【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための装置であって、
固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解する機能を有する熱分解手段を有し、固形燃料を熱分解するための熱分解ゾーンと、
燃焼手段を有し、熱分解ガスを燃焼するための、熱分解ゾーンとは別個の燃焼ゾーンと、
熱分解ガスを熱分解ゾーンから燃焼ゾーンへ循環させるためのガス循環手段と、を含み、
燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンによって囲まれていることを特徴とする装置を提供するものである。
【0017】
本発明に係る装置の構成では、熱分解ゾーンが燃焼ゾーンを囲んでいるため、燃焼ゾーンから装置の外部への熱損失が低減される。一方、燃焼ゾーンから、それを囲む熱分解ゾーンへと熱が伝達されることにより、熱分解ゾーンによる熱回生は改善される。
【0018】
燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンとは別個のものであるため、固形燃料が、燃焼ゾーンに注入される空気のような酸化剤と接触することはない。これによって、汚染物質の排出を抑制することができる。
【0019】
木材の熱分解を、好ましくは約500℃の温度で実行することにより、金属及び塩素は木材の熱分解から得られるコークス中に残存し、熱分解ガスに汚染要素は含まれない。さらに、熱分解ガスの燃焼は、燃焼ゾーン中に固形燃料がない状態で実行されることにより、分解されるタール量を最大化することができる。
【0020】
熱分解ゾーンと燃焼ゾーンの上部に、熱分解ゾーンと燃焼ゾーンとの間の通路が形成される。これによって、熱分解ガスが、熱分解ゾーンから燃焼ゾーンへ進むことができる。一方、固形物は、燃焼ゾーンに進むことなく、熱分解ゾーンに留まった後に、以下に詳述するように、熱分解により十分に小さくなったときに還元ゾーンへ進むことになる。
【0021】
燃焼ゾーンが熱分解ゾーンに囲われた構成により、装置全体を小型化することができ、また、この構成は、以下に詳述するように、燃焼により得られる熱の燃焼ゾーンから熱分解ゾーンへの、2つのゾーンを隔てる1つまたは複数の壁を通じた熱伝導による、伝達の点からも有利なものである。
【0022】
さらに、本発明に係る装置において、非常に高温となる領域は、燃焼ゾーン内に、例えばバーナー、に制限されているため、装置の設計上使用する必要なる耐高温性の材料の量を低減することができる。また、これによって、熱損失も低減され、変換処理全体の歩留まりを向上させることができる。
【0023】
本発明の有利な特徴にしたがって、燃焼ゾーンは、熱分解ゾーン内に同軸に収納されている。
【0024】
熱分解ゾーンと燃焼ゾーンは、2つの円状の断面を有する同軸の円筒壁の間に形成されており、燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンが形成される環状の空間の中央に、円状の領域を形成するように配置されている。
【0025】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明は、還元ゾーンをさらに含んでおり、還元ゾーンは、固形燃料の熱分解から得られるコークスを収集するために熱分解ゾーンと連通する通路と、コークスを受け入れる収容ステーションと、熱分解ガスの燃焼から得られるガス中の少なくとも水素を濃縮するために、前記熱分解ガスの燃焼から得られるガスが前記還元ゾーン内に入れるように前記燃焼ゾーンと連通する通路と、を有している。
【0026】
有利には、ガス循環手段は、熱分解ガスの燃焼から得られるガスも、燃焼ゾーンから還元ゾーンへ循環させるように構成されている。
【0027】
本発明に係る装置のこのような構成によって、様々なガス化の段階、具体的には、熱分解、燃焼、及び還元は、物理的に分離されており、これによって、変換処理の各段階を最適化することができる。
【0028】
好ましくは、還元ゾーンと熱分解ゾーンとを連通する通路は、コークスを収容ステーションに収集するために、熱分解ゾーンから還元ゾーンに向かって下る傾斜部を含んでいる。
【0029】
有利には、傾斜部は、熱分解ゾーンの
底壁を構成し、燃焼ゾーンの回りに延在して、コークスを還元ゾーンに向けて案内する円錐系を形成するものである。熱分解ゾーンは、外周壁と内周壁との間に環状に形成されるため、傾斜部と内周壁とで、固形燃料の熱分解から得られる固形熱分解残留物の排出口が形成され、この排出口は、外周壁と内周壁とを隔てる距離よりも小さい高さを有している。
【0030】
環状に形成される熱分解ゾーンは、断面において、好ましくは円形である内周及び外周を有している。但し、環状の熱分解ゾーンの内周及び外周は、他の形状を有するものであってもよい。
【0031】
有利には、本発明に係る装置は、コークスの還元から得られるガスを濾過するための濾過手段をさらに含んでおり、この濾過手段は、コークスの還元から得られるガスを濾過し、かつ、該ガス中に含まれる、ダストまたは灰等の固形パーティクルを還元ゾーンに再注入するように構成されている。
【0032】
本発明の有利な特徴にしたがって、燃焼手段は、酸化剤、好ましくは空気、の注入口と、酸化剤と熱分解ガスとの間の反応を開始させるための開始手段を含んでいる。
【0033】
本発明の実施形態では、燃焼ゾーンと熱分解ゾーンは、共通の分離壁を含む。有利には、還元ゾーンの少なくとも一部は、燃焼ゾーン及び熱分解ゾーンのうちのいずれか一方または両方の下方に配置されている。
【0034】
本発明の有利な特徴にしたがって、還元ゾーンの少なくとも一部は、燃焼ゾーンを囲むように、燃焼ゾーンと熱分解ゾーンとの間に配置されている。
【0035】
言い換えれば、燃焼ゾーンは、還元ゾーンによって、熱分解ゾーンから分離される。特に、燃焼ゾーンは還元ゾーンによって囲まれ、還元ゾーン自体は熱分解ゾーンによって囲まれており、還元ゾーンは、熱分解ゾーンの内周を定める周壁と、燃焼ゾーンを定める周壁との間に形成される。
【0036】
好ましくは、本発明に係る装置は、コークスの還元から得られるガスを循環させるためのガス循環ゾーンをさらに含んでおり、このガス循環ゾーンは、コークスの還元から得られるガスの熱の少なくとも一部を、熱分解ゾーンの壁、好ましくは外周壁、を介して伝導させることによって熱分解ゾーンへ伝達するために、コークスの還元から得られるガスが、熱分解ゾーンの回りを循環できるように構成されている。
【0037】
これによって、熱分解ゾーンは、燃焼ゾーンと、熱分解ゾーンによるエネルギーの回生を増強するために熱分解ゾーンを囲んで設けられたガス循環ゾーン内を循環するガスとの両方によって加熱される。
【0038】
有利には、本発明に係る装置は、固形燃料を乾燥させるための乾燥手段をさらに含んでおり、この乾燥手段は、固形燃料を、熱分解ゾーン中に注入する前に乾燥するために、熱分解ゾーンの注入口と連通している。
【0039】
本発明の有利な態様に従って、本発明に係る装置は、還元ゾーンに蒸気を注入するための蒸気注入手段をさらに含んでいる。装置が乾燥手段を備えている場合、この蒸気は、好ましくは、乾燥手段から得られる。
【0040】
好ましくは、本発明に係る装置は、該装置の外周壁をさらに含んでおり、該外周壁の少なくとも一部は、熱絶縁手段を含んでいる。
【0041】
本発明は、上述した本発明に係る装置を使用して、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための方法も提供するものである。この方法は、
a)固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解するために、固体燃料を熱分解ゾーン中で熱分解する段階と、
b)熱分解ガスを、燃焼ゾーン中で燃焼、好ましくは部分燃焼、する段階と、を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明に係る方法は、燃焼を開始するために、好ましくはバーナーを使用して、燃焼ゾーンを予備加熱し、燃料の変換が開始された後は、予備加熱を弱める、好ましくは、停止するものである。
【0043】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明の係る方法は、
c)好ましくは熱分解ガスの部分燃焼から得られたガス中の水素を濃縮するために、熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階、をさらに含んでいる。
【0044】
有利には、熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階は、該ガスと固体燃料の熱分解から得られたコークスとの間の反応によって実行される。
【0045】
好ましくは、還元から得られたガスは、該ガスの熱の少なくとも一部を熱分解ゾーンに伝達するために、熱分解ゾーンの回りを循環する。
【0046】
有利には、固体燃料は、好ましくは乾燥後に、熱分解ゾーン中に供給され、燃焼ゾーン中には存在しないものである。
【0047】
本発明の特徴は、以下に記載された実施形態の説明を、添付図面に関連させて理解することによって、より明確となるものである。