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フルオレン化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(メチル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(フェニル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(メチル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(フェニル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシナフチル)フルオレンから選択された少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の可塑剤。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の樹脂組成物(セルロース系樹脂組成物)は、セルロース系樹脂と、非セルロース系熱可塑性樹脂と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するフルオレン化合物とを含む。なお、本発明の樹脂組成物において、フルオレン化合物は、後述するように、少なくともセルロース系樹脂を可塑化させる成分(可塑剤)として作用するようである。
【0023】
[セルロース系樹脂]
セルロース系樹脂としては、特に制限されず、種々のセルロース誘導体、例えば、セルロースエステル、セルロースカーバメート(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテルなどが使用できる。
【0024】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースC
3−5アシレート;セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)などのセルロースアセテートC
3−5アシレートなどのセルロースアシレートが挙げられる。
【0025】
また、セルロースエーテルとしては、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのC
1−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのヒドロキシC
2−4アルキルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC
2−4アルキルC
1−4アルキルセルロースなど)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)など)、アルキル−カルボキシアルキルセルロース(メチルカルボキシメチルセルロースなど)、これらの誘導体[例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのCMC塩(アルカリ金属塩など)など]などが例示できる。
【0026】
セルロース系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。セルロース系樹脂のうち、セルロースエステル、セルロースエーテルなどが好ましく、特に、セルロースエステル(セルロースアシレート)、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートC
3−4アシレートなどが好ましい。より具体的には、セルロース系樹脂として、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステルを好適に用いてもよい。
【0027】
このようなセルロース系樹脂(セルロースエステルなど)は、熱分解温度と、融点又は軟化点とが近く、加熱により流動化することが困難である。そのため、通常、熱可塑性樹脂に利用される樹脂の溶融状態又は流動性を利用したコンパウンド化、成形又は加工方法などを、セルロース系樹脂に適用できない場合が多い。中でもセルロースアセテート(特に、セルロースジアセテート及びセルローストリアセテート)は、溶剤に対する溶解性が低い上、加熱により流動化させるのが極めて困難である。また、従来の可塑剤により、セルロースエステルなどのセルロース誘導体を可塑化する場合には、多量の可塑剤を用いる必要があり、得られる樹脂組成物では、セルロース系樹脂の特性を維持できない。しかし、フルオレン化合物とセルロース系樹脂とを組み合わせると、セルロース系樹脂の特性を維持しながらも、フルオレン化合物の使用により、結晶化度を低減でき、ガラス転移温度、融点、又は軟化点などを低下することができ、加熱により融解(溶融)又は軟化できるため、流動性を大きく改善できる。そのため、セルロースエステル(セルロースアセテートなど)などのセルロース系樹脂を使用するにも拘わらず、溶融混練系であっても、セルロース系樹脂を可塑化することができる。そのため、セルロース系樹脂と、フルオレン化合物を含むセルロース系樹脂組成物を溶融混練系で、コンパウンド、成形又は加工することが可能であり、非セルロース系熱可塑性樹脂との複合化を容易に行うことができる。
【0028】
また、セルロース系樹脂の結晶化度を低減(すなわち、非結晶部分の割合を大きく)できるため、ガラス転移温度及び/又は融点を低下させることができる。特に、セルロースジアセテートを用いると、融点の観測が困難になるほど、非結晶化することができる。また、従来、可塑化が極めて困難であったセルローストリアセテートを用いても、フルオレン化合物の作用により、ガラス転移温度及び融点を低下させることができ、高い可塑化効果が得られる。そのため、本発明の樹脂組成物は、後述するように、溶融混練により得ることが可能である。
【0029】
特に、フルオレン化合物は、セルロース系樹脂(特に、セルロースジアセテート及び/又はセルローストリアセテートなどのセルロースアセテート)の可塑化に有効である。また、従来全く知られていなかったセルローストリアセテートの外部可塑化、特に、溶融混練系での可塑化は、フルオレン化合物により初めて達成されたものである。
【0030】
そのため、セルロース系樹脂は、特に、セルローストリアセテートで構成してもよい。セルロース系樹脂は、セルローストリアセテートのみで構成してもよく、セルローストリアセテートと他のセルロース系樹脂(セルローストリアセテート以外のセルロース系樹脂)とで構成してもよい。他のセルロース系樹脂と組み合わせる場合、セルローストリアセテートの割合は、セルロース系樹脂全体に対して、例えば、30重量%以上(例えば、40〜99.9重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜99.5重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜99重量%)であってもよい。
【0031】
[非セルロース系熱可塑性樹脂]
非セルロース系熱可塑性樹脂は、セルロース系樹脂に複合化する目的などに応じて適宜選択できる。このような非セルロース系熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィンなど)、ハロゲン含有ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、フッ素樹脂など)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル系樹脂)、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミドMXDなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性ポリフェニレンエーテルなど)、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂など)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)、熱可塑性エラストマー(ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
これらのうち、芳香環(ベンゼン環)を含有する熱可塑性樹脂、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、芳香族ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などが好ましく、特に、芳香環を含有し、かつ分子内に極性基を有する熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル系樹脂など)が好ましい。これらの芳香環含有樹脂は、芳香環を有しているため、フルオレン化合物との相溶性が高く、また、極性基を有していると、可塑化されたセルロース系樹脂との親和性にも優れる。
【0033】
[フルオレン化合物]
本発明の樹脂組成物では、フルオレン化合物により、セルロース系樹脂および非セルロース系熱可塑性樹脂が複合化されている。すなわち、このようなフルオレン化合物は、前記のように、前記セルロース系樹脂の可塑剤として機能するとともに、非セルロース系熱可塑性樹脂とも相溶するか又は非セルロース系熱可塑性樹脂の可塑剤としても機能するためか、セルロース系樹脂と非セルロース系熱可塑性樹脂とを効率よく複合化させる。なお、フルオレン化合物は、セルロース系樹脂との間の化学的相互作用のためか、分子レベル又は分子レベルに近い状態でセルロース系樹脂に相溶可能である。そのため、従来、困難であったセルロース系樹脂(特に、セルローストリアセテートなど)と非セルロース系熱可塑性樹脂との溶融混練系での複合化を可能にする。
【0034】
また、フルオレン化合物の割合が多くても、ブリードアウトを防止又は抑制することができるとともに、比較的少量でも、セルロース系樹脂を効果的に可塑化可能である。
【0035】
そのため、本発明では、セルロース系樹脂や非セルロース系熱可塑性樹脂の優れた特性(透明性、機械特性など)を維持しつつ非セルロース系熱可塑性樹脂と複合化できるだけでなく、フルオレン化合物の使用により、樹脂組成物において、流動性(溶融流動性)、耐水性、表面硬度などの諸特性を付与又は改善(又は向上)することができる。
【0036】
このようなフルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物であればよく、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するモノマー(例えば、後述の9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など)を重合成分とする樹脂であってもよいが、通常、例えば、下記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。
【0038】
(式中、Aは少なくともベンゼン環骨格を有する芳香族炭化水素環を示し、X
1はヘテロ原子含有官能基を示し、R
1はアルキレン基を示し、R
2は、炭化水素基(アルキル基、アリール基など)、エーテル基(置換ヒドロキシル基)、チオエーテル基(置換チオール基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はN,N−二置換アミノ基を示し、R
3は、炭化水素基(アルキル基、アリール基など)、ヒドロキシル基、エーテル基(置換ヒドロキシル基)、メルカプト基、チオエーテル基(置換チオール基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基又は置換アミノ基を示し、kは0又は1以上の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、n及びpは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す。)
上記式(1)において、環Aで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環の他、少なくともベンゼン環骨格を有する縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(インデン環、ナフタレン環などのC
8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC
10−16縮合二環式炭化水素環など)、縮合三環式炭化水素環(アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]などが挙げられる。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Aは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Aのうち、ベンゼン環、ナフタレン環(特にベンゼン環)などが好ましい。
【0039】
なお、フルオレンの9位に置換する環Aの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Aがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Aに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0040】
前記式(1)において、X
1で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個であってもよい。前記官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ含有基(エポキシ基、グリシジル基など)などの酸素原子含有官能基;メルカプト基などのイオウ原子含有官能基;アミノ基又はN−一置換アミノ基[例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC
1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC
1−4アルキルアミノ基など)など]などの窒素原子含有官能基などが例示できる。X
1のうち、ヒドロキシル基、エポキシ含有基(グリシジル基など)、アミノ基又はN−一置換アミノ基などが好ましく、特に、ヒドロキシル基が好ましい。
【0041】
前記式(1)において、基R
1で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC
2−6アルキレン基、好ましくはC
2−4アルキレン基、さらに好ましくはC
2−3アルキレン基が挙げられる。これらのアルキレン基のうち、特に、エチレン基が好ましい。なお、kが2以上の整数である場合、各オキシアルキレンユニットにおけるアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。また、2つの環Aにおいて、基R
1は同一であっても、異なっていてもよく、同一である場合が多い。
【0042】
オキシアルキレン基(OR
1)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すkは、0〜15(例えば、0〜10)程度の範囲から選択でき、例えば0〜6、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2、特に、0又は1であってもよい。2つの環Aに結合するオキシアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
【0043】
前記式(1)において、環Aに置換した基−(OR
1)
k−X
1の個数を示すmは、好ましくは、1〜3の整数であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に、1であってもよい。なお、基−(OR
1)
k−X
1の環Aにおける置換位置は特に制限されず、例えば、環Aがベンゼン環である場合には、フルオレン骨格の9位との結合位置(1位)に対して、2位、3位及び/又は4位のいずれであってもよい。例えば、mが2である場合、上記置換位置は、2位及び3位、2位及び4位、3位及び5位などであってもよいが、3位及び4位である場合が多い。また、環Aがナフタレン環の場合には、環Aとは直接結合していないベンゼン環の適当な置換位置(3級炭素原子)に置換してもよいが、環Aに結合したベンゼン環の適当な置換位置(3級炭素原子)に置換するのが好ましい。
【0044】
前記式(1)において、R
2及びR
3で表される炭化水素基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−6アルキル基、好ましくはC
1−4アルキル基、さらに好ましくはC
1−3アルキル基、特にメチル基又はエチル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC
5−8シクロアルキル基、好ましくはC
5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(モノ又はジメチルフェニル基(トリル基、2−メチルフェニル基、キシリル基など)、ナフチル基などのC
6−10アリール基、好ましくはフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)などが例示できる。
【0045】
また、R
2及びR
3で表されるエーテル基としては、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが例示できる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC
1−6アルコキシ基(好ましくはC
1−4アルコキシ基、さらに好ましくはC
1−3アルコキシ基など)が例示でき、シクロアルコキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などのC
5−8シクロアルキルオキシ基(C
5−6シクロアルキルオキシ基など)が例示できる。さらに、アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基などが例示でき、アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基などが例示できる。
【0046】
また、R
2及びR
3で表されるチオエーテル基(置換チオール基又は置換メルカプト基)としては、上記エーテル基に対応するチオエーテル基(アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基など)などが例示できる。
【0047】
R
2及びR
3で表されるアシル基としては、アセチル基などのC
2−7アシル基(C
2−5アシル基など)などが例示でき、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基などが例示できる。
【0048】
R
2及びR
3で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。
【0049】
R
2で表されるN,N−二置換アミノ基としては、N,N−ジアルキルアミノ基(N,N−ジメチルアミノ基などのジC
1−6アルキルアミノ基、好ましくはジC
1−4アルキルアミノ基など)、N,N−ジアシルアミノ基などが挙げられる。また、R
3で表される置換アミノ基としては、N−一置換アミノ基[例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC
1−6アルキルアミノ基、好ましくはN−モノC
1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC
1−6アルキルアミノ基、好ましくはN−モノヒドロキシC
1−4アルキルアミノ基など)など]、N,N−二置換アミノ基[N,N−ジアルキルアミノ基(N,N−ジメチルアミノ基などのジC
1−6アルキルアミノ基、好ましくはジC
1−4アルキルアミノ基など)など]が例示できる。
【0050】
なお、基R
2は、フルオレン骨格の9位に置換した2つの環Aにおいて、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。また、環Aが複数の基R
2を有する場合、R
2の種類は一部又は全部が同一であってもよく、全てが異なっていてもよい。基R
3は、フルオレン骨格の2つのベンゼン環において、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。また、ベンゼン環が、複数の基R
3を有する場合、R
3の種類は、一部又は全部が同一であってもよく、全てが異なっていてもよい。
【0051】
基R
2の個数(置換数)を示すn、及び基R
3の個数を示すpは、それぞれ、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2の整数であってもよい。nとpとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは、フルオレン骨格の9位に置換した2つの環Aにおいて、それぞれ異なっていてもよいが、同一である場合が多い。pも、フルオレン骨格の2つのベンゼン環について、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0052】
前記式(1)において、例えば、下記の化合物(a)〜(e)などが好ましい。
【0053】
(a)環Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、X
1が、ヒドロキシル基、エポキシ含有基、アミノ基、又はN−一置換アミノ基であり、R
1がC
2−4アルキレン基であり、R
2が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R
3が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−一置換アミノ基であり、kが0〜3の整数であり、mが1又は2であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜3の整数である化合物;
(b)環Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、X
1がヒドロキシル基であり、R
1がC
2−4アルキレン基であり、R
2が、C
1−6アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R
3がC
1−6アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−モノC
1−6アルキルアミノ基であり、kが0〜2の整数であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜2の整数である化合物;
(c)環Aがベンゼン環であり、X
1がヒドロキシル基であり、R
1がC
2−3アルキレン基であり、R
2が、C
1−4アルキル基又はフェニル基であり、R
3がC
1−4アルキル基、ヒドロキシル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物;
(d)環Aがベンゼン環であり、X
1がヒドロキシル基であり、R
1がC
2−3アルキレン基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが0である化合物;及び
(e)環Aがベンゼン環であり、X
1がヒドロキシル基であり、R
1がエチレン基であり、R
2がC
1−3アルキル基であり、R
3がC
1−3アルキル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物など。
【0054】
代表的なフルオレン化合物には、例えば、(A)9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ジ乃至トリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの(A1)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類(又は前記式(1)においてAがベンゼン環、kが0、X
1がヒドロキシ基、mが1〜3である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]などの(A2)9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類(又は前記式(1)においてAがナフタレン環、kが0、X
1がヒドロキシ基、mが1〜3である化合物)など}、(B)9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)などの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(C
6−10アリール−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス[ジ乃至トリ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[ジ乃至トリ(ヒドロキシC
2−4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど]などの(B1)9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類(又は前記式(1)においてAがベンゼン環、kが1以上(例えば、1〜4)、X
1がヒドロキシ基、mが1〜3である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシC
2−4アルコキシナフチル]フルオレン]などの(B2)9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類(又は前記式(1)においてAがナフタレン環、kが1以上(例えば、1〜4)、X
1がヒドロキシ基、mが1〜3である化合物)など}などが挙げられる。
【0055】
これらのフルオレン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
[各成分の割合]
本発明の樹脂組成物において、セルロース系樹脂と非セルロース系熱可塑性樹脂との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99.9/0.1〜10/90(例えば、99.5〜20/80)程度の範囲から選択でき、例えば、99/1〜30/70(例えば、99/1〜40/60)、好ましくは98/2〜45/55(例えば、97/3〜50/50)、さらに好ましくは96/4〜55/45(例えば、95/5〜60/40)程度であってもよく、通常99/1〜50/50(例えば、98/2〜60/40、好ましくは97/3〜65/35、さらに好ましくは96/4〜70/30)程度であってもよい。特に、樹脂組成物の植物化度を高め、有効にセルロース系樹脂を使用するという観点からは、セルロース系樹脂の割合を比較的大きくしてもよい。本発明では、このようにセルロース系樹脂(特に、セルローストリアセテートなど)の割合を大きくしても、効率よく、非セルロース系熱可塑性樹脂との複合材料を得ることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物において、フルオレン化合物の割合は、セルロース系樹脂100重量部に対して、0.1〜60重量部(例えば、0.2〜50重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.3〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜25重量部程度であってもよい。
【0058】
また、フルオレン化合物の割合は、非セルロース系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.5〜200重量部程度の範囲から選択でき、例えば、1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは7〜60重量部程度であってもよい。
【0059】
なお、フルオレン化合物の割合は、セルロース系樹脂および非セルロース系熱可塑性樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜50重量部(例えば、0.2〜40重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.3〜35重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜25重量部程度であってもよく、通常1〜40重量部(例えば、2〜35重量部、さらに好ましくは3〜30重量部、特に5〜25重量部)程度であってもよい。
【0060】
[他の成分]
本発明の樹脂組成物は、使用される用途などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲で必要により、慣用の添加剤、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤、難燃助剤、他の可塑剤、耐衝撃改良剤、充填剤(又は補強剤)、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0061】
本発明では、これらの添加剤のうち、成形体の着色を抑制できる点から、安定化剤を好適に配合してもよい。特に、このような安定化剤は、セルローストリアセテートのような着色しやすいセルロース系樹脂を用いる場合などにおいて有効である。安定化剤には、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物(例えば、ジ−ラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステルなどのチオジC
2−4カルボン酸ジC
10−20アルキルエステル)、エポキシ系化合物[例えば、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油など)、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル(エポキシ化ステアリン酸メチルなど)、エポキシ化ポリブタジエンなど]などが挙げられる。
【0062】
フェノール系化合物としては、複数の分岐アルキルフェニル基(分岐アルキル基が置換したフェニル基又は分岐アルキル基を有するフェニル基)を有するフェノール系(ヒンダードフェノール系)化合物{1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどのトリス(2−アルキル−4−ヒドロキシ−5−分岐C
3−8アルキルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどトリス(3,5−ジ−分岐C
3−8アルキル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどの1,3,5−トリアルキル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−分岐C
3−8アルキル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのテトラキス[アルキレン−3−(3,5−ジ−分岐C
3−8アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]C
1−4アルカン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C
3−8アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など};ヒドラジン化合物{N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなど};ヒンダードフェノール系化合物[n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネートなど]などが挙げられる。フェノール系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irganox1010」、「Irganox1076」、「Irganox1330」などとして入手できる。
【0063】
アミン系化合物としては、例えば、テトラカルボン酸トリ又はテトラピペリジルエステル[例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステルなどのテトラカルボン酸テトラキス(テトラメチルピペリジル)エステル;ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]などのヒンダードアミン系化合物(HALS);ナフチルアミン系化合物(フェニル−α−ナフチルアミンなど);ジフェニルアミン系化合物(p−イソプロポキシジフェニルアミンなど);p−フェニレンジアミン系化合物(N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなど)などが挙げられる。
【0064】
リン系化合物としては、例えば、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物{トリス(2,4−分岐C
3−8アルキル−ブチルフェニル)ホスファイト[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなど]、テトラキス(2,4−ジ−分岐C
3−8アルキルフェニル)−4,4’−C
2−4アルキレンホスファイト[テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイト]などの複数のアルキルフェニル基を有するリン系化合物など};トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6−トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィンなどのホスフィン化合物などが挙げられる。
【0065】
これらの安定化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの安定化剤のうち、分岐アルキルフェニル基を有するフェノール系化合物(ヒンダードフェノール系化合物)、ヒンダードアミン系化合物、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物などが好ましく、ヒンダードフェノール系化合物と、リン系化合物(例えば、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物)との組み合わせ[特に、複数の分岐C
3−8アルキル(t−ブチルなど)フェニル基を有するヒンダードフェノール系化合物と、複数の分岐C
3−8アルキル(t−ブチルなど)フェニル基を有するリン系化合物との組み合わせ]なども好ましい。ヒンダードフェノール系化合物と、リン系化合物(例えば、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物など)との割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、20/80〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜85/15(特に50/50〜80/20)程度であってもよい。ヒンダードフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物とを組み合わせた安定化剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irganox B215」が入手できる。
【0066】
安定化剤の割合は、セルロース系樹脂及び非セルロース系熱可塑性樹脂の合計100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部(例えば、0.01〜8重量部)、好ましくは0.1〜7重量部(例えば、0.5〜6重量部)、さらに好ましくは1〜5重量部(特に2〜4重量部)程度であってもよい。
【0067】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、セルロース系樹脂と、非セルロース系熱可塑性樹脂と、フルオレン化合物とを混合することにより得られる。
【0068】
混合には、必要により、セルロース系樹脂のドープを調製するのに使用される溶媒(溶剤)などを用いてもよいが、通常、溶媒を添加しなくても、効率よくセルロース系樹脂を可塑化しつつ非セルロース系熱可塑性樹脂と複合化できる。特に、本発明では、フルオレン化合物の作用により、セルロース系樹脂および非セルロース系熱可塑性樹脂を溶融混練することが可能である。そのため、本発明の樹脂組成物は、特に、セルロース系樹脂と、非セルロース系熱可塑性樹脂と、フルオレン化合物とを溶融混合(溶融混練)することにより得てもよい。溶融混合には、慣用の熱可塑性樹脂組成物の調製法と同様の方法、例えば、押出機(一軸又は二軸押出機など)により溶融混練する方法などが利用できる。なお、得られる樹脂組成物の形態は、特に限定されず、例えば、セルロース系樹脂と非セルロース系熱可塑性樹脂とフルオレン化合物とを押出機に供給し、押出機内で溶融混練した後、ペレット状の樹脂組成物を得てもよい。
【0069】
溶融混合(溶融混練)温度は、樹脂組成物の分解開始温度及び溶融開始温度などに応じて、適宜選択でき、通常、分解開始温度よりも低く、溶融開始温度よりも高い温度が選択され、分解開始温度よりも80〜150℃、好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは95〜135℃程度低い温度である場合が多い。
【0070】
具体的には、溶融混合温度は、例えば、180〜280℃、好ましくは220〜270℃、さらに好ましくは240〜260℃程度であってもよい。特に、セルロース系樹脂をセルローストリアセテートで構成する場合、溶融混合温度は、200〜330℃、好ましくは220〜320℃、さらに好ましくは240〜310℃、特に250〜300℃(例えば、260〜290℃)程度であってもよい。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、セルロース系樹脂を含んでいるにもかかわらず、溶融混練可能であるため、熱可塑性樹脂組成物に適用される慣用の成形法(例えば、押出成形、圧縮成形など)により、成形することができる。
【0072】
なお、前述のように、安定化剤を配合することにより、溶融混練による樹脂組成物(特にセルローストリアセテートを含む樹脂組成物)の着色を抑制できるが、さらに不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下又は流通下で溶融混練することにより、より一層樹脂組成物の着色を効果的に抑制できる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0074】
(加工性の評価)
比較例1〜2、実施例1〜3
表1に示す成分を表1に示す割合で使用し、二軸押出機(テクノベル社製 KZW15/30 MG)を用いて表に示す温度にて溶融混練し、セルロース系樹脂組成物を得た。
【0075】
なお、表中、「TAC」はセルローストリアセテート(ダイセル化学工業(株)製、LT55)、「PC」はポリカーボネート(帝人化成(株)製、パンライトL−1225L)、「BPEF」は、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)を示す。
【0076】
得られた樹脂組成物の外観を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜3では、BPEFを用いることで、着色や発泡のないTAC/PC複合樹脂組成物を効率よく得ることができた。一方、比較例1および2では、溶融温度においてTACが分解したためか、着色および発泡が生じ、比較例2ではTAC/PC複合樹脂組成物を効率よく得ることができなかった。
【0079】
(熱的特性の評価)
比較例1、実施例1、実施例2で得た樹脂組成物(それぞれ、比較例3、実施例4、実施例5)およびTAC(比較例2)の熱的特性[融点(Tm)、融解熱(ΔHm)]を、DSC装置((株)リガク製、DSC8230)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2の結果から明らかなように、BPEFの添加量の上昇に伴い、TAC由来のTmならびにΔHmが減少しており、TACとBPEFの相溶性が高く、可塑化している様子が確認できた。