特許第5913545号(P5913545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許5913545鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法
<>
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000002
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000003
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000004
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000005
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000006
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000007
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000008
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000009
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000010
  • 特許5913545-鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913545
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20160414BHJP
   C30B 11/00 20060101ALI20160414BHJP
   C01B 33/037 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C30B29/06 501Z
   C30B11/00 Z
   C01B33/037
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-253813(P2014-253813)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-120634(P2015-120634A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】102147552
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】507204660
【氏名又は名称】中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】程 皖▲ゆん▼
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲ちぇん▼程
(72)【発明者】
【氏名】張 志乾
(72)【発明者】
【氏名】▲せん▼ 孔維
(72)【発明者】
【氏名】張 仲昇
(72)【発明者】
【氏名】楊 瑜民
(72)【発明者】
【氏名】余 文懷
(72)【発明者】
【氏名】許 松林
(72)【発明者】
【氏名】李 依晴
(72)【発明者】
【氏名】徐 文慶
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0192516(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102071455(CN,A)
【文献】 特表2011−528308(JP,A)
【文献】 特開2013−199417(JP,A)
【文献】 特開平10−194718(JP,A)
【文献】 特開2011−123185(JP,A)
【文献】 特開平09−071497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
C01B 33/00−33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置であって、
一つのるつぼと、
前記るつぼの底部にある少なくとも一つのコーナーを備える。
冷却装置は、るつぼの下方に位置し、一つの台座と、その台座に含まれる少なくとも一つの冷却槽を備え、前記冷却槽は前記るつぼ底部のコーナーと対応し、前記台座にはさらに少なくとも一つの流体を通すための流路を備え、前記流路は前記冷却槽と前記台座の外部と連通する前記冷却装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つのコーナーの数は複数で、前記少なくとも一つの冷却槽の数も複数で、どの冷却槽もそれぞれ一つのコーナーと対応し、しかもこれらの冷却槽は一つの輪溝を介して互いに連通しており、前記流路はそのうち一つの冷却槽と連通し、前記輪溝は少なくとも一つの前記台座の外部と連通した出口を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つのコーナーの数は複数で、前記少なくとも一つの冷却槽の数も複数で、前記少なくとも一つの流路の数も複数で、どの冷却槽もそれぞれ一つのコーナーと対応し、しかも前記流路も対応する前記冷却槽とそれぞれ連通されていることを特徴とする請求項1に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項4】
前記台座は前記台座の外部と対応の冷却槽と連通する複数の出口を備えることを特徴とする請求項3に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのコーナーの数は複数で、前記台座は複数の輪溝を備え、これらの輪溝は一定の間隔を保ちながら前記台座上面の周りを取り巻き、しかもこれらの輪溝は互いに連通しており、少なくとも一つが前記流路と連通し、これらの輪溝が対応する前記るつぼ底部のコーナー部とともに冷却槽を構成することを特徴とする請求項1に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項6】
前記輪溝のうち、少なくとも一つは前記台座の外部と連通する少なくとも一つの出口を備えることを特徴とする請求項5に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項7】
さらに一つの頂板を含み、前記頂板は前記台座の頂部と結合し、前記頂板は前記るつぼの底面と接触することを特徴とする請求項2,4あるいは6に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項8】
前記台座は前記冷却槽と前記台座の外部と連通する一つの出口と、台座の上面と結合し、しかも前記るつぼの底面と接触する一つの頂板を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項9】
前記冷却槽の正投影範囲の面積は前記るつぼの底面面積の16%以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置。
【請求項10】
以下のような手順が含まれる鋳塊の鋳造方法:
複数のシードクリスタルを一つのるつぼ内側底部に入れて一つのシード層を形成させる;
前記るつぼの底部は少なくとも一つのコーナーを備える;
固体のシリコン原料を前記るつぼの中に入れて、前記シード層の上に積み上げる;
前記るつぼを加熱してシリコン原料および前記シード層上面を溶化により液状にする。なお、加熱の過程において前記るつぼの底面の前記コーナー区域を冷却して前記シード層の底部を固体状に保持し、前記るつぼを加熱する過程において、前記るつぼ底面の冷却される前記コーナー区域の面積は前記るつぼ底面面積の16%以下である;および
前記るつぼを冷却し、前記シード層の上面から上のほうへ結晶を凝固して、全てのシリコン原料が結晶に凝固するまでこれを続ける;
凝固した後のシード層およびシリコン原料は一つの鋳塊へと変わる。
【請求項11】
前記るつぼを加熱する過程において、前記るつぼ内部の固体のシリコン原料の高さを測定し、測定された高さが見込み高さを下回った場合、前記るつぼ底面の前記コーナー区域の冷却を開始することを特徴とする請求項10に記載の鋳塊の鋳造方法。
【請求項12】
前記るつぼを加熱する過程にはさらに前記るつぼ底面の周りを冷却する過程が含まれることを特徴とする請求項11に記載の鋳塊の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳塊鋳造に関わり、特に鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置及び鋳塊の鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギーは最もクリーンでほぼ無限のエネルギーでもあり、日々増え続ける太陽電池への需要を満たし、太陽電池の生産コストを下げるために、現在太陽電池の生産で使用されているチップのほとんどは大量生産が可能な一方向性凝固法で製造された鋳塊である。
【0003】
図1は、一般的な方向性凝固法を使用した鋳塊鋳造炉1であり、これには一つの炉体10、および前記炉体内部に設置された一つのるつぼ12、一つの絶縁かご14、複数の加熱器16が含まれている。このうち、前記るつぼ12は矩形を呈し、その底部に4つのコーナーがある。前記るつぼ12は、複数のシードクリスタル18および固体のシリコン原料20を置くために使用されている。これらの加熱器16は前記るつぼ12の上方および周壁の周囲に設置され、これらの加熱器16は外部制御により前記るつぼ12を加熱することができる。前記絶縁かご14は、前記るつぼ12およびこれらの加熱器16の外側に覆設し、前記絶縁かご14は前記るつぼ12の温度の維持に用いられ、かつ前記絶縁かご14は、前記るつぼ12を中心に上下移動することができ、前記るつぼ12の温度勾配の変化を制御することにより、前記るつぼ12内のシリコン原料20および一部のシードクリスタル18を溶化しあるいは凝固して鋳塊を鋳造する。
【0004】
これらの加熱器16は、前記るつぼ12の周壁の周囲に位置するため、前記るつぼ12の各コーナー区域附近の加熱器16から発生した熱エネルギーは前記るつぼ12のコーナー区域に過度に集中して、これにより各コーナー区域の温度が上昇し、シリコン原料20の溶化が加速してしまう。シリコン原料20の溶化段階において、溶化形態を呈するシリコン原料20の上面と気体の表面が凸凹となり、中央部が凸起状を呈してしまう。前記るつぼ12内の固体シリコン原料20が下のほうに溶化してこれらのシードクリスタル18に接近していくにつれ、コーナー区域のシードクリスタル18は中央部にあるシードクリスタル18よりも早く溶化することになる。中央部にあるシードクリスタル18の上面が溶化しても、コーナー区域のシードクリスタル18がとっくに完全に溶化したため、溶化のバラつきが発生し、コーナー区域のシードクリスタル18がシーディングできなくなり、これにより鋳塊の品質が低下し、ひいては鋳塊をチップにカットして出来上がる太陽電池の変換効率を左右してしまう恐れがある。
【0005】
コーナー区域のシードクリスタル18が完全に溶化するのを防ぐために、最も多く講じられている対策法として、コーナー区域のシードクリスタル18が完全に溶化する前に前記るつぼ12の温度勾配の変化を抑えて、既に溶化したシードクリスタル18およびシリコン原料20を冷却凝固させて、コーナー区域のシードクリスタル18がシーディングさせる手段があげられる。ただ、コーナー区域のシードクリスタル18が完全に溶化されていない状態では、中央部にあるシードクリスタル18の上面がまだ溶化していないため、中央部のシードクリスタル18がシーディングできず、鋳造完了した鋳塊の底部の中央部の品質が低下して使い物にならなくなり廃棄する必要があるため、鋳塊の有効長さがどうしても減ってしまう。
【0006】
また、中華人民共和国実用新案第202297866号、中華人民共和国特許出願公開第102071454号、中華人民共和国実用新案第201713604号、および中華人民共和国特許出願公開第102268728号等の特許文献に示すように、これらの特許において公開された鋳塊鋳造炉はいずれも溶化するシリコン原料が凝固・結晶段階において、るつぼの下方に位置する冷却装置を利用してるつぼ内のシリコン原料の固体・液体表面の平坦性を制御し、それにより鋳塊品質の向上を図るものである。しかし、これらの鋳塊鋳造炉にも依然としてシリコン原料の溶化段階において、るつぼ底部コーナー区域のシードクリスタルが完全に溶化してしまう懸念が存在する。
【0007】
よって、従来の一般的な鋳塊鋳造炉の設計が完ぺきとは言えず、改善の余地は多かれ少なかれ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中華人民共和国実用新案第202297866号公報
【特許文献2】中華人民共和国特許出願第102071454号公報
【特許文献3】中華人民共和国実用新案第201713604号公報
【特許文献4】中華人民共和国特許出願第102268728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来例の問題点に鑑み、鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置および鋳塊の鋳造方法を提供することで、るつぼ内のコーナー区域にあるシードクリスタルが完全に溶化するのを防ぐことを可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では鋳塊鋳造炉に用いる冷却装置を提供した。前記鋳塊鋳造炉には一つのるつぼが含まれ、前記るつぼの底部に少なくとも一つのコーナーがあり、前記冷却装置は前記るつぼの下方に位置し、一つの台座が含まれ、前記台座には少なくとも一つの冷却槽が含まれ、前記冷却槽は前記るつぼ底部の前記コーナーと向かい合い、前記台座にはさらに少なくとも流体を通すため流路があり、前記流路は前記冷却槽と前記台座の外部と接続されている。
【0011】
本発明において提供される鋳塊の鋳造方法には次のような手順が含まれている。複数のシードクリスタルを一つのるつぼ内の底部に置いて一つのシード層を形成する。なお、前記るつぼの底部には少なくとも一つのコーナーがある。固体のシリコン原料を前記るつぼの中に入れて前記シード層の上に積み上げる。前記るつぼを加熱し、シリコン原料および前記シード層の上面を溶化により液状にする。なお、加熱の過程において前記るつぼの底面の前記コーナー区域を冷却して前記シード層の底部を固体状に保持する。前記るつぼを冷却し、前記シード層の上面から上のほうへ結晶を凝固して、全てのシリコン原料が結晶に凝固するまでこれを続ける。凝固した後のシード層およびシリコン原料は一つの鋳塊へと変わる。
【0012】
本発明の効果は、冷却装置を利用してるつぼ底部のコーナー区域を冷却したことで、コーナー区域にあるシード層底部の溶化をうまく防止したことである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の一般的な鋳塊鋳造炉を示す説明図である。
図2】本発明の実施例1の鋳塊鋳造炉を示す説明図である。
図3】本発明の実施例1の冷却装置の立体図である。
図4】本発明の実施例1の冷却装置の平面図である。
図5】本発明の実施例1の鋳塊の鋳造方法を示す説明図である。
図6】本発明の実施例2の冷却装置の立体図である。
図7】本発明の実施例2の冷却装置の平面図である。
図8】本発明の実施例3の冷却装置の立体図である。
図9】本発明の実施例3の冷却装置の平面図である。
図10】本発明の実施例3の冷却装置の立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をよりはっきりと理解できるよう、いくつかの実施例と図面を併用して詳しく説明する。図2ないし図4は、本発明の実施例1の鋳塊鋳造炉2を示したもので、前記鋳塊鋳造炉2は一つの炉体22、一つのるつぼ24、一つの絶縁かご26、複数の加熱器28および本発明の冷却装置30から構成される。このうち、前記るつぼ24は矩形を呈し、その底部には4つのコーナーがあり、前記るつぼ24は複数のシードクリスタル38および固体のシリコン原料42を置くために使用され、しかも前記るつぼ24は前記冷却装置30の上に設置される。前記炉体22、前記絶縁かご26、前記加熱器28は一般的な鋳塊鋳造炉1のものと同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0015】
本実施例において、前記冷却装置30は一つの台座32および前記台座32上の複数の冷却槽34から構成される。前記台座32は前記るつぼ24を載せるのに使用され、前記台座32には一つの上面322があり、前記上面322は前記るつぼ24の底面と接触し、前記複数の冷却槽34は前記るつぼ24の上面322が凹んで形成されたもので、しかもこれらの冷却槽34は前記るつぼ24底部の4つのコーナー区域とそれぞれ対応している。また、前記台座32にはさらに2つの不活性ガスをはじめとした流体を通すための流路324があり、前記2つの流路324は斜め対角に位置する2つの冷却槽34と前記台座32の外部とそれぞれ接続する。具体的には、そのうち一つの前記流路324は一つの前記冷却槽34の槽面と前記台座32の底面を貫通し、別の前記流路324は前記台座の一つのガイド溝326の中に位置し、しかも前記ガイド溝326の溝面と前記台座32の底面を貫通する。前記ガイド溝326の反対側は前記一つの冷却槽34と接続する。前記台座32の下方に一つの吸気管36が設置され、前記吸気管36は前記2つの通路324と連通し、前記台座32への不活性ガス(例えばアルゴン)注入に用いられる。
【0016】
また、前記台座32上には一つの輪溝328が設置されており、前記輪溝328は前記台座32の上面322の周りを取り巻き、しかも前記台座32の上面322が凹んで形成されている。前記輪溝328はこれらの冷却槽34と連通しており、これによりこれらの冷却槽34が相互に相通することができる。前記輪溝328には2つの出口328aがあり、前記出口328aは前記台座32の周面上にて形成され、しかも斜め対角に位置する2つの冷却槽34と前記台座32外部と接続する。
【0017】
上記の鋳塊鋳造炉2を利用することで、図5に示す鋳塊の鋳造を行うことができる。前記方法は次のような手順から構成される。
【0018】
まずこれらのシードクリスタル38を前記るつぼ24内の底部に置いて一つのシード層40を形成させる。次に固体のシリコン原料42を前記るつぼ24の中に入れて前記シード層40の上に積み上げる。
【0019】
続く加熱段階では、前記るつぼ24を加熱してシリコン原料42および前記シード層40の上面を溶化して液状にする。その際、前記絶縁かご26を前記るつぼ24に被せた後、これらの加熱器28を制御して加熱させて、加熱温度および加熱時間を調整しながら、前記るつぼ24内のシリコン原料42を溶化していく。シリコン原料42が溶化した後、一つの石英棒(図に未表示)を前記るつぼ24の上面から液状に溶化したシリコン原料42の中に挿し込み、前記るつぼ24内部の残余固体シリコン原料42の高さを測定する。
【0020】
測定された固体シリコン原料42の高さが見込み高さを下回った場合、前記吸気管36より不活性ガスを注入する。注入された不活性ガスは、対応する2つの冷却槽34から輪溝328を経由して別の2つの冷却槽34に流出し、そして前記2つの出口328aから前記台座32の外へ流出する。これにより、流入した不活性ガスを利用して前記るつぼ24底部の一部の熱エネルギーを排出して前記るつぼ24底面の前記4つのコーナー区域の冷却を行い、前記シード層40の底部を固体状に維持して加熱器28から発生した熱エネルギーがコーナー区域に過度に集中してコーナー区域に位置するシード層40が完全に溶化するのを防ぐことができる。ここで特筆すべきことは、前記輪溝328の不活性ガスを利用して前記るつぼ24底面の周りを冷却したり、周りに位置するシード層40の底部を固体状に保持したりすることもできる。
【0021】
シリコン原料42が全て溶化して液状となり、および前記シード層40の上面が溶化し始めた後、前記絶縁かご26を制御しながら徐々に上げていき、前記絶縁かご26の開き具合を調整して内部の熱が開かれた隙間から排出させる。これによりるつぼ24底部のシード層40の温度が熔点温度以下まで下がって凝固して結晶する。前記絶縁かご26が上昇するにつれ、前記るつぼ24内のシリコン原料42の固体/液体界面も前記るつぼ24内のシリコン原料42全てが凝固結晶するまで徐々に上昇していく。これにより凝固したシード層40およびシリコン原料42は一つの鋳塊となる。
【0022】
発明者による実験によれば、前記冷却槽34一つあたりの正投影範囲の面積は前記るつぼ24底面面積の16%以下となり、コーナー区域に対して優れた冷却効果を発揮しながらも中央部に位置するシード層40上面の温度に影響を及ぼさないため、前記シード層40の上面を均等に溶化し、バラつきのある溶化を防ぐことができる。
【0023】
上記に示すように、固体のシリコン原料42が溶化段階において、冷却装置30を利用して前記るつぼ24のコーナー区域を冷却することで、中央部に位置するシード層40の温度に影響を与えることなくシード層40の底部を固体状に維持することができる。これにより一般的な鋳塊鋳造炉1がるつぼコーナー区域において熱エネルギーの過度の集中によりコーナーのシードクリスタルが完全に溶化してしまうという欠陥を有効的な改善することができる。実際では、台座32がるつぼ24底部より大きく、しかも冷却槽34のカバー範囲が前記るつぼ24を超えて冷却槽34が台座32外部と直接接続できる場合を除いては、これらの出口328aを設置する必要もなく不活性ガスをそのまま冷却槽34とるつぼ24の間を経由して台座32の外に排出することができる。
【0024】
図6図7は、本発明の実施例2の冷却装置44を示すもので、その構造は前記実施例1のものとほぼ同じで、相違点としては、実施例2の台座46には輪溝がなく、しかも各冷却槽48はそれぞれ一つの通路462および一つの出口464と接続される。前記各通路462から注入された不活性ガスは、前記各冷却槽48を経由して前記各出口464から排出されるため、るつぼ24のコーナー区域に対して同じような冷却効果を実現することができる。
【0025】
図8図9は、本発明の実施例3の冷却装置50を示すもので、前記各実施例と異なり、前記台座52上面522には複数の輪溝524があり、これらの輪溝524は一定の間隔を保ちながら前記台座52上面522の周りを取り巻き、しかもこれらの輪溝524は互いに連通している。前記台座52の上に2つの流路があり、そのうち一つの流路526は直接内輪に位置する輪溝524と連通し、別の通路526は一つのガイド溝528を介して内輪に位置する輪溝524と連通する。外輪に位置する輪溝524には前記台座52の外部と連通する一つの出口524aがあり、これによりこれらの輪溝524は前記るつぼ24の底部コーナー部と対応して冷却槽54を構成する。前記2つの通路526より注入された不活性ガスは、内輪および外輪の輪溝524を順番に通って前記るつぼ24底面の周りおよびコーナー区域の冷却を行う。
【0026】
図10は、本発明の実施例4の冷却装置56を示すもので、上記の実施例1をベースとしており、前記台座32の上にさらに一つの頂板58が設置され、前記頂板58は前記台座32の上面322に結合され、かつ前記頂板58は前記るつぼ24の底面と接触する。これにより、これらの冷却槽34は露出することなく前記冷却装置56の内部に位置されるため、これらの通路324に冷却用の液体を流し、冷却槽34を流れる液体を利用して冷却槽34上方の頂板58のコーナー区域を冷却し、これに対して前記台座32上の出口328aの場所には台座32内部と連通すると2つの連結管60が設置されている。前記2つの連結管60は、前記2つの出口328aから排出された液体を回収して、液体漏れを防ぐ目的で使用されている。前記頂板58は前記るつぼ24の底面と接触するため、るつぼ24のコーナー区域を冷却する効果がある。実際では、上記の実施例2、実施例3における台座46、52にはいずれも本実施例の頂板58および連結管60が設置されており、冷却用の液体を通すことができる。
【0027】
前記各実施例において、台座上の冷却槽は4つの例に変われるが、実際では、必要に応じて、るつぼ24の要冷却コーナーに合わせて一つ或いは一つ以上の冷却槽を設置することもできる。
【0028】
以上をまとめると、本発明の冷却装置は、るつぼ底部のコーナー区域を効率的に冷却し、鋳塊の鋳造過程におけるシリコン原料の溶化段階において、シード層の溶化のバラつきを防ぎ、コーナーのシードクリスタルが完全に溶化しないように保護し、全てのシードクリスタルでシーディングを行えるようにして、鋳塊の品質および使用長さを確保し、鋳塊をカットして出来上がった高品質のチップで太陽電池を製造することで、変換効率を高めることを可能にした。
【0029】
上記各実施例はあくまでもいくつかの実施態様にすぎず、特許発明の技術的範囲を画するものではない。上記実施形態に種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
2 … 鋳塊鋳造炉
22 … 炉体
24 … るつぼ
26 … 絶縁かご
28 … 加熱器
30 … 冷却装置
32 … 台座
36 … 吸気管
38 … シードクリスタル
40 … シード層
42 … シリコン原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10