(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913344
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】膨張デバイス機構
(51)【国際特許分類】
B63C 9/19 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
B63C9/19
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-538260(P2013-538260)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2013-545656(P2013-545656A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】GB2011001581
(87)【国際公開番号】WO2012063020
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】1019087.4
(32)【優先日】2010年11月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513118258
【氏名又は名称】ユナイテッド・モルダーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ベスト,マイケル・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ペリンズ,ジョン
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−051696(JP,A)
【文献】
特開2002−193170(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0908652(EP,A2)
【文献】
特開2001−213391(JP,A)
【文献】
実開昭57−080398(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/18− 9/19
B63B 22/12,22/22
F17C 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張式物品用の膨張デバイスのための膨張デバイス機構であって、前記膨張デバイス機構が、
加圧流体の容器を支持するハウジングであって、前記容器を穿通して加圧流体の解放を許容するように後退位置から移動可能な穿孔デバイスを支持する、ハウジングと、
前記容器を穿通するために前記穿孔デバイスを前記後退位置から移動させるように動作可能な、付勢手段と、
係合されたラッチ配置にあるときに前記穿孔デバイスを前記後退位置に保持する、協働ラッチ要素を含む、作動手段と、を備え、
前記作動手段が、第1の制御部材または第2の制御部材のいずれかによる作動に応答して前記協働ラッチ要素を非係合状態にし、これにより、前記穿孔デバイスが前記付勢手段の作用の下で前記後退位置から前進して前記容器を穿通することを許容し、
前記第1の制御部材が、感水部材を含み、前記感水部材は、前記協働ラッチ要素を取り囲み、かつ、通常は前記協働ラッチ要素を係合配置に支持するのに十分であるが水に曝されて強度が低下したときには前記協働ラッチ要素を非係合状態にするのに十分である、強度を有し、
前記第2の制御部材は、前記協働ラッチ要素を取り囲む部材を含み、前記協働ラッチ要素を取り囲む部材は、前記協働ラッチ要素を取り囲む位置から手動で取り外すことができ、これにより、前記協働ラッチ要素が非係合状態にされる、膨張デバイス機構。
【請求項2】
前記協働ラッチ要素は、前記制御部材のうちの一方の動作に応じて非係合状態にされるときに、前記穿孔デバイスの移動方向に対して実質的に垂直な方向に移動する、請求項1に記載の膨張デバイス機構。
【請求項3】
前記協働ラッチ要素が、前記穿孔デバイスの前進方向に対して傾斜した、互いに向かい合う支持面を含み、前記向かい合う当接面に荷重を加える前記付勢手段の作用によって、前記第1の制御部材および第2の制御部材のうちのいずれかが作動されたときに、前記協働ラッチ要素が前記前進方向に対して実質的に垂直な方向に移動し、非係合状態におかれる、請求項2に記載の膨張デバイス機構。
【請求項4】
前記協働ラッチ要素のうちの一方が、前記穿孔デバイスの一部分によって構成される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項5】
前記協働ラッチ要素のうちの一方が、前記ハウジングに対して固定された部材によって構成される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項6】
前記協働ラッチ要素のうちの一方は、係合配置にあるときに前記協働ラッチ要素のうちの他方の突起形成部によって係合される支持面を有する陥凹構造を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項7】
前記協働ラッチ要素のうちの一方は、前記ハウジングに固定されたコレットを含み、前記コレットは、前記コレットの環状部分から軸方向に延在する複数の指部を備え、前記指部の先端部の各々が、前記協働ラッチ要素のうちの他方の凹部構造または突起形成部と協働するための支持面を提供する突起形成部または陥凹構造を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項8】
前記第1の制御部材が、筒の形態の感水部材を含み、前記感水部材が、通常は前記協働ラッチ要素を取り囲んで前記協働ラッチ要素を前記係合されたラッチ配置に保持するが、水に曝されて強度が低下したときには、非係合配置への移動を許容する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項9】
前記第2の制御部材が、筒状の部材を含み、前記筒状の部材は、前記穿孔デバイスが前記後退位置から移動するときに前進するのとは反対の方向に、手動で軸方向に移動可能であり、これにより、前記協働ラッチ要素が非係合状態にされる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項10】
前記第2の制御部材が、実質的に管状の部材である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項11】
前記第2の制御部材は、長さ方向に延在する複数のスリットまたは間隙を含み、これにより、前記制御部材が径方向に広がることができるようにする複数の指状構造が形成される、請求項10に記載の膨張デバイス機構。
【請求項12】
前記第2の制御部材が、前記協働ラッチ要素を取り囲み、かつ、前記要素のうちの一方と前記第1の制御部材との間に挿入されて位置する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項13】
前記第2の制御部材を手動で引き出すことにより、前記協働ラッチ要素のうちの一方が内部に押圧されることができる環状の空間が形成され、これにより、前記協働ラッチ要素を非係合状態にすることができる、請求項12に記載の膨張デバイス機構。
【請求項14】
協働要素と前記第1の制御部材との間から前記第2の制御部材を引き出すことによって、前記第1の制御部材が引き出され、前記協働ラッチ要素を非係合状態にすることを可能にする、請求項12または請求項13に記載の膨張デバイス機構。
【請求項15】
前記第2の制御部材が、協働ラッチ要素に対して自由に摺動可能な複数の指部を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項16】
前記第2の制御部材は、前記第2の制御部材が引き出されるのと同時に前記第1の制御部材が引き出されることを可能にする形成物または表面構造を含む、請求項15に記載の膨張デバイス機構。
【請求項17】
協働ラッチ要素が第1の複数の指部を含み、前記第1の複数の指部の各々が、前記第2の制御部材によって形成される第2の複数の指部のうちの少なくとも1つの指部に、少なくとも部分的に重ねられる、請求項1から16までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項18】
前記第2の制御部材の指部が、前記協働ラッチ要素の指部間のスリットまたは間隙に亘って延びる、請求項17に記載の膨張デバイス機構。
【請求項19】
2組の前記複数の指部のうちの少なくとも一方の組の指部は、前記穿孔デバイスが前記後退位置から前進する方向に垂直な平面で見たときに、一方の組の指部の各々を、他方の組の指部のうち2つの隣接する指部のそれぞれを覆い且つそれらと接触する配置に維持するように案内構造を備える、請求項17または請求項18に記載の膨張デバイス機構。
【請求項20】
前記第2の制御部材が、ハウジング端部キャップと一体であり、前記ハウジング端部キャップが、前記ハウジングの一端部内に滑り嵌めされ、かつ前記一端部から取外し可能である、請求項1から19までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構。
【請求項21】
緊急用の引きひもが、前記端部キャップに固定される、請求項20に記載の膨張デバイス機構。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の膨張デバイス機構と、ガスシリンダが取付けられるハウジングと、膨張式物品のマニホルドに取り付けられるハウジング出口ポートとを含む、膨張デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張式物品のための膨張デバイス機構および膨張デバイスに関し、詳細には、しかし限定的ではないが、救命胴衣などのための膨張デバイスおよび機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水中に没したときに自動的に作動するタイプの救命胴衣膨張デバイスに関して、また、手動で作動されるタイプの多くの膨張デバイスに関して、小型のガスシリンダを膨張デバイスに備えることがよく知られており、この小型のガスシリンダは、手動での作動または水に触れることによる自動的な作動に応じて穿刺されて、救命胴衣を膨張させるための加圧ガスを解放する。
【0003】
手動による作動と自動的な作動の組み合わせを特徴とする、知られた、そして成功した膨張デバイスは、本発明者らのヨーロッパ特許EP 1109717−B1の主題のものである。
【0004】
EP 1109717では、ピストンユニットを含むいわゆる発射機構を有する膨張デバイスが説明されている。このピストンユニットは、穿孔デバイスとして知られることもあり、手動での作動または自動的な作動に応じて、軸方向に移動することができる。ピストンユニットは、一方の端部には、穿孔ナイフのための取付け台を設け、他方の端部には、手動での作動または自動的な作動に応じて移動可能な可撓性の指部一式を含む割りスカートを設けて、ピストンユニットをつる巻圧縮ばねの作用の下で後退位置から軸方向に前進可能とし、またそれにより、穿孔ナイフにガスシリンダのシールを穿刺させる。
【0005】
この構成により、ピストンユニットを単独の成形品として構成ししたがって経費を抑えるために首尾よく機能する、膨張デバイスがもたらされるが、ピストンユニットのための材料の設計および選択において、穿孔ナイフに良好な支持を提供するのに十分な堅さでありながらも、指部を十分に可撓性のあるものにできるようにし、また手動での作動の場合に迅速に応答できるようにするために、特別な注意が必要とされる。さらに、この構成は、材料が穿孔ナイフをピストンユニットの一部分として一体的に形成できるようにするのに十分に堅く、また手動での作動に必要とされる力が常に許容限度の範囲内にあることを確実にするのに特別な注意が必要とされる変形形態には、容易には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、膨張式物品用の膨張デバイスのための改良された膨張デバイス機構を提供することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、膨張式物品用の膨張デバイスのための膨張デバイス機構が提供され、前述の膨張デバイス機構は、
加圧流体の容器を支持し、かつ、容器を穿通して加圧流体の解放を許容するように後退位置から移動可能な穿孔デバイスを支持する、ハウジングと、
容器を穿通するために穿孔デバイスを前述の後退位置から移動させるように動作可能な、付勢手段と、
係合されたラッチ配置にあるときに穿孔デバイスを前述の後退位置に保持する、協働ラッチ要素を含む、作動手段とを備え、
前述の作動手段は、第1の制御部材または第2の制御部材のいずれかによる作動に応答して協働ラッチ要素を非係合状態にし、これにより、穿孔デバイスが付勢手段の作用の下で前述の後退位置から前進して容器を穿通することを許容し、
前述の第1の制御部材は、感水部材を含み、この感水部材は、前述の協働ラッチ要素を取り囲み、かつ、通常は前述の協働ラッチ要素を係合配置に支持するのに十分であるが水に曝されて強度が低下したときには協働ラッチ要素を非係合状態にするのに十分である、強度を有し、
前述の第2の制御部材は、協働ラッチ要素を取り囲む部材を含み、協働ラッチ要素を取り囲む部材は、協働ラッチ要素を取り囲む位置から手動で取り外すことができ、これにより、協働ラッチ要素が非係合状態にされる。
【0008】
前述の協働ラッチ要素は、制御部材のうちの一方の動作に応じて非係合状態にされるときに、穿孔デバイスの移動方向に対して実質的に垂直な方向に移動するのが好ましい。
第1の制御部材および第2の制御部材のいずれかが作動されたときに後退位置から前進する穿孔デバイスの動きやすさを促進するために、協働ラッチ要素は、前進方向に対して傾斜した、互いに向かい合う支持面を含むことが好ましく、これにより、前述の向かい合う当接面に荷重を与える付勢手段の作用によって、協働ラッチ要素が前述の前進方向に対してラッチ構造から実質的に垂直な方向に容易に移動し、非係合状態におかれる。
【0009】
第1の協働ラッチ要素は、穿孔デバイスと一緒に移動できるようにするために、穿孔デバイスの一部分とすることができ、第2の協働ラッチ要素は、ハウジングに対して所定の位置に固定されたコレットなどの部材によって形成することができる。
【0010】
協働ラッチ要素のうちの一方は、陥凹構造を備えて、係合されたラッチ配置にあるときに協働ラッチ要素のうちの他方の突起形成部によって係合される支持面を提供することができる。
【0011】
第2の協働ラッチ要素は、ハウジングに固定されたコレットを含み、コレットは、コレットの環状部分から軸方向に延在する複数の指部を備えることができ、指部の先端部の各々は、第1の協働ラッチ要素の凹部または突起形成部と協働するための支持面を提供する突起形成部または凹部を有する。前述のコレットは、例えば、接着剤により、ねじ山により、またはハウジングと一体的に成形されることにより、ハウジングに固定されうる。
【0012】
前述の第1の制御部材は、紙筒などの筒の形態の感水部材を含むことができ、この感水部材は、通常は協働ラッチ要素を取り囲んでそれらを係合配置に保持するが、水に曝されて強度が低下したときには、非係合配置へのラッチ解除を可能する。
【0013】
前述の第2の制御部材は、筒状の部材を含むことができ、この筒状の部材は、穿孔デバイスが後退位置から移動するときに前進するのとは反対の方向に、手動で軸方向に移動させることができる。前述の第2の制御部材を手動で移動させることにより、協働ラッチ要素を非係合状態にすることができる。
【0014】
第2の制御部材は、実質的に管状の部材、例えば実質的に円筒状の部材とすることができ、また、周囲が不連続であってもよい。好ましくは、第2の制御部材は、2つ以上の、好ましくは少なくとも4つの、長さ方向に延在するスリットまたは間隙を含み、それにより、第2の制御部材が径方向に広がることができるようにする複数の指状構造が形成される。
【0015】
第2の制御部材は、協働ラッチ要素を取り囲み、かつ、前述の要素のうちの一方と第1の感水制御部材との間に挿入されて位置するように、位置決めされうる。この配置では、第2の制御部材は、第1の制御部材が濡れて強度が低下した場合に、径方向に広がることができる。このことにより、協働ラッチ要素を非係合状態にすることが可能になり、また、ガスシリンダを穿通するための穿孔デバイスの前進が可能になる。
【0016】
手動での作動の場合、協働ラッチ要素と第1の制御部材との間から第2の制御部材を引き出すことにより、協働ラッチ要素のうちの一方がその中に押圧されうる環状の空間を形成することができ、これにより前述の協働ラッチ要素を非係合状態にすることができる。あるいは、またはそれに加えて、第2の制御部材を引き出す動作は、第1の制御部材をも引き出すように構成することができ、これにより、協働ラッチ要素は、ラッチ解除のために第2の制御部材の径方向厚さよりも大きな距離だけ径方向外方に移動する必要があるけれども、自由に非係合状態になることができる。
【0017】
第2の制御部材は、協働ラッチ要素と第1の制御部材との間に位置決めされてそれらに対して自由に摺動可能な、複数の平坦な指部を含むことができる。しかし、オプションとして、第2の制御部材は、指部の先端部上で外方に延在するリップ、またはざらついた(textured)指部の外側表面などの構造を含むことができ、それにより、第2の制御部材の引き出しと同時に起こる第1の制御部材の引き出しを支援する。
【0018】
手動で作動可能な第2の制御部材、および、例えばコレットに関連付けられた、第2の協働ラッチ要素は、それぞれ、穿孔デバイスの後退位置からの移動方向と平行して長さ方向に延在する、複数の可撓性指部を含むことができる。
【0019】
好ましくは、協働要素が第1の複数の指部を含み、この第1の複数の指部は、それぞれ、第2の制御部材によって形成される第2の複数の指部のうちの少なくとも1つの指部に、少なくとも部分的に重ねられる。第2の制御部材の指部が、協働ラッチ要素の指部間で長さ方向に延在するスリットまたは任意の間隙に亘って延びるように位置決めされ、前述のスリットまたは間隙が、制御部材のうちの一方が作動された場合に、協働ラッチ要素の指部を、少なくともそれらの先端部において、離して移動させられるようにするものであることが、好ましい。
【0020】
2組の複数の指部のうちの少なくとも一方の組の指部は、案内構造を備えることができ、それにより、一方の組の指部の各指部が、他方の組の指部に対して偏った配置に維持される。第2の組の各外側指部は、好ましくは、協働ラッチ要素の2つの隣接する指部のそれぞれを覆いかつそれらと接触して位置する。第2の制御部材の各外側指部は、好ましくは、協働ラッチ要素の2つの隣接する指部のそれぞれを覆いかつそれらと接触して位置する。第2の組の一連の外側指部は、協働ラッチ要素のうちの一方の(例えばコレット)指部のそれぞれの外側面上に設けられたリブ構造によって、離間されうる。前述のリブが、第2の制御部材の外側指部の(径方向の)厚さに相当する距離だけ外方に延在し、それにより、互いにかみ合った各指部が、紙筒などの第1の制御部材を均一に支持するための実質的に滑らかな外側表面を提供することが、好ましい。
【0021】
代替構造においては、第1の制御部材は、協働ラッチ要素と周囲の第2の制御部材との間に挿入されて位置しうる。この構造では、第2の制御部材の取外しは、結果的に第1の制御部材の引き出しも行うように構成されることが好ましい。
【0022】
第2の制御部材は、ハウジング端部キャップと一体的に形成することができ、このハウジング端部キャップは、通常使用時には、ハウジングの一端部内に滑り嵌めされてしっかりと位置する。緊急用引きひもを端部キャップに固定することができ、それにより、ひもを引っ張ることによるキャップの引き出しが、第2の制御部材の引き出しと、オプションとして第1の制御部材の引き出しをももたらして、結果として、機構が手動で作動されることになる。
【0023】
前述の端部キャップ、またはハウジングの隣接する部分は、機構を自動的に作動させるための水の浸入を促進するために、開口されまたは部分的に除去されうる。
穿孔デバイスは、ガスシリンダを破裂させるための穿孔ヘッドを支持するか、または、例えば鋳造により、穿孔ヘッドと一体的に形成することができる。
【0024】
本発明はまた、本発明による膨張デバイス機構と、ガスシリンダを取り付けるための手段を有するハウジングと、膨張式物品のマニホルドに取り付けるための出口ポートとを含む、膨張デバイスを提供する。
【0025】
次に、例としてだけではあるが、添付の概略的な図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態による膨張デバイス機構を組み込んだ膨張デバイスの一部分の断面図である。
【
図3】
図3は、指部組立体を示すための、機構の端部領域の切断部分の斜視図である。
図3aは、
図3の一部分を拡大して示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による膨張デバイス機構の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
膨張デバイス発射(firing)機構10は、ガスシリンダ18の取付けのために螺着される第1の端部領域12を有するハウジング11を含む。第2の端部領域13が、チャンバ14を画定し、その中には機構の可動部品が配置される。
【0028】
チャンバ14から螺着された端部へと延在する通路15により、ガスシリンダのシールと係合しかつそれを破断するための、穿孔ヘッド16の軸方向運動が可能になる。実質的に、Inflation Deviceと題された本発明者らの同時係属の英国特許出願GB 1019053.6で説明されるようにすることができる、保持クリップ19により、膨張デバイスの出口ポートを膨張式物品のマニホルドに固着することが可能になる。
【0029】
穿孔ヘッド16は、ハウジングの長さ方向において軸方向に摺動可能なプランジャユニット17の一端部に位置する。
コレット20が、ハウジング内にねじ嵌めとして軸方向に固定され、圧縮ばね22のための反作用面(reaction face)21を提供する。圧縮ばね22は、プランジャ肩部23に作用して、プランジャ17を付勢してハウジング当接面24に向かう方向に移動させ、したがって、ガスシリンダを破裂させるための穿孔ヘッド16も前進させる。
【0030】
穿孔ヘッドの反対側のプランジャの端部26は、
図1および
図2に示されるような後退されたラッチ位置にプランジャを保持するように作用する、協働ラッチ要素の対のうちの一方を画定する。
【0031】
端部26は、傾斜支持面28を含む円周方向に延在する溝27(
図1aも参照)を有し、この傾斜支持面28は、軸方向運動の方向に対して約45°の角度に位置する。
溝27は、コレット20から延在する、円周方向に均一に離間した8つのコレット指部30のそれぞれの端部に、リップ形成部29のための場所を提供する。リップ形成部はそれぞれ、傾斜支持面31を有し、この傾斜支持面31は、後退配置において、環状の溝面28に当接する。
【0032】
コレット指部30は通常、周囲の紙筒(換言すれば、スリーブ)35、および、円周方向に均一に離間され、かつ、コレット指部30と紙筒35の間に挿入されて位置する、8つの制御指部36により、溝支持面28に係合して保持される。
【0033】
2組の複数の指部は、互いにかみ合う形で配置されて、紙筒35に均一に当接するための実質的に滑らかな外側表面を提供する。
コレット指部はそれぞれ、断面図(
図3a参照)に見られるような楔様形状の本体領域45を有し、かつ、円周方向に離間して位置する。各コレット指部の外側面は、長さ方向に延在するリブ46を有し、それにより、長さ方向に延在する1対の肩領域47を画定する。第2の制御部材指部36は、全体的に矩形のものであって、そのそれぞれが、隣接するコレット指部の対の2つの肩領域47によって支持されており、またそれにより、コレット指部間の間隙48に延びている。したがって、制御指部36は、コレット指部の間で内方へと滑るいかなる傾向も抑制されるように、確実に支持および案内される。
【0034】
挿入された指部36はそれぞれ、ハウジングの端部内にしっかりと嵌合された端部キャップ37から延在する。引きひも(cord)38が、端部キャップに取り付けられて、キャップが挿入された指部と一緒にハウジングから引き抜かれるのを可能にする。
【0035】
紙筒35を取り囲むコレットの部分の外側表面40には、円周方向に離間した一連の4つのリブ42が備えられる(
図1、
図1a、および
図3に見られる)。これらのリブの端部表面43は、端部の停止部として作用し、かつ、端部キャップ37の外側円筒状部分41の環状端部表面44に当接し、それにより、端部キャップ37は内方への移動を妨げられる。
【0036】
小開口部39が、ハウジングとキャップの間に設けられて、紙筒35と接触する水の浸入を可能にする。
この構成では、紙筒35は、濡れたときに第1の制御部材として働き、発射機構の自動的な作動、およびシリンダシールの破裂をもたらし、端部キャップ指部36は、手動での作動のための第2の制御部材として働く。
【0037】
ひも38が引っ張られた場合、端部キャップ指部36が、コレット指部30の外側表面上を外方に摺動する。コレット指部は、ばね22の作用により向かい合う傾斜面28と31の間に存在する力の作用の下で、外方に付勢される。その結果、端部キャップ指部36の外側表面が、紙筒35にしっかりと当接し、それにより、端部キャップおよび指部36の引き出しと同時に、紙筒35が引き出される。
【0038】
したがって、協働当接面28、31が、ラッチ配置から係合を解かれて、穿孔ヘッドの前進およびシリンダの破裂を可能にする。
水が浸入した場合、紙筒35は、柔らかくなり、挿入された可撓性の端部キャップ指部を介してコレット指部30が筒に与える径方向外方の付勢力に抵抗するのを止める。手動での作動に関する場合と同様に、協働当接面が係脱して、穿孔ヘッドの前進およびシリンダの破裂を可能にする。
【0039】
本発明の第2の実施形態では、膨張デバイスのための発射機構は、紙筒の位置と端部キャップ指部の位置とが交換されること以外は、実質的に第1の実施形態に関する場合と同様に構成される。
図4に示されるように、筒60は、コレット指部61と端部キャップ指部62との間に挿入されて位置する。筒60と指部62の間の小さい環状の間隙により、筒は濡れたときに外方に膨張することが可能になり、それにより、本発明の第1の実施形態に関して説明されたのと同様の形で、コレット指部のプランジャからの係脱が可能になる。端部キャップ指部は、内方に向けられた端部リップ63を有して、筒の軸方向内側の端部64と係合し、それにより、手動での作動の場合に筒がコレット指部と一緒に引き出されることが確実とされる。