特許第5913328号(P5913328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エストロワデの特許一覧

<>
  • 特許5913328-燃料変換装置 図000002
  • 特許5913328-燃料変換装置 図000003
  • 特許5913328-燃料変換装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913328
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】燃料変換装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/62 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   C10J3/62
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-533256(P2013-533256)
(86)(22)【出願日】2011年10月5日
(65)【公表番号】特表2013-543537(P2013-543537A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】FR2011052318
(87)【国際公開番号】WO2012049400
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】1058252
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513092637
【氏名又は名称】エストロワデ
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】リ チェン
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ケリュエル
(72)【発明者】
【氏名】リュック ジェリュン
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0282738(US,A1)
【文献】 米国特許第04740216(US,A)
【文献】 特表2013−519761(JP,A)
【文献】 特開2005−120125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための装置であって、
・前記固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解する機能を有する熱分解手段を有し、固形燃料を熱分解するための熱分解ゾーン(2)と、
・燃焼手段(31、32、33)を有し、熱分解ガスを燃焼するための、前記熱分解ゾーンとは別個の燃焼ゾーン(3)と、
・熱分解ガスを前記燃焼ゾーン(3)へ通過させるための通路(23)と、
・前記熱分解ガスを前記熱分解ゾーン(2)から前記燃焼ゾーン(3)へ循環させるためのガス循環手段と、
を含み、前記燃焼ゾーン(3)は、前記熱分解ゾーン(2)によって囲まれているとともに、前記熱分解ゾーン(2)は、外周壁と内周壁との間に環状に形成され、
還元ゾーン(4)をさらに含み、前記還元ゾーン(4)は、前記固形燃料の熱分解から得られるコークスを収集するために前記熱分解ゾーン(2)と連通する通路(42)と、コークスを受け入れる収容ステーション(44)と、熱分解ガスの燃焼から得られるガス中の少なくとも水素を濃縮するために、前記熱分解ガスの燃焼から得られるガスが前記還元ゾーン(4)内に入れるように前記燃焼ゾーン(3)と連通する通路(43)と、を有しており、
コークスの還元から得られるガスを循環させるためのガス循環ゾーン(5)をさらに含み、前記ガス循環ゾーン(5)は、前記コークスの還元から得られるガスの熱の少なくとも一部を、前記熱分解ゾーン(2)の周囲の壁、好ましくは前記外周壁、を介して伝導させることによって前記熱分解ゾーン(2)へ伝達するために、前記コークスの還元から得られるガスが、前記熱分解ゾーン(2)の回りを循環できるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記燃焼ゾーン(3)は、前記熱分解ゾーン(2)内に同軸に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記通路(42)は、重力の作用によりコークスを前記収容ステーション(44)に収集するために、前記熱分解ゾーン(2)から前記還元ゾーン(4)に向かって下る傾斜部を含んでおり、前記傾斜部(42)と前記熱分解ゾーン(2)の前記内周壁とで、前記固形燃料の熱分解から得られる前記固形熱分解残留物の排出口が形成され、該排出口は、前記外周壁と前記内周壁とを隔てる距離よりも小さい高さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
コークスの還元から得られるガスを濾過するための濾過手段(40)をさらに含んでおり、前記濾過手段(40)は、コークスの還元から得られるガスを濾過し、かつ、該ガス中に含まれる、ダストまたは灰等の固形パーティクルを前記還元ゾーン(4)に再注入するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記還元ゾーン(4)の少なくとも一部は、前記燃焼ゾーン(3)及び前記熱分解ゾーン()のうちのいずれか一方または両方の下方に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記還元ゾーン(4)に蒸気を注入するための蒸気注入手段(61)をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記還元ゾーン(4)の少なくとも一部は、前記燃焼ゾーン(3)を囲むように、前記燃焼ゾーン(3)と前記熱分解ゾーン(2)との間に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記燃焼ゾーン(3)と前記熱分解ゾーン(2)は、共通の分離壁(320)を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記燃焼手段(31、32、33)は、酸化剤、好ましくは空気、の注入口(31)と、前記酸化剤と前記熱分解ガスとの間の反応を開始させるための開始手段(32、33)を含んでいることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記固形燃料を乾燥させるための乾燥手段(6)をさらに含んでおり、前記乾燥手段(6)は、前記固形燃料を、前記熱分解ゾーン(2)中に注入する前に乾燥するために、前記熱分解ゾーン(2)の注入口(21)と連通することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置の外周壁をさらに含んでおり、該外周壁の少なくとも一部は、熱絶縁手段を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11に記載の装置を使用して、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための方法であって、
a)前記固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解するために、前記固形燃料を前記熱分解ゾーン中で熱分解する段階と、
b)前記固形熱分解残留物を燃焼させることなく、前記熱分解ガスを、前記燃焼ゾーン中で燃焼、好ましくは部分燃焼、する段階と、
)前記熱分解ガスの部分燃焼から得られたガス中の水素を濃縮するために、前記熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階と、を含み、
前記熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階は、該ガスと前記固形燃料の熱分解から得られたコークスとの間の反応によって実行され、前記還元から得られたガスは、該ガスの熱の少なくとも一部を前記熱分解ゾーン(2)に伝達するために、前記熱分解ゾーン(2)の回りを循環することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記燃焼を開始するために、好ましくはバーナー(33)を使用して、前記燃焼ゾーン(3)を予備加熱し、燃料の変換が開始された後は、予備加熱を弱める、好ましくは、停止することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固燃料は、好ましくは乾燥後に、前記熱分解ゾーン(2)中に供給され、前記燃焼ゾーン(3)中には存在しないことを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、固形成分を含む燃料のガス化に関する。詳しくは、本発明は、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための装置であって、
前記固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解する機能を有する熱分解手段を含む、固形燃料を熱分解するための熱分解ゾーンと、
燃焼手段を含み、前記熱分解ガスを燃焼するための、前記熱分解ゾーンとは別個の燃焼ゾーンと、
を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置によって得られるガス燃料は、一般に合成ガス(syngas)と呼ばれる高エネルギーガスであり、エンジン、タービン、または燃料電池のような適切な設備を作動させるために使用することができる。しかしながら、多くの場合、合成ガスはタールを含有しており、合成ガスが供給される設備のタールの許容しきい値は低い。このような装置では、対応する許容しきい値を超えると、装置内でタールが凝結することにより、装置の劣化が早まることになる。
【0003】
合成ガスに残存するタール量を低減するために使用できる専用のガス処理ユニットも存在するが、そのような処理ユニットは、大きくかつ高価である。
【0004】
従来、多段式ガス化装置として知られる装置が存在する。この装置は、熱分解ゾーンと熱分解ゾーンとは別個の燃焼ゾーンとを含んでいる。デンマークの製造業者であるTK Energi ASが市販するガス化装置は、その例である。この種の装置は、熱分解段階と燃焼段階が部分的に分離されているため、得られる合成ガス中のタール含有量を低減するために使用することができる。
【0005】
しかし、このような従来の装置では、熱分解に必要な熱を発生させるために固形燃料の一部を燃焼させており、このような固形燃料の直接燃焼によって、例えばダイオキシンのような汚染ガスが排出されることに加えて、装置のエネルギー効率に損失が生じる。
【0006】
さらに、上述した熱分解ゾーンと燃焼ゾーンは、端部同士を接した状態で配置されているため、燃料の熱分解から得られるコークスは、還元ゾーン中に還元層を形成するために燃焼ゾーンを通過する。これによって、装置が大型化するとともに、汚染物質を排出する危険性が増大する。加えて、このような装置における熱分解ゾーンと燃焼ゾーンの配置は、燃焼ゾーンにおける大きなエネルギー損失の要因となり、熱分解のために不利なものである。
【0007】
特許文献1(米国特許出願公開第2009/282738号明細書)には、固形燃料をガス燃料に変換するための装置が開示されている。この装置は、熱分解ゾーンと燃焼手段を備えた燃焼ゾーンとを含んでいる。
【0008】
しかし、特許文献1に開示された装置では、固形燃料が燃焼ゾーン中で燃焼され、次いで、燃焼ガスが熱分解ゾーン中を循環するものである。
【0009】
したがって、特許文献1に開示された装置では、エネルギーを追加するために固形燃料を燃焼する上記TK Energi ASの装置と同様の問題が生じる。このような固形燃料の燃焼によって、汚染物質の排出、及び、エネルギー効率の損失が発生する。
【0010】
さらに、特許文献1に開示された装置は、高エネルギーガスを得ることではなく、熱分解油を得ることを目的とするものである。このため、熱分解反応を実行するために必要な熱を追加供給するために、装置の作動の間を通じて燃焼ゾーンで固形燃料を燃焼することが必要である。
【0011】
特許文献2(国際公開第02/40618号)には、燃焼ゾーンによって囲まれた中央の熱分解ゾーンを含む装置が開示されている。このような構成は、燃焼から得られた熱の熱分解ゾーンへの伝達部として使用することができるものの、燃焼ゾーンから装置の外部への大きな熱損失が発生する。このように、熱分解ゾーンによる熱回生は最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/282738号明細書
【特許文献2】国際公開第02/40618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、固形燃料をガス燃料に変換するための装置であって、燃焼ゾーンから装置の外部への熱損失を抑制し、熱分解ゾーンによる熱回生を改善することができる装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、固形燃料を、合成ガスとして知られるガス燃料に変換するための装置であって、不純物(特に、タール)の量を低減することができる装置を提供することを他の目的とする。
【0015】
また、本発明は、固形燃料を、合成ガスとして知られるガス燃料に変換するための装置であって、ダイオキシン及び金属等の汚染物質の排出を低減することができる装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための装置であって、
固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解する機能を有する熱分解手段を有し、固形燃料を熱分解するための熱分解ゾーンと、
燃焼手段を有し、熱分解ガスを燃焼するための、熱分解ゾーンとは別個の燃焼ゾーンと、
熱分解ガスを熱分解ゾーンから燃焼ゾーンへ循環させるためのガス循環手段と、を含み、
燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンによって囲まれていることを特徴とする装置を提供するものである。
【0017】
本発明に係る装置の構成では、熱分解ゾーンが燃焼ゾーンを囲んでいるため、燃焼ゾーンから装置の外部への熱損失が低減される。一方、燃焼ゾーンから、それを囲む熱分解ゾーンへと熱が伝達されることにより、熱分解ゾーンによる熱回生は改善される。
【0018】
燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンとは別個のものであるため、固形燃料が、燃焼ゾーンに注入される空気のような酸化剤と接触することはない。これによって、汚染物質の排出を抑制することができる。
【0019】
木材の熱分解を、好ましくは約500℃の温度で実行することにより、金属及び塩素は木材の熱分解から得られるコークス中に残存し、熱分解ガスに汚染要素は含まれない。さらに、熱分解ガスの燃焼は、燃焼ゾーン中に固形燃料がない状態で実行されることにより、分解されるタール量を最大化することができる。
【0020】
熱分解ゾーンと燃焼ゾーンの上部に、熱分解ゾーンと燃焼ゾーンとの間の通路が形成される。これによって、熱分解ガスが、熱分解ゾーンから燃焼ゾーンへ進むことができる。一方、固形物は、燃焼ゾーンに進むことなく、熱分解ゾーンに留まった後に、以下に詳述するように、熱分解により十分に小さくなったときに還元ゾーンへ進むことになる。
【0021】
燃焼ゾーンが熱分解ゾーンに囲われた構成により、装置全体を小型化することができ、また、この構成は、以下に詳述するように、燃焼により得られる熱の燃焼ゾーンから熱分解ゾーンへの、2つのゾーンを隔てる1つまたは複数の壁を通じた熱伝導による、伝達の点からも有利なものである。
【0022】
さらに、本発明に係る装置において、非常に高温となる領域は、燃焼ゾーン内に、例えばバーナー、に制限されているため、装置の設計上使用する必要なる耐高温性の材料の量を低減することができる。また、これによって、熱損失も低減され、変換処理全体の歩留まりを向上させることができる。
【0023】
本発明の有利な特徴にしたがって、燃焼ゾーンは、熱分解ゾーン内に同軸に収納されている。
【0024】
熱分解ゾーンと燃焼ゾーンは、2つの円状の断面を有する同軸の円筒壁の間に形成されており、燃焼ゾーンは、熱分解ゾーンが形成される環状の空間の中央に、円状の領域を形成するように配置されている。
【0025】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明は、還元ゾーンをさらに含んでおり、還元ゾーンは、固形燃料の熱分解から得られるコークスを収集するために熱分解ゾーンと連通する通路と、コークスを受け入れる収容ステーションと、熱分解ガスの燃焼から得られるガス中の少なくとも水素を濃縮するために、前記熱分解ガスの燃焼から得られるガスが前記還元ゾーン内に入れるように前記燃焼ゾーンと連通する通路と、を有している。
【0026】
有利には、ガス循環手段は、熱分解ガスの燃焼から得られるガスも、燃焼ゾーンから還元ゾーンへ循環させるように構成されている。
【0027】
本発明に係る装置のこのような構成によって、様々なガス化の段階、具体的には、熱分解、燃焼、及び還元は、物理的に分離されており、これによって、変換処理の各段階を最適化することができる。
【0028】
好ましくは、還元ゾーンと熱分解ゾーンとを連通する通路は、コークスを収容ステーションに収集するために、熱分解ゾーンから還元ゾーンに向かって下る傾斜部を含んでいる。
【0029】
有利には、傾斜部は、熱分解ゾーンの壁を構成し、燃焼ゾーンの回りに延在して、コークスを還元ゾーンに向けて案内する円錐系を形成するものである。熱分解ゾーンは、外周壁と内周壁との間に環状に形成されるため、傾斜部と内周壁とで、固形燃料の熱分解から得られる固形熱分解残留物の排出口が形成され、この排出口は、外周壁と内周壁とを隔てる距離よりも小さい高さを有している。

【0030】
環状に形成される熱分解ゾーンは、断面において、好ましくは円形である内周及び外周を有している。但し、環状の熱分解ゾーンの内周及び外周は、他の形状を有するものであってもよい。
【0031】
有利には、本発明に係る装置は、コークスの還元から得られるガスを濾過するための濾過手段をさらに含んでおり、この濾過手段は、コークスの還元から得られるガスを濾過し、かつ、該ガス中に含まれる、ダストまたは灰等の固形パーティクルを還元ゾーンに再注入するように構成されている。
【0032】
本発明の有利な特徴にしたがって、燃焼手段は、酸化剤、好ましくは空気、の注入口と、酸化剤と熱分解ガスとの間の反応を開始させるための開始手段を含んでいる。
【0033】
本発明の実施形態では、燃焼ゾーンと熱分解ゾーンは、共通の分離壁を含む。有利には、還元ゾーンの少なくとも一部は、燃焼ゾーン及び熱分解ゾーンのうちのいずれか一方または両方の下方に配置されている。
【0034】
本発明の有利な特徴にしたがって、還元ゾーンの少なくとも一部は、燃焼ゾーンを囲むように、燃焼ゾーンと熱分解ゾーンとの間に配置されている。
【0035】
言い換えれば、燃焼ゾーンは、還元ゾーンによって、熱分解ゾーンから分離される。特に、燃焼ゾーンは還元ゾーンによって囲まれ、還元ゾーン自体は熱分解ゾーンによって囲まれており、還元ゾーンは、熱分解ゾーンの内周を定める周壁と、燃焼ゾーンを定める周壁との間に形成される。
【0036】
好ましくは、本発明に係る装置は、コークスの還元から得られるガスを循環させるためのガス循環ゾーンをさらに含んでおり、このガス循環ゾーンは、コークスの還元から得られるガスの熱の少なくとも一部を、熱分解ゾーンの壁、好ましくは外周壁、を介して伝導させることによって熱分解ゾーンへ伝達するために、コークスの還元から得られるガスが、熱分解ゾーンの回りを循環できるように構成されている。
【0037】
これによって、熱分解ゾーンは、燃焼ゾーンと、熱分解ゾーンによるエネルギーの回生を増強するために熱分解ゾーンを囲んで設けられたガス循環ゾーン内を循環するガスとの両方によって加熱される。
【0038】
有利には、本発明に係る装置は、固形燃料を乾燥させるための乾燥手段をさらに含んでおり、この乾燥手段は、固形燃料を、熱分解ゾーン中に注入する前に乾燥するために、熱分解ゾーンの注入口と連通している。
【0039】
本発明の有利な態様に従って、本発明に係る装置は、還元ゾーンに蒸気を注入するための蒸気注入手段をさらに含んでいる。装置が乾燥手段を備えている場合、この蒸気は、好ましくは、乾燥手段から得られる。
【0040】
好ましくは、本発明に係る装置は、該装置の外周壁をさらに含んでおり、該外周壁の少なくとも一部は、熱絶縁手段を含んでいる。
【0041】
本発明は、上述した本発明に係る装置を使用して、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料をガス燃料に変換するための方法も提供するものである。この方法は、
a)固形燃料を、熱分解ガスと、コークスとして知られる固形熱分解残留物とに分解するために、固体燃料を熱分解ゾーン中で熱分解する段階と、
b)熱分解ガスを、燃焼ゾーン中で燃焼、好ましくは部分燃焼、する段階と、を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明に係る方法は、燃焼を開始するために、好ましくはバーナーを使用して、燃焼ゾーンを予備加熱し、燃料の変換が開始された後は、予備加熱を弱める、好ましくは、停止するものである。
【0043】
本発明の有利な特徴にしたがって、本発明の係る方法は、
c)好ましくは熱分解ガスの部分燃焼から得られたガス中の水素を濃縮するために、熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階、をさらに含んでいる。
【0044】
有利には、熱分解ガスの部分燃焼から得られたガスを還元する段階は、該ガスと固体燃料の熱分解から得られたコークスとの間の反応によって実行される。
【0045】
好ましくは、還元から得られたガスは、該ガスの熱の少なくとも一部を熱分解ゾーンに伝達するために、熱分解ゾーンの回りを循環する。
【0046】
有利には、固体燃料は、好ましくは乾燥後に、熱分解ゾーン中に供給され、燃焼ゾーン中には存在しないものである。
【0047】
本発明の特徴は、以下に記載された実施形態の説明を、添付図面に関連させて理解することによって、より明確となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の第1実施形態における変換装置を示す図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態における変換装置を示す図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態における変換装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
上述し、また、図にも示したように、本発明は、固形燃料として知られる、固形成分を含む燃料を、合成ガスとして知られるガス燃料に変換するための装置を提供するものである。このような装置は、ガス化装置とも呼ばれる。
【0050】
ガス化は、固形燃料をガス燃料へ熱化学的に変換するための技術である。ガス燃料は、合成ガスとして知られ、HとCOを主成分とする。
【0051】
ここで、「固形」という用語は、固体の本来の意味で使用される。例えば、木片だけでなく、顆粒状要素、または、おが屑のような微細要素も含めていうものである。
【0052】
ガス燃料に変換するための固形燃料を形成するために、様々な固形有機材料を使用することができる。以下に詳述する例において、使用される固形燃料は、木材である。
【0053】
本発明に係る装置は、固形燃料の熱分解ゾーン2を含み、熱分解ゾーン2は、固形燃料を、熱分解ガスとコークスとして知られる熱分解残留物とに分解するために使用することができる熱分解手段を含んでいる。
【0054】
本発明に係る装置は、熱分解ガスを燃焼するための燃焼ゾーン3も含んでおり、燃焼ゾーン3は、熱分解ゾーン2とは別個に設けられ、燃焼手段31、32、33を含んでいる。燃焼手段31、32、33は、熱分解ガスに含まれるタール及び他の炭化水素を酸化するために、熱分解ガスの部分燃焼を実行するために使用することができる。
【0055】
本発明に係る装置は、熱分解ガスを燃焼ゾーン3へ通過させるための通路23を有している。熱分解手段は、熱分解ゾーンを区切る1つまたは複数の壁によって形成される。これらの壁は、酸素を何ら追加することなく燃焼ゾーン内に熱を伝達するために使用することができる。以下に詳述するように、この熱源は、主として燃焼ゾーンから放出される熱から直接または間接に得られる。
【0056】
本発明の特徴として、燃焼ゾーン3は、熱分解ゾーン2によって囲まれている。熱分解ゾーン2は、少なくとも180°にわって燃焼ゾーン3の回りに延在する。好ましくは、熱分解ゾーン2は、360°にわたって燃焼ゾーン3の回りに延在し、ベルトのように燃焼ゾーンを完全に囲むものである。
【0057】
熱分解ゾーンは、固形燃料を供給するための注入口21を含み、固形燃料は、逆V字形のドーム230を介して熱分解ゾーンに供給されるように構成されている。ドーム230の一部は熱分解ゾーン2上に広がり、一部は燃焼ゾーン3上に、燃焼ゾーン3内に入り込むことなく広がっている。
【0058】
図1及び図2に示す例において、熱分解ガスを燃焼ゾーン3へ通過させるための通路23は、燃焼ゾーン3の上部に設けられた、熱分解ゾーン2の上部と連通する開口部により形成される。また、逆V字形のドーム230により、熱分解ガスを熱分解ゾーン2の上部から燃焼ゾーン3へ案内するための案内手段が形成される。
【0059】
特に、この装置は、熱分解ゾーン2から燃焼ゾーン3へ熱分解ガスを循環させるために、
ガスを循環させるためのガス循環手段11を備えている。より一般的には、ガス循環手段は、装置内に存在するガスを熱分解ゾーン2から装置の排出口52へ循環させることができるように構成されている。
【0060】
図3に示す例では、熱分解ゾーンは、以下に詳述するように、還元ゾーン4によって燃焼ゾーンから分離されており、熱分解ゾーン2から燃焼ゾーン3へ熱分解ガスを通過させるために、1つまたは複数のダクト23が設けられている。
【0061】
燃焼ゾーン3の燃焼手段31、32、33は、酸化剤(好ましくは、空気)の注入口31と、酸化剤と熱分解ガスとの間の反応を開始させるための開始手段32、33を含んでいる。開始手段は、バーナー33と、熱分解ガスとは異なる燃料(好ましくは、プロパン)の注入口32により形成される。この燃料は、熱分解に必要な熱を供給し、熱分解ガスの部分燃焼を開始するために、注入口31を介して供給される酸化剤とともに高温(好ましくは、少なくとも1000℃)の空気炎を形成するためのものである。熱分解ガスの部分燃焼が開始された後、言い換えれば、ガス化装置の通常動作の間は、注入される燃料32の流量を低減するか、または、燃料の注入を停止することができる。
【0062】
図2及び図3に示して以下に詳述するように、この装置は、固形燃料を乾燥し、水を蒸気状態とするために、固形燃料を乾燥させるための乾燥手段6を備えるものであってもよい。
【0063】
燃焼ゾーンに酸素のない状態で、熱分解により、固形燃料を、熱分解ガスとして知られるガスと、コークスとして知られる固形残留物に変換することができる。熱分解ガスはタールを含んでおり、タールは、凝結温度がベンゼンの凝結温度よりも高い炭化水素の混合物である。以下に詳述するように、タールは、熱分解の間に生成され、次いで、燃焼ゾーンでの部分燃焼段階の間に酸化され、熱分解される。最終的に、タールは、還元ゾーンでコークスにより接触分解される。
【0064】
燃焼ゾーン3は、CO及びHの分子を生成するために、熱分解ガス(タール及び他の炭化水素)を部分酸化するために使用することができる。燃焼ゾーン3中で熱分解ガスの部分酸化によって放出される熱は、熱分解ゾーン2中に存在する固形燃料に直接または間接に伝達される。
【0065】
このように、熱分解ガスの燃焼手段は、少なくとも部分的に熱分解手段を形成する。言い換えれば、熱分解ガスの部分燃焼から得られる熱は、熱分解ゾーン2によって少なくとも部分的に回生され、一度熱分解ガスの部分燃焼が開始すると、熱分解反応は自己維持される。
【0066】
固形燃料は、燃焼ゾーン3に注入される酸化剤と直接接触しない。これによって、ダイオキシンまたは金属といった任意の汚染物質の放出が低減される。
【0067】
特に、燃焼ゾーンと熱分解ゾーンのそれぞれは、円筒形であり、燃焼ゾーン3は円形の断面を有し、熱分解ゾーン2は環状の断面を有する。燃焼ゾーン3は、熱分解ゾーン2内に同軸に取り付けられる。
【0068】
図1及び図2に示す例では、熱分解ガスの部分酸化で放出される熱は、熱分解ゾーン2を燃焼ゾーン3から分離する周壁320を介して、熱分解ゾーン2中に存在する固形燃料に伝達される。特に、図1及び図2に示す例では、周壁320は、環状の熱分解ゾーン2の内周と円状の燃焼ゾーン3の外周とを定めることによって、熱分解ゾーン2と燃焼ゾーン3の2つのゾーンを分離する。
【0069】
この装置は、還元ゾーン4も含んでおり、還元ゾーン4は、固形燃料の熱分解から得られるコークスを収集するために熱分解ゾーン2と連通する通路42と、還元層を形成するためにコークスを受け入れる収容ステーション44とを有する。還元ゾーンは、燃焼ゾーン3と連通する通路43も含んでおり、この通路43によって、部分燃焼から得られる燃焼生成物、特に、CO、CO、CH、HO、及び、H、が還元ゾーンに入ることが可能となり、それによって、熱分解ガスの部分燃焼から得られるガス、少なくともH、が濃縮される。
【0070】
この目的のために、ガス循環手段11は、また、熱分解ガスの燃焼から得られるガスを燃焼ゾーンから還元ゾーンへ確実に循環させるように構成されている。
【0071】
ガス循環手段11は、熱分解ゾーン2から、燃焼ゾーン3、及び還元ゾーン4のような他の処理ゾーンを通過させて、装置の排出口52へガスを強制循環させるために、装置の排出口52に配置されるか、または排出口52の近傍に配置されたタービンによって構成されるものであってもよい。好ましくは、以下に詳述するように、ガス循環ゾーン5が、還元ゾーン4の周りに延在するものである。
【0072】
このようにして得られる合成ガスには、COも含まれている。通路42は、コークスと燃焼ゾーン3の高温の酸化剤との反応を回避するために、燃焼ゾーン3を通過しないように構成されている。
【0073】
本発明に係る装置を用いた熱分解では、固形燃料から放出されるタールを、非常に高温の燃焼ゾーンを通過させ、次いで、コークス層を通過させることができる。これによって、タールが分解されるため、タールそれ自体が除去されるだけでなく、最終的なガスの組成が改善され、ガスの量が増大する。
【0074】
図1及び図2に示す例では、コークスによって形成される還元層は、好ましくは非常に深い層であり、これは、HとCOの生成を促進するために、燃焼ゾーンから得られるガスと反応させるためだけでなく、ガスに残存するタール及びパーティクルを可能な限り除去するためのフィルターとして機能させて、清浄なガスを得るためでもある。
【0075】
図3に示す例では、燃焼ゾーン3によって放出される熱は、還元ゾーン4の対向する周壁を介して熱分解ゾーン2に伝達される。これらの周壁は、燃焼ゾーン3と熱分解ゾーン2の両方と共通の周壁である。
【0076】
熱分解ガスの部分燃焼から得られるガス、言い換えれば、タール及び他の炭化水素を酸化した後のガスを回生するために、通路43が、燃焼ゾーンの中央に対して、熱分解ゾーン2と燃焼ゾーン3との間の通路23から離れて配置されている。
【0077】
図1及び図2に示す例では、還元ゾーン4は、燃焼ゾーン3及び熱分解ゾーン2の水平位置よりも低い位置に配置されている。加えて、還元ゾーン4は、燃焼ゾーン3の鉛直方向の下方に配置されており、これによって、熱分解ガスの部分燃焼から得られるCO及びHO生成物が、収容ステーション44中に配置されたコークス層と反応することができる。
【0078】
収容ステーション44は、好ましくは、コークスを保持し、かつコークスを還元して得られる灰を通過させるスクリーンによって区切られており、灰は、スクリーンの下方に配置された灰受け45に回収され、次いで、ダクト46を通じて排出される。
【0079】
有利には、この装置は、還元ゾーン4内の圧力を低減する手段を備えており、これによって、熱分解ガスの部分燃焼から得られるガスを、還元ゾーン4中に存在するコークス層を通じて確実に循環させることが可能となる。
【0080】
熱分解ゾーン2と還元ゾーン4を連通させる通路42は、熱分解ゾーン2から還元ゾーン4に向かって下る傾斜部を含んでおり、これによって、重力の作用により、コークスを収容ステーション44に収集することができる。この傾斜部42は、熱分解ゾーンの底壁を構成する。
【0081】
熱分解ゾーンの内周壁と傾斜部42とで、熱分解後の固形燃料残留物を排出するための排出口が形成される。排出口のサイズは、熱分解ゾーン2の内周壁と外周壁とを隔てる距離よりも小さい。したがって、固形燃料は、熱分解された後に初めて、言い換えれば、まだ熱分解されていない固形燃料よりもサイズが小さい固形残留物の形でのみ、傾斜部42によって熱分解ゾーンから還元ゾーン4に向けて排出される。
【0082】
傾斜部42は、熱分解ゾーン2の(燃焼ゾーン3の軸と一致する)軸回りに延在し、また、燃焼ゾーン3に対して直角に、熱分解ゾーン2から、燃焼ゾーン3と還元ゾーンとの間に配置される領域に延在し、これによって、燃焼ゾーン3から燃焼ゾーン3の断面のサイズよりもサイズが小さい還元ゾーン4に向かって、流れの横断面が形成される。
【0083】
したがって、傾斜部42は、流れの規制手段を構成し、これによって、燃焼ゾーン3と還元ゾーン4との間のガスの流れに発生する渦を増大させ、燃焼ゾーン3中での酸化剤と熱分解ガスとの局所的な混合が向上する。さらに、このような流れの規制手段は、酸化剤と熱分解ガスとのマクロなスケールでの局所的な混合を改善し、それによって、タールが分解されずに通過する可能性のある比較的冷たい領域が存在する危険性を低減する。
【0084】
この装置は、コークスを還元して得られるガスを循環させるためのガス循環ゾーン5も含んでおり、ガス循環ゾーン5は、このガスが熱分解ゾーン2の回りを循環することが可能なように構成され、このガスの熱の少なくとも一部は、熱分解ゾーン2の外周壁を介して伝導することによって、熱分解ゾーン2へ伝達される。
【0085】
ガス循環ゾーン5は、熱分解ゾーン2の外周壁と他の周壁(例えば、装置の外壁)との間に形成され、他の周壁は、熱分解ゾーン2の外周壁を、距離を隔てて囲むものである。
【0086】
ガス循環ゾーン5は、還元ゾーン4とガスの排出口52とを連通する通路51を含み、ガスの排出口52から、適切な設備を動作させるために、ガスが回生される。
【0087】
図3に示す例において、装置は、コークスの還元から得られるガスを濾過し、そのガス中に含まれる固形パーティクルを還元ゾーン4に再注入するための濾過手段(再循環手段)40を含んでいる。
【0088】
再循環手段40は、還元ゾーン4内で開口するガスの注入口41、サイクロン19、ダストまたは灰のような固形パーティクルを還元ゾーン4に再注入するための排出口47、熱分解ゾーン2の回りに延在するガス循環ゾーン5と連通する濾過されたガスの排出口48を含んでいる。
【0089】
有利には、本発明に係る装置で固形燃料として使用される有機材料の水分含量は、(乾物含量ベースで)50%未満である。燃料として、以下のような材料を挙げることができる。
・木材、及び、木材の汚染されていない派生物(おが屑、丸太、樹皮など)
・家禽飼料
・添加剤を含む木材
・植物性の廃棄物
・有機物の家庭ごみ
・プラスチックの家庭ごみ
・タイヤ
【0090】
図2及び図3に示すように、本発明に係る装置は、固形燃料を乾燥させるための乾燥手段6を含むものであってもよく、乾燥手段6は、熱分解ゾーン2の注入口21と連通する。これによって、固形燃料を、熱分解ゾーン2中に注入する前に乾燥させることができる。
【0091】
図2及び図3に示すように、この装置は、還元ゾーン4に蒸気を注入するための蒸気注入手段61を備えていてもよい。この蒸気は、好ましくは、乾燥手段6から得られるものである。他のガスを、ダクト62を介して還元ゾーン4に注入することもできる。
【0092】
この装置は、外壁10を有しており、装置の外壁の少なくとも一部は、熱絶縁手段を含む。特に、装置の外壁は、熱絶縁層で覆われるものであってもよい。
【0093】
本発明に係る装置は、固形燃料を以下のようにしてガスに変換するための方法を実行するために使用することができる。以下では、この方法を、図1に示す装置に対応する変換装置を用いて説明する。
【0094】
ガス化装置は、酸化剤31(例えば、空気)及び燃料32(好ましくは、プロパン32、あるいは、例えば合成ガスまたは他のガス)を供給することによって、バーナー33を用いて予備加熱される。ガス化装置は、排気ガスまたは任意の他の熱源から得られる高温のガス流によって予備加熱することもできる。
【0095】
ガス化装置の熱分解ゾーンの温度が起動温度(例えば、500℃)を超えたならば、貯蔵ゾーン9に貯蔵されている固形燃料が、熱分解ゾーン2に供給される。木材は、分解されて、熱分解ガスと、コークスを形成する炭素質の残留物とが生成される。
【0096】
熱分解ガスは、次いで、燃焼ゾーン3に進み、注入された空気31を用いて部分燃焼される。注入されるプロパン32の流量は、熱分解ガスの生成が増大するにつれて低減され、最終的に、その連続的供給は停止される。言い換えれば、プロパンは、点火と予備加熱のために使用される。
【0097】
熱分解から得られたコークスは、重力の作用により傾斜部42に沿ってスクリーン44上に滑り落ち、還元層を形成する。
【0098】
燃焼ゾーン3で熱分解ガスの部分燃料から得られたガスは、還元ゾーン4に進み、コークスと反応して、生成されるガス中のH及びCOが濃縮される。
【0099】
この装置は、例えば、図1から図3に示すガス循環ゾーン5のような二重の壁を備えており、この壁は、別の熱源、合成ガスの一部の燃焼、エンジンからの排気ガス、タービンまたはボイラーのような外部手段によって加熱されるものであってもよい。これによって、処理の起動時間が短縮し、装置の動作が改善される。
【0100】
生成されるガスからの熱、及び/または、装置から放出される熱、及び/または、任意の他の熱源からの熱を回生することによって、注入口31から燃焼ゾーン3に注入される空気の予備加熱を実行するものであってもよい。
【0101】
上述した方法において、燃焼ゾーン3に注入される酸化剤を形成する、空気以外のガス31を使用することもできる。例えば、純酸素、または酸素が濃縮された空気を使用することができる。
【0102】
好ましくは、装置の高温の領域には、たとえ燃料を輸送するための機構要素であっても、機構要素は含まれないものである。これによって、技術的複雑性が回避される。
【0103】
本発明に係る装置のこのような構成によれば、固形燃料は、直接燃焼されることも、燃焼ゾーンに注入される酸化剤と接触することもない。その結果、汚染物質の主要な要素(塩素、金属)は、灰またはパーティクルの濾過手段中に固体状態で残存する。これによって、ダイオキシン及び気体金属の放出は、従来の燃焼方法と比較して、大幅に低減される。
【0104】
本発明に係る装置は、容易に使用可能であり、かつ安価なガス化装置を構成する。実際、本発明にしたがったそのような装置を用いることによって、固形燃料のガス燃料への変換が、容易に、効率良く、低い環境負荷で、かつ、固体燃料から取り出される価値に対して安価に、実行されるものである。
【0105】
さらに、固形燃料の熱分解は、熱分解ガスを生成するために使用することができ、熱分解ガスは、酸化させるために少量の酸素を注入するだけでよいため、ダイオキシンのような汚染化合物の生成が抑制される。本発明に係る装置は、さらに、汚染物質の放出を低減するために使用することもできる。
【0106】
上述したように、固形燃料を変換することにより得られる合成ガスは、ボイラー、内燃機関、タービン、燃料電池、または、小規模な熱電併給システム等の様々な応用例に対して、高い信頼性をもって、効率的に使用することができる。
図1
図2
図3