特許第5913468号(P5913468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913468
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】心肺蘇生中のガス供給の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20160414BHJP
   A61H 31/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   A61M16/00 355A
   A61M16/00 311
   A61H31/00
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-151166(P2014-151166)
(22)【出願日】2014年7月24日
(62)【分割の表示】特願2010-545827(P2010-545827)の分割
【原出願日】2009年2月9日
(65)【公開番号】特開2014-221410(P2014-221410A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】0800284-2
(32)【優先日】2008年2月8日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/198,745
(32)【優先日】2008年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510212650
【氏名又は名称】イゲローサ ライフ サイエンス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100096024
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 三枝子
(72)【発明者】
【氏名】スティーン,スティグ
(72)【発明者】
【氏名】パシェヴィシウス,アウドリュス
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−085338(JP,A)
【文献】 特表2001−502579(JP,A)
【文献】 米国特許第5806512(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胸部の加圧ストロークと減圧ストロークとを含む心肺蘇生サイクル中に患者に換気ガスを提供する装置であって、
前記患者の気管内に配置する遠位端を有するガス供給チューブ(21)と;
前記ガス供給チューブの遠位端に前記ガスを送出するよう前記ガス供給チューブの近位端へ前記ガスを供給するガス源(35)と;
前記ガス供給チューブを介して前記ガスの供給を開始して終了するためのスイッチバルブ(36)と;
心肺蘇生サイクルに基づいて同期信号を発するデバイスを含む機械的心肺蘇生装置と;
前記同期信号を受信する制御デバイス(30)とを具え、当該デバイスは前記同期信号に基づいて前記スイッチバルブの動作を前記心肺蘇生サイクルに同期するよう動作し、その結果前記心肺蘇生サイクルと同じサイクル時間であるが心肺蘇生に関してオフセットして前記スイッチバルブが動作し、
1)前記ガスの供給が加圧ストロークの開始前に前記スイッチバルブによってオンになり;
2)加圧ストロークは、前記ガスの供給が依然としてオンである間に開始され;
3)前記ガスの供給が前記加圧ストローク中にオフになり;
4)減圧ストロークは、前記ガスの供給がオフである間に開始され;及び
このサイクルが繰り返され、
上記動作が上記順序で行われるように前記オフセットが設定されることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記ガスの供給圧力が30mmHg未満であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、前記ガスの供給が加圧ストロークの開始前の0.01〜0.2秒の間にオンになることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の装置において、前記ガスの供給が加圧ストロークの開始後にサイクル時間の10%〜60%でオフになり、前記ガスの供給が前記加圧ストロークの開始前に前記サイクル時間の75%〜98%でオンになることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記制御デバイス(30)が前記同期信号に基づいて前記ガスの供給をオンにするよう動作し、その結果前記ガスの供給が加圧ストロークの開始前のサイクル時間の25%〜2%の間でオンになることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記制御デバイス(30)が前記同期信号に基づいて前記ガスの供給をオンにするよう動作し、その結果前記ガスの供給が加圧ストロークの終了後のサイクル時間の25%〜48%の間でオンになることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記制御デバイス(30)が前記同期信号に基づいて前記ガスの供給をオフにするよう動作し、その結果前記ガスの供給が加圧ストロークの終了前の0.02〜0.2秒の間でオフになることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載の装置がさらに、前記患者に近接配置される圧力スイッチ板であって、前記胸部を加圧する際に前記圧力スイッチ板を起動するよう加圧ストローク中に加圧力に晒される圧力スイッチ板(74)を具えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1〜の何れか1項に記載の装置がさらに、前記患者に供給されるガスの圧力を測定し、前記ガス供給チューブの遠位端の近くに配置されたガス圧計(34)を具えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1〜の何れか1項に記載の装置がさらに、前記患者の血管系の血圧を測定する血圧計(71、72)を具えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の装置がさらに、前記肺から外気へ排出されるガス流量を測定するガス流量計(49)を具えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の装置がさらに、換気チューブを介して前記患者の肺から外気へ排出される前記ガスの流量を制御する狭窄バルブ(38)を具え、前記ガスの供給が作動されるときに前記狭窄バルブを閉じることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置において、前記ガスの供給が前記加圧ストロークの開始前の0.1秒でオンになり、前記ガスの供給が前記サイクル時間と50%のデューティサイクルで作動することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺蘇生法(CPR)、より具体的には機械的心肺蘇生法(mCPR)中に患者の肺に換気ガスを供給する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が心停止するとき、できるだけ早く、好ましくは8分以内に人命救助手段を開始する必要がある。約15分以上血流がなければ、脳やその他の器官は通常回復できない損傷を被るであろう。
【0003】
以前から知られているCPRは、手作業で患者の胸骨を加圧し、機械的に患者の肺を膨張させるものである。
【0004】
mCPRを行うための機械的装置は、LUCAS(登録商標)としてスウェーデンで知られており、SE521141およびWO2005/046558に記載されている。一般に、この装置は胸骨の方へカップ形状のプレートを加圧するピストンを具えており、加圧ストローク中に心臓や胸部を自身より下の位置へ加圧する。このプレートは、例えばカップ形状のプレートの内側の吸圧によって、または接着剤によって患者の体に取り付けられてもよい。このプレートが能動的に引き下げられるとき、胸骨は持ち上げられて患者の胸部を強制的に拡張する。プレートの動作ストロークは胸部の垂直距離の約20%でよい。ストローク周期は約100回/分でよい。この能動的ストロークは上下に約0.1秒かかってもよく、各動作間に約0.2秒の静止があってもよい。
【0005】
上述した装置でmCPRを行うときに、酸素は患者の気管に挿入された気管内チューブを介して供給されてもよい。気管内チューブは、約6〜10mmの直径を持つ中央チャネルと、チューブ壁に配置された幾つかの小さなチャネルを具えている。気管内チューブは、Boussignacタイプ、例えばRef6508.70下のVYGON(BP7−95440エクアン,フランス)によって販売されたBoussignac心肺蘇生システムに含まれる気管内チューブでもよい。そのような気管内チューブは、例えばUS5036847に開示されている。
【0006】
小さなチャネルは、異なる目的に用いることができる。本書では、これらを患者の気管支に隣接する領域に酸素ガスを供給するために用いてもよい。このように、十分な量の酸素が患者に供給され、十分な量の二酸化炭素が胸部加圧中に生じた体積変化によって、および換気中の「デッドスペース」を除去することによって除去される。
【0007】
EP0029352A1は、患者の胸腔を周期的に加圧するための往復運動可能な心臓加圧手段と、この加圧手段の少なくとも1サイクル、好ましくは3サイクルを含む間に10乃至60cmの水圧など害のない限界圧力まで患者の肺を膨張させる換気手段とを具える心肺蘇生器を開示している。蘇生器は(i)コンプレッサ手段の周期の収縮期中に患者の肺からの逆行した吐出流を防止する換気装置出力制御手段を含み、これにより例えば75乃至200cmの水圧など限界圧力を十分超えるレベルまで患者の胸腔を加圧することによって患者の肺の圧力上昇を提供し、(ii)例えばコンプレッサ手段の2サイクル中に、患者の肺を周期的に排出する。
【0008】
注意が必要なCPRの問題の1つは、大動脈と右心房との間の十分な差圧を得ることであり、その結果十分な冠動脈潅流圧が得られるが、そうでなければ心臓は永久的に損傷するであろう。別の問題は、血液を体から運び、胸部へ運ぶ肺静脈を低い圧力にすることであり、その結果胸部が十分補充される。
【0009】
蘇生法62(2004年)、頁219−227、著者Stig Steenらにより発表された「酸素の連続的気管吹送が機械的胸部加圧能動的減圧CPRの効果を改善する」と標題付けされた論文では、酸素(CIO)の連続的吹送法が間欠的強制換気法(IPPV)より優れていると主張している。この論文は、CIOがIPPVと比べて改善された冠動脈潅流圧をもたらすことを示している。
【0010】
しかしながら、さらに良好な性能のmCPRが要求されている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、単独または任意の組み合わせで1以上の上記の不備と欠点を軽減するか、緩和するか、または除去することを目的とする。
【0012】
一態様では、患者の胸部の加圧ストロークと減圧ストロークとを含む心肺蘇生サイクル中に患者に換気ガスを提供する方法であって、当該方法が、前記患者の気管内にガス供給チューブの遠位端を配置するステップと;前記ガス供給チューブの遠位端に前記ガスを送出するよう前記ガス供給チューブの近位端に前記ガスを供給するステップと;前記ガス供給チューブを介して前記ガスの供給を開始して終了するためのスイッチバルブを操作するステップと;心肺蘇生サイクルに基づいて同期信号を受信するステップと;を含み、前記同期信号に基づいて前記スイッチバルブの動作を前記心肺蘇生サイクルに同期させ、その結果前記スイッチバルブは前記心肺蘇生サイクルと同じサイクルであるが前記心肺蘇生サイクルに関してオフセットして動作することを特徴とする。
【0013】
一実施例では、当該方法が、前記同期信号に基づいて前記ガスの供給を開始し、その結果前記ガス供給が加圧ストロークの開始前のサイクル時間の25%乃至2%の間で開始するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
別の実施例では、当該方法が、前記同期信号に基づいて前記ガスの供給を終了し、その結果前記ガス供給が加圧ストロークの開始前のサイクル時間の2%乃至30%の間で終了するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
さらに別の実施例では、当該方法が、前記同期信号に基づいて前記ガスの供給を開始し、その結果前記ガス供給が加圧ストロークの終了後のサイクル時間の25%乃至48%の間で終了するステップを含むことを特徴とする。
【0016】
さらに別の実施例では、当該方法が、前記同期信号に基づいて前記ガスの供給を終了し、その結果前記ガス供給が加圧ストロークの終了後のサイクル時間の52%乃至80%の間で終了するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
前記同期信号は、機械的心肺蘇生装置によって発せられた信号と;前記患者に近接配置される圧力スイッチ板であって、前記胸部を加圧する際に前記圧力スイッチ板を起動するよう加圧ストローク中に加圧力に晒される圧力スイッチ板と;例えば前記ガス供給チューブの遠位端近傍の、前記患者に供給されるガス圧を測定するガス圧計と;前記血管系の血圧を測定する血圧計と;前記肺から外気へ排出されるガス流量を測定するガス流量計と、のうち少なくとも1つによって提供されることを特徴とする。
【0018】
バルブは換気チューブを介して前記患者の肺から外気へ排出される前記ガスの流量を制御するよう操作され、前記ガスの供給が作動されるときに前記バルブを閉じることを特徴とする。
【0019】
前記ガスの供給は1サイクル当たり所定量のガス、例えば約50mlを提供するよう調整されてもよい。
【0020】
さらに実施例では、当該方法がさらに、前記気管内のガス圧に相当するガス圧を同期信号として受信するステップと、前記加圧ストロークの開始をピーク最大ガス圧前のサイクル時間の2%乃至15%に決定するステップか、または前記加圧ストロークの終了をピーク最小ガス圧前のサイクル時間の2%乃至15%に決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
別の態様では、前記患者の胸部の加圧ストロークと減圧ストロークとを含む心肺蘇生サイクル中に患者に換気ガスを提供するための装置であって、当該装置が、前記患者の気管内に配置される遠位端を有するガス供給チューブと;前記ガス供給チューブの遠位端に前記ガスを送出するよう前記ガス供給チューブの近位端へ前記ガスを供給するガス源と;前記ガス供給チューブを介して前記ガスの供給を開始して終了するためのスイッチバルブと;心肺蘇生サイクルに基づいて同期信号を受信するための制御デバイスと;を具え、前記制御デバイスは前記同期信号に基づいて前記スイッチバルブの動作を前記心肺蘇生サイクルに同期するよう操作され、前記スイッチバルブは前記心肺蘇生サイクルと同じサイクルで動作するが前記心肺蘇生サイクルに関してオフセットして動作することを特徴とする。
【0022】
別の実施例では、前記装置がさらに、機械的心肺蘇生装置によって信号を発するためのデバイスと;前記患者に近接配置される圧力スイッチ板であって、前記胸部を加圧する際に前記圧力スイッチ板を起動するよう加圧ストローク中に加圧力に晒される圧力スイッチ板と;例えば前記ガス供給チューブの遠位端近傍の、前記患者に供給されるガス圧を測定するガス圧計と;前記患者の血管系の血圧を測定する血圧計と;前記肺から外気へ排出されるガス流量を測定するガス流量計と、のうち少なくとも1つを具えることを特徴とする。換気チューブを介して前記患者の肺から外気へ排出される前記ガスの流量を制御するバルブをさらに具え、前記ガスの供給が作動されるときに前記バルブを閉じることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の更なる目的、特徴および利点は、図面に関して以下の本発明の幾つかの実施例の記載から明らかになるであろう。
【0024】
図1図1は、水平断面の心臓と鉛直断面の肺を示す患者の胸部の概略断面図である。
図2図2は、mCPR装置と共に提供される図1の患者の概略縦断面図である。
図3図3は、気管内チューブの配置を示す図2の患者の拡大概略縦断面図である。
図4図4は、ガス供給源に接続された図3の気管内チューブの概略図である。
図5図5は、ガス供給源へ気管内チューブを接続する代替実施例の概略図である。
図6図6は、mCPR装置の斜視図である。
図7図7は、患者に適用された図6のmCPR装置の斜視図である。
図8図8は、周囲の外気へ気管内チューブを代替接続する概略図である。
図9図9は、mCPR装置の動作に関するガス供給タイミングを示す図である。
図10図10は、本発明による酸素の間欠供給を伴うmCPRを示す図である。
図11図11は、先行技術CIOシステムによる酸素の連続供給を伴うmCPRを示す図である。
図12図12は、代替実施例のタイミングを示す図9の類似図である。
図13図13は、図5の実施例のガス供給を示す図である。
図14図14は、気管内チューブのその他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の幾つかの実施例を図面を参照して記載する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施でき、かつ最良の形態を開示するために例示的な目的で記載される。しかしながら、このような実施例は本発明を限定するものではない。さらに、異なる特徴のその他の組み合わせが本発明の範囲内で可能である。
【0026】
図1は、水平断面の心臓1と垂直断面の2つの肺2、3とを含む患者の胸部の断面図である。心臓1は、胸骨4と脊椎5との間に配置され、これは概略的に示される。
【0027】
心臓1は、大静脈12に接続された右心房11と、肺動脈14に接続された右心室13を具える。血液は、肺静脈16を介して肺から左心房15へ戻り、左心室17によって大動脈18へ送り出される。冠動脈19は、心臓に血液を供給し、大動脈18から右心房11へ延在する。
【0028】
胸部がmCPR装置20によって加圧されるとき、図2を参照するように、実質的に同じ圧力が右心房と左心房および右心室と左心室に存在する。このように、大動脈と右心房との間の実質的な圧力差も、冠動脈19の血流も存在しない。
【0029】
胸部の加圧が緩和されるとき、肋骨は平常位置へ胸骨を移動させようとするであろう。この動作は、上述したようにmCPR装置によってサポートされてもよいし、または増強されてもよい。胸部中の血圧は減少し、これにより、右心房中の圧力が同時に減少する。大動脈弁がもう閉まっているので、冠血管19上の圧力差が生じ、酸素で処理された血液が心臓に供給される。
【0030】
加圧フェーズ中に、幾らかの空気が気管支と気管を介して肺の外に吐出される。減圧フェーズ中に、幾らかの空気が吸入される。しかしながら、加圧と減圧の頻度は毎分約100ストロークであるので、少量の空気のみが気管支と気管のデッドスペースを越えずに吸入され、吐出されるであろう。したがって、新しいあるいは新鮮な空気が肺に入らず、気管支と気管中にある同じ空気が前後に移動させられるに過ぎない。したがって、先行技術では、強制換気が用いられている。
【0031】
デッドスペースを回避し、かつ肺に十分な量の酸素と二酸化炭素の十分な除去を提供するために、図2図3で示されるように、酸素がガス供給チューブの遠位端22に供給されてもよい。このように、デッドスペースを減少することができ、mCPR装置から分離した強制換気を必要とせずに、患者の十分なガス平衡を達成することができる。ガス供給チューブは気管内チューブ21でもよく、これは近位端25で外気に開放されており、以下で十分詳述されるように流入抵抗を生成してもよい。
【0032】
気管内チューブ21は、図3に示されるような幾つかのチャネルを具えてもよい。第1の大きな中央チャネル23は、周囲の外気に肺を連結する。さらに、幾つかの、例えば4つなどの、より小さなチャネル24があり、このうち1つが図3に示される。これらのチャネルは、薬剤供給などの異なる目的に用いられてもよい。本実施例では、これらのチャネルのうち1つまたは幾つかが酸素などのガスの供給に用いられる。これにより、ガス供給は気管内チューブ21の遠位端22で行なわれる。これにより、デッドスペースが減少する。
【0033】
図3に示されるように、気管内チューブ21はまた、小さなチャネル27に連結された拡張可能なバルーン26を具え、その結果バルーンが膨張して気管支32および33のすぐ上の気管31内に気管内チューブ21を固定することができる。
【0034】
さらに図3に示されるように、気管内チューブの口の内側29は角を取られ、その結果ガスチャンネル24が気管内チューブの遠位端22の内側へ開口していてもよい。
【0035】
図4に示される別のチャネル28は、図4に示されるように圧力計34に接続してもよく、その結果気管内チューブの遠位端22の圧力を測定することができる。
【0036】
図4に示されるように、ガス源35は気管内チューブ21に接続される。ガスはスイッチバルブ36を介してガス源35から供給され、スイッチバルブ36はコンピュータ30またはシーケンサなどの制御装置の制御下でガスの供給を開始および停止することができ、これは電気的に空気圧または油圧で操作することができる。次にガスは流量弁37を通り、これは実質的に絞り穴または小さな開口部であり、制御された割合でガスを通す。以下でより詳細に記載されるように、ガスの流速は例えば毎分30リットルに調節される。流量弁37は、図4に示されるようにガス供給チャネル24の近位端25に接続される。
【0037】
流速は開口部のサイズと開口部を越える駆動圧に関係するので、流量弁は流量計測装置を含むことによって、または単に流量弁37の開口部の開口サイズのマーキングを含むことによって、流量計73を形成してもよいし、または具えてもよい。
【0038】
図6および図7は、先行技術による機械的心肺蘇生装置を開示している。図6に示されるように、装置41はカップ状部材43を具えており、これは油圧、空気圧もしくは電気的手段またはこれらの組み合わせによる駆動機構42によって操作される。駆動機構42は、旋回継手47を介して2つのアーム部材44および45に回転自在に接続される。各アーム部材の他端は、旋回継手48を介してブリッジ部材46に解除可能かつ回転自在に接続される。装置41は図7に示されるように患者に取り付けられるように意図されており、患者は仰臥位で示されている。装置41は患者の胸部の側面に沿って延在するアーム部材44および45で取り付けられており、ブリッジ部材46は患者の背面を横切って配置され、これは図7では見えない。カップ状部材43は、胸骨上に配置される。駆動機構42が操作されるときに、カップ状部材43は患者の胸部を加圧する。カップ状部材は胸部にカップ状部材43を接続して、真空圧源に晒され、その結果胸骨が非加圧ストローク中に能動的に上方へ移動させられる。装置41はストラップ51、52を具えていてもよく、その結果装置が尾側方向に移動するのを防止する。
【0039】
しかしながら、一般に、胸部容積を十分に変化させることができる人間の力または活性化を含む任意の装置を本発明の実施例と共に用いることができる。活性化とは、CPRを実行するようにされた任意の方法、例えば胸部筋肉の刺激などによって胸部容積を変化させることを意味する。
【0040】
同期式の高圧換気と陰性換気は文献US4397306に開示されている。しかしながら、陰圧換気は患者にとって危険となる可能性があり、回避すべきである。
【0041】
上記論文に記載されているように、酸素の連続供給は冠動脈潅流を増加させるため先行技術で好まれている。
【0042】
発明者らは、酸素供給を断続的に提供するが加圧ストロークと位相をずらすことによって冠動脈潅流と平均大動脈圧および胸部再充満の双方を改善することができることを偶然に発見した。この供給は加圧ストロークの前に開始してもよい。さらに、この供給は減圧ストロークの前に終了してもよい。
【0043】
本発明の実施例の動作は以下のとおりであり、図9図10および図11を参照されたい。
【0044】
サイクルは図9に示される実施例の持続時間で各々約0.1秒の6つのフェーズに分けられてもよく、図9はガス供給対時間および胸部加圧対時間の図を示している。
【0045】
ガスの供給はフェーズ1の開始前に開始され、加圧ストロークはフェーズ1中に開始される。フェーズ2では、胸腔が加圧され、ガスはまだ供給中である。ガスの供給はフェーズ3で終了し、減圧ストロークがフェーズ4中に開始される。フェーズ5では、胸腔が減圧され、ガスは供給されない。フェーズ6では、ガス供給が開始され、新しいサイクルが続く。
【0046】
図10は豚の実験的構成による体内の異なる位置の圧力を示す図であり、すなわち、第1曲線Iは右心房11内の圧力を示し、これは減圧フェーズ中の胸部の体液圧または血圧に近く、第2曲線IIは大動脈18内の圧力を示し、第3曲線IIIは気管内のガス圧、すなわち実質的に圧力計34の測定値を示す。
【0047】
サイクルは、図10に示されるようにフェーズ「1」の初めに開始する。
−1)フェーズはガス供給の開始によって始まり、これは加圧ストロークの開始の約0.1秒前に行う。気管圧(III)と胸部血圧(I)が僅かに増加し、肺内のガス量を増加させるためにガスが肺内に流れる。
【0048】
1)フェーズ1では、加圧ストロークが開始される。この加圧ストロークは相対的に速く、約0.1秒かかる。このフェーズ中に、曲線IとIIによって示されるように、大動脈内の血圧と右心房内の血圧は実質的に約100mmHgのピークと平行に増加する。気管のガス圧も曲線IIIによって示されるように増加し、気管内チューブの中央チャネル23を介してガスの排出をもたらし、これは抵抗を生成する。ガスは依然として気管内チューブのチャネル24を介して供給される。このフェーズでは、曲線Iによる右心房の血圧が曲線IIによる大動脈圧に近いか、または大動脈圧よりさらに大きい。曲線IIIによる気管内のガス圧は、ほぼ20mmHgである。
【0049】
2)フェーズ2は約0.1秒であり、「胸腔加圧−ガスオン」と呼ばれ、ガスは気管内チューブの中央チャネル23を通って外に流れるので肺と大動脈の圧力は連続的に減少する。チャネル24を通り、次いで中央チャネル23を通るガスの流れは気管内チューブ上の圧力損失と恐らくベンチュリ効果を生成するので、肺から気管内チューブを通るガスの流出はチャネル24を通る付随的なガスの流れによって部分的に妨げられ、気管内チューブの中央チャネル23を通って外へ流れる。このように、ガスの流れがこのフェーズで依然として供給中であるという事実によってガスの吐出が部分的に妨げられる。第2フェーズの終わりまでに、大動脈圧は約50mmHgで一定になる。
【0050】
3)フェーズ3では、ガスの供給が停止される。これにより、肺内の圧力が緩和され、ガスが気管内チューブの中央チャネル23の外へ流れて肺内のガス量を減少させる。肺内のガス圧がほぼ0、すなわち大気圧と等しくなるまで減少するとき、気管内チューブを通って外へ流れるガスは指数関数的に減少する。
【0051】
4)フェーズ4では、減圧ストロークが開始され、mCPR装置が胸骨をその平常位置または僅かにその上に移動させるのに約0.1秒かかる。空気は気管内チューブの中央チャネル23を介して肺内を通り、これは気管圧測定値(III)の陰性ガス圧によって示される。同時に、大動脈血圧および胸部血圧はしばらくの間0未満まで降下する。大動脈弁は逆流を防止するよう閉じるので、大動脈圧が約30mmHgの大動脈圧に跳ね返る一方、胸部血圧は僅か0mmHg超に維持され、これは右心房に勝る圧力である。これにより、図10の矢印Yによって示されるように、約30mmHgの冠動脈潅流圧が生じ、これは約0.2秒間存在する。
【0052】
5)フェーズ5は、約0.1秒であり、「胸腔減圧、ガスオフ」と呼ばれ、胸部内の血圧は0に近い。肺内のガス圧は、主にフェーズ4中にmCPR装置によって胸骨を上昇させるために陰性でないか、または短時間僅かに陰性であるに過ぎない。胸部血圧が0近い間、胸部血管は大静脈からの静脈血で補充されるであろう。全身静脈血圧は数mmHgであり、血液は大静脈から右心房と右心室を通って胸大動脈へ流れ、そこから胸部血管に流れて、胸部を血液で充満して酸化させ、肺の肺胞内で二酸化炭素成分を解放するであろう。
【0053】
6)フェーズ6では、ガス供給が開始されて、加圧が開始する前に所定量のガスを肺に提供する。
【0054】
次いで、新しいサイクルが開始される。良好な性能を達成するために、考慮されるべき幾つかの条件が単独または任意の組み合わせで存在する。
【0055】
A)心臓の冠状血管に酸化された血液を供給するために、冠動脈潅流圧Yはできるだけ長い時間できるだけ大きいことが重要である。
【0056】
B)胸部を血液で再充満するために、胸部内の血圧はフェーズ4、5および6で低いことが重要であり、これにより大静脈を介して体から返される血液は次いで心臓と胸部内へ流れることができる。曲線Iによって示されるように、胸部血圧は0に近い。
【0057】
C)体と臓器に酸化された血液を供給するために、大動脈の表面は大動脈を介して体に流れる血流に比例するので、ピーク大動脈圧が大きく、大動脈表面圧の曲線IIが大きいことが重要である。
【0058】
D)これは肺出血と浮腫をもたらすかもしれないので、気管内のピークガス圧は約30mmHgを超えるべきではない。気管内の最低圧力は実質的な時間で0以下に減少させるべきではない。
【0059】
図11は、酸素の連続的吹送法(CIO)を用いる先行技術システムの図10に類似する曲線を示している。その他全ての条件は同じである。しかしながら、曲線から分かるように、ピーク大動脈圧は約75mmHg(110mmHgと比べ)であり、冠動脈潅流圧は僅か約20mmHg(30mmHgと比べ)である。第5フェーズの大動脈圧は約22mmHg(30mmHgと比べ)に過ぎない。第2フェーズのピーク気管ガス圧は約30mmHg(20mmHgと比べ)である。
【0060】
このように、図11に示される先行技術の実施例と比べ、図10に示される実施例はより優れており、より安全である。
【0061】
ガスの供給は酸素でもよい。しかしながら、その他の実施例では、酸素の供給は、通常の空気または酸素で増強された空気など任意の適切な混合ガスの供給で置換されてもよい。
【0062】
ガスは、治療薬あるいは薬物を含んでもよい。作用薬は、ガス中に霧状にされてもよい。このような作用薬は、硫酸水素塩、エピネフリン、アドレナリン、ノルエピネフリン、ノルアドレナリン、塩酸アミオダロン、コルダロン、リドカイン、ケタミン、一酸化二窒素等を含んでもよい。このような作用薬はまた、別個のチャネルを介して送られてもよい。
【0063】
機械的心肺蘇生mCPRは能動的に減圧することなく実行することができ、その結果肋骨と胸部の弾力性によって通常の減圧が行われる。また用手圧迫を用いることもできる。
【0064】
異なるフェーズの長さを上述したものと異ならせることができる。フェーズ6は、肺がガスでどれくらい効率的に充満されるかに依って0.01乃至0.2秒とすることができる。フェーズ1の重要性は肺を十分な量のガスで充満すべきということであり、その結果ガスが加圧ストローク中に心臓と胸部へ十分なカウンタ圧力を及ぼす。ガス供給は、胸部を再充満するのに十分な時間を与えるためにできるだけ遅くまで行われるべきである。
【0065】
別の配慮は、十分な量の酸素を供給すべきであるということであり、その結果肺の血液を十分に酸化することができる。毎分約15リットルの酸素の平均供給が酸化目的として十分であることが分かった。
【0066】
酸素は半サイクル中に供給されるので、この供給は0.1秒当たり50mlに相当する毎分30リットルとなるであろう。空気は実質的にフェーズ6でのみ肺に入るので、肺に1サイクル当たり約50mlが供給されるであろう。毎分約100サイクルであり、かつ正常呼吸速度が毎分約10回であるので、これは1つの正常呼吸当たり約0.5リットルの吸入に相当する。もし酸素のみが供給される場合、最大25mlのデッドスペースが気管支に勝るという事実を考慮しても、これは肺内の血液を酸化するのに十分な量である。
【0067】
ガスの供給は肺内にガスを導入するであろう、これは以下のフェーズ1およびフェーズ2中にピーク大動脈圧(II)を増大すると考えられる。したがって、フェーズ6中に大量のガスを導入することが好適である。しかしながら、導入されるガスの量は以下と比べて、あまり多くすべきではない。フェーズ6が約0.1秒の持続時間を有しており、ガス供給が毎分約30リットルである場合に、良好なバランスが達成されうることが分かった。気管内チューブが近位端25で外気に開放されているので、供給されるガスの一部は外気に出て行くであろう。しかしながら、肺の圧力が十分に低い場合、供給される相当量のガスが肺へ運ばれるであろう。さらに、ガスは小断面積を有するチャネル24を介して運ばれ、これは供給されるガスが肺方向で相当な流速を有することを意味する。
【0068】
ガスはまた、フェーズ1とフェーズ2中に供給されるので、上述されるように、気管支中のガスはフェーズ1とフェーズ2中に周囲の外気に出て行くのを防止されるであろう。さらに、気管内チューブは酸素であるガスで充満されるであろう。したがって、気管内チューブはデッドスペースに寄与しないが、気管内チューブの遠位端がデッドスペースでなく外気に直接連結されると考えられる。
【0069】
酸素が肺に供給され、二酸化炭素が肺から除去される2つの機構が実質的に存在する。
【0070】
肺内へのガスの流れと肺外へのガスの流れは、一方向に(外へ)二酸化炭素を循環させ、他方向に(内へ)酸素を循環させるであろう。
【0071】
肺内の全ての二酸化炭素もあらゆる濃度差によって肺から気管支および気管内チューブへ拡散するであろう。もし酸素のみが気管内チューブの遠位端に存在する場合、二酸化炭素の大きな濃度差が存在し、全くガスの流れがなくても実質的に肺外へ二酸化炭素の運搬をもたらす。同様に、濃度差が存在すれば酸素は拡散によって肺に運ばれるであろう。
【0072】
デッドスペースを減少するために、気管内チューブは気管分岐部または自身より1乃至3cm上などの気管支の結合部の近くに配置されるべきである。別の実施例では、気管内チューブは気管支内へ部分的に延在するチューブ部分を含む一方、気管カテーテルを固定するバルーンが気管に配置されてもよい。
【0073】
図14に示されるように、気管内チューブ81はガス供給用の2つのチャネル84および85が気管支82および83へ開口して配置される。各チャネルの開口部から排出されたガスは、矢印86および87によって示されるように対応する気管支の方向へ実質的な流速を有するであろう。したがって、フェーズ6中に肺をガスで充満するために、ガスは気管支と肺に容易に入るであろう。
【0074】
気管内チューブが上記遠位端22とバルーン26をどのように延在させるかは重要ではない。したがって、気管内チューブは口を通って、鼻を通って導入されて声帯を通ってもよいし、または咽頭に配置される穴部を通って導入されてもよい。
【0075】
別の実施例では、気管内チューブは中央チャネルとバルーンを拡張するチャネルのみを有する従来の気管内チューブでもよい。この場合、ガス(酸素)は中央チャネルの内側に配置される小さな別個のガスチューブによって気管内チューブの遠位端に供給されるかもしれない。ガスチューブは気管内チューブの内側で気管内チューブの遠位端の直前で開口すべきである。
【0076】
さらに別の実施例では、気管内チューブが存在しない。その代わり、ガス供給チューブはできる限り奥へ気管内に挿入され、図2で示されるように、ガス供給チューブの遠位端が気管と気管支との間の結合部のすぐ上の位置で開口し、チューブ21が可能ならば圧力計用の第2内腔を持つ、単一の内腔チューブである。ガスは、ガス吸入用のガス供給チューブの近位端に供給され、気管はガスの吐出に用いられる。ガス供給チューブは、正常者の気管の長さに対応する位置にマーキングを具えてもよい。ガス供給チューブがマーキングまで挿入されたとき、ユーザは遠位端が要求どおり気管支に接近して配置されていることを知る。実質的に吸入は気管を介して行われないので、気管のデッドボリュームが除去される。ガス供給チューブは、さらにガスの高速吸入を促進するために、図14に示されるように、僅かに斜めに向けられた2つのノズルで終端してもよい。
【0077】
胸部内の圧力が高く、「ガスがオン」のとき、幾らかのガスがフェーズ1のとフェーズ2中に肺から除去される。フェーズ4の減圧の前に十分な量のガスが除去されることが重要であり、その結果胸部が自然にまたは能動的減圧によって跳ね返る前に肺内の圧力がゼロへ減少するであろう。フェーズ4およびフェーズ5と、続くフェーズ6の殆どで肺内の圧力ゼロは、図10の矢印Yによって示されるように、冠血管に高い潅流圧を保証するであろう。さらに、全身性静脈圧は10mmHg未満など数mmHgに過ぎないので、胸部血圧がほぼ0である場合のみ胸部が静脈血で補充されるであろう。したがって、できるだけ低い胸部圧力を維持することが重要であり、これはフェーズ1中に供給することができるガス量の制限をもたらす。非常に多くのガスが供給される場合、このように供給されるガスをフェーズ1、フェーズ2およびフェーズ3で十分な程度まで除去することができなければ低い圧力が高くなるであろう。
【0078】
大量のガスが望まれる場合、フェーズ6は最大約0.2秒など長くすることができる。あるいはまたはさらに、ガス供給速度を増加することができる。ガスが加圧ストローク前に肺へ入るにつれ、ますます加圧ストローク中に大動脈圧が高くなるであろう。高い大動脈圧は、大きな臓器と脳に循環する血液などの心臓の外側の血液循環システムによって平均化されるであろう。図10に示されるように、最高圧力は約100mmHgでもよい。一方、非常に多くのガスが後続のフェーズ中に吐出されず、肺を膨張し、静脈還流を妨げる場合がある。さらなる代替実施例については、以下を参照されたい。フェーズ6でのガスの供給は、40ml乃至60mlの間、例えば50mlなど30ml乃至70mlの間としてもよい。またガスの供給はサイクル時間に依存しており、長いサイクル時間が十分な時間を与えてフェーズ1でより多くのガスを供給してもよい。
【0079】
フェーズ1は約0.1秒であり、この条件と同じくらい速いべきである。加圧速度が非常に遅い場合、最高圧力が低いであろう。しかしながら、フェーズ1は胸部と内部臓器が損傷を受けるほど短くするべきではない。加圧フェーズのストロークは前後方向の胸部直径の約20%でよく、その結果胸部が実質的に圧迫される。そのストロークは胸部と心臓が著しく圧迫されるほど大きいべきではないが、胸部内の血液が実質的に心臓の外の大動脈内へ運ばれる程度に大きいべきである。
【0080】
フェーズ2または「胸腔加圧、ガスオン」は、0.1乃至0.3秒間とすることができる。このフェーズは心臓と胸部の外へ血液を移動させるためにある。
【0081】
血液が大動脈へ出て行くには、心臓のポンプ機構でもたらす心臓の物理的な圧縮と、胸部のポンプ機構でもたらす胸部内に増加した流体圧との2つの要因がある。
【0082】
双方の機構が有効となるためには、さらに以下で論じられるように、胸部が減圧フェーズ中に血液で補充されることが必要である。
【0083】
豚などの幾つかの哺乳類は心臓のポンプ機構を有していないが、胸部のポンプ機構のみを有していることに注意されたい。人間では双方の機構が用いられると考えられている。
【0084】
フェーズ3は肺からガスを吐出するためにある。ガスの供給を止めることによって、気管内のガス圧が減少され、肺内のガスを吐出することができ、これは良好な静脈還流と次のフェーズ中に胸部の充満を保証する。フェーズ3は0.02乃至0.2秒であり、肺内のガスの量を次のフェーズ前に減少させる。約50mlなど、フェーズ6で吐出されるのと同じ量のガスがフェーズ3で吸入されるべきである。
【0085】
フェーズ4はできるだけ短くすべきである。能動的減圧を用いることによって、肺内の圧力の減少が大きくなる。しかしながら、肺内の圧力は実質的に長い間0未満となってはならない。胸部内の圧力がゼロへ低下するとき、左心室中の圧力も低下し、血液は大動脈弁を介して左心室に流れるようになるであろう。しかしながら、大動脈弁が閉じて、このような流れを防止するであろう。大静脈からの静脈血は左心房、左心室に入り始め、酸化のため胸部および肺内へ進む。
【0086】
フェーズ4およびフェーズ5では、左心房および右心房は低圧になり、大静脈を介して循環系からの血液および肺静脈からの血液で充満されるであろう。また血液は心臓の両側で心房から心室へ流れるであろう。
【0087】
フェーズ5および後続のフェーズ6では、大動脈と右心房の間で相当な差圧が存在し、これは冠動脈の潅流をもたらし、心臓に酸化された血液を供給する。
【0088】
フェーズ5または「胸腔減圧、ガスオフ」は約0.05秒乃至約0.2秒とすることができる。
【0089】
要約すると、加圧ストローク前にガス供給を開始することによって、大動脈中の最高圧力が増大されるであろう。
【0090】
その上、心臓から大動脈への血流量が大きくなる。さらに、減圧ストローク前にガスの供給を停止することによって、肺内のガス量が低下し、胸部/肺内の低圧と大静脈を介する胸部の迅速な再充満をもたらす。さらに、冠動脈潅流圧が大きくなる。
【0091】
胸部/肺の圧力が僅かに上昇するので、ガスが肺に供給されるとき、胸部の再充満はフェーズ6で僅かに減少する。静脈還流圧は低いので、胸部/肺の圧力の増加は再充満に大きな影響を及ぼすであろう。したがって、ガスの開始をできるだけ長く遅らせるべきであり、できる限り高速で行うべきであり、図5図13を参照されたい。
【0092】
これにより、生理的な安全性を維持しながらより有効な心肺蘇生が得られ、これは心停止を患う患者に対して良好な予後をもたらすであろう。
【0093】
上述したガス供給の装置および方法が上述したLUCASタイプの機械的心肺蘇生装置と共に用いられる場合、装置は調整することができる5つのパラメータ、すなわち圧迫深さ、加圧力と減圧力、および加圧と減圧の時間を実質的に有している。
【0094】
圧迫深さは胸部の垂直距離の約20%であるべきであるが、約10%乃至約30%まで変化させることができる。もし胸部が適切に再充満されるならば、より大きな圧迫深さがより大きな大動脈流をもたらすであろう。
【0095】
加圧力はフェーズ1の開始を決定し、肋骨または内部臓器の損傷を引き起こさずにできる限り速いストロークを達成するためにできるだけ大きくすべきである。
【0096】
減圧力はフェーズ4の開始を決定し、損傷を引き起こさずにできる限り速いストロークを達成するためにできるだけ大きくすべきである。
【0097】
加圧時間はフェーズ1、2および3の結合された時間である。
減圧時間はフェーズ4、5および6の結合された時間である。
加圧と減圧の時間は等しく、各々約0.3秒とし、毎分100サイクルのサイクル時間をもたらしてもよい。例えば、フェーズ6で実質的に吸入されるガスの量がフェーズ3で実質的に吐出されるガスの量より大きくなる傾向がある場合、減圧時間を延長して加圧時間を短縮してもよいし、その逆でもよい。
【0098】
さらに、サイクル時間は例えば毎分60乃至120サイクルに調整されてもよい。
【0099】
このように、mCPR装置およびガス供給装置のパラメータは、優れた最終結果を提供するように異なる方法で組み合わせられてもよい。
【0100】
機械的CPR装置を用いるとき、本発明によるタイミングはmCPR装置から受信された信号に基づいて決定することができる。
【0101】
図8には、気管内チューブ22の近位端25のその他の実施例が示されている。気管内チューブの目的は、フェーズ1と2で吐出を減少し、フェーズ4と5で吸入を減少する狭窄を生成することである。また狭窄は主にフェーズ6で吸入、主にフェーズ3で吐出の均衡を保つべきであり、その結果フェーズ3の終わりとフェーズ4および5の肺圧が十分に低く、胸部の完全な補充を可能とする均衡が達成される。
【0102】
さらに、ガスの供給がオンであるという事実によってフェーズ1および2での吐出が減少される。このように、供給されたガスは肺からのガスと共に気管内チューブを通って出て行かなければならない。
【0103】
吸入量は、フェーズ6の長さと供給されるガスの流速とによって主に制御される。吐出量は、狭窄とフェーズ3の継続時間によって実質的に制御される。
【0104】
適性な均衡を達成するために、気管内チューブの出口開口には調整可能な狭窄部38が提供されてもよく、これは所望の特性が得られるように制御される。この制御はコンピュータ30によって行われれてもよく、これは入力パラメータとして、35、37に提供されるガスの流速と、流量計49で測定される気管内チューブを出るガスの流速を受信する。さらに、患者が適切に人工換気を施されるのを確認するために、二酸化炭素計39を配置して二酸化炭素の流出量を測定してもよい。このような二酸化炭素計39は二酸化炭素分圧計でもよく、この出力信号は二酸化炭素の合計量を示すようまとめられる。この実施例では、狭窄部38は相対的に不変値に調整され、これは全サイクルで実質的に一定である。狭窄部38をより小さくすることによって、フェーズ6で供給されるガスがより大きくなり、フェーズ1、2および3で除去されるガスがより小さくなる。フェーズ6と3のタイミングを実質的に調節することによって、ガス平衡も影響を受ける。このように、非加圧フェーズで胸部/肺の圧力を低下させるためにフェーズ3をより長くして胸部を血液で再充満するのを促進してもよい。フェーズ3はフェーズ2を消費して長くしてもよく(フェーズ2の短縮)、その結果サイクル時間の合計が補正されない。
【0105】
その他の実施例では、狭窄部38はmCPRと同期して操作される。操作サイクルは図12に示される通りでよい。フェーズ1の前にガスが供給されて狭窄部38が閉じられ、その結果ガスが全て肺に入る。フェーズ1と2では、ガス供給が停止されて狭窄部がまだ閉じている。これにより、胸部は周囲の外気から分離され、ガス量が加圧中に高い大動脈のピーク圧をもたらすであろう。フェーズ3では、この狭窄部が開かれて圧力が低下するまでガスが吐出される。フェーズ4と5では、狭窄部が閉じられて肺内の低圧を維持するために空気が肺に吸入されるのを妨げる。
【0106】
動作は以下のように制御される。ガス供給速度およびフェーズ6の時間が制御され、その結果最大気管圧はできるだけ高いが約25mmHgなど、依然として30mmHg未満である。これは加圧フェーズで高血圧を保証するであろう。フェーズ3でガスの吐出が制御され、その結果5mmHg未満、例えば2mmHg未満などのゼロに近い低圧が右心房で得られる。空気の吐出は、気管内チューブでできる限り大きい面積を有することによって、かつフェーズ3の継続時間を延長することによって増大される。フェーズ3は、大動脈弁が閉じようとすると同時または僅かに早く開始される。したがって、フェーズ2を短縮し、フェーズ3を延長してもよい。実施例では、フェーズ2は実質的にゼロでよく、その結果フェーズ3はフェーズ1の後ほぼ直ぐに後続する。
【0107】
狭窄部38が閉まっているときガスが供給されるので、その他の実施例ではガスが中央チャネル23に直接供給されてもよい。したがって、別個のガス供給チャネル24が不要であり、圧力測定チャネル28とバルーンとバルーンチャネル27のみが必要とされる。しかしながら、この場合、中央チャネル23の容量が気管支の「デッドスペース」に追加される。中央チャネル23が狭い場合、これは可能となるであろう。
【0108】
狭窄部38が開かれたときガスを供給することによってガスの吐出が増大されるであろう。この場合、ガスはチューブの近位端へ向けられる開口部を通って送出されるべきである。これにより、ガスがチューブを通って外に流れ、気管支内のガスの吸引を生成するであろう。
【0109】
図9図12では、ガス供給が矩形波として示されている。しかしながら、ガス供給は正弦波または多かれ少なかれ傾斜辺を持つ任意の形状とすることができる。少なくともフェーズ6では、ガスの正弦波の供給を有する実施例が図5図13に示される。ガス源35は定量弁37に接続され、これは毎分15リットルなど、所望の平均ガス流量に調整される。流量弁37は図9の図に従ってガスの供給を開閉するためのスイッチバルブ36に接続される。流量弁37とスイッチバルブ36との間に、膨張し収縮するゴムバルーンの性質の緩衝装置40が配置され、膨張したとき所定の圧力を生じる。フェーズ3、4および5では、スイッチバルブ36が閉まっているときに、圧力が緩衝装置40に生成される。スイッチバルブ36がフェーズ6の開始で開かれるとき、高い圧力が緩衝装置40に広まり、フェーズ6でガスの速い供給が得られる。次いで、フェーズ1と2では、流量弁37によって調整された流速に流速が減少する。ガス供給速度は図13に示される。流速の正確な分布は、気管内チューブ内のガス供給チャネルの断面積と組み合わせた、緩衝装置40の弾力性と緩衝装置に構築される圧力の調整によって制御することができる。
【0110】
サイクルのタイミングは、気管内チューブの遠位端22でガス圧を測定する圧力計34の測定に依存してコンピュータ30によって制御されてもよい。
【0111】
圧力計34がフェーズ1の最大ガス圧の70%未満に落ちるとき、コンピュータ30はフェーズ3を開始するように、すなわち狭窄部38を開くようにプログラムされてもよい。
【0112】
さらに、コンピュータ30はフェーズ5の最低ガス圧に依存してフェーズ6を開始するようにプログラムされてもよい。フェーズ6が0.01秒など、少なくとも短時間となるようにコンピュータ30はプログラムされるであろう。フェーズ5の圧力計34の圧力が3mmHg未満である場合、圧力が3mmHg、または目標値になるまで時間が次第に延長されてもよい。
【0113】
上記の実施例は、加圧ストロークより前にガスの供給および/または非加圧ストロークより前にガスの除去を提供することによって全ての特定mCPR装置をできるだけ有効にするように意図されている。しかしながら、処置の生理的な予後はサイクル速度と圧迫深さなど、特定mCPR装置の動作にも依存する。上記LUCASタイプの機械的心肺蘇生装置では、圧迫深さは通常約20%であり、サイクル速度は毎分約100ストロークである。サイクル速度は最大120ストロークに調整されてもよいし、または毎分60ストロークと同じくらい低くてもよい。このようなサイクル速度はガスの供給と除去のタイミングに影響を及ぼすであろう。さらに、圧迫深さもガスの供給と除去のタイミングに影響を及ぼすであろう。
【0114】
コンピュータ30はmCPR装置に影響を及ぼすように調整された方がよい。これにより、胸部/肺が適切に排出されたとき、例えば気管内チューブ内の圧力が最大値の10%など、特定値に減少したときにコンピュータは減圧フェーズ4を開始するよう構成されてもよい。
【0115】
代わりに加圧フェーズの開始は例えば大動脈中の血流に依存してコンピュータによって制御されてもよく、これは体外からの超音波ドップラプローブによって、または血圧計71と72によって測定された脈圧によって測定されてもよく、図1を参照されたい。このように、最大の大動脈血流が得られるようにコンピュータがサイクル時間を制御してもよい。
【0116】
コンピュータ30は、図8の実施例に基づいて、以下のように大動脈流計と結合したガス供給装置とmCPR装置を操作するよう構成されてもよい。
【0117】
フェーズ6はガス供給の開放と共に開始する。ガス供給は第1の所定時間後に停止されるか、または所定量のガスが吸入された後に停止され、加圧ストロークが開始される。大動脈流が測定されて統合される。圧力計34のガス圧がモニタリングされ、圧力が最大測定値の70%まで減少したときに、狭窄部38が開かれる。圧力が最大測定値の20%に到達したときに、減圧ストロークが開始される。約0.1秒後に減圧圧力が測定される。次のサイクルは以下のように調整される:
【0118】
最大加圧圧力が100mmHg未満である場合、次のサイクルで肺内により多くのガスを吸入するためにガス供給時間が延長される。
【0119】
減圧圧力が5mmHgを超える場合、狭窄部の開口時間は最大測定値の80%など高い値に調整され、および/または加圧ストロークの開始を例えば最大測定値の10%まで遅らせる。これが十分でない場合、ガス供給時間は次のサイクルで肺内により少ないガスを吸入するために減少する。
【0120】
大動脈流の速度が最大化されるようにサイクル時間が調整される。これは最大の大動脈流を生成するサイクル時間を見つけ出すために段階的にCPR装置のサイクル時間を調整することによって行うことができる。サイクル時間が短すぎる場合、胸部は大静脈から血液を補充するのに十分な時間を持たず、サイクル時間が長すぎる場合、ポンプストロークは非能率的になる。
【0121】
さらに、減圧の時間は、大動脈弁が閉まっており、冠動脈潅流があるとき、十分に長くなるように調整される。
【0122】
その他の実施例では、コンピュータは上腕動脈などの動脈へ導入され、血圧を測定するカテーテルの測定に依存して制御されてもよい。カテーテルは、大動脈に近づくために動脈内へさらに挿入されてもよい。動脈圧に加えて、カテーテルによって血液中の酸素と二酸化炭素の量を測定してもよい。
【0123】
加圧中の最大動脈圧と減圧中の最小動脈圧は、上記に言及された時間を制御するために用いられてもよい。このように、最大圧力が低すぎる場合、これは供給されるガス量を増やすべきであるという指標である。最小圧力が高すぎる場合、これはガスの除去が不十分であり、吐出時間を延長すべきであり、および/またはガス量を減少すべきであるという指標である。動脈圧は、動脈圧計71によって動脈血管系、例えば図1に示されるような隣接する大動脈18に挿入されたカテーテルによって測定することができる。その上、静脈還流圧は静脈圧計72によって示されるように静脈血管系、例えば隣接する大静脈12に挿入されたカテーテルによって測定することができる。
【0124】
さらに、酸素飽和レベルと二酸化炭素濃度のカテーテルの測定は、酸素の供給が不十分であり、二酸化炭素の除去が不十分であることの指標を提供するために用いることができる。酸素飽和レベルが低すぎる場合、酸素の性質上ガスの供給を増加すべきである。二酸化炭素の除去が不十分な場合、より多くのガス量が各サイクルで交換されるように、サイクル時間を増やしてもよい。
【0125】
上記の記載では、ガス供給サイクルは肺蘇生サイクルの前、例えば20%前にオフセットされる。動作は周期的であるので、ガス供給サイクルは肺サイクルの後、例えば80%後にオフセットすることができる。
【0126】
実施例では、ガス供給サイクルはCPR装置の加圧ストロークの開始の時間に関して規定される。2つの加圧ストロークの開始間の時間は継続時間の100%を有するものとして規定される。次いで、ガス供給は75%乃至98%の時間に開始され、これは加圧ストローク前の25%乃至2%と等しい。サイクル時間が0.6秒である場合、この定義は加圧ストロークの開始前の0.15乃至0.012秒に相当し、これは加圧ストロークの開始後の0.45乃至0.588秒と等しい。この実施例では、ガス供給はサイクル時間の10%乃至60%後に終了してもよい。あるいは、所定量のガスが供給されたときにガス供給が終了する。
【0127】
ガス供給サイクルは減圧ストロークの開始に関して規定されたほうがよく、これは加圧ストロークが終了するときに等しい。この場合、ガス供給は25%乃至48%の時間に開始される。
【0128】
ガス供給は前の加圧ストロークの終了と現在の加圧ストロークの開始との間の時間の後半であって、現在の加圧ストロークの開始前に開始される。
【0129】
CPR装置が機械的に操作される場合、この実施例はCPR装置によって制御されてもよい。加圧ストロークを開始する信号および/または加圧ストロークを終了する信号は、上記に概説されるような同期目的に用いることができる。
【0130】
別のケースでは、上記実施例はスイッチ板74(図2参照)によって制御され、これは患者の胸骨とCPR装置の圧力パッドとの間に配置される。圧力が圧力板上にかかるときにスイッチが作動され、圧力が除去されるときにスイッチが停止される。この信号は同期に用いられてもよい。この圧力パッドは胸部の用手圧迫を含む任意の種類のCPR装置で用いることができる。
【0131】
別の実施例では、ガス供給サイクルは圧力計の測定値に関して規定され、これはガス供給チューブの遠位端に接続される。図10で見られるように、気管圧は最大ピークと最小ピークを有する。これらのピークは加圧ストロークの開始と加圧ストロークの終了によるが、僅かに遅れる。同期として圧力計を用いる装置は、以下の方法で動作してもよい。ガス供給が作動され、CPR装置が起動される。第1の最大ピークが測定されるとき、次のピークが測定されるまで動作は実行されない。ここで、サイクル時間は2つの連続するピーク間の継続時間として測定される。サイクル時間の受け入れ条件があってもよく、例えばサイクル時間は0.5乃至1.5秒間であり、ピークは15mmHg超である。次に、ガス供給が終了し、次いで65%乃至88%の時間に再び作動されるようにガス供給が操作される。これは、加圧ストロークの開始に関して10%までのピーク圧の遅延に基づいて計算される。ガス供給は、ガス供給の作動後か、または所定量のガスの送出後の15%乃至50%で終了する。サイクルが確立されるときに、正確なタイミングが微調整され、その結果胸部の適切な再充満が得られ、高い潅流圧が得られるのと同時に高い大動脈圧が得られる。ガスの供給は圧力計の増加をもたらすので、ガスのこのような供給はピークとして解釈してはならない。
【0132】
ガス供給は代わりにまたはさらに最小ピーク測定値と同期されてもよく、これは加圧ストロークの終了後しばらくして発生する。幾つかの実施例では、この同期方法が信頼され、良好な結果を生成するであろう。この場合、もし最小ピークが加圧ストロークの終了と比べて約10%遅れる場合、ガス供給は15%乃至38%で開始される。最小ピークおよび/または最大ピークが10%未満または10%以上遅れると分かった場合、図を相応に適応すべきである。このような遅延は用いられる特定機器に対して測定されるべきである。この実施例では、ガス供給装置は、全てのCPR装置と完全に独立しており、胸部の加圧を周期的に実行するあらゆる種類の肺蘇生法で用いることができる。
【0133】
ガス供給を胸部加圧に同期させる別の方法は、気管内チューブの近位端に配置された流量計を用いることであり(またはガス供給チューブのみを用いる場合には口に隣接し、気管を介して吐出を行う)、流量計は気管内チューブを通る流出量が最大および/または最小であるときを測定する。これらの流量の最小値または最大値は圧力計の対応するピーク圧測定値と相対的に十分に同期されるので、上記に示されるのと同じ原理が適用される。
【0134】
ガスの供給を終了すべきときに同じ種類の問題が適用する。ガス供給の終了は上述した方法のうちの何れかの加圧サイクルと同期されてもよい。ガス供給がガス供給の終了に関して制御される場合、ガスを後で再び開始することができる。
【0135】
このように、ガス供給の開始の能動的な同期またはガス供給の終了の能動的な同期、またはその双方があってもよい。
【0136】
この同期は加圧ストロークの開始または加圧ストロークの終了に基づいて行うことができ、これは減圧ストロークまたは双方の開始と等しい。この同期はまた気管内の圧力または胸部あるいは胸骨または心臓の加圧および/または減圧と関係するその他の測定可能パラメータに基づいて行われてもよい。
【0137】
さらなる同期方法は上述した原理によって、動脈システムなどの血管系に圧力計を挿入して、圧力計を同期目的に用いることであろう。
【0138】
クレームでは、用語「具える/含む」はその他の要素またはステップの存在を排除しない。さらに、個々に列挙される複数の手段、要素または方法ステップは例えば単一ユニットで実施されてもよい。加えて、個々の特徴は異なるクレームに含まれるかもしれないが、これらはできる限り都合よく組み合わせてもよく、異なるクレームの包含物は特徴の組み合わせが実現可能でないことおよび/または有益でないことを示唆しない。さらに、単数の言及は複数を排除しない。用語「1つの」、「一の」、「第1」、「第2」などは複数を排除しない。クレーム内の引用符号は実施例を明確にするものとして単に提供され、何れにしてもクレームの範囲の限定するものとして解釈されない。
【0139】
本発明は特定の実施例に関して上述しているが、これは本書で説明された特定の形態に限定されない。むしろ、本発明は添付のクレームによってのみ限定され、上記詳細以外のその他実施例はこれら添付されたクレームの範囲内で可能な限り均等である。

図1
図2
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図5
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