特許第5913210号(P5913210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913210サスペンションアームおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913210
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】サスペンションアームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20160414BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20160414BHJP
   B23K 33/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B60G7/00
   B23K9/00 501C
   B23K33/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-128947(P2013-128947)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-3567(P2015-3567A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274823(JP,A)
【文献】 特表平09−511968(JP,A)
【文献】 特開平09−193634(JP,A)
【文献】 特開2002−337525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部の先端の開口が塞がれるように、該先端にブッシュ用外筒が一体的に接合されているサスペンションアームにおいて、
前記先端は、前記ブッシュ用外筒の円筒外周面に突き合わされることにより前記開口の内周縁部が全周に亘って該円筒外周面に接するように、該円筒外周面に対応する円弧形状とされており、
該先端が全周に亘って前記円筒外周面に接するように突き合わされた状態で、該先端が全周に亘って溶接部を介して該円筒外周面に接合された構造をもっていることを特徴とするサスペンションアーム。
【請求項2】
サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部の先端の開口が塞がれるように、該先端にブッシュ用外筒を溶接により一体的に接合するサスペンションアームの製造方法において、
前記先端は、前記ブッシュ用外筒の円筒外周面に突き合わされることにより前記開口の内周縁部が全周に亘って該円筒外周面に接するように、該円筒外周面に対応する円弧形状とされており、
該先端が全周に亘って前記円筒外周面に接するように突き合わせた状態で、該先端の全周に溶接を施して該円筒外周面に接合する
ことを特徴とするサスペンションアームの製造方法。
【請求項3】
前記先端の前記円弧形状の周方向の外端部では、少なくとも前記開口の内周縁部が前記円筒外周面に接触させられる一方、
該外端部の肉厚と同じかそれより外側の外端部端面は、前記円筒外周面との間にV字状の窪みが形成されるように外端へ向かうに従って該円筒外周面から離間させられており、
前記窪みが形成される前記外端部では、該窪みの底部を含んで入熱されるように該窪みに向かって溶接する
ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンションアームの製造方法。
【請求項4】
前記窪みの開き角度θは30°以上で、
前記外端部端面は、前記筒状接合部の軸線に対して直角な方向において前記外端部の外端から該外端部の肉厚t以下で且つ該肉厚tの1/2以上の範囲に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のサスペンションアームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスペンションアームに係り、特に、サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部の先端の開口が塞がれるようにブッシュ用外筒が溶接により一体的に接合されているサスペンションアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サスペンションアーム本体にブッシュ用外筒が溶接により一体的に接合されているサスペンションアームが、車両の懸架装置用の部品として広く用いられている。特許文献1に記載のサスペンションアームはその一例で、サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部にブッシュ用外筒が一体的に溶接されるもので、ブッシュ用外筒の接合部分には、サスペンションアーム本体の筒状接合部の開口を塞ぐことができるように突起部が設けられている。このように筒状接合部の開口をブッシュ用外筒によって塞ぐようにすれば、サスペンションアーム本体内に水や泥等が入って錆が発生することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−274823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにブッシュ用外筒に突起部を設けて筒状接合部の開口を塞ぐ場合、単純な丸パイプを用いる場合に比べて、突出部の成形工程が増える分だけ製造コストが高くなる。また、それ等の突起部および筒状接合部が略接するように両者の寸法精度を管理する必要があるとともに、突起部の形状に倣って溶接を施す必要があるため、これ等の点でもコストアップになる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、サスペンションアーム本体の筒状接合部の先端の開口を塞ぐようにブッシュ用外筒が溶接されるサスペンションアームを安価に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部の先端の開口が塞がれるように、その先端にブッシュ用外筒が溶接により一体的に接合されているサスペンションアームにおいて、(a) 前記先端は、前記ブッシュ用外筒の円筒外周面に突き合わされることにより全周に亘ってその円筒外周面に接するように、その円筒外周面に対応する円弧形状とされており、(b) その先端が全周に亘って前記円筒外周面に接するように突き合わされた状態で、その先端が全周に亘ってその円筒外周面に溶接されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、サスペンションアーム本体に設けられた筒状接合部の先端の開口が塞がれるように、その先端にブッシュ用外筒を溶接により一体的に接合するサスペンションアームの製造方法において、(a) 前記先端は、前記ブッシュ用外筒の円筒外周面に突き合わされることにより全周に亘ってその円筒外周面に接するように、その円筒外周面に対応する円弧形状とされており、(b) その先端が全周に亘って前記円筒外周面に接するように突き合わせた状態で、その先端の全周に溶接を施してその円筒外周面に接合することを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明のサスペンションアームの製造方法において、(a) 前記先端の前記円弧形状の周方向の外端部では、少なくとも前記開口の内周縁部が前記円筒外周面に接触させられる一方、(b) その外端部の肉厚と同じかそれより外側の外端部端面は、前記円筒外周面との間にV字状の窪みが形成されるように外端へ向かうに従ってその円筒外周面から離間させられており、(c) 前記窪みが形成される前記外端部では、その窪みの底を含んで入熱されるようにその窪みに向かって溶接することを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第3発明のサスペンションアームの製造方法において、(a) 前記窪みの開き角度θは30°以上で、(b) 前記外端部端面は、前記筒状接合部の軸線に対して直角な方向において前記外端部の外端からその外端部の肉厚t以下で且つ肉厚tの1/2以上の範囲に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明のサスペンションアームにおいては、筒状接合部の先端がブッシュ用外筒の円筒外周面に対応する円弧形状とされており、その筒状接合部の先端が全周に亘って円筒外周面に接する状態で、その先端が全周に亘って円筒外周面に溶接されているため、筒状接合部の先端の開口がブッシュ用外筒によって適切に閉塞され、サスペンションアーム本体内への水や泥の侵入が適切に防止される。また、ブッシュ用外筒として丸パイプをそのまま用いることができるとともに、筒状接合部についても先端を円弧形状とするだけで特別な寸法精度の管理が不要であり、溶接もブッシュ用外筒の円筒外周面に沿って行えば良いため、特許文献1のようにブッシュ用外筒に突起部を設ける場合に比較して製造コストが低減される。
【0011】
第2発明の製造方法においても、実質的に第1発明と同様の作用効果が得られる。第3発明では、筒状接合部の先端の円弧形状の周方向の外端部では、少なくとも開口の内周縁部が円筒外周面に接触させられるとともに、その外端部の端面(外端部端面)とブッシュ用外筒の円筒外周面との間にV字状の窪みが形成され、その窪みの底部を含んで入熱されるように溶接が施されるため、その窪みから筒状接合部およびブッシュ用外筒に対してバランス良く入熱するようになり、筒状接合部の先端の開口をブッシュ用外筒によって確実に閉塞しつつ、ブッシュ用外筒に対する溶け込み深さや脚長が拡大されて、その外端部においても高い接合強度が得られる。
【0012】
第4発明では、窪みの開き角度θが30°以上であるため、その窪みから筒状接合部およびブッシュ用外筒に対してバランス良く入熱するように溶接を行うことが容易に可能である。また、窪みを形成する外端部端面が、筒状接合部の軸線に対して直角な方向において外端部の外端からその外端部の肉厚t以下で且つ肉厚tの1/2以上の範囲に設けられているため、筒状接合部の先端の開口をブッシュ用外筒によって確実に閉塞しつつ十分な大きさの窪みを確保して接合強度を向上させることができる。すなわち、外端部端面が肉厚tよりも大きくなると、筒状接合部の先端の開口とブッシュ用外筒の円筒外周面との間に隙間が生じるため、溶接状態によっては水等が侵入する可能性がある一方、外端部端面が肉厚tの1/2よりも小さくなると、窪みが小さくなって入熱量のバランス向上による接合強度の向上効果が十分に得られなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が好適に適用される車両用のサスペンションアームの一例を示す斜視図である。
図2図1におけるII−II矢視部分の拡大断面図である。
図3図2のIII 部を拡大して示す断面図である。
図4図2におけるIV−IV矢視部分の断面図である。
図5図1のサスペンションアームの溶接前の状態で、サスペンションアーム本体の筒状接合部の先端をブッシュ用外筒に突き合わせた状態の正面図である。
図6図5の突合せ状態の斜視図である。
図7図5の筒状接合部の先端の上半分を拡大して示す図で、(a) は図5に対応する正面図、(b) は先端側から見た端面図である。
図8図5の突合せ状態で窪み部分に溶接を施す際の溶接トーチの姿勢を説明する図である。
図9】サスペンションアーム本体の別の例を示す図で、図4に対応する断面図である。
図10】サスペンションアーム本体の更に別の例を示す図で、図4に対応する断面図である。
図11】サスペンションアーム本体の更に別の例を示す図で、図4に対応する断面図である。
図12】筒状接合部の先端が全域に亘ってブッシュ用外筒の円筒外周面に接するように突き合わされる他の実施例を説明する図で、図5に対応する正面図である。
図13図12におけるXIII部の溶接後の状態を説明する図で、図3に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
サスペンションアーム本体は、例えば中空長手形状で、その長手方向の両端部が筒状接合部として用いられるものでも良いが、少なくとも一つの筒状接合部を備えていてブッシュ用外筒が溶接によって固定されるものであれば、二股形状など種々の態様が可能である。ブッシュ用外筒は、例えば内部に弾性部材等を介して内筒が設けられ、その内筒を介して車両に取り付けられるもので、丸パイプが好適に用いられる。筒状接合部の先端は、全周に亘ってブッシュ用外筒の円筒外周面に接するように円筒外周面に対応する円弧形状とされ、例えば少なくとも先端の開口の内周縁部が全周に亘って円筒外周面に接するように構成されるが、先端の一部が全周に亘って円筒外周面に接するように構成すれば良い。また、必ずしも全周に亘って完全に円筒外周面に密着している必要はなく、加工誤差等により部分的に僅かな隙間(例えば1mm程度以下)があっても良い。
【0015】
ブッシュ用外筒の円筒外周面との間にV字状の窪みを形成する外端部端面は、例えばサスペンションアーム本体の筒状接合部における軸線に対して直角な平坦面が適当であるが、その軸線に対して直角方向からブッシュ用外筒側或いはその反対側へ傾斜した平坦な傾斜面などでも良い。窪みの開き角度θは30°以上が適当で、45°以上が望ましいが、30°未満であっても入熱バランスが改善されて接合強度が向上する。また、上記外端部端面は、筒状接合部の軸線に対して直角な方向において外端部の外端からその外端部の肉厚t以下で且つ肉厚tの1/2以上の範囲に設けることが望ましいが、肉厚tの1/2より狭い範囲でも、窪みにより入熱バランスが改善されて接合強度が向上する。第1発明、第2発明の実施に際しては、上記V字状の窪みは必ずしも必要でなく、外端部を含めて筒状接合部の先端の全域が円筒外周面に対応する円弧形状とされ、外端部端面を含む先端面の全面が円筒外周面に略密着させられる場合でも良い。
【0016】
サスペンションアーム本体の筒状接合部は、例えばその筒状接合部における軸線に対して直角な中空断面が長手形状(長円形や長方形など)で、その長手形状の長手方向とブッシュ用外筒の中心線とが略直角になる姿勢でブッシュ用外筒の円筒外周面に突き合わされ、その長手方向において円筒外周面に対応する円弧形状とされる。長手状中空断面の長手方向がブッシュ用外筒の中心線と略平行になる姿勢で突き合わされ、その長手方向と直角な短軸方向において円筒外周面に対応する円弧形状としても良いし、円形中空断面の筒状接合部を採用することもできるなど、種々の態様が可能である。
【0017】
筒状接合部とブッシュ用外筒とを溶接する溶接法としては、例えば消耗電極式アーク溶接、非消耗電極式アーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接など種々の溶接法を用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両の懸架装置に用いられるサスペンションアーム10の斜視図で、本発明方法に従って製造されたものである。このサスペンションアーム10は、中空で長手形状のサスペンションアーム本体12と、そのサスペンションアーム本体12の長手方向の両端部14にそれぞれ溶接により一体的に固設された一対のブッシュ用外筒16とを備えている。ブッシュ用外筒16は丸パイプにて構成されているとともに、内部に弾性部材を介して内筒が設けられ、その内筒を介して車両に取り付けられる。サスペンションアーム本体12の両端部14は筒状接合部に相当する。
【0019】
図2は、図1におけるII−II矢視部分の拡大断面図、すなわちサスペンションアーム本体12とブッシュ用外筒16との接合部分の断面図で、図3図2におけるIII 部、すなわち溶接による溶融接合部(網目部分)Wの拡大断面図である。また、図4は、図2におけるIV−IV矢視部分の断面図、すなわち端部14の軸線Oに対して直角な断面図である。これ等の図から明らかなように、サスペンションアーム本体12は、筒状接合部である両端部14を含めて長円形状の中空断面を有しており、その長円形状の長手方向(図2における上下方向)とブッシュ用外筒16の中心線Sとが略直角になり、且つ軸線Oと中心線Sとが略直交する姿勢で、端部14がブッシュ用外筒16の円筒外周面18に突き合わされて一体的に接合されている。端部14の先端20は、長円形状の長手方向において円筒外周面18に対応する円弧形状とされており、長円形状の全周に亘って円筒外周面18に溶接されている。このようにサスペンションアーム本体12の端部14の先端20が全周に亘って円筒外周面18に溶接されることにより、その先端20の開口21(図7参照)がブッシュ用外筒16によって閉塞され、その開口21からサスペンションアーム本体12の内部に水や泥等が侵入することが防止される。なお、この実施例では軸線Oと中心線Sとが直交しているが、例えば図2において軸線Oを紙面の表裏方向へ傾斜させるなど、直角方向から傾斜する姿勢で交差するように突き合わせて接合することもできる。軸線Oと中心線Sとが互いに交差しない捩れの位置関係で突き合わせて接合しても良い。
【0020】
図5および図6は、ブッシュ用外筒16をサスペンションアーム本体12に溶接する前の状態を示す図で、図5はサスペンションアーム本体12の端部14をブッシュ用外筒16に突き合わせた状態の正面図、図6はその突合せ部分の斜視図である。また、図7は、図5におけるサスペンションアーム本体12の端部14の先端20の上半分を拡大して示す図で、(a) は図5に対応する正面図、(b) は先端側から見た端面図である。これ等の図から明らかなように、端部14の先端20は、長円形状の開口21の内周縁部22が全周に亘ってブッシュ用外筒16の円筒外周面18に略接するように、その長円形状の開口21の長手方向の端部である外端部24を除いて前記円弧形状とされており、その外端部24を除いた先端20の端面は、内周縁部22から外周縁に至るまで円筒外周面18に略面接触させられる。
【0021】
外端部24の端面すなわち外端部端面26は、外端(図5における上下方向の外側の端縁)へ向かうに従って円筒外周面18から離間しており、その円筒外周面18との間にV字状の窪み28が形成されるようになっている。外端部端面26は、端部14の軸線Oに対して直角な平坦面で、その軸線Oに対して直角な方向において外端部24の外端から、その外端部24における肉厚t以下で且つ肉厚tの1/2以上の範囲内で、本実施例では肉厚tと同じか僅かに狭い範囲に設けられている。また、窪み28の開き角度θ、すなわち円筒外周面18の接線方向と外端部端面26との間の角度は、30°以上で、本実施例では約55°である。
【0022】
そして、上記図5図6のように、開口21の内周縁部22が全周に亘って円筒外周面18に接するように、端部14の円弧形状の先端20をブッシュ用外筒16の円筒外周面18に突き合わせた状態で、窪み28が形成される外端部24を含めて先端20の全周に溶接を施して円筒外周面18に一体的に接合する。その場合に、窪み28が形成される外端部24では、図8に示すように溶接トーチ30を窪み28の内側に向けて溶接を施し、窪み28の底部(V字の角部)を含んで入熱されるようにする。これにより、外端部24およびブッシュ用外筒16に対して窪み28からバランス良く入熱されるようになり、その外端部24においても図3に示すようにブッシュ用外筒16に対する溶融接合部Wの溶け込み深さdや脚長Lを十分に確保でき、所定の接合強度が安定して得られるようになる。溶接法としては、例えば消耗電極式アーク溶接が好適に用いられる。なお、溶け込み深さdは、ブッシュ用外筒16の溶接前の円筒外周面18を基準として、その円筒外周面18の法線方向における最大深さで、脚長Lは、円筒外周面18から法線方向の深さ0.1mmの仮想円(二点鎖線)と溶融接合部Wとの交点間の線分の長さである。
【0023】
このように、本実施例のサスペンションアーム10においては、筒状接合部として機能する端部14の先端20がブッシュ用外筒16の円筒外周面18に対応する円弧形状とされており、その先端20が全周に亘って円筒外周面18に略接する状態で、その先端20が全周に亘って円筒外周面18に溶接されているため、先端20の開口21がブッシュ用外筒16によって適切に閉塞され、サスペンションアーム本体12内への水や泥の侵入が適切に防止される。
【0024】
また、ブッシュ用外筒16として丸パイプをそのまま用いることができるとともに、端部14についても先端20を円弧形状とするだけで特別な寸法精度の管理が不要であり、溶接トーチ30による溶接もブッシュ用外筒16の円筒外周面18に沿って行えば良いため、特許文献1のようにブッシュ用外筒に突起部を設ける場合に比較して製造コストが低減される。
【0025】
また、端部14の先端20の外端部24では、開口21の内周縁部22が円筒外周面18に接触させられるとともに、外端部端面26とブッシュ用外筒16の円筒外周面18との間にV字状の窪み28が形成され、その窪み28の底部を含んで入熱されるように溶接が施される。このため、その窪み28から外端部24およびブッシュ用外筒16に対してバランス良く入熱されるようになり、端部14の先端20の開口21をブッシュ用外筒16により確実に閉塞しつつ、ブッシュ用外筒16に対する溶け込み深さdや脚長Lが拡大されて、その外端部24においても高い接合強度が得られる。
【0026】
特に、本実施例では窪み28の開き角度θが55°であるため、その窪み28から外端部24およびブッシュ用外筒16に対してバランス良く入熱されるように溶接を行うことが容易に可能である。また、窪み28を形成する外端部端面26が、端部14の軸線Oに対して略直角な方向において外端部24の外端から外端部24の肉厚tと略同じ範囲に設けられているため、先端20の開口21をブッシュ用外筒16によって確実に閉塞しつつ十分な大きさの窪み28を確保して接合強度を向上させることができる。すなわち、外端部端面26が肉厚tよりも大きくなると、先端20の開口21とブッシュ用外筒16の円筒外周面18との間に隙間が生じるため、溶接状態によっては水等が侵入する可能性がある一方、外端部端面26が肉厚tの1/2よりも小さくなると、窪み28が小さくなって入熱量のバランス向上による接合強度の向上効果が十分に得られなくなる。
【0027】
ここで、図12に示すように、端部14の先端20が長円形状の開口21の長手方向の全域、言い換えれば先端20の円弧形状の周方向の全域に亘って、ブッシュ用外筒16の円筒外周面18に面接触するように、外端部24を含む先端20の全域を円筒外周面18に対応する円弧形状とし、その先端20の全周を溶接トーチ30によって円筒外周面18に溶接することも可能である。しかし、この場合には、先端20の外端部24では、その肉厚tが徐々に薄くなって円筒外周面18上に延びており、その外端部24の外周面に向かって溶接を行う必要があるため、ブッシュ用外筒16まで入熱が届き難く、両部材に対する入熱量のバランスが悪くなる。このため、図12のXIII部の溶接後の断面を拡大して示す図13から明らかなように、溶融接合部Wのブッシュ用外筒16に対する溶け込み深さdおよび脚長Lが比較的小さく、その外端部24における接合強度が部分的に低くなる可能性がある。すなわち、図5図8に示すように外端部端面26と円筒外周面18との間にV字状の窪み28が形成されるようにすれば、その窪み28から外端部24およびブッシュ用外筒16に対してバランス良く入熱されるようになるため、溶融接合部Wの溶け込み深さdや脚長Lが大きくなって外端部24の接合強度を向上させることができるのである。上記図12は前記図5に対応する正面図で、図13は前記図3に対応する断面図である。なお、これ等の図12図13に示す態様も、第1発明、第2発明の実施例である。
【0028】
また、前記実施例では、筒状接合部として機能する端部14を含めてサスペンションアーム本体12の中空断面が長円形状を成していたが、図9に示すように、長手方向の端部にストレート部を有する長方形状の中空断面のサスペンションアーム本体40を用いることもできる。また、図10に示すように、半割体形状の一対の鋼板42、44を突き合わせて溶接等により一体的に接合することにより、前記実施例と同様の長円形状の中空断面としたサスペンションアーム本体46や、図11に示すように、半割体形状の一対の鋼板48、50を突き合わせて溶接等により一体的に接合することにより、図9と同様の長方形状の中空断面としたサスペンションアーム本体52を用いることもできる。
【0029】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
10:サスペンションアーム 12、40、46、52:サスペンションアーム本体 14:端部(筒状接合部) 16:ブッシュ用外筒 18:円筒外周面 20:先端 21:開口 22:内周縁部 24:外端部 26:外端部端面 28:窪み O:軸線 S:中心線 θ:開き角度 t:肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13