(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1から
図5を参照して、第1実施形態に係る眼底観察装置の構成について説明する。
【0017】
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィを適用した構成について詳しく説明する。特に、この実施形態では、眼底の断層像及び撮影画像の双方を取得可能な眼底観察装置を取り上げる。なお、光コヒーレンストモグラフィによって取得される画像をOCT画像と呼ぶことがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。
【0018】
<構成>
図1及び
図2に示すように、眼底観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0019】
<眼底カメラユニット>
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を形成するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、赤外光(近赤外光)を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像である。なお、眼底カメラユニット2は、蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0020】
眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に、被検者の顔が動かないように支えるための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。本実施形態において、撮影光学系30及びCCDイメージセンサ35(又は38)が「画像生成部」の一例である。
【0021】
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して赤外光(近赤外光)となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、対物レンズ22を経由して眼底Efを照明する。本実施形態において、観察照明光は「照明光」の一例である。
【0022】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ダイクロイックミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)Kが表示される。
【0023】
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)Hが表示される。なお、観察画像Kを表示する表示装置3と撮影画像Hを表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。本実施形態において、撮影照明光は「照明光」の一例である。
【0024】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用視標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための視標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。本実施形態において、固視標を被検眼に投影させるLCD39が「固視標投影部」の一例である。
【0025】
LCD39は、制御部211(後述)の制御により、その画面上の特定の座標位置(固視標の投影位置)のみを選択的に点灯させる。LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー40にて反射され、ダイクロイックミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0026】
LCD39は、その画面上における固視標の投影位置を変更可能である。固視標の投影位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。
【0027】
なお、固視標投影部はLCD39に限られない。例えば複数のLED(Light Emitting Diode)を有するパネルをLCD39の代わりに配置し、いずれかのLEDを点灯させることにより固視標の投影を行うことが可能である。
【0028】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための視標(アライメント視標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための視標(スプリット視標)を生成する。
【0029】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0030】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ダイクロイックミラー32により反射され、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント視標像)は、観察画像Kとともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント視標像の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい。
【0031】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により二つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、対物レンズ22により眼底Efに結像される。
【0032】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット視標像)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット視標像の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う。また、スプリット視標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0033】
ダイクロイックミラー32の後方には、ミラー41、コリメータレンズ42、及びガルバノミラー43、44を含む光路が設けられている。この光路はOCTユニット100に導かれている。
【0034】
ガルバノミラー44は、OCTユニット100からの信号光LSをx方向に走査する。ガルバノミラー43は、信号光LSをy方向に走査する。これら二つのガルバノミラー43、44により、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。本実施形態において、信号光LSは「照明光」の一例である。
【0035】
<OCTユニット>
OCTユニット100には、眼底Efの断層像を取得するための光学系が設けられている(
図2を参照)。この光学系は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0036】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。
【0037】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。なお、ファイバカプラ103は、光を分割する手段(スプリッタ;splitter)、及び、光を合成する手段(カプラ;coupler)の双方の作用を有するが、ここでは慣用的に「ファイバカプラ」と称する。
【0038】
信号光LSは、光ファイバ104により導光され、コリメータレンズユニット105により平行光束となる。更に、信号光LSは、各ガルバノミラー44、43により反射され、コリメータレンズ42により集光され、ミラー41により反射され、ダイクロイックミラー32を透過し、LCD39からの光と同じ経路を通って眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efにおいて散乱、反射される。この散乱光及び反射光をまとめて信号光LSの眼底反射光と称することがある。信号光LSの眼底反射光は、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。
【0039】
参照光LRは、光ファイバ106により導光され、コリメータレンズユニット107により平行光束となる。更に、参照光LRは、ミラー108、109、110により反射され、ND(Neutral Density)フィルタ111により減光され、ミラー112に反射され、コリメータレンズ113により参照ミラー114の反射面に結像される。参照ミラー114に反射された参照光LRは、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。
【0040】
ファイバカプラ103は、信号光LSの眼底反射光と、参照ミラー114に反射された参照光LRとを合波する。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ115により導光されて出射端116から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ117により平行光束とされ、回折格子118により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ119により集光されてCCDイメージセンサ120の受光面に投影される。
【0041】
CCDイメージセンサ120は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ120は、この電荷を蓄積して検出信号を生成する。更に、CCDイメージセンサ120は、この検出信号を演算制御ユニット200に送る。
【0042】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0043】
<演算制御ユニット>
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様である。
【0044】
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底Efの断層像G(
図2を参照)等のOCT画像を表示装置3に表示させる。
【0045】
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、各ガルバノミラー43、44の動作制御などを行う。
【0046】
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、参照ミラー114及びコリメータレンズ113の移動制御、CCDイメージセンサ120の動作制御などを行う。
【0047】
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいてOCT画像を形成する専用の回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0048】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、それぞれ別体として構成されていてもよい。
【0049】
<制御系>
眼底観察装置1の制御系の構成について
図3を参照しつつ説明する。
【0050】
<制御ユニット>
眼底観察装置1の制御系は、演算制御ユニット200の制御ユニット210を中心に構成される。制御ユニット210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。
【0051】
制御ユニット210には、制御部211と記憶部212が設けられている。制御部211は、前述の各種制御を行う。特に、制御部211は、眼底カメラユニット2の走査駆動部70及び合焦駆動部80、更にOCTユニット100の光源ユニット101及び参照駆動部130を制御する。
【0052】
走査駆動部70は、たとえばサーボモータを含んで構成され、ガルバノミラー43、44の向きを各々独立に変更する。本実施形態において、「走査部」は走査駆動部70、ガルバノミラー43、44を含む。
【0053】
合焦駆動部80は、たとえばパルスモータを含んで構成され、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、眼底Efに向かう光の合焦位置が変更される。
【0054】
参照駆動部130は、たとえばパルスモータを含んで構成され、参照光LRの進行方向に沿って、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を一体的に移動させる。
【0055】
また、制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。具体的には、制御部211は、入力部250(後述)により患者ID、或いは患者IDと他の情報(撮影モード、撮影日時、被検眼Eの左眼/右眼の識別情報(左右情報)等)が入力されたときに、当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を記憶部212から読み出す制御を行う。
【0056】
また、制御部211は、記憶部212から読み出された固視標の投影位置に基づいて、LCD39を制御して当該投影位置に固視標を投影させる。より具体的に、制御部211は、読み出された投影位置に対応するLCD39の画素を選択的に点灯させる。その結果、被検眼に固視標が投影される。
【0057】
更に、制御部211は、当該投影位置に固視標が投影された状態でガルバノミラー43、44(走査部)を動作させる。つまり、制御部211がガルバノミラー43、44及び走査駆動部70を制御することにより、被検眼Eを2次元的(xy方向)に走査(スキャン)することが可能となる。なお、「走査」には被検眼Eの深さ方向(z方向)にスキャンする場合も含まれる。この場合、制御部211はガルバノミラー43、44の制御と合わせて、光源ユニット101及び参照駆動部130の動作制御も行う。
【0058】
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、画像データを取得した際の撮影モード、画像データを取得した際の固視標の投影位置、患者IDや氏名などの被検者に関する情報、撮影日時、及び左眼/右眼の識別情報(左右情報)などがある。また、ある画像データを取得した際の、当該画像データ、患者ID、撮影モード、固視標の投影位置、撮影日時、及び左右情報は互いに関連付けられた状態で、例えばテーブルデータの形式で記憶部212に記憶されている。固視標の投影位置は、例えばLCD39の複数の画素のうち、点灯する画素の座標値として記憶される。なお、「撮影モード」とは、注目部位を撮影すると共に、注目部位の周辺領域も観察できるように撮影を行うためのモードである。「撮影モード」には、例えば黄斑部を注目部位として撮影する「黄斑部撮影モード」や、視神経乳頭と黄斑部の双方を注目部位として撮影する「視神経乳頭・黄斑部撮影モード」等がある。
【0059】
<画像形成部>
画像形成部220は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のフーリエドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。
【0060】
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板や通信インターフェイス等を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づいて呈示される「画像」とを同一視することがある。本実施形態において、「画像生成部」は、照明光学系10、撮影光学系30、光源ユニット101、CCDイメージセンサ120及び画像形成部220を含む。
【0061】
<画像処理部>
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像や眼底カメラユニット2で取得された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。
【0062】
また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層像の間の画素を補間する補間処理を実行するなどして、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。
【0063】
画像処理部230は、3次元画像の画像データに基づいて、任意の断面における断層像を形成することができる。この処理は、たとえば、手動又は自動で指定された断面に対し、この断面上に位置する画素(ボクセル等)を特定し、特定された画素を2次元的に配列させて当該断面における眼底Efの形態を表す画像データを形成することにより実行される。このような処理により、元の断層像の断面(信号光LSの走査線の位置)だけでなく、所望の断面における画像を取得することが可能となる。
【0064】
画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。
【0065】
<表示部>
表示部240は、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスを含んで構成される。また、表示部240は、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルモニタなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0066】
<入力部>
入力部250は、前述した演算制御ユニット200の入力デバイスを含んで構成される。また、入力部250には、眼底観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、入力部250は、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。
【0067】
なお、表示部240と入力部250は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と入力機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。
【0068】
<信号光の走査及びOCT画像について>
ここで、信号光LSの走査及びOCT画像について説明する。
【0069】
眼底観察装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
【0070】
ガルバノミラー43、44は互いに直交する方向に信号光LSを走査するように構成されているので、信号光LSをx方向及びy方向にそれぞれ独立に走査できる。更に、ガルバノミラー43、44の向きを同時に制御することにより、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
【0071】
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿った深度方向(z方向)の断層像を形成することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、3次元画像を形成することができる。
【0072】
<第1実施形態の動作>
次に、
図4及び
図5を参照して、眼底観察装置1が行う記憶動作と撮影動作について説明する。
図4は眼底観察装置1の記憶動作を示すフローチャートである。また
図5は眼底観察装置1の撮影動作を示すフローチャートである。「記憶動作」とは、患者IDと固視標の投影位置等を関連付けて記憶部212に記憶させる動作をいう。また、「撮影動作」とは、記憶動作で記憶された固視標の投影位置に基づいて撮影を行う動作をいう。
【0073】
<記憶動作>
まず、検査者は入力部250等により、被検者に固有の患者IDと、撮影日時と、撮影を行う被検眼Eの左右情報を入力する(S10)。なお、患者IDが入力された場合に、制御部211により自動で撮影日時や左右情報を特定することも可能である。
【0074】
次に、検査者は入力部250等により、撮影モードを選択する(S11)。本動作例では、視神経乳頭を注目部位として撮影する「視神経乳頭撮影モード」が選択されたものとする。
【0075】
S11で撮影モードが選択された後、アライメント光学系50を用いて、被検眼Eのアライメント調整を行う(S12)。
【0076】
次に、制御部211からの制御を受けて、LCD39は、S11で選択された撮影モードに対応する固視標を被検眼Eに対して投影する。そして、当該固視標に基づいて被検眼Eの固視を行う(S13)。LCD39における固視標の投影位置は、例えば撮影モード毎に予め設定されている。つまり本実施形態ではS11で「視神経乳頭撮影モード」が選択されたため、当該撮影モードに設定されたLCD39の画素(投影位置)がデフォルトとして点灯する。しかし、被検眼Eの固視方向は、眼の状態等により微調整が必要である。従って、撮影モードに設定されたLCD39の画素を点灯させたのち、点灯させる画素を変更させることにより、固視標の投影位置をデフォルトから最適と思われる位置に変更することも可能である。
【0077】
次に、固視された状態の被検眼Eに対して、OCTユニット100による撮影が行われる(S14)。この場合には、視神経乳頭及びその周辺領域が撮影されることになる。
【0078】
制御部211は、S10で入力された患者ID、撮影日時及び被検眼Eの左右情報、S11で選択された撮影モード、S13における固視標の投影位置、及びS14における撮影により取得された画像データを記憶部212に書き込む。そして、記憶部212はそれらを関連付けて記憶する(S15)。
【0079】
<撮影動作>
S14で撮影された被検眼Eに対して経過観察を行う場合、まず検査者は入力部250等により、被検眼Eを有する被検者の患者IDを入力する(S20)。なお、必要に応じ、患者IDと共に、撮影モード、撮影日時、及び被検眼Eの左右情報のいずれか(或いは全て)を入力することも可能である。この場合、例えば、患者IDに関連付けられた固視標の投影位置が複数ある場合であっても、撮影モード等を条件として任意の投影位置を特定することができる。
【0080】
S20の入力に基づき、制御部211は、記憶部212から当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を読み出す(S21)。ここで、患者IDに関連付けられた固視標の投影位置が複数ある場合、制御部211はそれらを表示装置3や表示部240に一覧表示させることが可能である。この場合、検査者は入力部250等により希望する一の固視標の投影位置を一覧から選択することができる。また、その際に撮影日時や左右情報等を合わせて入力することにより、任意の投影位置を特定することも可能である。
【0081】
次に制御部211は、S21で読み出された固視標の投影位置に基づいてLCD39の動作制御を行う(S22)。具体的にはS21で読み出された固視標の投影位置に対応するLCD39の画素を点灯させる。
【0082】
LCD39が動作制御されることにより、固視標が被検眼Eに投影され、被検眼Eの固視が行われる(S23)。つまり、記憶動作時と同じ投影位置に基づいて被検眼Eの固視を行うことができる。
【0083】
S23で固視がなされた後、OCTユニット100による撮影が行われる(S24)。この場合、S15で撮影を行ったときと同じ固視位置が再現されるため、視神経乳頭をS15で取得された画像のフレーム内における位置と同じ位置で撮影することができる。撮影により取得された画像データは患者IDと関連付けられた状態で記憶部212に記憶される。
【0084】
そしてS14で取得された画像データに基づく画像とS24で取得された画像データに基づく画像とを比較することにより、経過観察が可能となる(S25)。
【0085】
<作用・効果>
以上のような眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0086】
本実施形態に係る眼底観察装置1は、被検眼Eの眼底Efに照明光を照射し、照明光の眼底反射光を受光して被検眼Eの画像を生成する画像生成部を有する。固視標投影部(LCD39)は、投影位置が変更可能な固視標を被検眼Eに投影する。記憶部212は、眼底反射光が受光されたときの固視標の投影位置を患者IDに関連付けて記憶する。入力部250は、患者IDを入力する。制御部211は、入力部250により患者IDが入力されたときに、当該患者IDに関連付けられた投影位置を記憶部212から読み出し、LCD39を制御して当該投影位置に固視標を投影させる。
【0087】
従って、本実施形態の構成によれば、複数回の撮影を行う場合であっても、それぞれの画像のフレーム内の同じ位置に注目部位の画像を表示させることができる。なお、「同じ位置」には実質的に同じ位置も含まれる。「実質的に同じ」とは、ある画像同士で経過観察ができる状態にあることをいう。
【0088】
また、本実施形態に係る眼底観察装置1は、記憶部に212、患者ID、固視標の投影位置、及び撮影モード(或いは、撮影日時、被検眼Eの左右情報)が関連付けられて記憶されている。そして入力部250により患者ID及び撮影モードが入力されたときに、制御211部は当該患者ID及び当該撮影モードに関連付けられた固視標の投影位置を記憶部212から読み出し、固視標投影部(LCD39)を制御して当該投影位置に固視標を投影させることができる。
【0089】
また、本実施形態に係る眼底観察装置1は、患者IDに関連付けられた固視標の投影位置が複数あるときに、制御部211により、複数の固視標の投影位置を表示部240(表示装置3)に一覧表示させることが可能である。そして入力部250により、当該一覧から任意の固視標の投影位置が選択された場合、制御部211は、固視標投影部(LCD39)を制御して当該選択された投影位置に固視標を投影させることができる。
【0090】
従って、本実施形態の構成によれば、患者IDに複数の固視標の投影位置が関連付けられている場合であっても検査者が望む固視標の投影位置を特定することが可能となる。
【0091】
更に、本実施形態に係る眼底観察装置1は、被検眼Eに対する照明光の照射位置を変更する走査部(ガルバノミラー43・44、走査駆動部70)を有する。そして制御部211は、入力部250により入力された患者IDに関連付けられた投影位置を記憶部212から読み出し、LCD39を制御して当該投影位置に固視標を投影させ、且つ当該投影位置に固視標が投影された状態でガルバノミラー43・44の動作制御を行う。
【0092】
従って、本実施形態の構成によれば、複数回の撮影を行う場合において、患者IDに関連付けられた投影位置と同じ位置で深さ方向への走査を行うことができるため、それぞれの画像内の同じ位置における断層像を取得、表示させることができる。
【0093】
<第2実施形態>
図6から
図8を参照して、第2実施形態に係る眼底観察装置の構成について説明する。第2実施形態の構成は第1実施形態の構成と同じ点も多いため、異なる点を中心に説明を行う。
【0094】
本実施形態における画像処理部230は、特定部231及び変位算出部232を有する。
【0095】
特定部231は、画像生成部で生成された赤外画像における注目部位の位置情報を特定する。「注目部位の位置情報」とは、画像のフレーム内における注目部位が表示されている位置(座標値)をいう。
【0096】
注目部位の位置の特定は、例えば撮影モードの入力に伴い、特定部231において赤外画像の各画素における輝度値を測定し、輝度値が閾値以上の部位(輝度値が閾値以上の画素範囲)を注目部位(例えば視神経乳頭)として特定する。閾値は注目部位毎に予め定まった値を用いることが可能である。例えば複数の被検者の過去画像における視神経乳頭部分の輝度値を平均した値を閾値として用いる。或いは、各画素の相対的な輝度値及び注目部位の形状を利用して閾値を決定することができる。閾値は、記憶部212等に記憶されている。
【0097】
本実施形態における記憶部212に記憶されるデータとしては、特定部231で特定された注目部位の位置情報がある。患者ID、各画像データ、撮影モード、固視標の投影位置、撮影日時、左右情報、及び注目部位の位置情報は関連付けられて記憶される。本実施形態における「注目部位の位置情報」は注目部位の座標値である。
【0098】
変位算出部232は、入力部250により患者IDが入力され、且つ画像生成部により赤外画像が生成されたときに、当該患者IDに関連付けられた注目部位の位置情報を記憶部212から読み出し、当該赤外画像について特定部231により特定された位置情報と、当該読み出された位置情報との変位を算出する。例えば、記憶部212から読み出された注目部位の位置情報が(X
0、Y
0)、新たに撮影された赤外画像について特定された注目部位の位置情報が(−X
1、−Y
1)であったとする。この場合、変位算出部232は、変位として(X
0−X
1、Y
0−Y
1)=(ΔX、ΔY)、つまり記憶部212に記憶された位置情報に対する新たな位置情報の変位を算出する。
【0099】
本実施形態における制御部211は、第1実施形態における機能に加え、入力部250により患者IDが入力されたときに、当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を記憶部212から読み出し、当該投影位置と変位算出部232で算出された変位とに基づいて固視標投影部(LCD39)を制御して固視標を投影させる。具体的には、変位算出部232で算出された変位に基づいて、当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を変更し、対応するLCD39の画素を点灯させる制御を行う。例えば、患者IDに関連付けられた固視標の投影位置が(x、y)、変位算出部232で算出された変位が(ΔX、ΔY)の場合、制御部211は変位(ΔX、ΔY)をLCD39のスケールに合うように変位(ΔX´、ΔY´)に変換する。そして、制御部211は、固視標の投影位置を(x+ΔX´、y+ΔY´)として対応するLCD39の画素を点灯させる。その後、OCTユニット100により撮影が行われることとなる。
【0100】
なお、「注目部位の位置情報」は赤外画像情報の形式で記憶されてもよい。赤外画像情報として記憶しておくことで、過去の注目部位と今回の注目部位が異なる場合であっても、当該赤外画像情報から今回の注目部位の位置情報を特定することが可能である。
【0101】
例えば、過去の赤外画像における注目部位が黄斑部であり、今回の赤外画像における注目部位が視神経乳頭であるとする。この場合、特定部231は、過去の赤外画像及び今回の赤外画像それぞれから視神経乳頭の位置情報を特定する。変位算出部232は、過去の赤外画像における視神経乳頭の位置情報と今回の赤外画像における視神経乳頭の位置情報との変位を算出する。制御部211は、患者IDに関連付けられた固視標の投影位置と当該変位とに基づいて固視標投影部(LCD39)を制御して固視標を投影させる。
【0102】
<第2実施形態の動作>
次に第2実施形態に係る眼底観察装置1の記憶動作と撮影動作について説明する。
図7は眼底観察装置1の記憶動作を示すフローチャートである。また
図8は眼底観察装置1の撮影動作を示すフローチャートである。
【0103】
<記憶動作>
まず、検査者は入力部250等により、被検者に固有の患者IDと、撮影日時と、撮影を行う被検眼Eの左右情報を入力する(S30)。
【0104】
次に、検査者は入力部250等により、撮影モードを選択する(S31)。
【0105】
S31で撮影モードが選択された後、アライメント光学系50を用いて、被検眼Eのアライメント調整を行う(S32)。
【0106】
次に、制御部211からの制御を受けて、LCD39は、S11で選択された撮影モードに対応する固視標を被検眼Eに対して投影する。そして、当該固視標に基づいて被検眼Eの固視を行う(S33)。
【0107】
S32において固視された状態の被検眼Eに対して、眼底カメラユニット2による赤外画像撮影が行われる。また同じ状態(S32で固視された状態)でOCTユニット100による断層画像撮影が行われる(S34)。これらの撮影は並行して行うことが望ましい。
【0108】
ここで、特定部231は、S34の撮影により得られた赤外画像中における注目部位の位置情報(座標値)を特定する(S35)。特定部231による注目部位の特定は、S31で選択された撮影モードに応じて自動的に行われることが可能である。例えばS31で「視神経乳頭撮影モード」が選択された場合には、特定部231は、注目部位として視神経乳頭を自動的に特定する処理を実行する。
【0109】
なお、S35における注目部位の位置情報の特定は入力部250等を介して手動で行うことも可能である。この場合、例えば表示装置3に赤外画像を表示させ、入力部250を操作して注目部位の位置を指定する。当該指定に基づいて特定部231は指定された位置に対応する座標値を注目部位の位置情報として特定する。
【0110】
制御部211は、S30で入力された患者ID、撮影日時及び被検眼Eの左右情報、S31で選択された撮影モード、S33における固視標の投影位置、S34における撮影により取得された画像データ、及びS35で特定された注目部位の位置情報を記憶部212に書き込みを行う。そして、記憶部212はそれらを関連付けて記憶する(S36)。
【0111】
<撮影動作>
S34で撮影された被検眼Eに対して経過観察を行う場合、まず検査者は入力部250等により、被検眼Eを有する被検者の患者IDを入力する(S40)。S40の入力に基づき、制御部211は、記憶部212から当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を読み出す(S41)。制御部211は、S41で読み出された固視標の投影位置に基づいてLCD39の動作制御を行う(S42)。LCD39は固視標を被検眼Eに対して投影させる。当該固視標により被検眼Eの固視を行う(S43)。S43で固視がなされた後、眼底カメラユニット2による赤外光撮影が行われ、赤外画像が取得される(S44)。
【0112】
ここで、特定部231は、S44で取得された赤外画像から注目部位の位置情報を特定する(S45)。注目部位の位置情報の特定はS36と同様である。なお、一般的に、眼底カメラユニット2による赤外光撮影で得られる画像は動画像である。従って、S45で注目部位の位置情報を特定するために用いる赤外画像は、動画像を構成する赤外画像の中から任意の1枚の赤外画像を使用する。
【0113】
そして、変位算出部232は、S41で入力された患者IDに関連付けられた注目部位の位置情報とS45で特定された注目部位の位置情報とから変位を算出する(S46)。
【0114】
制御部211は、S46で算出された変位をLCD39のスケールに合わせて変換した後、S41で読み出された固視標の投影位置を当該変換した変位に基づいて変更することにより、新たな固視標の投影位置を求め、当該新たな固視標の投影位置に対応するLCD39の画素を点灯させる(S47)。
【0115】
その後、S47による新たな固視標の投影位置で固視が行われている状態で(S48)、眼底カメラユニット2による撮影やOCTユニット100による撮影が行われる(S49)。
【0116】
この場合、S35で取得された画像データに基づく画像とS49で取得された画像データに基づく画像とを比較することにより、経過観察が可能となる(S50)。
【0117】
なお、注目部位の位置情報の変位をリアルタイムで算出し、当該変位を固視標の投影位置に反映させることも可能である。すなわち、ある固視標の投影位置で固視をした状態において連続して赤外画像の取得を行う場合、特定部231は、逐次得られる赤外画像中における注目部位の位置情報を順次特定する。変位算出部232は、ある赤外画像中の注目部位の位置情報、及び別の赤外画像中の注目部位の位置情報から変位を算出する。そして制御部211が当該変位に基づいて固視標の投影位置を変更することが可能である。
【0118】
<作用・効果>
以上のような眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0119】
本実施形態に係る眼底観察装置1は、画像生成部により生成された赤外画像における注目部位の位置情報を特定する特定部231を有する。変位算出部232は、入力部250により患者IDが入力され、且つ画像生成部により赤外画像が生成されたときに、当該患者IDに関連付けられた位置情報を記憶部212から読み出し、当該赤外画像について特定部231により特定された位置情報と、当該読み出された位置情報との変位を算出する。そして制御部211は、当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を読み出し、算出された変位に基づいて固視標投影部(LCD39)における当該固視標の投影位置を変更し、固視標を投影させる。
【0120】
従って、本実施形態の構成によれば、複数回の撮影で取得された画像間において、それぞれの画像のフレーム内の注目部位の位置情報にずれ(変位)がある場合であっても、注目部位の変位だけ固視標の投影位置を変更することにより、それぞれの画像のフレーム内の同じ位置に注目部位の画像を表示させることができる。
【0121】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の制御部211は、注目部位の位置情報の変位に基づいて固視標の投影位置を変更する制御を行っている。しかし、変位が小さい場合には固視標の投影位置を変化させなくとも注目部位及びその周辺領域が観察可能な場合もありうる。よって本変形例では、
図9及び
図10を参照して、変位の大きさにより固視標の投影位置を変更するか否かを判断する構成について説明を行う。
【0122】
本変形例では、変位算出部232が比較部232aを有する。
【0123】
比較部232aは、変位算出部232で算出された変位と閾値とを比較する。具体的に、比較部232aは変位算出部232で算出された変位が閾値よりも大きいか否かを比較する。ここでの閾値は、注目部位及びその周辺領域の観察が行えるか否かを区別する値である。この閾値は例えば、撮影倍率(例:撮影倍率が高い場合、閾値は低くなる)によって自動的に設定される値である。或いは検査者等が任意に設定してもよい。
【0124】
本変形例における制御部211は、入力部250により患者IDが入力され、且つ比較部232aにおいて変位が閾値よりも大きいと判断されたときに、第2実施形態における制御動作を行う。
【0125】
次に
図10を用いて本変形例に係る眼底観察装置1の撮影動作について説明を行う。なお、記憶動作については第2実施形態と同様であるため説明を省略する。また撮影動作においても、S40〜S46までは第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0126】
本変形例における撮影動作においては、S46で算出された変位に対して、比較部232aは閾値との比較を行う(S46´)。
【0127】
変位が閾値よりも大きい場合(S46´´でYの場合)、制御部211は、S41で読み出された固視標の投影位置に対してS46で算出された変位を用い、新たな固視標の投影位置を求め、当該新たな固視標の投影位置に対応するLCD39の画素を点灯させる(S47)。
【0128】
その後、S47による新たな固視標の投影位置で固視が行われた上で(S48)、眼底カメラユニット2による撮影やOCTユニット100による撮影が行われる(S49)。
【0129】
一方、変位が閾値よりも小さい場合(S46´´でNの場合)、固視標の投影位置を変更することなく撮影が行われる(S49)。
【0130】
そして、S35で取得された画像データに基づく画像とS49で取得された画像データに基づく画像とを比較することにより、経過観察が可能となる(S50)。
【0131】
<作用・効果>
本変形例における眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0132】
本変形例に係る眼底観察装置1は、変位算出部232により算出された変位と閾値とを比較する比較部232aが設けられている。そして、制御部211は、入力部250により患者IDが入力され、且つ比較部232aにおいて変位が前記閾値よりも大きいと判断されたときに、当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置を記憶部212から読み出す。更に、制御部211は、当該投影位置と算出された変位とに基づいて固視標投影部(LCD39)を制御して固視標を投影させる。
【0133】
従って、本変形例の構成によれば、変位が小さいときには固視標の投影位置の変更を行わない。よって第2実施形態の効果に加え、眼底観察装置による観察の効率化を図ることができる。
【0134】
<第3実施形態>
図11から
図13を参照して、第3実施形態に係る眼底観察装置の構成について説明する。第3実施形態の構成は第1、第2実施形態の構成と同じ点も多いため、異なる点を中心に説明を行う。なお、本実施形態における「赤外画像間の変位」には「注目部位の位置情報間の変位」が含まれるものとする。
【0135】
本実施形態における画像処理部230は、変位算出部232及び統計値算出部233を有する。
【0136】
本実施形態における変位算出部232は、画像生成部で生成された赤外眼画像間の変位を算出する。具体例として、赤外画像R
1〜R
4がある場合、R
1とR
2の変位、R
2とR
3の変位、及びR
3とR
4の変位を算出する。変位は、例えば赤外画像中における注目部位の位置情報や検査者が任意に指定した位置情報から算出する。なお変位算出の方法はこれに限られない。例えばR
1に対するR
2〜R
4の変位を算出することも可能である。
【0137】
統計値算出部233は、変位算出部232で算出された複数の変位の統計値を算出する。統計値は、例えば赤外画像中における注目部位(視神経乳頭)の位置情報のxy方向への変位の平均値である。具体的には、赤外画像R
1とR
2の変位が(ΔX
1、ΔY
1)、赤外画像R
2とR
3の変位が(ΔX
2、ΔY
2)・・・・赤外画像R
nー1とR
nの変位が(ΔX
n、ΔY
n)である場合、その統計値(平均値)は(ΔX
1+ΔX
2+・・・・+ΔX
n/n、ΔY
1+ΔY
2+・・・・+ΔY
n/n)となる。このような統計値は被検眼Eの動きの傾向を反映している。
【0138】
本実施形態における記憶部212に記憶されるデータとしては、統計値算出部233で算出された統計値がある。患者ID、各画像データ、撮影モード、固視標の投影位置、撮影日時、左右情報、及び統計値は関連付けられて記憶されている。
【0139】
本実施形態における制御部211は、第1実施形態における機能に加え、入力部250により患者IDが入力されたときに、当該患者IDに関連付けられた投影位置及び統計値を記憶部212から読み出し、固視標投影部(LCD39)を制御して当該患者IDに関連付けられた投影位置を変更させる制御を行う。例えば、患者IDに関連付けて記憶されている固視標の投影位置が(x、y)の場合、制御部211は、統計値算出部233で算出された統計値(ΔX
1+ΔX
2+・・・・+ΔX
n/n、ΔY
1+ΔY
2+・・・・+ΔY
n/n)をLCD39のスケールに合うように統計値(ΔX´´、ΔY´´)に変換する。そして、制御部211は、固視標の投影位置を(x+ΔX´´、y+ΔY´´)として固視標の投影位置を変更し、対応するLCD39の画素を点灯させる。その後、眼底カメラユニット2或いはOCTユニット100により撮影が行われることとなる。
【0140】
<第3実施形態の動作>
次に第3実施形態に係る眼底観察装置1の記憶動作と撮影動作について説明する。
図12は眼底観察装置1の記憶動作を示すフローチャートである。また
図13は眼底観察装置1の撮影動作を示すフローチャートである。
【0141】
<記憶動作>
まず検査者は入力部250等により、被検者に固有の患者IDと、撮影日時と、撮影を行う被検眼Eの左右情報を入力する(S50)。
【0142】
次に検査者は入力部250等により、撮影モードを選択する(S51)。
【0143】
S51で撮影モードが選択された後、アライメント光学系50を用いて、被検眼Eのアライメント調整を行う(S52)。
【0144】
次に、制御部211からの制御を受けて、LCD39は、S51で選択された撮影モードに対応する固視標を被検眼Eに対して投影する。そして、当該固視標に基づいて被検眼Eの固視を行う(S53)。
【0145】
S53において固視された状態で眼底カメラユニット2による赤外画像撮影が行われる。また同じ状態(S53で固視された状態)でOCTユニット100による断層画像撮影が行われる(S54)。
【0146】
ここで変位算出部232は、眼底カメラユニット2で撮影された複数の赤外画像間の変位を検出する(S55)。そして統計値算出部233は、S55で算出された複数の変位の統計値を算出する(S56)。
【0147】
制御部211は、S50で入力された患者ID、撮影日時及び被検眼Eの左右情報、S51で選択された撮影モード、S53における固視標の投影位置(LCD39の点灯位置)、S54における撮影により取得された画像データ、及びS56で算出された統計値を記憶部212に書き込む。そして、記憶部212はそれらを関連付けて記憶する(S57)。
【0148】
<撮影動作>
S55で撮影された被検眼Eに対して経過観察を行う場合、まず検査者は入力部250等により、被検眼Eを有する被検者の患者IDを入力する(S60)。
【0149】
S60で入力された患者IDに基づき、制御部211は、記憶部212から当該患者IDに関連付けられた固視標の投影位置及び統計値を読み出す(S61)。
【0150】
制御部211は、S61で読み出された統計値をLCD39のスケールに合わせて変換した後、S61で読み出された固視標の投影位置を当該変換した変位に基づいて変更することにより、新たな固視標の投影位置を求め、当該新たな固視標の投影位置に対応するLCD39の画素を点灯させる(S62)。なおS62のステップは、固視標を一度投影した後、S61で読み出された統計値に基づいて投影位置を変更することでもよい。
【0151】
S62の投影位置において、LCD39は被検眼Eに対して固視標を投影する。そして、当該固視標に基づいて被検眼Eの固視を行う(S63)。そして眼底カメラユニット2及びOCTユニット100による撮影が行われる(S64)。
【0152】
この場合、S55で撮影された画像データに基づく画像とS64で撮影された画像データに基づく画像とを比較することにより、経過観察が可能となる(S65)。
【0153】
<作用・効果>
以上のような眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0154】
本実施形態に係る眼底観察装置1は、変位算出部232において、画像生成部で生成された赤外眼画像間の変位を算出する。また統計値算出部233は、変位算出部232で算出された複数の変位の統計値を算出する。そして、入力部により患者IDが入力されたときに、制御部211は、当該患者IDに関連付けられた投影位置及び統計値を記憶部212から読み出す。更に、制御部211は、当該投影位置と当該統計値とに基づいて固視標投影部(LCD39)を制御して固視標を投影させる。
【0155】
従って、過去に行われた複数回の撮影で取得された赤外画像間にずれ(変位)がある場合であっても、その変位の統計値(被検眼Eの動きの傾向)を考慮して固視標の投影位置を調整することにより、それぞれの画像のフレーム内の同じ位置に注目部位の画像を表示させることができる。
【0156】
<第1実施形態から第3実施形態に共通な事項>
以下、第1実施形態から第3実施形態に応用可能な構成として変形例1〜3の説明を行う。
【0157】
<変形例1>
上記実施形態では眼底カメラユニット2とOCTユニット100の双方を有する眼底観察装置1の構成について述べたが、これに限られない。例えば眼底カメラユニット2のみを有する眼底観察装置であっても上記実施形態の構成を応用することが可能である。
【0158】
<変形例2>
上記実施形態の構成は、共焦点光学系を有する走査型レーザ検眼装置(Scanning Laser Ophthalmoscope。以下、「SLO」という場合がある)にも適用可能である。SLOは眼底に対して2次元的にレーザ光を走査し、その反射光を受光することにより眼底像を得る装置である。SLOにおいては、光源の出射端と被検眼Eとが共役な関係となっている。SLOを用いる場合であっても撮影前に被検眼の固視が行われる。この場合、第1実施形態から第3実施形態と同様、SLOに設けられた固視標投影部を用いて被検眼に固視標が投影され、被検眼の固視が行われる。
【0159】
またSLOはガルバノミラー等の走査部により眼底に対して照射光を走査しながら照射する照射光学系、及び照射光の反射光を撮影する撮影光学系を有する。照射される光は例えば赤外光や励起光がある。つまりSLOを用いる場合、照射光学系及び撮影光学系が「画像生成部」の役割を有する。なお、照射光学系は共焦点光学系である。
【0160】
<変形例3>
上記実施形態において、記憶部212は、患者ID、撮影日時、被検眼Eの左右情報、撮影モード、及び固視標の投影位置を関連付けて記憶しているがこれに限られない。複数回の撮影を行う場合に、それぞれの画像のフレーム内の同じ位置に注目部位の画像を表示させるためには、記憶部212に少なくとも患者IDと固視標の投影位置が関連付けて記憶されていればよい。
【0161】
また、装置形式等に応じ、患者ID及び固視標の投影位置に対して、撮影日時、左右情報、撮影モードのいずれかを関連付けて記憶させることが可能である。この場合、前述のようにある患者IDに関連付けられた固視標の投影位置が複数あっても、患者ID及び撮影モード等を入力することにより記憶部212から任意の投影位置を読み出すことが可能となる。
【0162】
<その他>
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。