特許第5913322号(P5913322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913322表紙貼付機および該表紙貼付機を備えた製本装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913322
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】表紙貼付機および該表紙貼付機を備えた製本装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 11/04 20060101AFI20160414BHJP
   B42C 11/06 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B42C11/04
   B42C11/06
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-529816(P2013-529816)
(86)(22)【出願日】2011年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2011069062
(87)【国際公開番号】WO2013027279
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113403
【氏名又は名称】ホリゾン・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 洋人
(72)【発明者】
【氏名】大内山 耕
(72)【発明者】
【氏名】横木 健人
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 昭
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227439(JP,A)
【文献】 特開2011−31533(JP,A)
【文献】 特開2010−173070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42C 11/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、下端の待機位置および上端のプレス位置の間において往復上下運動可能なプレス板と、
前記フレームに取り付けられ、前記プレス板を昇降させるプレス板昇降手段と、
前記プレス板の上面に、互いに平行に、かつ互いに近接および離間する方向にスライド運動可能に配置された一対のニップ板と、
前記プレス板に取り付けられ、前記一対のニップ板をスライドさせるニップ板駆動手段と、
前記フレームに設けられ、本身を、予め糊の塗布された背面が下向きになるように両側から挟持し、前記背面が前記一対のニップ板間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置するクランプユニットと、を備え、
前記プレス板上には表紙が配置されて、前記一対のニップ板を覆いかつ前記一対のニップ板を横切る方向にのび、さらに、
前記プレス板昇降手段および前記ニップ板駆動手段を制御する制御部を備えた表紙貼付機において、
前記制御部は、
前記プレス板を前記一対のニップ板とともに前記待機位置から前記プレス位置に近傍する調整位置まで上昇して、前記調整位置で、前記本身の背面に予め塗布された前記糊と、前記プレス板上に配置された前記表紙とが接するようにし、
前記プレス板を前記調整位置で所定の調整待ち時間だけ停止して、
前記プレス板を前記一対のニップ板とともに前記調整位置から前記プレス位置まで上昇して、
その後、前記一対のニップ板を互いに接近して、前記表紙を前記本身に貼付けることを特徴とする表紙貼付機。
【請求項2】
前記制御部は、前記調整位置における前記調整待ち時間の値の入力を受けるためのタッチスクリーンを有し、前記タッチスクリーンから入力された前記調整待ち時間の値に基づいて、前記プレス板昇降手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の表紙貼付機。
【請求項3】
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、下端の待機位置および上端のプレス位置の間において往復上下運動可能なプレス板と、
前記フレームに取り付けられ、前記プレス板を昇降させるプレス板昇降手段と、
前記プレス板の上面に、互いに平行に、かつ互いに近接および離間する方向にスライド運動可能に配置された一対のニップ板と、
前記プレス板に取り付けられ、前記一対のニップ板をスライドさせるニップ板駆動手段と、
前記フレームに設けられ、本身を、予め糊の塗布された背面が下向きになるように両側から挟持し、前記背面が前記一対のニップ板間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置するクランプユニットと、を備え、
前記プレス板上には表紙が配置されて、前記一対のニップ板を覆いかつ前記一対のニップ板を横切る方向にのび、さらに、
前記プレス板昇降手段および前記ニップ板駆動手段を制御する制御部を備えた表紙貼付機において、
前記制御部は、
所定の上昇速度で、前記プレス板を前記一対のニップ板とともに前記待機位置から前記プレス位置に近傍する調整位置まで上昇して、前記調整位置で、前記本身の背面に予め塗布された前記糊と、前記プレス板上に配置された前記表紙とが接するようにし、
前記上昇速度より遅い所定の調整速度で、前記プレス板を前記一対のニップ板とともに前記調整位置から前記プレス位置まで上昇して、
その後、前記一対のニップ板を互いに接近して、前記表紙を前記本身に貼付けることを特徴とする表紙貼付機。
【請求項4】
前記制御部は、前記調整位置における前記調整速度の値の入力を受けるためのタッチスクリーンを有し、前記タッチスクリーンから入力された前記調整速度の値に基づいて、前記プレス板昇降手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の表紙貼付機。
【請求項5】
前記本身の背面を切削するミーリング部と、前記ミーリング部によって切削された前記本身の背面に糊を塗布する糊付け部と、前記糊付け部によって糊が塗布された前記本身の背面に表紙を貼付ける、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の前記表紙貼付機からなる表紙貼付部と、が順次一列に配置され、
前記表紙貼付部は、前記クランプユニットに前記本身をセットするための本身挿入部を兼ね、
前記クランプユニットは、前記ミーリング部、前記糊付け部、および前記本身挿入部を兼ねる前記表紙貼付部の列に平行に配置されたスライドガイドによって案内されて、前記本身挿入部を兼ねる前記表紙貼付部と前記ミーリング部との間において往復運動し、
前記クランプユニットが前記本身挿入部に位置するとき、前記本身が前記クランプユニットに挿入されて、前記本身の背面が前記プレス板に当接することで位置決めされた後、前記クランプユニットに挟持され、さらに、前記クランプユニットに挟持された前記本身は、前記本身挿入部から前記糊付け部を通り越して前記ミーリング部まで移動した後、前記ミーリング部から前記糊付け部を経て前記表紙貼付部まで移動し、当該移動の間に、前記本身の背面に切削処理がなされ、糊が塗布され、表紙が貼付けられることを特徴とする製本装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表紙貼付機および該表紙貼付機を備えた製本装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製本工程の1つとして、本身に表紙を貼付ける表紙貼付け工程があり、この工程においては、表紙貼付機が用いられる(例えば特許文献1参照)。表紙貼付機は、昇降するプレス板と、プレス板の上面に配置された一対のニップ板を備えている。
【0003】
表紙貼付け工程において、プレス板の上方における一対のニップ板の間隙に対向する所定位置に、本身の下端面(背面)が下方に向けて保持される。プレス板は下端の待機位置に配置され、本身の下端面に糊が塗布される。その後、プレス板が、下端の待機位置から上端のプレス位置に上昇することによって、本身の下端面に表紙が押しつけられる。プレス板が表紙を本身の下端面に押しつけた状態で、一対のニップ板が本身および表紙を挟み、表紙が本身の下端部の両側に押しつけられることによって、本身に表紙が貼り付けられる。
【0004】
従来の表紙貼付機は、本身の下端面に塗布された糊を所定の硬化度になるまで乾くように、プレス板が待機位置で停止する時間(ニッピング待ち時間)と、一対のニップ板が本身および表紙を挟む時間(ニッピング時間)と、を設定できる。糊が塗布された本身の下端面は保持され、ニッピング待ち時間経過後に、プレス板が下端の待機位置から上端のプレス位置に上昇して、表紙が本身の下端面に押しつけけられる。その後、一対のニップ板が本身および表紙を挟み、ニッピング時間経過後に、一対のニップ位置が互いに離れて、本身に表紙が貼り付けられる。
なお、従来の表紙貼付機は、表紙を貼り付けない場合に糊を乾かすための時間(天のり製本の待ち時間)も設定できる。そして、表紙貼付機は、天のり製本の待ち時間が経過したことをオペレータに知らせるために、音や光などの報知信号を発する。
【0005】
プレス板によって表紙が本身の下端面に押しつけられて、表紙が、本身の下端面の糊に貼り付けられ、さらに、本身の下端面に塗布された糊が本身の下端部の両側に流れる。そして、表紙が、一対のニップ板によって、本身の下端部の両側に流れた横糊に貼り付けられる。図11(A)の通り、本身4の下端面および下端部の両側に表紙12が貼り付けられることによって、外観が綺麗で、良好な仕上がり品が得られる。
【0006】
ところが、糊の粘度が高い場合や周囲温度の条件などによって、従来の表紙貼付機では、良好な仕上がり品を製造できないことがある。図11(B)の通り、本身4の下端部の両側に流れる横糊40が不足して、本身4の下端部の両側に表紙12が貼り付けられず、本身4の下端面にのみ表紙が貼り付けられたり、図11(C)の通り、本身4の紙の間に糊40が侵入して、表紙12を付けた仕上がり品を綺麗にできない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−173070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、糊の粘度が高い場合などであっても、本身に対して表紙を綺麗に貼り付けることができる表紙貼付機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の表紙貼付機は、
フレームと、
フレームに取り付けられ、下端の待機位置および上端のプレス位置の間において往復上下運動可能なプレス板と、
フレームに取り付けられ、プレス板を昇降させるプレス板昇降手段と、
プレス板の上面に、互いに平行に、かつ互いに近接および離間する方向にスライド運動可能に配置された一対のニップ板と、
プレス板に取り付けられ、一対のニップ板をスライドさせるニップ板駆動手段と、
フレームに設けられ、本身を、予め糊の塗布された背面が下向きになるように両側から挟持し、背面が一対のニップ板間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置するクランプユニットと、を備え、
プレス板上には表紙が配置されて、一対のニップ板を覆いかつ一対のニップ板を横切る方向にのび、さらに、
プレス板昇降手段およびニップ板駆動手段を制御する制御部を備えた表紙貼付機において、
制御部は、
プレス板を一対のニップ板とともに待機位置からプレス位置に近傍する調整位置まで上昇して、調整位置で、本身の背面に予め塗布された糊と、プレス板上に配置された表紙とが接するようにし、
プレス板を調整位置で所定の調整待ち時間だけ停止して、
プレス板を一対のニップ板とともに調整位置からプレス位置まで上昇して、
その後、一対のニップ板を互いに接近して、表紙を本身に貼付ける。
【0010】
好ましくは、
制御部は、調整位置における調整待ち時間の値の入力を受けるためのタッチスクリーンを有し、タッチスクリーンから入力された調整待ち時間の値に基づいて、プレス板昇降手段を制御する。
【0011】
さらに、本発明に係る第2の表紙貼付機は、
フレームと、
フレームに取り付けられ、下端の待機位置および上端のプレス位置の間において往復上下運動可能なプレス板と、
フレームに取り付けられ、プレス板を昇降させるプレス板昇降手段と、
プレス板の上面に、互いに平行に、かつ互いに近接および離間する方向にスライド運動可能に配置された一対のニップ板と、
プレス板に取り付けられ、一対のニップ板をスライドさせるニップ板駆動手段と、
フレームに設けられ、本身を、予め糊の塗布された背面が下向きになるように両側から挟持し、背面が一対のニップ板間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置するクランプユニットと、を備え、
プレス板上には表紙が配置されて、一対のニップ板を覆いかつ一対のニップ板を横切る方向にのび、さらに、
プレス板昇降手段およびニップ板駆動手段を制御する制御部を備えた表紙貼付機において、
制御部は、
所定の上昇速度で、プレス板を一対のニップ板とともに待機位置からプレス位置に近傍する調整位置まで上昇して、調整位置で、本身の背面に予め塗布された糊と、プレス板上に配置された表紙とが接するようにし、
上昇速度より遅い所定の調整速度で、プレス板を一対のニップ板とともに調整位置からプレス位置まで上昇して、
その後、一対のニップ板を互いに接近して、表紙を本身に貼付ける。
【0012】
好ましくは、
制御部は、調整位置における調整速度の値の入力を受けるためのタッチスクリーンを有し、タッチスクリーンから入力された調整速度の値に基づいて、プレス板昇降手段を制御する。
【0013】
さらに、本発明に係る製本装置は、
本身の背面を切削するミーリング部と、ミーリング部によって切削された本身の背面に糊を塗布する糊付け部と、糊付け部によって糊が塗布された本身の背面に表紙を貼付ける、上記の表紙貼付機からなる表紙貼付部と、が順次一列に配置され、
表紙貼付部は、クランプユニットに本身をセットするための本身挿入部を兼ね、
クランプユニットは、ミーリング部、糊付け部、および本身挿入部を兼ねる表紙貼付部の列に平行に配置されたスライドガイドによって案内されて、本身挿入部を兼ねる表紙貼付部とミーリング部との間において往復運動し、
クランプユニットが本身挿入部に位置するとき、本身がクランプユニットに挿入されて、本身の背面がプレス板に当接することで位置決めされた後、クランプユニットに挟持され、さらに、クランプユニットに挟持された本身は、本身挿入部から糊付け部を通り越してミーリング部まで移動した後、ミーリング部から糊付け部を経て表紙貼付部まで移動し、当該移動の間に、本身の背面に切削処理がなされ、糊が塗布され、表紙が貼付けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表紙貼付機は、待機位置とプレス位置との間でプレス位置に近傍する調整位置を設定する。そして、第1の発明における表紙貼付機は、プレス板を待機位置から調整位置まで上昇させて、調整位置でプレス板を所定の調整待ち時間だけ停止した後、プレス板を調整位置からプレス位置まで上昇する。また、第2に発明における表紙貼付機は、所定の上昇速度でプレス板を待機位置から調整位置まで上昇させて、上昇速度よりも遅い所定の調整速度でプレス板を調整位置からプレス位置まで上昇する。
【0015】
その結果、糊の粘度が高い場合などであっても、本身の下端面に塗布された糊が、本身の下端部の両側に適度に流れ、その後で、一対のニップ板が表紙を挟むので、本身の下端面および本身の下端部の両側に表紙を貼り付けることができる。さらに、糊が本身の下端部の両側に流れた後で、プレス板がプレス位置まで上昇するので、本身の下端面に多くの糊が塗布された状態でプレス板を上昇することがなく、また、本身の下端面に塗布された糊に対して急激な圧力および余分な圧力を加えることがなく、本身の紙の間に糊が侵入することを防止できる。このように、本発明の表紙貼付機は、本身の下端部の両側に適度に糊を流すことができ、さらに、本身の紙の間に糊が侵入することを防止できるので、本身に対して表紙を綺麗に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】表紙貼付機が備えられた無線綴じ製本装置の斜視図であり、クランプユニットは運動経路の一方の端に位置している。
図2】無線綴じ製本装置の斜視図であり、クランプユニットは運動経路の他方の端に位置している。
図3】表紙貼付機の構成を示す正面図。
図4A】プレス板が待機位置にあるときの、表紙貼付機を示す斜視図。
図4B】プレス板がプレス位置にあるときの、表紙貼付機を示す斜視図。
図5】無線綴じ製本装置の制御系を示すブロック図。
図6】表紙貼付機の制御部に備えられたタッチスクリーンの表示画面を示す平面図。
図7A】プレス板が待機位置にあるときの、表紙貼付機を示す側面図。
図7B】プレス板が調整位置にあるときの、表紙貼付機を示す側面図。
図8A】プレス板がプレス位置にあるときの、表紙貼付機を示す側面図。
図8B】ニップ板が本身および表紙を挟んだときの、表紙貼付機を示す側面図。
図9】第1実施形態の表紙貼付け工程において、プレス板およびニップ板の動作を示すタイムチャート図。
図10】第2実施形態の表紙貼付け工程において、プレス板およびニップ板の動作を示すタイムチャート図。
図11A】良好な仕上がり品を示す説明図。
図11B】表紙が本身の下端面にのみ貼り付けられた仕上がり品を示す説明図。
図11C】本身の紙の間に糊が侵入した仕上がり品を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明に係る表紙貼付機およびこの表紙貼付機を備えた製本装置について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
先ず、本発明に係る表紙貼付機の第1実施形態について説明する。
【0019】
[構成]
図1および図2の通り、無線綴じ製本装置は、フレーム7に順次一列に配置された、ミーリング部1、糊付け部2、および、本発明による表紙貼付機からなる表紙貼付部3と、この列の上方において、本身4をその背面が下向きになるように両側から挟持し、この列に沿って移動するクランプユニット5を備えている。この無線綴じ製本装置においては、表紙貼付部3は、クランプユニット5に本身4をセットするための本身挿入部を兼ねている。
【0020】
図示されないが、クランプユニット5は、一対の可動クランプ板と、一対の可動クランプ板を近接および離間する方向に動かす間隔調節機構を有している。
【0021】
ミーリング部1は、フライス盤1aと、フライス盤1a上に設けられた切削刃1bとを備えている。そして、本身4がミーリング部1を通過する間に、本身4の背面がフライス盤1aによって均一に切削されるとともに、切削刃1bによって、切削された本身4の背面に、粗いピッチの傾斜した溝が形成される。
【0022】
糊付け部2は、糊(例えば溶融したホットメルト接着剤)を収容する糊タンク2aと、糊付けタンク2aに設けられた糊付けドラム2bとを備え、ミーリング部1による処理を経た本身4の背面に糊を塗布する。
【0023】
図示されないが、糊付け部2の糊タンク2aおよび糊付けドラム2bは、クランプユニット5によって移動される本身4に係合する位置と、当該本身4から退避する位置との間で昇降する。
【0024】
フレーム7には、一対のスライドガイド6が取り付けられる。一対のスライドガイド6は、ミーリング部1、糊付け部2、および本身挿入部を兼ねる表紙貼付部3の列の両側に平行に配置される。クランプユニット5は、一対のスライドガイド6によって案内され、ミーリング部1、糊付け部2、および本身挿入部を兼ねる表紙貼付部3の列の上方において、ミーリング部1および本身挿入部を兼ねる表紙貼付部3の間において往復直線運動する。無線綴じ製本装置は、また、ミーリング部1、糊付け部2、本身挿入部を兼ねる表紙貼付部3、およびクランプユニット5のそれぞれの動作を制御する制御部30を備えている(図5参照)。
【0025】
図3および図4の通り、本発明の表紙貼付機は、フレーム7に取り付けられ、下端の待機位置および上端のプレス位置の間において往復上下運動可能なプレス板8と、フレーム7に取り付けられ、プレス板8を昇降させるプレス板昇降手段と、プレス板8の上面に、互いに平行に、かつ互いに近接および離間する方向にスライド運動可能に配置された一対のニップ板9、10と、プレス板8に取り付けられ、一対のニップ板9、10をスライドさせるニップ板駆動手段とを備えている。そして、プレス板8の所定位置には、表紙12が、一対のニップ板9、10を覆いかつそれらを横切る方向にのびるように配置される。
【0026】
この実施例では、プレス板8は四角形状を有し、一対のニップ板9、10は、プレス板8の一対の対向する側縁に平行に配置される。そして、プレス板8は、当該対向する側縁の一方側をシャフト11によってフレーム7に取り付けられ、シャフト11の軸のまわりに揺動し、往復上下運動するようになっている。
【0027】
プレス板8には、ニップ板9、10の中央を直角に横切る方向にスリット(図示されない)が形成される。そして、プレス板8の下面には、スリットに平行にのびる送りネジ17が、一対の支持部材16a、16bを介して取り付けられる。各支持部材16a、16bには軸受が備えられ、送りネジ17は、これらの軸受によって、軸まわりに回転可能に支持される。また、ニップ板9、10は、それぞれ、下面に拡張部9a、10aを備えている。各拡張部9a、10aは、ネジ溝を有する貫通孔を備えており、スリットを貫通して下方に突出し、さらに貫通孔を通じて送りネジ17に螺合している。送りネジ17は、スリットに対応する位置の両側において、ネジの向きが異なっており、よって、送りネジ17の回転に伴って、一対のニップ板9、10は、スリットに沿って互いに近接および離間する方向にスライド運動する。
【0028】
プレス板8の下面には、支持部材16bから突出する送りネジ17の端に対向する垂直な固定板14が取り付けられ、固定板14には、ニップ板駆動モータ13が固定される。ニップ板駆動モータ13の駆動軸13aは、送りネジ17の下側にこれに平行に配置される。そして、ニップ板駆動モータ13の駆動軸13aにはプーリー15が取り付けられる一方、それに対向する送りネジ17の端には、プーリー18が取り付けられる。さらに、プーリー15およびプーリー18の間には、エンドレスベルト19が張られる。こうして、ニップ板駆動モータ13の駆動によって、送りネジ17が回転し、一対のニップ板9、10がスリットに沿ってスライド運動する。ニップ板駆動モータ13は、制御部30によって制御される(図5参照)。
【0029】
この実施例では、ニップ板駆動手段は、スリット、送りネジ17、プーリー15、プーリー18、エンドレスベルト19およびニップ板駆動モータ13から構成される。
【0030】
なお、ニップ板駆動手段は、上記の構成に限らず、油圧ピストンや電動ピストンなどを用いた様々な構成を適用できる。
【0031】
プレス板昇降手段は、本身4の天側に位置するプレス板8の第1の端部Xを昇降させる第1の昇降部と、本身4の地側に位置するプレス板8の第2の端部Yを昇降させる第2の昇降部とから構成される。
【0032】
この実施例では、プレス板昇降手段の第1の昇降部は、フレーム7に取り付けられ、プレス板8の第1の端部Xの下側に配置された第1のステッピングモータ20と、第1のステッピングモータ20の駆動軸20aに固定された第1の板カム21と、プレス板8の第1の端部Xの下面に突設された第1のロッド28と、第1のロッド28の先端部にピン23によって取り付けられ、第1の板カム21の縁に上側から当接する第1のローラ22とを備えている。そして、第1のステッピングモータ20の駆動によって第1の板カム21が回転し、それに伴って第1のロッド28が昇降し、プレス板8の第1の端部Xが昇降する。
【0033】
また、プレス板昇降手段の第2の昇降部は、フレーム7に取り付けられ、プレス板8の第2の端部Yの下側に配置された第2のステッピングモータ24と、第2のステッピングモータ24の駆動軸24aに固定された第2の板カム25と、プレス板8の第2の端部Yの下面に突設された第2のロッド29と、第2のロッド29の先端部にピン27によって取り付けられ、第2の板カム25の縁に上側から当接する第2のローラ26とを備えている。そして、第2のステッピングモータ24の駆動によって第2の板カム25が回転し、それに伴って第2のロッド29が昇降し、プレス板8の第2の端部Yが昇降する。
【0034】
第1および第2のステッピングモータ20、24は、制御部30によってそれぞれに独立に制御できる(図5参照)。そして、第1および第2のステッピングモータ20、24の回転量、よって、第1および第2の板カム21、25の回転角度が互いに異なる値に設定されることにより、プレス板8のプレス位置が、第1および第2の端部X、Yで異なる高さレベルに設定できる。
【0035】
なお、第1および第2の端部X,Yで異なる高さレベルに設定しない場合、プレス板昇降手段は、1つのステッピングモータ、1つの板カムなどを用いた構成でもよい。また、プレス板昇降手段は、上記の構成に限らず、油圧ピストンや電動ピストンなどを用いた様々な構成を適用できる。
【0036】
[動作]
こうして、図1に示されるように、クランプユニット5が本身挿入部3(ガイドレール6の一方の端)に位置するとき、第1および第2のステッピングモータ20、24が制御部30から制御信号を受けて駆動し、プレス板8が待機位置とプレス位置の間の基準位置まで移動する。そして、本身4が背面を下向きにしてクランプユニット5に挿入され、本身4の下端面(背面)が基準位置にあるプレス板8に当接することで位置決めされた後、クランプユニット5に挟持される。この場合、第1および第2のステッピングモータ20、24の駆動軸の回転量を調節することにより、プレス板8の基準位置の高さレベルが容易に調節できる。それによって、ミーリング部1のフライス盤1aおよび切削刃1bの高さレベルや、糊付け部2の糊タンク2aおよび糊付けドラム2bの高さレベルを調節する機構を備えなくても、本身4をクランプユニット5に挟持する時点で、本身4の背面に対するそれらの高さレベルを調節し、本身4の切削量や本身4に塗布される糊の量を容易に調節することができる。
【0037】
その後、プレス板8が基準位置から待機位置まで下降し、クランプユニット5に挟持された本身4は、図2に示されるように、本身挿入部3から糊付け部2を通り越してガイドレール6の他方の端まで移動する。この移動の間に、本身4の背面が均一に切削されるとともに、切削された面に一定ピッチの傾斜した溝が付けられる。一方、糊付け部2の糊タンク2aおよび糊付けドラム2bは本身4から退避した位置に下降している。
【0038】
クランプユニット5がガイドレール6の他方の端に達すると、表紙貼付部3のプレス板8上の所定位置に表紙12が配置され、さらに、糊付け部2の糊タンク2aおよび糊付けドラム2bが本身4と係合する位置まで上昇する。そして、クランプユニット5に挟持された本身4は、ミーリング部1から糊付け部2を経て表紙貼付部3まで移動し、移動の間に、ミーリング部1において本身4の背面に一定ピッチの前と逆向きに傾斜した溝が付けられ、糊付け部2において本身4の背面に糊が塗布される。
【0039】
次に、図7図9に基づいて、本身に表紙を貼付ける表紙貼付け工程について説明する。
【0040】
図7(A)の通り、表紙貼付部3において、クランプユニット5によって挟持された本身4は、糊の塗布された背面が一対のニップ板9、10間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置される。このとき、プレス板8は下端の待機位置に配置されている。本身4の下端面に塗布された糊が所定の硬化度になるまで乾くように、本身4が一対のニップ板8,10間の上方に配置された時から所定の時間(ニッピング待ち時間)が経過するまで、プレス板8は下端の待機位置で停止する。
【0041】
その後、図7(B)の通り、制御部30から第1および第2のステッピングモータ20、24に対して制御信号が送信され、待機位置にあるプレス板8が一対のニップ板9、10とともに調整位置まで上昇する。そして、プレス板8は、調整位置で所定の調整待ち時間だけ停止する。
プレス板8が調整位置で所定の調整待ち時間だけ停止することによって、表紙12が本身4の背面に押しつけられ、本身4の下端面に塗布された糊40が、本身4の下端部の両側に適度に流れる。
【0042】
調整位置は、下端の待機位置と上端のプレス位置との間であって、プレス位置に非常に近傍して配置される。調整位置は、プレス位置から例えば0.1〜0.8mmだけ離れて、プレス位置の下方に配置される。また、調整待ち時間は、例えば2〜6秒である。調整位置および調整待ち時間は、糊の塗布量や粘度、周囲温度の条件などに応じて設定される。
【0043】
その後、図8(A)の通り、制御部30から第1および第2のステッピングモータ20、24に対して制御信号が送信され、調整位置にあるプレス板8が一対のニップ板9、10とともに上端のプレス位置まで上昇して停止する。これにより、プレス板8によって表紙12が本身4の下端面に押しつけられ、本身4の下端面の糊40に表紙12が貼り付けられる。
【0044】
その後、図8(B)の通り、制御部30からニップ板駆動モータ13に対して制御信号が送信され、プレス位置において、一対のニップ板9、10が互いに接近して本身4の下端部を表紙12とともに両側から締付ける。これにより、本身4の下端部の両側の横糊40に表紙12が貼り付けられる。従って、一対のニップ板9,10が本身4および表紙12を締め付ける所定の時間(ニッピング時間)が経過するまで、プレス板8はプレス位置で停止する。
【0045】
その後、一対のニップ板9,10が互いに離れて、プレス位置にあるプレス板8が待機位置に下降して、表紙貼付け工程が終了する。
【0046】
上記の通り、プレス板8がプレス位置に近傍する調整位置で調整待ち時間だけ一時停止することによって、本身4の下端面に塗布された糊40が、本身4の下端部の両側に適度に流れる。さらに、糊40が本身4の下端部の両側に流れた後で、プレス板8がプレス位置まで上昇するので、本身4の下端面に多くの糊40が塗布された状態でプレス板8を上昇することがなく、また、本身4の下端面に塗布された糊40に対して急激な圧力および余分な圧力を加えることがなく、本身4の紙の間に糊40が侵入することを防止できる。
【0047】
図5に示されるように、この実施例では、制御部30は、タッチスクリーン31を有している。タッチスクリーン31は、無線綴じ製本装置の操作に必要な種々の設定を行うための設定画面を表示する。図6には、タッチスクリーン31に表示される設定画面の1例が示されている。図6の設定画面では、「ミーリング」、「クランパ」および「ニッピング」のタグを切り替えることで、ミーリング動作時、クランプ動作時およびニッピング動作時の設定を行うことができる。
【0048】
図6に示されるように、ニッピング設定画面では、一対のニップ板9、10による本身4の締付けの強さを設定する画面領域31aと、プレス板8の基準位置の高さレベルを設定する画面エリア31cと、本身4の背側と地側で厚みが異なる場合に、プレス板8のプレス位置での傾き(背側の端部と地側の端部のそれぞれの高さレベル)を設定する画面エリア31eと、が設けられる。
【0049】
さらに、ニッピング設定画面では、ニッピング時間を設定する画面エリア31bと、ニッピング待ち時間を設定する画面エリア31dと、調整待ち時間を設定する画面エリア31fと、が設けられる。
【0050】
そして、画面領域31a〜31fには、それぞれ、設定値を増加させるための「+」ボタンと、設定値を減少させるための「−」ボタンが設けられ、これらのボタンを押すことによって各設定値を簡単に入力することができる。例えば、画面エリア31fでは、「+」ボタンを押すことによって、調整待ち時間を増大でき(例えば6秒)、「−」ボタンを押すことによって、調整待ち時間を減少できる(例えば2秒)。
【0051】
また、図示はされないが、ミーリング設定画面では、例えば、本身挿入位置3におけるプレス板8の基準位置の高さレベルを設定することができ、クランパ設定画面では、例えば、クランプユニット5の本身4を挟持する強さや、クランプユニット5の移動速度を設定することができる。
【0052】
タッチスクリーン31から入力された設定値は、制御部30の(図示されない)メモリに格納される。そして、制御部30は、メモリに格納された設定値に基づき、ミーリング部1、糊付け部2およびクランプユニット5を制御するとともに、第1および第2のステッピングモータ20、24、およびニップ板駆動モータ13を制御する。
【0053】
本実施形態では、調整位置の高さレベルは、制御部30のメモリに予め設定されている(例えばプレス位置から下方に0.2mm離れた高さレベル)。なお、ニッピング設定画面に、プレス板8の調整位置の高さレベルを設定する画面エリアが設けて、調整位置の高さレベルを設定してもよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る表紙貼付機の第2実施形態について説明する。なお、重複説明を避けるため、上記の第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0055】
図7図8および図10に基づいて、本身に表紙を貼付ける表紙貼付け工程について説明する。
【0056】
図7(A)の通り、表紙貼付部3において、クランプユニット5によって挟持された本身4は、糊の塗布された背面が一対のニップ板9、10間の間隙の上方において当該間隙に対向するように配置される。このとき、プレス板8は下端の待機位置に配置されている。本身4の下端面に塗布された糊が所定の硬化度になるまで乾かすために、本身4が一対のニップ板8,10間の上方に配置された時から所定の時間(ニッピング待ち時間)が経過するまで、プレス板8は下端の待機位置で停止する。
【0057】
その後、図7(B)の通り、制御部30から第1および第2のステッピングモータ20、24に対して制御信号が送信され、待機位置にあるプレス板8が一対のニップ板9、10とともに調整位置まで所定の上昇速度で上昇する。
プレス板8が調整位置まで上昇することによって、表紙12が本身4の背面に押しつけられ、本身4の下端面に塗布された糊40が、本身4の下端部の両側に適度に流れる。
【0058】
調整位置は、下端の待機位置と上端のプレス位置との間であって、プレス位置の近傍に配置される。調整位置は、プレス位置から例えば0.1〜0.8mmだけ離れて、プレス位置の下方に配置される。
【0059】
その後、図8(A)の通り、制御部30から第1および第2のステッピングモータ20、24に対して制御信号が送信され、調整位置にあるプレス板8が一対のニップ板9、10とともに上端のプレス位置まで上昇して停止する。これにより、プレス板8によって表紙12が本身4の下端面に押しつけられ、本身4の下端面の糊40に表紙12が貼り付けられる。
【0060】
プレス板8は、所定の調整速度で調整位置からプレス位置まで上昇する。調整速度は、上昇速度に比べて非常に遅く設定され、例えば上昇速度に対して5〜20%である。
【0061】
その後、図8(B)の通り、制御部30からニップ板駆動モータ13に対して制御信号が送信され、プレス位置において、一対のニップ板9、10が互いに接近して本身4の下端部を表紙12とともに両側から締付ける。これにより、本身4の下端部の両側の横糊40に表紙12が貼り付けられる。従って、一対のニップ板9,10が本身4および表紙12を締め付ける所定の時間(ニッピング時間)が経過するまで、プレス板8はプレス位置で停止する。
【0062】
その後、一対のニップ板9,10が互いに離れて、プレス位置にあるプレス板8が待機位置に下降して、表紙貼付け工程が終了する。
【0063】
上記の通り、プレス板8がプレス位置に近傍する調整位置から、非常に遅い調整速度で上昇することによって、本身4の下端面に塗布された糊40が、本身4の下端部の両側に適度に流れる。さらに、糊40が本身4の下端部の両側に流れた後で、プレス板8がプレス位置まで上昇するので、本身4の下端面に多くの糊40が塗布された状態でプレス板8を上昇することがなく、また、本身4の下端面に塗布された糊40に対して急激な圧力および余分な圧力を加えることがなく、本身4の紙の間に糊40が侵入することを防止できる。
【0064】
図示しないが、ニッピング設定画面では、調整速度を設定する画面エリアが設けられる。そして、「+」ボタンを押すことによって、調整速度を増大でき(例えば上昇速度に対して20%)、「−」ボタンを押すことによって、調整速度を減少できる(例えば上昇速度に対して5%)。
【0065】
また、上記実施例では、本発明による表紙貼付機を無線綴じ製本装置の表紙貼付部に適用したが、本発明による表紙貼付機を、本身に表紙を貼付けるための単独の装置として使用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 ミーリング部
2 糊付け部
3 表紙貼付部
4 本身
5 クランプユニット
6 スライドガイド
7 フレーム
8 プレス板
9,10 一対のニップ板
12 表紙
30 制御部
31 タッチスクリーン
40 糊
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C