(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るディーゼルポンプ(ディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプ)1は、ディーゼルエンジンのシリンダ内に高圧の燃料を噴射するための
ものであり、
図1等で示すように、ハウジング3とドライブシャフト5とライダ7と第1のシリンダ9(9A)と第1のプランジャ11(11A)と第2のシリンダ9(9B)と第2のプランジャ11(11B)とを備えて構成されている。
【0019】
ドライブシャフト5は、円盤カムの動節である円柱状のライダ軸部13を備えており、ハウジング3に回転可能に設けられている。
【0020】
円柱状のライダ軸部13の中心軸C3はドライブシャフト5の回転中心軸C1と平行になっていてドライブシャフト5の回転中心軸C1から所定の距離だけ離れている。すなわち、ライダ軸部13はドライブシャフト5の回転中心軸C1に対して偏心している。
【0021】
また、ドライブシャフト5は、ハウジング3の内部に設けられており、回転中心軸C1の延伸方向(
図1の左右方向)の一方の端側と他方の端側で一対の転がり軸受け15(15A,15B)を介してハウジング3に支持されている。ライダ軸部13は、ドライブシャフト5の回転中心軸C1の延伸方向で、一対の転がり軸受け15(15A,15B)の間に位置している。
【0022】
ドライブシャフト5は、ディーゼルポンプ1が使用されているディーゼルエンジン(図示せず)によりハウジング3に対して回転駆動されるようになっている。
【0023】
ライダ7は、内径がライダ軸部13の外径と等しい円筒状に形成されており、内周面がドライブシャフト5のライダ軸部13の外周面に係合していることで、ライダ軸部13に対し滑り対偶をなして回転可能(回転自在)になっている。
【0024】
なお、
図11で示すように、転がり軸受けを介してライダ7がライダ軸部13に支持されていてライダ軸部13に対して回転自在になっていてもよい。
【0025】
ライダ軸部13の中心軸C3とライダ7の中心軸とはお互いが一致しており、ライダ軸部13の中心軸C3を回転中心にして、ライダ7がライダ軸部13に対して回転(自転)するようになっている。なお、ライダ軸部13の中心軸C3がドライブシャフト5の回転中心軸C1に対して偏心していることにより、ライダ7はドライブシャフト5の回転中心軸C1を中心にして公転するようになっている。
【0026】
第1のシリンダ(第1のシリンダ構成部材)9Aは、ハウジング3に一体的に設けられている。
【0027】
第1のプランジャ11Aは、第1のシリンダ9Aに往復可能(往復運動自在)に設けられており、第1のシリンダ9Aとともに第1のシリンダ室(燃料を内部に導入しこの導入した燃料を圧縮しこの圧縮した燃料を吐出する第1のシリンダ室)17(17A)を形成している。
【0028】
また、第1のプランジャ11Aは、弾性体(第1の弾性体;たとえば、圧縮コイルバネ)19(19A)による付勢がされていることによってライダ7に接している。そして、ドライブシャフト5の回転に応じ、ドライブシャフト5の回転中心軸C1に近づく方向に、ライダ7に対して滑り対偶をなしつつ移動して、第1のシリンダ室17A内に燃料を導入するようになっている。
【0029】
また、第1のプランジャ11Aは、ドライブシャフト5の回転によるライダ7からの押圧力によって、圧縮コイルバネ19Aの付勢力に抗してドライブシャフト5の回転中心軸C1から離れる方向に、ライダ7に対して転がり対偶をなしつつ移動し、第1のシリンダ室17A内の燃料を圧縮するようになっている。
【0030】
第2のシリンダ(第2のシリンダ構成部材)9Bは、ドライブシャフト5を間にして、第1のシリンダ9Aとは反対側でハウジング3に一体的に設けられている。
【0031】
第2のプランジャ11Bは、ドライブシャフト5を間にして第1のプランジャ11Aとは反対側で、第1のプランジャ11Aと同様に、第2のシリンダ9Bに往復可能に設けられており、第2のシリンダ9Bとともに、第1のシリンダ室17Aと同様な第2のシリンダ室17(17B)を形成している。
【0032】
また、第2のプランジャ11Bは、第1のプランジャ11Aと同様にして、弾性体(第2の弾性体;たとえば、圧縮コイルバネ)19(19B)とドライブシャフト5の回転とによって稼働し、第2のシリンダ室17(17B)で、燃料の圧縮等をするようになっている。
【0033】
1台のディーゼルポンプ1には、シリンダ室17が2つだけ設けられている。そして、ドライブシャフト5の回転によって第1のシンンダ室17Aで燃料の圧縮(導入)をしているときに、第2のシンンダ室17Bへの燃料の導入(圧縮)がなされるようになっている。なお、2つのシリンダ室17は、お互いが同様に構成されており、すでに理解されるように、ドライブシャフト5の回転中心軸C1に対してお互いがほぼ対称に配置されている。
【0034】
さらに説明すると、ドライブシャフト5が所定の回転角度(原回転角度)になっているとき(
図2で示す状態からドライブシャフト5が180°回転してドライブシャフト5の回転角度が0°になっているとき)からドライブシャフト5が一定の方向に180°まで回転する間では、第1のプランジャ11Aがライダ7で押されてドライブシャフト5の回転中心軸C1から離れる方向(
図2の上方向)に移動し第1のシリンダ室17A内で燃料の圧縮がなされ、この圧縮された燃料が第1のシリンダ室17Aから吐出されるようになっている。一方、第2のプランジャ11Bは圧縮コイルバネ19Bで押されてドライブシャフト5の回転中心軸C1に近づく方向(
図2の上方向)に移動し第2のシリンダ室17Bへの燃料の導入がなされるようになっている。
【0035】
また、ドライブシャフト5が原回転角度から180°回転しているとき(
図2に示す状態のとき)からドライブシャフト5が一定の方向に360°まで回転する間では、第1のプランジャ11Aが圧縮コイルバネ19Aで押されてドライブシャフト5の回転中心軸C1に近づく方向(
図2の下方向)に移動し第1のシリンダ室17Aへの燃料の導入がなされ、第2のプランジャ11Bがライダ7で押されてドライブシャフト5の回転中心軸C1から離れる方向(
図2の下方向)に移動し第2のシリンダ室17B内の燃料の圧縮がなされ、この圧縮された燃料が第2のシリンダ室17Bから吐出されるようになっている。
【0036】
なお、燃料は軽油等の液体であり非圧縮性流体とみなせるので、第1のシリンダ室17A内の燃料の圧縮がなされ第2のシリンダ室17B内への燃料の導入がなされているとき、第1のプランジャ11Aとライダ7との間に発生する圧力の値(第1のプランジャ11Aがライダ7を押す力の大きさ)は、第2のプランジャ11Bとライダ7との間に発生する圧力の値(第2のプランジャ11Bがライダ7を押す力の大きさ)よりも大きくなっている。
【0037】
また、ライダ7がライダ軸部13に対して回転するようになっているので、第1のシリンダ室17A内の燃料の圧縮がなされ第2のシリンダ室17B内への燃料の導入がなされているとき、第1のプランジャ11Aとライダ7とはお互いが転がり対偶をなし、第2のプランジャ11Bとライダ7とはお互いが滑り対偶をなすようになっている。
【0038】
逆に、第2のシリンダ室17B内の燃料の圧縮がなされ第1のシリンダ室17A内への燃料の導入がなされているとき、第2のプランジャ11Bとライダ7とはお互いが転がり対偶をなし、第1のプランジャ11Aとライダ7とはお互いが滑り対偶をなすようになっている。
【0039】
各プランジャ11それぞれの一方の端(基端;ドライブシャフト5側の端)には、ライダ7と接触する平面状部21が設けられている。平面状部21はドライブシャフト5の回転中心軸C1と平行になっている。また、第1のプランジャ11Aの平面状部21と、第2のプランジャ11Bの平面状部21とはお互いが平行になっており、ドライブシャフト5の回転中心軸C1を間にしてお互いが対向している。ただし、第1のプランジャ11Aの平面状部21とドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離や、第2のプランジャ11Bの平面状部21とドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離は、ドライブシャフト5の回転に応じて変化するようになっている。
【0040】
第1のシリンダ9Aに係合している第1のプランジャ11Aの移動方向(ドライブシャフト5の回転による移動方向)や第2のシリンダ9Bに係合している第2のプランジャ11Bの移動方向(ドライブシャフト5の回転による移動方向)は、平面状部21に対して直交している。
【0041】
ドライブシャフト5の回転による各プランジャ11の往復運動のストロークおよびドライブシャフト5の回転中心軸C1からの距離が変化する範囲は、お互いが等しくなっている。また、第1のプランジャ11A(第1のプランジャ11Aの平面状部21)とドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離が最小になったときに、第2のプランジャ11B(第2のプランジャ11Bの平面状部21)とドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離が最大になり、逆に、第1のプランジャ11Aとドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離が最大になったときに、第2のプランジャ11Bとドライブシャフト5の回転中心軸C1との間の距離が最小になるようになっている。
【0042】
また、第1のプランジャ11Aの平面状部21とライダ7の外周面の母線とがお互いに接触するので、第1のプランジャ11Aとライダ7とはお互いが線接触するのであるが、実際には、第1のプランジャ11Aの平面状部21がライダ7の外周面を押圧するので、ヘルツの接触理論により、第1のプランジャ11Aの平面状部21やライダ7がごく僅かに弾性変形し、第1のプランジャ11Aとライダ7はお互いが面接触するようになっている。同様にして、第2のプランジャ11Bとライダ7とはお互いがお互いに面接触するようになっている。
【0043】
ライダ軸部13とライダ7との係合の態様について詳しく説明すると、ライダ軸部13とライダ7とは、転がり軸受けを用いることなく、ブッシュ(たとえば、銅合金系のメタルブッシュ)23(
図8も併せて参照)を介し、お互いが滑り対偶をなして係合している。
【0044】
また、ディーゼルポンプ1には、強制潤滑部25が設けられており、強制潤滑部25が、ライダ7とライダ軸部13とがお互いに滑り対偶をなして係合している部位に、燃料を用いた強制潤滑をするようになっている。
【0045】
強制潤滑部25は、ハウジング3に設けられており、ドライブシャフト5の回転で駆動するポンプ(低圧ポンプ)27を用いて、ライダ7(ブッシュ23)とライダ軸部13とがお互いに滑り対偶をなしている部位に、燃料を強制的に供給するように構成されている(燃料の圧力を高めこの圧力が高まった燃料を供給するように構成されている)。
【0046】
なお、低圧ポンプ27には、図示しない燃料タンクからフューエルジョイント53を介して燃料が供給されるようになっている。
【0047】
低圧ポンプ27は、ポンプベース29とアウタロータ31とインナロータ33とを備えて構成されているトロコイドポンプであり(
図5参照)、ポンプベース29とアウタロータ31とインナロータ33との総てが、厚さ方向の両面が仕上げ加工(たとえば、ミガキ加工)されている平板状の鋼板をファインプレス加工で打ち抜きバリ取りをするだけで生成されている。
【0048】
なお、ポンプベース29、アウタロータ31、インナロータ33のうちの少なくとの1つが、平板状の素材をファインプレス加工することで生成されたものであってもよい。
【0049】
トロコイドポンプ27によって、低圧に加圧された燃料は、シリンダ室17にも供給されるようになっている。すなわち、トロコイドポンプ27によって、低圧に加圧された燃料は、ハウジング3に設けられた低圧燃料路35を通って、シリンダ室17のところに到達し、この到達した燃料が、プランジャ11の移動により発生するシリンダ室17の負圧により、シリンダ室17内に導入されるようになっている。
【0050】
ここで、説明の便宜のために、ドライブシャフト5の回転中心軸C1の延伸方向を前後方向とすると、ドライブシャフト5は、前後方向で、前側から後側に向かって、入力部(ディーゼルエンジンから回転駆動力が入力される部位)37、1つ目の転がり軸受け(たとえば、円筒ころ軸受)15A、ライダ軸部13、2つ目の転がり軸受け(たとえば、深溝玉軸受)15B、トロコイドポンプ27が、この順にならんで配置されている。
【0051】
ハウジング3に設けられた低圧燃料路35は、この一部が、転がり軸受け(たとえば、深溝玉軸受け)15Bの外輪が係合する部位にリング状に設けられている。
【0052】
さらに説明すると、トロコイドポンプ27によって生成された低圧の燃料は、カバー39に設けられた低圧燃料路41と、ハウジング3に設けられた低圧燃料路35とをこの順に通って、一対のシリンダ室17のそれぞれに到達するようになっている。なお、前後方向では、シリンダ室17は、ライダ軸部13のところに設けられており、ハウジング3の低圧燃料路35は、ハウジング3の後端からシリンダ室17のところにわたって設けられている(2つ目の転がり軸受け15Bのところに設けられている)。
【0053】
2つ目の転がり軸受け15Bの外輪が係合する円柱側面状の部位(ハウジング3に形成された内部空間の内周面)には、ハウジング3の低圧燃料路の一部を構成するリング状の溝43が設けられている。リング状の溝43は、たとえば、切削加工で形成されており、2つ目の転がり軸受け15Bが係合する内周面よりも外側に凹んでおり(径が内周面の径よりも大きくなっており)、前後方向では、内周面の中央部に位置している。したがって、ハウジング3に2つめの軸受け15Bが設置されると、リング状の溝43は、2つめの軸受け15Bの外輪で塞がれ、リング状の溝43は、ハウジング3の肉部と2つめの軸受け15Bの外輪で囲まれたリング状の空間になる。
【0054】
また、カバー39の低圧燃料路41は、カバー39の肉部に設けられた1本の孔で形成されており、ハウジング3の低圧燃料路35は、リング状の溝43と、ハウジング3の肉部に設けられた1本の第1の通路(孔)45と、2本の第2の通路(孔)47とで構成されている。
【0055】
そして、トロコイドポンプ27で昇圧された低圧の燃料が、カバー39の低圧燃料路41とハウジング3の1本の第1の通路45とを通って、ハウジング3のリング状の溝43で形成された空間に至り、ハウジング3のリング状の空間により、2系統に分かれ、一方は、1つ目の第2の通路47を通って、第1のシリンダ室17Aに至り、他方は、2つ目の第2の通路47を通って、第2のシリンダ室17Bに至るようになっている。
【0056】
また、シリンダ室17での圧縮により、ハウジング3の内部空間(ライダ7、転がり軸受け15、プランジャ11を付勢する圧縮コイルバネ19等が設けられている空間)49にごく僅かに漏れ出た燃料と、強制潤滑部25の強制潤滑によりハウジング3の内部空間49に出てきた燃料とは、ハウジング3に設けられたリターン部(リターンジョイント)51(
図2参照)を通って、図示しない燃料タンクに戻るようになっている。
【0057】
また、ディーゼルポンプ1には、ボール式の逆止弁(ボール式のチェック弁)55が設けられている。
【0058】
ボール式の逆止弁55は、球状のボール57とバルブシート59と圧縮コイルバネ61とを備えて構成されている。ボール57は、たとえば、鋼もしくはセラミックで構成されている。
【0059】
バルブシート59は、シリンダ9に一体的に設けられている。また、バルブシート59には、円錐台側面状の内面63が形成されている貫通孔65が設けられている。なお、円錐台側面状の内面63の円錐台の頂角は、側面視において、たとえば、60°になっている。
【0060】
圧縮コイルバネ61は、シリンダ室17の内部に設けられており、一端部がボール57に当接し他端部がシリンダ9の段差64に当接している。圧縮コイルバネ61の巻き径(コイル径)の値は、一定ではなく、一端部(ボール57に当接している部位)で小さく、一端部を除く部位(一端部と他端との間;一端部に隣接している一端部近傍の部位から他端にかけても部位)で大きくなっている(
図6も併せて参照)。
【0061】
そして、シリンダ室17で燃料を圧縮するときには、圧縮コイルバネ61によってボール57がバルブシート59の貫通孔65の円錐台側面状の内面63に押圧されて当接しバルブシート59の貫通孔65が閉じられており、シリンダ室17に燃料が導入されるときには、圧縮コイルバネ61が圧縮されることで、ボール57がバルブシート59の貫通孔65の円錐台側面状の内面63から離れ、バルブシート59の貫通孔65が開いて燃料が通過するように構成されている。
【0062】
さらに説明すると、プランジャ11が一方の方向に移動して燃料を圧縮するときには、ボール57がバルブシート59の貫通孔65の円錐台側面状の内面63に燃料の圧力と圧縮コイルバネ61とで押圧され、バルブシート59の貫通65孔が閉じられ、バルブシート59の貫通孔65内を燃料が通過できないようになっている。なお、プランジャ11が一方の方向に移動し終えたとき(往復運動でライダ軸部13と離れた端側に位置しているとき)には、燃料の圧縮率を上げるために、プランジャ11の細長い円柱状の部位(平面状部21から延出している部位)67の先端部(平面状部21とは反対のボール57側の端部)が、圧縮コイルバネ61の内側(巻き径の値が大きくなっている部位内)に入り込むようになっている(
図1の第1のプランジャ11Aを参照)。
【0063】
また、プランジャ11が他方の方向に移動してシルンダ室17の体積が増加し圧力が減少することで、ボール57が移動し圧縮コイルバネ61が圧縮されボール57がバルブシート59の貫通孔65の円錐台側面状の内面63から離れ、バルブシート59の貫通孔65内を燃料が通過できるようになっている。
【0064】
なお、ボール式の逆止弁55の圧縮コイルバネ61は、ボール57を受けるところで(たとえば、ボール57を受けるところとこのごく近傍の箇所のみで)、巻き半径が小さくなっている。
【0065】
さらに説明すると、圧縮コイルバネ61の端部は、クローズドエンド(研削)になっている。すなわち、端部の巻きだけ巻角度を変えて隣の巻きにばね線の端部を付ける巻き方で、研削等をすることでボール57の据わりをよくしている。また、圧縮コイルバネ61はこの一方の端部でのみで(たとえば、1巻の範囲で)巻き径を小さくしてある。なお、圧縮コイルバネ61は一方の端部から離れるに従い、たとえば、一方の端部の隣接している1巻の範囲のみで、巻き径が次第に大きくなっており、大きくなった後は、この大きくなって巻き径の値が一定に保たれている。すなわち、圧縮コイルバネ61は一方の端部における2巻分を除いては、一定の巻き径の円筒形コイルバネになっている。
【0066】
シリンダ9は、プランジャ11が入り込んでいる貫通孔69が設けられて円筒状に形成されている。なお、貫通孔69は、シリンダ9の中心軸C5に沿って貫通している。
【0067】
さらに説明すると、
図4で示すように、シリンダ9の貫通孔69は、シリンダ9の中心軸C5の延伸方向で(プランジャ11が往復運動する方向で)一端部に設けられている第1の部位(第1の円柱状の空間)71と、シリンダ9の中心軸C5の延伸方向で他端部に設けられている第2の部位(第2の円柱状の空間)73と、第1の部位71と第2の部位73との間に形成されている第3の部位(第3の円柱状の空間)75とを備えて構成されている。
【0068】
第1の部位71には、ボール式の逆止弁55の圧縮コイルバネ61が入り込んで係合するようになっており、第2の部位73の内径は、第1の部位71の内径よりも小さくなっていて、プランジャ11の細長い円柱状の部位67の外径よりもごく僅かに大きくなっており、第2の部位73には、プランジャ11(細長い円柱状の部位67)が入り込んで往復運動のために、たとえば、滑り待遇をなして係合しており、第3の部位75の内径は、第1の部位71の内径よりも小さく第2の部位73の内径よりも僅かに大きくなっている(
図4参照)。圧縮コイルバネ61が当接している段差64は、第1の部位71と第3の部位75との間に形成されている。
【0069】
ここで、説明の便宜のために、前後方向に対して直交する所定の一方向を左右方向としてさらに詳しく説明する。
【0070】
左右方向で、ドライブシャフト5の回転中心軸C1から右側に向かって、ライダ軸部13とライダ7と第1のプランジャ11Aと第1のシリンダ室17Aとボール式の逆止弁55とがこの順にならんでいる。
【0071】
第1のプランジャ11Aは、平面状部21がドライブシャフト5の回転中心軸C1側(左側)に位置し、円柱状の部位67が平面状部21のところから右側に向かって突出している。ボール式の逆止弁55のバルブシート59に設けられている貫通孔65は左右方向でバルブシート59の肉部を貫通しており、貫通孔65の円錐台側面状の内面63は、貫通孔65の端部(左側の端部;第1のプランジャ11A側の端部)に設けられており、第1のシリンダ室17Aに臨んでいる。これにより、貫通孔65の内径の値は、第1のプランジャ11A側でもっとも大きく、第1のプランジャ11Aから離れるにしたがって(右側に向かうにしたがって)次第に小さくなり、一定の値まで小さくなった後は、小さくなった一定の値になっている。
【0072】
ボール式の逆止弁55のボール57は、バルブシート59側でバルブシート59とプランジャ11Aとの間に設けられている。ボール式の逆止弁55の圧縮コイルバネ61は、ボール57よりもプランジャ11A(ドライブシャフト5)側に設けられている。そして、圧縮コイルバネ61は、ボール57が貫通孔65の円錐台側面状の内面63を押圧するように、ボール57を付勢している。
【0073】
第1のシリンダ室17Aは、第1のシリンダ9Aの内壁と、ボール式の逆止弁55と第1のプランジャ11Aとで囲まれた空間である。第1のプランジャ11Aがドライブシャフト5の回転によって左右方向に移動することで、第1のシリンダ室17Aの容積が変化するようになっている。さらに、説明すると、第1のプランジャ11Aがドライブシャフト5の回転によって、ドライブシャフト5から離れる方向(右側)に移動するときに、第1のシリンダ室17Aの容積が小さくなり、燃料の圧縮がなされるようになっている。
【0074】
なお、ボール式の逆止弁55のボール57や圧縮コイルバネ61は、第1のシリンダ室17A内に設けられていると言える。
【0075】
また、第2のプランジャ11Bと第2のシリンダ室17Bと第2のシリンダ室17B側のボール式の逆止弁55とは、ドライブシャフト5の回転中心軸C1に対し、第1のプランジャ11Aと第1のシリンダ室17Aと第1のシリンダ室17A側のボール式の逆止弁55とは、対称に配置されている。すなわち、左右方向で、ドライブシャフト5の回転中心軸C1から左側に向かって、ライダ軸部13とライダ7と第2のプランジャ11Bと第2のシリンダ室17Bとボール式の逆止弁(右側のボール式の逆止弁55とは別のボール式の逆止弁)55とがこの順にならんでいる。
【0076】
シリンダ9の外周には段差77が形成されており、シリンダ9の中心軸C5の延伸方向(左右方向;プランジャ9が往復運動する方向)で、段差77よりも一端側の部位79の外径は、段差77よりも他端側の部位81の外径よりも大きくなっている。段差77よりも一端側の部位79がハウジング3に係合することで(一端側の部位79がハウジング3に、たとえば、圧入されることで)、シリンダ9がハウジング3に一体的に設けられている(設置されている)。また、左右方向で
、シリンダ9の貫通孔69の第2の部位73と第3の部位75との境界
が、段差77よりも、ドライブシャフト5側に設けられている。
【0077】
すなわち、第1のシリンダ9Aの外周には段差77が形成されており、左右方向で、段差77よりも右側の部位79の外径は、段差77よりも左側の部位81の外径よりも大きくなっている。段差77よりも右側の部位79がハウジング3に嵌合されていることで、第1のシリンダ9Aがハウジング3に一体的に設けられている。また、左右方向で、段差77が、第1のシリンダ9Aの貫通孔69の第2の部位73と第3の部位75との境界よりも、右側に設けられている。
【0078】
逆に、第2のシリンダ9Bの外周には段差77が形成されており、左右方向で、段差77よりも左側の部位79の外径は、段差77よりも右側の部位81の外径よりも大きくなっている。段差77よりも左側の部位79がハウジング3に係合することで、第2のシリンダ9Bがハウジング3に一体的に設けられている。また、左右方向で、段差77が、第2のシリンダ9Bの貫通孔69の第2の部位73と第3の部位75との境界よりも、左側に設けられている。
【0079】
ところで、シリンダ9の貫通孔69の第3の部位75を無くしてもよい。この場合には、第1の部位71と第2の部位73との境界が、段差77よりも、
図4(a)で示す寸法Z1だけ、ドライブシャフト5側に設けられている。
【0080】
ここで、ディーゼルポンプ1についてさらに詳しく説明する。
【0081】
ハウジング3は、筒状の本体部83と、筒状に形成されて本体部83の中間部から左右方向に突出している一対のシリンダ設置部85とを備えて構成されている。なお、筒状の本体部83の内側の空間と筒状の一対のシリンダ設置部85の内部空間とはお互いがつながっており、ハウジング3の後端面は平面状になっている。
【0082】
カバー39は、前端面が平面になっていて、この平面がハウジング3の後端面に面接触してハウジング3の後方でハウジング3に一体的に設けられている。また、カバー39の後端面も平面になっており、カバー39には、この中央部を前後方向に貫通している貫通孔87が形成されている。貫通孔87はハウジング3の本体部83の内部空間につながっている。
【0083】
ドライブシャフト5は、この前側から後側に向かって、テーパ状の入力部37、第1のオイルシール係合部、1つ目の転がり軸受け(第1の転がり軸受け)15Aが設置される第1の軸受け係合部、ライダ軸部13、2つ目の転がり軸受け(第2の転がり軸受け)15Bが設置される第2の軸受け係合部、第2のオイルシール係合部、トロコイドポンプ27のインナロータ33が一体的に設置されるインナロータ設置部がこの順にならんでいる。なお、テーパ状の入力部37は、ハウジング3の本体部83から前方に突出しており、第1のオイルシール係合部、第1の転がり軸受け15Aの第1の軸受け係合部、ライダ軸部13、第2の転がり軸受け15Bの第2の軸受け係合部は、ハウジング3の本体部83内に位置しており、第2のオイルシール係合部は、カバー39内に位置しており、インナロータ設置部は、カバー39から後方に僅かに突出しているが、トロコイドポンプ27内に位置している。
【0084】
テーパ状の入力部37には、プーリ(図示せず)が設置され、このプーリに巻きかけられたベルトによって、ドライブシャフト5が回転するようになっている。
【0085】
ハウジング3の本体部83の内部に設置されている第1のオイルシール89が、ドライブシャフト5の第1のオイルシール係合部に係合し、カバー39に設置されている第2のオイルシール91が、カバー39の第2のオイルシール係合部に係合している。第1のオイルシール89により、ハウジング3の本体部83の内部から前方へ燃料が漏出すことが防止されている。第2のオイルシール91の作用については後述する。
【0086】
また、ドライブシャフト5の第1の軸受け係合部が、ハウジング3の本体部83の内部に設置されている第1の転がり軸受け15Aに嵌合され、ドライブシャフト5の第2の軸受け係合部が、ハウジング3の本体部83の内部に設置されている第2の転がり軸受け15Bに嵌合されていることで、ドライブシャフト5がハウジング3やカバー39に対して回転自在になっている。なお、内部空間49は、第1の転がり軸受け15Aと第2の転がり軸受け15との間に形成されている。
【0087】
ポンプベース29は、
図7で示すように、三角な平板状に形成されており、中央部には、ドライブシャフト5が貫通する円形状の貫通孔が形成されており、この貫通孔の一方の側には、トロコイドポンプ27に燃料を供給するための貫通孔93が設けられており、他方の側には、トロコイドポンプ27で昇圧された燃料が通過する貫通孔95が設けられている。
【0088】
また、ポンプベース29の厚さ方向の一方の面は、カバー39の後端面に接触し、ポンプベース29がカバー39に一体的に設けられている。
【0089】
ポンプケース97は、ポンプベース29と同様に三角な平板状に形成されている。ただし、ポンプベース29よりも厚く、厚さ方向の一方に面には、アウタロータ31とインナロータ33とが入り込む円板状の凹部99が形成されている。
【0090】
また、ポンプケース97は、この前端の平面状部が、ポンプベース29の厚さ方向の一方の面(後端面)に接触している。そして、ポンプケース97がポンプベース29に一体的に設けられている。さらに説明すると、カバー39とポンプベース29とポンプケース97とは、ボルトによって、ハウジング3に一体的に設けられている。
【0091】
アウタロータ31は、
図9で示すように、外周が円形状になっている。また、中央部には、厚さ方向を貫通している貫通孔が形成されている。この貫通孔の内周には、複数の歯が形成されている。なお、アウタロータ31の外径は、ポンプケース97の凹部99の内径よりもごく僅かに小さくなっており、アウタロータ31の厚さは、ポンプケース97の凹部99の深さよりもごく僅かに小さくなっている。そして、アウタロータ31は、
図1で示すように、ポンプケース97の凹部99内に入り込んでいて、ポンプケース97に対して回転自在になっている。
【0092】
インナロータ33は、
図10で示すように、外周に複数の歯が形成されている。インナロータ33の厚さは、アウタロータ31の厚さと等しくなっている。インナロータ33は、アウタロータ31の内側に入り込んでおり、インナロータ33の歯の一部がアウタロータ31の歯の一部と噛み合っている。また、インナロータ33は、ドライブシャフト5に係合しており、ドライブシャフト5の回転によって回転するようになっている。
【0093】
インナロータ33が回転することで、アウタロータ31がインナロータ33よりも遅い回転角速度で回転し、お互い噛み合っている歯が適宜変化し、アウタロータ31とインナロータ33との間の空間の形態が適宜変化する。この変化によってポンプベース29の貫通孔93からアウタロータ31とインナロータ33との間の空間に燃料が入り込み、この入り込んだ燃料が低圧に圧縮されて、ポンプベース29の貫通孔95から出ていくようになっている。
【0094】
シリンダ9は、上述したように、大径部位79と小径部位81とを備えていることで外周に段差77が形成されている。シリンダ9の貫通孔69は、上述したように、第1の部位71と、第2の部位73と、第3の部位75とを備えているが、第1の部位71の端部(第1のシリンダ9Aでは右端部、第2のシリンダ9Bでは左端部)には、バルブシート59が入り込むための円柱状の凹部101が形成されている。
【0095】
また、小径部位81の端部(第1のシリンダ9Aでは左端部、第2のシリンダ9Bでは右端部)には、プランジャ11を付勢する圧縮コイルバネ19の一方の端部が係合している円柱状の部位103が形成されている。部位103の外径は、小径部位81の外径よりも小さくなっており、圧縮コイルバネ19の内径とほぼ等しくなっている。
【0096】
シリンダ9は、上述したように、大径部位79がハウジング3のシリンダ設置部85の貫通孔に嵌合することで、ハウジング3に一体的に設けられている。シリンダ9の貫通孔69は、左右方向に延びている。
【0097】
プランジャ11は、平面状部21を構成する円盤状の部位105とこの円盤状の部位105の中央部から一方の側に突出している小径な円柱状の部位67とを備えて構成されている。
【0098】
第1のプランジャ11Aは、円盤状の部位105が左側に位置し、円柱状の部位67が右側に突出し、円柱状の部位67が第1のシリンダ9Aの貫通孔69に入り込むようにして、シリンダ9に対して左右方向で移動自在になっている。
【0099】
第2のプランジャ11Bは、円盤状の部位105が右側に位置し、円柱状の部位67が左側に突出し、円柱状の部位67が第2のシリンダ9Bの貫通孔69に入り込むようにして、シリンダ9に対して左右方向で移動自在になっている。
【0100】
圧縮コイルバネ19は、一端部が上述したように、シリンダ9に係合し、他端部がプランジャ11の円盤状の部位105に当接している。これにより、プランジャ11のそれぞれが、ドライブシャフト5側に付勢され、プランジャ11の平面状部21のそれぞれがライダ7の外周に当接してライダ7を押圧している。
【0101】
ハウジング3の内部空間49は、第1のシリンダ9Aと第2のシリンダ9Bとの間に形成されており、プランジャ11の平面状部21や圧縮コイルバネ19は、内部空間49内に位置している。
【0102】
バルブシート59は、円筒状に形成されており、上述したように、ボール式の逆止弁55を構成している。バルブシート59の一方の端部は、シリンダ9の円柱状の凹部101に入り込んでいる。
【0103】
ヘッドプラグ107は、外周にオスネジが形成された円柱状に形成されており、このオスネジがハウジング3のシリンダ設置部85の内周に形成されているメスネジに螺合することで、ヘッドプラグ107がハウジング3に一体的に設けられている。さらに説明すると、ヘッドプラグ107は、シリンダ9やバルブシート59よりも外側(ドライブシャフト5から離れた側)に設けられている。そして、ヘッドプラグ107によって、バルブシート59とシリンダ9とが、ドライブシャフト5側に押され、シリンダ9の外周の段差77が、ハウジング3のシリンダ設置部85の段差に当接していることで、ハウジング3とシリンダ9とバルブシート59とヘッドプラグ107とを一体化している。
【0104】
ハウジング3には、
図2で示すように、ボール式の逆止め弁55と同様に構成されたアウトコネクタ109が一対で設けられている。一方のアウトコネクタ109は、第1のシリンダ室17Aにつながっており、第1のシリンダ室17Aで圧縮された燃料が、一方のアウトコネクタ109を通って吐出されるようになっている。他方のアウトコネクタ109は、第2のシリンダ室17Bにつながっており、第2のシリンダ室17Bで圧縮された燃料が、他方のアウトコネクタ109を通って吐出されるようになっている。
【0105】
また、カバー39には、フューエルジョイント53が設けられており、このフェーエルジョイント53を通って、ディーゼルポンプ1に燃料が供給されるようになっている。すなわち、フェーエルジョイント53を通過して燃料は、カバー39に設けられたフィルタ113を通って、トロコイドポンプ27に供給されるようになっている。なお、
図3で示すように、ポンプベース29の貫通孔93と貫通孔95とは、チェックバルブ115でつながっており、貫通孔95の圧力が高くなり過ぎたときに、燃料の一部を貫通孔93に逃がし、トロコイドポンプ27から吐出される燃料の圧力を一定値以下にしている。
【0106】
トロコイドポンプ27で低圧に昇圧された燃料の一部は、カバー39に形成された低圧燃料路41とハウジング3に形成された低圧燃料路35とバルブシート59に形成された貫通孔117と貫通孔65とを通って、シリンダ室17に供給されるようになっている。
【0107】
また、トロコイドポンプ27で低圧に昇圧された燃料の一部は、強制潤滑部25に使用されるようになっている。すなわち、燃料の一部が、カバー39に設けられた貫通孔119と、ドライブシャフト5に設けられた各貫通孔121,123,125を通って、ライダ軸部13とライダ7のブッシュ23との間に供給されるようになっている。
【0108】
なお、貫通孔119の一部は、
図5で示すように、小径部127になっており、これにより絞り弁の機能を果たすチョークが形成されており、シリンダ室17に供給される燃料の量が、強制潤滑部25で供給される燃料の量よりも多くなるようになっている。
【0109】
第2のオイルシール91は、貫通孔119から出てきた燃料が、第2の転がり軸受け15B側に流れることを防止している。第2のオイルシール91が設けられていることで、強制潤滑部25で供給される燃料の圧力が低下することが防止されている。
【0110】
なお、ディーゼルポンプ1では、ハウジング3等の部品の接合部から燃料が漏れ出すことを防止するために、シール部材(たとえば、Oリング)129が適宜設けられている。
【0111】
次に、ディーゼルポンプ1の動作について説明する。
【0112】
ドライブシャフト5が回転しているときに、フューエルジョイント53からトロコイドポンプ27に燃料が供給されこの供給された燃料が低圧に圧縮される。
【0113】
この低圧に圧縮された燃料の一部の僅かな量が、強制潤滑部25で使用され、他の燃料がシリンダ室17に供給される。
【0114】
シリンダ室17に供給された燃料は、シリンダ室17内で高圧に圧縮され、この圧縮された燃料がアウトコネクタ109からディーゼルポンプ1の外部に吐出される。
【0115】
なお、シリンダ室17で圧縮された燃料の一部の僅かな量が、シリンダ9とプランジャ11との係合部のごく僅かな隙間を通って、内部空間49等のディーゼルポンプ1の内部に漏れ出すが、この漏れ出した燃料は、リターン部51を通ってディーゼルポンプ1の外部で回収されるので、内部空間49等のディーゼルポンプ1の内部が高圧になることは無く、大気圧程度の圧力になっている。
【0116】
ディーゼルポンプ1によれば、ドライブシャフト5の回転による円筒状のライダ7からの押圧力によって第1のプランジャ11Aが第1のシリンダ室17A内の燃料を圧縮し、ドライブシャフト5を間にした反対側で、ドライブシャフト5の回転による円筒状のライダ7からの押圧力によって第2のプランジャ11Bが第2のシリンダ室17B内の燃料を圧縮するようになっており、ライダ7がライダ軸部13に対し回転するようになっている。
【0117】
そして、第1のシリンダ室17A内で燃料の圧縮がなされ第2のシリンダ室17B内への燃料の導入がなされているとき、第1のプランジャ11Aとライダ7とはお互いが転がり対偶をなし、第2のプランジャ11Bとライダ7とはお互いが滑り対偶をなすようになっており、逆に、第2のシリンダ室17B内の燃料の圧縮がなされ第1のシリンダ室17A内への燃料の導入がなされているとき、第2のプランジャ11Bとライダ7とはお互いが転がり対偶をなし、第1のプランジャ11Aとライダ7とはお互いが滑り対偶をなすようになっている。
【0118】
これにより、燃料を圧縮するとき(プランジャ11とライダ7との間に大きな荷重がかかっているとき)におけるライダ7とプランジャ11との間の摩擦抵抗を小さくすることができ、ディーゼルポンプ1の機械的損失を小さくすることができる。
【0119】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ライダ7とプランジャ11との間の摩擦抵抗を小さくすることができるので、起動トルクを低減することができ、アイドルストップへの対応がしやすくなる。
【0120】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ライダ軸部13とライダ7とが、転がり軸受けを用いることなくブッシュ23を介して係合しているので、ディーゼルポンプ1のダウンサイジングがなされており、ディーゼルポンプ1の構造が簡素化されており、ディーゼルポンプ1の製造コストを低減させることができる。
【0121】
また、ディーゼルポンプ1によれば、強制潤滑部25によって、ライダ7とライダ軸部13とがお互いに係合している部位に燃料を用いた強制潤滑をするように構成されているので、高速運転(ドライブシャフト5を高速回転)させることができ、燃料を効率良く圧縮することができ、ライダ7とライダ軸部13との耐久性が向上する。
【0122】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ポンプベース29とアウタロータ31とインナロータ33とが、ファインプレス加工することで生成されているので、トロコイドポンプ27の製造が容易になっている。
【0123】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ハウジング3に設けられた低圧燃料路35が、この一部が第2の転がり軸受け(たとえば、深溝玉軸受)15Bの外輪が係合する部位にリング状に形成されているので、低圧燃料路35を容易に形成することができる。
【0124】
また、ディーゼルポンプ1によれば、円錐台状の部位を備えた弁体に代えて、市販されているベアリングの球状のボール57を弁体として使用しているボール式の逆止弁55を用いているので、製造コストを低減することができる。
【0125】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ボール式の逆止弁55の圧縮コイルバネ(シリンダ室17の内部に設けられている圧縮コイルバネ)61の一端部が逆止弁55のボール57に当接し他端部がシリンダ9に当接しており、圧縮コイルバネ61の巻き径の値がボール57側の端部で小さくこの端部を除く部位で大きくなっているので、逆止弁55のボール57の径が小さくてもボール57を安定してバルブシート59の円錐台側面状の内面63に付勢することができ、また、圧縮コイルバネ61に発生する応力の値を小さくすることができる。さらに、プランジャ11の一部(先端部)の径を小さくしなくても、燃料を圧縮するときにプランジャ11の先端部が圧縮コイルバネ61の内側に入るので、燃料の圧縮率を上げることができる(シリンダ室17の最少容積と最大容積との比を大きくすることができる)。
【0126】
また、ディーゼルポンプ1によれば、ボール式の逆止弁55の圧縮コイルバネ61が、ボール57を受けるところとこの近傍の箇所のみで巻き半径が小さくなっているので、圧縮されたときに圧縮コイルバネ61に発生する応力の値を一層小さくすることができ、燃料の圧縮率をさらに上げることができる。
【0127】
また、ディーゼルポンプ1によれば、シリンダ9の貫通孔69の、第1の部位71とプランジャ11が係合している第2の部位73との間に形成されている第3の部位75の内径が第2の部位73よりも僅かに大きくなっているので、第2の部位73の長さを短くすることができ(円柱状の第2の部位73の内径と高さとの比を小さくすることができ)、シリンダ9の製造(プランジャ11が係合する第2の部位73の加工)がしやすくなる。
【0128】
また、ディーゼルポンプ1によれば、シリンダ9の外周の段差77よりも一端部側の部位79がハウジング3に係合する(嵌る)ことでシリンダ9がハウジング3に一体的に設けられており、シリンダ9の中心軸C5の延伸方向で、第2の部位73と第3の部位75との境界が、段差77よりもドライブシャフト5側に設けられているので、シリンダ9のハウジング3への設置でシリンダ9がごく僅かに変形したときでも、プランジャ11がシリンダ9に対してスムーズに移動することができる。
【0129】
ところで、ディーゼルポンプ1は、ハウジングに一体的に設けられているシリンダと、前記シリンダに往復可能に設けられているプランジャと、前記ハウジングに設けられていて、前記プランジャを駆動する(プランジャを往復運動させる)プランジャ駆動機構とを備え、前記プランジャが往復運動で一方の方向に移動するときに燃料を前記シリンダと前記プランジャとを備えて構成されているシリンダ室内で圧縮し、この圧縮した燃料を前記シリンダ室から吐出し、前記プランジャが往復運動で一方の方向とは反対の方向である他方の方向に移動するときに燃料を前記シリンダ室に導入するように構成されているディーゼルポンプであって、前記プランジャ駆動機構は、カムの動節を構成しているライダ軸部を備え、前記ハウジングに回転可能に設けられているドライブシャフトと、内周面が前記ドライブシャフトのライダ軸部の外周面に係合し(たとえば、面接触し)、前記ライダ軸部に対して回転可能(回転自在)になっており、外周面に前記プランジャが係合(たとえば、線接触)している円筒状のライダとを有し、前記ライダ軸部と前記ライダとは、お互いが滑り対偶をなしており、前記プランジャと前記ライダとは、前記ドライブシャフトを回転することで前記燃料を前記シリンダ室で圧縮するときには、前記プランジャと前記ライダとの間の接触圧が大きくなっていることで、お互いが転がり対偶をなすように構成されており、前記プランジャと前記ライダとは、前記ドライブシャフトを回転することで燃料を前記シリンダ室に導入するときには、前記プランジャと前記ライダとの間の接触圧が小さくなっていることで、お互いが滑り対偶をなすように構成されているディーゼルポンプの例である。
【0130】
さらに、ディーゼルポンプ1では、たとえば、前記シリンダと前記プランジャとは、一対で設けられており、前記ドライブシャフトの回転によって前記各プランジャが交互に燃料を圧縮するように構成されている。
【0131】
そして、各プランジャのうちの一方のプランジャが一方のシリンダ室で燃料を圧縮しているときには、各プランジャのうちの他方のプランジャは他方のシリンダ室に燃料を導入するように構成されており、また、各プランジャのうちの一方のプランジャが一方のシリンダ室に燃料を導入しているときには、各プランジャのうちの他方のプランジャは他方のシリンダ室で燃料を圧縮している。
【0132】
また、一方のプランジャが一方のシリンダ室で燃料を圧縮しているときには、一方のプランジャとライダとの間の接触圧が大きくなっていて、かつ、ライダがライダ軸部に対して回転可能になっていることで、一方のプランジャとライダとがお互いが転がり対偶をなしている。また、他方のプランジャとライダとの間の接触圧が小さくなっていてかつ一方のプランジャとライダとがお互いが転がり対偶をなしていることで、他方のプランジャとライダとがお互いがすべり対偶をなしている。
【0133】
逆に、他方のプランジャが他方のシリンダ室で燃料を圧縮しているときには、他方のプランジャとライダとの間の接触圧が大きくなっていることで、他方のプランジャとライダとがお互いが転がり対偶をなしており、一方のプランジャとライダとの間の接触圧が小さくなっていていることで、一方のプランジャとライダとがお互いがすべり対偶をなしている。
【解決手段】ハウジング3に設けられているシリンダ9と、シリンダに往復可能に設けられていることによりシリンダとともにシリンダ室17を形成し、往復運動で一方の方向に移動するときに燃料をシリンダ室内で圧縮し、他方の方向に移動するときに燃料をシリンダ室に導入するプランジャ11と、球状のボール57と、円錐台側面状の内面63を備えた貫通孔65が形成されているバルブシート59と、シリンダ室の内部に設けられ一端部がボールに当接し他端部がシリンダに当接し巻き径の値が前記一端部で小さくなっている圧縮コイルバネ61とを備えて構成されており、シリンダ室に燃料が導入されるときには、圧縮コイルバネが圧縮されることでバルブシートの貫通孔が開いて燃料が通過するように構成されているボール式の逆止弁55とを有するディーゼルポンプ1である。