特許第5913103号(P5913103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913103酵母ベースの免疫療法組成物を含む組合せ物及び被験者のスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913103
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】酵母ベースの免疫療法組成物を含む組合せ物及び被験者のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/064 20060101AFI20160414BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20160414BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   A61K36/064
   C12N1/16 GZNA
   A61K45/00 101
   A61P37/04
   A61P31/12
   A61P31/14
   A61P31/20
   A61P35/00
   A61P31/00
   A61P43/00 105
   A61K37/02
【請求項の数】14
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2012-529823(P2012-529823)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-504623(P2013-504623A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】US2010048699
(87)【国際公開番号】WO2011032119
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】61/242,355
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/242,353
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/288,568
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ベルグラウ、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】タンブリーニ、ベス
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−516610(JP,A)
【文献】 特表2006−510718(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/115610(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/130493(WO,A1)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2009.01, Vol.106, No.3, pp.876-881
【文献】 INFECTION AND IMMUNITY, 2009.05, Vol.77, No.5, pp.1774-1781
【文献】 LEIBUNDGUT-LANDMANN SALOME,SYK- AND CARD9-DEPENDENT COUPLING OF INNATE IMMUNITY TO THE INDUCTION OF T HELPER CELLS 以下備考,NATURE IMMUNOLOGY,2007年 6月,V8 N6,P630-638,THAT PRODUCE INTERLEUKIN 17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者においてCD4+ TH17細胞の産生又は生存を阻害し、TH1免疫応答を増強する方法に使用するための組成物の組合せであって、前記組合せは、
a)全酵母及び抗原を含む酵母ベースの免疫療法組成物であって、抗原が全酵母により発現されるか、全酵母に結合しているか、又は全酵母と混合されている免疫療法組成物と、
b)i)インターロイキン−6(IL−6)、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17、及びIL−1のうちから選択されるサイトカイン又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤であって、前記作用剤は抗サイトカイン抗体、その抗原結合部分、siRNA、前記サイトカインの可溶性不活型形態及びその受容体のうちから選択される作用剤、及び、
ii)IL−25及びIL−27のうちから選択される作用剤
のうちから選択される作用剤と
を含む組合せ
【請求項2】
疾患がウイルス疾患である、請求項1に記載の組合せ
【請求項3】
ウイルス疾患が、C型肝炎ウイルス感染症又はB型肝炎ウイルス感染症である、請求項2に記載の組合せ
【請求項4】
疾患が癌である、請求項1に記載の組合せ
【請求項5】
作用剤及び酵母ベースの免疫療法の投与が、酵母ベースの免疫療法組成物単独の投与と比較して、CD8+ T細胞応答を増強する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項6】
被験者に、作用剤の非存在下で酵母ベースの免疫療法組成物を投与した結果、被験者におけるIL−17の産生量及びTH17 CD4+ T細胞の存在数の少なくともいずれか一方が、一般的に健康な個体の集団又は群として特定の疾患または症状を有していない集団に由来する同じ供給源から単離されたCD4+ T細胞におけるIL−17の平均産生レベル又はTH17細胞の平均レベル/数よりも統計学的に有意に(p>0.05)多くなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項7】
被験者から単離されたT細胞が、酵母ベースの免疫療法組成物との接触に応答して増殖しない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項8】
被験者においてTH17免疫応答を増強する方法に使用するための組成物の組合せであって、前記組合せは、
a)全酵母及び抗原を含む酵母ベースの免疫療法組成物であって、抗原が全酵母により発現されるか、全酵母に結合しているか、又は全酵母と混合されている免疫療法組成物と、
b)i)IL−6、IL−21、IL−22、IL−23、IL−17、及びIL−1のうちから選択される作用剤、及び
ii)IL−25及びIL−27のうちから選択されるサイトカイン又はそれらの受容体の発現又は活性を阻害する作用剤であって、前記作用剤は抗サイトカイン抗体、その抗原結合部分、siRNA、前記サイトカインの可溶性不活型形態及びその受容体のうちから選択される作用剤
のうちから選択される作用剤と
を含む組合せ
【請求項9】
真菌感染症又は細胞外病原体感染症に関連する疾患の治療に使用するための、請求項8に記載の組合せ
【請求項10】
被験者に、作用剤の非存在下で酵母ベースの免疫療法組成物を投与した結果、被験者におけるIL−17の産生量及びTH17 CD4+ T細胞の存在数の少なくともいずれか一方が、一般的に健康な個体の集団又は群として特定の疾患または症状を有していない集団に由来する同じ供給源から単離されたCD4+ T細胞におけるIL−17の平均産生レベル又はTH17細胞の平均レベル/数よりも統計学的に有意に(p>0.05)少なくなる、請求項8又は9に記載の組合せ
【請求項11】
作用剤が、酵母ベースの免疫療法組成物の投与と同時に、酵母ベースの免疫療法組成物の投与前に、酵母ベースの免疫療法組成物の投与後に、又は酵母ベースの免疫療法組成物と共に断続的に投与されるか、
酵母ベースの免疫療法組成物が、作用剤の投与を開始する前の特定の期間にわたって1つ又は複数の用量で投与されるか、
作用剤が、被験者の初期免疫応答を調節するのに十分な所定の期間投与され、その後酵母ベースの免疫療法組成物が作用剤の非存在下で投与される期間が続くか、又は
酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母が、作用剤を保持又は発現するように操作されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項12】
全酵母が、熱不活化全酵母である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項13】
全酵母が、サッカロマイセス・セレビシエ由来である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項14】
酵母ベースの免疫療法の予測される免疫応答性について被験者をスクリーニングする方法であって、酵母ベースの免疫療法は全酵母及び抗原の投与を含み、抗原は全酵母により発現されるか、全酵母に結合しているか、又は全酵母と混合されたものであり、前記方法は、
a)被験者に由来するT細胞を、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞(APC)とin vitroで接触させることと、
b)APCとの接触に応答したT細胞増殖、APCとの接触に応答したT細胞によるIL−17産生、及びAPCとの接触に応答したT細胞によるレチノイド関連オーファン受容体(ROR)の発現からなる群から選択されるT細胞の表現型を検出することとを含み、
T細胞がAPCとの接触に応答して増殖できないか、又は一般的に健康な個体の集団又は群として特定の疾患または症状を有していない集団に由来する同じ供給源から単離されたT細胞と比較して、そのT細胞が正常より多量のIL−17を産生するか若しくは正常より高いRORγtの発現を示す場合、その被験者はTH17細胞の産生又は生存を阻害する作用剤と共に酵母ベースの免疫療法組成物を投与する候補であると予測される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、国立癌研究所により授与されたNCI補助金第CA136146号に基づく政府支援でなされたものである。合衆国政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0002】
配列表の参照
本出願は、EFS−Webによるテキストファイルとして電子的に提出される配列表を含む。「3923−27−PCT_ST25」という名のテキストファイルは、サイズが78KBバイトであり、2010年9月13日に記録された。テキストファイルに含まれている情報は、米国特許法規則1.52(e)(5)に基づき、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本発明は、一般的に、酵母ベースの免疫療法生成物、並びにそのような生成物により誘発される免疫応答、予防的応答、及び/又は治療的応答を調節する方法、並びに修飾された酵母ベースの免疫療法生成物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
2005年以前は、T細胞免疫学ドグマの主要な焦点は、2つのTヘルパー(TH)細胞サブセットの一般的に認められている役割を指す「TH1/TH2パラダイム」と呼ばれるものに向けられていた。TH細胞は、典型的には表面タンパク質、CD4を発現し、免疫系の確立及び能力に影響を及ぼすリンパ球である。疾患転帰は、通常、これらのT細胞サブセットの一方又は他方へと向かう偏りに関連付けられてきた。その理論的根拠は、抗原が樹状細胞(DC)等の抗原提示細胞(APC)に導入される様式が、どのTHサブセットが優先的に活性化されるかを決定し、したがって免疫系がどのように応答するかに影響を及ぼすという観察に基づいていた。例えば、ウイルス等によるDCの直接感染が引き起こす内因性経路では、活性化DCは、インターロイキン12(IL−12)を産生し、それは、TH1 T細胞の特異的刺激をもたらした。TH1活性化は、IL−2依存性CD8 T細胞免疫を駆動するために必要とされるインターロイキン2(IL−2)の産生をもたらし、次いで感染細胞の直接溶解をもたらした。一方、抗原が食作用による等の外来性経路によりDCに提示された場合、DCで産生されたインターロイキン−10(IL−10)は、TH2活性化、その後のインターロイキン4(IL−4)の分泌、及びB細胞の抗体産生の支援をもたらした。ほとんどの疾患病理は、免疫系に対する内因性又は外来性抗原提示による、免疫応答の細胞性又は体液性のいずれかへの偏りと関連付けられるようになった。抗体が関与していた場合は、TH2の関与が示唆され、例えば、I型糖尿病における膵島の細胞媒介性破壊に直接的細胞融解活性が観察された場合、それは、TH1活性によると仮定された。
【0005】
TH1/TH2パラダイムの更なる担い手は、制御性T細胞(Treg)であった。Treg機能は、一般的に免疫応答の調節及び非活性化に関するものであるが、末梢ではTGFβ及び高IL−2受容体発現に依存することが見出された(しかし、胸腺では依存しない)。Tregは、TH2のようにIL−4を産生し、TH1細胞の制御におけるTreg機能は、IL−2をめぐるTH1及びTreg間の競合を伴うと考えられた。
【0006】
TH1、TH2、及びTregの排他的な三位一体性は、2005年、IL−12遺伝子をノックアウトすると真菌感染に対する免疫が低下することが研究者により実証された時に変更された。IL−12ノックアウトマウスを生成するために使用された分子的根拠に関する注意深い研究により、IL−12が、別のサイトカイン、インターロイキン−23(IL−23)とp40共通鎖を共有することが実証された。IL−23に特有な非p40鎖がノックアウトされると、TH1機能は保持されたが、真菌免疫は阻止され続けた(Cuaら、2003年;Murphyら、2003年)。真菌免疫の原因である主なサイトカインは、インターロイキン−17(IL−17)であり、これは、DC誘導性IL−23により駆動されるTH17 T細胞として知られるようになったもの(Harringtonら、2005年)により産生されることがすぐに発見された。IL−17は、TH17細胞の増殖因子でないが(Harringtonら、2005年;Langrishら、2005年;Parkら、2005年)、その代り、好中球を動員し、病原体クリアランスをもたらす顆粒球形成を促進する。
【0007】
TGFβ及びインターロイキン−6(IL−6)は、TH17発生に関連する2つのサイトカインである(Betteliら、2006年;Mangenら、2006年;Veldhoenら、2006年)。ある状況下では、TGFβは、Th1又はTh2の非存在下で最も顕著な(Dasら、2009年)TH17の増殖因子であり得るが(Veldhoenら、2006年)、それらの存在下では、Th1及びTh2発生を抑制するように機能する場合もある(Liら、2007年)。TGFβは、制御性T細胞(Treg)の増殖因子でもある(Kornら、2009年)。TH17及びTregの間で競合して後者が阻害されること(Bettelliら、2006年)は、TH17が、多発性硬化症(Matuseviciusら、1999年;Lockら、2002年)、関節リウマチ(Murphyら、2003年;Kirkmamら、2006年)、I型糖尿病(Vukkadapuら、2005年;Bradshawら、2009年)、乾癬(Wilsonら、2007年;Kruegerら、2007年)、ブドウ膜炎(Lugerら、2008年)、炎症性腸疾患(Fujinoら、2003年;Duerrら、2006年)、及びクローン病(Schmidtら、2005年;Fussら、2006年)等の自己免疫障害の誘導に関与する機序であるとみなされている。TH17関連サイトカイン、IL−6は、同様にTreg分化を直接的に抑制する(DeLucaら、2007年;Kornら、2008年)。したがって、TH17又はそれらの誘導因子を標的とすることは、自己免疫疾患を治療する有望な手段であることが記述されている(DeBenedetti、2009年;Pernis、2009年)。
【0008】
TH1、TH2、TH17、及びTregの分子的特徴は、サブセット特異的転写因子、T−bet、GATA−3、ROR(レチノイン酸オーファン受容体)、及びFoxP3によりそれぞれ制御される。FoxP3は、IL−2転写を阻害し、それによりIL−2の外来性供給源に対する貪欲な食細胞欲がTregに与えられる。ROR発現は、抗増殖性であることが報告されている。
【0009】
TH17 T細胞は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ボルデテラ・パータシス(Bordatella pertussis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を含む、特定の細菌性又は真菌性細胞外病原体に応答して誘導される(Yeら、2001年;非特許文献1;Happelら、2005年;Higgensら、2006年;DeLucaら、2007年;Luら、2008年;Zhangら、2009年)。一般的に、これらの病原体は主として気道、皮膚、及び腸管腔等の露出表面にコロニーを形成する(Peck及びMellins、2009年)。この免疫応答は、微生物成分と、デクチン−1及びToll様受容体(TLR)を含むAPC表面の種々のパターン認識受容体(PRR)との相互作用により誘発され、TH17細胞の活性化及び他の炎症促進性事象をもたらすことが報告されている(例えば、非特許文献2〜4を参照)。デクチン−1及び種々のTLR経路の活性化は、IL−23及びIL−12経路の相互調節をもたらすことが示されている(例えば、非特許文献5及び6を参照)。TH17は、サイトカイン媒介性の好中球動員により、微生物感染を除去する。中でもリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteriditis)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、クラミジア・トラコマティス(Clamydia trachomatis)、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)等の、特定の細胞内病原体に対してTH17が役割を果たすことに関する根拠も存在する(Harty及びBevan、1995年;Dalrympleら、1995年;Cooperら、2002年;Kellyら、2005年;Khaderら、2005年;Schulzら、2008年;Zhangら、2008年)。
【0010】
1990年代に、酵母ベースの免疫療法組成物が、抗原提示細胞のMHCクラスI制限経路及びMHCクラスII制限経路の両方により免疫応答を誘導するための新規組成物として導入された(特許文献1を参照)。酵母ベースの免疫療法組成物は、最初に外来性抗原として免疫系と接触するが、MHCクラスI制限経路による抗原の交差提示によるCD8+細胞毒性T細胞応答と、MHCクラスII制限経路による抗原提示によるCD4+ T細胞応答の両方の誘導を引き起こすことができる点で独特である(例えば、特許文献1及び2、非特許文献7及び8を参照)。酵母ベースの免疫療法組成物は、パターン認識受容体(PRR)を刺激し、接着分子、同時刺激分子、並びにDCを含む抗原提示細胞上のMHCクラスI及びクラスII分子を上方制御し、抗原提示細胞による炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF−α及びIL−12)の産生を誘導する(例えば、非特許文献7(上記)、非特許文献9を参照)。
【0011】
1つ又は複数の抗原を発現するように操作されていてもよい酵母ベースの免疫療法組成物においては、酵母ベースの免疫療法の免疫系に対する作用機序の複雑性及び治療効力は、完全には特定されていない。様々な個体が酵母ベースの免疫療法組成物による免疫にどのように応答するかをより良好に理解し、それにより免疫療法戦略を操作及び個別化して、個体の所与の疾患又は状態に最も適切な所望の免疫応答をより効果的に誘発することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,830,463号明細書
【特許文献2】米国特許第7,083,787号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Huangら、J.Infect.Dis.190巻:624〜631頁(2004年)
【非特許文献2】LeibundGut−Landmannら、Nat.Immunol.8巻(6号)630〜638頁(2007年)
【非特許文献3】Acosta−Rodriguez、Nat.Immunol.8巻(6号):639〜646頁(2007年)
【非特許文献4】Taylorら、Nat Immunol、8巻(1号):31〜38頁(2007年)
【非特許文献5】Gerosaら、J.EXP.Med.205巻(6号)1447〜1461頁(2008年)
【非特許文献6】Dennehyら、Eur J Immunol.39巻(5号):1379〜1386頁(2009年)
【非特許文献7】Stubbsら、Nat.Med.7巻:625〜629頁(2001年)
【非特許文献8】Luら、Cancer Research 64巻:5084〜5088頁(2004年)
【非特許文献9】Brownら、J Exp.Med.197巻:1119〜1124頁(2003年)
【発明の概要】
【0014】
本発明の種々の実施形態が、下記に記述されている。しかしながら、本発明は、この概要に記述されている実施形態に制限されることはなく、以下の説明に記述されている発明も明示的に包含される。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物の免疫療法特性を強化する方法に関する。この方法は、被験者に、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)CD4+ TH17細胞の産生又は生存を調節する作用剤とを投与するステップを含む。作用剤は、被験者における酵母ベースの免疫療法の免疫療法特性を増強するために、酵母ベースの免疫療法組成物の用量の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に投与される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、被験者における酵母ベースの免疫療法組成物の免疫療法特性を増強するための薬剤の調製における組成物の使用に関する。組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物、及び(b)CD4+ TH17細胞の産生又は生存を調節する作用剤を含む。
【0017】
本明細書に記載の本発明の任意の実施形態の1つの態様では、被験者は、疾患に関連する1つ又は複数の症状に関して、酵母ベースの免疫療法に対する不応答者(non−responder)又は部分的応答者(partial responder)である。
【0018】
本発明の更に別の実施形態は、疾患に関連する1つ又は複数の症状に関して酵母ベースの免疫療法に対する不応答者又は部分的応答者である被験者における、酵母ベースの免疫療法の効力を向上させる方法に関する。この方法は、被験者に、TH17細胞の産生又は生存を調節する作用剤を投与して、被験者における酵母ベースの免疫療法の効力を向上させるステップを含み、投与は、酵母ベースの免疫療法組成物の用量の投与前、投与と同時、又は投与後である。
【0019】
上記に記載の本発明の任意の実施形態の1つの態様では、疾患は、ウイルス疾患である。1つの態様では、被験者は、作用剤の非存在下では、酵母ベースの免疫療法の適用に応答して、ウイルスに対する十分な治療的免疫応答を生じさせることができず、治療的応答を達成するのに十分なレベルにウイルス負荷を低減させることができず、及び/又はウイルス感染の少なくとも1つの症状の出現頻度又は重症度を低減させることができない。そのようなウイルス疾患は、限定されないが、肝炎ウイルス感染症(例えば、C型肝炎ウイルス感染症又はB型肝炎ウイルス感染症)を含むことができる。
【0020】
上記に記載の本発明の任意の実施形態の1つの態様では、疾患は癌である。1つの態様では、被験者は、作用剤の非存在下では、酵母ベースの免疫療法に応答して、癌に対する十分な治療的免疫応答を生じさせることができず、全身腫瘍組織量を低減させることができず、腫瘍成長を阻害することができず、及び/又は生存率を向上させることができない。
【0021】
上記に記載の本発明の任意の実施形態の1つの態様では、疾患は細胞内病原体による感染症である。1つの態様では、被験者は、作用剤の非存在下では、酵母ベースの免疫療法の適用に応答して、病原体に対する十分な治療的免疫応答を生じさせることができず、治療的応答を達成するのに十分なレベルまで病原体負荷を低減させることができず、及び/又は病原体感染症の少なくとも1つの症状の出現頻度又は重症度を低減させることができない。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、酵母ベースの免疫療法に対するTH1媒介性免疫応答を上方制御する方法に関する。この方法は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生又は生存を下方制御する作用剤をその被験者に投与するステップとを含む。
【0023】
本発明の別の実施形態は、癌を治療するか又はその1つ若しくは複数の症状を軽減する方法であって、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生又は生存を下方制御する作用剤をその被験者に投与するステップとを含む方法に関する。
【0024】
本発明の更に別の実施形態は、ウイルス感染症を治療するか又はその1つ若しくは複数の症状を軽減する方法であって、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生又は生存を下方制御する作用剤をその被験者に投与するステップとを含む方法に関する。1つの態様では、ウイルス感染症は、肝炎ウイルス感染症であり、それには、限定されないが、C型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスが含まれていてもよい。
【0025】
上記に記載の本発明の実施形態のいずれかにおいて、他の態様を相互に除外しない1つの態様では、被験者は、作用剤の非存在下での酵母ベースの免疫療法組成物の投与の結果として、強力なTH17応答を生じる。他の態様を相互に除外しない1つの態様では、被験者から単離されたT細胞は、酵母ベースの免疫療法組成物との接触に応答して増殖しないか又は増殖が微弱である。他の態様を相互に除外しない1つの態様では、被験者から単離されたT細胞は、正常より高いRORγt発現及び/又は正常より高いレベルのIL−17産生を示す。他の態様を相互に除外しない1つの態様では、被験者は、I型インターフェロン療法に不応答性であるか又は部分的に応答性である。
【0026】
上述の実施形態のいずれか1つの態様では、方法又は使用は、TH1細胞の産生若しくは生存を上方制御し、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存を下方制御する作用剤を更に含む。
【0027】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの態様では、作用剤及び酵母ベースの免疫療法の投与は、酵母ベースの免疫療法組成物単独の投与と比較して、CD8+ T細胞応答を増強する。
【0028】
本明細書に記載の本発明の任意の実施形態の1つの態様では、疾患は、真菌性疾患である。この実施形態の1つの態様では、被験者は、作用剤の非存在下での酵母ベースの免疫療法組成物の投与の結果として、微弱なTH17応答を生じる。1つの態様では、被験者から単離されたT細胞は、酵母ベースの免疫療法組成物との接触に応答して増殖する。1つの態様では、被験者から単離されたT細胞は、正常以下のRORγt発現及び/又は正常以下のレベルのIL−17産生を示す。
【0029】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの態様では、TH17細胞の産生及び/若しくは生存の下方制御、TH1細胞の産生及び/若しくは生存の上方制御、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存の下方制御が所望される場合、作用剤は、IL−1、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、IL−23、又はそれらの受容体の発現若しくは活性を阻害するか、又はIL−25若しくはIL−27若しくはそれらのアゴニストである。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−1(IL−1)又はIL−1の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−6(IL−6)又はIL−6の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−17(IL−17)又はIL−17の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、IL−21又はIL−21の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−22(IL−22)又はIL−22の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−23(IL−23)又はIL−23の受容体の発現又は活性を下方制御する。1つの態様では、作用剤は、IL−25又はIL−25のアゴニスト又はその受容体である。1つの態様では、作用剤は、IL−27又はIL−27のアゴニスト又はその受容体である。
【0030】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの態様では、TH17細胞の産生及び/若しくは生存の下方制御、TH1細胞の産生及び/若しくは生存の上方制御、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存の下方制御が所望される場合、作用剤は、以下のものから選択される:Toll様受容体(TLR)アゴニスト若しくはそれらの組み合わせ、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、IL−12、抗IL−12R、抗CD40、CD40L若しくはそれらのアゴニスト、LAG3、IMP321、可溶性受容体を含むC型レクチン受容体、抗炎症剤、免疫調節物質、及び/又は免疫療法ワクチン。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの態様では、TH17細胞の産生及び/若しくは生存の下方制御、TH1細胞の産生及び/若しくは生存の上方制御、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存の下方制御が所望される場合、作用剤は、以下のものから選択される:抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、免疫調節剤、及び/又はビタミン。
【0032】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの態様では、TH17細胞の産生及び/又は生存の上方制御、TH1細胞の産生及び/又は生存の下方制御又は遅延が所望される場合、作用剤は、IL−1、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、IL−23、若しくはそれらの受容体であるか、又はそれらの発現若しくは活性を誘発若しくは増加させるか、又はIL−25若しくはIL−27若しくはそれらの受容体の発現もしくは活性を阻害する。
【0033】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、作用剤は、抗原提示細胞を標的とする。1つの態様では、作用剤は、T細胞を標的とする。
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、作用剤は、以下のものからなる群から選択される:抗体又はその抗原結合部分、siRNA、タンパク質又はペプチド、低分子、及びアプタマー。1つの態様では、作用剤は、抗体又はその抗原結合部分である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物の投与と同時に、酵母ベースの免疫療法組成物の投与前に、酵母ベースの免疫療法組成物の投与後に、及び/又は酵母ベースの免疫療法組成物と共に断続的に投与される。
【0035】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物は、作用剤の投与を開始する前のある期間にわたって1つ又は複数の用量で投与される。
【0036】
更に別の態様では、酵母ベースの免疫療法組成物は、作用剤の投与を開始する前のある期間にわたって1つ又は複数の用量で投与される。別の態様では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物の投与を開始する前のある期間にわたって1つ又は複数の用量で投与される。
【0037】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法を受ける被験者の初期免疫応答を調節するのに十分な規定の期間(例えば、所定の若しくは規定の用量数、及び/又は所定の若しくは規定の週数若しくは月数)投与され、その後の期間では、酵母ベースの免疫療法組成物が作用剤の非存在下で投与される。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、作用剤を保持又は発現するように操作されている。
【0039】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物の免疫療法特性を増強する方法であって、被験者に酵母ベースの免疫療法組成物を投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母が、遺伝子組換えされており、かつ/又は被験者にCD4+ TH17免疫応答を誘導する酵母の能力を修飾する条件下で産生される方法に関する。更に別の実施形態は、被験者における免疫療法を増強するための酵母ベースの免疫療法組成物の使用であって、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母が、遺伝子組換えされており、かつ/又は被験者にCD4+ TH17免疫応答を誘導する酵母の能力を修飾する条件下で産生される使用に関する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法に対するTH1媒介性免疫応答を増強する方法であって、被験者に酵母ベースの免疫療法組成物を投与するステップを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母が、遺伝子組換えされており、かつ/又は被験者にTH17免疫応答を誘導する酵母の能力を低減させる条件下で産生される方法に関する。この実施形態の1つの態様では、被験者は癌を有する。1つの態様では、被験者はウイルス感染症を有する。
【0041】
この実施形態の1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のC型レクチン受容体(例えば、デクチン)、マンノース受容体、及び/又はDC−SIGN受容体によるシグナル伝達が増加するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のデクチン受容体(例えば、デクチン−1、デクチン−2)、マンノース受容体、及び/又はDC−SIGN受容体によるシグナル伝達が減少するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母の細胞壁表面のβ−グルカンの露出を低減させる又は除去する条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母の細胞壁表面のβ−グルカンの露出を増加させる条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母の細胞壁表面のマンノースの露出を低減させる又は除去する条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、酵母の細胞壁表面のマンノースの露出を増加させる条件下で産生されている。1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物は、TH17媒介性免疫応答を誘導する酵母の能力を低減させる条件下で産生されている。別の態様では、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母は、TH17媒介性免疫応答を誘導する酵母の能力を増加させる条件下で産生されている。
【0042】
本発明の更に別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法の予測される免疫応答性について被験者をスクリーニングする方法に関する。この方法は、(a)被験者に由来するT細胞を、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞(APC)とin vitroで接触させるステップと、(b)APCとの接触に応答したT細胞増殖、APCとの接触に応答したT細胞によるIL−17の産生、及びAPCとの接触に応答したT細胞によるレチノイド関連オーファン受容体(RORγt)の発現からなる群から選択されるT細胞の表現型を検出するステップとを含む。そのT細胞がAPCとの接触に応答して増殖するか、又はIL−17の正常産生若しくはRORγtの正常発現を示す被験者は、酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための良好な候補であると予測される。そのT細胞がAPCとの接触に応答して増殖できないか若しくは増殖が不良であるか、又はそのT細胞が正常量を超えるIL−17を産生するか若しくは正常よりも高いRORγtの発現を示す被験者は、TH17細胞の産生又は生存を阻害する作用剤と共に酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための候補であると予測される。そのT細胞が正常量より少ないIL−17を産生するか又は正常よりも低いRORγtの発現を示す被験者は、TH17細胞の産生又は生存を増加させる作用剤と共に酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための候補であると予測される。
【0043】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物、及び(b)TH17細胞の産生及び/又は生存を調節する作用剤を含む組成物に関する。1つの態様では、作用剤は、TH17細胞の産生及び/又は生存を誘発又は下方制御する。1つの態様では、作用剤は、TH17細胞の産生及び/又は生存を上方制御する。そのような作用剤は、上記の他の実施形態及び本明細書の他所に詳細に記述されている。1つの態様では、作用剤は、以下のものからなる群から選択されるサイトカインの発現又は活性を下方制御する:インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及びIL−23、又はそれらの受容体。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらのアゴニストを含む。1つの態様では、作用剤は、TH17細胞の産生又は生存を誘発又は増強する作用剤を含む。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及びIL−23、又はそれらのアゴニストを含む。1つの態様では、作用剤は、インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらの受容体の発現又は活性を下方制御する。
【0044】
本発明の更に別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物のいずれか及び/又は本明細書に記載の作用剤のいずれかを含む組成物のいずれかを含むキットに関する。
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法に対する被験者のT細胞の増殖応答を調節する方法に関する。この方法は、被験者に、TH17細胞の産生又は生存を調節する作用剤を投与して、酵母ベースの免疫療法に対する被験者のT細胞増殖応答を調節することを含み、投与は、酵母ベースの免疫療法組成物の用量の投与前、投与と同時、又は投与後である。この実施形態に有用な作用剤には、上記又は本明細書の他所に記載されているTH17免疫応答を調節するための作用剤のいずれかが含まれる。
【0045】
本発明の更に別の実施形態は、TH1媒介性免疫応答を増強する酵母ベースの免疫療法組成物を生成する方法に関する。この方法は、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母を、酵母ベースの免疫療法組成物が投与される被験者のTH17媒介性応答を低減させるのに効果的な様式で遺伝子操作することを含む。
【0046】
本発明の更に別の実施形態は、TH1媒介性免疫応答を増強する、酵母ベースの免疫療法組成物を生成する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物が投与される被験者のTH17媒介性応答を低減させるのに効果的な条件下で、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母を産生することを含む方法に関する。
【0047】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及びIL−23、又はそれらの受容体からなる群から選択されるサイトカインの発現又は活性を下方制御する作用剤とを含む組成物に関する。
【0048】
本発明の更に別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらのアゴニストとを含む組成物に関する。
【0049】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞の産生又は生存を誘発又は増強する作用剤とを含む組成物に関する。
本発明の更に別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及びIL−23、又はそれらのアゴニストからなる群から選択されるサイトカインとを含む組成物に関する。
【0050】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらの受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤とを含む組成物に関する。
【0051】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞を下方制御する作用剤とを含むキットに関する。
本発明の更に別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/若しくはIL−23、並びに/又はそれらの受容体からなる群から選択されるサイトカインの発現又は活性を下方制御する作用剤とを含むキットに関する。
【0052】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらのアゴニストとを含むキットに関する。
【0053】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞の産生又は生存を上方制御する作用剤とを含むキットに関する。
本発明の更に別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及びIL−23、又はそれらのアゴニストからなる群から選択されるサイトカインとを含むキットに関する。
【0054】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)、IL−27、又はそれらの受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤とを含むキットに関する。
【0055】
本発明の別の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞を検出するための試薬とを含むキットに関する。
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物に対する抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定する方法であって、(a)非ヒト動物を酵母ベースの免疫療法組成物で免疫し、TH17応答が非ヒト動物で阻害又は阻止されるステップと、(b)免疫された非ヒト動物に、等数の標識された標的細胞(標的細胞は抗原を発現又は提示し、その抗原に対して酵母ベースの免疫療法組成物がT細胞応答を誘発する)及び標識された非標的細胞(非標的細胞は抗原を発現又は提示しない)の混合物を注射するステップであって、標的細胞が、非標的細胞とは異なるように標識されているステップと、(c)非ヒト動物から、標識された標的細胞及び標識された非標的細胞を含有する細胞集団を収集するステップと、(d)非標的細胞に対する標的細胞の比率の違いを検出することにより、非ヒト動物の抗原特異性CD8+ T細胞を測定し、非標的細胞と比較した標的細胞の低減が、非ヒト動物の抗原特異的CD8+ T細胞応答のレベルを示すステップとを含む方法に関する。1つの態様では、標的細胞は、標的抗原のペプチドをパルスした脾臓細胞である。1つの態様では、(c)の細胞集団は脾臓に由来する。1つの態様では、標的細胞は、標的抗原を発現する腫瘍細胞である。1つの態様では、(c)の細胞集団は肝臓に由来する。1つの態様では、ステップ(d)は、フローサイトメトリーを使用して実施される。
【0056】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物に対する抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定する方法であって、(a)非ヒト動物を酵母ベースの免疫療法組成物で免疫し、TH17応答が非ヒト動物で阻害又は阻止されるステップと、(b)(a)の免疫された非ヒト動物から、CD8+ T細胞を含有する細胞集団を収集するステップと、(c)(c)の集団中のCD8+ T細胞の抗原−MHC複合体を検出する能力を検出することにより、非ヒト動物の抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定するステップとを含む方法に関する。1つの態様では、(c)の細胞集団は、末梢血単核細胞を含有する集団である。1つの態様では、抗原−MHC複合体は四量体である。
【0057】
抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定する上述の方法のいずれかにおいて、1つの態様では、非ヒト動物はマウスである。1つの態様では、IL−1、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/又はIL−23から選択されるサイトカインの発現又は活性は、非ヒト動物で阻止又は阻害される。1つの態様では、非ヒト動物は、IL−6ホモ接合型ノックアウトマウスである。
【0058】
上記又は本明細書の他所に記載の方法、使用、組成物、又はキットのいずれかにおいて、1つの態様では、酵母ベースの免疫療法組成物は、酵母媒体及び抗原を含み、抗原は、酵母媒体により発現されるか、酵母媒体に結合されているか、又は酵母媒体と混合されている。1つの態様では、抗原は、酵母媒体により発現される。1つの態様では、抗原は、酵母媒体と混合されている。1つの態様では、抗原は、酵母媒体に結合されている。1つの態様では、酵母媒体は、全酵母、酵母スフェロプラスト、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、及び/又は亜細胞酵母膜抽出物若しくはその画分からなる群から選択される。1つの態様では、酵母媒体は、全酵母及び/又は酵母スフェロプラストから選択される。1つの態様では、酵母媒体は、全酵母である。1つの態様では、酵母媒体は、熱不活化全酵母である。1つの態様では、酵母媒体は、サッカロマイセス(Saccharomyces)に由来する。1つの態様では、酵母媒体は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】酵母ベースの免疫療法生成物による免疫に起因する一次抗原特異的CD8+細胞媒介性免疫の発生を示すフローサイトメトリーグラフである(図1A=OVAX、図1B=YVEC+オボアルブミン、図1C=YVEC、図1D=未感作)。
図2】酵母+オボアルブミン(図2A)、オボアルブミン+抗CD40(図2B)、酵母+オボアルブミン及び抗CD40(図2C)、ならびにpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40(図2D)で免疫した野生型マウスにおける一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図3図3A〜3Cは、免疫していない(未感作、図3A);酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(酵母、図3B);及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(pam3cys、図3C)野生型マウス(WT)における一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。図3D〜3Fは、免疫していない(未感作、図3D);酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(酵母、図3E);及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(pam3cys、図3F)IL−12Rβノックアウトマウス(IL−12Rβ−/−)における一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。図3G〜3Iは、免疫していない(未感作、図3G);酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(酵母、図3H);及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(pam3cys、図3I)tbetノックアウトマウス(tbet−/−)における一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図4】酵母+抗CD40で免疫した(図4A)、酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図4B)、及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図4C)MyD88ノックアウトマウスにおける一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図5】野生型マウス(WT、黒色バー)、TLRシグナル伝達タンパク質MyD88を欠如するマウス(MyD88−/−、白色バー)、又はCD4+ T細胞を欠如するマウス(MHCクラスII−/−、灰色バー)において発生したCD8+ T細胞のパーセントを、WTマウスでpam3cysに応答して発生した抗原特異的CD8+ T細胞の出現頻度(第1列で100%として表されている)とY軸で比較して示す棒グラフである。
図6】オボアルブミン+抗CD40で免疫した(図6A)、酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図6B)、及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図6C)IL−6ノックアウトマウスにおける一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図7】未感作マウス(未免疫)により、pam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫したマウス(pam3cys)により、並びに酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫したマウス(酵母)により生成された、IL−17を産生するCD4+ T細胞の出現頻度(Y軸)を示す棒グラフである。
図8図8A〜8Bは、酵母ベースの免疫療法組成物で免疫した後のtbetノックアウトマウス及び野生型マウスの脾臓(図8A)及び肺(図8B)で産生されたインターフェロン−γのパーセントを示す棒グラフである。図8C〜8Dは、酵母ベースの免疫療法組成物で免疫した後のtbetノックアウトマウス及び野生型マウスの脾臓(図8C)及び肺(図8D)で産生されたインターロイキン−17(IL−17)のパーセントを示す棒グラフである。
図9】オボアルブミン+抗CD40で免疫した(図9A)、酵母+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図9B)、及びpam3cys+オボアルブミン及び抗CD40で免疫した(図9C)デクチン−1ノックアウトマウス(デクチン−1 −/−)における一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図10】MyD88ノックアウトマウス(図10A)、野生型マウス(図10B)、及びIL−6ノックアウトマウス(図10C)を、酵母、オボアルブミン、及び抗CD40で免疫した後の一次抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生を示すフローサイトメトリーグラフである。
図11】オボアルブミンに対して抗原特異的である、図3A〜3Cの酵母ベースの免疫療法で免疫したマウスに由来する集団におけるCD8 T細胞の実際のパーセントを示すグラフである。
図12】酵母ベースの免疫療法による1回目の免疫(一次、白色バー)後の、及び60日後の同一の第2の免疫(記憶、黒色バー)後の、野生型及びIL−6ノックアウトマウスにおける抗原特異的CD8 T細胞の出現頻度を示す棒グラフである。
図13】酵母ベースの免疫療法組成物で免疫したIL−6ノックアウトマウスの流入領域リンパ節及び非流入領域リンパ節の制御性T細胞(Treg)のパーセントを示す棒グラフである。
図14】野生型(WT、黒色バー)及びI型インターフェロン受容体ノックアウトマウス(IFNαR−/−、白色バー)において、pam3cys+オボアルブミン+抗CD40で免疫したマウス(pam3cys、WTのみで示された100%の対照セット)で、及び酵母+オボアルブミン+抗CD40で免疫したマウス(酵母)で発生したCD8+ T細胞のパーセントを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、一般的に、酵母ベースの免疫療法組成物が免疫系と相互作用する機序の本発明者らの発見、並びに酵母ベースの免疫療法組成物を含有する組成物を生成又は処方するための新規方法を提供するためのこの発見の使用、並びに酵母ベースの免疫療法を使用して免疫応答を特異的に調節し、個体の種々の疾患状態に対する酵母ベースの免疫療法の効力を向上させる方法及び組成物に関する。本発明は、酵母ベースの免疫療法組成物により誘発された免疫応答を測定するための方法及びキット、並びに酵母ベースの免疫療法組成物により誘発された免疫応答について被験者をスクリーニングするための方法も含む。
【0061】
免疫療法の主な目的は、抗原特異的CD8+ エフェクターT細胞を生成及び増殖させることであった。このプロセスは、CD8 T細胞により使用されるクラスI MHC経路に対するウイルス抗原又は腫瘍抗原の交差提示を増強するI型インターフェロンにより促進することができ、I型インターフェロンは、ウイルス複製の直接阻害等の他の効果を示すインターフェロン応答遺伝子を上方制御する。残念ながら、インターフェロン媒介性療法は一律に成功するものではなく、したがって、I型インターフェロン非依存性経路を使用することは有用である。
【0062】
本発明は、酵母ベースの免疫療法が、インターフェロン非依存性かつCD4依存性のCD8 T細胞の生成を引き起こすという根拠を提供し、更に、酵母ベースの免疫応答を、特定の個体において及び特定の疾患又は状態について望まれる免疫応答のタイプを「個別化」又は選択的に修飾するように制御することができることを実証する。より詳しくは、本明細書では、酵母ベースの免疫療法剤の投与が、TH17 T細胞を誘導し、このTH表現型の誘導が、IL−12に依存するTH1 CD4及び抗原特異的CD8 T細胞媒介性免疫のI型インターフェロン非依存的発生と同時に生じることが実証される。更に本明細書では、酵母ベースの免疫療法剤で繰り返し免疫した後でのCD8 T細胞の持続性は、Tregの出現頻度を低減させる酵母ベースの免疫療法剤による対抗手段の発生と関連することが実証される。したがって、酵母によるTH17誘導は、インターフェロン非依存性かつCD4依存性CD8 T細胞応答が生じることを可能にすることにより、及びCD8細胞を別様に制御する制御性T細胞を妨害することにより、持続的なCD8 T細胞発生を支援することができる。TH17を活性化させずにTLRを使用する他の免疫刺激手法は、Tregの機能を妨害するこの免疫制御成分を欠如する場合があり、酵母ベースの免疫療法の有益性を例示する。更に、TLRアゴニスト手法等の、TLRを使用する他の免疫刺激手法は、I型インターフェロンに依存する場合があり、I型インターフェロン非依存性細胞媒介性免疫応答を誘発する酵母ベースの免疫療法の能力は、I型インターフェロンに応答する能力を欠如するか又は損なわれている個体に対する、免疫応答性の手段の適用を可能にする。
【0063】
まとめると、これらのデータは、酵母ベースの免疫療法により発生する持続的かつ免疫療法的に生産的な細胞媒介性免疫の発生におけるTH1及びTH17間の複雑な均衡を明らかにし、これらの経路の調節が、所与の個体及び/又は疾患状態の免疫応答を適合させる方法であることを示している。
【0064】
例えば、本発明者らは、本明細書で、酵母ベースの免疫療法が媒介する抗原特異的CD8+ T細胞の発生が、TH17 Tヘルパー細胞経路を調節することにより強く影響され得ることを実証する。実際、酵母ベースの免疫療法の均衡ポイントは、CD8+ T細胞発生を制御することができるTH17 CD4+ T細胞の発生と共に停止するという根拠が、本明細書に提供されている。この例では、本発明者らは、IL−6の枯渇により、免疫応答を、酵母ベースの免疫療法に対するTH17経路性CD8+抗原特異的T細胞応答に向けて駆動するサイトカインが、例えば、総CD8+応答のおよそ1〜5%からおよそ25〜33%以上に著しく増加する場合があることを示す。酵母ベースの組成物の投与の結果として産生される炎症促進性IL−6はTH1媒介性応答に負の影響を及ぼす一方で、酵母ベースの免疫療法組成物はTH1媒介性CD8+ T細胞応答の強力な誘導因子であることが知られている、という、はっきりした難問が存在する。しかしながら、本明細書に記載の発見を考慮すると、理論により束縛されないが、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法剤が部分的に真菌として作用し、TH17経路を誘導し、これが、TH1炎症ではなくTH17の初期発生によるCD8+ T細胞の発生に大きな影響を及ぼすと考える。より詳しくは、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法がほとんどの個体でTH17応答をもたらす初期炎症促進効果を示し、TH17応答は、炎症が解消するにつれてCD8+ T細胞増殖を支援するTH1媒介性応答に移行すると考える。本発明者らは、このTH17経路を阻止又は阻害する作用剤は、IL−6を阻害する作用剤を含むがそれに限定されず、初期TH17応答をIL−12依存性TH1経路に向けて再集中させることにより、又は幾つかの個体により経験される場合があるTH17経路に対する「過剰傾倒」を低減させることにより、CD8+ T細胞発生を促進するであろうと提唱する。そのような作用剤は、CD8応答が所望される場合(例えば、癌又はウイルス感染症において)、酵母ベースの免疫療法に対して部分的応答又は不応答を示す被験者に特に有用であるが、そのような作用剤は、ほとんどの個体において酵母ベースの免疫療法により発生するCD8応答を増強すると予想され、したがって、一般的に、酵母ベースの免疫療法に対するTH1媒介性免疫応答を増強するために使用することができる。同様に、逆の手法を使用して、より強力なTH17応答が有益であり得る状況で(例えば、真菌感染症又は細胞外病原体感染症)、より弱いTH17応答を示す被験者のTH17応答を増強することができる。
【0065】
理論により束縛されないが、本発明者らは、個体が、様々なTH17設定ポイントを有しており、「より弱い」又は「より強い」TH17産生体のいずれかに大きく分類することができると考える。より弱いTH17活性は、I型インターフェロン及びCD4非依存性CD8 T細胞応答に対する応答性と相関し、より強いTH17活性は、最終的かつ優先的なCD4 TH1媒介性のCD8 T細胞の発生と相関する。一般的に、より弱いTH17活性は、CD4 T細胞非依存性及びI型インターフェロン依存性と一致し、より強いTH17活性は、CD4 T細胞依存性及びI型インターフェロン非依存性と一致する。したがって、酵母ベースの免疫療法は、個体のTH17活性を制御することにより修飾することができる療法を提供し、ある患者集団及び/又はある疾患若しくは状態に特に有用であり得る、I型インターフェロンに基づく療法に対する免疫応答性の代替的又は追加的経路も提供する。本発明は、1つの方向又は別の方向に免疫応答を「偏らせる」という様式で、酵母ベースの免疫療法に対する免疫応答を「調節」することを対象とすると理解される。言い換えれば、ほとんどの状況では、Treg経路に対して、TH1経路に対して、TH17経路を完全に阻止又は過剰活性化することは必ずしも望ましくはなく、むしろ、免疫療法の治療効果を最大限にするためには、治療しようとする疾患は何か、どのタイプの免疫応答がどの時点で最も有益になるか、及び個体が酵母ベースの免疫療法にどのように応答するかに基づいて、応答を調節することが望ましい。
【0066】
酵母ベースの免疫療法に起因するTH17からTH1の利用に取り組む1つの方法は、IL−6に大きく依存するTH17開始を制限することであるため、本発明者らは、IL−6ノックアウトマウスにおいて酵母ベースの免疫療法技術を試験することを選択した。本発明者らは、酵母ベースの免疫療法組成物を投与すると、このマウスでは、免疫応答が直ちにTH17から直接TH1に移行することを発見した。より詳しくは、野生型マウスは、1用量のTARMOGEN(商標)免疫療法(酵母ベースの免疫療法、Globelmmune,Inc.社、ルーイビル、コロラド州)を適切に投与した後で、1〜5%の抗原特異的CD8+細胞を再現性よく発生させたが、この出現頻度は、IL−6ノックアウトマウスにおいていつも決まって30%以上に増加した(例えば、図2C及び図6Bを参照)。したがって、野生型マウスのIL−6は、TH1からCD8+ T細胞への移行を少なくとも遅延させており、理論により束縛されないが、本発明者らは、これがTH17経路の活性化によるものであったと考える。興味深いことには、TLR2経路による(Pam3cysによる)抗原特異的CD8 T細胞の発生は、IL−6の消失により影響を受けなかった。
【0067】
これらの結果は、酵母ベースの免疫療法の機序が、TH1 T細胞に加えて、IL−6及びTH17 T細胞の(したがって、IL−17又はIL−23等の、TH17経路におけるサイトカインの)役割を含むことを示した。本発明者らは、本明細書で、野生型及びT−betノックアウトマウス(つまり、TH1依存性転写因子、T−betが欠失しているマウス)を使用した並列実験により、酵母ベースの免疫療法の適用後にTH17及びTH1 T細胞が両方とも誘発されることを更に実証した。酵母ベースの免疫療法により、TH1及びTH17 T細胞が両方とも誘導されたが、TLR2アゴニストによっては誘導されなかった。したがって、全酵母ベースの免疫療法は、TH17により影響を受け/制御され、次いでIL−6依存性プロセスにより誘導されるTH1依存性プロセスにより、CD8 T細胞を発生させることができる。
【0068】
興味深いことには、酵母依存性CD8 T細胞応答は、TH1依存性CD4 T細胞集団が除去されると、バックグラウンドレベルに低下したが(実施例2を参照)、CD4 T細胞集団(つまり、TH1、TH17等)が全て除去されると、酵母ベースの免疫療法は、野生型マウスにおける対応するCD8応答と比べて向上したCD8応答を誘導した。まとめると、これらの結果は、CD4 T細胞が、TLR特異的刺激に対する免疫応答とは異なる様式で、酵母に対するCD8応答を制御することを示す。CD4 T細胞が欠けている環境で生じることに留意されたいが、酵母は、CD4非依存性TLRアゴニストpam3cysで観察された応答と同等のCD4非依存性CD8 T細胞応答を誘発することができ、酵母は、更に別のCD4サブセット、TH17により影響を受けるTH1 CD4依存性/IL−12依存性CD8 T細胞応答も誘発することができ、酵母免疫に対する応答の誘導及び制御の両方における、酵母により発生するCD4 T細胞の役割が確認される。
【0069】
本発明者らは、樹状細胞上のC−タイプレクチン受容体であるデクチン−1の結合は、酵母ベースの免疫療法剤がIL−6産生及びTH17応答を誘導するための唯一の機序ではないことも示す。理論により束縛されないが、本発明者らは、デクチン−2受容体、マンノース受容体、DC−SIGN受容体、及び/又は他のC−タイプレクチン受容体が含まれ得るがこれらに限定されないデクチン−1受容体以外の受容体の結合の結果としてIL−6が産生され得ると考える。
【0070】
本発明者らは、酵母ベースの免疫療法に起因するTH17 T細胞の誘導が、制御性T細胞(Treg)出現頻度の低減と関連することも実証した(実施例5を参照)。TH17誘導は、Tregと負に関連しており、TH17細胞は、TH1細胞と同軸上にあるだけでなく、TregをTH17表現型に変換可能であることも証拠付けられている。実際、自己免疫は、制限性TGFβを競合し、Treg発生経路を欠乏させるIL−6駆動性TH17の持続性と関連すると考えられる。酵母ベースの免疫療法がTregを低減させるという観察の1つの説明は、IL−6が、TH17誘導性の環境では、IL−6媒介性のFoxP3機能の妨害により制御性T細胞発生を直接標的とするということであるが、本発明者らは、理論により束縛されないが、本明細書に示されているデータにより、他の説明が支持されると考える。例えば、IL−6ノックアウトマウスにおける酵母ベースの免疫療法による著しく増強された抗原特異的CD8 T細胞応答の生成は、TH17 T細胞誘導の欠乏の結果であり、以前は協調したTH1−TH17免疫応答であったものをTH1に高度に偏ったものへと偏らせる可能性がある。本明細書に提供されているデータにより、別の代替的説明が支持される。TH17は、Tregのように、生存をTGFβに依存しており、T細胞がTGFβの存在下でTH17になるか又はTregになるかの違いは、IL−6の存在、及びTGFβに対するTH17の感受性の増加である。つまり、TH17はTregほどTGFβを必要としない。TH17 T細胞は、必要とするTGFβの量が少ないため、この必須増殖因子をめぐるTregとの競合に「勝利する」。IL−21依存性経路等のIL−6非依存性経路によりTH17を産生させることもできる可能性がある。この経路に関する独立した根拠は、本明細書に記載の反復免疫研究に由来する。IL−6の非存在が、最終的に、制御されていないTregの誘導に有利であると仮定すると、抗原特異的CD8T細胞応答は、免疫の出現頻度と共に低下するであろうと予想される。しかしながら、実施例に示されているように、酵母ベースの免疫療法の適用は、IL−6ノックアウトマウスのバックグラウンドでさえ、時間の経過と共に持続する免疫応答をもたらす。したがって、酵母ベースの免疫療法剤は、個体におけるTregの持続性を調節する機会を更に提供する。
【0071】
本明細書に記載の発見に基づき、本発明は、酵母ベースの免疫療法が、抗真菌免疫療法、抗ウイルス免疫療法、及び抗腫瘍免疫療法を含むがそれらに限定されない様々なタイプの免疫療法の価値を有し相互に排他的でない少なくとも6つの作用様式を有することを企図する。第1に、酵母ベースの免疫療法組成物は、直接的に腫瘍を溶解する抗原特異的CD8陽性T細胞を発生させる。これらのCD8 T細胞は、上で言及した6つの作用様式のうちの2つである少なくとも2つの様式で発生させることができる:1)抗原特異的CD8 T細胞の直接的活性化をもたらす、外因的に貪食された酵母の交差提示;及び2)CD8 T細胞の機能保持に不可欠なIL−2等のサイトカインを産生するIL−12依存性I型インターフェロン非依存的機序によるTH1細胞の発生。第3の作用様式は、IL−21を産生する細胞の酵母ベースの発生である。IL−21は、CD8 T細胞の生存を増強するように機能することができ、したがってより長期的な免疫応答を促進する。酵母ベースの免疫療法の第4の作用様式は、酵母免疫療法により誘導される炎症が軽減され、酵母を貪食していない動員好中球が死滅し、次いでそれら自体が貪食されると共に、TH1の発生が有利な条件に変換するTH17細胞の発生である。これらの最初の4つの機序は全て、TH17からTH1への免疫応答の偏りの恩恵を受けており、それは下記により詳細に記述されている。第5に、TH17 T細胞は、好中球の動員による直接的殺腫瘍活性又は間接的殺腫瘍活性のいずれかでIL−17を産生し、したがって、TH17応答及びTH1応答の両方が、癌に有益である。この作用様式は、これらの経路のより定方向の一時的な調節が、抗癌効力を向上させることができることを示す。第6に、TH17は、TGFβに関してTregと競合し、したがって免疫抑制的Treg活性を調節する(つまり、Treg活性を低減させる)。これは、酵母ベースの免疫療法により誘導されるTH17応答に対する別の有益性であり、それを活用して、被験者における免疫療法の効力を増強することができる。したがって、酵母ベースの免疫療法は、免疫療法を用いて感染症又は疾患に取り組む多経路手法を提供し、この経路を更に修飾して、所望の治療手法及び治療しようとする個体に基づき、1つの方向又は別の方向に応答を偏らせることができる。
【0072】
したがって、本発明は、標的、及び疾患兆候、並びに酵母ベースの免疫療法組成物の投与後に、一方のTH細胞経路又は他方の経路によってより活発に応答する個体の一般的な傾向に応じて、酵母ベースの免疫療法を使用して免疫応答を調節するための方法を提供する。TH1経路は、抗原特異的細胞媒介性免疫の発生と顕著に関連しており、TH17経路は、抗真菌特性、抗腫瘍特性、及びTregの中和の発生と関連する。IL−6及びI型インターフェロンの役割、並びにCD40の結合(又は樹状細胞の活性化)も、このプロセスにおいて重要である。酵母ベースの免疫療法により媒介されるTH1及びTH17応答の発生におけるこれらの免疫調節剤間の相互作用を理解することにより、本発明者らは、これらの経路を調節して、特定の治療転帰をより正確に計画し、したがって酵母ベースの免疫療法基盤の能力を強化することができるということを提示する。加えて、個体をスクリーニングして、酵母ベースの免疫療法を使用した治療が(例えば、治療しようとする疾患、所望の免疫応答のタイプ、及びTH17応答に向かって又は離れるように偏る免疫応答を開始する個体の傾向に応じて)どの程度最良であるかを決定することもでき、それにしたがってそのような免疫療法を個別化することができる。手短に言うと、酵母ベースの免疫療法は、2つのCD4経路を活性化する単一生成物を使用した治療的免疫調節の機序を表しており、本明細書に記載の発見を考慮すると、今やこの知識を活用して免疫応答を更に調節することができる。
【0073】
酵母ベースの免疫療法剤(例えば、TARMOGEN(商標)製品)が、レチノイド関連オーファン受容体(ROR)の発現、特にTH17 T細胞によるRORγtの発現を含むTH17表現型を誘発することが、本発明者らにより本明細書で実証されていることを考慮すると、理論により束縛されないが、本発明者らは、およそ25%の患者が、初回抗原刺激の後でさえin vitroで酵母ベースの免疫療法剤に対するT細胞増殖応答を開始することができないという観察の1つの説明は、TH17サブセットの持続性を反映している可能性があり、これらの患者が、抗増殖性TH17応答に対する「過剰傾倒」を示すことを示唆していると考える。持続的なTH17応答は、そのような患者において、CD8 T細胞応答を含むTH1応答及び抗原特異的免疫への効果的な「変換」又は開始を防止又は阻害することができる。これらの個体の幾つかでは、この欠損は、TH17表現型への偏りの結果としてのI型インターフェロン依存性T細胞応答を発生させる能力の欠損であってもよく、それら個体の場合、酵母ベースの免疫療法は、そのような個体が効果的なCD8応答を開始するための利点及び手段であり得ると予想される。そのような個体のうち他の個体では、より強いTH17応答への偏りは、実際に酵母ベースの免疫療法に対する効果的なCD8+応答を生み出すそれらの能力を損なう場合があり(つまり、応答がTH17応答へと非常に偏っているため、TH1応答に戻る変換が制限されている)、そのような患者は、本明細書に記載のような、酵母誘導性TH17応答を下方制御又は調節するための追加的治療手法を必要とする場合がある。注記したように、酵母ベースの免疫療法により誘発される多経路応答は、治療上有益であると考えられるため、TH17応答を全て阻止又は遮断することは一般的に望ましくない。或いは、持続的なTH17応答は、そのような患者の免疫応答の臨床効力を実際に増強する場合があるか、又はTH1応答とは異なるが、少なくともある条件下では臨床的に効果的でもある免疫応答を単に表している場合がある。実際、TH17及びTH1応答を同時に発生させることに価値があるはずであり、TH17は、Tregを標的とすることにより最終的にTH1応答を向上させ、及び長期的記憶CD8応答を促進するIL−21等のサイトカインを産生することができる。加えて、真菌性疾患の場合には、TH17優勢免疫応答が好ましい可能性があり、追加的な長期的CD8+記憶応答が望ましい。いずれの場合でも、酵母ベースの免疫療法組成物の効力を向上又は増強するために、どのタイプの免疫応答が所与の標的又は疾患により効果的であるはずであるかに応じて、一方又は他方のタイプの応答に向けて個体の免疫応答を効果的に調節するために本発明を使用することができる。実際、本発明は、両タイプの免疫応答が有益な役割を果たすことができる疾患状態に対して、抑制された一時的な様式でTH17応答を提供しその後TH1応答を提供するように免疫応答を調節する機会を提供する。
【0074】
GI−4000−01として知られている酵母ベースの免疫療法(TARMOGEN(商標)療法、Globelmmune,Inc.社、ルーイビル、コロラド州)の、結腸直腸癌及び膵癌被験者における第1相非盲検用量漸増安全性治験には、5人の長期生存者があった。5人の長期生存者は皆、T細胞増殖により測定したところ、酵母ベースの免疫療法に対するin vitroでの応答者であった。例えばそれは、TH17応答からTH1応答へと効果的に変換させるそのような患者の能力と一致する。いずれにせよ、理論により束縛されないが、本発明者らは、そのような免疫療法に対するin vitroでの増殖性応答が、誰がどのような疾患状態でそのような療法から最も利益を受け得るかに関する有用な決定要因であり、かつ/又は酵母ベースの免疫療法から最大の利益を得るために追加的治療が必要又は推奨される可能性のある患者を識別するために使用されることができると考える。
【0075】
TH17細胞及びIL−17が抗腫瘍活性と関連することを考慮すると、酵母ベースの免疫療法は、そのような組成物の真菌としてTH17を誘導する能力により、本質的に殺腫瘍性であると予想される。TH17媒介性の殺腫瘍機序は、現在一般的には理解されていないが、1つの可能性は、IL−17が直接的殺腫瘍活性を有するということである。IL−17は、好中球を動員することにより又はTreg発生を妨害することにより、間接的に抗腫瘍活性を示す可能性もある。いずれにしても、これらの機序は、酵母ベースの免疫療法により提示される抗原に依存せずに生じると考えることができる。しかしながら、以前に言及されているように、酵母ベースの免疫療法により誘導される炎症は、軽減されると、TH17からTH1へと均衡を揺動させ、したがってCD8+ T細胞の活性化を引き起こすであろう。したがって、癌等の特定の疾患状態は、TH17媒介性の抗腫瘍活性及びTreg機能不全の両方、並びに抗原特異的CD8+ T細胞の発生から利益を得ることができる。
【0076】
したがって、本発明の組成物及び方法は、様々な疾患状態及び個体に様々な様式で応用することができる。例えば、癌を有する被験者では、1つの態様では、個体は、酵母ベースの免疫療法剤のTH17誘導活性、及び酵母により誘導される最終的なTH1媒介性免疫応答から利益を受けることができる。したがって、1つの態様では、酵母ベースの免疫療法剤は、更なる修飾をせずに初期に投与されるか、又はその代わりに酵母ベースの免疫療法剤が投与され、その後の時点で、TH17媒介性の抗腫瘍効果が誘導された後、TH1応答は、TH17応答からTH1応答への移行を増強する作用剤の投与により上方制御される(例えば、TH17を下方制御する及び/又はTH1を上方制御する作用剤)。或いは、TH1及びCD8+免疫応答の抗腫瘍効果は、腫瘍消失又は制御の重要な部分であると考えられているため、本発明の幾つかの態様では、酵母ベースの免疫療法剤は、TH17を下方制御及び/又はTH1を上方制御する作用剤と同時に投与され、これにより、そのような作用剤が存在しない場合よりも迅速に又はより確実にTH1応答への移行が増強される。加えて、所与の疾患(下記で定義)で酵母ベースの免疫療法に対して一般的に不応答性であるか又は部分的にしか応答しない個体では、酵母ベースの免疫療法の開始同時に又は開始後に、TH17応答を調節する及び/又はTH1応答を調節する作用剤を投与することにより、そのような個体、特に、少なくともある疾患又は状態でTH17経路に「過剰傾倒」する素因があるか、又は恐らくは「より弱い」TH17応答者である個体に、酵母ベースの免疫療法を用いてより有益な免疫応答を発生させることができる。酵母は、例えば、TH17応答又はTH1応答の修飾という目的を達成するように遺伝子操作及び/又は製造することもできる。
【0077】
実際、本発明は、TH17応答を下方制御する及び/又はTH1応答を上方制御する作用剤を、例えば、TH17応答からTH1応答への移行が可能でないか若しくは正常母集団ほど可能でない個体に、又はインターフェロン非依存性免疫応答の開始が可能でないか若しくは正常集団ほど可能でない個体に投与することにより、その個体、特に癌又はウイルス感染症若しくは疾患を罹患している個体に、酵母ベースの免疫療法の有用性を実現することができるという点で、(所与の疾患又は症状に関して)酵母ベースの免疫療法に対して不応答者であるか又は部分的な応答者である個体に一般的に有用である。本発明は、より効果的であると予想される様式で特定の個人及び/又は特定の疾患状態を治療するために、酵母ベースの免疫療法の「個別化」を可能にする。同様に、個体、特に正常より弱いTH17応答を示すか又は真菌感染に対する免疫療法に対して「不応答者」若しくは「部分的応答者」である個体に、TH17応答を上方制御する作用剤を投与することにより、その個体による真菌感染症に対する免疫応答を増強させることができ、被験者の真菌感染症状の低減が支援される。
【0078】
本発明によると、酵母ベースの療法に対する「不応答者」は、酵母ベースの免疫療法を使用して治療しようとする特定の疾患又は症状に関して定義され、免疫療法が標的とするその疾患の少なくとも1つの症状を低減又は軽減するのに十分に効果的である酵母ベースの免疫療法に対して免疫応答を発生させない被験者を指す。「部分的不応答者」は、所与の疾患又は状態において部分的な治療結果をもたらす酵母ベースの免疫療法に対して幾らかの応答を示すことができるが、その応答は、最適には及ばないか、又はより良好な治療的応答を獲得するために改善する余地がある。同様に、「不応答者」は、酵母ベースの免疫療法に対する応答(例えば、強力なTH17応答)を示すことができるが、例えばウイルス感染症又は癌に対して有効なTH1媒介性CD8+応答を発生させることができない。そのような個体は、インターフェロン依存性免疫応答を発生させることができない等の他の欠損を有する場合もあり、したがって、多くのタイプの感染症又は疾患に対処する自身の免疫系の能力が制限される。言い換えれば、ほとんどの被験者が、酵母ベースの免疫療法組成物による免疫に対して免疫応答を発生させると予想されるが、被験者に誘発される免疫応答のタイプは、本明細書に記載のように様々であり得、被験者に誘発される特定の応答は、免疫療法により標的とされる疾患又は状態の症状を低減若しくは軽減するのに効果的である場合もあり、又は効果的でない場合もある。本発明は、TH17細胞集団が、酵母ベースの免疫療法の状況で様々な疾患に対する個体の応答性を制御することを提唱する。例えば、上で言及したように、被験者は、酵母ベースの免疫療法組成物による免疫に対して強力なTH17免疫応答を示し得るが、そのような応答を効果的なTH1応答に容易に変換することができない場合がある。したがって、そのような被験者は、真菌性疾患の酵母ベースの免疫療法に関して「応答者」であり得るが、効力を示すためにはTH1媒介性CD8+応答を必要とすると考えられる肝炎等のウイルス疾患に対する酵母ベースの免疫療法に関しては、不応答者又は部分的不応答者である場合がある。したがって、用語「応答者」又は「不応答者」は、任意の免疫応答が、酵母ベースの免疫療法の適用に応答して被験者に誘発されるか否かよりもむしろ、治療しようとする疾患に関して使用される。
【0079】
したがって、個体を特徴付ける別の様式は、個体が免疫療法に応答して生じさせるTH17免疫応答に関する。ある個体は「より強力な」TH17応答者であってもよく、そのような個体は、集団の大多数と比較して又は正常な若しくは予想通りのTH17応答を示す個人(例えば、所与の疾患又は状態を有する被験者の場合、これは、正常な又は健康な対照個人であってもよい)と比較して、酵母ベースの免疫療法に対して活発な又はより強力なTH17型応答を生じさせることを意味する。典型的には、TH17応答は、被験者から単離されたCD4+ T細胞により産生されたIL−17の量をin vitroで測定することにより、又は被験者から単離されたIL−17産生CD4+ T細胞(TH17細胞)のレベル/数を、その被験者の同じ供給源(例えば、末梢血、肺、脾臓、リンパ節等)に由来する全CD4+ T細胞のレベル/数と比べて測定することにより決定される。幾つかの場合には、レチノイド関連オーファン受容体(ROR)及び特にRORγt、TH17細胞マーカーの発現のレベルが、被験者のTH17細胞レベルの指標として、被験者から単離されたCD4+ T細胞の集団で評価される。単離された細胞は、酵母ベースの免疫療法組成物との接触前及び接触後に評価することができ、酵母ベースの免疫療法との接触は、典型的にはin vitroで生じ(しかし、状況によっては、in vivoで生じてもよい)、並びに/又は多数の陽性対照及び陰性対照(例えば、TLRアゴニスト、サイトカイン、緩衝液単独、酵母ベースの免疫療法に対する明確な免疫応答を示す個体若しくは他の個体の集団に由来する試料等)と比較して評価することができる。T細胞増殖アッセイ、サイトカインアッセイ、及び他のバイオマーカーアッセイは、当技術分野で周知である。増殖は、典型的には、被験者からT細胞を取得し、それらを、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞に曝露し、放射性同位元素又は比色検出法を使用すること等によりT細胞の増殖を測定することによって、in vitroで測定される。サイトカインアッセイには、限定されないが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学的分析、免疫ブロッティング、蛍光活性化細胞分類(FACS)、及びフローサイトメトリーが含まれる。mRNA発現レベルは、PCR、逆転写PCR(RT−PCR)、in situ PCR、in situハイブリダイゼーション、及びノーザンブロットを含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して検出することができる。強力なTH17応答者は、酵母ベースの免疫療法に応答して、一般的に健康な又は「正常な」個体の集団(つまり、群として、特定の疾患や症状を有していない)に由来する同じ供給源(例えば、末梢血)から単離された平均レベルのIL−17産生又はCD4+ T細胞における平均レベル/数のTH17細胞よりも、統計的に有意に(p>0.05)多いIL−17を産生するか、及び/又は統計的に有意に(p>0.05)多いIL−17産生CD4+ T細胞(TH17細胞)を有する。IL−17レベルは、当技術分野で公知の種々のin vitroアッセイにより測定することができ、IL−17タンパク質又はmRNAの量を評価することにより測定することができる。同様に、RORγtレベルは、この転写因子を測定するための当技術分野で公知の技術を使用して測定することができる。
【0080】
ある個体は、「より弱い」TH17応答者であってもよく、これは集団の大多数と比較して、免疫療法に対して中程度又はより弱いTH17型応答を生じさせることを意味する。個体は、広範なTH17応答に遭遇することになると予想され、したがって、酵母ベースの免疫療法に対する免疫応答を修飾する能力は、個別化療法に有益であろう。「弱い」TH17応答は、上述のように測定することができ、一般的に健康な又は「正常な」個体の集団(つまり、群として、特定の疾患や症状を有していない)に由来する同じ供給源(例えば、末梢血)から単離された平均レベルのIL−17産生又はCD4+ T細胞における平均レベルのTH17細胞よりも、統計的に有意に(p>0.05)少ないIL−17を産生するか、及び/又は統計的に有意に(p>0.05)少ないIL−17産生CD4+ T細胞(TH17細胞)を有するであろうと予測される。
【0081】
ウイルス感染症又はウイルス疾患(例えば、ウイルス関連疾患)を有する個体において、特にインターフェロン駆動性の療法に抵抗性である個体では、TH1及びCD8+免疫応答の有益性を達成することが一般的に望ましく、したがってこのタイプの感染症又は疾患では(他の細胞内病原体に適用可能であると予想される)、酵母ベースの免疫療法剤は、TH17からTH1応答への移行を増強する作用剤(例えば、TH17を下方制御する及び/若しくはTH1を上方制御する作用剤)と同時に若しくは連続的に投与されるか、又はその代わりに、酵母は、TH1媒介性免疫応答を誘導する酵母の能力を増強するような遺伝子操作若しくは製造プロセスにより修飾される。
【0082】
細胞外病原体及び幾つかの細胞内病原体に関連する真菌感染症又は疾患を有する個体では、感染症又は疾患を制御するためにTH17免疫応答の有益性を達成することが一般的に望ましく、したがってこれらの実施形態では、酵母ベースの免疫療法剤は、TH17応答を増強する作用剤と同時に若しくは連続的に投与されるか、又はその代わりに、酵母は、TH17媒介性免疫応答を増強する酵母の能力を増加させるような遺伝子操作若しくは製造プロセスにより修飾される。しかしながら、真菌性疾患においてでさえ、長期的なCD8+ T細胞応答を最終的に生じさせることに対して及び炎症促進性応答の減少を可能にすることに対して有益性があり、したがって、この実施形態では、TH1応答の形成を完全に阻止することは望ましくない。1つの態様では、免疫応答をTH1媒介性応答に進行させることが望ましい場合、作用剤を療法プロトコールから除外若しくは中止することができ、TH1誘導性作用剤を投与することができ、及び/又は酵母がTH17応答を増強するように遺伝子組換え若しくは製造されていた場合、そのような様式で処理されていない酵母を追加免疫に使用することができる。他の実施形態では、TH17応答が真菌性疾患を治療するために増強されるべきである程度は、酵母ベースの免疫療法を施された際にTH17応答を開始する個体の能力に部分的に依存するであろう。個体が、一般集団よりも弱いTH17応答を示す場合、TH17増強剤の使用は、特に有用であり得る。
【0083】
本発明の方法
本発明は、酵母ベースの免疫療法を使用して免疫応答を調節する様々な方法を含む。本発明の1つの実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与し、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生及び/又は生存を調節する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与することにより、酵母ベースの免疫療法組成物の免疫療法特性を増強する方法に関する。本発明の1つの態様では、被験者は、疾患に関連する1つ又は複数の症状に関して、酵母ベースの免疫療法に対する不応答者又は部分的応答者である。実際、本明細書に記載のような、修飾された酵母ベースの免疫療法から最も利益を受ける可能性が高いのは、これらの被験者である。
【0084】
本発明の1つの実施形態は、酵母ベースの免疫療法に対するTH1媒介性免疫応答を増強する方法に関する。この方法は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)TH17 CD4+細胞の産生及び/又は生存を下方制御する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与するステップとを含む。本発明の別の実施形態は、癌を治療するか又はその1つ若しくは複数の症状を軽減する方法であって、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生及び/又は生存を下方制御する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与することとを含む方法に関する。本発明の更に別の実施形態は、ウイルス感染症を治療するか又はその1つ若しくは複数の症状を軽減する方法であって、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生及び/又は生存を下方制御する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与することとを含む方法に関する。この実施形態の1つの態様では、ウイルス感染は、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルスを含むがこれらに限定されない肝炎ウイルス感染症である。本明細書の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物単独の投与と比較して、酵母ベースの免疫療法に対するCD8 T細胞応答を増強する方法に関する。この方法は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)TH17 CD4+ T細胞の産生及び/又は生存を下方制御する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与するステップとを含む。本発明のこれらの実施形態で使用するのに好適な作用剤は、下記で詳細に記述される。
【0085】
本発明によると、TH17 T細胞は、インターロイキン−17(IL−17)並びにIL−21及びIL−22を産生するTヘルパーCD4+ T細胞のサブセットであると定義される。TH17 T細胞は、他の既知TヘルパーサブセットTh1、Th2、及びTreg T細胞とは異なるとみなされている。TH17細胞の産生及び/又は生存は、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン21(IL−21)、インターロイキン−22(IL−22)、及びインターロイキン23(IL−23)を含むがこれらに限定されない種々のサイトカイン/増殖因子と関連する。加えて、TH17の分化に関与する転写因子は、レチノイン酸受容体関連オーファン受容体アルファ(RORα)及びRORγt、並びにSTAT3である。TH17は、TGFβ、IL−6、及び恐らくはIL−1βの存在下で活性化及び分化すると考えられているが、IL−21は、TH17細胞のIL−6非依存性活性化因子であり得る。ROR−γtの活性化は、IL−23に対する受容体の発現も引き起こし、IL−23は、分化のために、より詳しくはTH17細胞(つまり、TH17系統に既に傾倒しているT細胞)の増殖及び生存のために必要であると考えられている。IL−17は、TH17により産生され、好中球の動員、活性化、及び遊走に関与する。IL−17は、T細胞初回抗原刺激を増強し、炎症促進性分子の産生を刺激する炎症促進性サイトカインでもある。インターフェロン−γ(IFN−γ)は、TH17分化の負の制御因子である。TH17細胞は、IL−17F、IL−21、及びIL−22も産生する。
【0086】
本発明の別の実施形態は、真菌感染、他の感染性疾患、及び幾つかの実施形態では癌を含むがこれらに限定されない、TH17媒介性免疫応答から利益を受ける疾患又は状態を治療する方法に関する。そのような方法は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することと、(b)TH17細胞の産生及び/又は生存を上方制御する少なくとも1つの作用剤をその被験者に投与することとを含む。本発明のこれらの実施形態で使用するのに好適な作用剤は、下記で詳細に記述される。
【0087】
本発明は、TH17 T細胞の産生及び/又は生存を調節することができる作用剤の使用を含む。本発明によると、用語「調節する」は、「制御する」と同義に使用することができ、一般的に特定の活性を上方制御又は下方制御することを指す。本明細書で使用される場合、用語「上方制御する」は、特定の活性に関して、一般的に以下のいずれかを記述するために使用することができる:誘発する、開始する、増加させる、増大させる、助長する、向上する、増強する、増幅する、促進する、又は提供する。同様に、用語「下方制御する」は、特定の活性に関して、一般的に以下のいずれかを記述するために使用することができる:低下させる、低減させる、阻害する、軽減する、減少させる、緩和する、阻止する、又は防止する。したがって例としては、TH17細胞の産生及び/又は生存を調節するのに有用な作用剤には、幾つかの実施形態では、TH17細胞の産生及び/若しくは生存を下方制御するあらゆる作用剤が含まれていてもよく、他の実施形態では、TH17細胞の産生及び/若しくは生存を上方制御するあらゆる作用剤が含まれていてもよい。同様に、例としては、TH1応答を調節するのに有用な作用剤には、幾つかの実施形態では、TH1応答を下方制御するあらゆる作用剤が含まれていてもよく、他の実施形態では、TH1応答を上方制御するあらゆる作用剤が含まれていてもよく、又はTreg及び/若しくはTH17応答を調節することによりTH1応答を調節するあらゆる作用剤が含まれていてもよい。本発明の種々の実施形態に有用な作用剤は、以下で詳細に記述される。
【0088】
本発明の種々の方法は、本発明の組成物を投与することにより疾患又は状態を治療する。本明細書で使用される場合、語句「疾患を治療する」又はその任意の変化形(例えば、「疾患が治療される」等)は、一般的に、疾患を予防すること、疾患の少なくとも1つの症状を予防すること、疾患の発症を遅延させること、疾患の1つ又は複数の症状を低減させること、疾患の出現を低減させること、及び/又は疾患の重症度を低減させることを指すことができる。例えば、癌に関して、本発明の方法は、以下の1つ又は複数をもたらすことができる:腫瘍増殖の予防、疾患発症の遅延、全身腫瘍組織量及び/若しくは腫瘍量の低減、腫瘍増殖の低減、生存の増加、器官機能の改善、並びに/又は個体の全体的な健康の改善。感染症及び他の疾患に関して、本発明の方法は、以下の1つ又は複数もたらすことができる:疾患若しくは状態の予防、感染の予防、感染により引き起こされる疾患若しくは状態の発症の遅延、生存の増加、病原体負荷の低減(例えば、ウイルス力価の低減)、個体における感染に起因する少なくとも1つの症状の低減、感染若しくは疾患に起因する器官若しくは生理学的系の損傷の低減、器官若しくは系の機能の改善、及び/又は個体の全体的な健康の改善。
【0089】
本発明の更に別の実施形態は、疾患に関連する1つ又は複数の症状に関して、酵母ベースの免疫療法に対する不応答者又は部分的応答者である被験者における、酵母ベースの免疫療法の効力を向上させる方法に関する。この方法は、TH17細胞の産生及び/又は生存を調節する少なくとも1つの作用剤を被験者に投与することを含む。投与のステップは、酵母ベースの免疫療法組成物の用量の投与前に、投与と同時に、又は投与後に実施することができ、被験者における酵母ベースの免疫療法の効力を向上させる。1つの態様では、疾患は、ウイルス疾患である。1つの態様では、疾患は、癌である。1つの態様では、作用剤は、TH17細胞の産生及び/又は生存を下方制御する。この実施形態の別の態様では、疾患は、真菌性疾患である。別の態様では、作用剤は、TH17細胞の産生及び/又は生存を上方制御する。本発明のこれらの実施形態で使用するのに好適な作用剤は、以下で詳細に記述される。
【0090】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法に対する被験者のT細胞増殖応答を調節する方法であって、TH17細胞の産生及び/又は生存を調節する作用剤を被験者に投与して、酵母ベースの免疫療法に対する被験者のT細胞増殖応答を調節することを含み、投与が、酵母ベースの免疫療法組成物の用量の投与前、投与と同時に、又は投与後である方法に関する。1つの態様では、この方法は、被験者のT細胞増殖応答を開始又は増加させる。別の態様では、この方法は、被験者のT細胞増殖応答を減少させる。本発明のこれらの実施形態で使用するのに好適な作用剤は、以下で詳細に記述される。
【0091】
理論により束縛されないが、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法に応答した被験者のT細胞増殖は、酵母ベースの免疫療法に対するTH1応答を開始する被験者の能力を示し、T細胞増殖は、TH1 T細胞の存在を示し、その一方で酵母ベースの免疫療法に応答した増殖がより低いこと又は増殖が欠如することは、TH17応答性への被験者の傾倒又は恐らくは過剰傾倒を示し、幾つかの場合では、酵母ベースの免疫療法に対するTH1応答を開始する能力の低下を示すと考える。増殖は、典型的には、被験者からT細胞を取得し、それらを、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞に曝露し、放射性同位元素又は比色検出法を使用すること等によりT細胞の増殖を測定することにより、in vitroで測定される。T細胞増殖アッセイは、当技術分野で周知である。酵母ベースの免疫療法に応答した増殖は、被験者が酵母ベースの免疫療法に応答することになるか否かを必ずしも示さず、むしろ被験者が酵母ベースの免疫療法に対してどのタイプの免疫応答を示すかを示すと考えられる(例えば、それは、被験者がTH17応答性の尺度上のどこに位置するかに関する情報を提供し、したがって、治療しようとする疾患若しくは状態、及び/又は被験者に誘発することが望まれている免疫応答のタイプに応じて、酵母ベースの免疫療法の効力の向上のために追加的な作用剤が必要であるか否かを示す)。
【0092】
本発明の更に別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物の免疫療法特性を強化する方法に関する。そのような方法は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与するステップと、(b)その被験者に第2の免疫療法組成物を投与し、第2の免疫療法組成物が、TH17細胞の産生及び/若しくは生存を上方制御し、並びに/又はTH1細胞の産生及び/若しくは生存を上方制御し、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存を下方制御するステップとを含む。本発明のこの実施形態は、免疫療法組成物及び化合物を含む種々の治療用組成物及び化合物が、本明細書に記載の酵母ベースの免疫療法組成物の天然免疫調節効果を模倣、補完、増強、追加、又は相乗効果を示し得ることを企図する。この実施形態では、この方法は、特に免疫系活性化及び/又は免疫機能に関して、類似の又は補完的な特性を有する別の組成物と組み合わせることにより、酵母ベースの免疫療法剤投与の天然効果を増強する。
【0093】
本発明の上述の実施形態のいずれかにおいて、1つの態様では、作用剤は、抗原提示細胞を標的としてもよく、又はT細胞を標的としてもよい。
本発明の他の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により誘発される免疫応答のタイプを変更又は調節するために、遺伝子操作又は製造/生産方法等によって、酵母ベースの免疫療法組成物に使用される酵母を操作することにより、細胞媒介性免疫応答を調節するか又は酵母ベースの免疫療法に対する免疫応答を調節する方法を含む。酵母を遺伝子組換えする方法を含む、本発明に有用な酵母媒体を生成する種々の方法は、以下に記載されており、それらはいずれも、本明細書に記載の結果を達成するために使用することができる。1つの態様では、そのような方法は、TH1免疫応答の上方制御及び/又はTH17免疫応答の下方制御に関する。1つの態様では、そのような方法は、TH17免疫応答の上方制御及びTH1免疫応答の下方制御に関する。別の態様では、TH17免疫応答及びTH1免疫応答は両方とも上方制御される。
【0094】
例えば、これらの実施形態では、酵母は、本明細書に記載のように、TH17応答及び/又はTH1応答を調節するのに有用な作用剤を発現するように遺伝子組換えされていてもよい。1つの態様では、そのような作用剤は、酵母ベースの免疫療法剤を生成するために使用される酵母媒体により(又は別の酵母媒体により)分泌されてもよい。1つの態様では、そのような作用剤は、酵母表面に発現されてもよい。1つの態様では、酵母細胞壁は、抗原提示細胞上の細胞表面分子と相互作用し、したがって抗原提示細胞が活性化されるか、及び/又は抗原提示細胞により発生する先天性免疫応答のタイプを調節する様式を調節する作用剤を発現するように、遺伝子操作により修飾されていてもよい。別の態様では、酵母ベースの治療剤を生成するために使用される酵母媒体(又は別の酵母媒体)は、siRNA等の作用剤を保持及び送達するように遺伝子組換えされている。1つの態様では、酵母は、酵母細胞壁の組成及び/又は流動性を修飾し、それによって酵母により活性化された抗原提示細胞により発生する先天性免疫応答のタイプに影響を及ぼす細胞壁成分(例えば、ポリサッカライド、糖タンパク質等)を露出させるか、覆い隠すか、除去するか、又は変更する条件下で増殖させてもよい。
【0095】
1つの実施形態では、本発明は、TH1媒介性免疫応答を上方制御する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を生成するのに使用される酵母が、遺伝子組み換えされているか、並びに/又は被験者にTH17免疫応答を誘導する酵母の能力を下方制御する条件下で及び/若しくは被験者にTH1免疫応答を誘導する酵母の能力を上方制御する条件下で産生される方法を含む。そのような方法は、例えば被験者が癌又はウイルス感染を有する場合に有用であってもよい。
【0096】
1つの実施形態では、本発明は、TH1媒介性免疫応答を下方制御するか又はTH17免疫応答を上方制御する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、遺伝子組換えされているか、又は被験者のTH17免疫応答を誘導する酵母の能力を上方制御する条件下で及び/若しくは被験者のTH1免疫応答を誘導する酵母の能力を低下させる条件下で産生される方法を含む。そのような方法は、例えば被験者が真菌感染症、又は幾つかの場合では癌を有する場合に、有用であってもよい。
【0097】
別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のデクチン受容体によるシグナル伝達が増加するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0098】
或いは、別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のデクチン受容体によるシグナル伝達が減少するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0099】
本発明のこれらの2つの実施形態では、デクチン受容体は、デクチン−1受容体又はデクチン−2受容体を含むことができる。1つの実施形態では、デクチン−1受容体によるシグナル伝達が低減される。別の実施形態では、デクチン−1受容体及びデクチン−2受容体の両方によるシグナル伝達が低減される。
【0100】
別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のマンノース受容体によるシグナル伝達が増加するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0101】
或いは、別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のマンノース受容体によるシグナル伝達が減少するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0102】
別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のDC−SIGN受容体によるシグナル伝達が増加するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0103】
或いは、別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞のDC−SIGN受容体によるシグナル伝達が減少するように酵母細胞壁を修飾する条件下で産生される方法に関する。
【0104】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母の細胞壁表面のβ−グルカンの露出を低減させる又は除去する条件下で産生される方法に関する。
【0105】
或いは、本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母の細胞壁表面のβ−グルカンの露出を増加させる条件下で産生される方法に関する。
【0106】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母の細胞壁表面のマンノース又はその誘導体の露出を低減させる又は除去する条件下で産生される方法に関する。
【0107】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、酵母の細胞壁表面のマンノース又はその誘導体の露出を低減させる又は除去する条件下で産生される方法に関する。
【0108】
本発明の更に別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、TH17媒介性免疫応答を誘導する酵母の能力を下方制御する条件下で産生される(例えば、増殖又は製造される)方法に関する。
【0109】
或いは、本発明は、酵母ベースの免疫療法組成物により生じる免疫応答を調節する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を被験者に投与することを含み、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母が、TH17媒介性免疫応答を誘導する酵母の能力を上方制御する条件下で産生される方法も含む。
【0110】
本発明は、TH1媒介性免疫応答を増強する酵母ベースの免疫療法組成物を産生する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物が投与される被験者でTH17媒介性応答を下方制御するのに効果的なように、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母を遺伝子操作することを含む方法も含む。酵母を遺伝子組換えするための種々の方法は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の作用剤の酵母による発現(例えば、組換え発現)をもたらす方法が企図される。
【0111】
本発明の別の実施形態は、TH1媒介性免疫応答を増強する酵母ベースの免疫療法組成物を産生する方法であって、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母を、酵母ベースの免疫療法組成物が投与される被験者でTH17媒介性応答を下方制御するのに効果的な条件下で増殖又は製造(産生)することを含む方法を含む。例えば、中性pHで酵母を増殖すること等により、酵母細胞壁の外表面の流動性及び/又は組成を修飾するように酵母を増殖する方法は、本発明のこの実施形態により包含される。
【0112】
本発明の方法に有用な作用剤
種々の作用剤が、本発明の方法で使用するために本明細書で企図される。作用剤は、単一の組成物として、酵母ベースの免疫療法剤と共に若しくは同時に投与される別々の組成物として、又は酵母ベースの免疫療法剤の前に、後で、若しくは交互に、若しくは他の特別なスケジュールで投与される組成物として、本発明の方法で使用される酵母ベースの免疫療法剤と組み合わされる。そのような作用剤には、本明細書に記載のように酵母ベースの免疫療法組成物と共に投与することができ、所望の調節効果を示すことができるあらゆる(化学的又は生物学的)部分(moiety)が含まれる。例えば、作用剤には以下のものが含まれ得るがこれらに限定されない:タンパク質、ペプチド、抗体若しくはその抗原結合部分、低分子(例えば、薬物若しくは化学化合物);ポリヌクレオチド若しくは核酸結合剤(例えば、プローブ、siRNA、アンチセンス分子、リボザイム)、可溶性リガンド若しくはその受容体の生物学的アゴニスト若しくはアンタゴニスト、細胞表面分子/受容体の生物学的アゴニスト若しくはアンタゴニスト;脂質若しくはその誘導体、ポリサッカライド及びその誘導体、又はアプタマー、並びにそのような作用剤の相同体若しくは誘導体、及びそのような作用剤の組み合わせ。1つの実施形態では、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母は、作用剤を保持又は発現するように操作されている。作用剤には、TH17細胞の産生及び/若しくは生存を調節する作用剤、並びに/又はTH1細胞の産生及び/若しくは生存を調節する作用剤、並びに/又はTregの産生及び/若しくは生存を調節する作用剤が含まれるがこれらに限定されない。例えば、そのような作用剤には、下記でより詳細に記載されている作用剤のいずれかが含まれるがこれらに限定されない:限定ではないが、サイトカイン、ケモカイン、抗体及びその抗原結合性断片(抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、抗ケモカイン抗体を含むがこれらに限定されない)、受容体、リガンド、ポリサッカライド、免疫調節物質、抗炎症剤、炎症促進剤、ビタミン、核酸結合剤、融合タンパク質、そのような作用剤のいずれかの相同体若しくは誘導体、又は他のワクチン若しくは免疫療法化合物、作用剤若しくは組成物、並びに他の生物学的応答調節剤。
【0113】
本発明の1つの態様では、酵母ベースの免疫療法剤と併用する本発明の方法に有用な作用剤は、TH17細胞の産生及び/又は生存を下方制御することが可能である。TH17細胞の産生又は生存を下方制御するのに有用な1つのタイプの作用剤には、TH17 T細胞の発生、活性化、分化、及び/若しくは生存と関連するサイトカイン又はその受容体の発現並びに/又は活性を下方制御する作用剤が含まれるがこれらに限定されない。そのようなサイトカインには、IL−1(IL−1βを含む)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/又はIL−23が含まれるがこれらに限定されない。TH17細胞の産生又は生存を下方制御するのに有用な別のタイプの作用剤には、IL−25又はIL−27等の、TH17細胞の発生、活性化、分化、及び/若しくは生存の阻害と関連するサイトカイン又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。TH17細胞の産生及び/又は生存を下方制御するのに有用な他の好適な作用剤には、免疫調節物質、抗真菌剤、抗生物質、抗炎症剤、及び限定ではないがビタミンA又はビタミンDを含むビタミンを含む低分子が含まれるがこれらに限定されない。
【0114】
本発明の別の態様では、本発明の方法に有用な作用剤は、TH1の発生、活性化、分化、及び/又は生存を上方制御することが可能である。そのような作用剤には、I型インターフェロン(例えば、IFN−α)、II型インターフェロン(例えば、IFN−γ)、IL−12、抗炎症剤、CD40L、抗CD40、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質、及び/又はIMP321(可溶性形態のLAG3に由来するT細胞免疫刺激因子)が含まれ得るがこれらに限定されない。これらの作用剤は、単独で使用してもよく、又はTH17産生若しくは生存を上方制御若しくは下方制御する作用剤等の、本明細書に記載の他の作用剤と組み合わせて使用してもよく、幾つかの実施形態では、そのような作用剤は、同一であってもよい。
【0115】
本発明の別の態様では、本発明の方法に有用な作用剤は、TH17の産生及び/又は生存を上方制御することが可能である。TH17細胞の産生又は生存を上方制御するのに有用な1つのタイプの作用剤には、TH17 T細胞の発生、活性化、分化、及び/若しくは生存と関連するサイトカイン又はその受容体の発現並びに/又は活性を上方制御する(増加させることに加えて、開始又は維持することが含まれていてもよい)作用剤が含まれ、そのようなサイトカインには、IL−1、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/又はIL−23が含まれるがこれらに限定されない。TH17細胞の産生又は生存を上方制御するのに有用な別のタイプの作用剤には、IL−25又はIL−27を含むがそれらに限定されないもの等の、TH17細胞の発生、活性化、分化、及び/又は生存の阻害と関連するサイトカイン又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれる。TH17細胞の産生及び/又は生存を上方制御するための他の好適な作用剤には、真菌生成物及び炎症促進剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0116】
本発明の別の態様では、本発明の方法に有用な作用剤は、TH1の発生、活性化、分化、及び/又は生存を下方制御することが可能である。そのような作用剤には、I型インターフェロン(例えば、IFN−α)、II型インターフェロン(例えば、IFN−γ)、又はIL−12の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ得るがこれらに限定されない。これらの作用剤は、単独で使用してもよく、又はTH17の産生若しくは生存を上方制御若しくは下方制御する作用剤等の、本明細書に記載の他の作用剤と組み合わせて使用してもよく、幾つかの実施形態では、そのような作用剤は、同一であってもよい。
【0117】
本発明の別の態様では、本発明の方法に有用な作用剤は、酵母ベースの免疫療法剤のTH17、TH1、及びTreg調節能力のいずれか1つ又は複数に関して、酵母ベースの免疫療法剤の1つ又は複数の天然免疫調節効果について、模倣、補完、増強、追加、相乗効果を示すことができるか、又は幾つかの態様では、阻害若しくは阻止することができるあらゆる作用剤である。そのような作用剤には、(a)抗原の交差提示を誘導することにより及び/若しくはCD8 T細胞の発生及び/若しくは活性化を支援するサイトカインを誘導することによりCD8 T細胞を発生させる作用剤、(b)IL−17を産生するTH17細胞の産生及び/若しくは生存を支援若しくは増強する作用剤、(c)TH1の産生及び生存を支援若しくは増強する作用剤、並びに/又は(d)Treg活性を阻害する作用剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0118】
そのような作用剤には、サイトカイン(TH17及び/又はTH1免疫応答の調節に使用するための、本明細書で以前に記載のもの等)、ケモカイン、ホルモン、脂質誘導体、ペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、低分子薬、抗体及びその抗原結合性断片(抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、抗ケモカイン抗体を含むがこれらに限定されない)、ビタミン、ポリヌクレオチド、核酸結合部分、アプタマー、及び増殖調節因子が含まれ得るがこれらに限定されない。そのような作用剤には、限定ではないが、TH17応答、TH1応答、及び/又はTreg応答を調節する作用剤が含まれる。幾つかの好適な作用剤には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:IL−1又はIL−1若しくはIL−1Rのアゴニスト、抗IL−1又は他のIL−1アンタゴニスト;IL−6又はIL−6若しくはIL−6Rのアゴニスト、抗IL−6又は他のIL−6アンタゴニスト;IL−12又はIL−12若しくはIL−12Rのアゴニスト、抗IL−12又は他のIL−12アンタゴニスト;IL−17又はIL−17若しくはIL−17Rのアゴニスト、抗IL−17又は他のIL−17アンタゴニスト;IL−21又はIL−21若しくはIL−21Rのアゴニスト、抗IL−21又は他のIL−21アンタゴニスト;IL−22又はIL−22若しくはIL−22Rのアゴニスト、抗IL−22又は他のIL−22アンタゴニスト;IL−23又はIL−23若しくはIL−23Rのアゴニスト、抗IL−23又は他のIL−23アンタゴニスト;IL−25又はIL−25若しくはIL−25Rのアゴニスト、抗IL−25又は他のIL−25アンタゴニスト;IL−27又はIL−27若しくはIL−27Rのアゴニスト、抗IL−27又は他のIL−27アンタゴニスト;I型インターフェロン(IFN−αを含む)又はI型インターフェロン若しくはその受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニスト;II型インターフェロン(IFN−γを含む)又はII型インターフェロン若しくはその受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニスト;抗CD40、CD40L、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)タンパク質及び/又はIMP321(可溶性形態のLAG3に由来するT細胞免疫刺激因子)、抗CTLA−4抗体(例えば、アネルギー性T細胞を放出する);T細胞同時刺激物質(例えば、抗CD137、抗CD28、抗CD40);アレムツズマブ(例えば、CamPath(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(例えば、ONTAK(商標));抗CD4;抗CD25;抗PD−1、抗PD−L1、抗PD−L2;FOXP3を阻止する(例えば、活性/死滅CD4+/CD25+ T制御細胞を抑制する)作用剤;Flt3リガンド、イミキモド(Aldara(登録商標))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);果粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、サルグラモスチム(Leukine(商標));限定ではないがプロラクチン及び成長ホルモンを含むホルモン;TLR−2アゴニスト、TLR−4アゴニスト、TLR−7アゴニスト、及びTLR−9アゴニストを含むがこれらに限定されないToll様受容体(TLR)アゴニスト;TLR−2アンタゴニスト、TLR−4アンタゴニスト、TLR−7アンタゴニスト、及びTLR−9アンタゴニストを含むがこれらに限定されないTLRアンタゴニスト;COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ、NSAIDS)、グルココルチコイド、スタチン、及びサリドマイド、及びサリドマイドの構造的及び機能的な類似体であるIMiD(商標)を含むがこれらに限定されないそれらの類似体(例えば、REVLIMID(登録商標)(レナリドマイド)、ACTIMID(登録商標)(ポマリドマイド))を含む抗炎症剤及び免疫調節物質;真菌若しくは細菌成分又は任意の炎症促進性サイトカイン若しくはケモカイン等の炎症促進剤;ウイルスに基づくワクチン、細菌に基づくワクチン、又は抗体に基づくワクチンを含むがこれらに限定されない免疫療法ワクチン;並びに任意の他の免疫調節物質、免疫強化物質、抗炎症剤、炎症促進剤、並びに抗原提示細胞の若しくはTH17、TH1、及び/若しくはTreg細胞の数を調節するか、活性化状態を調節するか、及び/又は生存を調節する任意の作用剤。そのような作用剤のあらゆる組み合わせが本発明により企図されており、酵母ベースの免疫療法剤と併用される、又はあるプロトコールで(例えば、同時に、連続的に、又は他の形式で)酵母ベースの免疫療法剤と共に投与されるそのような作用剤はいずれも、本発明により包含される組成物である。そのような作用剤は、当技術分野で周知である。これらの作用剤は、単独で使用してもよく、又はTH17若しくはTH1産生若しくは生存を上方制御若しくは下方制御する作用剤等の、本明細書に記載の他の作用剤と組み合わせて使用してもよく、幾つかの実施形態では、そのような作用剤は、同一であってもよい。
【0119】
本発明は、以下の指定された組合せのいずれかを明示的に含むがこれらに限定されない:酵母ベースの免疫療法剤及びIL−1又はIL−1若しくはIL−1Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−1又は他のIL−1アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−6又はIL−6若しくはIL−6Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−6又は他のIL−6アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−12又はIL−12若しくはIL−12Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−12又は他のIL−12アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−17又はIL−17若しくはIL−17Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−17又は他のIL−17アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−21又はIL−21若しくはIL−21Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−21又は他のIL−21アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−22又はIL−22若しくはIL−22Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−22又は他のIL−22アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−23又はIL−23若しくはIL−23Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗IL−23又は他のIL−23アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−25又はIL−25若しくはIL−25Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗−IL−25又は他のIL−25アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIL−27又はIL−27若しくはIL−27Rのアゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び抗−IL−27又は他のIL−27アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びI型インターフェロン(IFN−αを含む)又はI型インターフェロン若しくはその受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びII型インターフェロン(IFN−γを含む)又はII型インターフェロン若しくはその受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びIII型インターフェロン(IFN−λ1、IFN−λ2、IFN−λ3を含む)又はIII型インターフェロン若しくはその受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法及び抗CD40;酵母ベースの免疫療法剤及びCD40L;酵母ベースの免疫療法剤及びLAG3又はIMP321;酵母ベースの免疫療法剤及び抗CTLA−4;酵母ベースの免疫療法剤及び抗CD137;酵母ベースの免疫療法剤及び抗CD28;酵母ベースの免疫療法剤及びアレムツズマブ(例えば、CamPath(登録商標));酵母ベースの免疫療法剤及びデニロイキンジフチトクス(例えば、ONTAK(商標));酵母ベースの免疫療法剤及び抗CD4;酵母ベースの免疫療法剤及び抗CD25;酵母ベースの免疫療法剤及び抗PD−1;酵母ベースの免疫療法剤及び抗PD−L1;酵母ベースの免疫療法剤及び抗PD−L2;酵母ベースの免疫療法剤、及びFOXP3を阻止する1つ又は複数の作用剤;酵母ベースの免疫療法剤及びFlt3リガンド;酵母ベースの免疫療法剤及びビタミンA;酵母ベースの免疫療法剤及びビタミンD;酵母ベースの免疫療法剤及びイミキモド(Aldara(登録商標));酵母ベースの免疫療法剤及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);酵母ベースの免疫療法剤及び顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);酵母ベースの免疫療法剤及びサルグラモスチム(Leukine(商標));酵母ベースの免疫療法剤及びプロラクチン;酵母ベースの免疫療法剤及び成長ホルモン;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−2アゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−4アゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−7アゴニスト;並びに酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−9アゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−2アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−4アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−7アンタゴニスト;並びに酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のTLR−9アンタゴニスト;酵母ベースの免疫療法剤及びセレコキシブ;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のNSAID;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のグルココルチコイド;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のスタチン;酵母ベースの免疫療法剤及びサリドマイド;酵母ベースの免疫療法剤及びREVLIMID(登録商標)(レナリドマイド);酵母ベースの免疫療法剤及びACTIMID(登録商標)(ポマリドマイド);酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数の真菌成分;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数の細菌成分;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数のウイルスに基づくワクチン;酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数の細菌に基づくワクチン;或いは酵母ベースの免疫療法剤及び1つ又は複数の抗体に基づくワクチン。
【0120】
本発明の1つの実施形態では、組成物は、生物学的応答修飾物質化合物、又はそのような調節物質を産生する能力(つまり、そのような調節物質をコードする核酸分子を有する酵母媒体を形質移入することによる)を含むことができ、1つの態様では、そのような生物学的応答修飾物質は、TH17、TH1、及び/又はTreg免疫応答を調節するための本発明に有用な作用剤と同一であってもよい。例えば、酵母媒体は、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つの生物学的応答修飾物質化合物で形質移入若しくは負荷することができるか、又は本発明の組成物は、少なくとも1つの生物学的応答修飾物質と共に投与することができる。生物学的応答修飾物質には、免疫応答を調節することができ、免疫調節化合物と呼ばれる場合があるアジュバント及び他の化合物、並びに酵母ベースの免疫療法剤等の、別の化合物又は作用剤の生物活性を修飾する化合物が含まれ、そのような生物活性は免疫系効果に限定されない。特定の免疫調節化合物は、防御的免疫応答を刺激することができる一方で、他の免疫調節化合物は、有害免疫応答を抑制することができ、免疫調節剤が、所与の酵母ベースの免疫療法剤との組み合わせで有用であるか否かは、治療又は予防しようとする疾患状態又は状態に、及び/又は治療しようとする個体に、少なくとも部分的に依存する場合がある。特定の生物学的応答修飾物質は、細胞媒介性免疫反応を優先的に増強する一方で、他の生物学的応答修飾物質は、体液性免疫応答を優先的に増強する(つまり、体液性免疫と比較して、細胞媒介性のレベルが増加した免疫応答を刺激することができ、又はその逆もできる)。特定の生物学的応答修飾物質は、TH17、TH1、及び/又はTregに対する酵母ベースの免疫療法剤の効果等に関して、酵母ベースの免疫療法剤の生物学的特性と共通の1つ又は複数の特性を有するか、又は酵母ベースの免疫療法剤の生物学的特性を増強又は補完する。免疫応答の刺激又は抑制を測定する技術、並びに細胞媒介性免疫反応と体液性免疫応答を区別する技術は、多くが当業者に知られている。
【0121】
インターロイキン−17(IL−17、IL−17Aとも呼ばれる)及び関連ファミリーメンバー、IL−17Fは、TH17としても知られているTHサブセットにより、並びにナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γδT細胞、好中球、及び好酸球により産生される。IL−17ファミリーサイトカインは、細胞外病原体及び幾つかの細胞内病原体に対する免疫応答に関連する炎症促進性サイトカインであり、マトリックス破壊を誘導し、T細胞初回抗原刺激を増強し、炎症促進性分子の産生を刺激し、TNF−α、IL−1β、IL−6、GM−CSF、及びG−CSFを含むサイトカイン、並びに種々のケモカインを発現する細胞を誘導する。IL−17及びIL−17Fは、好中球の動員、活性化、及び遊走にも関与する。
【0122】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−17又はIL−17及びIL−17Rアンタゴニストを含むその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−17又はIL−17及びIL−17Rアゴニストを含むその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−17及びIL−17受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−17アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−17A及びIL−17Fの核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号2及び配列番号3(ヒトIL−17A)、並びにそれぞれ配列番号4及び配列番号5(ヒトIL−17F)により表されている。加えて、IL−17Aに対する抗体、例えば抗ヒトIL−17A(eBioscience,Inc.社製)が産生されており、抗体及び可溶性受容体を含むIL−17A及びIL−17Fの種々のアンタゴニストが記述されている(例えば、国際公開第2009/136286号、国際公開第2007/038703号、国際公開第2007/147019号、国際公開第2009/082624号、国際公開第2008/134659号、又は国際公開第2008/118930号を参照)。IL−17Fにも結合するIL−17の同系受容体は、IL−17RAである(Moseleyら、2003年、Cytokine Growth Factor Rev.14巻:155〜74頁)。
【0123】
インターロイキン−6(IL−6)は、炎症促進性サイトカインであり、先天性免疫系のパターン認識受容体(PRR)に結合する、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれる特定微生物分子に応答して、先天性免疫系の細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、単球、マスト細胞、B細胞)により分泌される。IL−6は、IL−6Rαリガンド結合鎖及びシグナル伝達gp130成分で構成されるその受容体に結合し、受容体複合体は、種々の転写因子、ヤヌスキナーゼ及びSTATにより信号伝達カスケードを開始させる。(例えば、Heinrichら、(2003年)Biochem.J.374巻:1〜20頁;又はHeinrichら、(1998年)Biochem.J.334巻:297〜314頁を参照)。
【0124】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−6やIL−6Rのアンタゴニスト等の、IL−6又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−6やIL−6Rのアゴニスト等の、IL−6又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−6及びIL−6受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−6アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−6の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号6及び配列番号7により表されている。加えて、IL−6及びその受容体に対する抗体が産生されており、例えばOPR−003、完全ヒト抗インターロイキン−6(Vaccinex社製);ヒト化抗ヒトIL−6受容体(IL−6R)抗体、MRA(Miharaら、2001年、Clinical Immunol.98巻(3号);319〜326頁);抗ヒトIL−6(eBioscience,Inc.社製);CNTO328(cCLB8)、IL−6に対するヒトマウスキメラMAb(Zakiら、International Journal of Cancer、111巻(4号):592〜595頁、2004年);国際公開第2009/140348号;国際公開第2008/019061号である。IL−6のアゴニスト及びアンタゴニストも記述されている(例えば、国際公開第2009/095489号、国際公開第2009/060282号、国際公開第2008/071685号を参照)。
【0125】
IL−21は、TH17細胞を含む活性化T細胞及びNKT細胞により産生される炎症促進性サイトカインであり、ナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞毒性T細胞の活性を制御することができ、並びに活性化B細胞の増殖及びアイソタイプクラス切替の役割を果たす。例えば、Brandtら、(2007年)Cytokine Growth Factor Rev.18巻(3−4号):223〜32頁、又はLeonard及びSpolski R.2005年、Nat.Rev.Immunol.5巻:688〜98頁、又はKornら、Annu.Rev.Immuno.、2009年、27巻:485〜517頁を参照されたい。IL−21は、TGFβと共に、IL−6及びTGFβの組み合わせの代替経路としてTH17細胞の分化を誘導することが示されており、したがってIL−6が制限されている場合に、正のフィードバックをTH17分化にもたらし、並びにTH17前駆体の維持及び増幅を支援することができる。IL−21は、RORγtの発現も誘導する。IL−21受容体は、I型サイトカイン受容体であり、IL−2及びIL−15受容体と共通のガンマ鎖を共有する。
【0126】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−21やIL−21Rのアンタゴニスト等の、IL−21又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−21やIL−21Rのアゴニスト等の、IL−21又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−21及びIL−21受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−21アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−21の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号8及び配列番号9により表されている。加えて、完全ヒト抗IL−21モノクローナル抗体(IL−21 mAb)(例えば、eBioscience,Inc.社製の抗ヒトIL−21;国際公開第2007/111714号;国際公開第2009/047360号を参照)を含む、IL−21に対する抗体が産生されており、IL−21及びIL−21受容体のアンタゴニストが記述されている(例えば、国際公開第2007/114861号;国際公開第2009/143526号;国際公開第2009/132821号;国際公開第2009/100035号;国際公開第2008/074863号;国際公開第2008/049920号を参照)。
【0127】
IL−22は、最終分化したTH17細胞により分泌される炎症促進性サイトカインであり、上皮細胞増殖及び抗微生物タンパク質産生の誘導を含む、宿主防御の役割を果たす。IL−22は、インターフェロン受容体関連タンパク質CRF2〜4及びIL22Rによりシグナルを伝達する。例えば、Xieら、(2000年)Journal of Biological Chemistry、275巻、31335〜31339頁を参照されたい。
【0128】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−22やIL−22Rのアンタゴニスト等の、IL−22又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−22やIL−22Rのアゴニスト等の、IL−22又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−22及びIL−22受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−22アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−22の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号10及び配列番号11により表されている。加えて、IL−22に対する抗体が産生されており(例えば、eBioscience,Inc.社製の抗ヒトIL−22、又は国際公開第2007/098170号を参照)、IL−22及びIL−22受容体のアンタゴニストが記述されている(例えば、国際公開第2007/126439号を参照)。
【0129】
IL−23は、p40サブユニット(IL−12と共有)及びp19サブユニット(IL−23アルファサブユニット)で構成されるヘテロ二量体サイトカインである。IL−23は、マトリックスメタロプロテアーゼMMP9の上方制御を促進し、血管新生を増加させ、CD8+ T細胞浸潤を低減し、TH17細胞の完全で持続的な分化に必要である。IL−23は、TH17細胞の安定化及び生存に寄与することができ、炎症促進性サイトカイン発現を促進することもできる。IL−23は、IL12のベータ1サブユニット(IL12RB1)及びIL23特異的サブユニット、IL23Rにより形成されるIL23受容体に結合する。例えば、Langowskiら、(2006年)Nature 442巻(7101):461〜5頁;Kiklyら、(2006年)Curr.Opin.Immunol.18巻(6号):670〜5頁;Oppmannら、(2000年)Immunity 13巻(5号):715〜25頁を参照されたい。
【0130】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−23やIL−23Rのアンタゴニスト等の、IL−23又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−23やIL−23Rのアゴニスト等の、IL−23又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−23及びIL−23受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−23アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−23 p19及びp40サブユニットの核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号12及び配列番号13(p19)、並びにそれぞれ配列番号14及び配列番号15(p40サブユニット)により表されている。抗体を含む、IL−23及びIL−23受容体のアゴニスト及びアンタゴニストが記述されている(例えば、eBioscience,Inc.社製の抗ヒトIL−23;国際公開第2009/100035号;国際公開第2007/147019号;国際公開第2009/082624号;国際公開第2008/134659号を参照)。
【0131】
IL−25は、サイトカインのIL−17ファミリー(IL−17Eとしても知られている)に属するサイトカインであり、TH2関連サイトカインを誘導し、慢性炎症を制限する。IL−25は、TH17細胞機能を阻害する。例えば、Kleinschekら、J Exp Med 2007年;204巻:161〜170頁;Owyangら、J Exp Med 2006年;203巻:843〜849頁を参照されたい。
【0132】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−25やIL−25Rのアンタゴニスト等の、IL−25又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−25やIL−25Rのアゴニスト等の、IL−25又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−25及びIL−25受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−25アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−25の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらの転写変異体のヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号16及び配列番号17により表されている。加えて、IL−25に対する抗体が記述されており、それらには抗体が含まれる(例えば、国際公開第2008/129263号を参照)。
【0133】
IL−27は、IL−12ファミリーのメンバーであり、先天性免疫系の細胞により産生されるサイトカインである。IL−27は、TH1応答を増強することが示されており、抗炎症特性を有する。IL−27は、TH1応答を増強するその能力に依存せずにTH17応答を阻害することが可能であることが示されている(例えば、Battenら、2006年、Nat.Immunol.7巻:929〜36頁;Stumhoferら、2006年、Nat.Immunol.7巻:937〜45頁を参照)。
【0134】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−27やIL−27Rのアンタゴニスト等の、IL−27又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−27やIL−27Rのアゴニスト等の、IL−27又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−27及びIL−27受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−27アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−27の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号18及び配列番号19により表されている。IL−27及びIL−27受容体のアゴニスト及びアンタゴニストが記述されており、それらには抗体が含まれる(例えば、国際公開第2008/070097号;国際公開第2008/025032号;国際公開第2008/025033号を参照)。
【0135】
IL−1βは、感染に対する免疫防御に関与する炎症促進性サイトカインである。IL−1βは、マクロファージ、単球、及び樹状細胞により産生される。例えば、Dinarello(1994年)Faseb J.8巻(15号):1314〜25頁を参照されたい。
【0136】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−1βやIL−1βRのアンタゴニスト等の、IL−1β又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−1βやIL−1βRのアゴニスト等の、IL−1β又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−1β及びIL−1β受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−1βアゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−1βの核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、それらのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号20及び配列番号21により表されている。IL−1β及びIL−1β受容体のアゴニスト及びアンタゴニストが記述されており、それらには抗体が含まれる(例えば、国際公開第2007/050607号を参照)。
【0137】
IL−12は、TH1細胞の分化の役割を果たし、DCを含む活性化APCにより産生されるサイトカインである。IL−12は、p35及びp40と表記される2つのサブユニットで形成される。p40は、p19と組み合わせるとサイトカインIL−23を形成するサブユニットでもある(上記を参照)。
【0138】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、IL−12やIL−12Rのアンタゴニスト等の、IL−12又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、IL−12やIL−12Rのアゴニスト等の、IL−12又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、IL−12及びIL−12受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なIL−12アゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。IL−12の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、そのp35サブユニットのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号22及び配列番号23により表されている(p40サブユニットの核酸及びアミノ酸配列は、上述されており、本明細書では配列番号14及び配列番号15により表されている)。IL−12及びIL−12受容体のアゴニスト及びアンタゴニストが記述されており、それらには抗体が含まれる(例えば、国際公開第2008/079359号;国際公開第2006/124662号;国際公開第2005/086835号を参照)。
【0139】
TGFβは、多種多様な細胞の増殖、細胞分化、及び他の機能を制御する、少なくとも3つのアイソフォームが存在するサイトカインである。TGFβは、TH17及びTreg細胞の両方の活性化及び分化を指図する。TH17活性化及び分化に関して、TGFβは、IL−6及び代替的にはIL−21及び恐らくは他のサイトカインと協同して指図する。TGF−βは、未感作CD4+ T細胞におけるIL−17の初期誘導及びIL−23Rの誘導の両方に必要であり、TH17の成熟化を更に促進する。
【0140】
本発明の方法に有用な作用剤には、幾つかの態様では、TGFβやTGFβRのアンタゴニスト等の、TGFβ又はその受容体の発現又は活性を下方制御する作用剤が含まれ、他の態様では、TGFβやTGFβRのアゴニスト等の、TGFβ又はその受容体の発現又は活性を上方制御する作用剤が含まれる。そのような作用剤は、TGFβ及びTGFβ受容体の構造及び機能に関する知識を踏まえて、産生及び/又は選択することができ、様々なTGFβアゴニスト及びアンタゴニストが、当技術分野で知られている。TGFβ(アイソフォーム1)の核酸配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知であり、そのヒト配列は、本明細書では、それぞれ配列番号24及び配列番号25により表されている。TGFβ及びTGFβ受容体のアゴニスト及びアンタゴニストが記述されており、それらには抗体が含まれる(例えば、国際公開第2005/113811号を参照)。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「インターフェロン」は、典型的には、免疫系の細胞により及び幅広く多様な細胞により産生されるサイトカインを指す。インターフェロンは、宿主細胞内のウイルス複製を阻害し、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージを活性化し、リンパ球に対する抗原提示を増加させ、ウイルス感染に対する宿主細胞の耐性を誘導することにより、免疫応答を支援する。I型インターフェロンには、限定ではないが、インターフェロン−αが含まれる。II型インターフェロンには、限定ではないが、インターフェロン−γが含まれる。本発明の方法の幾つかに有用なインターフェロンには、インターフェロン−α2を含む、インターフェロン−α等の任意のI型インターフェロン、インターフェロン−γを含む任意のII型インターフェロン、又はインターフェロン−λ1、インターフェロン−λ2、若しくはインターフェロン−λ3を含む任意のIII型インターフェロンが含まれ、1つの態様では、任意のインターフェロンのより長期持続型が企図されており、それらには、ペグ化インターフェロン、インターフェロン融合タンパク質(アルブミンに融合されたインターフェロン)、及びインターフェロンを含む放出制御製剤(例えば、ミクロスフェア中のインターフェロン又はポリアミノ酸ナノ粒子を有するインターフェロン)が含まれるが、それらに限定されない。
【0142】
上記で考察したように、本発明に有用な作用剤には、本明細書に記載のように酵母ベースの免疫療法組成物と共に投与することができ、TH細胞に対して所望の調節効果を示すあらゆる(化学的又は生物学的)部分が含まれていてもよい。例えば、作用剤には、タンパク質、ペプチド、抗体若しくはその抗原結合部分、低分子(例えば、薬物又は化学化合物);siRNA、アンチセンス分子、リボザイム、サイトカイン若しくはその受容体の生物学的アゴニスト若しくはアンタゴニスト、又はアプタマーが含まれるがこれらに限定されない。1つの実施形態では、酵母ベースの免疫療法組成物を産生するのに使用される酵母は、作用剤を保持又は発現するように操作されている。作用剤には、所与のタンパク質若しくはペプチド又はそのドメインのアゴニスト及びアンタゴニストが含まれていてもよい。本明細書で使用される場合、「アゴニスト」は、限定ではないが、低分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合剤等を含む、受容体又はリガンドに結合し応答を生じさせる又は引き起こす任意の化合物又は作用剤であり、それらには、受容体に結合する天然物質又はリガンドの作用を模倣する作用剤が含まれていてもよい。「アンタゴニスト」は、限定ではないが、低分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸結合剤等を含む、アゴニストの作用を阻止又は阻害又は低減させる任意の化合物又は作用剤である。
【0143】
本発明による作用剤として有用なタンパク質及びペプチドには、所望の機能、例えばTH17、TH1、及び/又はTregの産生及び/又は生存の上方制御又は下方制御を示す任意のタンパク質又はペプチドが含まれていてもよい。例えば、有用なタンパク質又はペプチドには、サイトカイン及びサイトカイン受容体、その部分、又はそのアゴニスト若しくはアンタゴニスト、抗体若しくはその部分、又は阻止ペプチドが含まれ得るがこれらに限定されない。タンパク質及びペプチドには、可溶性不活型サイトカイン及び/又はそれらの受容体が含まれていてもよい。
【0144】
抗体は、免疫グロブリンドメインを含むことを特徴とし、したがってタンパク質の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。本発明に有用な抗体には、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、二価及び一価抗体、二重特異的又は多重特異的抗体、そのような抗体を含有する血清、様々な程度に精製された抗体、並びに全抗体の任意の機能的等価物が含まれる。抗体には、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び完全ヒト抗体、又はそれらの機能的な部分又は等価物が含まれていてもよい。単離された抗体には、そのような抗体又は様々な程度に精製された抗体を含有する血清が含まれていてもよい。本発明の全抗体は、ポリクローナルであってもよく又はモノクローナルであってもよい。或いは、1つ又は複数の抗体ドメインが切断され又は欠失している抗原結合断片(抗原結合部分)等の全抗体の機能的等価物(例えば、Fv、Fab、Fab’、又はF(ab)2断片)、並びに単鎖抗体又は複数のエピトープに結合することができる抗体(例えば、二重特異的抗体)又は複数の異なる抗原に結合することができる抗体(例えば、二重特異的又は多重特異的抗体)を含む遺伝子操作された抗体又はその抗原結合断片も、本発明で使用することができる。
【0145】
本発明の遺伝子操作された抗体には、抗体可変領域及び/又は定常領域をコードするDNAの操作及び再発現を含む標準的組換えDNA技術により産生されたものが含まれる。特定の例には、抗体のVH及び/又はVLドメインがその抗体の残りとは異なる供給源に由来するキメラ抗体、並びに少なくとも1つのCDR配列及び任意に少なくとも1つの可変領域フレームワークアミノ酸が1つの供給源に由来し、可変領域及び定常領域(該当する場合)の残りの部分が、異なる供給源に由来するCDR移植抗体(及びその抗原結合断片)が含まれる。キメラ及びCDR移植抗体の構築は、例えば、欧州特許出願公開第0194276号、欧州特許出願公開第0239400号、欧州特許出願公開第0451216号、及び欧州特許出願公開第0460617号に記載されている。
【0146】
ヒト化抗体は、当技術分野で公知の様々な方法を使用して産生することができ、それらには、キメラ抗体(例えば、ヒト−マウス)を生成し、その後選択的に突然変異を誘発させてより完全なヒト配列にすることを含む、完全ヒト化又は部分的ヒト(キメラ)抗体を生成するための組換えDNA技術の使用(例えば、Norderhaugら、1997年、J Immunol Methods 204巻(1号):77〜87頁);ヒト抗体スキャフォールドへのヒトCDR領域の挿入(例えば、Kashmiriら、2005年、Methods 36巻(1号):25〜34頁;又はHouら、2008年、J Biochem 144巻(1号):115〜20頁);又はファージディスプレイ法が含まれるが、それらに限定されない。ヒト抗体は、例えば、標的タンパク質又はペプチドでヒトを免疫することにより、又は特定の疾患若しくは感染症を有し、抗体を発生させる患者から血清を収集することにより産生することもでき、それらには、ヒトにより産生される血清に由来するモノクローナル抗体が含まれる(例えば、Stacyら、2003年、J Immunol Methods 283巻(1−2号):247〜59頁)。
【0147】
一般的に、抗体の産生では、例えば、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット、又はニワトリ等であるがこれらに限定されない好適な実験動物を、それに対する抗体が所望である抗原に曝露する。典型的には、動物は、動物に注射される有効量の抗原で免疫される。抗原の有効量とは、動物による抗体産生を誘導するために必要とされる量を指す。その後、所定の期間にわたって動物の免疫系を応答させる。免疫系が抗原に対する抗体を産生していることが判明するまで、免疫プロセスを繰り返すことができる。抗原に特異的なポリクローナル抗体を得るために、所望の抗体を含有する動物から血清を採取する(又は、ニワトリの場合には、抗体は卵から収集してもよい)。そのような血清は、試薬として有用である。ポリクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウムで血清を処理することにより、血清(又は卵)から更に精製ことができる。
【0148】
モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Nature、256巻:495〜497頁、1975年)の方法に従って産生してもよい。例えば、免疫された動物の脾臓(又は任意の好適な組織)からBリンパ球を回収し、その後ミエローマ細胞と融合させて、好適な培養培地中で連続的に増殖可能なハイブリドーマ細胞の集団を得る。所望の抗体を産生するハイブリドーマを、ハイブリドーマにより産生される抗体が所望の抗原に結合する能力を試験することにより選択する。
【0149】
本発明は、所与のサイトカイン若しくはその受容体、又はTH17細胞を調節することができる他のタンパク質若しくは分子に特異的に結合し、所与のサイトカイン若しくはその受容体、又はTH17細胞を調節することができる他のタンパク質若しくは分子を必要に応じて活性化又は阻害するかのいずれかをするように設計されている、結合パートナーと呼ばれることがある非抗体ポリペプチドにも拡張される。所定のリガンド特異性を有するそのようなポリペプチドの設計の例は、Besteら(Proc.Natl.Acad.Sci.96巻:1898〜1903頁、1999年)に記載されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0150】
アンチセンスRNA及びDNA分子は、サイトカインをコードするRNA又はDNA等の、阻害しようとする部分の核酸配列に基づく。化学的にポリヌクレオチドを合成するための技術は、固相ホスホラミダイト化学合成等が、当技術分野で周知である。或いは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写により生成することができる。そのようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーター等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターが組み込まれている、幅広く多様なベクターに組み込まれていてもよい。使用されるプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的に又は誘導可能に合成するアンチセンスcDNA構築体を、宿主細胞に安定的に導入することができる。
【0151】
アプタマーは、高い親和性及び特異性で所定の特定の標的分子に結合するそれらの能力により、無作為化コンビナトリアル核酸ライブラリーから選択される短鎖の合成核酸である(通常はRNAであるが、DNAの場合もある)。またアプタマーは、他のタンパク質相互作用を妨害するように設計されている、両端がタンパク質スキャフォールドに結合された可変ペプチドループで構成されるペプチドであってもよい。アプタマーは、明確な三次元構造をとることが仮定されており、構造がごくわずかに異なる化合物を区別することが可能である。
【0152】
RNA干渉(RNAi)は、「RNA干渉」(RNAi)と名付けられた、遺伝子サイレンシングにより遺伝子を不活化するための手法である。例えば、Fireら、Nature 391巻:806〜811頁(1998年)及び米国特許第6,506,559号を参照されたい。RNA干渉は、RNAポリヌクレオチドが、内因性細胞プロセスにより作用して、その配列がRNAの配列に対応する遺伝子の発現を特異的に抑制する際に生じる事象を指す。標的遺伝子のサイレンシングは、宿主動物による、二本鎖(ds)RNAによるmRNAの分解の際に、時にはRNAase IIIエンドヌクレアーゼ消化によるmRNAの分解の際に生じる。消化により、長さ(又はサイズ)が約21〜23個のヌクレオチド(又は塩基)の分子がもたらされるが、分子の大きさは、30塩基ほどの大型であってもよい。これらの短鎖RNA種(低分子干渉RNA又はsiRNA)は、恐らくは、低分子dsRNAが塩基対合相互作用により相補的mRNAを認識するのを支援する、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるRNAiヌクレアーゼ複合体により、対応するRNAメッセージ及び転写物の分解を媒介する。その基質とのsiRNA相互作用後に、mRNAは、恐らくはRISCに存在する酵素による、分解の標的とされる。このタイプの機序は、ウイルス感染、トランスポゾンジャンプ、及び類似の現象を阻害するという点で生物に有用であり、内因的遺伝子の発現を制御するのに有用である。RNAi活性は、これまで、他の生物の中でも植物、昆虫、線虫、及び脊椎動物で明らかになっている。一般的な背景情報については、例えば、Schutzら、Virology 344巻(1号):151〜7頁(2006年);Leonardら、Gene Ther.13巻(6号):532〜40頁(2006年);Colbere−Garapinら、Microbes Infect.7巻(4号):767〜75頁(2005年);Wall、Theriogenology 57巻(1号):189〜201頁(2002年);El−Bashirら、Nature 411巻:494〜498頁(2001年);Fire,A.ら、Science 391巻:806〜811頁(1998年);Gitlinら、Nature 418巻:430〜434頁(2002年);Gitlinら、J.Virol.79巻:1027〜1035頁(2005年);Kahanaら、J.Gen.Virol.85巻、3213〜3217頁(2004年);Kronkeら、J.Virol.78巻:3436〜3446頁(2004年);Leonardら、J.Virol.79巻:1645〜1654頁(2005年);及びYokotaら、EMBO Rep.4巻:602〜608頁(2003年)を参照されたい。例としては、酵母媒体又は酵母ベースの免疫療法剤は、そのような細胞が酵母を貪食し、それにより、酵母媒体又は酵母ベースの免疫療法剤による抗原提示細胞の活性化に関連する免疫応答を調節する際に、抗原提示細胞におけるサイトカインの発現を阻害することになるsiRNAを保持するように操作されてもよい。
【0153】
リボザイムは、生物学的触媒作用を行うことができる(例えば、共有結合を破壊又は形成することにより)RNA断片である。より詳しくは、リボザイムは、標的RNA部分に結合することにより機能し、特異的な切断部位でホスホジエステル骨格を切断することにより標的RNA部分を不活化するアンチセンスRNA分子である。そのような核酸に基づく作用剤は、宿主細胞又は組織に導入し、種々のタンパク質の発現及び/又は機能を阻害するために使用することができる。
【0154】
本発明は、種々の受容体の立体構造的アンタゴニスト若しくは活性化因子、又はサイトカインの模倣体若しくは修飾型、又は生物学的タンパク質若しくは受容体と相互作用することが可能な他の分子等の低分子化合物(例えば、薬物発見及び/又は開発の産物)も含む。そのような作用剤は、例えば、分子多様性戦略(大型の化学的に多様な分子ライブラリーの迅速な構築を可能にする関連戦略の組み合わせ)から、天然化合物若しくは合成化合物のライブラリーから、特に化学的若しくはコンビナトリアルライブラリー(つまり、配列若しくはサイズが異なるが、同一の構成要素を有する化合物のライブラリー)から、又は合理的薬物設計により得ることができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMaulikら、1997年、Molecular Biotechnology:Therapeutic Applications and Strategies、Wiley−Liss,Inc.社を参照されたい。
【0155】
所与のタンパク質(例えば、サイトカイン又は受容体)の「発現」は、遺伝子の転写及び/又は遺伝子によりコードされたタンパク質の翻訳を指す。所与のタンパク質の「活性」は、一般的に生物活性を指し、それは、本明細書では、in vivoで(つまり、天然の生理学的環境中で)又はin vitroで(つまり、実験室条件下で)測定又は観察される、細胞又は生物の代謝又は他のプロセスに効果を示すあらゆる検出可能な活性と定義される。
【0156】
酵母ベースの免疫療法組成物
本発明は、少なくとも1つの「酵母ベースの免疫療法剤組成物」(この語句は、「酵母ベースの免疫療法生成物」、「酵母ベースの組成物」、「酵母ベースの免疫療法剤」、又は「酵母ベースのワクチン」と同義に使用される場合がある)の使用を含む。本明細書で使用される場合、語句「酵母ベースの免疫療法組成物」は、酵母媒体成分を含み、被験者において少なくとも1つの治療的有益性を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物を指す。より詳しくは、酵母ベースの免疫療法組成物は、酵母媒体成分を含み、限定ではないがT細胞媒介性細胞性免疫反応を含む細胞性免疫反応等の免疫応答を誘発又は誘導することができる組成物である。1つの態様では、本発明に有用な免疫療法組成物は、CD8+及び/又はCD4+ T細胞媒介性免疫応答を誘導することが可能であり、1つの態様では、CD8+及びCD4+ T細胞媒介性免疫応答を誘導することが可能である。任意に、酵母ベースの免疫療法組成物は、体液性免疫応答を誘発することが可能である。本発明に有用な酵母ベースの免疫療法組成物は、例えば、個体の疾患若しくは状態、又は疾患若しくは状態に起因する症状が治療されるように、個体に免疫応答を誘発することができる。
【0157】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物は、「予防的」又は「治療的」のいずれであってもよい。予防的に提供された場合、本発明の免疫療法組成物は、疾患又は状態の任意の症状に先立って提供される。免疫療法組成物の予防的な投与は、任意のその後の疾患を予防するか、又は軽減するか、又は発症までの時間を遅延させるのに役立つ。治療的に提供される場合、免疫療法組成物は、疾患の症状の発症時に又は発症後に提供される。用語「疾患」は、動物の正常健康状態からのあらゆる逸脱を指し、疾患症状が存在する際の状態、並びに逸脱(例えば、腫瘍増殖、感染等)は生じているが、症状がまだ現れていない状態を含む。
【0158】
典型的には、酵母ベースの免疫療法組成物は、酵母媒体、及び酵母媒体により発現された、酵母媒体に結合された、又は酵母媒体と混合された少なくとも1つの抗原又はその免疫原性ドメインを含む。幾つかの実施形態では、抗原又はその免疫原性ドメインは、融合タンパク質として提供される。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は、2つ以上の抗原を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、1つ若しくは複数の抗原の2つ以上の免疫原性ドメイン、又は1つ若しくは複数の抗原の2つ以上のエピトープを含むことができる。TARMOGEN(商標)は、本発明に有用な酵母ベースの免疫療法組成物の1つの非限定的な例である。TARMOGEN(商標)(TARgeted MOlecular immunoGEN、GlobeImmune,Inc.社製、ルーイビル、コロラド州)は、一般的に1つ又は複数の異種抗原を、細胞外に(その表面に)、細胞内に(内部的に若しくはサイトゾル的に)、又は細胞外及び細胞内の両方に発現する酵母媒体を指す。Tarmogenは、当技術分野で一般的に記述されている。例えば、米国特許第5,830,463号を参照されたい。
【0159】
酵母ベースの免疫療法組成物、及びその製作方法、及びその一般的な使用方法は、例えば、米国特許第5,830,463号、米国特許第7,083,787号、米国特許第7,465,454号、米国特許公開第2007−0224208号、米国特許公開第2008−0003239号、及びStubbsら、Nat.Med.7巻:625〜629頁(2001年)、Luら、Cancer Research 64巻:5084〜5088頁(2004年)、及びBernsteinら、Vaccine 2008年1月24日;26巻(4号):509〜21頁に詳細に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの酵母ベースの免疫療法生成物は、細胞性及び体液性免疫応答を含む免疫応答を誘発することが示されている。酵母ベースの免疫療法生成物は、様々な動物種において、様々な抗原を発現する標的細胞をin vivoで死滅させることが可能であり、抗原特異的CD4+及びCD8+媒介性免疫応答により死滅させる。更なる研究により、酵母は貪欲に貪食され、その後酵母関連タンパク質を非常に効率的な様式でCD4+及びCD8+ T細胞に提示する樹状細胞を直接的に活性化することが示されている。例えば、Stubbsら、Nature Med.5巻:625〜629頁(2001年)及び米国特許第7,083,787号を参照されたい。
【0160】
本発明で使用される酵母ベースの免疫療法組成物のいずれかでは、酵母媒体に関連する以下の態様が、本発明に含まれる。本発明によると、酵母媒体は、本発明の治療用組成物中の1つ若しくは複数の抗原、その免疫原性ドメイン、若しくはそのエピトープと共に使用することができる任意の酵母細胞(例えば、全細胞又は無傷細胞)又はその誘導体(以下を参照)であるか、又は1つの態様では、酵母媒体は、単独で若しくはアジュバントとして使用することができる。1つの態様では、酵母は、更に、本明細書に記載のようにTH17及び/又はTH1免疫応答を調節するのに有用な1つ又は複数の作用剤と共に使用される。したがって、酵母媒体には、生菌無傷酵母微生物(つまり、細胞壁を含むその成分を全て有する酵母細胞)、死滅(死)若しくは不活化無傷酵母微生物、又は酵母スフェロプラスト(つまり、細胞壁を欠如する酵母細胞)、酵母サイトプラスト(つまり、細胞壁及び核を欠如する酵母細胞)、酵母ゴースト(つまり、細胞壁、核、及び細胞質を欠如する酵母細胞)、亜細胞酵母膜抽出物若しくはその画分(酵母膜粒子及び以前は細胞内酵母粒子とも呼ばれる)、任意の他の酵母粒子、若しくは酵母細胞壁調製物を含むそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0161】
酵母スフェロプラストは、典型的には、酵母細胞壁の酵素消化により生成される。そのような方法は、例えば、Franzusoffら、1991年、Meth.Enzymol.194巻、662〜674頁に記載されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0162】
酵母サイトプラストは、典型的には、酵母細胞の除核により生成される。そのような方法は、例えば、Coon、1978年、Natl.Cancer Inst.Monogr.48巻、45〜55頁に記載されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0163】
酵母ゴーストは、典型的には、透過処理された又は溶解された細胞を再閉鎖することにより生成され、その細胞の細胞小器官の少なくとも幾つかを含有していてもよいが、そうでなくてもよい。そのような方法は、例えば、Franzusoffら、1983年、J.Biol.Chem.258巻、3608〜3614頁、及びBusseyら、1979年、Biochim.Biophys.Acta 553巻、185〜196頁に記載されており、これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0164】
酵母膜粒子(亜細胞酵母膜抽出物又はその画分)は、天然の核又は細胞質を欠如する酵母膜を指す。粒子は、天然酵母膜のサイズから、超音波処理又は当業者に公知の他の膜破壊法により生成され、その後再閉鎖される微粒子のサイズまでの範囲のサイズを含む、任意のサイズであってもよい。亜細胞酵母膜抽出物を生成する方法は、例えば、Franzusoffら、1991年、Meth.Enzymol.194巻、662〜674頁に記述されている。抗原又は他のタンパク質が、酵母膜粒子、抗原、又は他の目的タンパク質を調製する前に、酵母により組換え的に発現された場合、酵母膜部分を含有する酵母膜粒子の画分を使用してもよい。抗原又は他の目的タンパク質は、膜の内部に保持されていてもよく、膜の表面に保持されていてもよく、又はその組み合わせで保持されてもよい(つまり、タンパク質は、膜の内部及び外側の両方にあってもよく、並びに/又は酵母膜粒子の膜を貫通していてもよい)。1つの実施形態では、酵母膜粒子は、少なくとも1つの所望の抗原若しくは他の目的タンパク質(例えば、本明細書に記載のようにTH17及び/又はTH1免疫応答を調節するための作用剤)を膜表面に含むか、又は膜内部に少なくとも部分的に埋込まれている、無傷の、破壊された、若しくは破壊後に再閉鎖された酵母膜であってもよい組換え酵母膜粒子である。
【0165】
酵母細胞壁調製物の一例は、抗原をその表面に保持するか、又は抗原が少なくとも部分的に細胞壁内に埋込まれている単離された酵母細胞壁であり、その結果、酵母細胞壁調製物は、動物に投与されると、疾患標的に対して所望の免疫応答を刺激する。或いは又は加えて、酵母細胞壁は、本明細書に記載のようにTH17及び/又はTH1免疫応答を調節するのに有用な作用剤を保持していてもよい。
【0166】
任意の酵母菌株を使用して、本発明の酵母媒体を生成することができる。酵母は、3つのクラス:子嚢菌、担子菌、及び不完全菌類の1つに属する単細胞微生物である。免疫調節物質として使用するための酵母のタイプを選択する場合に考慮すべき1つの点は、酵母の病原性である。1つの実施形態では、酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ等の非病原性菌株である。非病原性酵母菌株を選択することにより、酵母媒体が投与される個体に対するいかなる有害効果も最小限に抑えられる。しかしながら、当業者に公知の任意の手段により酵母の病原性を無効にすることができる場合は、病原性酵母を使用してもよい(例えば、突然変異株)。本発明の1つの態様によると、非病原性酵母菌株が使用される。
【0167】
本発明に使用することができる酵母菌株の属には、サッカロマイセス属、カンジダ属(Candida)(病原性であり得る)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、及びヤロウイア属(Yarrowia)が含まれるがこれらに限定されない。1つの態様では、酵母の属は、サッカロマイセス属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ピキア属、又はシゾサッカロミセス属から選択され、1つの態様では、サッカロマイセス属が使用される。本発明に使用することができる酵母菌株の種には、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコックス・ローレンティ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌスバール亜種ラクティス(Kluyveromyces marxianus var.lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が含まれるがこれらに限定されない。多数のこれらの種は、前述の種内に含まれることが意図されている様々な亜種、タイプ、サブタイプ等を含むことが理解されるべきである。1つの態様では、本発明に使用される酵母種には、S.セレビシエ、C.アルビカンス、H.ポリモルファ、P.パストリス、及びS.ポンベが含まれる。S.セレビシエは、操作するのが比較的容易であり、食品添加物として使用するための「安全食品認定」又は「GRAS」(GRAS、FDA規則案62FR18938、1997年4月17日)であるため、有用である。本発明の1つの実施形態は、S.セレビシエcir°菌株等の、プラスミドを特に高いコピー数に複製することが可能な酵母菌株である。S.セレビシエ菌株は、1つ又は複数の標的抗原及び/又は抗原融合タンパク質及び/又は他のタンパク質の高レベル発現を可能にする発現ベクターを支持することが可能な1つの菌株である。加えて、任意の突然変異体酵母菌株を本発明に使用することができ、それらには、N結合グリコシル化を伸長する酵素における突然変異等の、発現される標的抗原又は他のタンパク質の翻訳後修飾の低減を示すものが含まれる。
【0168】
1つの実施形態では、本発明の酵母媒体を、樹状細胞又はマクロファージ等の、酵母媒体及び抗原/作用剤が送達されようとしている細胞タイプと融合させることが可能であり、それにより、その細胞タイプに対する、酵母媒体の、多くの実施形態では、抗原又は他の作用剤の特に効率的な送達が達成される。本明細書で使用される場合、酵母媒体と標的細胞タイプとの融合は、酵母細胞膜又はその粒子が、標的細胞タイプ(例えば、樹状細胞又はマクロファージ)の膜と融合し、シンシチウム形成を導く能力を指す。本明細書で使用される場合、シンシチウムは、細胞の融合により生成される多核塊原形質である。多数のウイルス表面タンパク質(HIV等の免疫不全症ウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、及びアデノウイルスの表面タンパク質を含む)及び他の融合物質(卵子と精子との融合に関与するもの等)は、2つの膜間(つまり、ウイルス膜と哺乳動物細胞膜との間、又は哺乳動物細胞膜間)の融合を達成することができることが示されている。例えば、その表面にHIV gp120/gp41異種抗原を産生する酵母媒体は、CD4+ T−リンパ球と融合することが可能である。しかしながら、酵母媒体への標的化部分の組込みは、幾つかの状況下では望ましい場合があるが、必ずしも必要ではないことに留意されたい。これは、抗原を細胞外に発現する酵母媒体の場合には、本発明の酵母媒体の更なる利点であり得る。一般的に、本発明に有用な酵母媒体は、樹状細胞(並びにマクロファージ等の他の細胞)によって容易に取り込まれる。
【0169】
上記で考察したように、本発明の幾つかの実施形態では、酵母媒体及び/又は酵母ベースの免疫療法組成物は、TH17及び/又はTH1免疫応答を調節するのに有用な作用剤を含み、そのような作用剤は、本明細書の他所に記載されている。本発明のほとんどの実施形態では、酵母ベースの免疫療法組成物は、少なくとも1つの抗原、その免疫原性ドメイン、又はそのエピトープを含む。本発明での使用に企図される抗原には、それに対する免疫応答を誘発することが望まれている任意の抗原が含まれる。1つの態様では、酵母が保持するか(例えば、発現する、負荷されている、結合されている等)又は抗原もしくはその免疫原性ドメインと混合されている酵母ベースの免疫療法組成物はまた、本発明によるTH17及び/又はTH1応答の調節に有用な作用剤を保持していてもよく、又は作用剤と混合されていてもよい。或いは又は加えて、本発明によるTH1及び/又はTH1応答の調節に有用な作用剤を保持する酵母媒体は、酵母ベースの免疫療法剤と共に混合されていてもよく、又は酵母ベースの免疫療法剤と同時に、連続的に、若しくは交互様式で投与されてもよい。酵母ベースの組成物の種々の組み合わせ及び順列を、本発明に従って構築及び使用することができる。
【0170】
本発明によると、用語「抗原」の本明細書での一般的使用は以下のものを指す:天然に生じてもよく又は合成的に導出されてもよいタンパク質(ペプチド、部分的タンパク質、全長タンパク質)の任意の部分、細胞組成物(全細胞、細胞溶解産物、若しくは破壊された細胞)、微生物若しくは細胞(全微生物、溶解産物、又は破壊された細胞)、又は炭水化物、又は他の分子若しくはその部分。抗原は、幾つかの実施形態では、免疫系のエレメント(例えば、T細胞、抗体)が遭遇するのと同じか又は類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答(例えば、体液性免疫応答及び/又は細胞媒介性免疫応答)を誘発することができる。用語「癌抗原」は、本明細書では、用語「腫瘍特異的抗原」、「腫瘍関連抗原」、「癌関連標的」、又は「腫瘍関連標的」と同義に使用することができる。
【0171】
抗原は、単一のエピトープほどの小ささであってもよく、又はより大型であってもよく、複数のエピトープを含んでいてもよい。そのため、抗原のサイズは、約5〜12個アミノ酸(例えば、小型ペプチド)ほどの小ささであってもよく、多量体及び融合タンパク質、キメラタンパク質、又はアゴニストタンパク質若しくはペプチドを含む、タンパク質のドメイン、部分的タンパク質(ペプチド又はポリペプチド)、全長タンパク質のように大型であってもよい。加えて、抗原には、炭水化物が含まれていてもよい。
【0172】
免疫応答の刺激を参照する場合、用語「免疫原」は、用語「抗原」のサブセットであり、したがって、幾つかの場合、用語「抗原」と同義に使用することができる。免疫原は、本明細書で使用される場合、体液性及び/又は細胞媒介性免疫応答を誘発する抗原(つまり、免疫原)を指し、したがって適切な状況で免疫原を個体に投与することにより(例えば、酵母ベースの免疫療法組成物の一部として)、個体の免疫系が遭遇するのと同じか又は類似の抗原に対する抗原特異的免疫応答が誘発又は誘導される。
【0173】
所与の抗原の「免疫原性ドメイン」は、動物に投与した際に免疫原として作用する少なくとも1つのエピトープを含有する抗原(例えば、ペプチド断片若しくはサブユニット、又は抗体エピトープ、又は他の立体構造エピトープ)の任意の部分、断片、又はエピトープであってもよい。例えば、単一のタンパク質は、複数の異なる免疫原性ドメインを含有することができる。免疫原性ドメインは、体液性免疫応答等の場合には、タンパク質内の線形的な配列である必要はない。
【0174】
エピトープは、本明細書では、免疫応答を誘発するのに十分な、所与の抗原内の単一の免疫原性部位と定義される。当業者であれば、T細胞エピトープは、B細胞エピトープとはサイズ及び組成が異なり、MHCクラスI経路により提示されるエピトープは、MHCクラスII経路により提示されるエピトープとは異なることを認識するであろう。エピトープは、線形的な配列であってもよく、又は立体構造エピトープ(保存された結合領域)であってもよい。
【0175】
本発明での使用に企図される抗原には、それに対する免疫応答を誘発することが望まれている任意の抗原、特に、そのような抗原に対する治療的免疫応答が個体に有益であると考えられる任意の抗原が含まれる。例えば、抗原には、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、蠕虫抗原、寄生虫抗原、外寄生生物抗原、原生動物抗原、又は任意の他の感染因子に由来する抗原を含むがこれらに限定されない病原体に関連する任意の抗原が含まれていてもよい。また抗原には、病原性供給源に由来するか又は細胞性供給源に由来するかに関わらず、特定の疾患又は状態に関連する任意の抗原が含まれていてもよく、それらには、限定ではないが以下のものが含まれる:癌抗原、自己免疫疾患に関連する抗原(例えば、糖尿病抗原)、アレルギー抗原(アレルゲン)、1つ又は複数の突然変異アミノ酸を内包する哺乳動物細胞分子、哺乳動物細胞により通常は出生前又は新生児期に発現されるタンパク質、その発現が疫学的物質(例えば、ウイルス)の挿入により誘導されるタンパク質、及びその発現が遺伝子転座により誘導されるタンパク質、及びその発現が調節配列の突然変異により誘導されるタンパク質。これらの抗原は、天然抗原であってもよく、又は幾つかの様式(例えば、配列変化又は融合タンパク質の産生)で修飾された遺伝子操作抗原であってもよい。幾つかの実施形態では(つまり、抗原が、酵母媒体により組換え核酸分子から発現される場合)、抗原は、細胞全体又は微生物ではなく、タンパク質又はその任意のエピトープ若しくは免疫原性ドメイン、融合タンパク質、又はキメラタンパク質であってもよい。
【0176】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物に有用な他の抗原には、例えばアレルゲン、自己免疫抗原、炎症性物質、GVHD、ある種の癌に関与する抗原、敗血症ショック抗原、及び移植拒絶に関与する抗原により引き起こされるもの等の、望ましくないか又は有害な免疫応答の抑制に関連する場合のある抗原が含まれる。
【0177】
本発明の1つの態様では、本発明の1つ又は複数の免疫療法組成物に有用な抗原には、任意の癌又は腫瘍関連抗原が含まれる。1つの態様では、抗原には、新生物発生前の又は過形成性の状態に関連する抗原が含まれる。抗原は、癌に関連している場合もあり、又は癌の原因である場合もある。そのような抗原は、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原(TAA)、又は組織特異的抗原、それらのエピトープ、及びそれらのエピトープアゴニストであってもよい。癌抗原には、任意の腫瘍又は癌に由来する抗原が含まれるがこれらに限定されず、腫瘍又は癌には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:メラノーマ、扁平上皮癌、乳癌、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳癌、血管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫瘍、白血病、リンパ腫、原発性肝癌、肺癌、膵臓癌、消化官癌(結腸直腸癌を含む)、腎細胞癌、造血器新形成、及びそれらの転移癌。
【0178】
好適な癌抗原には、以下のもの等の癌胎児抗原(CEA)及びそのエピトープが含まれるがこれらに限定されない:CAP−1、CAP−1−6D(GenBank受入番号M29540)、MART−1(Kawakamiら、J.Exp.Med.180巻:347〜352頁、1994年)、MAGE−1(米国特許第5,750,395号)、MAGE−3、GAGE(米国特許第5,648,226号)、GP−100(Kawakamiら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 91巻:6458〜6462頁、1992年)、MUC−1、MUC−2、点突然変異Ras腫瘍性タンパク質、正常及び点突然変異p53腫瘍性タンパク質(Hollsteinら、Nucleic Acids Res.22巻:3551〜3555頁、1994年)、PSMA(Israeliら Cancer Res.53巻:227〜230頁、1993年)、チロシナーゼ(Kwonら、PNAS 84巻:7473〜7477頁、1987年)、TRP−1(gp75)(Cohenら Nucleic Acid Res.18巻:2807〜2808頁、1990年;米国特許第5,840,839号)、NY−ESO−1(Chenら PAS 94巻:1914〜1918頁、1997年)、TRP−2(Jacksonら EMBOJ、11巻:527〜535頁、1992年)、TAG72、KSA、CA−125、PSA、HER−2/neu/c−erb/B2(米国特許第5,550,214号)、EGFR、hTERT、p73、B−RAF、大腸ポリポーシス(APC)、Myc、フォンヒッペル−リンダウタンパク質(VHL)、Rb−1、Rb−2、アンドロゲン受容体(AR)、Smad4、MDR1、Flt−3、BRCA−1、BRCA−2、Bcr−Abl、pax3−fkhr、ews−fli−l、ブラキュリ、HERV−H、HERV−K、TWIST、メソテリン、NGEP、そのような抗原及び組織特異的抗原の修飾、そのような抗原のスプライスバリアント、及び/又はそのような抗原のエピトープアゴニスト。他の癌抗原は、当技術分野で公知である。他の癌抗原も、米国特許第4,514,506号に開示されている方法等の、当技術分野で公知の方法により特定、単離、及びクローニングしてもよい。また、癌抗原には、1つ又は複数の増殖因子、及び各々のスプライスバリアントが含まれていてもよい。
【0179】
本発明の1つの態様では、本発明の1つ又は複数の免疫療法組成物に有用な抗原には、病原体、又は病原体により引き起こされるか若しくは病原体と関連する疾患若しくは状態に関連する任意の抗原が含まれる。そのような抗原には、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、蠕虫抗原、寄生虫抗原、外寄生生物抗原、原生動物抗原、又は任意の他の感染因子に由来する抗原を含むがこれらに限定されない病原体に関連する任意の抗原が含まれる。
【0180】
1つの態様では、抗原はウイルス由来であり、ウイルスには、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:アデノウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、フラビウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、レンチウイルス、はしかウイルス、おたふくかぜウイルス、ミクソウイルス、オルトミクソウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸系発疹ウイルス、レオウイルス、ラブドウィルス、風疹ウイルス、トガウイルス、及び水痘ウイルス。他のウイルスには、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV−I及びHTLV−II等のHTLV)、ウシ白血病ウイルス(BLVS)、及びネコ白血病ウイルス(FLV)等のT−リンパ球向性ウイルスが含まれる。レンチウイルスには、ヒト(HIV−1又はHIV−2を含むHIV)、サル(SIV)、ネコ(FIV)、及びイヌ(CIV)免疫不全症ウイルスが含まれるがこれらに限定されない。1つの実施形態では、ウイルス抗原には、非腫瘍ウイルスに由来するものが含まれる。
【0181】
別の態様では、抗原は、以下のものから選択される属に由来する感染因子に由来する:アスペルギルス属(Aspergillus)、ボルデテラ属、ブルギア属(Brugia)、カンジダ属、クラミジア属、コクシジウム属(Coccidia)、クリプトコックス属、ディロフィラリア属(Dirofilaria)、エシェリヒア属(Escherichia)、フランキセラ属(Francisella)、淋菌属(Gonococcus)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)、リーシュマニア属(Leishmania)、ミコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、パラメシウム属(Paramecium)、百日咳属(Pertussis)、プラスモジウム属(Plasmodium)、肺炎球菌属(Pneumococcus)、ニューモシスティス属(Pneumocystis)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トキソプラズマ属(Toxoplasma)、ビブリオコレラエ属(Vibriocholerae)、及びエルジニア属(Yersinia)。1つの態様では、感染因子は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)又は三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)から選択される。
【0182】
1つの態様では、抗原は、以下のものから選択される科に由来するバクテリアに由来する:腸内菌科(Enterobacteriaceae)、ミクロコッカス科(Micrococcaceae)、ビブリオ科(Vibrionaceae)、パスツレラ科(Pasteurellaceae)、マイコプラズマ科(Mycoplasmataceae)、及びリケッチア科(Rickettsiaceae)。1つの態様では、バクテリアは、以下のものから選択される属である:シュードモナス属、ボルデテラ属、ミコバクテリウム属、ビブリオ属、バチルス属、サルモネラ属、フランキセラ属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、エシェリヒア属、エンテロコッカス属、パスツレラ属、及びエルジニア属。1つの態様では、バクテリアは、以下のものから選択される種に由来する:シュードモナス・エルギノーサ、シュードモナス・マレイ(Pseudomonas mallei)、シュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、バチルス・アントラシス(バチルス・アントラシス)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enteric)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)、大腸菌(Escherichia coli)、及びボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)。
【0183】
1つの態様では、抗原は真菌に由来し、そのような真菌には、以下のものに由来する真菌であるがこれらに限定されない:サッカロマイセス種(Saccharomyces spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、クリプトコックス種(Cryptococcus spp.)、コクシジオイデス種(Coccidioides spp.)、ニューロスポラ種(Neurospora spp.)、ヒストプラスマ種(Histoplasma spp.)、又はブラストミセス種(Blastomyces spp.)。1つの態様では、真菌は、以下のものから選択される種に由来する:アスペルギルス・フミガーツス、A.フラバス、黒色コウジ菌(A.niger)、A.テレウス(A.terreus)、A.ニデュランス(A.nidulans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシ(Coccidioides posadasii)、又はクリプトコックス・ネオフォルマンス。例えば、侵襲性疾患を引き起こすアスペルギルス属の最も一般的な種には、A.フミガーツス(A.fumigatus)、A.フラバス、黒色コウジ菌、A.テレウス、及びA.ニデュランスが含まれ、例えば、免疫抑制又はT細胞若しくは食細胞障害を有する患者に見出される場合がある。A.フミガーツスは、喘息、アスペルギローム、及び侵襲性アスペルギルス症に関与する。コクシジオイデス症は、サンホアキン渓谷熱としても知られており、コクシジオイデス・イミチスにより引き起こされる真菌性疾患であり、急性呼吸器感染症、及び慢性肺性疾患、又は髄膜、硬骨、及び関節への転移に結び付く場合がある。例えば、非免疫抑制被験者、又はHIVに感染している被験者等の免疫抑制被験者のクリプトコックス症関連状態も、本発明の方法により標的とされる。
【0184】
幾つかの実施形態では、抗原は、融合タンパク質である。本発明の1つの態様では、融合タンパク質は、2つ以上の抗原を含むことができる。1つの態様では、融合タンパク質は、1つ又は複数の抗原の2つ以上の免疫原性ドメイン、又は2つ以上のエピトープを含むことができる。そのような抗原を含有する免疫療法組成物は、広範囲の患者に抗原特異的免疫を提供することができる。例えば、本発明に有用な多ドメイン融合タンパク質は、複数のドメインを有していてもよく、各ドメインは、特定のタンパク質に由来するペプチドで構成されており、ペプチドは、タンパク質の両側に隣接し、タンパク質に見出される突然変異アミノ酸を含む少なくとも4つのアミノ酸残基で構成されており、突然変異は、特定の疾患又は状態に関連する。
【0185】
1つの実施形態では、本発明に有用な酵母ベースの免疫療法組成物の成分が使用されている融合タンパク質は、酵母における異種抗原の発現に特に有用な構築体を使用して産生される。典型的には、所望の抗原性タンパク質又はペプチドは、それらのアミノ末端が以下のものに融合されている:(a)酵母媒体での融合タンパク質の発現を安定させるか、又は発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止する特定の合成ペプチド(そのようなペプチドは、例えば、2004年8月12日に公開された米国特許公開第2004−0156858号に詳細に記述されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);(b)いずれかの融合パートナーが、酵母におけるタンパク質発現の安定性の著しい増強及び/又は酵母細胞によるタンパク質の翻訳後修飾の防止を提供する、内因性酵母タンパク質の少なくとも一部(そのようなタンパク質も、例えば、米国特許公開第2004−0156858号に詳細に記述されている);及び/又は(c)融合タンパク質を酵母表面に発現させる酵母タンパク質の少なくとも一部(例えば、本明細書により詳細に記述されているAgaタンパク質)。加えて、本発明は、特にタンパク質の選択及び特定に使用するための、抗原をコードする構築体のC末端に融合されているペプチドの使用を含む。そのようなペプチドには、ペプチドタグ(例えば、6×His)又は任意の他の短鎖エピトープタグ等の、任意の合成又は天然ペプチドが含まれるがこれらに限定されない。本発明による抗原のC末端に結合されたペプチドは、上記で考察したN末端ペプチドを付加して又は付加せずに使用することができる。
【0186】
1つの実施形態では、融合タンパク質に有用な合成ペプチドは、抗原のN末端に結合され、ペプチドは、抗原に対して異種性である少なくとも2つのアミノ酸残基で構成されており、ペプチドは、酵母媒体における融合タンパク質の発現を安定化させるか又は発現された融合タンパク質の翻訳後修飾を防止する。合成ペプチド及び抗原のN末端部分は一緒になって、以下の要件を満たす融合タンパク質を形成する:(1)融合タンパク質の1位のアミノ酸残基が、メチオニンであること(つまり、合成ペプチドの最初のアミノ酸がメチオニンである);(2)融合タンパク質の2位のアミノ酸残基が、グリシン又はプロリンではないこと(つまり、合成ペプチドの2番目のアミノ酸が、グリシン又はプロリンではない);(3)融合タンパク質の2〜6位のアミノ酸残基がいずれも、メチオニンではないこと(つまり、合成ペプチドが6個のアミノ酸より短い場合、合成ペプチドの一部であるか又はタンパク質の一部であるかに関わらず、2〜6位のアミノ酸が、メチオニンを含んでいない);及び(4)融合タンパク質の2〜6位のアミノ酸がいずれも、リジン又はアルギニンではないこと(つまり合成ペプチドが5個のアミノ酸より短い場合、合成ペプチドの一部であるか又はタンパク質の一部であるかに関わらず、2〜6位のアミノ酸が、リジン又はアルギニンを含んでいない)。合成ペプチドは、2個のアミノ酸程度の短さでもよいが、1つの態様では、少なくとも2〜6個のアミノ酸であり(3、4、及び5個アミノ酸を含む)、6個のアミノ酸より長くてもよく、整数で、最大約200個のアミノ酸、最大300個のアミノ酸、最大400個のアミノ酸、500個以上のアミノ酸である。
【0187】
1つの実施形態では、融合タンパク質は、M−X2−X3−X4−X5−X6のアミノ酸配列を含み、Mはメチオニンであり、X2は、グリシン、プロリン、リジン、又はアルギニン以外の任意のアミノ酸であり、X3は、メチオニン、リジン、又はアルギニン以外の任意のアミノ酸であり、X4は、メチオニン、リジン、又はアルギニン以外の任意のアミノ酸であり、X5は、メチオニン、リジン、又はアルギニン以外の任意のアミノ酸であり、X6は、メチオニン、リジン、又はアルギニン以外の任意のアミノ酸である。1つの実施形態では、X6残基は、プロリンである。酵母細胞における抗原発現の安定性を増強する、及び/又は酵母におけるタンパク質の翻訳後修飾を防止する例示的な合成配列には、配列M−A−D−E−A−P(配列番号l)が含まれる。発現産物の安定性の増強に加えて、この融合パートナーは、構築体のワクチン接種抗原に対する免疫応答に負の影響を与えないと考えられる。加えて、合成融合ペプチドは、抗体等の選択用の物質により認識され得るエピトープを提供するように設計することができる。
【0188】
本発明の1つの態様では、酵母媒体は、抗原又はTH17免疫応答及び/若しくはTH1免疫応答の調節に有用な作用剤が、部分的に若しくは全体的に酵母媒体の表面で発現されるか又は発現されたタンパク質産物の送達又はトランスロケーションにより酵母媒体の表面に提供される(細胞外発現)ように操作される。本発明のこの態様を達成する1つの方法は、酵母媒体の表面に1つ又は複数のタンパク質を配置するためにスペーサーアームを使用することである。例えば、スペーサーアームを使用して、抗原又は他の目的タンパク質と、抗原又は他の目的タンパク質を酵母細胞壁へと標的化するタンパク質との融合タンパク質を生成することができる。例えば、他のタンパク質を標的化するために使用することができる1つのそのようなタンパク質は、抗原又は他のタンパク質が酵母表面に配置されるように、抗原又は他のタンパク質の酵母細胞壁への標的化を可能にする酵母タンパク質(例えば、細胞壁タンパク質2(cwp2)、Aga2、Pir4、又はFlo1タンパク質)である。酵母タンパク質以外のタンパク質をスペーサーアームに使用してもよいが、いずれのスペーサーアームタンパク質の場合でも、免疫原応答を、スペーサーアームタンパク質ではなく標的抗原に対してに向けさせることが最も望ましい。したがって、他のタンパク質がスペーサーアームとして使用される場合、使用されるスペーサーアームタンパク質は、スペーサーアームタンパク質自体に対して、標的抗原の免疫応答が圧倒されるほど大きな免疫応答を発生させるべきでない。当業者は、標的抗原に対する免疫応答に比べて、スペーサーアームタンパク質に対する免疫応答が少なくなることを目指すべきである。スペーサーアームは、必要に応じて、抗原を酵母から容易に除去又は切り離すことを可能にする切断部位(例えば、プロテアーゼ切断部位)を有するように構築することができる。免疫応答の大きさを決定する任意の公知の方法(例えば、抗体産生、細胞溶解アッセイ等)を使用することができ、それらは当業者に容易に知られている。
【0189】
標的抗原又は他のタンパク質を酵母表面に露出するように配置する別の方法は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)等のシグナル配列を使用して酵母細胞壁に標的を係留することである。或いは、配置は、抗原が細胞壁に結合するタンパク質(例えば、cwp)に結合するように、小胞体(ER)へのトランスロケーションにより抗原又は他の目的タンパク質を分泌経路に標的化するシグナル配列を追加することにより達成することができる。
【0190】
1つの態様では、スペーサーアームタンパク質は、酵母タンパク質である。酵母タンパク質は、約2〜約800個のアミノ酸の酵母タンパク質で構成されていてもよい。1つの実施形態では、酵母タンパク質は、約10〜700個のアミノ酸である。別の実施形態では、酵母タンパク質は、約40〜600個のアミノ酸である。本発明の他の実施形態は、少なくとも250個のアミノ酸、少なくとも300個のアミノ酸、少なくとも350個のアミノ酸、少なくとも400個のアミノ酸、少なくとも450個のアミノ酸、少なくとも500個のアミノ酸、少なくとも550個のアミノ酸、少なくとも600個のアミノ酸、又は少なくとも650個のアミノ酸である酵母タンパク質を含む。1つの実施形態では、酵母タンパク質は、長さが約450個のアミノ酸である。
【0191】
酵母タンパク質を使用することにより、酵母媒体における融合タンパク質発現が安定し、発現された融合タンパク質の翻訳後修飾が防止され、及び/又は酵母の特定の区画に融合タンパク質を標的化する(例えば、酵母細胞表面に発現させる)ことができる。酵母分泌経路に送達する場合、使用する例示的な酵母タンパク質には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:Aga(Aga1及び/又はAga2を含むがこれらに限定されない);SUC2(酵母インベルターゼ);アルファ因子シグナルリーダー配列;CPY;細胞壁への局在化及び保持用のCwp2p;娘細胞形成の初期段階中の酵母細胞芽における局在化用のBUD遺伝子;Flo1p;Pir2p;及びPir4p。
【0192】
他の配列を使用して、タンパク質を、酵母媒体の他の部分、例えばサイトゾル又はミトコンドリアに標的化、保持、及び/又は安定化させることができる。上記の実施形態のいずれかに使用することができる好適な酵母タンパク質の例には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:SEC7;それらの抑制可能なグルコース発現及びサイトゾル局在化のためのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼPCK1、ホスホグリセロキナーゼPGK、及びトリオースリン酸イソメラーゼTPI遺伝子産物;細胞が熱処理に曝されるとその発現が誘導され、そのタンパク質はより熱安定性であるヒートショックタンパク質SSA1、SSA3、SSA4、SSC1;ミトコンドリアへの移入のためのミトコンドリアタンパク質CYC1;ACT1。
【0193】
酵母媒体を生成し、酵母媒体を発現させ、目的の抗原及び/若しくは他のタンパク質及び/若しくは作用剤と混合し、並びに/又は目的の抗原及び/若しくは他のタンパク質及び/若しくは作用剤と関連させて、酵母ベースの免疫療法組成物を生成する方法が、本発明により企図される。
【0194】
本発明によると、用語「酵母媒体−抗原複合体」又は「酵母−抗原複合体」は、酵母媒体と抗原との任意の結合を指すために一般的に使用され、そのような組成物が、上述のように免疫応答を誘発するために使用される場合、「酵母ベースの免疫療法組成物」と同義に使用することができる。そのような結合には、酵母(組換え酵母)による抗原の発現、酵母への抗原の導入、酵母に対する抗原の物理的結合、及び緩衝液又は他の溶液又は製剤等の中で酵母及び抗原を一緒に混合することが含まれる。これらのタイプの複合体は、下記で詳細に記述される。
【0195】
1つの実施形態では、酵母媒体を調製するために使用される酵母細胞は、酵母細胞によりタンパク質が発現されるように、タンパク質(例えば、抗原又は作用剤)をコードする異種性核酸分子で形質移入される。そのような酵母は、本明細書では、組換え酵母又は組換え酵母媒体とも呼ばれる。その後、酵母細胞を無傷細胞として樹状細胞に負荷してもよく、又は酵母細胞を死滅させてもよく、又は酵母細胞を、酵母スフェロプラスト、サイトプラスト、ゴースト、若しくは亜細胞粒子の形成等により誘導体化してもよく、誘導体は、これらの誘導体化のいずれかの後で樹状細胞に負荷される。酵母スフェロプラストは、抗原又は他のタンパク質を発現する組換えスフェロプラストを生成するために、組換え核酸分子で直接的に形質移入することもできる(例えば、スフェロプラストは、全酵母から生成され、その後形質移入される)。
【0196】
1つの態様では、酵母媒体を調製するために使用される酵母細胞又は酵母スフェロプラストは、抗原又は他のタンパク質が、酵母細胞又は酵母スフェロプラストにより組換え的に発現されるように、抗原又は他のタンパク質をコードする組換え核酸分子で形質移入される。この態様では、抗原又は他のタンパク質を組換え的に発現する酵母細胞又は酵母スフェロプラストは、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、又は酵母膜粒子、又は酵母細胞壁粒子、又はそれらの画分を含む酵母媒体を生成するために使用される。
【0197】
一般的に、酵母媒体及び抗原、又は本発明によるTH17応答及び/若しくはTH1応答を調節する作用剤を含む他の作用剤は、本明細書に記載の任意の技術により結合させることができる。1つの態様では、酵母媒体には、抗原及び/又は作用剤が細胞内に負荷されていた。別の態様では、抗原及び/又は作用剤は、共有結合又は非共有結合で酵母媒体に結合されていた。更に別の態様では、酵母媒体並びに抗原及び/又は作用剤は、混合することにより結合された。別の態様及び1つの実施形態では、抗原及び/又は作用剤は、酵母媒体により、又は酵母媒体が由来した酵母細胞若しくは酵母スフェロプラストにより、組換え的に発現される。
【0198】
本発明の酵母媒体により産生される抗原及び/又は他のタンパク質の数は、酵母媒体により合理的に産生することができ、約2つから約6つの異種抗原及び又は他のタンパク質を含む、典型的には少なくとも1つから少なくとも約6つ以上の範囲の抗原及び/又は他のタンパク質の任意の数である。
【0199】
本発明の酵母媒体における抗原又は他のタンパク質の発現は、当業者に公知の技術を使用して達成される。手短に言えば、少なくとも1つの所望の抗原又は他のタンパク質をコードする核酸分子は、宿主酵母細胞に形質転換される際に、核酸分子の構成的な発現又は制御された発現のいずれかの達成を可能にするため、核酸分子が転写制御配列に作用可能に結合されるように発現ベクターに挿入される。1つ又は複数の抗原及び/又は他のタンパク質をコードする核酸分子は、1つ又は複数の発現ベクターにおいて1つ又は複数の発現制御配列に作用可能に結合されていてもよい。特に重要な発現制御配列は、プロモーター及び上流活性化配列等の、転写開始を制御する配列である。本発明では、任意の好適な酵母プロモーターを使用することができ、様々なそのようなプロモーターが、当業者に公知である。サッカロマイセス・セレビシエでの発現用プロモーターには、これらに限定されないが、以下の酵母タンパク質:アルコールデヒドロゲナーゼI(ADH1)又はII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、翻訳伸長因子F−1アルファ(TEF2)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;トリオースリン酸デヒドロゲナーゼの場合、TDH3とも呼ばれる)、ガラクトキナーゼ(GAL1)、ガラクトース−1−リン酸ウリジル−トランスフェラーゼ(GAL7)、UDP−ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、チトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)、及び酸性ホスファターゼ(PHO5)をコードする遺伝子のプロモーターが含まれ、ADH2/GAPDH及びCYC1/GAL10プロモーター等のハイブリッドプロモーターが含まれ、細胞中のグルコース濃度が低い場合に(例えば、約0.1〜約0.2パーセント)誘導されるADH2/GAPDHプロモーター、並びにCUP1プロモーター及びTEF2プロモーターが含まれる。同様に、エンハンサーとも呼ばれる多数の上流活性化配列(UAS)が知られている。サッカロマイセス・セレビシエでの発現用上流活性化配列には、これらに限定されないが、以下のタンパク質:PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7、及びGAL10をコードする遺伝子のUAS、並びにGAL4遺伝子産物により活性化される他のUASが含まれ、1つの態様では、ADH2 UASが使用される。ADH2 UASは、ADR1遺伝子産物により活性化されるため、異種遺伝子がADH2 UASに作用可能に結合されている場合、ADR1遺伝子を過剰発現することが好ましい場合がある。サッカロマイセス・セレビシエでの発現用の転写終結配列には、α−因子、GAPDH、及びCYC1遺伝子の終結配列が含まれる。
【0200】
メチロトローフ(methyltrophic)酵母中で遺伝子を発現するための転写制御配列には、アルコールオキシダーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写制御領域が含まれる。
【0201】
本発明による酵母細胞への核酸分子の形質移入は、核酸分子が細胞に導入される任意の方法により達成することができ、それらの方法には、拡散、能動輸送、超音波処理浴、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、及びプロトプラスト融合が含まれるがこれらに限定されない。形質移入された核酸分子は、当業者に公知の技術を使用して、酵母染色体に組み込まれてもよく、又は染色体外ベクターで維持されてもよい。そのような核酸分子を保持する酵母媒体の例は、本明細書で詳細に開示されている。上記で考察したように、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、及び酵母膜粒子又は細胞壁調製物は、無傷酵母微生物又は酵母スフェロプラストを所望の核酸分子で形質移入し、その中で抗原を産生させ、その後当業者に公知の技術を使用して微生物又はスフェロプラストを更に操作し、所望の抗原又は他のタンパク質を含有するサイトプラスト、ゴースト、又は亜細胞酵母膜抽出物若しくはその画分を生成することにより、組換え的に生成することもできる。
【0202】
組換え酵母媒体の産生並びに酵母媒体による抗原及び/又は他のタンパク質(例えば、本明細書に記載の作用剤)の発現に効果的な条件には、酵母菌株を培養することができる効果的な培地が含まれる。効果的な培地は、典型的には、同化可能な炭水化物、窒素、及びリン酸供給源、並びに適切な塩、無機物、金属、並びにビタミンや増殖因子等の他の栄養素を含む水性培地である。培地は、複雑な栄養素を含んでいてもよく、又は限定最小培地であってもよい。本発明の酵母菌株は、バイオリアクター、エルレンマイヤーフラスコ、試験管、マイクロタイター皿、及びペトリ皿を含むがこれらに限定されない様々な容器中で培養することができる。培養は、酵母菌株に適切な温度、pH、及び酸素含有量で実施される。そのような培養条件は、十分に当業者の専門知識内にある(例えば、Guthrieら(編)、1991年、Methods in Enzymology、194巻、Academic Press、サンディエゴを参照)。
【0203】
本発明の幾つかの態様では、酵母は、中性pH条件下で、特に少なくとも5.5のpHレベルに維持された培地中で増殖され、すなわち増殖培地のpHを、pH5.5未満に低下させない。他の態様では、酵母は、約5.5に維持されたpHレベルで増殖される。他の態様では、酵母は約5.6、5.7、5.8、又は5.9に維持されたpHレベルで増殖される。別の態様では、酵母は、約6に維持されたpHレベルで増殖される。別の態様では、酵母は、約6.5に維持されたpHレベルで増殖される。他の態様では、酵母は約6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9又は7.0に維持されたpHレベルで増殖される。他の態様では、酵母は、約7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0に維持されたpHレベルで増殖される。pHレベルは、酵母の培養に重要である。当業者であれば、培養プロセスには、酵母培養の開始だけでなく培養の維持も同様に含まれることを認識するであろう。酵母培養は、時間の経過と共に酸性になる(つまり、pHが低下する)ことが知られているため、培養プロセス中は、注意してpHレベルをモニタリングしなければならない。培地のpHレベルが6未満に低下した酵母細胞培養は、培地のpHを、培養プロセス中のある時点で少なくとも5.5に上昇させれば、依然として本発明の範囲内に企図される。そのため、少なくともpH5.5以上の培地で酵母を増殖させる時間が長ければ長いほど、結果は、望ましい特徴を有する酵母を得るという点でより良好になるであろう。
【0204】
本明細書で使用される場合、用語「中性pH」の一般的な使用は、約pH5.5〜約pH8、1つの態様では約pH6〜約8のpH範囲を指す。当業者であれば、pH計で測定する場合、軽微な変動(例えば、10分の1又は100分の1)が生じる場合があることを理解するであろう。そのため、酵母細胞を増殖させるために中性pHを使用するということは、酵母細胞が、培養中の時間のうちほとんどは中性pHで増殖されることを意味する。酵母を培養する際に中性pHを使用することにより、免疫修飾用の媒体として酵母を使用するための望ましい特徴である幾つかの生物学的効果が促進される。1つの態様では、中性pHでの酵母培養は、細胞生成時間に対する負の効果(例えば、倍加時間の減速)が一切ない酵母の良好な増殖を可能にする。酵母は、細胞壁の柔軟性を失わずに、高密度になるまで増殖を継続することができる。別の態様では、中性pHの使用により、あらゆる回収密度で、柔軟な細胞壁を有する酵母及び/又は細胞壁消化酵素(例えば、グルカナーゼ)に感受性である酵母の産生が可能になる。この形質が望ましいのは、柔軟な細胞壁を有する酵母が、酵母の宿主である細胞でのサイトカイン(例えば、インターフェロン−γ(IFN−γ))の分泌を促進すること等により、通常ではない免疫応答を誘導することができるためである。加えて、細胞壁に配置された抗原に対するより大きな接近可能性が、そのような培養法により付与される。別の態様では、幾つかの抗原の場合、中性pHの使用は、ジチオトレイトール(DTT)で処理することにより、ジスルフィドで結合された抗原を放出することを可能にし、それは、そのような抗原発現酵母がより低いpH(例えば、pH5)の培地で培養される場合では可能でない。最後に、別の態様では、中性pH法を使用して培養された酵母は、IFN−γ、インターロイキン12(IL−12)、及びIL−2を含むがこれらに限定されない少なくともTH1型のサイトカインの産生の増加を誘発し、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−6)等の、他のサイトカインの産生の増加も誘発することができる。
【0205】
1つの実施形態では、酵母グリコシル化の量の制御を使用して、酵母による抗原の、特に表面での発現を制御する。酵母グリコシル化の量は、糖部分はかさ高い傾向があるため、表面に発現された抗原の免疫原性及び抗原性に影響を及ぼす場合がある。そのため、酵母表面における糖部分の存在、及び標的抗原周囲の三次元空間に対するその影響は、本発明による酵母の調節において考慮されるべきである。任意の方法を使用して、酵母のグリコシル化の量を低減させることができる(又は必要に応じて、それを増加させることができる)。例えば、低グリコシル化を有するように選択された酵母突然変異株(例えば、mnn1、och1、及びmnn9突然変異体)を使用してもよく、又は標的抗原に対するグリコシル化受容体配列を突然変異により除去してもよい。或いは、短縮されたグリコシル化パターンを示す酵母(例えば、ピキア)を使用してもよい。また、グリコシル化を低減又は変更する方法を使用して酵母を処理してもよい。
【0206】
本発明の1つの実施形態では、酵母媒体中で抗原又は他のタンパク質を組換え的に発現する代わりに、酵母媒体には、抗原として作用するか及び/又は本発明による免疫調節剤若しくは生物学的応答修飾物質として有用であるタンパク質若しくはペプチド又は炭水化物若しくは他の分子が細胞内に負荷される。その後、抗原及び/又は他のタンパク質を細胞内に含有する酵母媒体を、患者に投与してもよく、又は樹状細胞等の担体に負荷してもよい。ペプチド及びタンパク質は、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用、凍結融解サイクル、及び超音波処理浴等による、当業者に公知の技術により本発明の酵母媒体に直接挿入することができる。ペプチド、タンパク質、炭水化物、又は他の分子を直接負荷することができる酵母媒体には、無傷酵母、並びにスフェロプラスト、ゴースト、又はサイトプラストが含まれ、それらには、産生後に抗原及び他の作用剤が負荷されてもよい。或いは、無傷酵母に抗原及び/又は作用剤を負荷し、その後そこからスフェロプラスト、ゴースト、サイトプラスト、又は細胞内粒子を調製してもよい。この実施形態では、任意の数の抗原及び/又は他の作用剤、少なくとも1、2、3、4、又は任意の整数から最大数百又は数千までの数の抗原及び/又は他の作用剤を酵母媒体に負荷することができ、数は、例えば、微生物の負荷量により、哺乳動物腫瘍細胞又はその部分の負荷量により提供されるであろう。
【0207】
本発明の別の実施形態では、抗原及び/又は他の作用剤は、酵母媒体に物理的に結合されている。抗原及び/又は他の作用剤の酵母媒体に対する物理的な結合は、抗原及び/若しくは他の作用剤を酵母媒体の外側表面に化学的に架橋すること、又は抗体若しくは他の結合パートナーを使用すること等により抗原及び/若しくは他の作用剤を酵母媒体の外側表面に生物学的に結合させることを含むがこれらに限定されない共有結合及び非共有結合法を含む、当技術分野で好適な任意の方法により達成することができる。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、光親和性標識、カルボジイミドによる処理、ジスルフィド結合を結合可能な薬品による処理、及び当技術分野で標準的な他の架橋化学物質による処理を含む方法により達成することができる。或いは、酵母膜の脂質二分子膜の電荷又は細胞壁の組成を変更する化学物質を、酵母媒体と接触させ、その結果、酵母の外側表面が、特定の電荷特徴を有する抗原及び/又は他の作用剤と融合又は結合する可能性をより高める。また、抗体、結合ペプチド、可溶性受容体、及び他のリガンド等の標的化作用剤は、融合タンパク質として抗原に組み込まれていてもよく、又はそうでなければ、抗原の酵母媒体への結合のためにその抗原と結合されていてもよい。
【0208】
抗原又は他のタンパク質が、酵母表面に発現されるか又は酵母表面に物理的に結合されている場合、1つの態様では、スペーサーアームを注意深く選択して、抗原又は他のタンパク質の表面における発現又は含有量を最適化することができる。スペーサーアームのサイズは、抗原又は他のタンパク質が、結合のために酵母表面に露出される程度に影響を及ぼす場合がある。したがって、当業者であれば、どの抗原又は他のタンパク質が使用されているかに応じて、酵母表面の抗原又は他のタンパク質に適切な離間をもたらすスペーサーアームを選択するであろう。1つの実施形態では、スペーサーアームは、少なくとも450個のアミノ酸の酵母タンパク質である。スペーサーアームは、上記で詳細に考察されている。
【0209】
抗原の表面発現を最適化するために考慮すべき別の点は、抗原及びスペーサーアームの組み合わせが、単量体、又は二量体、又は三量体、又は更に多くの互いに結合された単位として発現されるべきであるか否かということである。このような単量体、二量体、三量体等を使用することにより、抗原の適切な離間又は折り畳みが可能になり、全てではなくとも抗原のある部分が、より免疫原性になるような様式で酵母媒体の表面に提示される。
【0210】
更に別の実施形態では、酵母媒体及び抗原又は他のタンパク質は、緩衝液又は他の好適な製剤(例えば、混合物)中で、酵母媒体及び抗原又は他のタンパク質を一緒に穏やかに混合することによる等の、より受動的な、非特異的な、又は非共有結合的な機序により互いに結合される。
【0211】
本発明の1つの実施形態では、酵母媒体及び抗原又は他のタンパク質は両方とも、樹状細胞又はマクロファージ等の担体に細胞内で負荷され、本発明の治療用組成物又はワクチンを形成する。或いは、抗原又は他のタンパク質を、酵母媒体の非存在下で樹状細胞に負荷することができる。
【0212】
1つの実施形態では、無傷酵母(異種抗原又は他のタンパク質を発現する又は発現しない)は、酵母細胞壁調製物、酵母膜粒子、又は酵母断片(つまり、無傷ではない)を生成するように破砕又は処理することができ、幾つかの実施形態では、酵母断片は、免疫応答を増強するための抗原(例えば、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、死滅又は不活化された病原体)を含む他の組成物と共に提供又は投与することができる。例えば、酵素処理、化学処理、又は物理的力(例えば、機械的剪断若しくは超音波処理)を使用して、アジュバントとして使用される部分へと酵母を解体することができる。
【0213】
本発明の1つの実施形態では、本発明に有用な酵母媒体には、死滅又は不活化された酵母媒体が含まれる。酵母の死滅又は不活性化は、当技術分野で公知の様々な好適な方法のいずれかで達成することができる。例えば、酵母の熱不活性化は、酵母を不活化する標準的な方法であり、当業者であれば、必要に応じて、当技術分野で公知の標準的方法により、標的抗原の構造変化をモニタリングすることができる。或いは、化学的方法、電気的方法、放射性方法、又はUV法等の、酵母を不活化する他の方法を使用することができる。例えば、Methods of Enzymology、194巻、Cold Spring Harbor Publishing(1990年)等の、標準的な酵母培養の教科書に開示されている方法を参照されたい。使用される不活性化戦略はいずれも、標的抗原の二次構造、三次構造、又は四次構造を考慮に入れ、その免疫原性を最適化するように構造を保存するべきである。
【0214】
酵母媒体は、被験者に直接投与される調製物を含む本発明の酵母ベースの免疫療法組成物若しくは生成物に製剤化してもよく、又は当業者に公知の多数の技術を使用して、まず樹状細胞等の担体に負荷してもよい。例えば、酵母媒体は、凍結乾燥により乾燥することができる。酵母媒体を含む製剤は、製パン又は醸造作業に使用される酵母について実施されているように、酵母を固塊又は錠剤に詰めることにより調製することができる。加えて、酵母媒体は、宿主又は宿主細胞により許容される等張性緩衝液等の、薬学的に許容される賦形剤と混合されていてもよい。そのような賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、及び他の生理学的にバランスのとれた塩水溶液が含まれる。固定油、胡麻油、オレイン酸エチル、又はトリグリセリド等の非水性賦形剤も使用することができる。他の有用な製剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、グリセロール、又はデキストラン等の粘性促進剤を含有する懸濁剤が含まれる。また、賦形剤は、等張性及び化学的安定性を増強する物質等の少量の添加剤を含有していてもよい。緩衝液の例には、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、及びTris緩衝液が含まれ、保存剤の例には、チメロサール、m−又はo−クレゾール、ホルマリン、及びベンジルアルコールが含まれる。標準的製剤は、液体注射剤又は、注射用の懸濁剤又は液剤として好適な液体に処理することができる固形物のいずれであってもよい。したがって、非液体製剤では、賦形剤は、例えば、デキストロース、ヒト血清アルブミン、及び/又は保存剤を含んでいてもよく、投与前に滅菌水又は生理食塩水をそれに添加することができる。
【0215】
本発明の1つの実施形態では、組成物は、生物学的応答修飾物質化合物、又はそのような修飾物質を生成する能力(つまり、そのような修飾物質をコードする核酸分子で酵母媒体を形質移入することにより)を含むことができ、1つの態様では、そのような生物学的応答修飾物質は、TH17、TH1、及び/又はTreg免疫応答を調節するための本発明に有用な作用剤と同一であってもよい。生物学的応答修飾物質は、上述されている。
【0216】
本発明の組成物は、感染性疾患又は癌を含む特定の疾患又は状態から被験者を防御するのに有用な任意の他の化合物、又はそのような感染症の任意の症状を治療又は軽減する任意の化合物を更に含んでいてもよい。
【0217】
したがって、また本発明は、本発明の方法に有用な様々な組成物を含み、それらの種々の態様は、詳細に上述されている。1つの実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞の産生及び/又は生存を下方制御する作用剤とを含む。別の実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/若しくはIL−23、又はそれらの受容体からなる群から選択されるサイトカインの発現又は活性を下方制御する作用剤とを含む。別の実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)若しくはインターロイキン−27(IL−27)又はそれらのアゴニストとを含む。別の実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17細胞の産生及び/又は生存を上方制御する作用剤とを含む。別の実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−1(IL−1)、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、及び/若しくはIL−23、又はそれらのアゴニストからなる群から選択されるサイトカインとを含む。更に別の実施形態では、組成物は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)インターロイキン−25(IL−25)、インターロイキン−27(IL−27)、又はそれらの受容体の発現若しくは活性を下方制御する作用剤とを含む。
【0218】
別の実施形態では、上述のいずれかの組成物を含む、酵母ベースの免疫療法組成物を含む組成物は、TH1の産生及び/又は生存を上方制御する作用剤を含んでいてもよい。別の実施形態では、上述のいずれかの組成物を含む、酵母ベースの免疫療法組成物を含む組成物は、TH1の産生及び/又は生存を下方制御する作用剤を含んでいてもよい。
【0219】
別の実施形態では、上述のいずれかの組成物を含む、酵母ベースの免疫療法組成物を含む組成物は、Tregの産生及び/又は生存を下方制御する作用剤を含んでいてもよい。
本発明の他の実施形態は、(a)酵母ベースの免疫療法組成物と、(b)TH17応答、TH1応答、及び/又はTreg応答を、本発明の方法と一致する様式で調節するのに有用な作用剤の任意の組み合わせとを含む組成物を含む。
【0220】
本発明は、本明細書に記載の組成物のいずれか、又は本明細書に記載の組成物の個々の成分のいずれかを含むキットも含む。1つの実施形態では、本発明のキットは、酵母ベースの免疫療法組成物、並びにTH17細胞、TH1細胞、及び/又はTregを検出するための1つ又は複数の試薬を含む。そのような試薬には、T細胞増殖、サイトカイン発現若しくは産生、並びに/又はTH17細胞、TH1、及び/若しくはTregに結合する転写因子若しくは受容体の発現を検出するための試薬が含まれ得るがこれらに限定されない。試薬は、遊離形態で存在していてもよく、又はプラスチック皿、マイクロアレイプレート、試験管、及び試験棒等の支持体に固定化されてもよい。キットは、試薬を検出するのに及び/又は陽性若しくは陰性対照を標識するのに好適な試薬、洗浄溶液、及び希釈緩衝液等も含むことができる。キットは、キットを使用するための及び結果を解釈するための1組の書面による説明書も含むことができる。1つの実施形態では、キットは、ハイスループットアッセイ用に考案されている。キットは、本発明のあらゆる臨床法、研究法、又は診断法のために調製及び使用することができる。
【0221】
本発明の組成物の投与方法又は使用方法
本発明は、本発明の組成物を被験者に送達(投与、免疫)することを含む。投与プロセスは、ex vivo又はin vivoで実施することができるが、典型的にはin vivoで実施される。ex vivo投与とは、酵母媒体、抗原、及び任意の他の作用剤又は組成物が、細胞に負荷されるような条件下で、患者から取り出された細胞(樹状細胞)の集団に本発明の組成物を投与し、その細胞を患者に戻す等、患者の外部で調節ステップの一部を実施することを指す。本発明の治療用組成物は、患者に戻してもよく、又は任意の好適な投与方法により患者に投与してもよい。
【0222】
組成物の投与は、全身性、粘膜性、及び/又は標的部位の位置に近位(例えば、腫瘍付近)であってもよい。好適な投与経路は、当業者にとっては、予防若しくは治療しようとする状態のタイプ、使用される抗原、及び/又は標的細胞集団若しくは組織に応じて明白であろう。種々の許容される投与方法には、以下の投与方法が含まれるがこれらに限定されない:静脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、結節内投与、冠内投与、動脈内投与(例えば、頚動脈への)、皮下投与、経皮的送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例えば、エアロゾル)、頭蓋内、脊髄内、眼内、耳内、鼻腔内、経口、経肺投与、カテーテル含浸、及び組織への直接注入。1つの態様では、投与経路には、以下のものが含まれる:静脈内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経口、眼内、関節内、頭蓋内、及び脊髄内。非経口送達には、以下のものが含まれる:皮内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、肺内、静脈内、皮下、心房カテーテル、及び静脈カテーテル経路。耳内送達には、点耳剤が含まれていてもよく、鼻腔内送達には、点鼻剤又は鼻腔内注射が含まれていてもよく、眼内送達には目薬が含まれていてもよい。エアロゾル(吸入)送達は、当技術分野で標準的な方法を使用して実施することもできる(例えば、Striblingら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 189巻:11277〜11281頁、1992年を参照、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。粘膜免疫を調節する他の投与経路は、ウイルス感染症の治療に有用である。そのような経路には、以下のものが含まれる:気管支内、皮内、筋肉内、鼻腔内、他の吸入的、直腸的、皮下的、局所的、経皮的、膣的、尿道的経路。1つの態様では、本発明の免疫療法組成物は、皮下投与される。
【0223】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物に関して、好適な単一用量は、一般的には、好適な期間にわたって1回又は複数回を投与される場合、患者体内の所与の細胞タイプ、組織、又は領域に、酵母媒体及び抗原(含まれている場合)を、抗原特異的免疫応答を誘発するのに有効な量で効果的に提供することが可能な用量である。例えば、1つの実施形態では、本発明の酵母媒体の単一用量は、組成物が投与されている生物の体重1キログラム当たり約1×10〜約5×10個の酵母細胞当量である。1つの態様では、本発明の酵母媒体の単一用量は、1用量当たり(つまり、1つの生物当たり)約0.1Y.U.(1×10個の細胞)〜約100Y.U.(1×10個の細胞)であり、0.1×10個細胞の増加間隔での任意の中間用量(つまり、1.1×10、1.2×10、1.3×10...)が含まれる。1つの実施形態では、用量には、1Y.U.〜40Y.U.の用量が含まれ、1つの態様では、10Y.U〜40Y.U.の用量が含まれる。1つの実施形態では、用量は、個体の異なる部位にであるが、同じ投与期間中に投与される。例えば、40Y.U.用量は、1投与期間中に個体の4つの異なる部位に10Y.U.用量を注射することにより投与されてもよい。
【0224】
例えば、抗原に対する免疫応答が減退した場合、又は免疫応答を提供するか若しくは特定の抗原に対する記憶応答を誘導するために必要な場合、治療用組成物の「ブースター」又は「追加免疫」が投与される。ブースターは、最初の投与後の約1、2、3、4、5、6、7、又は8週間から、1か月、2か月、3か月、1年、数年の間隔をおいて投与される。1つの実施形態では、投与スケジュールは、生物の体重1kg当たり約1×10〜約5×10個の酵母細胞当量の組成物が、数週間から数か月間、数年間の期間にわたって、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上投与されるスケジュールである。
【0225】
本発明で投与するためのTH17細胞、TH1細胞、及び/又はTregを制御する作用剤は、投与しようとする特定の作用剤タイプ毎に、当業者により直ちに知られるか又は決定される用量及びプロトコールにより投与することができる。本発明に有用な作用剤に関して、1つの態様では、タンパク質又は抗体は、被験者の体重の1kg当たり約50U〜約15,000Uの量で投与される。別の実施形態では、タンパク質又は抗体は、患者の体重の1kg当たり約0.01μg〜約10mg、より好ましくは患者の体重1kg当たり約0.1μg〜約100μgの量で投与される。送達される化合物が核酸分子である場合、適切な単一用量は、送達された核酸1μgにつき、総組織タンパク質1mg当たり少なくとも約1pgの発現タンパク質をもたらす。低分子は、所与の低分子について指定される好ましい用量に従って送達され、当業者であれば決定することができる。
【0226】
本明細書の1つの態様では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物と同時に投与される。本明細書の1つの態様では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物と連続的に投与される。別の実施形態では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物が投与される前に投与される。別の実施形態では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物が投与された後に投与される。1つの実施形態では、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物との交互投与で、又は酵母ベースの組成物が、作用剤の1回又は複数回の連続投与間で又は連続投与と共に所定の間隔をおいて、又はその逆で投与されるプロトコールで投与される。1つの実施形態では、酵母ベースの免疫療法組成物は、作用剤の投与を開始する前のある期間にわたって1回又は複数回投与される。言い換えれば、酵母ベースの免疫療法組成物は、ある期間単独療法として投与され、その後作用剤投与が、新たな用量の酵母ベースの免疫療法と同時に、又は酵母ベースの免疫療法と交互する様式のいずれかで追加される。或いは、作用剤は、酵母ベースの免疫療法組成物の投与を始める前に、ある期間にわたって投与されてもよい。1つの態様では、酵母は、作用剤を発現又は保持するように操作されているか、又は異なる酵母が、作用剤を発現又は保持するように操作又は生成される。
【0227】
組成物の投与に関して本明細書で使用される場合、用語「同時に」は、組成物(例えば、酵母ベースの免疫療法組成物、及びTH17細胞を調節する作用剤)の各々、特にそのような組成物の初回投与を、本質的に同時に、又は同じ投与期間内に、又は免疫療法組成物による免疫系の初回抗原刺激の初期効果が生じる期間内(例えば、1〜2日以下以内)に投与することを意味する。簡単に言えば、同時投与は、組成物の全てを厳密に同時に投与する必要はなく、むしろ、組成物全ての投与は、免疫系を初回刺激し、同時に作用剤の効果を達成するために、患者の1投与予定内で実施されるべきである(例えば、1つの組成物が、最初に投与され、その直後又はその直近で第2の組成物が投与される等でもよい)。組成物が同じ部位に投与される場合等の幾つかの状況では、組成物は、混合物で提供されてもよいが、同じ部位に投与される場合でさえ、同一投与期間中の各組成物の連続投与が使用されてもよい。1つの態様では、組成物は、同一の1〜2日以内に投与され、別の態様では、同じ日に投与され、別の態様では、同一の12時間以内に投与され、別の態様では、同一の8時間以内に投与され、別の態様では、同一の4時間以内に投与され、別の態様では、同一の1、2、又は3時間以内に投与され、別の態様では、同一の1、2、3、4、6、7、8、9、又は10分以内に投与される。
【0228】
本発明の1つの実施形態では、酵母ベースの免疫療法組成物及び作用剤は、同時に投与されるが、患者の異なる身体部位に投与される。例えば、1つの組成物又は作用剤を、個体の身体の1つ又は複数の部位に投与し、他の組成物又は作用剤を、個体の身体の1つ又は複数の異なる部位、例えば身体の異なる側、又は異なる流入領域リンパ節付近に投与してもよい。別の実施形態では、免疫療法組成物及び作用剤は、患者の同じ部位又は実質的に隣接した部位に同時に投与される。実質的に隣接した部位は、最初の組成物又は作用剤が投与される注射部位と厳密に同じではないが、最初の注射部位と非常に近接(隣接)している部位である。1つの実施形態では、免疫療法組成物及び作用剤は、混合物で投与される。幾つかの実施形態は、投与手法の組み合わせを含んでいてもよい。
【0229】
本発明の方法では、組成物及び治療用組成物は、任意の脊椎動物を含む動物に、特に、限定ではないが、霊長類、げっ歯動物、家畜、及び家庭ペットを含む脊椎動物綱、哺乳綱の任意のメンバーに投与することができる。家畜には、消費されるか又は有用な産物を生成する哺乳動物(例えば、羊毛生産用のヒツジ)が含まれる。防御する哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、及びブタが含まれる。
【0230】
「個体」は、限定ではないがヒトを含む哺乳動物等の脊椎動物である。哺乳動物には、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、マウス、及びラットが含まれるがこれらに限定されない。用語「個体」は、用語「動物」、「被験者」、又は「患者」と同義に使用することができる。
【0231】
本発明のスクリーニング法、研究法、及び診断法
また、本発明は、酵母ベースの免疫療法剤組成物により誘発される二重TH1/TH17免疫応答の発見と関連する種々のスクリーニング法及び研究法又は診断法を含む。1つの実施形態では、本発明は、被験者をスクリーニングして、酵母ベースの免疫療法に対するTH1媒介性免疫応答性を予測する方法を含む。この方法は、(a)被験者に由来するT細胞を、酵母ベースの免疫療法組成物と接触した抗原提示細胞(APC)とin vitroで接触させることと、(b)APCとの接触に応答したT細胞増殖、APCとの接触に応答したT細胞によるIL−17の産生、及びAPCとの接触に応答したT細胞による転写因子、レチノイド関連オーファン受容体(ROR)の発現からなる群から選択されるT細胞の表現型を検出することとを含む。そのT細胞がAPCとの接触に応答して増殖するか、又はIL−17の正常産生若しくはRORの正常発現を示す被験者は、TH1媒介性応答が望ましい、酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための良好な候補であると予測される。そのT細胞がAPCとの接触に応答して増殖できないか若しくは増殖が不良であるか、又はそのT細胞が正常量を超えるIL−17を産生するか若しくは正常よりも高いRORの発現を示す被験者は、TH17細胞の産生又は生存を阻害する作用剤と共に、酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための候補であると予測される。そのT細胞が正常量より少ないIL−17を産生するか又は正常よりも低いROR発現を示す被験者は、TH17細胞の産生又は生存を増加させる作用剤と共に、酵母ベースの免疫療法組成物を投与するための候補であると予測される。TH17細胞の産生、発現、又は生存を増加又は減少させる(上方制御又は下方制御する)作用剤は、本明細書に記述されている。
【0232】
この実施形態によると、T細胞の試料は、典型的には懸濁状態で被験者から取得され、それは、本発明の方法で評価するのに好適な数のT細胞のコレクションがもたらされる任意の好適な方法により、組織若しくは器官から(例えば、生検により)又は体液(末梢血単核細胞)から収集される。
【0233】
T細胞増殖アッセイは、当技術分野で周知であり、本明細書で既に一般的に記載されている。RORγt等のサイトカイン及び他のタンパク質の発現の検出は、核酸又はタンパク質の検出により実施することができる。核酸配列は、遺伝子配列又は発現を測定又は検出する任意の好適な方法又は技術により検出することができる。そのような方法には、PCR、逆転写PCR(RT−PCR)、in situ PCR、in situハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、配列解析、マイクロアレイ解析、レポーター遺伝子の検出、又は他のDNA/RNAハイブリダイゼーションプラットフォームが含まれるがこれらに限定されない。タンパク質は、例えば、以下のもの等の形式で抗体を使用して検出することができる:ウエスタンブロッティング、免疫ブロッティング、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学ルミネセンス、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分類(FACS)、及びフローサイトメトリー。
【0234】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物に対する抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定する方法を含む。この方法は、(a)非ヒト動物を酵母ベースの免疫療法組成物で免疫し、TH17応答が非ヒト動物で阻害又は阻止されることと、(b)(a)の免疫された非ヒト動物に、等数の標識標的細胞及び標識非標的細胞の混合物を注射し、標的細胞が、酵母ベースの免疫療法組成物がそれに対してT細胞応答を誘発する抗原を発現又は提示し、非標的細胞は、抗原を発現又は提示せず、標的細胞が、非標的細胞とは異なるように標識されていることと、(c)標識標的細胞及び標識非標的細胞を含有する(b)の非ヒト動物に由来する細胞の集団を収集することと、(d)非標的細胞に対する標的細胞の比率の違いを検出することにより、非ヒト動物の抗原特異的CD8+ T細胞を測定し、非標的細胞と比較した標的細胞の低減が、非ヒト動物の抗原特異的CD8+ T細胞応答のレベルを示すこととを含む方法を含む。本発明のこの実施形態の1つの態様では、標的細胞は、標的抗原のペプチドをパルスした脾臓細胞である。1つの態様では、(c)の細胞の集団は、脾臓に由来する。1つの態様では、標的細胞は、標的抗原を発現する腫瘍細胞である。1つの態様では、(c)の細胞の集団は、肝臓に由来する。1つの態様では、ステップ(d)は、フローサイトメトリーを使用して実施される。
【0235】
本発明の別の実施形態は、酵母ベースの免疫療法組成物に対する抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定する方法に関する。この方法は、(a)非ヒト動物を酵母ベースの免疫療法組成物で免疫し、TH17応答が非ヒト動物で阻害又は阻止されることと、(b)(a)の非ヒト動物から、CD8+ T細胞を含有する細胞の集団を収集することと、(c)抗原−MHC複合体を検出する(c)の集団中のCD8+ T細胞の能力を検出することにより、非ヒト動物での抗原特異的CD8+ T細胞応答を測定することとを含む。1つの態様では、(c)の細胞の集団は、末梢血単核細胞を含有する集団である。1つの態様では、抗原−MHC複合体は、四量体である。
【0236】
CD8+ T細胞応答を測定するための上述の方法のいずれかにおいて、非ヒト動物は、任意の好適な非ヒト動物であってよく、1つの態様では、マウス等のげっ歯動物である。1つの態様では、IL−1、IL−6、IL−17、IL−21、IL−22、又はIL−23から選択されるサイトカインの発現又は活性は、非ヒト動物で阻止又は阻害される。1つの態様では、非ヒト動物は、IL−6ホモ接合型ノックアウトマウスである。
【0237】
任意の上述の方法における細胞、細胞溶解産物、核酸分子、又はタンパク質が、混合すること等により、別の試薬又は化合物に曝露又は接触する条件は、任意の好適な培養又はアッセイ条件である。
【0238】
本発明に有用な一般的な技術
本発明の実施には、別様の指定がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術が使用されることになり、それらは、当業者に周知である。そのような技術は、以下の文献等で十分に説明されている:Methods of Enzymology、194巻、Guthrieら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990年);Biology and activities of yeasts、Skinnerら編、Academic Press(1980年);Methods in yeast genetics:a laboratory course manual、Roseら、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990年);The Yeast Saccharomyces:Cell Cycle and Cell Biology、Pringleら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1997年);The Yeast Saccharomyces:Gene Expression、Jonesら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1993年);The Yeast Saccharomyces:Genome Dynamics,Protein Synthesis,and Energetics、Broachら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1992年);Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989年)及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrook及びRussel、2001年)、(本明細書では合わせて「Sambrook」と呼ぶ);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987年、2001年までの追補を含む);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994年);Harlow及びLane(1988年)Antibodies,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New York;Harlow及びLane(1999年)Using Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(本明細書では合わせて「Harlow及びLane」と呼ぶ)、Beaucageら編、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry、 John Wiley & Sons,Inc.、New York、2000年);Casarett and Doull’s Toxicology The Basic Science of Poisons,C.Klaassen編、第6版(2001年)、及びVaccines,S.Plotkin及びW.Orenstein編、第3版(1999年)。
【0239】
一般的な定義
「細胞媒介性」免疫応答(本明細書のあらゆる箇所で、用語「細胞性」免疫応答と同義に使用することができる)は、一般的に、Tリンパ球(細胞傷害性リンパ球(CTL)を含む)、樹状細胞、マクロファージ、及びナチュラルキラー細胞を含む免疫細胞の抗原に対する応答、並びにそれら細胞の活性化及び増殖、CTLエフェクター機能、適応免疫反応及び先天性免疫応答に関与する他の細胞の機能に影響を及ぼすサイトカイン産生、並びに記憶T細胞発生を含むがこれらに限定されないそのような応答に関連するプロセスの全てに対する応答を指す。
【0240】
「ワクチン接種」又は「免疫」は、抗原を単独で又はアジュバントと共に投与した結果としての、抗原又はその免疫原性部分に対する免疫応答の誘発(誘導)を指す。ワクチン接種は、防御又は治療効果をもたらし、抗原(又は抗原の供給源)に対するその後の接触が、動物の疾患又は状態を低減又は予防する抗原(又は供給源)に対する免疫応答を誘発する。ワクチン接種の概念は、当技術分野で周知である。免疫療法組成物(ワクチン)の投与により誘発される免疫応答は、組成物を投与しない場合と比較して、免疫応答(例えば、細胞媒介性応答、体液性応答、サイトカイン産生)のいずれかの側面の任意の検出可能な変化であり得る。
【0241】
本発明によると、「異種性アミノ酸」は、指定のアミノ酸配列と隣接することが天然では見出されないか(つまり、自然界、in vivoに見出されない)、指定のアミノ酸配列の機能と関連しないか、又は所与のアミノ酸配列が由来する生物の標準的コドン使用頻度を使用して、天然配列のそのようなヌクレオチドが翻訳された場合に、それが遺伝子に生じる指定のアミノ酸配列をコードする天然核酸配列を隣接するヌクレオチドによりコードされないであろうと考えられるアミノ酸の配列である。したがって、抗原に対して異種性である少なくとも2つのアミノ酸残基は、抗原に隣接することが天然では見出されない2つの任意のアミノ酸残基である。
【0242】
本発明によると、異種性融合タンパク質を含む、本発明の酵母媒体に関して「異種性」のタンパク質又は「異種性」の抗原への言及は、タンパク質又は抗原は、酵母により天然で発現されるタンパク質又は抗原ではないが、融合タンパク質は、酵母により天然で発現される酵母配列若しくはタンパク質又はその部分(例えば、本明細書に記載のAgaタンパク質)を含んでいてもよいことを意味する。例えば、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質及び酵母Agaタンパク質の融合タンパク質は、そのような融合タンパク質が、酵母により天然では発現されないため、本発明の酵母媒体に関して異種性タンパク質であるとみなされる。
【0243】
本発明によると、語句「選択的に結合する」とは、本発明の抗体、抗原結合断片、又は結合パートナーが、指定のタンパク質と優先的に結合する能力を指す。より詳しくは、語句「選択的に結合する」とは、別のタンパク質(例えば、抗体、その断片、又は抗原の結合パートナー)に対する1つのタンパク質の特異的結合を指し、結合レベルは、任意の標準的アッセイ(例えば、イムノアッセイ)により測定すると、アッセイのバックグラウンド対照より統計的に有意に高い。例えば、イムノアッセイを実施する場合、典型的には、対照には、抗体又は抗原結合断片のみを含有する(つまり、抗原の非存在下の)反応ウェル/チューブが含まれ、抗原の非存在下における抗体又はその抗原結合断片による反応性(例えば、ウェルに対する非特異的結合)の量は、バックグラウンドであるとみなされる。結合は、酵素免疫法(例えば、ELISA、免疫ブロッティングアッセイ等)を含む当技術分野で標準的な様々な方法を使用して測定することができる。
【0244】
本発明におけるタンパク質又はポリペプチドへの言及は、全長タンパク質、融合タンパク質、又はそのようなタンパク質の任意の断片、ドメイン、立体構造エピトープ、若しくは相同体を含む。より詳しくは、本発明によると、単離されたタンパク質は、その天然環境(つまり、人工的操作を受けていない)から取り出されたタンパク質(ポリペプチド又はペプチドを含む)であり、例えば、精製されたタンパク質、部分的に精製されたタンパク質、組換え的に産生されたタンパク質、及び合成的に生成されたタンパク質を含むことができる。したがって、「単離された」は、タンパク質が精製された程度を反映しない。本発明の1つの態様では、本発明の単離されたタンパク質は、組換え的に産生される。本発明によると、用語「修飾」及び「突然変異」は、特にタンパク質又はその部分のアミノ酸配列の修飾/突然変異に関して、同義に使用することができる。
【0245】
本明細書で使用される場合、用語「相同体」は、天然タンパク質又はペプチド(つまり「原型」又は「野生型」タンパク質)に対する軽微な修飾により、天然タンパク質又はペプチドと異なるが、天然形態の基本的タンパク質構造及び側鎖構造を維持するタンパク質又はペプチドを指すために使用される。そのような変化には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:1つ又は少数のアミノ酸側鎖の変化;欠失(例えば、タンパク質又はペプチドの切断型)、挿入、及び/又は置換を含む1つ又は少数のアミノ酸変化;1つ又は少数の原子の立体化学の変化;及び/又はメチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミタート化(palmitation)、アミド化、及び/又はグリコシルホスファチジルイノシトールの付加を含むがこれらに限定されない軽微な誘導体化。相同体は、天然タンパク質又はペプチドと比較して、増強された、低下した、又は実質的に同様のいずれの特性を有していてもよい。相同体は、タンパク質のアゴニスト又はタンパク質のアンタゴニストを含むことができる。相同体は、単離された天然タンパク質の直接修飾、直接的タンパク質合成、又は例えば古典的技術若しくは組換えDNA技術を使用してタンパク質をコードする核酸配列を修飾し、ランダム突然変異誘発若しくは標的突然変異誘発を達成することを含むがこれらに限定されないタンパク質を産生するための当技術分野で公知の技術を使用して産生することができる。
【0246】
所与のタンパク質の相同体は、基準タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一、又は少なくとも約95%同一、又は少なくとも約96%同一、又は少なくとも約97%同一、又は少なくとも約98%同一、又は少なくとも約99%同一(又は整数の増加間隔で45%〜99%の任意の同一性パーセント)のアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。1つの実施形態では、相同体は、基準タンパク質の天然アミノ酸配列と100%未満の同一性、約99%未満の同一性、約98%未満の同一性、約97%未満の同一性、約96%未満の同一性、約95%未満の同一性等であり、1%の増加間隔で約70%未満の同一性であるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。
【0247】
本明細書で使用される場合、別様の指示がない限り、同一性パーセント(%)への言及は、以下のものを使用して実施される相同性の評価を指す:(1)アミノ酸探索の場合はblastpを使用し、核酸探索の場合はblastnを使用した、標準的初期設定パラメーターを用いたBLAST2.0 Basic BLAST相同性探索、この探索では、クエリー配列は、初期設定では低複雑度領域がフィルタリングされる(Altschul,S.F.、Madden,T.L.、Schaaffer,A.A.、Zhang,J.、Zhang,Z.、Miller,W.、及びLipman,D.J.(1997年)「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs.」Nucleic Acids Res.25巻:3389〜3402頁に記載されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);(2)BLAST2アラインメント(下記に記載のパラメーターを使用);(3)及び/又は標準的初期設定パラメーターを用いたPSI−BLAST(位置特異的反復BLAST)。BLAST2.0 Basic BLASTとBLAST2とで標準的パラメーターが多少異なるため、2つの特定の配列が、BLAST2プログラムを使用して有意な相同性を有すると認識される場合がある一方で、その配列の1つをクエリー配列として使用したBLAST2.0 Basic BLASTで実施した探索は、第2の配列を最高一致として特定しない場合があることに留意されたい。加えて、PSI−BLASTは、自動化された使い易いバージョンの「プロファイル」探索を提供し、この探索は、配列相同体を探索するための高感度法である。このプログラムは、まずギャップを考慮したBLASTデータベース探索を実施する。PSI−BLASTプログラムは、結果として返ってきた任意の有意なアラインメントからの情報を使用して位置特異的スコアマトリックスを構築し、それにより次回のデータベース探索クエリー配列が置換される。このようにして、これらのプログラムのいずれか1つを使用することにより、同一性パーセントを決定することができることが理解されるはずである。
【0248】
2つの特定の配列は、Tatusova及びMadden、(1999年)、「Blast 2 sequences−a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」、FEMS Microbiol Lett.174巻:247〜250頁(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のように、BLAST2配列を使用して、互いにアラインすることができる。BLAST2配列アラインメントは、BLAST2.0アルゴリズムを使用してblastp又はblastnで実施し、2配列間のギャップを考慮したBLAST探索(BLAST2.0)を行い、その結果生じる配列にギャップ(欠失及び挿入)の導入が許容される。本明細書では、明瞭性のために、BLAST2配列アラインメントは、以下のような標準的初期設定パラメーターを使用して実施される。
【0249】
blastnの場合、0 BLOSUM62マトリックスを使用する:
一致報酬=1
不一致ペナルティ=−2
空白ギャップ(5)及び伸長ギャップ(2)ペナルティ
ギャップx_dropoff(50)期待値(10)ワードサイズ(11)フィルター(オン)
blastpの場合、0 BLOSUM62マトリックスを使用する:
空白ギャップ(11)及び伸長ギャップ(1)ペナルティ
ギャップx_dropoff(50)期待値(10)ワードサイズ(3)フィルター(オン)
単離された核酸分子は、その天然環境(つまり、人工的な操作を受けていない)から取り出された核酸分子であり、その天然環境は、核酸分子が天然で見出されるゲノム又は染色体である。したがって、「単離された」は、核酸分子が精製された程度を必ずしも反映しないが、核酸分子が天然で見出されるゲノム全体又は染色体全体を、その分子が含んでいないことを示す。単離された核酸分子は、遺伝子を含むことができる。遺伝子を含んでいる単離された核酸分子は、そのような遺伝子を含んでいる染色体の断片ではなく、むしろ遺伝子に関連するコード領域及び調節領域を含むが、同じ染色体上に天然で見出される更なる遺伝子を含んでいない。また、単離された核酸分子は、天然では指定の核酸配列を通常は隣接しない更なる核酸(つまり異種性配列)により隣接された(つまり、配列の5’及び/又は3’末端で)、指定の核酸配列を含んでいてもよい。単離された核酸分子は、DNA、RNA(例えば、mRNA)、又はDNA若しくはRNAのいずれかの誘導体(例えば、cDNA)を含んでいてもよい。語句「核酸分子」は、主に物理的な核酸分子を指し、語句「核酸配列」は、主に核酸分子のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの語句は、タンパク質又はタンパク質のドメインをコードすることが可能な、特に核酸分子又は核酸配列に関して同義に使用することができる。
【0250】
組換え核酸分子は、形質移入される細胞での核酸分子の発現を効果的に制御することが可能な任意の転写制御配列の少なくとも1つに作用可能に結合された、本明細書に記載の任意の1つ又は複数のタンパク質をコードする任意の核酸配列の少なくとも1つを含むことができる分子である。語句「核酸分子」は、主に物理的な核酸分子を指し、語句「核酸配列」は、主に核酸分子のヌクレオチドの配列を指すが、この2つの語句は、タンパク質をコードすることが可能な、特に核酸分子又は核酸配列に関して同義に使用することができる。加えて、語句「組換え分子」は、主に転写制御配列に作用可能に結合された核酸分子を指すが、動物に投与される語句「核酸分子」と同義に使用することができる。
【0251】
組換え核酸分子は、組換えベクターを含み、組換えベクターは、任意の核酸配列、典型的には異種性配列であり、本発明の融合タンパク質をコードする単離された核酸分子に作用可能に結合されており、融合タンパク質の有効な組換え体産生が可能であり、本発明により核酸分子を宿主細胞に送達することが可能である。そのようなベクターは、ベクターに挿入される単離された核酸分子に隣接することが天然では見出されない核酸配列を含有することができる。ベクターは、RNA又はDNAのいずれでもよく、原核生物又は真核生物のいずれでもよく、本発明の1つの態様では、ウイルス又はプラスミドである。組換えベクターは、クローニング、配列決定、及び/又は核酸分子の別様な操作に使用することができ、そのような分子の送達に使用することができる(例えば、DNAワクチン又はウイルスベクターに基づくワクチンでのように)。組換えベクターは、核酸分子の発現に使用してもよく、発現ベクターと呼ばれる場合もある。幾つかの組換えベクターは、形質移入された宿主細胞で発現することが可能である。
【0252】
本発明の組換え分子では、核酸分子は、転写制御配列、翻訳制御配列、複製開始点、及び宿主細胞と適合性をもち、本発明の核酸分子の発現を制御する他の制御配列等の制御配列を含有する発現ベクターに作用可能に結合されている。特に、本発明の組換え分子には、1つ又は複数の発現制御配列に作用可能に結合されている核酸分子が含まれる。語句「作用可能に結合された」は、宿主細胞に形質移入(つまり、形質転換、変換導入、又は形質移入)された際にその分子が発現されるような様式で、核酸分子を発現制御配列に結合させることを指す。
【0253】
本発明によると、用語「形質移入」は、外来性核酸分子(つまり、組換え核酸分子)を細胞に挿入することができる任意の方法を指すために使用される。用語「形質転換」は、そのような用語が、藻類、細菌、及び酵母等の微生物細胞への核酸分子導入を指すために使用される場合、用語「形質移入」と同義に使用することができる。微生物系では、用語「形質転換」は、微生物による外来性核酸の獲得による遺伝的変化を記述するために使用され、用語「形質移入」と本質的に同義である。したがって、形質移入技術には、形質転換、細胞の化学処理、粒子衝突、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、感染、及びプロトプラスト融合が含まれるがこれらに限定されない。
【0254】
以下の実験結果は、例示のために提供されており、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
実施例
実施例1
以下の例は、全酵母ベースの免疫療法免疫による、抗原特異的CD8+ T細胞媒介性一次免疫の発生を実証する。
【0255】
オボアルブミン発現するように操作された酵母によるマウスの免疫が、オボアルブミン発現腫瘍の細胞媒介性破壊の発生に結び付くことは以前に示されている(Stubbsら、Nat.Med.7巻:625〜629頁(2001年))。in vivoでの効率的な腫瘍破壊は、CD8+ T細胞を必要とし、少なくとも2回の免疫後に発生した。
【0256】
強化された免疫手順を使用して、本発明者らは、検出可能な抗原特異的CD8細胞媒介性一次免疫反応を発生させることができるか否かを決定した。抗原特異的一次免疫応答は、抗原特異的T細胞の出現頻度が向上された場合にその検知がより簡単になるであろうという前提に基づく最初の手法は、免疫優勢オボアルブミンペプチド、SIINFEKL(配列番号26)に特異的な単一のT細胞受容体を保持するCD8 T細胞がT細胞レパートリーで優勢である、OT−1トランスジェニックマウスに由来するT細胞の養子移入である。オボアルブミンを組換え発現するように操作された全サッカロマイセス・セレビシエ酵母(OVAXと呼ぶ)による1回の免疫は、CFSE染色の希釈により明確にしたところ、養子移入されたOT−1 CD8 T細胞の活性化及び増殖をもたらした(図1A)。同様の結果が、可溶性オボアルブミン(ova)と、CUP1プロモータープラスミドのみで形質転換されたサッカロマイセス・セレビシエ酵母(YVEC)との混合物で観察された(YVEC+ova;図1B)。オボアルブミン特異的T細胞活性化は、YVEC酵母のみ(図1C)又は未感作養子レシピエント(図1D)では観察されなかった。これらの結果は、酵母が可溶性抗原の交差提示をin vitroで誘導することができると結論付けた従来の研究(Stubbsら、2001年、上記;Hallerら、2007年、Vaccine 25巻:1452〜1463頁)を裏付けたが、本実験は、in vivo手法を使用して交差提示を実証した。
【0257】
CD40シグナル伝達は、サイトカイン産生、MHCクラスII及びCD80/86等の同時刺激分子の誘導、並びに交差提示の促進により樹状細胞を成熟させ、これらの全てが、より効率的なT細胞活性化及び分化を提供するとみなされている。
【0258】
単回の免疫(つまり、一次応答)で内因性の抗原特異的CD8+ T細胞を発生させることができるように酵母ベースの免疫手法の感受性を最適化及び増加させるために、本発明者らは、可溶性抗原、この場合はオボアルブミンが共に加えられた酵母と、樹状細胞(DC)活性化抗原CD40(αCD40又はaCD40)に対する抗体との混合物を使用した。手短に言えば、C57B1/6野生型(WT)マウスを、図2A〜2Dに示されているように、YVEC、可溶性オボアルブミン、及び/又は抗CD40(抗原提示細胞上のCD40分子を標的とする抗体)の種々の組み合わせを用いて、静脈内に1回免疫した。7日後に、末梢血リンパ球を血液試料から単離した。末梢血細胞を、活性化T細胞で発現されたCD44マーカー(Y軸)及びオボアルブミン抗原特異的CD8+ T細胞(X軸)について染色した。フローサイトメトリーのヒストグラムは、生産的な免疫応答を示すT細胞活性化マーカー及び抗原特異的マーカーが両方とも染色される、試料中の細胞の相対数を示す。両マーカーが染色される細胞は、ヒストグラムの右上四分部に示される。
【0259】
上記の図1A〜1Dに示されている結果と比較して、抗CD40抗体が実験に含まれていた場合、より活発な一次応答が観察された(図2A〜2Dを参照)。抗CD40抗体は、抗原提示細胞上のCD40と結合する手段として使用されたが、それは、これにより、より効率的な抗原提示が提供されると考えられているためである(Ahonenら、2009年)。抗CD40抗体をオボアルブミン及び酵母と組み合わせたこの免疫手法(酵母+ova+aCD40)は、オボアルブミン+酵母のみ(酵母+ova;図2A)又はオボアルブミン+抗CD40のみ(ova+aCD40;図2B)と比較して、実証可能な四量体陽性内因性OVA抗原特異的CD8+ T細胞を、野生型(WT)動物にもたらした(図2C)。内因性一次抗原特異的CD8+ T細胞の発生により、一次免疫応答シグナルを修飾するためにOT−1トランスジェニックT細胞養子移入をする必要性がなくなった。酵母+オボアルブミン+抗CD40抗体は、約5%の抗原特異的CD8の出現頻度をもたらしたが(図2C)、オボアルブミン及び抗CD40と組み合わせたTLR2アゴニスト、pam3cysによる免疫(図2D)は、酵母免疫と比較して、抗原特異的CD8+ T細胞のおよそ3倍の増加(5.8対15.8)をもたらした(図2C)。
【0260】
実施例2
以下の例は、全酵母ベースの免疫による抗原特異的CD8+細胞媒介性一次免疫のTLR依存的発生が、IL−12及びCD4+ TH1 T細胞により明らかに影響されることを示す。
【0261】
この一連の実験では、TH1 T細胞の酵母ベースの発生と抗原特異的CD8+ T細胞の酵母ベースの発生との間にどのように関係性があるのか、及び特定のタイプの免疫応答の阻害により細胞媒介性免疫応答を調節することができるか否かを研究した。
【0262】
本発明者らは、最初に、酵母関連病原体分子パターンの認識能力を欠損したマウス;Th1特異的転写因子、Tbetを欠損したマウス;及びTH1関連サイトカイン、IL−12を認識することができないマウスで発生した全酵母ベースの免疫応答に注目した。酵母は、抗原提示細胞上のToll様受容体(TLR)に結合し、酵母に結合した可能性が最も高いTLRは、TLR2及び4であると考えられ、それらは両方ともMyd88シグナル伝達依存性である。Tbetは、Th1特異的転写因子であり、Tbetをコードする遺伝子を欠如するマウスは、Th1型のCD4+ T細胞を産生しない。IL−12は、DC上のTLRと結合することにより開始されるTH1誘導と関連するサイトカインである(Pasare及びMedzhitov、2003年)。
【0263】
手短に言えば、様々な群のマウス(下述)を、図3〜5に示されているように、YVEC(空ベクターを含有する酵母、「酵母」と表記される)、可溶性オボアルブミン(ova)、pam3cysとして知られているTLR2アゴニスト、及び/又は抗CD40(aCD40;抗原提示細胞上のCD40分子を標的とする抗体)の種々の組み合わせを用いて、静脈内に1回免疫した。幾つかの実験には、免疫されなかった未感作動物が含まれていた(「未感作」と表記される)。7日後に、末梢血リンパ球を血液試料から単離し、末梢血細胞を、上記の実施例1の実験に記載されているように、活性化T細胞上に発現されたCD44マーカー(図3及び4、Y軸)、並びにオボアルブミン抗原特異的CD8+ T細胞(図3及び4、X軸)について染色した。
【0264】
図3A〜3Iは、酵母ベースの免疫療法剤により発生されるCD8+応答におけるTH1活性化の必要性評価する実験の結果を示す。IL−12Rβ−/−マウスは、IL−12受容体サブユニットを欠如しており、したがってIL−12に誘導される生物学的機能の欠損がもたらされている。Tbet−/−マウスは、TH1細胞の産生に関連する主要な転写因子、Tbetを欠如しており、したがってTH1 CD4+ T細胞を欠損している。野生型マウス(WT;図3A〜3C)、IL−12Rβ−/−マウス(図3D〜3F)、及びtbet−/−マウス(図3G〜3I)を、(1)無(「未感作」と表記される;図3A、3D、3G)、(2)YVEC+可溶性オボアルブミン+抗CD40(「酵母」と表記される;図3B、3E、3H)、又は(3)pam3cys+可溶性オボアルブミン+抗CD40(「pam3cys」と表記される;図3C、3F、3I)で免疫した。
【0265】
図3A〜3Iの各パネルの右上四分部には、産生された抗原特異的CD8+ T細胞のパーセントが示されており、例えば、WTマウスを使用した場合、酵母ベースの免疫(図3B)は、pam3cys免疫と比較して(図3C)、およそ40%のCD8 T細胞の出現頻度を発生させた(それぞれ、7.5%対18.7%)。
【0266】
TH1 CD4+ T細胞を発生させることができないマウス(tbet−/−マウス)(Szaboら、2000年)では、酵母が発生させた応答は、本質的にバックグラウンドにまで低減された(図3H)。同様の結果が、IL−12受容体を欠如するマウスでIL−12依存性TH1応答を除去することにより得られた(図3E)。IL−12受容性の妨害及びTH1 CD4+ T細胞の除去はいずれも、pam3cys応答に対して、いかなる有意な効果も示さなかった(図3F及び3I)。これらのデータは、pam3cys及び酵母が、幾つかの重要な点で異なることを示した。第1に、CD4+ TH1サブセット、又はこの応答を駆動する樹状細胞(DC)に由来する主要なサイトカイン(IL−12)をノックアウトすることにより、酵母で免疫された動物では、CD8+ T細胞の発生が、バックグラウンドまで又はその付近まで低下したが、pam3cysのCD8+ T細胞発生には明白な効果を示さなかった。このように、酵母ベースの免疫は、TH1 CD4依存性応答及びIL−12依存性応答を発生させたが、pam3cys応答は、TH1 CD4依存性でもIL−12依存性でもなかった。第2に、実験は正常(野生型)マウスで実施されていることに留意すると、pam3cys応答はより強く、図3A〜3Cに示されるように、強度が酵母と比較しておよそ2.5倍であると考えられる。
【0267】
pam3cys免疫療法と比べて、酵母ベースの免疫療法に応答したCD8+ T細胞の活性化に必要であるシグナルは何かを決定するために、図4A〜4C及び図5には、これらの治療手法により発生するCD8+応答におけるTLRシグナル伝達及びMHCクラスIIシグナル伝達の必要性を評価する実験の結果が示されている。MyD88−/−マウスは、TLR3を除くToll様受容体(TLR)が全て機能不全にされているC57B1/6マウスである(つまり、TLR3を除くTLRは全て、生産的なシグナル伝達のためにMyD88を必要とする)。クラスII MHCノックアウトマウス(MHCクラスII −/−)は、MHCクラスII分子が陰性のマウスであり、マウスは全てのタイプのCD4+ T細胞を欠いている。
【0268】
第1の実験では、MyD88−/−マウスを、以下のもので免疫した:(1)YVEC+抗CD40(酵母+aCD40;図4A)、(2)YVEC+可溶性オボアルブミン+抗CD40(酵母+ova+aCD40;図4B)、又は(3)pam3cys+オボアルブミン+抗CD40(pam3cys+ova+aCD40;図4C)。これらの結果は、TLR3を除くTLRを全て機能不全にすることにより、酵母で免疫されたマウス及びpam3cysで免疫されたマウスの両方で、消失ではないにしても免疫応答の著しい低下がもたらされることを示し、両応答が機能的なTLRシグナル伝達に依存することが示される。2A〜2Dを図4A〜4Cと比較すると、酵母+ova+抗CD40に対する応答は、5.8%から1.4%になり、pam3cys+ova+抗CD40による応答は、15.8%から0.78%になった。
【0269】
図5に示されている第2の実験では、TLRシグナル伝達タンパク質MyD88を欠如するマウス(MyD88−/−)で発生したCD8+ T細胞のパーセントを、Y軸上で、pam3cysに応答してWTマウスに発生した抗原特異的CD8+ T細胞の出現頻度(最初の列で100%として表されている)と比較する。野生型(WT;黒色バー)又は、MyD88−/−マウス(白色バー)を、以下のもので免疫した:(1)YVEC+オボアルブミン+抗CD40(オボアルブミン、酵母、aCD40)又は(2)pam3cys+オボアルブミン+抗CD40(オボアルブミン、pam3cys、aCD40)。この実験では、WTマウスの酵母ベースの免疫に対する応答が、pam3cysについて観察された免疫(以前の図でも示されているような)の40%であったことを観察することができる。図4のように、TLR2及びTLR3を除く他の全てのTLRシグナル伝達に不可欠であるMyD88受容体が存在しないと、酵母及びpam3cysに対する応答は両方とも本質的に消失することも観察することができる(図5、レーン2及び5をレーン1と比較)( p<0.05、*** p<0.0001)。まとめると、図4及び5の実験は、MyD88が作用しなかった場合、応答がバックグラウンドレベル付近まで低下したため、MyD88依存性TLR(TLR3を除く)は、酵母CD8+ T細胞応答及びpam3cys CD8+ T細胞応答の両方に必要であったことを実証している(図5、レーン2及び5)。
【0270】
また、本発明者らは、クラスII MHCノックアウトマウス(つまり、全てのタイプのCD4+ T細胞を欠くマウス)で実験を実施することにより、CD4 T細胞サブセットを全て除去することが与える、酵母ベースの免疫による抗原特異的CD8+ T細胞の発生に対する影響を研究した。結果は、図5に示されている(灰色バー、4番目の列)。図5では、酵母ベースのCD8+ T細胞応答は、TH1 CD4+ T細胞のみを欠如するMyD88−/−動物では、pam3cys処置と比較してバックグラウンドレベルに低減されたが(白色バー)、クラスII MHC−/−動物では、CD4+ T細胞サブセットが全て欠失していても、酵母に対するCD8+ T細胞応答は発生し、実際、pam3cys処置により誘発された応答とほとんど同じであった(図5、1列目を4列目と比較)ことが示されている。CD4+ T細胞の除去は、WTマウスと比較して、pam3cysで処置したクラスII MHC−/−マウスに対して影響を及ぼさなかった(データ非表示)。
【0271】
言い換えれば、野生型マウスでのpam3cys応答は、酵母ベースの免疫により発生した免疫よりもおよそ2.5倍高かったが(図3B及び3Cを参照)、CD4+ T細胞を全て欠損している動物では、酵母応答及びpam3cys応答は同等であった。まとめると、これらの結果は、CD4+ T細胞が、pam3cys TLR特異的刺激に対する免疫応答とは異なる様式で、酵母に対するCD8+ T細胞応答を制御することを示す。実験がCD4 T細胞を欠く動物で実施されていることに留意すると、酵母は、CD4非依存性TLRアゴニストpam3cysで観察される応答と同等のCD4非依存性CD8 T細胞応答を刺激することが可能であり、pam3cys処置とは異なり、酵母は、更に別のCD4サブセットにより影響を受けるTH1 CD4依存性/IL−12依存性CD8+ T細胞応答も刺激することができ、酵母により発生したCD4 T細胞は、酵母ベースの免疫療法に対する応答の誘導及び制御の両方の役割を果たすことが確認される。
【0272】
実施例3
以下の例は、全酵母ベースの免疫による抗原特異的CD8+細胞媒介性一次免疫のTLR依存的発生が、IL−6により明らかに影響されることを示す。
【0273】
この一連の実験では、酵母ベースのTH1 T細胞及び抗原特異的CD8+ T細胞の発生と、TH17 T細胞等の他のT細胞の発生との間に、あるとすればどのように関係性があるのか、及び更に、特定のタイプの免疫応答の阻害により細胞媒介性免疫応答を調節することができるか否かを研究した。実験には、炎症促進性のTH17関連サイトカイン、IL−6を産生する能力が欠損しているマウスを使用した。TH17産生は、酵母由来のベータグルカンに結合するデクチン−1等の受容体の結合により促進され、IL−6産生に結び付く(Kornら、2008年;Denneheyら、2009年)。
【0274】
実施例2では、CD4+ TH1細胞は、CD4+ T細胞集団が無傷の場合、酵母ベースの免疫療法に対するCD4依存性CD8+応答の誘導因子であることが実証されているため、次に、本発明者らは、どのCD4サブセットが、酵母免疫療法に対する応答の制御に関与したかを決定しようと試みた。
【0275】
酵母ベースの免疫療法により誘発された対照CD4集団は、図6A〜6Cに示されているようにIL−6依存性である。この実験では、酵母ベースの免疫療法により発生した免疫応答におけるIL−6の必要性を評価した。IL−6 −/−マウスは、IL−6を産生する能力を有していないC57B1/6マウスである(IL−6ノックアウトマウス)。IL−6 −/−マウスを、以下のもので免疫した:(1)オボアルブミン+抗CD40(ova+aCD40;図6A)、(2)YVEC+可溶性オボアルブミン+抗CD40(酵母+ova+aCD40;図6B)、又は(3)pam3cys+オボアルブミン+抗CD40(pam3cys+ova+aCD40;図6C)。7日後に、末梢血リンパ球を血液試料から単離し、末梢血細胞を、上記の実施例1の実験に記載されているように、活性化T細胞上に発現されたCD44マーカー(Y軸)及びオボアルブミン抗原特異的CD8+ T細胞(X軸)について染色した。
【0276】
pam3sys+ova+抗CD40によるIL−6欠損動物の免疫は、WT対照と比較して明らかな効果を示さなかったが(18.2%対15.8%、図6C図2Dと比較)、IL−6欠損環境での酵母+ova+抗CD40による免疫は、応答を、例えば、酵母、抗原、及び抗CD40の同じ組み合わせによるWTマウスの免疫と比較して6倍に劇的に向上させた(33.1%対5.82%、図6B図2Cと比較)。他の実験では(データ非表示)、抗原特異的CD8+ T細胞の出現頻度は、WTマウスと比較して、IL−6 −/−マウスでは25倍以上も増強された。実際、IL−6の除去は、CD4 T細胞は無傷のままであるが、酵母ベースの免疫療法に対する応答でのCD8+ T細胞の出現頻度を、実際に、pam3cys処置の場合に観察された最大値の2倍の値に再現性よく増加させる(図6B及び6C)。したがって、IL−6依存性CD4+ T細胞集団は、酵母ベースの免疫療法に対するCD8+ T細胞応答の制御に関与するが、pam3cysに基づく免疫療法に対しては関与せず、IL−6依存性制御の除去は、酵母ベースの免疫に対するCD8+応答の劇的な上昇をもたらした。
【0277】
図7に関して、その後、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法応答を制御したIL−6依存性CD4+ T細胞集団が、IL−17産生により明確にされるようなCD4+ TH17 T細胞集団であったことを示した。この実験では、野生型(WT)マウスを、上述のように酵母(YVEC+オボアルブミン+抗CD40)又はpam3cys(pam3cys+オボアルブミン+抗CD40)で免疫し、IL−17を産生するCD4+ T細胞の出現頻度(フローサイトメトリーにより発色された細胞内サイトカイン染色により明確にされるような)について、末梢血を7日後に検査した。Y軸の、pam3cys処置から発生したIL−17産生CD4+ T細胞のパーセントは、5%未満であり、未感作マウスで観察された応答よりも有意には大きくはないが(1番目の列対3番目の列)、酵母ベースの免疫療法で処置された動物におけるTH17のパーセントは、15%と高い場合がある(TH1細胞が除去されている場合に、最も著しい。データ非表示)。
【0278】
IL−6が存在しないことにより、酵母ベースの免疫による抗原特異的CD8+ T細胞の発生は増強されたが、pam3cys免疫では増強されなかったという、上記に示されているデータを考慮して、酵母ベースの免疫後のTH17 T細胞の出現頻度を分析した。この手法は、フローサイトメトリーを使用して、CD4+ T細胞の細胞内IL−17産生を調査するためのものであった。手短に言えば、T細胞を、脾臓及び肺から単離し、PMAで5時間パルスしてサイトカインを発生させた直後に、サイトカイン産生を検査した。至適条件下での全酵母ベースの免疫の後でさえ、この手法を野生型マウスに使用してIL−17産生を測定することにより、TH17を再現性よく検出するのは難しかった。TH17シグナルは、TH17シグナルを増強する手段としてTH17誘導性サイトカインを使用する長期間のin vitro刺激ステップを使用して、他の系で以前に検出されている。しかしながら、そのような方法の交絡影響の可能性を回避するために、本発明者らは、その代わりに、この重要なTH1転写因子を欠如するためTH1 T細胞が欠損しているT−betノックアウトマウスでTH17を検査することを選択した(例えば、Kochら、2009年を参照)。
【0279】
図8A(脾臓)及び8B(肺)に関して、インターフェロン−γ−産生CD4+ T細胞(IFNgパーセント)は、酵母ベースの(酵母)免疫(図8A及び8B(tbet−/−の列を参照))又はpam3cys免疫(データ非表示)後のT−betノックアウトでは観察されなかったが、それらは、WTマウスでの全酵母ベースの免疫後の出現頻度が直ちに増強された(図8A及び8B、(WT、酵母))。
【0280】
酵母で免疫されたT−betノックアウトマウスでは、操作されていない動物のTH17細胞をex vivoで直接検出することができ、それらの出現頻度は、酵母による免疫の関数として、脾臓(図8C)及び肺(図8D)中で増加した。T−betノックアウトマウスを、pam3cysで免疫した場合、IL−17産生CD4 T細胞のこのような増加は、観察されなかった(データ非表示)。したがって、酵母ベースの免疫には、インターフェロン−γ−産生CD4 T細胞及びIL−17産生CD4 T細胞の両方の増加と関連する。
【0281】
これらの結果は、IL−17産生CD4 T細胞の出現頻度が、TH1 T細胞発生が欠損しているT−betノックアウトマウスでの全酵母ベースの免疫後に増加することを示す。これは、TH17 CD4 T細胞が、酵母の提示後に発生することを実証する。加えて、これらの結果は、酵母が、TH1表現型を有するCD4 T細胞も誘導することができることを実証する。TH17は、T−betノックアウト、TH1欠損環境で増加し、TH1は、IL−6欠損環境で増加するという実証は、TH1及びTH17は両方とも、全酵母ベースの免疫により誘導され、免疫系又は免疫プロセスを操作することにより、免疫応答を調節することができることを示す。
【0282】
したがって、酵母ベースの免疫療法は、TH17細胞により影響を受け/制御され、次いでIL−6依存性プロセスにより誘導されるTH1依存性プロセスによりCD8+ T細胞を発生させることができる。pam3cys等のTLR(MyD88依存性)アゴニストと酵母との1つの重要な違いは、酵母は、酵母表面にグルカン及びマンナンが存在するため、デクチン受容体及びマンノース受容体等の、樹状細胞上にある複数のC型レクチン受容体と結合する可能性が高いということである(LeibundGut−Landmannら、2007年;Neteaら、2008年;Robinsonら、2009年;Ferwerdaら、2009年;Glockerら、2009年;Geitjenbeek及びGringhuis、2009年)。C型レクチン受容体による誘導は、IL−6産生、IL−12依存性のTH1産生経路の妨害、及び別のCD4集団、TH17の発生に結び付く(Dennehy及びBrown、2009年)。pam3cysは、本質的に排他的にTLRアゴニストであり(つまり、実質的にC型レクチン受容体を活性化しない)(Chenら、2009年)、TH1、IL−12、又はIL−6による妨害効果は観察されず、したがって、発生したpam3cys特異的応答は、本質的にIL−12非依存性及びCD4非依存性であると考えられる。
【0283】
実施例4
以下の例は、全酵母ベースの免疫による抗原特異的CD8+細胞媒介性一次免疫のTLR依存的発生が、デクチン−1受容体のみによって明らかに影響されるのではないことを示す。
【0284】
図9A〜9Cは、酵母ベースの免疫療法剤により発生した免疫応答における、デクチン−1受容体によるシグナル伝達の必要性を評価する実験の結果を示す。デクチン1 −/−マウスは、β−グルカンの骨髄受容体であるデクチン−1を欠如する。酵母ベースの免疫療法剤組成物は、2及び4等のTLRに結合するだけでなく、APC上のデクチン−1受容体に結合する糖残基(例えば、β−グルカン)も発現する。文献には、デクチン1結合が、IL−6産生に結び付く1つの経路であることが報告されている。デクチン−1ノックアウトマウスでは、デクチン−1受容体を使用せずにTLRを生産的に使用することができる。デクチン−1 −/−マウスを、以下のもので免疫した:(1)オボアルブミン+抗CD40(ova+aCD40;図9A)、(2)YVEC+可溶性オボアルブミン+抗CD40(酵母+ova+aCD40;図9B)、又は(3)pam3cys+オボアルブミン+抗CD40(pam3cys+ova+aCD40;図9C)。7日後に、末梢血リンパ球を血液試料から単離し、末梢血細胞を、上記の実施例1の実験に記載されているように、活性化T細胞上に発現されたCD44マーカー(Y軸)並びにオボアルブミン抗原特異的CD8+ T細胞(X軸)について染色した。結果は、酵母+ova+aCD40(3.67%対5.82%、図9B図2Cと比較)又はpam3cys+ova+抗CD40(15.9%対15.8%、図9C図2Dと比較)の応答に対する、デクチン−1受容性の明らかに実証可能な効果を示さなかった。
【0285】
デクチン−1受容体が、IL−6の誘導に結び付く重要な食細胞受容体であると考えられていることを考慮すると、この受容体をノックアウトすることにより、TH17応答が減少され、それにより、免疫されたマウスにおける一次CD8+応答が増加するであろうと予測することができる。しかしながら、図9A〜9Cを参照すると、デクチン−1ノックアウトマウスによる抗原特異的CD8応答は、酵母で免疫されたマウス及びpam3cysで免疫されたマウスの両方において、WTマウスで観察された応答と同等であると考えられた。デクチン−1ノックアウトマウスは、WTマウスで観察された出現頻度と同等なTreg出現頻度の低減も示し(データ非表示)、実証可能なTH17細胞が、酵母ベースの免疫療法による免疫の結果として、これらのマウスに誘導されたことを示唆する。理論により束縛されないが、本発明者らは、このデータの最も単純な解釈は、デクチン−1受容体に加えて他の受容体の結合の結果としてIL−6が産生される場合があるということであると考える。酵母は、細胞表面にマンナンを大量に発現するため、1つの可能性の高い供給源は、IL−6産生、デクチン−2、又はDC−SIGNとも結合するマンナン受容体である。
【0286】
実施例5
以下の例では、酵母ベースの免疫療法により誘導されるCD4+ T細胞応答を調節することにより、CD8+抗原特異的T細胞応答を調節することができることを示す更なる実験が記述されている。
【0287】
この更なる例示的な実験では、MyD88−/−マウス(図10A)、野生型(WT)マウス(図10B)、及びIL−6 −/−マウス(図1OC)を、オボアルブミンを発現するように遺伝子組換えされた(組換え技術により)サッカロマイセス・セレビシエ全酵母(OVAX)を用いて静脈内で1回免疫した。マウスを、OVAX、及び抗原提示細胞上のCD40分子を標的とする抗体(抗CD40)で免疫した。7日後に、末梢血リンパ球を血液試料から単離した。末梢血細胞を、活性化T細胞上に発現されたCD44マーカー(図10A〜10C、Y軸)及びオボアルブミン抗原特異的CD8+ T細胞(図10A〜10C、X軸)について染色した。
【0288】
実施例2及び3に示されている結果を裏付けるように、このデータでは、MyD88 −/−マウス(左)は、MyD88経路を使用してTLR(TLR3以外は全て)を介してシグナル伝達する能力を欠如するため、抗原特異的T細胞を発生させる能力を欠如することが示されている。また、このデータにより、IL−6を産生する能力の欠失は、実施例4に示されているように、WTと比較してオボアルブミン特異的CD8 T細胞の数を劇的に向上させることが確認される。これらのデータにより、酵母ベースの免疫療法に対する抗原特異的CD8+ T細胞応答の発生は、IL−6及びTLR結合、又はそれらの阻害により影響を受ける場合があり、これは、オボアルブミンが、酵母により組換え的に産生されるか(この例)又は酵母と混合されるか(実施例2〜4)に関わらず生じることが確認される。
【0289】
図11には、抗原特異的マーカーを評価する前にCD8 T細胞をゲート制御することにより、図10A〜10Cに示されているオボアルブミンに抗原特異的な酵母ベースの免疫療法(酵母/ova/aCD40)で免疫されたマウスに由来する集団におけるCD8 T細胞の実際のパーセントが定量化されている。オボアルブミン及び抗CD40と組み合わせたpam3cysを用いて免疫したマウスを使用して生成された同様のデータも、酵母ベースの免疫との比較のために示されている(Pam3cys/ova/aCD40)。このデータは、pam3cys免疫療法ではなく酵母ベースの免疫療法による抗原特異的T細胞の発生が、IL−6の除去により向上することを示す。pam3cys系でのCD8 T細胞応答の向上の欠如は、この作用剤が、IL−6により影響を受けないという事実を反映する。したがって、酵母及びpam3cysは両方ともTLRと結合することができるため、酵母ベースの免疫療法に対するIL−6による影響は、TLRによっては生じない可能性が高い。
【0290】
図12では、1回の免疫(一次)だけでなく、60日後に同一の第2の免疫(記憶)をした後の、抗原特異的CD8 T細胞の出現頻度が検討されている。これらを、抗原特異的T細胞の数がほぼ検出不能なレベルに戻った中間時点(前追加免疫)と比較する。
【0291】
データは、第2の免疫後のIL−6欠損マウスにおける抗原特異的T細胞の出現頻度が向上し続けることを示し、IL−6の除去が、この時間枠内では、酵母系免疫療法組成物の投与の結果としての長期免疫発生を妨害しないと考えられることを示す。
【0292】
抗原特異的CD8+ 細胞100個中1個〜100個中5個の抗原特異的CD8+ T細胞の出現頻度が、野生型マウスで適切に施された1用量の酵母系免疫療法後に再現性よく発生した(例えば、図2A〜2Cを参照)。適切に施された1用量の酵母ベースの免疫療法後の抗原特異的CD8+ T細胞の出現頻度は、IL−6ノックアウトマウスでは、約3個中1個〜約4個中1個に増加し、TH17発生を含むIL−6に関連する経路の阻害を使用して、TH1媒介性CD8+免疫応答を増強することができることが実証された。
【0293】
実施例6
以下の例は、酵母ベースの免疫と制御性T細胞(Treg)の低減との間の相関性を実証する。
【0294】
TH17は、より低濃度のTGFβに応答するTH17の能力によりTregとの競合に勝つことができ、これは、FoxP3シグナル結合解離によりTregを中和するIL−6によって更に促進される場合があると、当技術分野では一般的に考えられている。したがって、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法の状況でTH17出現頻度とTreg出現頻度との間になんらかの相関性が存在したか否か、及びもしに存在する場合は、この相関性が、IL−6の存在又は非存在により影響を受けたか否かを検討した。
【0295】
基線CD4 Treg出現頻度を測定し、全酵母ベースの免疫後のIL−6ノックアウトマウス及びWTマウスにおける出現頻度と比較した。この手法には、市販の抗体で検出することができるTreg転写因子、FoxP3を発現するCD4+ T細胞のフローサイトメトリー分析が関与した。
【0296】
免疫後、データ(図13)は、酵母ベースの免疫療法による免疫の関数として、Tregレベルの負相関性を示す。IL−6ノックアウトマウスは、Kornら、2007年により以前に報告されているように、WTマウスと比較してTregの出現頻度の増加を示した。しかしながら、本明細書でのデータは、Treg出現頻度が、酵母ベースの免疫療法剤で免疫されたIL−6ノックアウト動物の流入領域リンパ節で減少したことを示す(図13)。野生型マウスでは、Treg産生は、末梢血で測定した場合でさえ、酵母ベースの免疫療法の結果として妨害された(データ非表示)。WTマウスにおけるこのようなTreg増殖の欠如は、IL−17産生T細胞の増加と相関した(データ非表示)。Tregの増殖は、マウスをpam3cysで免疫した場合には生じた。T細胞のpam3cys活性化は、IL−6枯渇により影響を受けないため、これらのデータは、IL−6媒介性のTH17誘導が、制御性T細胞(Treg)を発生させる動物の能力に不利な影響を及ぼすという解釈を支持する。したがって、酵母ベースのTH17の誘導は、そうでなければ通常は持続性TH1及びCD8 T細胞活性化及び増殖を破壊する制御性T細胞に負の影響を及ぼす手段を提供する。
【0297】
上記の例をまとめると、これらのデータは、酵母がIL−17産生TH17 T細胞を誘導し、これは制御性T細胞(Treg)発生の減少に関連することを示す。理論により束縛されないが、本発明者らは、TH17及びTH1は両方とも共通してTGFβにより駆動されるため、TH17 T細胞は、より少量のTGFβしか必要とせず、そのため、この必須発育因子をめぐるTregとの競合に「勝利する」と考える。したがって、IL−6は、Tregを標的とするのに必要ではない可能性がある。これは、IL−6ノックアウトが、IL−6が存在しない場合でさえTregの出現頻度を低減させたIL−6ノックアウトからもたらされたデータにより支持される。このシナリオでは、ここでも理論により束縛されないが、IL−6が存在しない場合又はIL−6が制限されている場合、IL−21依存性の代替経路も、酵母ベースの免疫療法の結果としてTH17を誘導することができる可能性がある。IL−6の非存在が、最終的に、抑制されないTregの誘導に有利であると仮定すれば、抗原特異的CD8+応答は、免疫の出現頻度と共に低下すると予想することができる。しかしながら、この理論と矛盾し、酵母ベースの免疫が複数の経路によりTH17を誘導するという概念を支持して、実施例5に記載の反復免疫に関する研究では、酵母ベースの免疫は、IL−6ノックアウトマウスにおいてでさえ、時間と共に持続性の免疫応答をもたらす。
【0298】
IL−6を欠く環境下でさえ、全酵母ベースの一次免疫後にTreg発生とTH17発生との間に逆相関が観察され(実施例3及び6を参照)、TH1応答の下方制御にTregが役割を果たすことを考慮して、酵母ベースの免疫療法又はpam2cys免疫療法による反復免疫の長期的結果を検討する。
【0299】
全酵母ベースの免疫はCD8集団を誘導し、CD8集団は、第2の(図12を参照)免疫の際に増殖及び持続し、第3の免疫の際に増殖及び持続を継続すると予想される。IL−17産生CD4 T細胞は、各々の酵母ベースの免疫療法免疫後に増殖すると予想される。Treg出現頻度は、TH17出現頻度と逆関連すると予想される。TH17関連の酵母ベースの免疫後に観察されるTregの出現頻度と、反復免疫後の抗原特異的CD8発生の出現頻度との間に逆相関が存在するであろうということも予想される。
【0300】
TH17は、他のT細胞サブセット発生に影響を及ぼす潜在的に自己継続的環境であると考えられる環境で増殖する。しかしながら、TH17発生を支援する炎症促進性環境は、クラスI経路に対する抗原の交差提示及びその後のCD8 T細胞発生を増強するI型インターフェロンの産生等の、抗炎症対抗手段にもシグナルを伝達する。実際、CD28による同時刺激は、TH17細胞の障害及びTh1経路の促進を両方とも行うインターフェロン−γ及びIL−2産生を増大させることができる。加えて、好中球のIL−17媒介性動員は、病原体を取り除き、TH17の駆動に重要なIL−6産生を低減させることができる。
【0301】
したがって、理論により束縛されないが、本発明者らは、特定の個体及び特定の疾患状態では、酵母ベースの免疫療法により誘導される応答等の、TH17応答及びTH1応答を同時に発生させる点に価値があり、TH17は、Tregを標的とすることにより最終的にTH1応答を向上させることができ、並びに持続的な記憶CD8応答を促進するIL−21等のサイトカインを産生することができると考える。或いは、本発明者らが、酵母により標的とされるTH17/TH1経路を調節することによって、TH17、TH1、Treg、及び/又はCD8+抗原特異的T細胞応答を上方制御又は下方制御することができることを示しているため、本明細書に記載の教示に基づき、酵母ベースの免疫療法により発生する応答を調節することによって「個別化された」手法又は「疾患に特異的な」手法が可能である。要約すると、酵母ベースの免疫療法の手法は、特定の個体又は特定の感染症又は他の疾患状態をより良好に治療するために個別化することができる複雑な相互作用に関して非常に多くの機会を提供する。
【0302】
実施例7
以下の例は、酵母ベースの免疫応答のCD4依存性(TH1、TH17)とインターフェロン非依存性との関係性を実証する。
【0303】
I型インターフェロンは、CD4依存性経路を阻害することができることが知られている(Guoら、2008年;Moschenら、2008年;Alexanderら、2010年;Aristimunoら、2010年;Axtellら、2010年)。したがって、本発明者らは、酵母誘導性のCD4依存性経路が、インターフェロン非依存的様式で機能することができるか否かの決定を試みた。
【0304】
I型インターフェロン受容体の発現を欠損するように操作されたマウス(IFNαR−/−)を、実施例2に記載のように免疫し、図5に示されている実験に記載のようにpam3cysで免疫したマウスと比較した。図14に示されているデータは、pam3cysによりWTマウスで発生した四量体陽性細胞を100%としたパーセントで表されている。結果は、酵母をpam3cysと比較すると(1列目対2列目)、CD8 T細胞の発生が再現性よく低減されることを示し、I型インターフェロンに対する受容性を欠如するマウスでは結果に変化はなかった(3列目)。したがって、その点で、酵母ベースの免疫療法によりI型インターフェロン受容体ノックアウトマウスにCD8 T細胞を発生させることは、発生するCD8 T細胞の出現頻度に著しい影響を及ぼさない。これらの結果は、酵母ベースの免疫療法が、I型IFN処置に依存せずにCD 8応答を引き起こすことができ、これは、CD4 T細胞の存在下で及びCD4 T細胞依存的に生じることを示す。したがって、酵母ベースの免疫療法は、明らかに、CD4依存性で、I型インターフェロン非依存性のプロセスである。酵母ベースの免疫療法に起因するCD4非依存性経路を立証する根拠は、実施例2(図5)において提供されたが、「野生型ヒト」対象者が、遺伝学的に異種性であることに留意すると、野生型(CD4−「正常」)環境下で1つの経路が著しい様式で優勢であるか否かは明らかではない。
【0305】
実施例8
この例では、TH17の直接的抗腫瘍活性、並びにIL−6及び抗CD40の寄与を評価する。
【0306】
TH17細胞及びIL−17は、ごく最近抗腫瘍活性と関連付けられた。IL−17は、直接的抗殺腫瘍活性を示す場合があり、IL−17は、抗殺腫瘍性好中球を動員する。したがって、本発明者らは、酵母ベースの免疫療法剤が、TH17を誘導する真菌としてのそれらの能力により、本質的に抗殺腫瘍性であり得ると考える。TH17は、Treg発生を妨害することにより、間接的に抗腫瘍活性を示す可能性もある。これらの抗腫瘍特性は、抗CD40抗体との同時処置で増強されると考えられる。抗CD40抗体処置それ自体が、実質的な抗殺腫瘍効果を生じさせるとは報告されていないが、CD40結合は、例えば、IL−15の外来性供給源の存在下では又はTLRアゴニストと組み合わせると抗殺腫瘍性である。
【0307】
抗CD40抗体と組み合わせた酵母ベースの免疫療法免疫は、特異的及び非特異的抗腫瘍性in vivo CTL活性を発生させる。本発明者らは、酵母ベースの組成物が、非特異的サイトカイン及びケモカイン関連抗殺腫瘍特性を有するTH17、並びにCD8活性化及び増殖による特異的殺腫瘍能力を有するTH1を誘導すると考える。CD40結合の必要性は明らかではないが、APC活性の集中に影響する可能性が高い。以下の実験では、酵母ベースの免疫療法により誘導されたCTL活性を測定し、殺腫瘍特異性がIL−6又は抗CD40の存在によりどのような影響を受けるかを評価する。
【0308】
抗原特異的in vivo CTL実験を、YVEC(空ベクター酵母)で免疫した動物及びOVAXで免疫した動物を用いて実施した。YVECで免疫した動物を、オボアルブミンを用いて及びオボアルブミンを用いずに免疫する。抗CD40抗体の寄与も、この試薬を用いて及びこの試薬を用いずに免疫を実施することにより評価する。WT及びIL−6KO免疫マウスを比較する。手短に言えば、免疫したマウスを評価して、マウスが、抗原(この場合は、オボアルブミン)を発現する標的腫瘍細胞に対する抗原特異的CD8+ CTL応答を発生するか否かを決定する。
【0309】
実施例9
以下の例には、TH1媒介性及び/又はCD8+ T細胞応答を増強するための他の免疫調節剤の使用が記述されている。
【0310】
動物(WT及びIL−6ノックアウトマウス)を、オボアルブミン又はOVAXと組み合わせた酵母等の酵母ベースの免疫療法剤で、抗CD40を用いて又は用いずに、並びにTH17応答を下方制御する免疫調節物質、Tregを下方制御する免疫調節物質、及び/又はTH1免疫応答を上方制御する免疫調節物質を用いて及び用いずに免疫する。免疫調節物質の投与は、野生型動物においてTH1及びCD8 T細胞応答を増強することになり、IL−6KO動物においてTH1及びCD8 T細胞応答を増強することもできることが予想される。
【0311】
実施例10
以下の例には、TH17免疫応答を下方制御する方法及び/又はTH1免疫応答を上方制御する方法を使用して産生された酵母の使用が記述されている。
【0312】
動物(WT及びIL−6ノックアウトマウス)を、オボアルブミン又はOVAXと組み合わせた酵母等の酵母ベースの免疫療法剤で、抗CD40を用いて又は用いずに免疫し、酵母は、そのような条件を用いずに産生された酵母と比較して、TH17応答を下方制御する条件下で及び/又はTH1免疫応答を上方制御する条件下で産生されている。TH1免疫応答を増強する条件下で産生された酵母の投与は、野生型動物においてTH1及びCD8 T細胞応答を増強することになり、IL−6KO動物においてTH1及びCD8 T細胞応答を増強することもできることが予想される。
【0313】
実施例11
以下の例には、癌を有する被験者においてTH1媒介性及び/又はCD8+ T細胞応答を増強するための免疫調節剤の使用が記述されている。
【0314】
癌を有する被験者を、1つ若しくは複数の癌抗原(例えば、被験者の癌により発現される癌抗原)及び/又はその免疫原性ドメインを発現する酵母等の、酵母ベースの免疫療法剤、並びにTH17応答を下方制御する作用剤、Tregを下方制御する作用剤、及び/又はTH1免疫応答を上方制御する作用剤で免疫する。被験者は、化学療法、放射線、及び/又は腫瘍の外科的摘出等の癌の治療に有用な1つ又は複数の治療的処置を受けることもできる。酵母ベースの免疫療法剤は、作用剤及び/又は治療的処置と共に断続的に投与することができ、治療的処置及び/又は作用剤の投薬計画の前に又は後で投与することもできる。
【0315】
そのような作用剤は、以下のもののいずれか1つ又は複数から選択することができるがこれらに限定されない:抗IL−1又はIL−1アンタゴニスト、抗IL−6又はIL−6アンタゴニスト、抗IL−17又はIL−17アンタゴニスト、抗IL−21又はIL−21アンタゴニスト、抗IL−22又はIL−22アンタゴニスト、抗IL−23又はIL−23アンタゴニスト、IL−25又はそのアゴニスト、IL−27又はそのアゴニスト、FOXP3を阻止する作用剤、TLR−2アゴニスト、TLR−4アゴニスト、TLR−7アゴニスト、及びTLR−9アゴニストを含むが、それらに限定されないToll様受容体(TLR)アゴニスト;抗炎症剤、免疫調節剤、及び/又は別の免疫療法ワクチン。
【0316】
酵母ベースの免疫療法剤及び作用剤の組み合わせを投与することにより、被験者のTH1及びCD8 T細胞応答が増強されることになり、それにより癌の1つ又は複数の症状が軽減され、例えば、腫瘍増殖が低減され、全身腫瘍組織量が低減され、及び/又は被験者の生存率が向上すると予想される。
【0317】
実施例12
以下の例には、肝炎等のウイルス関連疾患を有する被験者においてTH1媒介性及び/又はCD8+ T細胞応答を増強するための免疫調節剤の使用が記述されている。
【0318】
肝炎を有する被験者を、1つ若しくは複数の肝炎ウイルス抗原及び/又はその免疫原性ドメインを発現する酵母等の、酵母ベースの免疫療法剤、並びにTH17応答を下方制御する作用剤、Tregを下方制御する作用剤、及び/又はTH1免疫応答を上方制御する作用剤で免疫する。被験者は、インターフェロン療法及び/又は抗ウイルス療法等の、肝炎の治療に有用な1つ又は複数の治療的処置を受けることもできる。酵母ベースの免疫療法剤は、作用剤及び/又は治療的処置と共に断続的に投与することができ、治療的処置及び/又は作用剤の投薬計画の前に又は後で投与することもできる。
【0319】
そのような作用剤は、以下のもののいずれか1つ又は複数から選択することができるがこれらに限定されない:抗IL−1又はIL−1アンタゴニスト、抗IL−6又はIL−6アンタゴニスト、抗IL−17又はIL−17アンタゴニスト、抗IL−21又はIL−21アンタゴニスト、抗IL−22又はIL−22アンタゴニスト、抗IL−23又はIL−23アンタゴニスト、IL−25又はそのアゴニスト、IL−27又はそのアゴニスト、FOXP3を阻止する作用剤、TLR−2アゴニスト、TLR−4アゴニスト、TLR−7アゴニスト、及びTLR−9アゴニストを含むが、それらに限定されないToll様受容体(TLR)アゴニスト;抗炎症剤、免疫調節剤、及び/又は別の免疫療法ワクチン。
【0320】
酵母ベースの免疫療法剤及び作用剤の組み合わせを投与することにより、被験者のTH1及びCD8 T細胞応答が増強されることになり、それにより肝炎の1つ又は複数の症状が軽減される、例えば、ウイルス負荷量が低減される、及び/又は被験者の肝臓機能が改善されると予想される。
【0321】
実施例13
以下の例には、TH17免疫応答を下方制御する方法及び/又はTH1免疫応答を上方制御する方法を使用して産生された酵母の使用が記述されている。
【0322】
癌を有する被験者を、1つ若しくは複数の癌抗原(例えば、被験者の癌により発現される癌抗原)及び/又はその免疫原性ドメインを発現する酵母等の、酵母ベースの免疫療法剤で免疫する。酵母は、そのような条件を用いずに産生された酵母と比較して、TH17応答を下方制御する条件下で及び/又はTH1免疫応答を上方制御する条件下で産生されている。被験者は、化学療法、放射線、及び/又は腫瘍の外科的摘出等の癌の治療に有用な1つ又は複数の治療的処置を受けることもできる。酵母ベースの免疫療法剤は、作用剤及び/又は治療的処置と共に断続的に投与することができ、治療的処置及び/又は作用剤の投薬計画の前に又は後で投与することもできる。
【0323】
修飾された酵母ベースの免疫療法剤を投与することにより、被験者のTH1及びCD8 T細胞応答が増強されることになり、それにより癌の1つ又は複数の症状が軽減され、例えば、腫瘍増殖が低減され、全身腫瘍組織量が低減され、及び/又は被験者の生存が増加されると予想される。
【0324】
実施例14
以下の例には、肝炎等のウイルス関連疾患を有する被験者のTH17免疫応答を下方制御する方法及び/又はTH1免疫応答を上方制御する方法を使用して産生された酵母の使用が記述されている。
【0325】
肝炎の被験者を、1つ若しくは複数の肝炎ウイルス抗原及び/又はその免疫原性ドメインを発現する酵母等の、酵母ベースの免疫療法剤で免疫する。酵母は、そのような条件を用いずに産生された酵母と比較して、TH17応答を下方制御する条件下で及び/又はTH1免疫応答を上方制御する条件下で産生されている。被験者は、インターフェロン療法及び/又は抗ウイルス療法等の、肝炎の治療に有用な1つ又は複数の治療的処置を受けることもできる。酵母ベースの免疫療法剤は、作用剤及び/又は治療的処置と共に断続的に投与することができ、治療的処置及び/又は作用剤の投薬計画の前に又は後で投与することもできる。
【0326】
修飾された酵母ベースの免疫療法剤の組み合わせを投与することにより、被験者のTH1及びCD8 T細胞応答が増強されることになり、それにより肝炎の1つ又は複数の症状が軽減され、例えば、ウイルス負荷量が低減され、及び/又は被験者の肝臓機能が改善されると予想される。
【0327】
実施例15
以下の例には、真菌性疾患を有する被験者のTH17 T細胞応答を増強するための免疫調節剤の使用が記述されている。
【0328】
アスペルギルス感染により引き起こされる疾患、コクシジオイデス・イミチスにより引き起こされる真菌性疾患、又はクリプトコックス関連状態等の真菌性疾患を有する被験者を、1つ又は複数の真菌抗原及び/又はその免疫原性ドメインを発現する酵母等の、酵母ベースの免疫療法剤、並びにTH17応答を上方制御する作用剤で免疫する。被験者は、真菌性疾患の治療に有用な1つ又は複数の治療的処置を受けることもできる。酵母ベースの免疫療法剤は、作用剤及び/又は治療的処置と共に断続的に投与することができ、治療的処置及び又は作用剤の投薬計画の前に又は後で投与することもできる。
【0329】
そのような作用剤は、以下のもののいずれか1つ又は複数から選択することができるがこれらに限定されない:IL−1又はそのアゴニスト、IL−6又はそのアゴニスト、IL−17又はそのアゴニスト、IL−21又はそのアゴニスト、IL−22又はそのアゴニスト、IL−23又はそのアゴニスト、抗IL−25又はIL−25アンタゴニスト、抗IL−27又はIL−27アンタゴニスト、Toll様受容体(TLR)アンタゴニスト、炎症促進性作用剤、又は更なる酵母を含んでいてもよい細菌性若しくは真菌性成分。
【0330】
疾患の1つ若しくは複数の症状の緩和により初期抗真菌免疫応答が観察された後、又は作用剤と共に約1〜5用量の酵母ベースの免疫療法をした後は、TH1型応答が個体に生じることを可能にするために、作用剤を更なる療法から除外する。
【0331】
酵母ベースの免疫療法剤及び作用剤の組み合わせを投与することにより、被験者のTH17 T細胞応答が増強されることになり、それにより真菌性疾患の1つ又は複数の症状が軽減される、例えば、真菌負荷量が低減され、及び/又は被験者の生存が増加されると予想される。
【0332】
実施例16
以下の例は、酵母ベースの免疫療法に応答した末梢血リンパ球の増殖の測定を実証する。
【0333】
この例では、第I相変異型ras癌臨床試験(Globelmmune, Inc.社)の1人のヒト被験者のデータが示される。この実験では、被験者の末梢血リンパ球(PBL)が、種々の刺激に応答して増殖する能力を評価した。手短に言えば、PHA、カンジダ抽出物、及び2つの異なる濃度の酵母ベースの免疫療法組成物(「4016」と表記されている、組換え変異型ras抗原を発現する熱死滅化サッカロマイセス・セレビシエ)に対する増殖について、酵母ベースの免疫療法組成物又はカンジダ抽出物の場合は培養開始の5日後、PHAの場合は3日後にチミジン取り込みを測定することにより、PBLを評価した。ほとんどの個体に由来するPBLは、PHAに及びカンジダ酵母抽出物にも応答するであろうということが予想される。これらのデータは、この患者に由来するPBLが、in vitroでは酵母ベースの免疫療法剤に対して増殖しないが、PHA及びカンジダ抽出物と接触すると強力に増殖することを明らかに示す。
【0334】
【表1】
次の例(表2)では、被験者が酵母ベースの免疫療法組成物(4016)で免疫された(in vivo)1週間後に、同じ被験者に由来するPBLで実験を繰り返した。酵母ベースの免疫療法に対する患者の応答が、免疫の結果として発生したことは明らかである。
【0335】
【表2】
酵母ベースの免疫療法による免疫後に応答者となる、表1に詳述されている「不応答者」表現型は、種々の臨床試験で試験された被験者のおよそ25%で観察される(データ非表示)。集団の50%に相当する第2の表現型は、そのPBLが免疫前にin vitroで酵母ベースの免疫療法組成物に応答し、免疫後に依然として応答者である被験者であることを特徴とする。被験者の最後の25%は、免疫前に酵母ベースの免疫療法組成物に対してin vitroで増殖し、彼らのT細胞が、組成物による免疫後でさえ酵母ベースの免疫療法組成物に応答してin vitroで増殖を継続することができない不応答者である。「不応答者」という語は、酵母ベースの免疫療法剤との接触に応答したPBLのin vitroでの増殖という状況で使用されるが、被験者が、治療剤としての酵母ベースの免疫療法に対して「不応答」であるということを必ずしも示すものではないことに留意されたい。実際、理論により束縛されないが、本発明者らは、これらの「非増殖体」は、実際には超TH17応答者(強力な、高度な、又は非常に高度なTH17応答を生じる個体)である可能性が高く、TH17微小環境が、真に不応答性ではなく、実際には抗増殖性の場合があると考える。言い換えれば、これらの個体では、in vitro(及びin vivoでも)で酵母ベースの組成物と接触することにより、TH17細胞が活性化される可能性が最も高いが、TH1細胞は活性化されず(又はTH1経路を犠牲にしてTH17経路に過剰傾倒する)、その一方で増殖アッセイでは、本来増殖性であることが知られているTH1型CD4+応答が測定される。TH1媒介性CD8免疫応答が有益であると考えられる場合(例えば、ウイルス、腫瘍、及び/又は細胞内病原体若しくは他の病原体に対する治療的免疫応答を誘発するという状況で)、そのような被験者は、TH17応答を阻害する作用剤と共に酵母ベースの免疫療法を施す、特に良好な候補であり得る。
【0336】
実施例17
以下の例は、酵母ベースの免疫療法の予測される免疫応答について被験者をスクリーニングする方法を実証する。
【0337】
末梢血単核細胞試料及び血清を、スクリーニングしようとする個体から収集する。血清試料を評価して、IL−12と比べたIL−17及び/又はIL−23のレベルを決定するが、IL−17及びIL−23は、TH17サイトカインであるとみなされており、IL−12は、TH1サイトカインであるとみなされている。凝固血から収集し、使用まで−80℃で保管された血清を、IL−12、IL−23、及びIL−17の検出最低限界が、それぞれ15.0、6.8、及び15.0pg/mlであるHuman Quantikine R&D Systems社製のキット等の市販ELISAキットで試験することになる。被験者を評価して、被験者のTH17及びTH1レベルが、正常集団で予想されるレベルと異なるか否か、及び被験者が、高(より強い)若しくは低(弱い)IL−17産生体又は「正常」IL−17産生体に大まかに分類することができるか否かを決定することになる。被験者が、IL−12をほとんど又は全く産生せず、刺激に応答してほぼ排他的なTH17応答を示すと考えられる別のカテゴリーである「非常に高い」IL−17産生体を設定してもよい。血清プロファイルが、IL−17又はIL−12について高い/強い対低い/弱いという明確な分類をもたらさない場合、IL−23値が、分析を決定すると予想される。IL−23は、IL−12と重鎖を共有し、DCにより産生され、TH17持続性と相関する(Kornら、2009年により概説されている)。
【0338】
酵母ベースの免疫療法に応答して最も高い(強い)IL−17活性を示す被験者は、IFN非依存性CD4及びIL−12依存性経路に向かって偏っている免疫応答を示すであろうと予想される。反対に、より低い(弱い)又はよりバランスが保たれたTH17活性を示す被験者は、それほど優勢ではないTH17/TH1応答を示し、IFN依存性CD4及びIL−12非依存性経路に向かってより偏っているであろう。
【0339】
別の実験では、採取された血液から収集した末梢血単核細胞を、フローサイトメトリー細胞内サイトカイン染色により、IFN−γ又はIL−17の産生体であるCD3+ CD4+細胞の相対的パーセント及びCD3+ CD8+細胞の相対的パーセントについて表現型決定し、各細胞は、Chenら、2010年に記載のようにイオノマイシンで短くパルスした後での細胞内染色により明確にされる。CD8 IFN−γ ELISpotも実施する。IL−17又はIL−12関連T細胞サイトカインIFN−γを産生するT細胞の出現頻度及び表現型を、IFN−γ産生CD8+ T細胞の出現頻度と同じように評価する。IL−17及びTH17細胞と、IL−12及びIFN−γ産生CD4 T細胞との間に相関性が発生する。
【0340】
TH17及びTregは逆相関することが予想されるため、別の実験では、Treg細胞の出現頻度を、酵母ベースの免疫の関数として評価する。患者に由来する細胞を、TregのマーカーとしてのCD25+ FoxP3+ CD4+ T細胞について表現型決定する。
【0341】
別の実験では、患者末梢血リンパ球を、免疫の結果として酵母に応答してin vitroで増殖するそれらの能力について評価する。被験者は、実施例16に記載のように少なくとも3つの集団に分類されるであろうと予測される:(1)以前に酵母ベースの免疫療法を受けたか否かに関わらず、そのリンパ球が、酵母に対してin vitroで常に増殖するもの、(2)アッセイ前に酵母ベースの免疫療法を受けた結果としてのみ、酵母に応答して増殖するもの、及び(3)処置したにも関わらず、酵母に対してin vitroで全く増殖しないもの。理論により束縛されないが、TH17転写因子RORγtは、TH17関連抗増殖促進性シグナル伝達をもたらす場合があるため、後者の集団は、TH17超応答性集団(高い/強い、及び/又は非常に高い/非常に強いTH17応答者)を含むであろうと予測される。
【0342】
これらのアッセイでは、末梢血単核細胞(PBL又はPBMCを表記されている)を末梢血から単離し、1PBL当たり10:1又は1:1酵母の比率の熱死滅化酵母と共に、1ウェル当たり300,000及び150,000個の細胞(平均で約30%のCD3+ T細胞を含有する)で培養する。2つの陽性対照には、カンジダ酵母抽出物、及びT細胞マイトジェン、フィトヘマグルチニン(PHA)が含まれていてもよく、ほとんどの個体のPBLは、それらに応答するはずである(実施例16の表を参照)。
【0343】
上記の実施例16のように、予防又は治療しようとする疾患、その疾患に最も効果的であると予測される免疫応答のタイプ、及び個体が、他の介入なしで酵母ベースの免疫療法に応答して生じさせると予想される免疫応答のタイプを考慮すると、個体のTH17型応答性のレベル及びTH1型応答性のレベル(又はこの2つの応答の比率)を確立することにより、酵母ベースの免疫療法を使用してどの程度最も良好に個体を治療することができるかを決定することができる。したがって、治療プロトコールを改良して、最も有利であり、有益であり、及び/又は治療的である応答が、特定の個体及び特定の疾患又は状態に対して誘発され、酵母ベースの免疫療法の結果の向上を保証することができる。
【0344】
本発明の種々の実施形態が詳細に記述されているが、当業者であれば、それら実施形態の改変及び応用を企図するであろうということは明白である。しかしながら、そのような改変及び応用は、添付の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲内であることが明示的に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]