特許第5912993号(P5912993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912993
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】燃料圧力制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20160414BHJP
   F02M 37/22 20060101ALI20160414BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20160414BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20160414BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20160414BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20160414BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F02M37/00 R
   F02M37/22 H
   F02M69/00 340S
   F16K17/04 H
   F16K51/00 B
   B01D35/02 E
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 510D
   B01D29/04 530B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-181712(P2012-181712)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-37814(P2014-37814A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正浩
(72)【発明者】
【氏名】菊田 光
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−280585(JP,A)
【文献】 特開平5−321792(JP,A)
【文献】 特開2012−26344(JP,A)
【文献】 特開2013−96327(JP,A)
【文献】 特開2000−220550(JP,A)
【文献】 特開平11−128911(JP,A)
【文献】 特表平11−501388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B01D 29/01
B01D 35/02
F02M 37/22
F02M 69/00
F16K 17/04
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの燃料導入口から調圧室内に導入された燃料圧力を背圧室内の圧力に応じて調整しかつ調圧室で余剰となった燃料を排出し、前記調圧室の軸方向の端壁には突出筒部が軸方向外方へ突出されているとともに前記燃料導入口が突出筒部の周辺に配置されている燃料圧力制御弁であって、
前記調圧室内に導入される燃料の異物を捕捉する環状フィルタは、内外二重環状をなす内枠部及び外枠部と、内枠部と外枠部との間に架設されたフィルタ部とを備え、前記端壁の突出筒部に嵌合されかつ該突出筒部に装着された抜け止め部材により抜け止めされ、
前記環状フィルタの内枠部と外枠部とを弾性変位可能に構成し、
前記環状フィルタの内枠部及び外枠部のうちの一方の枠部が前記抜け止め部材により他方の枠部に対する弾性変位を利用して前記端壁に対して押付けられた状態で抜け止めされるにともない、他方の枠部が前記端壁に対して弾性的に押付けられる構成とし
前記環状フィルタの内枠部及び外枠部は、前記端壁に対する当接によって変形する環状凸部をそれぞれ有する
ことを特徴とする燃料圧力制御弁。
【請求項2】
請求項に記載の燃料圧力制御弁であって、
前記環状凸部は、先端に向かって先細り状に形成されていることを特徴とする燃料圧力制御弁。
【請求項3】
請求項又はに記載の燃料圧力制御弁であって、
前記環状凸部は、弾性変形可能に形成されていることを特徴とする燃料圧力制御弁。
【請求項4】
請求項のいずれか1つに記載の燃料圧力制御弁であって、
前記環状フィルタの装着に際し、前記端壁に対して前記外枠部の環状凸部が当接してから前記内枠部の環状凸部が当接するように構成したことを特徴とする燃料圧力制御弁。
【請求項5】
請求項のいずれか1つに記載の燃料圧力制御弁であって、
前記環状フィルタは表裏反転させて配置可能であることを特徴とする燃料圧力制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料タンクから内燃機関に供給される燃料の圧力を制御すなわち調整するプレッシャレギュレータいわゆる燃料圧力制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料圧力制御弁としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1(以下、「従来例」という)のものでは、ハウジングの燃料導入口から調圧室内に導入された燃料圧力を背圧室内の圧力に応じて調整しかつ調圧室で余剰となった燃料を排出し、調圧室の軸方向の端壁には突出筒部が軸方向外方へ突出されているとともに燃料導入口が突出筒部の周辺に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−26344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジングの燃料導入口から調圧室内に導入された燃料に異物が含まれていると、その異物が弁体と弁座との間に噛み込まれるおそれがある。そこで、調圧室内に導入される燃料を濾過することにより異物を捕捉する環状フィルタを備えたものがある。ところで、従来の環状フィルタには、内外二重環状をなす内枠部及び外枠部と、内枠部と外枠部との間に架設されたフィルタ部とを備えている。環状フィルタの内枠部が調圧室の端壁の突出筒部に相対的に圧入されることにより、外枠部が端壁に当接されている。なお、内枠部は端壁に当接されていない。
【0005】
しかしながら、従来の環状フィルタにおいて、内枠部及び外枠部は樹脂製である。一方、ハウジングは鉄等の金属製である。このため、内枠部及び外枠部とハウジングとの熱膨張係数が異なる。このため、内枠部と端壁の突出筒部との間に隙間が発生し、環状フィルタが抜け方向へずれやすい。すると、外枠部と端壁との間に隙間(とくにフィルタ部のメッシュサイズよりも大きい隙間)が発生し、その隙間からフィルタ部のメッシュサイズよりも大きな異物が調圧室へ流入するおそれがあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、環状フィルタの内枠部及び外枠部とハウジングとの間の隙間の発生を防止することのできる燃料圧力制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の燃料圧力制御弁により解決することができる。
第1の発明は、ハウジングの燃料導入口から調圧室内に導入された燃料圧力を背圧室内の圧力に応じて調整しかつ調圧室で余剰となった燃料を排出し、調圧室の軸方向の端壁には突出筒部が軸方向外方へ突出されているとともに燃料導入口が突出筒部の周辺に配置されている燃料圧力制御弁であって、調圧室内に導入される燃料の異物を捕捉する環状フィルタは、内外二重環状をなす内枠部及び外枠部と、内枠部と外枠部との間に架設されたフィルタ部とを備え、端壁の突出筒部に嵌合されかつ突出筒部に装着された抜け止め部材により抜け止めされ、環状フィルタの内枠部と外枠部とを弾性変位可能に構成し、環状フィルタの内枠部及び外枠部のうちの一方の枠部が、抜け止め部材により他方の枠部に対する弾性変位を利用して端壁に対して押付けられた状態で抜け止めされるにともない、他方の枠部が端壁に対して弾性的に押付けられる構成としている。この構成によると、環状フィルタの内枠部及び外枠部のうちの一方の枠部が抜け止め部材により他方の枠部に対する弾性変位を利用して端壁に対して押付けられた状態で抜け止めされるにともない、他方の枠部が端壁に対して弾性的に押付けられる。これにより、環状フィルタの内枠部及び外枠部とハウジング(詳しくは端壁)との間の隙間の発生を防止することができる。ひいては、その隙間からフィルタ部のメッシュサイズよりも大きな異物が調圧室へ流入することを防止することができる。このことは、環状フィルタの内枠部及び外枠部とハウジングとの熱膨張係数が異なる場合に有効である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、環状フィルタの内枠部及び外枠部は、端壁に対する当接によって変形する環状凸部をそれぞれ有する。したがって、環状フィルタの内枠部の環状凸部及び外枠部の環状凸部が端壁に対する当接によって変形することにより、両者間(内枠部と端壁との間、外枠部と端壁との間)のシール性を向上することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、環状凸部は、先端に向かって先細り状に形成されている。したがって、環状凸部が端壁に対する当接によって変形しやすいことにより、両者間のシール性を一層向上することができる。
【0010】
第4の発明は、第2又は3の発明において、環状凸部は、弾性変形可能に形成されている。したがって、環状凸部が端壁に対する当接によって弾性変形することにより、両者間のシール性を向上することができる。
【0011】
第5の発明は、第2〜4のいずれかの発明において、環状フィルタの装着に際し、端壁に対して外枠部の環状凸部が当接してから内枠部の環状凸部が当接するように構成している。
【0012】
第6の発明は、第2〜5のいずれかの発明において、環状フィルタは表裏反転させて配置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態にかかる燃料圧力制御弁を示す正面図である。
図2】燃料圧力制御弁を示す下面図である。
図3】燃料圧力制御弁を一部破断して示す正面図である。
図4】燃料圧力制御弁の要部を示す断面図である。
図5】燃料圧力制御弁を分解して示す斜視図である。
図6】弁本体を示す正面図である。
図7】弁本体を示す下面図である。
図8】弁本体を示す正断面図である。
図9】環状フィルタを示す正断面図である。
図10】環状フィルタを示す平面図である。
図11】段付壁に対する環状フィルタの内枠部及び外枠部の関係を示す断面図である。
図12】燃料圧力制御弁の周辺部を一部破断して示す正面図である。
図13】環状フィルタを表裏反転して配置した状態を示す断面図である。
図14】環状フィルタの変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。図1は燃料圧力制御弁を示す正面図、図2は同じく下面図、図3は同じく一部破断して示す正面図、図4は同じく要部を示す断面図、図5は同じく分解して示す斜視図である。図3に示すように、燃料圧力制御弁10は、その主体をなす制御弁本体12に環状フィルタ14を備えている(図5参照)。説明の都合上、制御弁本体12を説明した後で環状フィルタ14について説明する。図6は弁本体を示す正面図、図7は同じく下面図、図8は同じく正断面図である。
【0015】
図6に示すように、制御弁本体12は、中空円筒状のハウジング16を備えている。ハウジング16は、上下に分割された第1ハウジング半体17と第2ハウジング半体18とにより構成されている。図8に示すように、第1ハウジング半体17は、鉄等の金属製のプレス成形品により形成されている。第1ハウジング半体17は、下面を開口する逆カップ状に形成されており、円筒状の側壁部20と、側壁部20の上面開口を閉鎖する上壁部21と、側壁部20の下端部から径方向外方へ環状に張り出すフランジ部22とを有する。側壁部20には通気孔20aが形成されている。また、上壁部21の中央部には通気孔21aが形成されている。なお、通気孔20a,21aは本明細書でいう「通気口」に相当する。
【0016】
前記第2ハウジング半体18は、鉄等の金属製のプレス成形品により形成されている。第2ハウジング半体18は、上面を開口する逆カップ状に形成されており、3段の段付円筒状の側壁部(符号省略)と、側壁部の下面開口を閉鎖する下壁部24と、側壁部の上端部から径方向外方へ環状に張り出すフランジ部25とを同心状に有する。側壁部は、上段の大径筒壁27と中段の中径筒壁28と下段の小径筒壁29とを有する。大径筒壁27と中径筒壁28とは、環状の段付壁30を介して接続されている。また、中段の中径筒壁28と下段の小径筒壁29とは、環状の段付部31を介して接続されている。また、段付壁30には、複数個(図7では8個を示す)の燃料導入孔33が周方向に等間隔で形成されている。また、下壁部24の中央部には燃料排出孔34が形成されている(図5参照)。なお、燃料導入孔33は本明細書でいう「燃料導入口」に相当する。また、燃料排出孔34は本明細書でいう「燃料排出口」に相当する。また、段付壁30の燃料導入孔33は少なくとも1個あればよい。
【0017】
図8に示すように、前記第1ハウジング半体17と前記第2ハウジング半体18とは、互いのフランジ部22,25の間に円環板状のダイヤフラム36の周縁部を挟持した状態でフランジ部25をフランジ部22上に折り返すようにしてかしめ付けられている。これにより、ハウジング16の内部空間は、ダイヤフラム36によって下側の調圧室38と上側の背圧室39とに区画されている。ダイヤフラム36は、ゴム状弾性材により形成されており、可撓性を有している。また、調圧室38には、第2ハウジング半体18の燃料導入孔33から燃料圧力を調整する燃料が導入される。また、背圧室39は、第1ハウジング半体17の通気孔20a,21aを介して外部(大気)に開放される。
【0018】
前記第2ハウジング半体18の中径筒壁28内には、中空円筒状の弁座部材41の下半部が圧入により装着されている。弁座部材41の上端面が弁座になっている。これにより、弁座部材41の中空部は、中径筒壁28及び小径筒壁29の内部空間を介して燃料排出孔34に連通されている。弁座部材41の中空部、側壁部の中径筒壁28及び小径筒壁29の内部空間、及び、燃料排出孔34を総称して燃料排出路44という。なお、前記調圧室38は、第2ハウジング半体18の大径筒壁27と弁座部材41との間に形成された環状空間部分が相当する。また、段付壁30は本明細書でいう「端壁」に相当する。また、中径筒壁28は本明細書でいう「突出筒部」に相当する。
【0019】
前記ダイヤフラム36の中央部には、下側の弁保持部材46と上側のスプリング受け部材47とがかしめにより一体的に結合されている。弁保持部材46の下面中央部には、ボール48が係止板49を介して回動可能に支持されている。ボール48の下端部には、円板状の弁体50が一体的に連結されている。すなわち、弁保持部材46に弁体50がボール48を介して揺動可能に連結されている。弁体50は、ダイヤフラム36の撓み変形にともない軸方向(上下方向)に弾性変位することにより、弁座部材41の弁座(上端面)を開閉し、前記調圧室38と前記燃料排出路44とを連通又は遮断する。
【0020】
前記背圧室39において、前記第1ハウジング半体17の上壁部21と前記スプリング受け部材47との間には、コイルスプリングからなるスプリング52が介装されている。スプリング52は、常に弁体50を前記弁座部材41の弁座(上端面)上に着座する着座方向いわゆる閉弁方向(図8において下方)に付勢している。
【0021】
前記背圧室39内においてダイヤフラム36を押圧する力すなわちスプリング52の弾性力に比べて、前記調圧室38内においてダイヤフラム36を押圧する燃料圧力が低いときは、スプリング52の弾性力により弁体50が弁座部材41の弁座(上端面)に着座される。また、調圧室38内の燃料圧力がスプリング52の弾性力よりも高くなるときは、ダイヤフラム36の撓み変形により弁体50が弁座部材41から離間すなわち離れる。これにより、調圧室38と燃料排出路44が連通され、調圧室38内の燃料の一部いわゆる余剰燃料が燃料排出路44を通じて排出される。したがって、調圧室38内の燃料圧力が設定値になるまで低下される。また、調圧室38内の燃料圧力が設定値になると、弁体50はスプリング52の弾性力により弁座部材41の弁座(上端面)に着座される。このように、前記制御弁本体12は、ハウジング16の燃料導入孔33から調圧室38内に導入された燃料圧力を背圧室39内の圧力に応じて調整しかつ調圧室38で余剰となった燃料を排出することにより、調圧室38の燃料圧力を調整する。なお、第2ハウジング半体18の側壁部の大径筒壁27には、リング状のスペーサ部材54が嵌合された後、Oリング55がその弾性を利用して装着されている。また、第2ハウジング半体18の側壁部の小径筒壁29には、Oリング56がその弾性を利用して装着されている。
【0022】
前記ハウジング16の燃料導入孔33から調圧室38内に導入される燃料に異物が含まれていると、その異物が弁体50と弁座部材41の弁座(上端面)との間に噛み込まれるおそれがある。このため、ハウジング16の第2ハウジング半体18の段付壁30の外面側(下面側)に、調圧室38内に導入される燃料を濾過することにより異物を捕捉する環状フィルタ14が設けられている(図1図3参照)。
【0023】
次に、環状フィルタ14について説明する。図9は環状フィルタを示す正断面図、図10は同じく平面図である。図9及び図10に示すように、環状フィルタ14は、内外二重環状をなす内枠部60及び外枠部62と、内枠部60と外枠部62との間に架設されたフィルタ部64とを備えている。フィルタ部64は、樹脂製のメッシュ状のシート材により形成されている。また、内枠部60及び外枠部62は、樹脂製で、フィルタ部64をインサート成形することにより該フィルタ部64に一体成形されている。内枠部60及び外枠部62に対してフィルタ部64を別部品とすることにより、内枠部60及び外枠部62とともにフィルタ部64を一体成形する場合に比べて、フィルタ部64のメッシュサイズを小さく設定することができる。また、フィルタ部64は、環状フィルタ14の軸線に対して直角又は略直角をなすように内枠部60と外枠部62との間に架設されている。内枠部60と外枠部62との間には、両枠部60,62の相互間を連結する複数本(図10では3本を示す)の連結部63が周方向に等間隔で架設されている。連結部63は、フィルタ部64の表裏両面に一体形成されている。また、内枠部60と外枠部62とは、フィルタ部64及び連結部63の弾性変形を利用して軸方向(図9において上下方向)に弾性変位可能に構成されている。
【0024】
図9に示すように、前記内枠部60は、断面D字形状で、その断面の直線状部分が外周側に面するように形成されている。内枠部60の外周部の上下方向(軸方向)の中央部に、フィルタ部64の内周部が支持されている。内枠部60の外周部の上端部には、環状のビード部66が全周に亘って形成されている。ビード部66は、上方に向けて先細り状に形成されている。また、ビード部66の先端部は、半円形状に形成されている。また、ビード部66は、弾性変形可能に形成されている。なお、ビード部66は本明細書でいう「環状凸部」、「内周側環状凸部」に相当する。
また、内枠部60の外周部の下端部には、ビード部66に対して上下対称状をなす環状のビード部67が全周に亘って形成されている。ビード部67は、ビード部66に比べて、内枠部60の径方向寸法が大きく形成されており、その剛性が高められている。なお、ビード部67は本明細書でいう「環状凸部」、「内周側環状凸部」に相当する。
【0025】
前記外枠部62は、断面台形形状で、上底側が内周側に面するとともに下底側が外周側に面するように形成されている。外枠部62の内周側の上下方向(軸方向)の中央部に、フィルタ部64の外周部が支持されている。外枠部62の内周部の上端部には、環状のビード部69が全周に亘って形成されている。ビード部69は、上方に向けて先細り状に形成されている。また、ビード部69の先端部は、半円形状に形成されている。また、ビード部69は、弾性変形可能に形成されている。なお、ビード部69は本明細書でいう「環状凸部」、「外周側環状凸部」に相当する。
また、外枠部62の外周部の下端部には、ビード部69に対して上下対称状をなす環状のビード部70が全周に亘って形成されている。ビード部70は、ビード部69に比べて、内枠部60の径方向寸法が大きく形成されており、その剛性が高められている。なお、ビード部70は本明細書でいう「環状凸部」、「外周側環状凸部」に相当する。
【0026】
図11は段付壁に対する環状フィルタの内枠部及び外枠部の関係を示す断面図である。図11に示すように、前記第2ハウジング半体18の段付壁30は、該ハウジング半体18のプレス成形によって、大径側から小径側に向かって緩やかに下方へ傾くテーパ状に形成されている。このため、段付壁30(詳しくは下面)において、前記環状フィルタ14の内枠部60のビード部66(「内周側ビード部66」という)の接点P1と、前記外枠部62のビード部69(「外周側ビード部69」という)の接点P2との間には、軸方向(上下方向)に段差Sが存在する。そこで、前記環状フィルタ14のフィルタ部64の厚さ方向の中心を通る中心面Fに対する内周側ビード部66の高さをh1とし、同じく中心面Fに対する外周側ビード部69の高さをh2としたとき、高さh1,h2が、
h1+S<h2
の関係を満たすように設定されている。したがって、前記制御弁本体12のハウジング16(詳しくは第2ハウジング半体18)に対する環状フィルタ14の装着(装着方法については後述する)に際し、段付壁30に対して外周側ビード部69が当接してから内周側ビード部66が当接するようになっている。
【0027】
また、内枠部60のビード部67(「内周側ビード部67」という)の高さ、及び、外枠部62のビード部70(「外周側ビード部70」という)の高さは、前記内周側ビード部66の高さh1と外周側ビード部69の高さh2と同様に設定されている。したがって、前記環状フィルタ14を表裏反転(図11において上下反転)させた際には、前記制御弁本体12のハウジング16(詳しくは第2ハウジング半体18)に対する環状フィルタ14の装着(装着方法については後述する)に際し、段付壁30に対して外周側ビード部70が当接してから内周側ビード部67が当接するようになっている。
【0028】
次に、前記制御弁本体12のハウジング16(詳しくは第2ハウジング半体18)に対する環状フィルタ14の装着方法について説明する。その装着には、弾性(ばね性)を有するクリップ72が用いられる(図5参照)。クリップ72は、鉄等の金属製で、Cリング状に形成されている。クリップ72は、断面円形をなしている。クリップ72は、自由状態では前記第2ハウジング半体18の中径筒壁28の外径よりも小さい内径をなしている。なお、クリップ72は本明細書でいう「抜け止め部材」に相当する。
【0029】
まず、ハウジング16の第2ハウジング半体18の中径筒壁28に対して環状フィルタ14(詳しくは内枠部60)を所定の隙間を介して嵌合する(図4参照)。そして、第2ハウジング半体18の段付壁30に環状フィルタ14を近付けると、段付壁30に環状フィルタ14の外周側ビード部69の先端が当接する。次に、第2ハウジング半体18の中径筒壁28に対してクリップ72をその拡径方向の弾性変形を利用して装着する。クリップ72は、中径筒壁28に対して弾性復元力をもって装着される。そのクリップ72を第2ハウジング半体18の段付壁30に向けて移動(摺動)させることにより、環状フィルタ14の内周側ビード部67に当接させるとともに、内枠部60(詳しくは内周側ビード部66)を段付壁30に押付けた状態とする。これにより、内枠部60がクリップ72により外枠部62に対する弾性変位を利用して段付壁30に対して押付けられた状態で抜け止めされるにともない、外枠部62(詳しくは外周側ビード部69)が段付壁30に対して弾性的に押付けられる。
【0030】
また、段付壁30に対して内周側ビード部66が当接によって弾性変形することにより、段付壁30と内枠部60との間がシールされる。また、段付壁30に対して外周側ビード部69が当接によって弾性変形することにより、段付壁30と外枠部62との間がシールされる。このとき、外周側ビード部69が段付壁30に当接して変形した後に内枠部60のビード部66が段付壁30に当接して変形される。また、段付壁30の燃料導入孔33に対してフィルタ部64が所定間隔を隔てて対向状に配置される。なお、Oリング56(図3参照)は、環状フィルタ14の装着後に、第2ハウジング半体18に装着される。
【0031】
前記燃料圧力制御弁10は、例えば、図示しない燃料タンク内に配置されるいわゆるインタンク式の燃料供給装置に組込まれる。図12は燃料圧力制御弁の周辺部を一部破断して示す正面図である。図12に示すように、燃料供給装置のケース部材74には、上面を開口しかつ内外二重の筒状部76,77を有する有底円筒状に形成されている。内側の筒状部76の底面には、貫通孔78が形成されている。ケース部材74内に前記制御弁本体12の第2ハウジング半体18が嵌合される。すなわち、外側の筒状部77内に第2ハウジング半体18の大径筒壁27が嵌合される。外側の筒状部77は、上端部を大径とする段付円筒状に形成されており、その開口側筒部77a内にスペーサ部材54及びOリング55が嵌合されている。Oリング55は、開口側筒部77aと大径筒壁27との間をシールしている。また、内側の筒状部76内に第2ハウジング半体18の中径筒壁28及びOリング56が嵌合される。Oリング56は、内側の筒状部76と中径筒壁28との間をシールしている。また、貫通孔78内に第2ハウジング半体18の小径筒壁29が嵌合される。これにともない、ケース部材74と第2ハウジング半体18との間に燃料室79が形成されている。燃料室79は、図示しないエンジンにつながる燃料供給通路と連通されており、図示しない燃料ポンプにより加圧された燃料の一部が導入される。その燃料は、環状フィルタ14のフィルタ部64を通って濾過すなわち異物が捕捉された後、制御弁本体12の調圧室38に導入される。制御弁本体12は、燃料圧力を所定の圧力すなわちエンジン側で要求される所定のシステム圧力に調整する。これにより、余剰となった燃料は、第2ハウジング半体18の燃料排出孔34から燃料タンク内へ戻される。なお、調整された燃料は燃料供給通路からエンジン側に供給される。
【0032】
前記した燃料圧力制御弁10によると、環状フィルタ14の内枠部60がクリップ72により外枠部62に対する弾性変位を利用して段付壁30に対して押付けられた状態で抜け止めされるにともない、外枠部62が段付壁30に対して弾性的に押付けられる。これにより、環状フィルタ14の内枠部60及び外枠部62とハウジング16(詳しくは段付壁30)との間の隙間の発生を防止することができる。ひいては、その隙間からフィルタ部64のメッシュサイズよりも大きな異物が調圧室38へ流入することを防止することができる。このことは、環状フィルタ14の内枠部60及び外枠部62が樹脂製であり、ハウジング(詳しくは第2ハウジング半体18)が金属製であって、内枠部60及び外枠部62とハウジング16(詳しくは第2ハウジング半体18)との熱膨張係数が異なる場合に有効である。
【0033】
また、環状フィルタ14の内枠部60及び外枠部62は、段付壁30に対する当接によって変形する内周側ビード部66及び外周側ビード部69をそれぞれ有する。したがって、環状フィルタ14の内周側ビード部66及び外周側ビード部69が段付壁30に対する当接によって変形することにより、両者間(内枠部60と段付壁30との間、外枠部62と段付壁30との間)のシール性を向上することができる。
【0034】
また、内周側ビード部66及び外周側ビード部69は、先端に向かって先細り状に形成されている。したがって、内周側ビード部66及び外周側ビード部69が段付壁30に対する当接によって変形しやすいことにより、両者間(内枠部60と段付壁30との間、外枠部62と段付壁30との間)のシール性を一層向上することができる。
【0035】
また、内周側ビード部66及び外周側ビード部69は、弾性変形可能に形成されている。したがって、内周側ビード部66及び外周側ビード部69は、段付壁30に対する当接によって弾性変形することにより、両者間(内枠部60と段付壁30との間、外枠部62と段付壁30との間)のシール性を向上することができる。
【0036】
また、環状フィルタ14の装着に際し、段付壁30に対して外周側ビード部69が当接してから内周側ビード部66が当接するように構成している。したがって、クリップ72が環状フィルタ14の内枠部60を抜け止めするに際し、外周側ビード部69が段付壁30に当接して変形した後に内枠部60のビード部66が段付壁30に当接して変形される。このことは、段付壁30(詳しくは下面)が大径側から小径側に向かって緩やかに下方へ傾くテーパ状に形成されている場合や、段付壁30(詳しくは下面)が軸線に直交する平面に形成されている場合に有効である。
【0037】
図13に示すように、前記環状フィルタ14は表裏反転して配置することができる。このとき、ハウジング16の第2ハウジング半体18の段付壁30に対して内周側ビード部67が当接によって弾性変形することにより、段付壁30と内枠部60との間がシールされる。また、段付壁30に対して外周側ビード部70が当接によって弾性変形することにより、段付壁30と外枠部62との間がシールされる。また、クリップ72は、環状フィルタ14の内周側ビード部66に当接され、内周側ビード部67及び外周側ビード部70を段付壁30に押付ける。
【0038】
図14に示すように、前記環状フィルタ14は、内周側ビード部66及び外周側ビード部69が表裏対称状に形成してもよい。また、内周側ビード部66及び外周側ビード部69に代え、内周側ビード部67及び外周側ビード部70(図9参照)を表裏対称状に形成してもよい。
【0039】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、燃料圧力制御弁10は、前記実施形態のインタンク式の燃料供給装置からエンジンに供給する燃料圧力を調整するために用いる他、燃料圧力を調整するものであればエンジン以外にも他の装置に供給する燃料圧力を調整するために用いてもよい。また、燃料圧力制御弁10は、前記実施形態のダイヤフラム式の他、ベローズ式、リリーフバルブ式等でもよい。また、前記実施形態では、環状フィルタ14において、内枠部60及び外枠部62に対してフィルタ部64を別部品としたが、内枠部60及び外枠部62とともにフィルタ部64を一体成形してもよい。また、フィルタ部64に金属製のメッシュ状シート材を用いてもよい。また、環状フィルタ14の連結部63は、フィルタ部64のいずれか一方の面に一体形成してもよい。また、環状フィルタ14の連結部63は、1本でよいし、省略することもできる。また、環状フィルタ14の内周側ビード部66,67及び/又は外周側ビード部69,70は、弾性変形可能に代え、塑性変形可能に形成してもよい。また、クリップ72は、環状フィルタ14の内枠部60を押圧するものに限らず、外枠部62を押圧するものでもよい。また、抜け止め部材は、クリップ72に限定されるものではなく、環状フィルタ14の内枠部60又は外枠部62を抜け止めする部材であればよい。また、環状フィルタ14は、前記実施形態のように表裏対称状に限らず、表裏非対称状であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…燃料圧力制御弁
14…環状フィルタ
16…ハウジング
28…中径筒壁(突出筒部)
30…段付壁(端壁)
33…燃料導入孔(燃料導入口)
38…調圧室
39…背圧室
60…内枠部
62…外枠部
64…フィルタ部
66,67…ビード部、内周側ビード部(環状凸部)
69,70…ビード部、外周側ビード部(環状凸部)
72…クリップ(抜け止め部材)
図1
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図14