑音経路を提供するよう構成された電流モード増幅器回路を有する例示的な送信機900を示す。以下に更に詳細に記載されるように、送信機900の電流モード増幅器回路917は、増幅器回路917で受信した信号に対して低い入力インピーダンスを提供し、同時に出力信号に殆ど乃至全くオフセットを生成しないよう構成され得る。
【0087】
この例では、送信機900は、図2及び8に関して記載された送信機200及び900と同様に、制御部911並びにIチャネル経路952及びQチャネル経路954と関連付けられたDAC904を含むデジタル回路902を有し得る。さらに、Iチャネル経路952及びQチャネル経路954は、図8に関して記載されたのと同様に、それぞれ高線形性経路913及び低雑音経路915を有し得る。図8の送信機800と同様に、高線形性経路913は3G/4G送信プロトコルのために構成され、低雑音経路915は2G送信プロトコルのために構成され得る。したがって、制御部911は、図8の送信機800に関して記載された高線形性経路813及び低雑音経路815のイネーブル及びディスエーブルと同様に、3G/4G送信プロトコルを用いた信号の送信のために高線形性経路913をイネーブルし且つ低雑音経路915をディスエーブルし、2Gプロトコルを用いた信号の送信のために低雑音経路915をイネーブルし且つ高線形性経路913をディスエーブルし得る。
【0088】
さらに、図8の高線形性経路815及び低雑音経路813と同様に、高線形性経路915及び低雑音経路913は、データ信号を搬送波に変調するよう構成されたミキサ916に結合され得る。ミキサ916は、変調された信号を、上述の図8の減衰器830、バラン834、電力増幅器820及びアンテナ818と同様の減衰器930、バラン934、電力増幅器920及びアンテナ918に伝達し得る。
【0089】
しかしながら、図8の送信機のときと異なり、低雑音経路915は、それぞれ、DAC904から電流信号を受信して電流信号に利得を提供する電流モード増幅器回路(I−I)917を有し得る。上述のように、また以下に更に記載されるように、I−I回路917は、DAC904から受信した電流信号に対して低い入力インピーダンスを提供し、同時に出力信号に対するバイアスと関連するオフセットを殆ど乃至全くもたらさないように更に構成される。
【0090】
図10は、本開示の特定の実施形態による、電流モード増幅器917の一例を示す。増幅器回路917は、DAC904から差電流信号(Idac)を受信するよう構成され得る。本例では、正極性の受信した差電流信号(Idac)のための回路が記載されるが、増幅器回路917は負極性の差電流信号(Idac)を受信するための同様の回路も有することが理解される。
【0091】
増幅器回路917は、DAC904からIdacを受信するよう構成された入力段1007及びIdacに利得「M」を適用するよう構成された出力段1011を有し得る。したがって、増幅器回路917は、電流信号Iinを利得及びのIdac関数として出力する。電流信号Iinは、次式のように表される。
【数3】
【0092】
以下に更に詳細に開示されるように、線形領域で動作するために、入力段1007は、増幅器回路917に含まれるバイアス回路1003により特定のレベルにバイアスされ得る。さらに、増幅器回路917は、入力段1007がDAC904に関して低入力インピーダンスを有するよう構成されたカスケード段1005を有し得る。したがって、入力段1007、バイアス回路1003及びカスケード段1005は、入力段1007が適正なレベルにバイアスされ、低入力インピーダンスを有し、DAC904からの低い入力信号レベル(Idac)が入力段1007で検出されるように、同時に出力信号に対するオフセットを殆ど乃至全く生成しないよう構成され得る。
【0093】
DAC904は、増幅器回路917のノード1013においてIdacを伝達するよう構成され得る。以下に更に詳細に記載されるように、入力段1007は、ドレインがノード1013に結合されたトランジスタ1018を有するので、入力段1007はDAC904からトランジスタ1018を介してIdacを受信できる。ノード1013は、DAC904がトランジスタ1018のドレインをバイアスするのに適切な特定のレベルにバイアスされるので、以下に記載されるように、トランジスタ1018はバイアス電流ではなくIdacを引き込み得る。
【0094】
ノード1013のバイアス電圧は、基準電圧Vrefに基づき得る。本例では、カスケード段1005の演算増幅器(オペアンプ)1022の負入力端子1023は、ノード1013に結合され、オペアンプ1022の正入力端子1021はVrefに結合され得る。したがって、ノード1013の電圧は、Vrefにほぼ等しい。DAC904の出力インピーダンスは、抵抗値Rを有しノード1013とグランドとの間に結合された抵抗器1002により表すことができる。したがって、Vref/Rにほぼ等しい電流(I)は、DAC904を通じて引き込まれる(例えば、抵抗器1002を通過するとして示される)。
【0095】
ノード1013は、バイアス回路1003に含まれるオペアンプ1006の負入力端子1008にも結合されるので、オペアンプ1006の負入力端子1008の電圧は、Vrefにほぼ等しい。オペアンプ1006の正入力端子は、抵抗器1004に結合され得る。抵抗器1004は、グランドにも結合され、DAC904の出力インピーダンスと整合された抵抗値(R)を有する。したがって、Vref/Rにほぼ等しい電流Iは、抵抗器1004も通過し得る。
【0096】
オペアンプ1006の出力は、PMOSトランジスタ1012のゲートに結合され得る。トランジスタ1012のソースは供給電圧Vddに結合され、トランジスタ1012のドレインは入力端子1010及び抵抗器1004に結合され得る。したがって、入力端子1008及び1010でほぼ同じ電圧を維持するために、オペアンプ1006は、トランジスタ1012のゲートを駆動して、電流Iがトランジスタ1012を通過するようにする。
【0097】
さらに、オペアンプ1006の出力は、PMOSトランジスタ1014のゲートに結合され得る。トランジスタ1014のソースはVddに結合され、オペアンプ1006はトランジスタ1014をトランジスタ1012と同じゲート電圧で駆動し得る。本例では、トランジスタ1014は、トランジスタ1012とほぼ同じ幅と長さの比を有し、飽和状態で動作し得る。したがって、オペアンプ1006は、Iにほぼ等しい電流がトランジスタ1014も通過するように、トランジスタ1014を駆動し得る。
【0098】
トランジスタ1014のドレインは、NMOSトランジスタ1016のドレインに結合され得る。トランジスタ1016は、トランジスタ1014を通じて電流を供給することにより、トランジスタ1018によりDAC904に低入力インピーダンスが提供されるように構成される。トランジスタ1014及び1016のドレインは、入力段1007のNMOSトランジスタ1018及びNMOSトランジスタ1020のゲートにも結合され得る。したがって、トランジスタ1014及び1016のドレイン電圧は、トランジスタ1018及びトランジスタ1020のゲートを駆動し得る。
【0099】
トランジスタ1016のゲートは、オペアンプ1022の出力に結合され得る。また、オペアンプ1022は、トランジスタ1016を駆動し得る。したがって、電流Iは、トランジスタ1016を通過し、DAC904の出力インピーダンスを通じて引き込まれ、ノード1013へのフィードバックループを完成させる。電流Iがトランジスタ1016を通過しDAC904の出力インピーダンス(抵抗器1002として示される)を通じて引き込まれるので、トランジスタ1016は、DAC904に対して低インピーダンスを生成する。さらに、本構成では、バイアス回路1003及びカスケード段1005の電流促進特性は、入力段1007のトランジスタ1018ではなく、DAC904の出力インピーダンスを通じて電流Iを引き込み得る。さらに、バイアス回路1003及びカスケード段1005の電流促進特性により、DAC904が信号電流Idacを供給するとき、トランジスタ1018は、電流Iではなく、信号電流Idacを引き込み得る。信号電流Idacはトランジスタ1018を通過するが、電流Iが入力段1007のトランジスタ1018を殆ど乃至全く通過しないことにより、電流Iは、増幅器回路917の出力で殆ど乃至全くオフセットを生じさせない。
【0100】
トランジスタ1018は入力段1007のトランジスタ1012に結合され、入力段1007は電流ミラーとして機能し得る。トランジスタ1018及び1020のゲートは互いに結合され、トランジスタ1018及び1020のソースはそれぞれ抵抗器1032及び1034に結合され得る。抵抗器1032及び1034は、グランドにも結合され得る。本例では、抵抗器1032及び1034の抵抗値は互いにほぼ等しく、トランジスタ1018及び1020の幅と長さの比も互いにほぼ等しい。したがって、トランジスタ1018を通過する電流(例えば、Idac)は、トランジスタ1020も通過し得る。
【0101】
他の実施形態では、抵抗器1032及び1034、及び/又はトランジスタ1018及び1020は、異なる大きさにされ、トランジスタ1020を通過する電流が少なくとも部分的に電流Idacに基づくが、大きさの違いにも基づくようにしてもよい。さらに、幾つかの実施形態では、受動RFフィルタが、トランジスタ1018及び1020のゲート間に結合され、DAC904と関連する雑音をフィルタリングしてもよい(例えば、図6のフィルタ618と同様のフィルタ、又は図7のフィルタ702aと同様のフィルタ)。
【0102】
本例では、入力段1007のNMOSトランジスタ1018及び1020の幅と長さの比は、入力信号Idacのより大きなスイングを許容するよう十分に大きくできる。しかしながら、大きな幅と長さの比により、トランジスタ1020を通過する電流信号が関連する雑音を有してしまう。したがって、増幅器回路917は、入力段1007と別個に出力段1011(以下に更に詳細に記載される)を有し得る。出力段1011は、NMOSトランジスタ1018及び1020の幅と長さの比より実質的に小さい幅と長さの比を有するNMOSトランジスタ1028及び1038を有し、出力段1011により出力される出力信号(例えば、Iin)の雑音を低減し得る。したがって、入力段1007及び出力段1011の両者を有することにより、増幅器回路917は、入力信号Idacの大きな信号範囲を可能にし、同時に出力信号Iinと関連する雑音を低減できる。
【0103】
入力段1007を出力段1011から分離させるために、電流増幅器917は、PMOSトランジスタ1024及び1026を含むバッファ段1009を有し得る。入力段1007のトランジスタ1020のドレインは、バッファ段1009のPMOSトランジスタ1024のドレイン及びゲートと結合され得る。トランジスタ1024のソースは、電源電圧Vddと結合され得る。したがって、トランジスタ1020を通過する電流(例えば、Idac)は、トランジスタ1024も通過し得る。バッファ段1009は、トランジスタ1024に結合されたPMOSトランジスタ1026も有するので、トランジスタ1024及び1026も電流ミラーを構成する。本例では、トランジスタ1024及び1026は、ほぼ同じ大きさを有するので、トランジスタ1024を通過する電流(例えば、Idac)もトランジスタ1026を通過し得る。代替の実施形態では、トランジスタ1024及び1026は、異なる幅と長さの比を有するので、トランジスタ1026を通過する電流は、少なくともトランジスタ1024を通過する電流(例えば、Idac)及びトランジスタ1024及び1026の幅と長さの比の関数である。さらに、幾つかの実施形態では、受動RCフィルタは、トランジスタ1024及び1026のゲート間に配置され、不要な雑音をフィルタリングし得る。
【0104】
バッファ段1009のトランジスタ1026のドレインは、出力段1011のNMOSトランジスタ1028のドレインに結合され得る。トランジスタ1028のソースは、抵抗器1036に結合され得る。抵抗器1036は、グランドにも結合され得る。トランジスタ1028のドレインは、トランジスタ1028のゲートに結合され、セグメント1039のトランジスタ1030のゲートにも結合され得る。セグメント1039は、トランジスタ1030のソース及びグランドに結合された抵抗器1038を有し得る。したがって、トランジスタ1030、抵抗器1036、トランジスタ1028及び抵抗器1038は、電流ミラーを構成し得る。本例では、トランジスタ1030及び抵抗器1038は、それぞれ、トランジスタ1028及び抵抗器1036とほぼ同じ大きさである。したがって、セグメント1039の出力は、トランジスタ1028を通過する電流(例えば、Idac)とほぼ等しい。
【0105】
幾つかの実施形態では、増幅器回路917は、互いに並列に及びトランジスタ1028と結合された複数のセグメント1039を有し得る。したがって、各セグメント1039のトランジスタ1030及び抵抗器1038がそれぞれトランジスタ1028及び抵抗器1036とほぼ同じ大きさを有する場合には、制御部(例えば、図9の制御部911)から受信した利得制御信号に従って、「M」個のセグメントがイネーブルされてトランジスタ1028に結合され得る。それにより、図6に関して記載されたセグメント628のイネーブルと同様に、利得「M」がIdacに出力段1011において適用され、Iinを生成し得る。
【0106】
したがって、増幅器回路917は、利得「M」をDAC904から受信した電流信号Idacに適用し、結果として生じた信号Iinを出力するよう構成され得る。さらに、増幅器回路917は、電流信号Idacが低入力インピーダンスを経験し、同時に増幅器回路917の出力におけるオフセットを低減又は除去するように構成され得る。
【0107】
本開示の範囲から逸脱することなく、図9及び10に変更、追加又は除去が行われてもよい。例えば、セグメント1039のトランジスタ1030及び抵抗器1038の大きさは、トランジスタ1028及び抵抗器1036の大きさとは異なる方法で決定されてもよく、それにより利得「M」の可変範囲を得ることができる。さらに、Idacに対するIinの所望の利得に依存して、任意の適切な数のセグメント1039が含まれてもよい。さらに、電流増幅器917の本実施例は二重経路の送信機に含まれるとして図9に示されたが、電流増幅器917は単一経路の送信機に含まれてもよいことが理解される。さらに、増幅器回路917は2G送信プロトコルに関連する低雑音経路のために構成されるとして記載されたが、増幅器回路917は、任意の適切な送信プロトコルのために構成されてもよい。また、送信機900は、図2に関して記載されたバイアス電流源222、224及び226と同様に、送信機900の種々のノードをバイアスするよう構成された複数のバイアス電流源を有してもよい。また、増幅器回路917は無線送信機の文脈で記載されたが、増幅器回路917は、任意の適切なアプリケーションに含まれ実装されてもよい。さらに、図11及び12に関して以下に更に詳細に開示されるように、送信機(例えば、図2、8及び9の送信機200、800又は900)は、複数の波長(帯域)のために構成された複数の経路を有し、送信機がマルチバンド送信機となるようにしてもよい。
【0108】
図11は、本開示の幾つかの実施形態による例示的なマルチバンド送信機1100を示す。以下に更に詳細に記載されるように、送信機1100は、低い帯域の信号を送信するよう構成された低帯域(LB)経路1119、中程度の帯域の信号を送信するよう構成された中帯域(MB)経路1121、及び高い帯域の信号を送信するよう構成された高帯域(HB)経路1123を有する。各帯域経路は、関連する電力増幅器1120と、帯域経路と関連付けられた帯域でRF信号を送信するよう構成されたアンテナ1118とに結合され得る。幾つかの実施形態では、アンテナ1118a−1118cは、各帯域経路と関連付けられた波長でRF信号を送受信するよう構成された単一のマルチバンドアンテナを有し得る。代替の実施形態では、アンテナ1118a−1118cは、各々に対応する帯域経路と関連付けられた周波数でRF信号を送受信するよう構成された別個のマルチバンドアンテナを有してもよい。更に他の実施形態では、1又は複数のアンテナ1118がマルチバンドアンテナとして結合され、他のアンテナ1118が別個であってもよい。したがって、各帯域経路は、異なる周波数範囲のために構成され、各周波数範囲のための各バランがその周波数範囲に調整されてもよい。したがって、単一のバランのための大きな周波数帯域の範囲内での送信に関連する雑音及び損失が低減できる。
【0109】
送信機1110は、制御部1111を含むデジタル回路102を有し得る。制御部1111は、デジタル信号のIチャネル成分とQチャネル成分を生成するよう構成される。制御部1111及びデジタル回路102は、上述のデジタル回路及び制御部と同様である。送信機1110は、それぞれDAC1104、フィルタ1106及びV−Iコンバータ1108を含むIチャネル経路1152及びQチャネル経路1154を有し得る。
【0110】
さらに、各V−Iコンバータ1108のそれぞれは、低帯域経路1119、中帯域経路1131及び高帯域経路1123のそれぞれのミキサセット1117に結合され得る。各ミキサセット1117は、上述のようにIチャネル信号とQチャネル信号を搬送波信号に変調して差電流信号を出力するよう構成されたミキサ1116a及び1116bのセットを有し得る。各帯域経路は、図2に関して上述したトランジスタ228、減衰器230及びバラン234と同様のトランジスタ1128、減衰器1130及びバラン1134を有し得る。
【0111】
各バラン1134は、入力コイル1136が出力コイル1138よりも高いインピーダンスを有することにより入力コイル1136で所望の信号電力スイングを可能にし、出力コイル1138とそれらの関連する電力増幅器1120との間のインピーダンス整合を必要としないよう構成されたステップダウンバランを有し得る。入力コイル1136と出力コイル1138との間のインピーダンス比は、特定の帯域経路により送信される周波数に基づいてもよい。したがって、各バランは、それぞれの帯域経路のために構成され得る。
【0112】
各入力コイル1136は、各バラン1134を所望の周波数に合わせるよう構成されたチューナ1115に結合され得る。チューナ1115は、入力コイル1136をそれらの所望の周波数に合わせるために、制御部1111から受信した制御信号に従い開閉されるスイッチ(例えば、トランジスタ)を有する。しかしながら、入力コイル1136の高インピーダンスは、スイッチが「オフ」状態のとき、スイッチのドレインからウェル(well)への非線形状態を作り出し得る。したがって、図12に関して上述したように、チューナ1115のスイッチは、この「オフ」状態の伝導がチューナ1115の動作に影響しないように構成され得る。これに対し、幾つかの伝統的な構成では、オフ状態の伝導は、開となるべきスイッチを少なくとも部分的に閉にしてしまい、したがって、チューナの線形性に影響を与えてしまう。
【0113】
図12A及び12Bは、本開示の幾つかの実施形態による、チューナ内のスイッチのオフ状態の伝導を補償するよう構成されたチューナ1115の例を示す。チューナ1115は、制御部1111に結合され制御部1111から制御信号を受信するよう構成された複数のチューナハーフビットセル1202を有し得る。図12Bに関して更に議論されるように、各セル1202は、制御部1111から受信した「HIGH」制御信号に応答して閉じ制御部1111から受信した「LOW」制御信号に応答して開くことにより入力コイル1136の電気的特性を調整して入力コイル1136のインピーダンスを調整するようにされたスイッチを有し得る。
【0114】
図12Bは、本開示の幾つかの実施形態による、チューナ1115内の伝導を補償するよう構成されたセル1202の一例を示す。セル1202は、バラン1134の入力コイル1136に結合されNMOSトランジスタ1206のドレインに結合されたキャパシタ1204を有し得る。チューナ1115の周波数特性は、キャパシタ1204がグランドに結合されるか否かに従って変化し得る。トランジスタ1206のソースは、PMOSトランジスタ1208のドレイン及びもう1つのNMOSトランジスタ1210のドレインに結合され得る。トランジスタ1208のソースは供給電圧Vddに結合され、トランジスタ1210のソースはグランドに結合され得る。トランジスタ1206、1208及び1210のゲートは、図11の制御部1111からチューンビット制御信号を受信するよう構成され得る。
【0115】
チューンビット制御信号が「HIGH」になるとき、トランジスタ1206及び1210はオンになり、トランジスタ1208はオフになるので、キャパシタ1204及びトランジスタ1206のソースは、トランジスタ1210を通じて実質的にグランドに結合され、それによりチューナ1115を調整する。チューンビット制御信号が「LOW」になるとき、トランジスタ1206及び1210はオフになり、トランジスタ1208はオンになるので、キャパシタ1204及びトランジスタ1206のソースは、実質的に供給電圧Vddに結合される。
【0116】
セル1202に関連する寄生効果は、トランジスタ1206のドレイン及びソースに並列に結合された寄生ドレインバルクダイオード1212を生成し得る。トランジスタ1202がオフのときにトランジスタ1206のソースが供給電圧Vddに結合されるようにセル1202を構成することにより、ドレインバルクダイオード1212にかかる電圧は閾電圧から遠くなるので、電流がトレインバルクダイオード1212を流れない。反対に、従来の構成では、スイッチがオフのとき、スイッチのソースはグランドに固定され、ダイオードにかかる電圧はドレインバルクダイオードの閾に近いので、ドレインバルクダイオードは電流の寄生ドレインが自身を流れるのを許してしまう。したがって、従来の構成は、電流がトランジスタをバイパスして、トランジスタが少なくとも部分的にオンになり、それによりチューナに非線形効果を生じるようにさせてしまう。
【0117】
したがって、チューナ1115はチューナハーフビットセル1202に含まれるスイッチと関連するオフ状態伝導を補償するよう構成され得る。このため、チューナ1115は、1又は複数のコイルの高い巻線比を有するバラン(例えば、入力コイル1136を有するバラン1134)を調整するために用いることができる。
【0118】
図11に戻ると、上述のように、入力コイル1134が適切に調整され、各帯域経路は帯域内で所望の周波数で信号を送信するよう構成され得る。別個の帯域経路は、帯域経路に関連付けられた各帯域のために更に特別な(custom)構成を可能にする。例えば、入力コイル1136aの巻線比は、低帯域経路1119と関連付けられた周波数に従って、入力コイル1136b及び1136cの巻線比と異なってもよい。
【0119】
本開示の範囲から逸脱することなく、図11及び12に変更、追加又は省略を行うことができる。例えば、送信機1100は、上述のような異なる送信プロトコルのために、高線形性経路及び低雑音経路を有するよう構成され得る。送信プロトコル経路は、幾つかの例ではI−Vコンバータを有し、他の例ではI−I増幅器を有してもよい。さらに、送信機1100は、図2に関して記載されたバイアス電流源222、224及び226と同様の、送信機の種々のノードをバイアスするよう構成された複数のバイアス電流源を有し得る。さらに、チューナ1115は送信機1100に関して記載されたが、チューナ1115は、本願明細書に記載されたチューナ200、800及び900を含む任意の適切なチューナに備えられてもよいことが理解される。
【0120】
本開示は、幾つかの実施形態と共に記載されたが、種々の変化及び変更を当業者に提案することができる。例えば、特定のコンポーネントが互いに「結合される」又は「通信可能に結合される」として記載され及び/又は図示されたが、中間コンポーネントがそれらの「結合された」コンポーネントの間に含まれてもよいことが理解される。本開示は、このような変化及び変更を添付の請求の範囲に包含すると見なされる。
【符号の説明】
【0121】
202 デジタル回路
206a フィルタ
206b フィルタ
211 制御部
230 RF減衰器
252 Iチャネル
254 Qチャネル
304a RF入力+
304a、402a RF入力+
304a、402a RF入力+
304b RF入力−
304b、402b RF入力−
304b、402b RF入力−
314 RF出力
314 RF出力
314 RF出力
702a 雑音フィルタ
800 送信機
802 デジタル回路
806a、807a フィルタ
806b、807b フィルタ
811 制御部
830 RF減衰器
852 Iチャネル
854 Qチャネル
900 送信機
902 デジタル回路
906a 能動フィルタ
906b 能動フィルタ
911 制御部
930 RF減衰器
952 Iチャネル
954 Qチャネル
1003 バイアス回路
1005 カスケード段
1007 入力段
1009 バッファ段
1011 出力段
1039 利得制御
1102 デジタル回路
1106a、1106b フィルタ
1111 制御部
1115a、1115b、1115c チューナ
1130a、1130b、1130c RF減衰器
1152 Iチャネル
1154 Qチャネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B