(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913350
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】風力発電装置を稼動するための方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/00 20160101AFI20160414BHJP
【FI】
F03D11/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-540380(P2013-540380)
(86)(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公表番号】特表2014-500931(P2014-500931A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】EP2011071030
(87)【国際公開番号】WO2012069631
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年7月22日
(31)【優先権主張番号】102010052565.0
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】エデン、ゲオルク
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0263246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置を稼動するための方法であって、
− 該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータを有し、
− 前記ロータには、前記ロータの風の負荷を検知するための少なくとも1つの負荷測定手段が設けられており、
該方法は、以下のステップ、即ち、
− 前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録するステップと、
− 前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するステップとを含み、
但し、前記負荷測定の自動調整として、
第1の評価ステップにおいて、少なくとも前記ロータの完全な一回転にわたり、前記負荷測定手段の複数の測定値の測定列を記録し、
前記測定値の絶対値の加算形成を行い、
前記負荷測定の感度を決定すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
第2の評価ステップにおいて、
前記測定値の絶対値形成を伴わずに前記負荷測定手段の前記測定値の加算形成を行い、
前記負荷測定のゼロ点の変位量を決定すること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記校正に引き続き、又は前記校正と共に、前記負荷測定手段又は付設の評価装置の調整が実行されること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記校正のために前記ロータを回転する際に、前記ロータは、少なくとも一回転、回転され、その際、前記負荷測定は、負荷経過が測定され且つ同時に前記ロータの位置が検知されるように実行されること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記校正は、該風力発電装置の運転開始時に実行されること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記校正は、前記ロータの停止後、又は該風力発電装置の整備の終了時に実行されること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記校正のための前記ロータの回転は、空転稼動において実行されること
を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのロータブレードは、位置調節可能であり、前記校正のための回転時には風から向きを変えられ、従って風からエネルギーは取り出されないか又は取り出されたとしも僅かであること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記負荷測定手段として少なくとも1つの伸び測定帯材が使用され、又は各ロータブレード用に1つ又は2つ以上の伸び測定帯材が使用されること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの負荷測定手段は、前記ハブに、又はロータブレード付根部に、又は前記少なくとも1つのロータブレードを前記ハブに固定するためのブレードアダプタに配設されていること
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
風力発電装置であって、
− 少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータと、
− 前記ロータの風の負荷を検知するための、前記ロータに配設された少なくとも1つの負荷測定手段とを含み、該風力発電装置は、前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録し、そして前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するように構成されており、
前記負荷測定のための自動調整手段により、
第1の評価ステップにおいて、少なくとも前記ロータの完全な一回転にわたり、前記負荷測定手段の複数の測定値の測定列が記録され、
前記測定値の絶対値の加算形成が行われ、
前記負荷測定の感度が決定されること
を特徴とする風力発電装置。
【請求項12】
前記負荷測定のための自動調整手段により、
第2の評価ステップにおいて、
前記測定値の絶対値形成を伴わずに前記負荷測定手段の前記測定値の加算形成が行われ、
前記負荷測定のゼロ点の変位量が決定されること
を特徴とする、請求項11に記載の風力発電装置。
【請求項13】
前記負荷測定手段として少なくとも1つの伸び測定帯材が設けられ、又は各ロータブレード用に1つ又は2つ以上の伸び測定帯材が設けられていること
を特徴とする、請求項11又は12に記載の風力発電装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの負荷測定手段は、前記ハブに、又はロータブレード付根部に、又は前記少なくとも1つのロータブレードを前記ハブに固定するためのブレードアダプタに配設されていること
を特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置を稼動するための方法、並びに風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水平軸線ロータを備えた風力発電装置は、少なくとも1つ、通常は3つのロータブレードを有し、該ロータブレードは、規定どおり、該ロータブレードへ当たる風により水平方向の軸線の周りで回転し、この回転運動を用いて電気エネルギーが発生される。強すぎる風がロータブレードへ当たると、風力発電装置は、その頻度又は強さに応じ、被害を被ることになる。強すぎる風によるそのような負荷は、例えば、ロータブレード(ロータブレードの風を受ける面)が少なくとも部分的に風から向きを変えることにより対処することができる。このことは、ピッチング(フェザリング)とも称される。
【0003】
風力発電装置の負荷軽減のためのそのような措置又は他の措置を開始可能とするためには、強い風に基づく対応する負荷を検知することが必要である。連続的に強く且つ均等な風は、例えば結果として得られるエネルギー生産量によるような風力発電装置の特性により確認することができる。短期的な負荷のため、又は例えば1つのロータブレードだけに対する局部的な負荷のためにも、そのような負荷を測定するためのセンサを設けることができる。つまり例えば、各ロータブレードの曲げ状態を検知するための伸び測定帯材(歪みゲージ)のようなセンサが使用される。それによりロータブレードの曲げ状態に関係する負荷を、場合により負荷を制限するための措置を講じるために、直接的に質的にも量的にも検知し、対応して評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 10 2006 036 157 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのための前提は、対応する負荷センサが正確に作動し且つ信頼できる値を提供することである。そのために各々のセンサの校正(Kalibrieren)及び/又は調整(Abgleichen)も極めて本質的なことである。通常、例えば伸び測定帯材のようなセンサは、伸びに依存する抵抗値、又は後接続された評価電子装置に応じ、例えば出力電圧のような、伸びに依存する信号を提供する。そしてこれらの値は、校正及び調整により、ロータブレードに対応する負荷に割り当てられなくてはならない。
【0006】
調整を伴うそのような校正は、極めて手間がかかり、また誤差(エラー)を生じやすいが、その理由は、その際には測定された複数のセンサ値に対し、別途記録されなくてはならない対応する負荷値を割り当てる必要があるためである。調整を伴う校正を行なう可能性は、ブレードを手動で、測定すべき比較力で引っ張ることにあり、従って校正はこの比較力に基づいて行なわれる。つまり例えば、費やした力が測定される間、1つのロータブレードの先端部を6時位置においてタワーに向かって引き付けることになる。
【0007】
更に風力発電装置の稼動の経過に伴い、相互関係(Zusammenhaenge)が変化することになる。このことは、ロータブレードでもセンサでも老化現象により引き起こされ、また例えばセンサやその固定部の欠陥のような他の原因によっても引き起こされる。そのような変化が小さいものであり及び/又はゆっくりと生じるのであれば、それらの変化が気づかれないままであるという危険がある。
【0008】
従来技術として、全般的に上記特許文献1が参照される。
【0009】
従って本発明の課題は、上述の問題点の少なくとも1つを解消する、或いは少なくとも軽減することである。特に少なくとも1つの負荷センサの校正及び調整が簡素化されるべきであり、及び/又はそのような校正及び/又は調整の信頼性ができるだけ向上されるべきである。また少なくとも代替的な解決策が提案されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により請求項1に記載の方法が提案される。
即ち、本発明の第1の視点により、風力発電装置を稼動するための方法であって、該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータを有し、前記ロータには、前記ロータの風の負荷を検知するための少なくとも1つの負荷測定手段が設けられており、該方法は、以下のステップ、即ち、前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録するステップと、前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するステップとを含
み、但し、前記負荷測定の自動調整として、第1の評価ステップにおいて、少なくとも前記ロータの完全な一回転にわたり、前記負荷測定手段の複数の測定値の測定列を記録し、前記測定値の絶対値の加算形成を行い、前記負荷測定の感度を決定することを特徴とする方法が提供される。
また、本発明の第2の視点により、風力発電装置であって、少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータと、前記ロータの風の負荷を検知するための、前記ロータに配設された少なくとも1つの負荷測定手段とを含み、該風力発電装置は、前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録し、そして前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するように構成されて
おり、前記負荷測定のための自動調整手段により、第1の評価ステップにおいて、少なくとも前記ロータの完全な一回転にわたり、前記負荷測定手段の複数の測定値の測定列が記録され、前記測定値の絶対値の加算形成が行われ、前記負荷測定の感度が決定されることを特徴とする風力発電装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)風力発電装置を稼動するための方法であって、該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータを有し、前記ロータには、前記ロータの風の負荷を検知するための少なくとも1つの負荷測定手段が設けられており、該方法は、以下のステップ、即ち、前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録するステップと、前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するステップとを含むこと。
(形態2)前記校正に引き続き、又は前記校正と共に、前記負荷測定手段又は付設の評価装置の調整(Abgleich)が実行されることが好ましい。
(形態3)前記校正のために前記ロータを回転する際に、前記ロータは、少なくとも一回転、回転され、その際、前記負荷測定は、負荷経過が測定され且つ同時に前記ロータの位置が検知されるように実行されることが好ましい。
(形態4)前記校正は、該風力発電装置の運転開始時、及び/又は前記ロータの停止後、及び/又は該風力発電装置の整備の終了時に実行されることが好ましい。
(形態5)前記調整のための前記ロータの回転は、空転稼動において実行されることが好ましい。
(形態6)前記少なくとも1つのロータブレードは、位置調節可能であり、前記校正のための回転時には風から向きを変えられ、従って風からエネルギーは取り出されないか又は取り出されたとしも僅かであることが好ましい。
(形態7)前記負荷測定手段として少なくとも1つの伸び測定帯材が使用され、好ましくは各ロータブレード用に2つ以上の伸び測定帯材が使用されることが好ましい。
(形態8)前記少なくとも1つの負荷測定手段は、前記ハブに、及び/又はロータブレード付根部に、及び/又は前記少なくとも1つのロータブレードを前記ハブに固定するためのブレードアダプタに配設されていることが好ましい。
(形態9)風力発電装置であって、少なくとも1つのロータブレードを有するハブを備え且つ水平軸線ロータとして構成された空力学的ロータと、前記ロータの風の負荷を検知するための、前記ロータに配設された少なくとも1つの負荷測定手段とを含み、該風力発電装置は、前記負荷測定手段を校正するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態で該風力発電装置の前記ロータを回転し、その際に前記負荷測定手段を用いて負荷測定を記録し、そして前記負荷測定と、前記ロータに発生する既知の重さの力とに基づき、前記負荷測定手段を校正するように構成されていること。
(形態10)前記負荷測定手段として少なくとも1つの伸び測定帯材が設けられ、好ましくは各ロータブレード用に1つ又は2つ以上の伸び測定帯材が設けられていることが好ましい。
(形態11)前記少なくとも1つの負荷測定手段は、前記ハブに、及び/又はロータブレード付根部に、及び/又は前記少なくとも1つのロータブレードを前記ハブに固定するためのブレードアダプタに配設されていることが好ましい。
(形態12)該風力発電装置は、形態1〜8のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されていることが好ましい。
【0012】
この方法には、水平軸線ロータを備えた風力発電装置が基礎とされる。そのような水平軸線ロータには、実質的に水平方向の軸線が設けられており、該軸線の周りで1つ又は複数のロータブレードが風により駆動されて回転する。この軸線は、僅かな斜め位置をもつこともできる。当業者には、水平軸線ロータを備えた風力発電装置との概念は、特に垂直方向の軸線を備えた風力発電装置との区別のために、所定の風力発電装置タイプの分類として周知である。
【0013】
このような風力発電装置は、空力学的ロータ(エアロダイナミックロータ)を有し、該空力学的ロータは、少なくとも1つのロータブレードを備えたハブをもっている。通常は、但し専らではないが、3つのロータブレードが1つのハブに設けられている。ロータには、ロータの風の負荷を検知するための少なくとも1つの負荷測定手段が設けられている。そのような負荷測定手段は、ロータブレードか、又はロータハブにロータブレードを固定するためのアダプタにも配設することができる。これらは、有利なポジションである。しかし例えばハブに直接的に設けるように他のポジションも考慮される。このことは、特にロータの具体的な構造にも依存する。
【0014】
そのような風力発電装置は、負荷測定手段を校正(キャリブレーション)するために風の負荷を伴わない状態か又は風の負荷を伴ったとしても僅かな状態でロータを回転する。その際、負荷測定が負荷測定手段を用いて記録される。理想的には風の負荷がない状態とされる。それにもかかわらず、僅かな風の負荷は無視することができるか又は場合により計算技術的に考慮することができる。このことは、最終的に所望の品質と精度にも依存する。
【0015】
そしてこの負荷測定を基礎とし、また追加的に、ロータに発生する既知の重さの力を基礎とし、負荷測定手段を用いた校正が行なわれる。
【0016】
この際、水平軸線ロータでは、ロータブレードの重さ(質量)及びそれに対応して発生する重さの力も、負荷測定手段が検知する負荷をもたらすことになるという認識を基礎としている。特に、垂直に立った状態のロータブレード、即ち6時位置又は12時位置にあるロータブレードは、実際には重さの力による負荷を受けず、それに対し、ロータブレードが水平位置にある場合、即ち3時位置又は9時位置にロータブレードがある場合には、重さの力による負荷が最大であろうということを前提とすることができる。つまり負荷測定に基づき、ゼロ交叉(Nulldurchgaenge)を検知し、割り当てることができる。ロータブレードの重さの負荷は、通常は既知であり、つまり量的な割り当てを行なうこともできる。
【0017】
好ましくは、ロータは、該ロータの調整のために、少なくとも一回転、回転され、この際、ロータのその都度の(角度)位置と共に負荷経過が記録される。その際、回転方向におけるロータの位置、即ち0°〜360°のロータのポジションは、該位置ないしポジションが負荷経過に割り当て可能であるように記録される。つまり負荷経過は、負荷の連続的な又は準連続的な記録を含んでおり、従って例えばロータの回転運動における各角度のための負荷値が記録される。つまりこの例においては、一回転のために360個の負荷値が記録されるであろう。これは単に一例であり、それよりも多くの又は少ない値、例えば200個の増分(インクリメント)で記録することも可能である。特に負荷経過のそのような記録に際し、この負荷経過が付属の回転ポジションの角度数にわたって記録(プロット)される場合、少なくとも実質的にサイン形状の経過を期待することができる。この際、系内に非線形性があることに応じ、ずれ(偏位 Abweichung)が生じることになる。
【0018】
このようなサイン形状の経過、或いはそれとは異なって形成された経過から出発し、割り当てと、校正と、そして最後に調整を行なうことができる。既述のように、0°と180°におけるゼロ交叉を想定することができる。そして最大負荷は、絶対値(変化量)に応じ、90°と270°で期待することができる。それを基礎とし、期待すべき経過に対するずれを検知することができ、このことが校正(Kalibrierung)と称され、そして対応する補正値(修正値)が導入され、このことが調整(ないし微調整 Abgleich)と称される。(即ち本願において、校正とは、測定器の測定値と、該測定器が場合により誤って測定する正しい値との間のずれを決定することを意味し、調整とは、要するに該測定器を補正すること意味し、該測定器は、該補正後には正しい値に対するずれをもたないことになる。最も簡単なケースでは所謂「0調整」を挙げることができ、例えば、アナログ電圧測定器の指針が0Vにおいてゼロの値を指していないとする。この際、指針は0Vにおいてゼロの値へ位置調節され、即ち「調整」される。このことは、対応する補正値を介して行われる。つまり実際には電圧がない場合に、指針が例えば調整前に0.5Vを指していたとすると、この例における対応する補正値は−0.5Vである。この意味において、対応する補正値とは、校正時に決定されたずれのマイナス分である。
)
【0019】
特に、実質的に負荷のない状態で空力学的ロータを回転することだけで校正及び/又は調整が実行可能であるということは、有利である。構造技術的な相互関係に基づき、この校正及び/又はこの調整を、風に起因する負荷へ転換することができる。
【0020】
好ましくは、調整は、風力発電装置の運転開始時、及び/又はロータの停止後、及び/又は風力発電装置の整備の終了時に実行される。校正又は調整がロータの停止後にも、即ちロータの再始動時にも行なわれる場合には、このことは特に、校正ないし調整を運転開始時にチェックし、場合により適合(マッチング)することを可能にする。従って時間の経過に伴う負荷測定手段又は他のパラメータの起こり得る変化を、簡単に考慮することができる。
【0021】
風力発電装置は、通常は定期的な間隔で保守整備にふされ、これらの保守整備は、通常はロータの停止も要求するものである。その際、保守整備の終了時にロータを再始動し、従ってそのような保守整備の完了操作として簡単に校正及び/又は調整をチェックし、場合により修正又はやり直しをすることができる。
【0022】
本発明による上述の校正及び/又は調整は、ロータを停止状態にしなくても行なうことができることを述べておく。しかし提案された負荷測定は、いずれにせよ風の負荷を伴わないか又は万一の場合でも僅かに風の負荷を伴った状態で実行されることを顧慮すべきである。
【0023】
校正及び/又は調整のためのロータの回転を空転稼動において実行することは、有利である。空転稼動(アイドリング稼動 Trudelbetrieb)のもとでは、空力学的ロータが特に弱い風により回転されるが、電気エネルギーが発生されることはなく、従って空力学的ロータが逆モーメントに対抗して回転されるという電気的な逆モーメントが構成されることもない稼動として理解すべきである。換言すると、この際、ロータは、ゆっくりとアイドリング状態で回転している。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つのロータブレードは、位置調節可能であり、特に既述の負荷測定を実行するために風から向きを変えられ(風向きから逸らされ)、従って風からエネルギーは取り出されないか又は取り出されたとしも僅かである。それにより一方では、平均的な又は強い風の場合にも空転稼動を実行することができる。負荷測定手段が、ロータブレードの位置調節時に同様に位置調節されるように配設されている場合には、ロータブレードが風から向きを変えることは、これらの負荷測定手段が全体的に又は部分的に以下の方向へ回転されること、即ちこれらの負荷測定手段が、風による圧縮負荷の代わりにロータブレードにおける重さの力を測定する方向へ回転されることをもたらす。換言すると、このような位置調節時には最適な状態で、重さの力が、ロータブレードが風から向きを変えられていない場合に風力がロータブレードに作用する正にその方向へ作用する。従って校正及び/又は調整のための負荷測定のために、たとえ風があったとしても風の影響を最小限にし、既知の重さの力の影響を最大限にし、従って高精度で負荷測定を、ロータに発生する既知の重さの力を考慮して実行することができる。
【0025】
好ましくは、負荷測定手段として少なくとも1つの伸び測定帯材(歪みゲージ)が使用され、特に各ロータブレード用に2つ以上の伸び測定帯材が使用される。従ってブレード負荷を検知するために実証済みの測定手段を使用することができ、そして簡単に校正及び/又は調整することができる。複数の伸び測定帯材の使用により、異なる負荷方向を考慮することができ、及び/又は冗長(ないし重複)測定(Redundanzmessungen)を行なうことができる。
【0026】
好ましくは、前記少なくとも1つの負荷測定手段は、ハブに、ロータブレード付根部に、及び/又はブレードアダプタに設けられている。特にロータブレード付根部における使用、即ちロータブレードのハブ側の部分における使用、並びにブレードアダプタにおける配設も、回転可能なロータブレードの使用時、即ちピッチ制御機構を備えた設備において、測定手段が同時に回転され、従って様々な負荷方向へ設定することができることを含意している。この際、ブレードアダプタとしては、ロータブレードとハブとの間、特にロータブレード付根部とハブとの間に配設されているアダプタとして理解されることを述べておく。換言すると、ロータブレードは、そのロータブレード付根部を用い、ブレードアダプタを用いてハブに固定される。
【0027】
更に本発明により、上述の方法の1つ又は複数を実行するために構成されている風力発電装置が提案される。
【0028】
校正の結果、即ち場合によって起こり得る差異の確定の結果を、負荷測定手段の調整のために、ないし負荷測定手段と接続された評価装置の調整のために使用することは、有利である。そのような評価装置は、プロセス計算機(プロセスコンピュータ)に組み込むこともでき、ないしプロセス計算機は、対応する評価機能を実行することもできる。
【0029】
校正の有利な実施形態ないしそれらと関連する特徴が説明される限り、これらは、その都度明示して説明することなく、基本的に調整との関連でも有利であると理解してよい。
【0030】
好ましくは、風力発電装置は、方法の説明との関連で上述されたないし説明された特徴の1つ又は複数を有する。
【0031】
以下、本発明の実施例を、添付の図面と関連し、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】風力発電装置の空力学的ロータの一部分を模式的に示す俯瞰図である。
【
図2】風力発電装置が規定どおり風に向かって配向されている場合の風力発電装置を模式的に示す、風向きの方向から見た正面図である。
【
図3】
図2よる風力発電装置を模式的に示す俯瞰図であるが、ロータブレードは、位置変更により所定のピッチポジションにある。
【
図4】校正及び/又は調整のために記録された負荷測定値を模式的に示す図である。
【実施例】
【0033】
図1の俯瞰図(上方から見た図)は、ハブ2と、ロータ1の全部で3つのロータブレードのうちの1つのロータブレード4とを備えたロータ1の一部分を示している。ロータブレード4は、ブレードアダプタ6を用いてハブ2に固定されている。この際、ブレードアダプタ6は、ロータブレード4を風へ向きを変えるため(風向きへ向けるため)、又は風から向きを変えるため(風向きから逸らすため)、又はそれらの中間位置へ向きを変えるために、ハブ2に回転可能に固定されている。更にハブ2の領域に支配する風を全般的に測定するための風測定手段20が図示されている。
【0034】
符号8を用い、規定どおりロータブレード4へ作用する風の風向きを示す矢印が特徴付けられている。この際、この風向きは、
図2による風力発電装置を見た図において視線方向に対応している。
図2は、模式的に風力発電装置10の全体図を示しており、この際、全部で3つのロータブレード4を備えた空力学的ロータ(エアロダイナミックロータ)1を示している。それに追加し、風力発電装置用タワー12が図示されている。
【0035】
従って
図1は、
図2による風力発電装置10の俯瞰図(上方から見た図)を示している。
【0036】
更に
図1から、ブレードアダプタ6において、負荷測定手段として機能する伸び測定帯材(歪みゲージ Dehnungsmessstreifen)14を見ることができる。双方向矢印は、伸び測定帯材14を用いて検知することのできる負荷方向16を意味している。伸び測定帯材14で、負荷方向16において圧縮(Stauchung)が測定される場合には、同じ風を前提とする限り、伸び測定帯材14’で、負荷方向16’において伸張(Streckung)が検知されると考えられる。伸び測定帯材14、14’は、各ロータブレード4又は各ブレードアダプタ6に配設することができる。換言すると、伸び測定帯材は、伸張も圧縮も検知することができ、従って正方向及び負方向においてロータブレードの負荷を検知することができる。通常はロータブレード4の非負荷の場合に値ゼロが割り当てられている。風がロータブレード4へ作用する場合、ロータブレード4は、風の方向8へ負荷(付勢)され、負荷のこの方向へ幾らか撓むことにもなる。このことは、風に向って背側(後ろ側)の領域において圧縮をもたらし、従って
図1による伸び測定帯材14の圧縮をもたらすことにもなる。この圧縮は、ここでは単に模式的に図示されている評価装置18を用いて評価することができ、その結果に更なる考慮を加えることができる。また実施形態に応じ、ロータブレードごとに1つだけの伸び測定帯材又は別の測定センサを設けることで十分である。
【0037】
図3a〜cは、
図2による風力発電装置の俯瞰図(上方から見た図)を模式的に示しているが、ロータブレード位置は各々変更されている。この際、
図3a〜cは、
図1では図面の見易さのために非図示であったナセル22を示している。更により良い理解のために
図3a〜cでは、タワー12が示唆されており、該タワー12は、選択された俯瞰図ではナセル22により当然隠されており、ここでは理解の向上のためだけに鎖線で記載されている。ナセル22の一部として見ることのできるハブ2では、とにかく、スピナとも称される示されたカバーに対し、ロータブレード4が、各図につき一ポジションで、3つの所謂ピッチポジションで示されている。この際、ロータ1は、図示されたロータブレード4が垂直で上方に向かって立っているポジションにある。つまり所謂12時ポジションが図示されている。他のロータブレード4は、ここでの説明のために必要ではなく、従って図示されていない。ここで、
図3aは、その1つのロータブレード4を、0°のピッチ角度を有する、風に対する相対的な配向状態で示している。0°のピッチ角度における第1ポジションは、見方に応じ、ピッチング(フェザリング)されていないポジションと称することもできる。この際、ロータブレード4(ロータブレード4の風を受ける面)は、風から最大エネルギーを取り出すことができるように風8へ向けられている。風が適切に支配することで、ハブ2、従ってロータ1が全体として回転方向24へ回転する。風8に起因してロータブレード4に発生する負荷は、伸び測定帯材14を用いて検知することができる。0°のこのピッチポジションにおいて伸び測定帯材14は、角度により特徴付けられたP0位置にある。この際、伸び測定帯材14は、風8により発生するロータブレード4への負荷を検知することに良く適している。
【0038】
図3bは、ロータブレード4を、風に対して相対的に70°のピッチ角度を有する配向状態で示している。このピッチ位置においてロータブレード4は風8に対して抵抗をほとんど及ぼしておらず、従って風8は、ロータブレード4へ負荷を施すことができないか又は施すことができたとしても僅かである。せいぜい風力発電装置の空転稼動(アイドリング稼動 Trudelbetrieb)を行なうことができるであろう。70°位置へのロータブレード4の回転により、伸び測定帯材14も、P70として特徴付けられたポジションにある。伸び測定帯材14は、このP70ポジションにおいて、風8によるロータブレード4の負荷をほとんど検知することができず、つまりこの際には風がロータブレード4へ負荷を施すことができないためである。完全を期すために
図3cは、90°のピッチポジションを示している。
【0039】
それにもかかわらず、図示された伸び測定帯材14のP70位置では、ロータブレードの自重モーメントを検知することができる。この際、この自重モーメントは、場合によって生じ得る風負荷により、誤った値となることはないか又はなったとしても本質的なことではない。ロータブレードの図示の垂直ポジションにおいて、重さの力(Gewichtskraft)ないし重さのモーメント(Gewichtsmoment)は、センサないし伸び測定帯材14においてむろんゼロである。ロータ1が回転方向24へ更に回転すると、重さの力は、ロータ1が90°回転するに至るまで連続的に増加する。この際、ロータ1の回転運動24は、
図2の正面図においても図示されており、
図3a〜cに図示されているピッチ位置と取り違えられてはならないものである。該当のロータブレード4が水平に位置する場合、即ち3時位置とも称されるが、タワー12に対して横向き(水平)に位置する場合に、負荷は最大である。更なる90°の回転後、即ち
図2において1つのロータブレード4のために図示されているように該当のロータブレード4が言わば垂直(重力方向)に垂れ下がっている場合には、伸び測定帯材14により検知することのできる重さ負荷は、ゼロである。所謂9時位置への90°の回転方向24への更なる回転により、伸び測定帯材14により検知される、重さの力による負荷は、最大であるが、この際には3時位置に対して符号が逆転している。
【0040】
従って、ロータ1の完全な一回転により、伸び測定帯材14は、
図4に図示されているサイン形状の負荷曲線を記録することになる。12時位置に対応する0°と360°並びに6時位置に対応する180°において、測定手段、即ち伸び測定帯材14がその評価ユニットと共に正確に調整されているのであれば、負荷はゼロである。またロータ1のポジションは、図示の実施形態ではインクリメンタルセンサ20を用いて同時に検知され、このことは、例えば200の増分(インクリメント)に一回転を分配する(割り当てる)ことにより行なうことができる。
【0041】
調整(Abgleich)の可能性は、少なくとも1回の完全回転(360°の回転)にわたり負荷測定手段の測定値のシリーズを記録することにある。つまり、例えば一回転にわたり、負荷測定手段を用いた例えば200回の測定Rn(n=0〜199)を均等な間隔で記録することができる。200個の測定値Rnから、該当するロータブレードの既知の重さないし既知の重さ負荷Aについて、以下の関係を得ることができる:
【0042】
【数1】
【0043】
値Aは、
図4のグラフにおいて振幅として記入されている。従って係数k1は、既知の値A及び測定値Rnから決定することができる。一回転又は複数回の完全回転の測定値Rnの絶対値(変化量)形成(Betragsbildung)により、ゼロラインに対して相対的な、場合によって起こり得る変位量(Verschiebung)が検出される。第2の過程又は第2の評価ステップにおいて変位量Vを決定することができ、該変位量Vは、ゼロラインに対して相対的な、測定曲線の変位量を示している:
【0044】
【数2】
【0045】
係数k2は、比較測定により検出できるか、又は閉ループ制御系の閉ループ利得(Kreisverstaerkung des Regelsystems)のような既知の関係から決定できる。係数k1及びk2へ、記録された測定値の数も取り入れられる。
【0046】
従ってこの計算において、再び加算形成(Summenbildung)が行なわれるが、前の絶対値形成を伴うものではなく、従って変位量Vを決定することができる。この変位量Vは、
図4において対応する双方向矢印により示唆されている。
【0047】
つまり実際のスタート前の装置のゆっくりとした空転(アイドリング)により、負荷測定の感度とゼロ点を決定することができる。そのために測定値は、一回転ごとに記録される。これらの測定値は、ブレードの重さに対応する。ブレードの重さは既知であるので、センサの感度、即ち負荷測定手段の感度、特に伸び測定帯材の感度を校正することができる。ゼロ点は、それらの値の検出に基づいて決定することもできる。
【0048】
従って最適にも、調整は手動ではもはや不必要であり、長時間にわたる測定のドリフト(変動)は自動的に補償される。従って各装置スタート時の負荷測定の自動調整が可能である。特に周知の方法における測定のオフセットと感度のドリフト(変動)の問題が解消され、少なくとも対処され(adressiert)、減少される。
【0049】
従って、風から向きを変えられたロータブレードにより、即ちピッチ角度を強く変更する場合には、同時に伸び測定帯材14を、ロータブレード4の重さの力による負荷の測定へ適合させることができる。換言すると、重さの力が風力とは別の方向へ作用し、このことは、風からロータブレード4の方向を変える場合の負荷測定手段のポジションの変更により同時に考慮される。従って負荷測定手段のポジションは、その都度作用する力の方向へ適合される。例えばピッチング(フェザリング)時にロータブレードが70°だけで90°は変更されないためにこの方向適合が完全に行なわれない場合には、このことを、幾何学的な関係に基づき計算により考慮することができ、これはその都度設定されたピッチ角度が、通常は負荷測定手段の評価ユニットに提供されるか又は提供可能なためである。
【符号の説明】
【0050】
1 空力学的ロータ(エアロダイナミックロータ)
2 ハブ
4 ロータブレード
6 ブレードアダプタ
8 風の風向き
10 風力発電装置
12 風力発電装置用タワー
14 伸び測定帯材
14’ 伸び測定帯材
16 負荷方向
16’ 負荷方向
18 評価装置
20 風測定手段(インクリメンタルセンサ)
22 ナセル
24 回転方向
P0 0°のピッチポジション
P70 70°のピッチポジション
P90 90°のピッチポジション