(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非対称主溝の前記第2溝壁面は、前記溝底側を構成する第2直線状部分と、踏面側を構成しかつ前記第2直線状部分よりも緩やかな傾斜でのびる第3直線状部分とを含んでいる請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2が示されている。本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されている。
図1のタイヤ1の左側が、車両装着時に車両外側に向く。
図1には、本実施形態のタイヤ1として、乗用車用のラジアルタイヤが示されている。
【0021】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝10が設けられている。本明細書において、「主溝」とは、タイヤ周方向に連続してのび、かつ、溝幅がトレッド接地幅TWの3%以上の溝を意味する。
【0022】
トレッド接地幅TWは、正規状態のタイヤ1のトレッド接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。正規状態とは、タイヤが正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。
【0023】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
前記「トレッド接地端Te」は、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0026】
前記「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0027】
主溝10は、例えば、直線状にのびている。本実施形態の主溝10の溝幅W1は、例えば、トレッド接地幅TWの4〜8%である。このような主溝10は、操縦安定性能を維持しつつ優れたウェット性能を発揮する。
【0028】
図2には、
図1のA−A断面図が示されている。
図2は、トレッド部2のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面を示している。
図2に示されるように、主溝10の溝深さd1は、例えば、5〜10mmである。
【0029】
本実施形態では、主溝10は、一対のショルダー主溝25、25と、一対のセンター主溝30、30とを含んでいる。ショルダー主溝25は、タイヤ赤道Cの両側かつ最もトレッド接地端Te側に設けられている。ショルダー主溝25は、車両装着時に車両外側に位置する外側ショルダー主溝26と、車両装着時に車両内側に位置する内側ショルダー主溝27とを含んでいる。
【0030】
センター主溝30は、外側ショルダー主溝26及び内側ショルダー主溝27のタイヤ軸方向内側、かつ、タイヤ赤道Cの両側に設けられている。センター主溝30は、車両装着時に車両外側に位置する外側センター主溝31と、車両装着時に車両内側に位置する内側センター主溝32とを含んでいる。
【0031】
トレッド部2には、各主溝10が設けられることにより、センター陸部35、外側ミドル陸部36、内側ミドル陸部37、外側ショルダー陸部38、及び、内側ショルダー陸部39が区分されている。
【0032】
図2に示されるように、主溝10の少なくとも1本は、非対称主溝12である。
【0033】
図3には、非対称主溝12の拡大断面図が示されている。
図3に示されるように、非対称主溝12は、溝底15と、第1溝壁面16と、第2溝壁面17とを具えている。第1溝壁面16は、溝底15の一方側に位置している。第2溝壁面17は、溝底15の他方側に位置している。第2溝壁面17は、溝深さ方向の基準線13に対して、第1溝壁面16とは非対称である。このような非対称主溝12は、非対称主溝12内を通過する空気の共鳴振動を抑制し、気柱共鳴音を効果的に抑制する。
【0034】
非対称主溝12の第1溝壁面16は、第1直線状部分18と、凹曲面部分19とを含んでいる。
【0035】
第1直線状部分18は、溝底15側で直線状にのびている。本実施形態の第1直線状部分18は、例えば、溝深さ方向の基準線13に対して10〜15°の角度θ1で傾斜している。第1直線状部分18と溝底15とのコーナ部22には、応力集中を防止するために、面取り状の円弧が設けられている。
【0036】
凹曲面部分19は、第1溝壁面16の踏面2s側を構成している。凹曲面部分19は、中心がタイヤ外方に位置する円弧に沿っている。このような凹曲面部分19を含む第1溝壁面16は、非対称主溝12の踏面2s付近の溝容積を大きくし、効果的にハイドロプレーニング現象を抑制する。しかも、このような第1溝壁面16は、非対称主溝12内を通過する空気の振動を多方向に散乱させる。このため、非対称主溝12内の空気の共鳴振動がさらに抑制され、気柱共鳴音が抑制される。
【0037】
凹曲面部分19の曲率半径r1は、好ましくは10mm以上、より好ましくは13mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは17mm以下である。このような凹曲面部分19は、ウェット性能とノイズ性能とをさらにバランス良く両立させる。
【0038】
溝底15から凹曲面部分19のタイヤ半径方向の内端19iまでのタイヤ半径方向の距離L1は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、より好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.5mm以下である。これにより、溝底15付近での気柱共鳴音が抑制され、優れたノイズ性能が発揮される。
【0039】
第1直線状部分18及び凹曲面部分19を含む第1溝壁面16は、タイヤ赤道側に設けられているのが望ましい。これにより、第1溝壁面16の端縁16eにより大きな接地圧が作用し、ウェット走行時、非対称主溝12の凹曲面部分19側に水が流入し易くなる。従って、ハイドロプレーニング現象が効果的に抑制される。
【0040】
第2溝壁面17は、例えば、第2直線状部分20と、第3直線状部分21とを含んでいる。
【0041】
第2直線状部分20は、第2溝壁面17の溝底15側で直線状にのびている。第2直線状部分20は、例えば、溝深さ方向の基準線13に対して傾斜している。第2直線状部分20の前記基準線13に対する角度θ2は、好ましくは10°以上、より好ましくは13°以上であり、好ましくは20°以下、より好ましくは17°以下である。前記角度θ2が10°より小さい場合、タイヤ生産時の加硫金型の離型性が低下するおそれがある。逆に、前記角度θ2が20°より大きい場合、溝の排水性能が低下し、ハイドロプレーニング現象が発生し易くなるおそれがある。
【0042】
第2直線状部分20と溝底15とのコーナ部23には、例えば、面取り状の円弧が設けられている。前記コーナ部23の曲率半径r2は、例えば、1.0〜2.0mmである。
【0043】
第3直線状部分21は、第2直線状部分20に連なり、第2溝壁面17の踏面2s側で直線状にのびている。第3直線状部分21は、第2直線状部分20よりも緩やかに傾斜している。このような第3直線状部分21は、第2溝壁面17の端縁17e付近の偏摩耗を抑制する。
【0044】
第3直線状部分21の前記基準線13に対する角度θ3は、好ましくは35°以上、より好ましくは40°以上であり、好ましくは55°以下、より好ましくは50°以下である。このような第3直線状部分21は、ウェット走行時、踏面2sが水膜に接したとき、効果的に水膜を溝内に導く。このため、ハイドロプレーニング現象がより一層抑制される。
【0045】
第3直線状部分21の溝深さ方向の長さL3は、例えば、第1直線状部分18の溝深さ方向の長さL2よりも小さいのが望ましい。第3直線状部分21の溝深さ方向の長さL3が第1直線状部分18の溝深さ方向の長さL2よりも大きい場合、第3直線状部分と凹曲面部分19との間で溝内の空気の共鳴振動が生じ易くなるおそれがある。
【0046】
図2に示されるように、本実施形態では、外側ショルダー主溝26が、非対称主溝12として形成されている。これにより、ウェット走行時、非対称主溝12内の水が効果的にタイヤ外方に排出される。残りの外側センター主溝31及び内側センター主溝32並びに内側ショルダー主溝27は、溝壁面14、14が互いに対称である対称主溝11である。これにより、トレッド部2の車両内側の剛性が大きくなり、優れた操縦安定性能が発揮される。
【0047】
非対称主溝12は、凹曲面部分19を具えているため、非対称主溝12付近の陸部は、剛性が低下し易い。このため、
図1に示されるように、非対称主溝12には、溝幅が2mm未満の横溝又はサイプのみが連通しているのが望ましい。これにより、非対称主溝12付近の陸部の剛性が維持され、優れた操縦安定性能が発揮される。本明細書において「サイプ」とは、例えば、幅が1mm以下程度の実質的に幅を有しない切り込みであり、排水用の溝とは区別される。
【0048】
図4には、外側ミドル陸部36の拡大図が示されている。
図4に示されるように、外側ミドル陸部36は、非対称主溝12である外側ショルダー主溝26と外側センター主溝31との間に設けられている。外側ミドル陸部36のタイヤ軸方向の幅W4は、例えば、トレッド接地幅TWの0.09〜0.13倍である。
【0049】
外側ミドル陸部36には、外側センター主溝31と外側ショルダー主溝26との間を連通する外側ミドルサイプ45が設けられている。外側ミドル陸部36は、サイプよりも幅が大きい横溝が設けられていないリブである。このような外側ミドル陸部36は、非対称主溝12による剛性低下を補い、優れた操縦安定性能を発揮する。
【0050】
外側ミドルサイプ45は、タイヤ軸方向に対して傾斜する第1傾斜部46と、第1傾斜部46と逆向きに傾斜する第2傾斜部47とを含んでいる。このような外側ミドルサイプ45は、外側ミドル陸部36のタイヤ軸方向の剛性を効果的に維持し、旋回時の操縦安定性能を向上させる。
【0051】
図5には、外側ショルダー陸部38の拡大図が示される。
図5に示されるように、外側ショルダー陸部38は、非対称主溝12である外側ショルダー主溝26のタイヤ軸方向外側に設けられている。外側ショルダー陸部38のタイヤ軸方向の幅W7は、例えば、トレッド接地幅TWの0.18〜0.24倍である。
【0052】
外側ショルダー陸部38には、外側ショルダー副溝55が設けられている。外側ショルダー副溝55は、例えば、タイヤ周方向に連続して直線状にのびている。外側ショルダー副溝55の溝幅W8は、例えば、1.0〜3.0mmである。外側ショルダー副溝55の溝深さd3(
図2に示す)は、例えば、0.5〜1.5mmである。
【0053】
外側ショルダー陸部38は、外側ショルダー副溝55により、第1外側ショルダー陸部56と第2外側ショルダー陸部57とに区分されている。第1外側ショルダー陸部56は、タイヤ軸方向内側に設けられている。第2外側ショルダー陸部57は、タイヤ軸方向外側に設けられている。
【0054】
第1外側ショルダー陸部56は、タイヤ周方向に連続してのびるリブである。第1外側ショルダー陸部56には、外側ショルダー主溝26に連通する横溝が設けられていない。このような第1外側ショルダー陸部56は、非対称主溝12による剛性低下を補い、優れた操縦安定性能を発揮する。
【0055】
第2外側ショルダー陸部57は、横溝で区分されたブロック列である。第2外側ショルダー陸部57は、第1外側ショルダー陸部56よりも大きい幅W10を有している。
【0056】
第1外側ショルダー陸部56のタイヤ軸方向の幅W9と第2外側ショルダー陸部57のタイヤ軸方向の幅W10との比W9/W10は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上であり、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下である。このような第1外側ショルダー陸部56及び第2外側ショルダー陸部57は、操縦安定性能を維持しつつ、すぐれたワンダリング性能を発揮する。
【0057】
第2外側ショルダー陸部57には、少なくともトレッド接地端Teからタイヤ軸方向内側にのびる外側ショルダー横溝58が設けられている。
【0058】
外側ショルダー横溝58は、第1外側ショルダー横溝59と第2外側ショルダー横溝60とを含んでいる。第1外側ショルダー横溝59は、外側ショルダー副溝55に連通して終端している。第2外側ショルダー横溝60は、外側ショルダー副溝55を越え、第1外側ショルダー陸部56内で終端している。第1外側ショルダー横溝59及び第2外側ショルダー横溝60は、タイヤ周方向に交互に設けられている。このような第1外側ショルダー横溝59及び第2外側ショルダー横溝60は、外側ショルダー陸部38の剛性分布を均一にし、優れた耐摩耗性能を発揮する。
【0059】
外側ショルダー横溝58は、タイヤ軸方向外側に向かって漸減する溝幅W11を有するのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部38のトレッド接地端Te側の側面で発生する風切り音が効果的に抑制される。このため、ウェット性能とノイズ性能とがバランス良く両立する。
【0060】
図6には、センター陸部35の拡大図が示されている。
図6に示されるように、センター陸部35は、外側センター主溝31と内側センター主溝32との間に設けられている。センター陸部35は、例えば、タイヤ周方向に連続するリブである。
【0061】
センター陸部35のタイヤ軸方向の幅W3は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示され、以下、同様である。)の0.08〜0.14倍である。本実施形態のセンター陸部35は、略一定の幅を有している。センター陸部35は、タイヤ赤道Cに対して左右非対称である。センター陸部35は、タイヤ赤道Cに対して、車両装着時に車両内側となる方向に偏って設けられている。
【0062】
センター陸部35には、外側センターラグ溝41と内側センターラグ溝42とがタイヤ周方向に交互に設けられている。外側センターラグ溝41は、一端41aが外側センター主溝31に連通し、他端41bがセンター陸部35内で終端している。内側センターラグ溝42は、一端42aが内側センター主溝32に連通し、他端42bがセンター陸部35内で終端している。このような外側センターラグ溝41及び内側センターラグ溝42は、センター陸部35の剛性を維持しつつ、優れたウェット性能を発揮する。
【0063】
外側センターラグ溝41のタイヤ軸方向の長さL4は、内側センターラグ溝42のタイヤ軸方向の長さL5よりも小さいのが望ましい。このような外側センターラグ溝41及び内側センターラグ溝42は、センター陸部35のタイヤ軸方向内側の剛性を維持し、優れた操縦安定性能が発揮される。
【0064】
外側センターラグ溝41及び内側センターラグ溝42は、それぞれ、タイヤ赤道Cに交差することなくセンター陸部35内で終端しているのが望ましい。このような外側センターラグ溝41及び内側センターラグ溝42は、センター陸部35の剛性をさらに維持する。
【0065】
図7には、内側ミドル陸部37の拡大図が示されている。
図7に示されるように、内側ミドル陸部37は、内側センター主溝32と内側ショルダー主溝27との間に設けられている。内側ミドル陸部37のタイヤ軸方向の幅W5は、例えば、トレッド接地幅TWの0.11〜0.17倍である。
【0066】
内側ミドル陸部37には、第1内側ミドルラグ溝50と第2内側ミドルラグ溝51とがタイヤ周方向に交互に設けられている。第1内側ミドルラグ溝50は、一端50aが内側ショルダー主溝27に連通し、他端50bが内側ミドル陸部37内で終端している。第2内側ミドルラグ溝51は、一端51aが内側センター主溝32に連通し、他端51bが内側ミドル陸部37内で終端している。このような第1内側ミドルラグ溝50及び第2内側ミドルラグ溝51は、ウェット性能と操縦安定性能とを両立させる。
【0067】
第1内側ミドルラグ溝50は、タイヤ軸方向外側に向かって漸増している溝幅W6を有するのが望ましい。本実施形態の第1内側ミドルラグ溝50の溝幅W6は、タイヤ軸方向外側に向かってステップ状に漸増している。このような第1内側ミドルラグ溝50は、ウェット性能をさらに向上させる。
【0068】
第2内側ミドルラグ溝51のタイヤ軸方向の長さL7は、第1内側ミドルラグ溝50のタイヤ軸方向の長さL6よりも小さい。このような第2内側ミドルラグ溝51は、内側ミドル陸部37の剛性を維持し、優れた操縦安定性能を発揮する。
【0069】
内側ミドル陸部37には、第2内側ミドルラグ溝51のタイヤ軸方向の外端51oと内側ショルダー主溝27との間を連通する内側ミドルサイプ52が設けられているのが望ましい。このような内側ミドルサイプ52は、内側ミドル陸部37の剛性を緩和し、内側ミドル陸部37と路面との接触音を抑制する。
【0070】
図8には、内側ショルダー陸部39の拡大図が示されている。
図8に示されるように、内側ショルダー陸部39は、内側ショルダー主溝27のタイヤ軸方向外側に設けられている。内側ショルダー陸部39のタイヤ軸方向の幅W12は、例えば、トレッド接地幅TWの0.16〜0.24倍である。
【0071】
内側ショルダー陸部39には、内側ショルダー副溝65が設けられている。内側ショルダー副溝65は、例えば、タイヤ周方向に連続して直線状にのびている。内側ショルダー副溝65の溝幅W13は、例えば、1.0〜3.0mmである。内側ショルダー副溝65の溝深さd4(
図2に示す)は、例えば、0.5〜1.5mmである。
【0072】
内側ショルダー陸部39は、内側ショルダー副溝65により、第1内側ショルダー陸部66と第2内側ショルダー陸部67とに区分されている。第1内側ショルダー陸部66は、タイヤ軸方向内側に設けられている。第2内側ショルダー陸部67は、タイヤ軸方向外側に設けられている。
【0073】
第1内側ショルダー陸部66は、サイプよりも幅が大きい横溝が設けられていないリブである。このような第1内側ショルダー陸部66は、優れた操縦安定性能を発揮する。
【0074】
第2内側ショルダー陸部67は、第1内側ショルダー陸部66よりも大きい幅W15を有している。第1内側ショルダー陸部66のタイヤ軸方向の幅W14と第2内側ショルダー陸部67のタイヤ軸方向の幅W15との比W14/W15は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上であり、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下である。このような第1内側ショルダー陸部66及び第2内側ショルダー陸部67は、ウェット性能と操縦安定性能とを両立させる。
【0075】
第2内側ショルダー陸部67には、少なくともトレッド接地端Teからタイヤ軸方向内側にのびる内側ショルダー横溝68がタイヤ周方向に隔設されている。内側ショルダー横溝68のタイヤ軸方向の内端68iは、第2内側ショルダー陸部67内で終端している。
【0076】
内側ショルダー横溝68のタイヤ軸方向内側には、内側ショルダーサイプ69が設けられているのが望ましい。このような内側ショルダーサイプ69は、内側ショルダー陸部39と路面との接触音を抑制し、ノイズ性能を向上させる。
【0077】
内側ショルダーサイプ69は、内側ショルダー横溝68のタイヤ軸方向の内端68iに連通し、少なくとも第1内側ショルダー陸部66までのびている。内側ショルダーサイプ69は、内側ショルダー横溝68よりもタイヤ軸方向に対して大きい角度θ4で傾斜している。
【0078】
内側ショルダーサイプ69は、第1内側ショルダーサイプ70と第2内側ショルダーサイプ71とを含んでいる。第1内側ショルダーサイプ70は、内側ショルダー主溝27と連通している。第2内側ショルダーサイプ71は、第1内側ショルダー陸部66内で終端している。第1内側ショルダーサイプ70と第2内側ショルダーサイプ71とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。このような第1内側ショルダーサイプ70と第2内側ショルダーサイプ71は、第1内側ショルダー陸部66及び第2内側ショルダー陸部67の剛性分布を均一にする。
【0079】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0080】
図1の基本パターンを有し、かつ、
図2に示された主溝の断面形状を有するサイズ215/60R17の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1及び2として、
図1の基本パターンを有し、かつ、全ての主溝が対称主溝であるタイヤが試作された。これらのタイヤが、下記テスト車両に装着され、ウェット性能及びノイズ性能がテストされた。各タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×7J
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:前輪駆動車、排気量2400cc
タイヤ装着位置:全輪
【0081】
<ウェット性能>
下記テストコースに速度を段階的に増加させながら上記テスト車両を進入させ、該テスト車両の前輪の横加速度(横G)が計測され、55〜80km/hの速度における前輪の平均横Gが算出された。結果は、実施例1を100とする指数で表示されている。数値が大きい程、ウェット性能に優れていることを示す。
テストコース:半径100mの周回コース
路面:アスファルト路面上に水深6mm、長さ6mの水溜まりを設置
【0082】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で乾燥したアスファルト路面を60km/hの速度で走行したときの車内騒音が測定された。車内騒音は、運転席の頭部に位置するマイクで計測された。評価は、騒音の大きさ(db)の逆数で行われ、実施例1を100とする指数で示されている。数値が大きい程、ノイズ性能に優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0083】
【表1】
【0084】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、ウェット性能とノイズ性能とが両立しているのが確認できた。