特許第5912997号(P5912997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5912997-タンク用の空気抜き装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5912997
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】タンク用の空気抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20160414BHJP
   B63J 2/08 20060101ALI20160414BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B63B11/04 B
   B63J2/08 A
   B63B25/08 F
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-185022(P2012-185022)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43129(P2014-43129A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】大貫 通俊
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−026397(JP,U)
【文献】 実開昭63−020920(JP,U)
【文献】 特開平09−290251(JP,A)
【文献】 特開2012−125720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B,B63J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを備える船舶に設置される空気抜き装置であって、
第1の開口を介して前記タンクと連通するように取り付けられた筒状体と、
前記筒状体内に配置された複数の板状部材とを備え、
前記筒状体の上部には、上方に向けて大気開放されると共に筒状の空気抜きヘッドと連通する第2の開口が形成されており、
前記筒状体の周囲には、前記筒状体を囲むように前記船舶に設けられた環状の壁部材が配置され、
前記複数の板状部材は、前記筒状体の内壁面に取り付けられた固定端と、前記筒状体とは離間した自由端とを有し、
鉛直方向から見て、前記第1の開口の全体は前記複数の板状部材によって覆われ
前記空気抜きヘッドは、その基端部及び先端部が共に下方に向かうように屈曲され、
前記空気抜きヘッドの基端部は、前記第2の開口と連通するように前記筒状体の上部に取り付けられており、
前記空気抜きヘッドの先端部は、前記筒状体と前記壁部材との間で且つ前記壁部材の上端よりも下方に位置している、空気抜き装置。
【請求項2】
鉛直方向から見て、前記第1の開口の全体は、前記複数の板状部材のうち前記第1の開口に最も近い側に位置する板状部材によって覆われている、請求項1に記載の空気抜き装置。
【請求項3】
前記複数の板状部材のうち鉛直方向において隣り合う2つの板状部材は、互い違いとなるように前記筒状体内に配置されており、
鉛直方向から見て、前記複数の板状部材の前記自由端同士は重なり合っている、請求項1又は2に記載の空気抜き装置。
【請求項4】
前記複数の板状部材には、板厚方向に貫通する貫通孔がそれぞれ形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気抜き装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記複数の板状部材の前記固定端寄りにそれぞれ位置している、請求項4に記載の空気抜き装置。
【請求項6】
前記複数の板状部材は、前記自由端から前記第1の開口側に向けて延びる突出部をそれぞれ有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気抜き装置。
【請求項7】
前記突出部は前記板状部材に対して略直交している、請求項6に記載の空気抜き装置。
【請求項8】
前記筒状体と前記複数の板状部材とで構成される流路面積が前記第1の開口の面積よりも大きい、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気抜き装置。
【請求項9】
前記タンクは燃料タンクである、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶が備えるタンクに用いられる空気抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、船舶が備えるタンク内の内圧を調整するための空気抜き装置を開示している。この空気抜き装置は、甲板上に設けられており、液体を貯留するタンクに連通する垂直管と、当該垂直管の先端に設けられると共に当該垂直管と連通する空気抜きヘッドとを有する。空気抜きヘッドは大気開放されているので、タンク内の気体及び液体が垂直管及び空気抜きヘッドを通って外部に流出しうる。この点、空気抜きヘッドは垂直管の先端の高い位置にあるので、タンク内の液体は外部に流出し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気抜き装置では、例えば船舶がローリング又はピッチングした場合に、タンクからオーバーフローした液体が垂直管及び空気抜きヘッドを超えて流出し外部に飛散する虞が依然としてあった。この対策として、垂直管を長くして空気抜きヘッドをより高い位置に配置することも考えられるが、船舶の建造規則上、甲板から空気抜きヘッドの開放口までの高さに制限がある等のため、空気抜きヘッドをより高い位置に変更することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、タンク内の液体の外部への飛散を抑制することが可能なタンク用の空気抜き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る空気抜き装置は、タンクを備える船舶に設置される空気抜き装置であって、第1の開口を介してタンクと連通するように取り付けられた筒状体と、筒状体内に配置された複数の板状部材とを備え、筒状体の上部には、大気開放された空気抜きヘッドと連通する第2の開口が形成されており、複数の板状部材は、筒状体の内壁面に取り付けられた固定端と、筒状体とは離間した自由端とを有し、鉛直方向から見て、第1の開口の全体は複数の板状部材によって覆われている。
【0007】
本発明の一側面に係る空気抜き装置では、筒状体の内壁面に取り付けられた固定端と、筒状体とは離間した自由端とを有する複数の板状部材が、鉛直方向から見て第1の開口の全体を覆っている。そのため、タンクに貯留されている液体が第1の開口からオーバーフローして空気抜き装置に流入しても、これら複数の板状部材によって、液体が第1の開口から空気抜きヘッドに直接向かうことが阻まれる。加えて、これら複数の板状部材の存在により、複数の板状部材がない場合と比較して、第1の開口から空気抜きヘッドに達するまでの流路が長くなっている。従って、本発明の一側面に係る空気抜き装置によれば、タンク内の液体の外部への飛散を抑制することが可能となる。
【0008】
鉛直方向から見て第1の開口の全体は、複数の板状部材のうち第1の開口に最も近い側に位置する板状部材によって覆われていてもよい。この場合、タンクに貯留されている液体が第1の開口からオーバーフローして空気抜き装置に流入しても、第1の開口から空気抜き装置に流入した液体の大部分は、複数の板状部材のうち最も第1の開口に近い側に位置する板状部材によって阻まれ、燃料が空気抜きヘッドに直接向かうことが大きく抑制される。また、複数の板状部材のうち第1の開口に最も近い側に位置する板状部材を超えて液体が空気抜きヘッド側に流れても、続く他の板状部材によって、当該液体が空気抜きヘッドに向かうことが阻まれる。従って、タンク内の液体が外部へ飛散することをより一層抑制できる。
【0009】
複数の板状部材のうち鉛直方向において隣り合う2つの板状部材は、互い違いとなるように筒状体内に配置されており、鉛直方向から見て、複数の板状部材の自由端同士は重なり合っていてもよい。この場合、複数の板状部材により蛇行流路が筒状体内に構成される。そのため、第1の開口から空気抜きヘッドに達するまでの流路がより長くなると共に、液体が第1の開口から空気抜きヘッドに直接向かうことがより一層阻まれる。従って、タンク内の液体が外部へ飛散することをさらに抑制できる。
【0010】
複数の板状部材には、板厚方向に貫通する貫通孔がそれぞれ形成されていてもよい。この場合、複数の板状部材の上面(空気抜きヘッド側の面)に液体が残存しても、その残存液体が貫通孔を通って下方に落下しタンクに戻りやすくなる。
【0011】
貫通孔は、複数の板状部材の固定端寄りにそれぞれ位置していてもよい。板状部材の固定端は筒状体の内壁面に取り付けられているので、板状部材の固定端近傍には特に液体が残存しやすい。しかし、上記のように貫通孔が板状部材の固定端寄りに位置しているので、その残存液体が貫通孔を通ってタンクにより戻りやすくなる。
【0012】
複数の板状部材は、自由端から第1の開口側に向けて延びる突出部をそれぞれ有していてもよい。この場合、タンクに貯留されている液体が第1の開口からオーバーフローして空気抜き装置に流入しても、板状部材の下面(開口側の面)から板状部材の上面(空気抜きヘッド側の面)への液体の回り込みが、突出部によって阻まれる。そのため、タンク内の液体が外部へ飛散することをより一層抑制できる。
【0013】
筒状体と複数の板状部材とで構成される流路面積が第1の開口の面積よりも大きくてもよい。この場合、タンクに貯留されている液体が第1の開口からオーバーフローして空気抜き装置に流入しても、空気抜き装置内の流路が液体で塞がれないので、空気抜き装置内における気体の通過が許容される。そのため、オーバーフロー時においても、空気抜き装置における空気抜きの機能を維持できる。
【0014】
タンクは燃料タンクであってもよい。一般に、燃料タンクには、船舶が長距離を航行できるよう燃料が満載される。そのため、船舶のローリングやピッチングにより燃料が第1の開口からオーバーフローしやすくなっている。しかも、通常、燃料タンクは常時加熱されているので、燃料の混ざった気体が第1の開口から飛散することがある。しかし、本発明の一側面に係る空気抜き装置を燃料タンクに適用することにより、燃料タンク内の燃料や燃料が混ざった気体の外部への飛散が極めて効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タンク内の液体の外部への飛散を抑制することが可能なタンク用の空気抜き装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るタンク用の空気抜き装置の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
本実施形態に係るタンク用の空気抜き装置10は、図1に示されるように、液体を貯留するタンクTを備える船舶100の甲板102上に設置されている。船舶100は例えばタンカーであり、タンクTは例えば燃料を貯留する燃料タンクである。甲板102は、タンクTの天井を構成している。甲板102には、開口104が形成されている。開口104の形状としては、円形状、楕円形状、多角形状等の種々の形状を採用できる。
【0019】
空気抜き装置10は、筒状体12と、筒状体12内に配置された複数の板状部材14A〜14Dとを備える。筒状体12は、開口104を取り囲むように配置されている。
【0020】
筒状体12は、筒状の側壁部12aと、側壁部12aの上端に配置された天壁部12bとを有する。側壁部12aの形状としては、円筒や多角筒等の種々の形状を採用できる。側壁部12aの材質としては、例えば配管用アーク溶接炭素鋼鋼管(STPY400)を採用できる。
【0021】
側壁部12aの下端は、溶接により甲板102の上面と接合されている。そのため、筒状体12(空気抜き装置10)とタンクTとは、開口104を介して連通している。側壁部12aの上端は、溶接により天壁部12bと接合されている。
【0022】
天壁部12bには開口12cが形成されている。開口12cの形状としては、円形状、楕円形状、多角形状等の種々の形状を採用できる。天壁部12bの材質としては、例えば一般構造用圧延鋼板(SS400−P)を採用できる。
【0023】
天壁部12bの上面には、開口12cを囲むように環状の座金16が溶接で接合されている。座金16の形状としては、例えば、開口12cに対応する形状を採用できる。座金16には、図示しないスタッドボルトにより、外形がU字形状を呈する筒状の空気抜きヘッド18のフランジ18aが接続されている。すなわち、筒状体12の上端には、空気抜きヘッド18が取り付けられており、空気抜きヘッド18と空気抜き装置10とは、開口12c及び座金16を介して連通している。空気抜きヘッド18のうちフランジ18aとは反対側に位置する端部(先端部)は、大気開放されている。当該先端部は、下側(甲板102側)に向かっている。
【0024】
板状部材14A〜14Dは、筒状体12内において開口104から開口12cに向けて(下側から上側に向けて)この順に並んでいる。板状部材14A〜14Cの間隔は、略等しくなるように設定されていてもよい。板状部材14A〜14Dの材質としては、例えば一般構造用圧延鋼板(SS400−P)を採用できる。
【0025】
板状部材14Aは、溶接により筒状体12の内壁面に接合された固定端と、筒状体12とは離間した自由端とを有し、水平方向に沿って延びている。開口104の全体は、鉛直方向(筒状体12の延在方向)から見て、板状部材14Aによって覆われている。
【0026】
板状部材14Bは、溶接により筒状体12の内壁面に接合された固定端と、筒状体12とは離間した自由端とを有し、水平方向に沿って延びている。開口104の一部は、鉛直方向から見て、板状部材14Bによって覆われている。
【0027】
板状部材14Cは、溶接により筒状体12の内壁面に接合された固定端と、筒状体12とは離間した自由端とを有し、水平方向に沿って延びている。開口104の全体は、鉛直方向から見て、板状部材14Cによって覆われている。
【0028】
本実施形態において、板状部材14A〜14Cは、鉛直方向において互い違いとなるように配置されており、各板状部材14A〜14Cの自由端同士は、鉛直方向から見て互いに重なり合っている。板状部材14A〜14Cは、自由端から開口104側に向けて(下側に向けて)延びる突出部14aをそれぞれ有している。この突出部14aを含む板状部材14A〜14Cと筒状体12とで構成される流路面積は、開口104の面積よりも大きくなるように設定されている。板状部材14A〜14Cには、板厚方向に貫通する貫通孔14bがそれぞれ形成されている。貫通孔14bは、各板状部材14A〜14Cの固定端寄りに位置している。
【0029】
板状部材14Dは、天壁部12bの下面(内側面)に取り付けられている。板状部材14Dは、開口12cの縁部のうち一部(板状部材14Cの自由端側)に配置されている。
【0030】
甲板102上には、さらに、空気抜き装置10及び空気抜きヘッド18を囲む環状の壁部材20が設置されている。壁部材20の下端は、溶接により甲板102の上面と接合されている。この壁部材20は、燃料が混ざった気体がタンクTから空気抜き装置10を介して空気抜きヘッド18から排出された際に、気体に含まれる燃料が外部に飛散することを防止する機能を有する。空気抜きヘッド18の先端から燃料が混ざった気体が排出され、壁部材20と、甲板102と、筒状体12との間に燃料が溜まると、溜まった燃料が図示しない排出孔から排出される。
【0031】
以上のような本実施形態では、筒状体12の内壁面に取り付けられた固定端と、筒状体12とは離間した自由端とを有する複数の板状部材14A〜14Cが、鉛直方向から見て開口104の全体を覆っている。そのため、タンクTに貯留されている燃料が甲板102の開口104からオーバーフローして空気抜き装置10に流入しても、これら板状部材14A〜14Cによって、燃料が開口104から空気抜きヘッド18に直接向かうことが阻まれる。加えて、これら板状部材14A〜14Cの存在により、板状部材がない場合と比較して、甲板102の開口104から空気抜きヘッド18に達するまでの流路が長くなっている。従って、本実施形態に係る空気抜き装置10によれば、タンクT内の燃料の外部への飛散を抑制することが可能となる。
【0032】
本実施形態では、鉛直方向から見て開口104の全体は、複数の板状部材14A〜14Cのうち開口104に最も近い側に位置する板状部材14Aによって覆われている。そのため、タンクTに貯留されている燃料が甲板102の開口104からオーバーフローして空気抜き装置10に流入しても、甲板102の開口104から空気抜き装置10に流入した燃料の大部分は、開口104に最も近い板状部材14Aによって阻まれ、燃料が空気抜きヘッド18に直接向かうことが大きく抑制される。また、複数の板状部材14A〜14Cのうち開口104に最も近い側に位置する板状部材14Aを超えて燃料が空気抜きヘッド18側に流れても、続く他の板状部材14B,14Cによって、当該燃料が空気抜きヘッド18に向かうことが阻まれる。従って、タンクT内の燃料が外部へ飛散することをより一層抑制できる。
【0033】
本実施形態では、複数の板状部材14A〜14Cは互い違いとなるように筒状体12内に配置されており、鉛直方向から見て、複数の板状部材14A〜14Cの自由端同士は重なり合っている。つまり、複数の板状部材14A〜14Cにより蛇行流路が筒状体12内に構成される。そのため、甲板102の開口104から空気抜きヘッド18に達するまでの流路がより長くなると共に、燃料が開口104から空気抜きヘッド18に直接向かうことがより一層阻まれる。従って、タンクT内の燃料が外部へ飛散することをさらに抑制できる。
【0034】
本実施形態では、板状部材14A〜14Cには、板厚方向に貫通する貫通孔14bがそれぞれ形成されている。そのため、板状部材14A〜14Cの上面(空気抜きヘッド18側の面)に燃料が残存しても、その残存燃料が貫通孔14bを通って下方に落下しタンクTに戻りやすくなる。
【0035】
本実施形態では、貫通孔14bは、板状部材14A〜14Cの固定端寄りにそれぞれ位置している。板状部材14A,14Cの固定端は筒状体12の内壁面に取り付けられているので、板状部材14A〜14Cの固定端近傍には特に燃料が残存しやすい。しかし、上記のように貫通孔14bが板状部材14A〜14Cの固定端寄りにそれぞれ位置しているので、その残存液体が貫通孔14bを通ってタンクTにより戻りやすくなっている。
【0036】
本実施形態では、板状部材14A〜14Cは、自由端から開口104側に向けて延びる突出部14aをそれぞれ有している。そのため、タンクTに貯留されている燃料が甲板102の開口104からオーバーフローして空気抜き装置10に流入しても、板状部材14A〜14Cの下面(開口104側の面)から板状部材14A〜14Cの上面(空気抜きヘッド18側の面)への燃料の回り込みが、突出部によって阻まれる。そのため、タンクT内の燃料が外部へ飛散することをより一層抑制できる。
【0037】
本実施形態では、筒状体12と板状部材14A〜14Cとで構成される流路面積が開口104の面積よりも大きい。そのため、タンクTに貯留されている燃料が甲板102の開口104からオーバーフローして空気抜き装置10に流入しても、空気抜き装置10内の流路が燃料で塞がれないので、空気抜き装置10内における気体の通過が許容される。そのため、オーバーフロー時においても、空気抜き装置10における空気抜きの機能を維持できる。
【0038】
本実施形態では、タンクTは燃料を貯留する燃料タンクである。一般に、燃料タンクには、船舶100が長距離を航行できるよう燃料が満載される。そのため、船舶100のローリングやピッチングにより燃料が甲板102の開口104からオーバーフローしやすくなっている。しかも、通常、燃料タンクは常時加熱されているので、燃料の混ざった気体が甲板102の開口104から飛散することがある。しかし、本実施形態に係る空気抜き装置10を燃料タンクに適用することにより、燃料タンク内の燃料や燃料が混ざった気体の外部への飛散が極めて効果的に抑制できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、鉛直方向から見て、開口104の全体が板状部材14Aによって覆われていたが、開口104の全体が複数の板状部材14A〜14Cによって覆われていればよい。すなわち、鉛直方向から見て、一つの板状部材のみによって開口104の全体が覆われていなくてもよい。
【0040】
本実施形態においては、貫通孔14bが板状部材14A〜14Cの固定端寄りに位置していたが、固定端寄りに位置していなくてもよい。貫通孔14bは、2つ以上あってもよいし、板状部材14A〜14Cに貫通孔14bがなくてもよい。
【0041】
貫通孔14bに代えて、板状部材14A〜14Cに傾斜をつけることによって、板状部材14A〜14Cの上面に燃料が残存することを抑制するようにしてもよい。ただし、空気抜き装置10の製造容易性の観点からは、板状部材14A〜14Cに貫通孔14bを形成するほうが好ましい。
【0042】
本実施形態においては、空気抜き装置10が3つの板状部材14A〜14Cを備えていたが、少なくとも2つの板状部材があればよい。複数の板状部材は、全体として鉛直方向において互い違いとなるように配置されていてもよいし、鉛直方向において隣り合う2つの板状部材が少なくとも互い違いとなるように配置されていてもよいし、互い違いとなるように配置されていなくてもよい。
【0043】
タンクTの大きさに応じて、2つ以上の空気抜き装置10を甲板102に設置してもよい。例えば、タンクTが小さい場合には、上方から見てタンクTの中央に位置するように、空気抜き装置10を甲板102に設置してもよい。タンクTが大きい場合には、上方から見てタンクTの対角に位置するように、2つの空気抜き装置10を甲板102に設置してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…空気抜き装置、12…筒状体、12a…側壁部、12b…天壁部、12c…開口、14A〜14D…板状部材、14a…突出部、14b…貫通孔、16…座金、18…空気抜きヘッド、100…船舶、102…甲板、104…開口、S1,S2…壁面、T…タンク。
図1