(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法において、圧縮空気を空気飽和器に通して飽和空気とし、この飽和空気を噴霧器に導入する流路であり、前記空気飽和器の上部と前記空気飽和器と前記噴霧器とを繋げる導管のいずれかの部位に第1温度センサを設け、前記噴霧器に導入する飽和空気の温度を測定し、測定した温度情報に基づいて制御部が前記空気飽和器内の第1ヒータを作動させ、飽和空気の温度を制御することを特徴とする噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法。
圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、前記制御部が、前記噴霧器に導入される飽和空気が、前記試験槽内で噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように、槽内温度と前記空気飽和器で測定された実際の圧力との相関関係から求める温度に飽和空気の温度を設定することを特徴とする請求項1または2記載の噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法。
圧縮空気を生成するコンプレッサと、圧縮空気の圧力を制御する圧力調節手段と、圧縮空気を飽和空気にするための空気飽和器と、圧縮空気を前記空気飽和器内の水に通して飽和空気とする加湿手段と、前記空気飽和器内の水を加熱する第1ヒータと、飽和空気を前記空気飽和器から試験槽内の噴霧器に送る導管と、飽和空気の温度を測定するために飽和空気を前記噴霧器に導入する流路である前記空気飽和器の上部から前記導管のいずれかの部位に位置する第1温度センサと、前記第1温度センサで測定された温度情報を基に前記第1ヒータを制御する制御部とを備えることを特徴とする噴霧腐食試験装置。
前記圧力調節手段は前記空気飽和器に通す圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、前記制御部は、前記空気飽和器内の飽和空気の圧力を測定する圧力センサの情報を基に前記試験槽内の噴霧器に導入する飽和空気が前記試験槽内で噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように飽和空気の温度を設定することを特徴とする請求項4または5記載の噴霧腐食試験装置。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている噴霧腐食試験装置は、試験槽内に空気ノズルと液ノズルからなる噴霧器を備えており、空気ノズルから噴出される圧縮空気のベンチュリ効果により液ノズル内の腐食性溶液を吸い上げ、微細な粒子として試験槽内の試料に均一に噴霧するように構成されている(非特許文献1参照)。
【0003】
以前より、試験槽内に腐食性溶液を噴霧する際に、乾燥した圧縮空気を使用して腐食性溶液を噴霧すると、所定の濃度に調整した腐食性溶液の濃度が変動してしまうという問題がある。そのため、乾燥した圧縮空気を空気飽和器内の水に通過させて飽和空気とすることにより、噴霧時の腐食性溶液の濃度変動を抑制している。
【0004】
ところで、圧縮された飽和空気が噴霧器から試験槽内に噴出すると断熱膨張により温度が低下する。したがって、試験槽内に飽和空気を噴出する際に、槽内温度と同温の飽和空気とするために、空気飽和器の水温を槽内温度と噴霧圧力との相関関係から求める温度に設定して、圧縮空気を加湿及び加熱していた。
【0005】
例えば、非特許文献2記載の中性塩水噴霧試験では、噴霧室(試験槽)内の温度を35±2℃に制御し、また、噴霧器に供給する圧縮空気は、噴霧室の温度よりも10度以上高い水を有する飽和塔(空気飽和器)の中を通過させて加湿及び加熱する必要があると規定している。飽和塔内の水温は使用する圧力や噴霧器のノズルタイプによって異なるが、非特許文献2では一例として、噴霧過圧(噴霧圧力)が98kPa(0.098MPa)のとき、飽和塔(空気飽和器)の水温を48℃に制御すると記載している。
【0006】
以下、「圧縮された飽和空気が噴霧器から試験槽内に噴出する際に、槽内温度と同温の飽和空気となる、槽内温度と飽和空気の噴霧圧力との相関関係から求める空気飽和器内で制御する温度」を、圧縮された飽和空気の「誘導値」という。なお、槽内温度とは、噴霧腐食試験の規格で定められた試験槽内の温度を意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、従来の噴霧腐食試験装置では、圧縮された飽和空気を用いて試験槽内に腐食性溶液を噴霧する際に、空気飽和器内の水温を「誘導値」に設定し、この空気飽和器を通過して加湿及び加熱された飽和空気を試験槽内の噴霧器に導入していた。
しかし、この噴霧器に導入される飽和空気の温度は、空気飽和器内の水温によって制御される間接的制御であり、直接制御されておらず、下記の課題を有していた。
【0009】
空気飽和器の水位が低下すると飽和空気が空気飽和器内の上部で冷却されてしまい、空気飽和器内で「誘導値」に制御された水温よりも低い温度の飽和空気が試験槽内の噴霧器に導入されてしまう。したがって、この飽和空気が噴霧器の空気ノズルから噴出すると、断熱膨張によりさらに温度が低下して、槽内温度よりも低い温度の飽和空気となる。この槽内温度よりも低い温度の飽和空気は槽内雰囲気によりただちに加熱されるため、不飽和な空気となる。その結果、微細粒子となった腐食性溶液の水分が不飽和な空気によって蒸発し、腐食性溶液の濃度が上昇してしまう恐れがあった。
【0010】
また、試験槽内の噴霧器と空気飽和器とを繋ぐ導管を通過する際、飽和空気が冷却され、飽和空気中の水分が凝縮して水滴を生じることがある。この水滴が飽和空気に混入して噴霧器の空気ノズルから噴出すると、微細粒子となった腐食性溶液に水滴が結びついて、腐食性溶液の濃度が低下してしまう恐れがあった。
【0011】
さらに、噴霧腐食試験においては、飽和空気の噴霧圧力を変動させることにより腐食性溶液の噴霧量を調節できることが知られている。しかし、従来の噴霧腐食試験装置では、上記非特許文献1に記載の条件(噴霧圧力0.098±0.01MPa、空気飽和器の水温47±2℃)に設定値を固定している。したがって、噴霧量を調節するために装置出荷時に設定された値とは異なる噴霧圧力で腐食性溶液の噴霧を行う場合には、槽内温度と噴霧圧力との相関関係から求める新たな「誘導値」となるように、飽和空気の温度の設定を技術者が手動で変更する必要があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、試験槽内の噴霧器に導入する飽和空気の温度を直接制御し、噴霧器に一定温度の飽和空気を導入して噴霧時の腐食性溶液の濃度の変動を防止し得る飽和空気温度制御方法及び噴霧腐食試験装置を実現することを目的とする。
【0013】
また、飽和空気を「誘導値」に調温し、噴霧圧力を変動させて噴霧量を調節する場合においても、試験槽内に所定の温度の飽和空気を導入し得る飽和空気温度制御方法及び噴霧腐食試験装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法において、圧縮空気を空気飽和器に通して飽和空気とし、この飽和空気を噴霧器に導入する流路であり、前記空気飽和器の上部と前記空気飽和器と前記噴霧器とを繋げる導管のいずれかの部位に第1温度センサを設け、前記噴霧器に導入する飽和空気の温度を測定し、測定した温度情報に基づいて制御部が前記空気飽和器内の第1ヒータを作動させ、飽和空気の温度を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明の噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法は、上記に加えて、前記第1温度センサを
前記空気飽和器の上部または前記導管内の前記空気飽和器との接続部近傍のいずれかの部位に設ける一方、
前記導管の前記噴霧器との接続部近傍に位置する第2温度センサ及び前記導管の
全体を覆う第2ヒータを設け、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサとで測定された飽和空気の温度情報を前記制御部に送り、その温度情報に基づいて前記噴霧器に送られる飽和空気が前記試験槽内で槽内温度と同温の飽和空気となるように前記第2ヒータを作動させて飽和空気を加熱することを特徴とする。
【0016】
本発明の噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法は、上記に加えて、圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、前記制御部が、前記噴霧器に導入される飽和空気が、前記試験槽内で噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように、槽内温度と前記空気飽和器で測定された実際の圧力との相関関係から求める温度に飽和空気の温度を設定することを特徴とする。
【0017】
本発明の噴霧腐食試験における噴霧腐食試験装置は、圧縮空気を生成するコンプレッサと、圧縮空気の圧力を制御する圧力調節手段と、圧縮空気を飽和空気にするための空気飽和器と、圧縮空気を前記空気飽和器内の水に通して飽和空気とする加湿手段と、前記空気飽和器内の水を加熱する第1ヒータと、飽和空気を前記空気飽和器から試験槽内の噴霧器に送る導管と、飽和空気の温度を測定するために飽和空気を前記噴霧器に導入する流路である前記空気飽和器の上部から前記導管のいずれかの部位に位置する第1温度センサと、前記第1温度センサで測定された温度情報を基に前記第1ヒータを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の噴霧腐食試験における噴霧腐食試験装置は、上記に加えて、前記第1温度センサを
前記空気飽和器の上部または前記導管内の前記空気飽和器との接続部近傍のいずれかの部位に設け、
前記導管の前記噴霧器との接続部近傍に位置
し、前記噴霧器に導入する直前の飽和空気の温度を測定し、その温度情報を前記制御部に出力する第2温度センサと、
前記導管の全体を覆うように設けられ、前記制御部によって制御される第2ヒータとを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の噴霧腐食試験における噴霧腐食試験装置は、上記に加えて、前記圧力調節手段は前記空気飽和器に通す圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、前記制御部は、前記空気飽和器内の飽和空気の圧力を測定する圧力センサの情報を基に前記試験槽内の噴霧器に導入する飽和空気が前記試験槽内で噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように飽和空気の温度を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の噴霧腐食試験における飽和空気温度制御方法及び噴霧腐食試験装置は、上記の通りであるので、試験槽内の噴霧器に導入する圧縮された飽和空気の温度を直接制御することができる。また、導管の位置で加熱することで、飽和空気の温度を噴霧器に導入するまで空気飽和器で設定した温度に維持することができる。したがって、圧縮された飽和空気を噴霧器へ温度の変動無く導入することができ、噴霧時の腐食性溶液の濃度の変動を防止することができる。
【0021】
さらに、実際の噴霧圧力に基づいて飽和空気の温度を制御することができるため、噴霧圧力を一般的な制御値と異なる値に設定した場合においても、試験槽内に噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気とすることができ、腐食性溶液の濃度の変動を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の実施例1における噴霧腐食試験装置を示すものである。
【0025】
噴霧腐食試験装置1は、圧縮空気を生成するコンプレッサ2と、圧縮空気の圧力を制御する圧力調節手段3と、圧縮空気を飽和空気にするための空気飽和器4と、圧縮空気を空気飽和器4内の水に通して飽和空気とする加湿手段5と、空気飽和器4内の水を加熱する第1ヒータ6と、飽和空気を空気飽和器4から試験槽8内の噴霧器9に送る導管12と、飽和空気の温度を測定するために飽和空気を噴霧器9に導入する流路13である空気飽和器4の上部から導管12のいずれかの部位に位置する第1温度センサ14と、第1温度センサ14で測定された温度情報を基に第1ヒータ6を制御する制御部100を備えている。
【0026】
この噴霧腐食試験装置1は、空気飽和器4と試験槽8内の噴霧器9の空気ノズル10とを導管12によって連絡する一方、噴霧器9の液ノズル11には溶液タンク17内の腐食性溶液を供給する供給管18を接続している。空気飽和器4と導管12を接続する位置は、空気飽和器4の底部から上昇した飽和空気を速やかに噴霧器9に導入するため空気飽和器4の天井面が好ましいが、空気飽和器4内の水が導管12内に流入しない位置であれば、空気飽和器4の上部側面でもよい。また、導管12は、空気飽和器4から発生した飽和空気が導管12内を通過する間に冷却されることを防止するため、断熱加工を施すことが好ましい。
また、噴霧腐食試験装置1の前面には、タッチパネル20を有する操作パネル19が設けられている。タッチパネル20は、噴霧腐食試験装置1の運転状態に係る各種情報や操作用の画面を表示する表示画面を有し、この表示画面に対する接触操作を検出する機能を備えている。
【0027】
圧力調節手段3は、コンプレッサ2と加湿手段5を連絡する配管の途中に設置されており、空気飽和器4へ供給する圧縮空気の圧力の値を制御する。一般的には圧力の制御調整が行える圧力調節弁が用いられる。本実施例においては上記の位置に設置されているが、コンプレッサ2を構成する部品の一部として設置されてもよい。また、圧力調節手段3は、図示しない圧力調節部を有している。圧力調節部は、圧力操作パネルにより圧力の値を設定し、また、マイクロコンピュータなどの演算装置によって圧力調節手段3を作動させる信号を生成することで、設定した値に自動で圧力を制御する。なお、圧力調節部には他の種類の調節機構を用いてもよい。
【0028】
加湿手段5は、空気飽和器4内底部に内設されており、空気飽和器4外に設置されたコンプレッサ2と連絡している。この加湿手段5には、内部に気体を通すことができる円形または馬蹄形の金属管であり、気体を発泡させるための細孔を備えた発泡管が一般的に用いられる。
【0029】
第1温度センサ14は、飽和空気の流路13の上流側である空気飽和器4の上部に設けられている。第1温度センサ14は、例えば熱電対や白金抵抗測温体であるが、他の構成のセンサが用いられてもよい。ここで、第1温度センサ14を空気飽和器4の上部に設けた理由は、空気飽和器4内の水位が低下している際に、加湿手段5により発生した飽和空気が空気飽和器4の上部に達するまでに冷却されることを考慮し、導管12に入る直前の飽和空気温度を直接測定するのに適しているためである。本実施例においては、上記理由により空気飽和器4の上部に第1温度センサ14を設けることが好ましいが、飽和空気の流路13内であれば、例えば、導管12内の空気飽和器4との接続部近傍に第1温度センサ14を設けてもよい。また、この第1温度センサ14は、制御部100へ温度情報を出力する。
【0030】
制御部100はコンピュータを利用したものであり、メモリに予め記憶させた所定プログラムと、予め設定される噴霧腐食試験の噴霧時間、試験槽または腐食性溶液の設定温度などの各種データにしたがってCPUや周辺機器が動作することにより噴霧腐食試験を実行する。これらのデータは、例えば、タッチパネル20の操作により入力されるものとしてもよい。この制御部100の中には、空気飽和器4内の飽和空気の「誘導値」を設定する温度設定部101や、「誘導値」と第1温度センサ14で検出した飽和空気の温度情報とを取り入れ、第1温度センサ14で検出される温度情報が「誘導値」となるように第1ヒータ6に出力信号を与えて制御する温度制御部102が設けられている。
【0031】
圧力センサ16は、空気飽和器4の上部に内設されており、空気飽和器4内の飽和空気の圧力を測定する。この圧力センサ16は、ダイヤフラムが変形して発生する電気抵抗の変化を電気信号に変換するゆがみゲージ型や、ダイヤフラムの変形を静電容量として検出する静電容量型であるが、他の種類のセンサが用いられてもよい。圧力センサ16の測定値は、圧力センサ16と接続している圧力表示部(図示しない)に表示され、試験者は飽和空気の圧力を確認することができる。
【0032】
図1の噴霧腐食試験装置1による、飽和空気温度制御方法について説明する。
【0033】
コンプレッサ2から送られる圧縮空気は、空気飽和器4の底部近傍にある加湿手段5に導入され、空気飽和器4内の水に通して飽和状態の圧縮空気、つまり、「飽和空気」となる。本実施例において、コンプレッサ2から空気飽和器4に供給される空気の圧力は、圧力調節手段3により一般的な噴霧腐食試験の規格に定められた0.098MPaに設定、制御される。その後、圧縮された飽和空気は空気飽和器4の上部から導管12内を介して噴霧器9に導入され、空気ノズル10から噴出する。このとき、液ノズル11内の腐食性溶液が空気ノズル10から噴出する飽和空気のベンチュリ効果によって吸い上げられ、腐食性溶液は微細な粒子として試験槽8内に載置された試料Sへ噴霧される。
【0034】
このとき、第1温度センサ14は飽和空気の流路13の上流側である空気飽和器4内の上部で、圧縮された飽和空気の温度を直接測定している。この第1温度センサ14が測定した温度情報は制御部100に入力される。制御部100の温度制御部102は、温度設定部101で予め設定した飽和空気の「誘導値」と第1温度センサ14より入力された温度情報に基づいて、空気飽和器4内の第1ヒータ6へ出力信号を与えて制御する。第1ヒータ6は、第1温度センサ14で測定される飽和空気の温度が、試験槽8内で噴霧する際に槽内温度と同温の飽和空気として噴霧されるための「誘導値」(噴霧圧力0.098MPaの場合、47℃)になるように空気飽和器4内の水を加熱する。
【0035】
上記の通り、
図1に示す本実施例の噴霧腐食試験装置1及び飽和空気温度制御方法においては、試験槽8内の噴霧器9に圧縮された飽和空気が導入される際に、空気飽和器4の水温ではなく、飽和空気が通過する流路13に備えた第1温度センサ14の温度情報によって、制御部100が空気飽和器4内の第1ヒータ6を制御して圧縮された飽和空気の温度を直接制御するため、設定した温度が変動することなく噴霧器9に圧縮された飽和空気を導入することができ、噴霧時の腐食性溶液の濃度の変動を防止することができる。
【実施例2】
【0036】
図2は、本発明の実施例2における噴霧腐食試験装置の構造を示すものである。
以下の実施例2においては、上記実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0037】
噴霧腐食試験装置1’は、上記実施例1の噴霧腐食試験装置1の構造に加えて、第1温度センサ14を流路13の上流側に設け、流路13の下流側に位置する噴霧器9に導入する直前の飽和空気の温度を測定しその温度情報を制御部100に出力する第2温度センサ15と、
導管12の全体を覆うように設けられ、制御部100によって制御される第2ヒータ7を備えている。
【0038】
第2ヒータ7は、空気飽和器4と噴霧器9とを繋げる導管12を覆うように設けられている。本実施例の第2ヒータ7は導管12全体を覆うように設けているが、例えば導管12が冷却されにくい環境にある場合には、導管12の一部分のみを覆う形で設けてもよい。また、この第2ヒータ7は、制御部100によって加熱を制御されている。
【0039】
第1温度センサ14は、上記実施例1と同様に飽和空気の流路13の上流側である空気飽和器4の上部に設けられている。第1温度センサ14の位置は、上記実施例1と同様の理由で、空気飽和器4の上部に設けられることが好ましいが、飽和空気の流路13内の上流側であれば、例えば、導管12内の空気飽和器4との接続部近傍に第1温度センサ14を設けてもよい。
【0040】
一方、第2温度センサ15は、飽和空気の流路13の下流側である導管12の噴霧器9との接続部近傍に設けられている。第2温度センサ15は、第1温度センサ14と同様に熱電対や白金抵抗測温体が用いられるが、他の構成のセンサを用いてもよい。本実施例の第2温度センサ15は、導管12の外周面に接して設けられているが、導管12内の飽和空気の温度をより精度よく測定するために、導管12の内部に設けてもよい。この第2温度センサ15は、制御部100へ温度情報を出力する。また、制御部100内には、温度偏差制御部103が設けられている。
【0041】
図2の噴霧腐食試験装置1’による、飽和空気温度制御方法について説明する。
【0042】
本実施例の飽和空気温度の制御方法の特徴は、上記実施例1の制御方法に加えて、以下の通りである。
空気飽和器4内の水を通過して加湿及び加熱された飽和空気の流路13の上流側における温度を、空気飽和器4の上部に設けられた第1温度センサ14により測定する。
また、空気飽和器4から導管12内を通過して噴霧器9に導入される直前の飽和空気の温度を、導管12の噴霧器9との接続部近傍に設けられた第2温度センサ15により測定する。
【0043】
第1温度センサ14が測定する流路13上流部における飽和空気の温度情報は、制御部100に入力される。また、第2温度センサ15が測定する流路13下流部における飽和空気の温度情報も、同様に制御部100に入力される。
【0044】
制御部100内の温度偏差制御部103は、第1温度センサ14及び第2温度センサ15で測定された温度情報を基に、空気飽和器4内における飽和空気の温度(本実施例の場合「誘導値」)と噴霧器9に導入される直前の飽和空気の温度を比較し、噴霧器9に導入される直前の飽和空気の温度が「誘導値」となるように、導管12を覆うように設けられた第2ヒータ7に出力信号を与えて制御する。
【0045】
第2ヒータ7は、制御部100の制御によって、導管12の内部を通過する飽和空気の温度が「誘導値」となるまで加熱する。第2ヒータ7の温度制御は、制御が容易なON/OFF動作が通常用いられるが、比例動作やPID動作によって制御してもよい。
【0046】
上記の通り、
図2に示す本実施例の噴霧腐食試験装置1’及び飽和空気温度制御方法においては、流路13の上流側と下流側にそれぞれ設けられた第1温度センサ14と第2温度センサ15によって飽和空気の温度を測定し、その温度情報を基に導管12の第2ヒータ7を制御することで、噴霧器9に導入される飽和空気の温度を一定に保つことができるため、噴霧時の腐食性溶液の濃度の変動を防止することができる。
【実施例3】
【0047】
図3は、本発明における噴霧腐食試験装置のブロック図を示すものである。
以下の実施例3においては、上記実施例2と同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0048】
本実施例の噴霧腐食試験装置は、
図2に示す上記実施例2の噴霧腐食試験装置1’の構造に加えて、圧力調節手段3が空気飽和器4に通す圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、制御部100は、空気飽和器4内の飽和空気の圧力を測定する圧力センサ16の情報を基に試験槽8内の噴霧器9に導入する飽和空気が試験槽8内で噴霧する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように飽和空気の温度を設定することを特徴とする。
【0049】
制御部100内の温度設定部101は、試験槽8内の噴霧器9に導入される圧縮された飽和空気が試験槽8内で噴出する際に、槽内温度と同温の飽和空気になるように、予め設定した槽内温度と圧力センサ16で測定された実際の圧力情報から新たな「誘導値」を設定する。温度制御部102は新たな「誘導値」を基に飽和空気の温度を制御する。
【0050】
図3に示す制御部100を備えた噴霧腐食試験装置による、飽和空気温度制御方法について説明する。
【0051】
本実施例の飽和空気温度の制御方法の特徴は、上記実施例2の飽和空気温度制御方法に加えて以下の点にある。
すなわち、圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、また、制御部100は、噴霧器9に導入される飽和空気が、試験槽8内で噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気となるように、槽内温度と空気飽和器4で測定された実際の圧力との相関関係から求める温度となるように制御している。
【0052】
コンプレッサ2から空気飽和器4内の加湿手段5に送られる圧縮空気の圧力を、圧力調節手段3の図示しない圧力調節部によって設定する。ここで設定する圧縮空気の圧力値は、試料Sへ落下する微細粒子となった腐食性溶液の噴霧量に基づいて、非特許文献2に記載の噴霧圧力の制御範囲0.07〜0.17MPaから試験者が任意に設定する。一般的に、噴霧圧力を低圧に設定すると低噴霧量となり、高圧に設定すると高噴霧量となる。
【0053】
コンプレッサ2から空気飽和器4内に送られた飽和空気の圧力の値を、空気飽和器4内の上部に内設されている圧力センサ16が測定し、その圧力情報は制御部100に入力される。制御部100内の温度設定部101は、噴霧器9に導入する飽和空気が試験槽8内で噴出する際に、槽内温度と同温の飽和空気になるように、予め設定した槽内温度と圧力センサ16より入力された実際の圧力情報を基に新たな「誘導値」を設定する。その後、温度制御部102は新たな「誘導値」と第1温度センサ14より入力された温度情報に基づいて第1ヒータ6を制御する。
【0054】
ここで、温度設定部101による、圧力を変動させた際の飽和空気の「誘導値」の設定方法について説明する。
【0055】
大気圧をP
A、圧力センサ16が測定する空気飽和器4内の飽和空気の圧力の値をP
B、試験槽8の槽内温度と同温の水の飽和蒸気圧をP
sat1とすると、以下の式(1)によって飽和空気の「誘導値」となる水温の飽和蒸気圧P
sat2が求められる。
【数1】
ここで、大気圧P
Aは標準気圧0.101325MPaとする。
【0056】
本実施例では、微細粒子となった腐食性溶液の噴霧量を増やすため、圧力調節手段3で制御する圧縮空気の圧力の値及び圧力センサで測定される飽和空気の圧力の値P
Bを0.135MPaとした。
【0057】
温度設定部101には、以下の表(1)に示すような水の温度と飽和蒸気圧との関係がデータとして記録されている。前記JIS Z2371規定の塩水噴霧試験の槽内温度は35℃であるため、本実施例の式(1)における槽内温度と同温の水の飽和蒸気圧P
sat1は、温度設定部101に記録されているデータより42.2mmHgとなる。
【表1】
【0058】
空気飽和器4内における飽和空気の圧力値P
Bと槽内温度と同温の水の飽和蒸気圧P
sat1から前記式(1)を用いて算出すると、飽和空気の「誘導値」となる水温の飽和蒸気圧P
sat2は97.175mmHgとなる。
【0059】
温度設定部101は、式(1)により算出された飽和蒸気圧値に最も近い飽和蒸気圧である水温を、空気飽和器で設定する飽和空気の「誘導値」として、水の温度と飽和蒸気圧の関係データ(表1)より選択する。本実施例において、算出された飽和蒸気圧値P
sat2は97.175mmHgであるため、飽和空気の「誘導値」は前記飽和蒸気圧値に最も近い飽和蒸気圧である51℃となる。
【0060】
上記の通り、
図3に示す制御部100を備えた噴霧腐食試験装置1及び飽和空気温度制御方法においては、空気飽和器4に送る空気の圧力を任意に設定可能とし、空気飽和器4内に内設された圧力センサ16で測定した圧力値に基づいて飽和空気の温度を設定することにより、圧力を変化させた場合においても、試験槽8内に噴出する際に槽内温度と同温の飽和空気とすることができるため、試験槽8内での腐食性溶液の噴霧量を調節可能とし、かつ濃度の変動を防止することができる。
【0061】
なお、本実施例においては、第2ヒータ7と、流路13の上流と下流にそれぞれ位置する第1温度センサ14及び第2温度センサ15を備えた構成の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図1の第1温度センサ14を1つのみ設けた噴霧腐食試験装置1においても、圧縮空気の圧力を任意に設定可能とし、飽和空気の温度を実際の噴霧圧力との相関関係から求めた「誘導値」に制御することができる。
【0062】
また、本実施例において、飽和空気の圧力は圧力調節手段3の図示しない圧力調節部によって温度とは独立に制御しているが、例えば、制御部100内に圧力設定部(図示しない)を設け、制御部100に各種データを入力するタッチパネル20により圧力の設定値を入力し、圧力調節手段3へ出力信号を与えて制御してもよい。